10.7一周年 ブッシュの対イラク戦争に反対する大阪集会基調(その後の補足的部分)

アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局   
吉田 正弘   

 以下は、10月6日の集会基調です。後半部分は集会後加筆訂正して、独立した報告「ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]V)」としましたので併せてご検討下さい。



(1)情勢の新しい変化。米英による査察妨害と強硬決議ごり押し。何があっても戦争へ持ち込みたい米英。査察=「武装解除」「大量破壊兵器解体」よりもフセイン打倒を優先している。

(a)米英による露骨な査察妨害。国連当局、UNMOVICのブリクス委員長とIAEAにイラクとの査察合意を事実上破棄させた。米英案を採択するまで先遣隊の派遣を中止させた。強硬な米英案をイラクに拒否させ、戦争へ持ち込む思惑があからさまである。
(a−1)10月1日に国連当局とイラク当局の間で合意したばかりの査察合意に対する妨害。イラクの査察の「無条件受け入れ」策による戦争回避への対抗。

(a−2)決議案そのものの内容について。米英の草案は、
@核・生物・化学兵器などの開発計画、保有状況に関する情報などの完全開示。(従来の合意を無視した)大統領宮殿や国防省などあらゆる施設の査察の無条件、無制限受け入れ。
A7日間の受け入れ回答期限。
Bイラクが応じれば、30日以内に全情報を国連査察官などに提示し、武装解除する。
Cイラク政府が最初の要求段階で拒否したり、30目以内の情報提示を順守しなかった場合、「必要なあらゆる措置を取る」と武力行使を容認。
Dイラク当局の意向を超えて査察を実行できるよう、査察官に大きな権限を持たせ、軍部隊か武装警護を同行させる。

(a−3)決議案に対する態度
 英米の強力な議決工作、ロシア、中国に特使派遺
 フランスの強い反発。武力行使決議に「反対」。「別の決議案を準備」。武力行使反対でドイツと一致
 ロシア−米英案に反対。中国も自動的な武力行使案には反対。
 しかし、これら各国がどこまで反対を貫くか、拒否権を行使するのか、反対の表明だけか、棄権するのか、まだ見極めることができない。これに残りの非常任理事国がどう反応するか。米英案が15国中9国の支持を買い取れるか。それともフランスの2段階案に表面上妥協するか。まだ見えない。
 これとは別に米英政府の何が何でも戦争という姿勢への批判も広がっている。サウジは基地使用を拒否。カナダ外相も米国を批判。(ルーマニアのように基地提供を申し出る国も)。

(a−4)今後の見通し
 場合によっては年内に攻撃が始まる可能性も否定できない。
(参考)英サンデータイムズは、今後2週間で国連安保瑚決議採択、10月中旬までに米議会もイラク攻撃支持表明。同紙は、フセイン政権が安保理決議を受け入れる可能性は低いが、たとえ受け入れても大最破壊兵器について虚偽報告をするのは確実とした。その場合、ブッシュ米大統領は11月5日の米中間選挙の直後に攻撃を命令、兵器と兵員の準備に約20日間を要するので、攻撃開始は11月末になるとしている。

 すでに湾岸への兵力集中は進んでいる。
 米は国連の「武装査察」を侵略への第1歩と位置づけ、査察団の進む先を飛行禁止・軍事行動禁止の「占領地帯」化し侵略の先兵として利用する計画も持っており、これから戦争が始まる可能性もある。

(b)英米議会をめぐる動き
(b−1)アメリカ議会戦争容認決議
 10/2から下院審議開始。民主党も含め下院で大統領と妥協成立。来週にも議会可決の動き。10/3から審議開始の上院もこれに続く可能性。(大統領の戦争をほぼ容認)

(b−2)イギリス議会
 米議会と同じ
 英労働党大会 戦争反対決議に40%。しかし、戦争容認決議を可決

(C)世論の動向と反戦運動の高揚−−別報告
(c−1)9/28ロンドン40万人集会
過去最大規模。80年代の20万人規模の集会も.上同る。
(c−2)9/29ワシントン行動とアメリカ各地の運動
(c−3)各国での運動
 マドリード
 イタリアなど


