アメリカのアフガン戦争を巡る情勢についての報告 2001年12月9日 報告 吉田正弘(平和通信) |
はじめに−−戦後初の「戦時下」での自衛隊の海外派兵。
今年は歴史的な節目の年。太平洋戦争開戦から60年、満州事変勃発から70年。本来、韓国・朝鮮、中国、アジア全域の犠牲者の方々と民衆に対して、侵略戦争と植民地支配を反省し二度と再び侵略と海外派兵を行わないという不戦と反戦の決意を新たにすべき年。
しかし小泉政権は、戦後初めて、ついに軍隊を「戦時下」に海外派兵し、侵略戦争に参戦。決して忘却してはならないこの歴史的な教訓に挑戦するもの。今夏の靖国神社公式参拝に続く暴挙。「平和憲法」の真っ向からの蹂躙であり、断じて許せない行為。
私たちは、このような戦後日本軍国主義の転換点の年、戦前・戦中の「15年戦争」の時以来の歴史的にも決して忘れてはならない年に署名運動を行い微力ながら奮闘した。
署名運動を一緒に闘った皆さんと共に集会を持ち、アメリカのアフガンへの侵略戦争に反対し、日本の参戦に反対する運動を、今後如何にして強化し継続していくのかを議論したい。
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[1]アフガニスタンの最新の戦況と署名運動が直面する情宣活動の諸課題。
(1)タリバン崩壊、カンダハルの権力委譲と今後の動き。即刻の戦争停止と米軍の撤退を要求する。
@ タリバン崩壊とカンダハルの権力委譲。戦争の最後の局面の始まり。
・タリバンの投降、逃亡とカンダハルのカルザイ(パシュトゥーン)への権力委譲
・恐らくタリバンの組織的崩壊、終焉。オマル師の「保護」
・パシュトゥーン内部での確執。ナギブラの仲介とカルザイ、シャラザイの確執とカンダハル争奪戦。
A トラボラ包囲と集中攻撃。ビンラディンとアル・カイーダ追跡。
・米海兵隊、特殊部隊の直接介入。最後の組織的抵抗。しかしビンラディンがいる確証はない。
・地元の武装グループを買収しての包囲。
・徹底的な空爆による破壊、虐殺、殲滅。
B 米海兵隊と特殊部隊の常駐化。
(2)アメリカ軍による戦争犯罪の全貌を明らかにすること。無法・不法なアフガン侵略で主権国家アフガニスタンを崩壊させた責任は重大。
@ 広がる群雄割拠と無政府状態。
A マザリシャリフの虐殺。捕虜皆殺しと米英の戦争犯罪。
B 非人道兵器の多用と無差別大量殺戮。新兵器の実験場としての利用。
C 飢餓と凍死、難民の危機はまだ去っていない。それどころか悪化さえしている。
D 結末としての特別軍事法廷。証拠も審理もなしの「暗黒裁判」。「犯人」は闇から闇へ。
(3)米のアフガン軍事作戦はうまくいったかのように見えるが誤算続き。米英と北部同盟と反タリバン・パシュトゥン勢力がそれぞれ別々の利害・思惑で動いている。
・「暫定政権」=傀儡政権のぎくしゃく、ガラス細工。国連主導というが米が主導しこれにEU、ロシア、パキスタン、イランの思惑が絡んでいる。合意はできる端から崩れて行く。
・「合意」後直ちに受入拒否の動き。北部同盟内部でのドスタム将軍派(ウズベク人)、続いてイランに近いイスマイル・カーン司令官派の受入拒否。ラバニ派(タジク)と他軍閥の間での大臣ポストと勢力分野を巡る紛争の公然化。ラバニ派で会議に出席したパシュトゥーンのカディールの会議離脱。
・最大の誤算は、ローマでのザヒル・シャー主導の暫定政権決定以前に北部同盟がカブールに侵攻。北部同盟が政権構想で主導権を握りつつあること。米=ザヒル・シャーの主導権が大きく後退。ハク氏がタリバンに処刑され、パシュトゥン族糾合に失敗。これに乗じて北部同盟がカブールを制圧、巻き返しに出た。軍事力を持つ北部同盟が現地の軍事支配の既成事実化で支配力を拡大しているが、米の後ろ盾でザヒル・シャー側が対抗している。こうした複雑な力関係が、現在の「暫定政権」の矛盾・対立として残っている。
