「9・11」「10・7」1周年を迎えて−−
世界各地でイラク攻撃反対の大衆行動

1.政府の警察国家体制と異常な愛国主義支配の中で全米各地で風穴を開けようと果敢に挑むアメリカの多種多様な反戦運動。


(写真:http://www.zoz.org/shrub/index.htmより)
 アメリカでは、部分的局地的にあるいは全体としても徐々に風向きが変わりつつある。まだまだ水面下の変化にとどまっているかもしれないが、イラク攻撃支持が50%そこそこまで下落したことは大きな変化である。少し前までは70%前後もあった。もっともっと闘いを進めれば、更に落ち込む可能性がある。1ヶ月前までと比べて大きな変化だ。
    「イラクへの地上軍派兵、反対が倍増 米で世論調査」(朝日)

 インターネットを見る限りでだが、さまざまな反対の意思表明や大衆行動が提起されている。分かった範囲内で以下に紹介しよう。愛国心の異常な支配とブッシュの国内弾圧態勢強化の中で、真正面からぶつかり何とか、好戦的風潮・侵略的雰囲気に風穴をあけようとしていることが読みとれる。

 10/6−7には、「We Declare: Not in Our Name! Call for Actions of Protest and Resistance」というスローガンで、ニューヨーク、クリーブランド、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトルなどで大衆行動が計画されている。彼らは9/11〜10/7を行動月間として位置づけている。その呼びかけで彼らは言う。We must all of us, together, dare to change the coures of history(我々は皆一緒に、歴史の進路を勇気を持って変えなければならない)。
    http://www.notinourname.net/oct_6_national.html

 いつもリベラルな情報を提供しているCommon Dream NEWS CENTERに、「ATTACK IRAQ? NO!」というスローガンがHPの右上に貼り付けられている。そこをクリックすると、このスローガンのステッカーを購入して欲しいということ、そして地方紙にイラク攻撃反対で「一緒に立ち上がろう、ノーと言おう」などの投書を出そうという呼びかけが行われている。
    http://www.commondreams.org/

 またZnetでは、「良心の声明 われわれの名でやるな」(A STATEMENT OF CONSCIENCE Not In Our Name)という呼びかけが掲載され、すでにこの呼びかけに2000人以上の署名が寄せられている。
    http://www.lbbs.org/nion.htm

 United for Peaceという反戦平和・非暴力の統一戦線組織がある。Grobal ExchangeというNGOが中心である。このグループが呼びかけて、7カ国、160のイベントが計画されている。アメリカ国内では、9/11サンフランシスコやニューヨークで平和集会、9/6−14にはワシントンで、9/9&9/11にロサンゼルスで、その他、ニューオリンズ、ハートフォード、フィラデルフィアなどでも反戦平和行動が計画されている。
    http://www.unitedforpeace.org/

 更に、われわれが注目してきたInternational A.N.S.W.E.Rが、9/14−17には緊急行動として、10/26には大規模な大衆行動として国際的な行動を提起している。いずれもメインテーマは「STOP THE WAR ON IRAQ BEFORE IT STARTS!」。
    http://www.internationalanswer.org/

        
(写真:http://www.zoz.org/shrub/index.htmより)


2.「ポートランドの闘い」−−反戦運動、労働運動、環境保護運動が連合して新たな発展を示すアメリカの反対運動。

 米西岸を中心にして、反戦運動と労働運動、環境保護運動が結合してブッシュ政権に反対する新たな運動の発展を示している。「ワーカーズ・ワールド」は、この新しい運動を事実上の「シアトルの闘いU」、「ポートランドの闘い」と評して注目している。
    ("Protests dog Bush Anti-war, labor, environmentalists unite to resist")

 夏期休暇で米西岸を訪れたブッシュを各地で反対運動が迎えた。8月22日、オレゴン州ポートランドを訪れたブッシュ大統領を、「爆弾ではなくブッシュを落とせ」を合言葉に集まった数千人のデモが迎えた。警官隊が催涙ガスなどで阻止し、5人が逮捕された。24日には、ブッシュの自宅のあるテキサス州クロフォードで市民約300人が「反ブッシュ集会」を開いた。カリフォルニアのストックトンでは、労働組合と環境保護運動が結合して「イラクとILWUから手を引け!」をスローガンにして反対運動が行われた。
    「米国:市民ら約300人が「反ブッシュ集会」イラク攻撃を批判」(毎日)
    (ポートランドの反戦集会の写真が次のHPにあります:http://www.zoz.org/shrub/index.htm

 米西岸の港湾労働者の組合であるILWU(International Longshore and Warehouse Union)は、3年ごとの協約改定交渉にあたり賃金引き下げと健康福祉の削減など強硬姿勢を示す使用者であるPMA(太平洋海事協会)との紛争で、ストまたは怠業を組織しようとしている。これに対しラムズフェルドは、「国家の安全に対する脅威」として、軍隊の投入も辞さないと恐喝している。ブッシュ政権は、「テロとの戦争」を口実にして、労働運動の民主的な基本的権利を剥奪しようとしているのだ。ILWUは、昨年秋以来アフガン戦争に反対するなど、ブッシュの戦争にいち早く反対してきた組合でもある。これに連帯し、AFL−CIOサンフランシスコ労働評議会も抗議の決議を上げ、9月から10月にかけて全米各地で行われる反戦行動に「イラクへの新たな戦争にNO。政府に港湾に手出しをさせるな」をスローガンに参加するとしている。新しい反ブッシュ運動の重要な要素になっている。
    "No New War Against Iraq -- Keep the Government Off the Docks !"
    "Bush threatens to use troops against West Coast dockworkers"