(c−4)アメリカ国内の世論
 イラク問題をめぐっては63%が米軍による攻撃に賛成する一方で、地上軍の派遺については賛成50%、反対42%と分かれた。
 11月の中間選挙を前にした政党支持率では民主党支持(47%)が共和党支持(40%)を上回り、大統領の対イラク強硬姿勢は共和党側に必ずしも有利に寄与していない。
 また、投粟の際に最も重槻するのは経済政策(41%)で、対イラク攻撃間題(34%)がこれに続いた。
 9月中旬実施の前回調査では、大統頒への支持率は70%だった。

 複雑な局面。だからこそ、国際的な平和運動が働きかけてブッシュを孤立させる事が一層要請されている。

(d)日本の国内政局の動向と有事法制、テロ特措法
(d−1)小泉内閣改造と民主党党人事

(d−2)臨時国会と有事法制、テロ特措法
 まだ政府は有事法制を断念してはいない。しかし、きわめて厳しい状況にある事も確か。民主党の修正協議が唯一のたのみのつな。
 同時に、イラク戦争が始まれば、軍事的貢献のために「テロ特措法」改正が前に出てくる可能性に備えなければならない。

(d−3)対イラク戦争と日本の米軍基地、自衛隊の軍事協力
 すでに日本各地の米軍基地でイラク戦争に向けた活動が始まり、拡大している。
 横須賀には米陸軍の上陸用舟艇の半数が結集している。
 横田では大音響を使うジャイアントトークと言われる特殊な訓練が行われ、厚木、沖縄、岩国などで戦争を想定した大規模な訓練が行われている。
 

(2)イラクに対する大規模侵攻の犠牲−大量虐殺と「制裁」戦争の犠牲

(a)すでに戦争は始まっているのではないか。
(a−1)戦争開始に備え、対空戦力を事前に減らすために組織的に空爆が行われている。
 7月以降、空爆は急増し、組織的に対空能力の破壊を追及している。

(a−2)戦争をするつもりで兵力の集中がすでに始まっている。(湾岸の兵力)
 昨年まで米軍は2万5千人、英軍は2万人を湾岸に配置。
 今年の3月から増強を開始、5月には6万2千人に
 現段階では洋上の部隊を除いて10万人を越えた。
 湾岸戦争時の7ヶ月ではなく、数日であと2万人、数週間で10万人の動員が可能(?)
 テキサスでは「ユーフラテス川渡河」部隊が渡河演習
 ポーランドでは対戦車ヘリ部隊が襲撃演習「最終リハーサル」
 中央軍司令部が11月にカタールに移動
 次の空母が11月には湾岸に到着する。
 もはや戦争の歯車が回り始めるのは時間の問題なのか(かろうじて一歩手前か)

(a−3)なによりもブッシュ政権の基本路線、侵略的好戦的軍事戦略。
 通常では考えられないほど好戦的な戦争屋の政権。核・軍産複合体、石油関連産業の利害がそのまま表に出てくる。この1年間で軍事外交戦略もそれに応じて最も侵略的なものが採用されていった。「先制攻撃戦略」「核と非核の区別の撤去」。集大成として9月に「国家安全保障戦略」が発表された。


(b)予想される大規模戦争
 ブッシュが始めようとしているイラクに対する戦争の被害は、アフガニスタン戦争やユーゴ戦争はおろか、湾岸戦争さえはるかに上回る大規模なもの物になる。許し難い侵略戦争だ。
 湾岸では10−15万の兵士と5万の住民が直接の戦争で殺された。しかし、湾岸戦争でのアメリカ軍の直接の目的はイラク軍事力の包囲殲滅、特に共和国親衛隊の破壊であっり、それに続いて産業・インフラの破壊であった。また主たる戦場は砂漠であった。
 今度の戦争の目的はフセイン抹殺とフセイン政権の打倒であり、戦場は砂漠ではなく都市部、とりわけバグダッドであると宣言されている。350万人の巨大都市を戦場にする戦争は過去に例がない。アメリカがフセイン殺害を目標に居所を追跡すればするほど、たくさんの人々が殺されるだろう。