・南部カンダハルを巡ってはカルザイによるタリバン降伏の演出。親タリバンのナギブラによる仲介。両者によるカンダハル支配の追求。背後にはパキスタンの後押し。グルガ・シャラザイ(元カンダハル知事)との武力衝突。タリバン後を誰が支配するかを巡るパシュトゥーン内の対立激化。
(4)米は自らが進んで介入したアフガン戦争の泥沼から抜け出せなくなっている。
・抜け出せば北部同盟による内戦の危機の再発。それによる米への国際的な非難、「テロ国際包囲網」の瓦解。抜け出せなければますます深みへズルズル入り込んでいく。
→この不安定で複雑な力関係が、アフガン周辺諸国への米の軍事プレゼンスの維持強化、米軍の常駐体制構築への衝動の一因になっている。
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[2]イスラエルの侵略行為が新段階へ。パレスチナ自治政府を「軍事攻撃目標」と一方的に決定し、大規模な空爆と破壊を行った。イスラエル−パレスチナ間の矛盾の爆発と中東情勢の極度の不安定化。
@ ブッシュ米大統領は、シャロン政権のこの決定を即刻支持した。改めてアメリカ=イスラエルの軍事的政治的経済的な結合関係を証明するもの。シャロン政権の軍事的侵略的エスカレーションの背景には、ブッシュ政権の対アフガン侵略があり、中東全域への戦線拡大、戦争挑発がある。9.11事件以降、シャロン政権は、ブッシュ政権の「テロとの戦い」を利用して、暫定自治区へ頻繁に攻撃を繰り返してきた。
A ハマスの自爆テロは結果であって原因ではない。根本的原因は1948年のシオニスト右翼によるパレスチナ人の土地強奪、1967年のヨルダン川西岸・ガザ地区の土地強奪にあり、「中東和平」=「オスロ合意」下でなし崩し的に進行した入植地=占領地拡大、イスラエルへのパレスチナ経済の政治的経済的従属、名ばかりの「暫定自治」、軍事的封じ込め−−一言すれば「イスラエル=アパルトヘイト体制」にある。
B 西側マス・メディアの報道と論評は本末転倒。「ハマスの自爆テロが根本原因」「アラファトが容認しているから中東和平が進まない」「イスラエルは譲歩を重ねてこれ以上譲歩できないところまで善処してきた」「忍耐してきたのはイスラエルの側」等々。私たちはこうした西側マス・メディアのデマとウソを見抜かねばならない。
C 「暴力の連鎖」を断ち切るには、何よりもまず最初にイスラエルが、入植地を解体し、軍事的政治的経済的な封じ込めをやめ、占領を止め、「イスラエル=アパルトヘイト体制」を解体するのでなければ一歩も前進しない。
1948年、1967年などに限らず、国際法を真っ向から蹂躙して暴力と蛮行を重ね、度々国連決議を無視し問題解決の道を閉ざしてきたのはイスラエルの側だから。
D 「暴力の連鎖」を断ち切るには、アメリカがイスラエル支持をやめること。アメリカ自身が、過去の犯罪的な中東支配と中東政策を自己批判し改めることから始めなければならない。なぜなら中東の石油支配のために、イスラエルを軍事的政治的経済的に全面的に支持し先兵に使ってきたのだから。
E 米の同時多発テロの最大の原因の一つにもこのパレスチナ問題がある。アメリカの中東政策、中東への侵略と支配の歴史そのものにある。
中東全体が戦禍に見舞われようとしている。アフガンは米の無差別空爆で殺戮と破壊の限りをつくし、ブッシュは調子に乗ってイラクやソマリアへ戦争の拡大を画策、そしてついに今度はイスラエル占領地域にイスラエルが宣戦布告。中東、南アジア、インド洋、アラビア海一帯に一連の戦争状態を作り出している。
中東全体を戦渦に巻き込もうとしているのはアメリカ。アメリカは即刻アフガンへの侵略戦争を中止し、空母機動部隊と地上軍を含む全ての軍隊をアフガンから撤退せよ。更に中東全域に展開し駐留している軍隊を撤退させよ。
[3]アフガン侵略からイラク等へのなし崩し的な戦線拡大。中東・湾岸全域、南アジア全域、北東アフリカへ戦禍を拡大。東アジアへ・朝鮮半島にも緊張を持ち込む。