3.唯一イラク攻撃加担を表明するブレアの膝元で急速に高揚するイラク攻撃反対の運動と世論。イラク攻撃の共同作戦からのイギリスの離脱はブッシュにとって致命的打撃。

 ブッシュとともにイラク攻撃を主張してはばからないブレアのおひざもとイギリス、米とともにイラク空爆を行っているイギリスがイラク攻撃参加するかどうかは決定的な問題だ。イギリス国内の世論と運動は対イラク戦争の阻止にとって決定的に重要なことである。

 イギリスで反戦平和の大衆的統一戦線組織Stop the War CoalitionがDON'T ATTACK IRAQ及びFREEDOM FOR PALESTINE、STOP BUSH AND BLAIE'S WARを掲げて、9/28に10万人大行動を計画している。9/5にはPerformance for Peaceというピース・ライブをやるようだ。9/28は労働党大会の時期に合わせて設定されたもので、ブレアの労働党に大衆的圧力をかけようとするものだ。
    http://www.stopwar.org.uk/

 9月はじめの英労働組合会議(TUC)の年次総会で左派系労組が反戦決議案を提起し可決されることが確実視されている。これら一連の活性化の背景には、イラク参戦反対の英国内世論の急激な盛り上がりがある。

 イギリスでの世論の反対の高まりと、大衆行動の高まりは非常に重要である。なぜならブッシュ政権は、他の同盟国の参加と支持を得られなくても、米は英とだけでも2国だけで攻撃すると再三言明しているからである。そのイギリスが参戦困難になるとなれば、大きなブレーキになるはずだ。

 Stop the War CoalitionのHPをぜひ見て欲しい。つい最近までは質素な1ページもの、真ん中に古い行動の写真があり、寂しい感じの体裁だったのだが、一新されたものを見て驚き驚き。活気に満ちたカラフルでバラエティに富んだ画面作りだ。行動提起やリーフレットやさまざまなボタンが配置されている。大衆行動の活発化をストレートに反映したものになっているのではないか。今年の原水禁国際会議に行った仲間によれば、8月初めの国際会議に出席したイギリスの平和活動家はあまり元気がなかったという。やはりイラク攻撃をめぐる内外情勢が8月中旬を境に一変したことが、ここでも示されていると思う。

 またこのHPに重要な集会提起がある。それは11/7−10に開かれる「ヨーロッパ社会フォーラム」である。Stop the War Coalitionもこれをサポートすると宣伝している。「世界社会フォーラム」とは毎年春頃にブラジルのポルト・アレグレで開かれる反グローバリズム大行動のこと。これの「ヨーロッパ版」をやるというのだ。新しい前進ではないか。先進国サミットは、先のカナナキスでは、山奥での開催により、反対運動を封じ込めるまでに立ち至った。また弾圧が激しくなり、その結果自由な大衆行動の形式が取れなくなってきていた。それでもネオ・リベラリズム、IMF・世銀の民営化・市場原理主義政策の押し付けに対する反対の気運は高まるばかり。ヨーロッパでもブラジルに学び新しい行動方針で次の突破口を切り開こうとしているのかもしれない。

(写真:http://www.stopwar.org.uk/より)



4.「参戦反対表明」で総選挙を乗り切ろうとするシュレーダー政権に追撃し、「反対」の具体化、実質化を迫るドイツの反戦運動。

 ドイツでもまたイラク攻撃反対の世論と気運が盛り上がっている。シュレーダー首相が選挙戦の争点に据えて「イラク参戦反対」を表明したその下で、「口先」ではなく、「反対」の実質化、具体化を迫る闘いが組織されている。

 9/22のドイツ総選挙に向けて、ドイツ国内の反戦平和運動がキャンペーンを強めている。これがシュレーダー首相の方針転換を余儀なくさせたのだ。ごく最近では、この運動や世論を受けて、SPDに対抗する保守陣営までもが、方針転換をしてイラク攻撃慎重論を打ち出すまでになった。

 首相は今年3月に米のイラク攻撃を支持し参戦を非公式に確約していた。実はこの時シュレーダーが付けた条件が、第1に「総選挙後」、第2に「国連の委任」の下でということだったのだ。このことを8月はじめに選挙戦の論戦でCDU議員が公表した(8/6ロイター)。

 ドイツの平和運動は主張する。「われわれは、それでもまだあなたを信じない。("Wir glauben Euch noch nicht")」
もし3月の約束は無効だ、立場を変えたと言うのなら、それを米政府に公式に表明せよ。参戦反対だけではなくイラク攻撃そのものに反対せよ。ドイツ国内の米軍基地を使わせるな。資金提供への拒否も同時に公式表明せよ。等々。口先ではない「参戦反対」の証を具体的に迫っているのだ。この経緯は、IACの論説に英訳されているドイツ平和運動家トビアス・プフリューガー氏の分析に論じられている。彼は繰り返し言う。シュレーダーとフィッシャーの「反戦方針」は信用できない。現にコソボとアフガンの2つの戦争に参加してきた。赤緑連合は信用できない。ただ反戦平和の運動だけが参戦反対に導くことができる、と。
    http://www.iacenter.org/iraq_pfluger.htm

5.ブッシュ政権の対イラク戦争阻止に向けて日本でも平和運動を強化しよう。

 米英独はじめ、世界各地で広がるブッシュの対イラク戦争反対の運動に連帯し、日本でのイラク攻撃反対運動を広めよう。とりわけ小泉政権は、ブッシュのイラク攻撃に明確な反対を表明していない。小泉政権にイラク攻撃反対の立場を押しつけていくことは、日本の反戦平和運動の重要な任務である。そして、臨時国会で成立をはかっている有事法制を阻止し、廃案にすることは、イラク攻撃への日本の加担とブッシュの戦争そのものに大きな制約を課すことになる。


2002年9月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局