(b−1)都市攻撃、大規模空爆
 攻撃は大規模な空爆から始まる。湾岸戦争では40日の空爆後に地上軍の侵攻が始まった。今回はもっと短く、しかし密度が濃い。攻撃目標は野戦の軍事施設と並んで都市の真ん中にあるイラク軍施設、通信・指揮機能、政府機能そのもの、フセイン大統領そのものである。大統領宮殿だけで数十カ所あるという。インフラや交通ももちろん徹底した攻撃の対象になるだろう。そこら中が爆撃破壊される。
 アフガンでは誤爆と「誤った情報に基づく」爆撃が住民の被害をもたらした。ユーゴでは戦略目標への空爆に限定された。今回は全く異なる。地上軍の侵攻を前提にした空爆であり、陣地となりうるものを徹底的に破壊するだろう。軍事施設の機能を破壊するのではなく、地上の米軍に少しでも抵抗者がいる場所は集中的な攻撃対象になる。これが根本的に異なる。文字通り徹底的に破壊することはできない(バグダッドは巨大すぎる)。しかし、4月にイスラエルがやったジェニンのような殺戮と廃墟をバグダッドに作り出すだろう。

(b−2)ユーフラテス川渡河
 現在米軍はユーフラテス川の渡河訓練をテキサスで行っている。この部隊が湾岸に移動すれば戦争が始まる。大河ユーフラテス川渡河をめぐる闘いが今回の戦争の最初の決定的段階になるだろう。ユーフラテス川に架かる橋は限られる。イラク軍はこれらの橋を徹底的に守ろうとする。(それは川の向こうにいる部隊の生命線でもあるからだ)。しかし、守りきれなければ、米軍の侵攻を食い止めるために橋を落とそうとする。
 アメリカ軍は橋の架かる付近に対する徹底的な空爆を実行する。橋は昔からの交通の要衝にかかっている。多くの都市がそこにはある。その都市と住民が徹底的な攻撃にさらされ、命を奪われるのだ。もし、橋を落とされたらアメリカ軍は強行渡河をする必要がある。渡河こそ最も弱い瞬間である。攻撃を防ぐために周辺の都市、陣地は徹底的な空爆と破壊の対象になるだろう。
 一つの都市を破壊することは第2次大戦以降はほとんど例がない。その規模のことが渡河をめぐる作戦で起こるのである。しかし、事態はそれにとどまらない。

(b−3)市街戦
 ユーフラテスを越えれば、バグダッドに対する攻撃が行われる。地上部隊を侵攻させる場合、それに先だって文字通り徹底的な爆撃が行われる。アメリカは軍事目標だけを攻撃する等と宣伝するが、到底そんなものでは収まらない。フセインを捜して軍の施設という施設、政府の施設という施設、そしてありとあらゆる場所が爆撃され、人々が殺される。空爆で個人を見つけることはできない。
 地上部隊が侵攻を始めるまえにもっと恐るべき事態になる。米兵にとってバグダッドは恐怖の都市になるだろう。本格的な市街戦は避けがたい。あらゆる建物に、あらゆる場所にイラク兵は陣取り米兵にたいしょするだろう。そして、米兵にとってまわりの人々が全部敵、政府軍や共和国親衛隊に見えるだろう。巨富にすくみ上がった米兵がやることは、ベトナムで繰り返されたあの、見境なしの皆殺しになるに違いない。イスラエル兵がジェニン難民キャンプでやったことを、今度は恐るべき規模で米軍がバグダッドに再現するだろう。
 こんな残忍な戦闘になることを知っていてやろうとしている。