(1)アフガンと周辺諸国、中央アジア、南アジア全域での米軍の常駐体制。事が起これば即刻緊急展開部隊を投入する介入体制の確立・維持。−−石油・天然ガス資源に対する直接的価格的支配の維持強化。
(2)イラクへの新たな「国際査察」要求とフセイン政権打倒を視野に入れた戦線拡大、戦争挑発。
(3)ソマリア沖への艦隊派遣と威嚇、イエメン、スーダンなどへの戦線拡大、戦争挑発。
(4)北朝鮮への新たな「国際査察」要求と封じ込め政策の再強化。
[4]「戦争目的」の無制限とファジーを特徴とする「ブッシュ・ドクトリン」の発動−−中東・南アジア・北東アフリカ全域への戦争拡大=米軍常駐体制+北朝鮮・東アジアへの戦争挑発+MD(ミサイル防衛)・ABM条約破棄。歯止めが外れた侵略国家アメリカの戦争拡大と軍備拡張。
(1)11/26ブッシュ発言。「親米か反米か」の二者択一を迫る「ブッシュ・ドクトリン」。
・攻撃対象を大幅拡大。「テロリストをかくまう政権は同罪」(9月のブッシュドクトリン)からさらに「大量破壊兵器を使おうとしている国」へ。
・裁決を下すのはアメリカ。その一方的で恣意的な「仮想敵」の設定。大量破壊兵器を使おうとしていると判断すれば先制攻撃。アメリカが決めつけただけでどこでも攻撃できる。
・「テロリストの側につくのか、アメリカの側につくのか」、「テロとの戦い」とは詰まるところ「反米か親米か」、「米について加担するか、敵に回るか」。他の国に対して2者選択を強要する。
(2)CSISのキャンベル・レポート。
・国際戦略研究所(CSIS)ではブッシュ発言の日に、それを全面的に擁護し、理論化する報告書を提起。11/26発言は単にブッシュ個人の発言でなく、アメリカの軍事戦略になっていることを示している。
(3)12/3ミサイル発射実験強行。MDも推進する姿勢の誇示。
・前のQDR(4年毎戦略見直し)からの転換。10/1の新QDRではテロ対策とミサイル防衛MDを柱とする「米本土防衛」を戦略の柱にするとなっていた。
・9/11まではMDが前面にでていた。
・9/11で対テロ国際戦線に協力させ、奉仕させる戦略が成功し、ますます前に出てくる。しかし、まだ両方を追求している。ロシア、中国との関係を悪化させ、対テロでの協力に影響しかねないのにMD実験を強行。一国主義的やり方の強行は変わっていない。
[5] 米の戦争拡大・戦争挑発、イスラエル大規模攻撃の下で岐路に立つ米主導の「国際テロ包囲網」=「国際翼賛体制」。
(1)イスラエルのパレスチナ自治政府に対する大規模攻撃が、米=イスラエル=中東親米諸国のトライアングルによる中東=石油支配そのものを根底から揺さぶり始めた。
・米国は中東政策では完全に手詰まり。イスラエルが攻撃すればするほど中東の不安定性は増大する。更なる反発は不可避。
(2)イラクなどへの戦争拡大と戦争挑発が「国際テロ包囲網」を軋ませ、亀裂と分裂を持ち込み始めている。
・一方で、米の「テロとの戦い」への英とEU諸国、日本、ロシア、中国などの全面支持と協力=「国際翼賛体制」自体が、アメリカの戦争のエスカレーションを増幅・助長。同時にその不可避的な結果として他方で、アメリカの戦争拡大と戦争挑発が「国際テロ包囲網」を動揺させ始めている。
(3)中東の親米諸国、湾岸の王政諸国の動揺と政治的経済的危機−−「サウジアラビアは大丈夫か」。
(4)西側先進諸国が「テロとの戦い」を政権維持・延命のために利用する仕方もそろそろ限界に直面している。
グローバル・リセッションの下で、英とEU、日本など西側先進諸国が、経済政策の行き詰まりと内政の失敗を封じ込め、国内矛盾を対外矛盾に転化するために「テロとの戦い」を政治的に利用している。しかし徐々に英とEU諸国の国内から反発と不満が渦巻き始めている。福祉、医療を犠牲にしての戦争の推進に批判の声が出始めている。
(5)全世界の反戦平和運動−−国別・地域別に不均等だがタリバン政権崩壊後も継続的に闘われている。
・欧州では大規模な行動が続いている。
・アメリカでは小規模なティーチイン、セミナー、小行動が各地で数多く行われている。