(b−4)劣化ウラン弾
 劣化ウラン弾の撃ちまくり。湾岸戦争では砂漠の中の装甲車両を目標に900万発、350トンも打ちまくった。米軍は、今度は都市部で撃ちまくろうとしている。人工密集地に放射能兵器である劣化ウラン弾を打ち込み、劣化ウランの粉末、大量の放射性物質をばらまくつもり。湾岸戦争やコソボであれだけ自軍にも被害者を出しながら、イラクの南部やコソボ、旧ユーゴの住民の中で癌や白血病患者が急増していることを知りながら、アフガンでも気にも留めずにすきなだけ使い、平気な顔でもう一度イラクで放射能兵器を使おうとしている。許し難いというほかない。劣化ウラン弾使用は今後数十年に渡ってイラクの人々に巨大な被害を与える犯罪である。
 それだけではない。核兵器そのものを使う可能性さえある。化学兵器、生物兵器の生産工場があれば、「被害が広がらない」ため核兵器で焼き尽くすことを考えている。生物・兵器を貯蔵していると称して核攻撃する危険もあるのだ。

(b−5)新兵器/非人道兵器の実験場
 非人道兵器の使用、実験は戦争ごとにエスカレートしている。
 湾岸戦争で投下したデージーカッターは2発。アフガンではタリバン兵に使いまくった。 今度はイラク兵の頭の上に、都市部住民の上に使いまくる可能性がある。
 「精密兵器?」。非人道兵器の別名。衛星誘導爆弾JDAM−自分は何の被害も受けずに相手を攻撃する。これほど味方に人道的で敵に非人道的な兵器があるか。
 アメリカは今度の戦争で新兵器を次々投入しようと手ぐすね引いている。実戦でテストする絶好の機会をねらっている。高周波爆弾e-bomb(電子レンジで焼き殺す、電子機器を破壊する)、命中精度数mで都市部で使い放題の新JDAM、レーダーにも映らないステルス新巡航ミサイル。等々


(c)「経済制裁」は湾岸戦争をはるかに上回る被害をイラク人民にあたえた。すでに12年続いている戦争を即刻やめるべきだ。
(c−1)経済制裁は引き延ばされた戦争である。12年に及ぶ制裁の犠牲者は100万から150万人と言われる。アメリカと国連は、制裁によってイラクの人々、特に子どもに湾岸戦争での直接被害を数倍上回るとんでもない犠牲を強いてきた。栄養失調、薬や病院の不足、劣化ウラン弾の影響などで5歳までに8人に一人の子どもが死んでいる。年間数万人の子供が殺され続けているのである。ユニセフの調査でも乳児死亡率、幼児死亡率が2−数倍に跳ね上がって危機的状況にあることを認めている。これがアメリカが押しつけた制裁の結果である。

(c−2)アメリカは湾岸戦争で95万発、350トンにも及ぶ劣化ウラン弾を使いまくり、放射性物質であるウランをまき散らした。核爆発こそなかったが、新しい核戦争を行ったのだ。その結果、劣化ウランがまき散らされたイラクの南部で、白血病、肺ガンなど放射性起因のガンが急増している。そして経済制裁の元で治療薬も無いまま、主として子ども達が放射能による病気で殺されている。まき散らされた放射能の影響は今後何十年にもわたって続くと考えられる。われわれはこの新種の核戦争の罪を許すことができないし、同じことを繰り返すことを絶対に許してはならない。

(c−3)イラクは世界有数の産油国であり、工業化も進んだ段階にあった。アメリカは湾岸戦争によって石油施設、交通網、経済基盤をがたがたに破壊した。以後12年間、制裁によって経済の再生、復興を許さず、失業者をあふれさせ、人々の状態を数十年前の状態に追いやったままにしてきたのである。今でも、国連はイラクの石油輸出の代金の半分以上を賠償、クルド自治費用、国連費用の名目で吸い上げ、当のイラクには産油施設の修理程度しか許さない。工業再建はおろか、子ども達へのミルクや薬、食料品さえまともに輸入させていないのだ。
 われわれは、湾岸戦争の責任だけでなく、それに数倍する制裁戦争の被害を明らかにし、その責任を追及しなければならない。


(d)戦争の歯車は始まったら止めることはできない。大量の犠牲が出るまえに、何としても止めること。



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