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[6] ブッシュ政権の特殊な侵略欲。文字通り歯止めなき侵略=軍拡マシーンと化したアメリカ。対外侵略と国内弾圧体制の同時的強化とその諸矛盾。
(1)特別軍事法廷。過去に例がない「秘密裁判」。正当な司法手続きを無視したやり方。「司法の死」。
(2)特殊な「戦時動員体制」。国家保安省の創設、CIA・FBIを頂点にした新たな「警察国家」体制の確立−−対外侵略と国内弾圧体制の同時強化。
@ 「テロ対策法」。FBIによる盗聴の合法化、資金洗浄の監視強化。
A 微罪逮捕・別件逮捕の乱用、1200人の不当逮捕、不当拘禁、拷問とリンチ。
B 細菌テロ・化学テロなどで人民大衆を脅し不安感を煽ることで、ブッシュ政権への政治的イデオロギー的な統合を追求。一切の市民的諸権利を剥奪、反対者と反戦平和運動に対する弾圧・抑圧を強化する。
C アラブ系アメリカ人とイスラム教徒に対して、中南米からの移民に対して、有色人種一般に対して、人種差別と人種的迫害を異常に増大させている。星条旗の異常な蔓延、「愛国心」の押し付け、反対者の政治的迫害と地域か・学校・職場らの追放。民族排外主義的イデオロギーの席巻。
(3)「小さな政府」の棚上げと「大きな政府」−−超金融緩和政策の持続的強化と財政赤字政策への政策転換。アメリカの循環的構造的危機の激化・深刻化、その長期化の見通し。
(4)戦費急増と軍拡予算の下での医療・社会保障関連予算の削減。レイオフ急増・雇用不安と賃下げ。自粛ムードと米国人民大衆の意識状態。
(5)ブッシュ大統領を支える政権中枢を独占する特異で好戦的な人脈、露骨な軍産複合体、エネルギー産業の代表からなる政権。クリントン政権時代の金融資本、IT産業資本に代わって軍産複合体、石油・エネルギー独占体に莫大な利潤をもたらす。−−侵略戦争と軍拡そのものが巨大ビジネス。
(6)アメリカ国内の反戦平和運動の次の新たな戦術の模索。
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[7]9.11米同時多発テロ事件以降の東アジア・朝鮮半島情勢と日本軍国主義の新段階。
(1)小泉政権の下での戦後初の「戦時下海外派兵・参戦体制」の新たな確立。−−「PKO法改悪」「テロ対策特措法」「自衛隊法改悪」。
@ PKO法改悪の強行。
−−改悪PKO法が12/7参院本会議で与党3党と民主党の賛成で可決・成立した。公然と武力行使を行う国連平和維持軍(PKF)本体業務への自衛隊の参加凍結を解除するもの。元々参加凍結条件が付されたのは憲法が禁止する武力行使を避けるためで、凍結解除とは要するに武力行使の解禁ということ。@停戦、武装解除の監視、A緩衝地帯の駐留、巡回、B武器搬入・搬出の検査、C放棄された武器の収集・処分等。建設、輸送、被災民支援などに限られていた従来の自衛隊の活動範囲は一気に拡大する。
−−同時に、武器で防護する対象に、「テロ対策特措法」と同様「自己の管理の下に入った者」を追加すると同時に、現行では除外されている自衛隊法95条(武器等防護のための武器使用)の適用も解除し、武器使用要件を大幅に緩和する。
A 「テロ対策特措法」の発動。
−−12/2からインド洋北部のアラビア海で海上自衛隊補給艦による米艦船への燃料の給油活動を開始。まさしく艦載機・巡航ミサイルを発射する戦場での給油であり、武力行使そのもの。
−−更には12/3からC130輸送機(航空自衛隊小牧基地所属)で在日米軍基地からグアム島の米軍基地への輸送業務を開始した。物資量や使用した在日米軍基地など詳細は機密扱い。(米軍横田基地→嘉手納基地→グアム)
−−12/4には航空自衛隊のC130輸送機1機で、在日米軍基地から米グアム島方面へ米兵を輸送する活動も開始した。
B 改悪自衛隊法の発動訓練。
−−自衛隊が在日米軍警備を行う「警護出動」を想定し、陸上自衛隊は12/6、米軍・座間基地と相模総合補給廠で、米陸軍と共同訓練を始めた。14日まで9日間の予定。相互の警備区域の調整・連携等の訓練を行う予定。
C 自衛隊の軍事行動への米の要求の強まり。
・アフガンのNGO護衛、地雷撤去、難民支援等々。
・東チモールへのPKF/PKO出動。
・「親米か反米か」の大合唱の元で、小泉を先頭にどんどん引きずって行かれている。自分から海外派兵と侵略戦争への道を進んでいる。
(2)ブッシュ政権の北朝鮮への戦争挑発は、「南北対話」を妨害し、朝鮮半島・東アジアの平和と安定を根底から掘り崩す。朝鮮半島の再緊張は、日本軍国主義を一段と勢いづかせ、参戦体制をエスカレートさせる。
@ 小泉政権は「テロ特措法」でなぜ米のイラク攻撃に参戦できるのか、法的根拠を明らかにすべき。
アメリカの軍事的暴走を歯止めなしにしている「国際翼賛体制」の一角がいつ、どこから崩れるのか。これがアメリカの侵略のエスカレーションを阻止する「突破口」になるかも知れない。イラク攻撃が、ブッシュ大統領の思うように出来るのか否か。それがその試金石になりつつある。私たちは、何とかして自国の小泉政権を揺さぶって、我が国の足元から「翼賛体制」を切り崩さねばならない。
しかし福田官房長官はどの国にも先駆けて、11月29日、米がイラクなどアフガニスタン以外の国を攻撃した場合の対応に関し、「テロ対策特別措置法によるテロの脅威除去のために実施する措置の対象国は特段の限定をしていない。イラクも入っている」と述べ、自衛隊による対米軍支援を続行すると発言した。杉浦外務副大臣も「テロ対策特措法に基づいて支援する米英軍の攻撃対象はアフガンに限っていない。イラクも除外されていない」と明言した。
だが「テロ特措法」の文言のどこに「イラク攻撃への参戦が可能」と書いてあるのか。福田官房長官も、杉浦外務副大臣も明らかにすべき。同法の「目的」第一条は、「平成十三年九月十一日に米国において発生したテロリストによる攻撃」を特定しているはず。あるいは「国連の総会、安全保障理事会もしくは経済社会理事会が行う決議または国連、国連の総会によって設立された機関もしくは国連の専門機関もしくは国際移住機関が行う要請」が要件であるはず。ブッシュ大統領が発言したイラク攻撃はそのどちらの要件も満たしていない。
A 朝鮮半島で緊張が再激化すれば、韓国の野党と右翼勢力だけではなく、我が国の軍国主義勢力、右翼勢力が勢いづく。
「テロ特措法」に基づく自衛隊の海外派兵が実施に移されたばかりだが、今度は「周辺事態法」の発動準備、有事立法の制定を仕掛けてくる。小泉首相は経済政策、「構造改革」で完全に行き詰まっており、「テロ特措法」の時のように、再び朝鮮半島への戦争動員問題が浮上すれば、好戦的な言辞を連発して調子に乗るはず。我が国周辺における戦争挑発と戦争準備に全面的に加担していくだろう。
B 11月29日、小泉政権の危険な火遊びがもう一つ動き始めた。北朝鮮の資金源を断つ挑発策動。
破たんした在日朝鮮人系金融機関「朝銀東京信用組合」を舞台にしたいわゆる「資金流用」事件で、警視庁が朝鮮総連中央本部をはじめ、関連施設3か所を業務上横領容疑で捜索した。朝鮮総連中央本部に捜索が入ったのは初めて。全世界でブッシュ政権が押しつけている「テロ資金の補足と差し押さえ」に沿った動きであることは明らか。11月26日のブッシュ演説とぴったり符合。私たちは、小泉政権がブッシュ政権に追随し北朝鮮敵視政策、封じ込め政策の先兵になることに反対しなければならない。
事が今後どう展開するか。全てはブッシュ政権の北朝鮮政策、これに反対する世論と運動の力にかかっている。
(3)来春の通常国会で有事法制の整備に着手。
自民党の山崎幹事長は12/5、「自衛隊の国際貢献を進める法整備は進んでいるが、国内の緊急事態に対応する法律がないのは本末転倒だ」と主張、次期通常国会での法整備を明言した。小泉首相も7日、早期の立法化の線で発言した。
(4)ブッシュ政権の対アフガン戦争、北朝鮮への戦争挑発の下での在韓−在沖縄−在日米軍基地のトライアングルの基本線と近代化=「スクラップ・アンド・ビルド」。
@ アメリカの対日軍事政策の基本は日本を集団自衛権に踏み込ませること。それは3つの柱からなっている。
−−世界中の米の軍事行動に自衛隊を、まずは支援部隊として直接協力させること。
−−グローバルな米軍の戦争体制を支える兵站の要として基地を提供させ続けること。
−−朝鮮半島有事を想定し、その際に在日・在韓米軍を全面的に支援させること。
今回のアフガン戦争でもそれぞれに分野でアメリカの対日要求に応じる形で協力が進んでいる。要するにアメリカの対アジア戦略、世界戦略全体への組み込みと利用。
A ブッシュ政権と米軍当局は、在沖縄・在日米軍基地の米戦力全体を対アフガン戦争に振り向けてはいない。在沖のグリーンベレーやキティホークなど空母機動部隊の一部のみ。東アジアでの大幅な兵力減を避けた。
B 在沖縄・在日米軍基地の兵力の主たる任務は北朝鮮に向けたものであることを改めて証明。現に11/26ブッシュ発言はイラクと並んで「国際査察」を受け入れるよう恫喝、北朝鮮に対して戦争挑発を行っている。
C 米軍は東アジア戦力の再編強化に動き始めた。在韓米軍基地−在沖縄米軍基地−在日「本土」米軍基地のトータルな近代化、スクラップ・アンド・ビルド、再編強化。その下での普天間基地県内移設=「海兵隊新航空基地」の新規建設。岩国基地の滑走路新設と港湾機能強化。
D 来春、海自20カ国と演習。海自が米、韓、ロシアなど約20カ国の海軍に参加を呼びかけ、長崎沖で多国間演習「西太平洋潜水艦救難訓練」を実施する計画を進めている。多国間演習を日本近海で行うのは初めて。開催国として海自が主導し(もちろん米軍の指導の下だと思いますが)多国籍軍を構成する可能性が高い。集団自衛権の行使にあたる。来年4月下旬から5月中旬実施。北朝鮮への示威行動、挑発。在沖米軍、佐世保、岩国などがフル動員される。場合によっては、九州北部の民間空港、民間港湾が利用される可能性もある。
E 新QDRでのアジア重視。2大紛争対応戦略放棄、在欧州米軍1.5万人削減と対照的なアジアでの兵力維持。アジアでの米軍基地の密度の薄さが問題にされている。米軍の活動のインド洋への拡張が取り上げられている。
Eグローバルな戦略兵站基地としての日本のポジションは今回益々重要に。在日米軍基地が支えただけではない。自衛隊が人員と物資運搬に加わった。在日米軍基地と自衛隊基地の相互運用体制の一体化・強化。
[8]我が国反戦平和運動の当面する諸課題
(1)アメリカの侵略戦争と戦争犯罪を断罪する。
@ 米に対アフガン侵略戦争を直ちに中止させること。アフガンとその周辺地域から全兵力を即刻撤兵させること。
A 米によるアフガン侵略戦争の実態を調査し、戦争犯罪を徹底的に追及すること。
B アメリカがイラク等へ戦線拡大することに反対し、中東全域を戦火に巻き込む侵略のエスカレーションを阻止すること。
C イスラエルの暴挙を糾弾し、アメリカのイスラエル支持・支援を非難すること。インティファーダ断固支持。パレスチナ人民連帯。
(2)小泉政権による海外派兵と侵略戦争への参戦体制作りに反対する。日本軍国主義の新しいエスカレーションと闘おう。
@ 日本が海外派兵した自衛隊の全兵力を引き揚げるまで批判と反対運動を継続すること。
A 有事立法制定反対。PKO法五条件解除反対。
B 沖縄・海兵隊新航空基地建設反対。代替協開催反対。岸本市長は代替協に出席するな。
C 「南北対話」、朝鮮半島の安定と平和が、アジアの平和と安定の大前提。ブッシュ政権・小泉政権による「南北対話」の妨害・戦争挑発に反対する−−反米・反ブッシュ、反小泉を掲げ「本土」の運動と沖縄の反基地闘争の連帯、更には日韓の反基地・反戦平和運動の連帯を追求する。
D 小泉政権による憲法無視、憲法否定を弾劾し、憲法第九条遵守を要求する。
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