3/20国際反戦行動−−−−−−
全世界で200〜300万人の民衆が反米・反ブッシュ・反戦の固い意志示す
−−イラク占領の中止、自国占領軍の撤収を要求−−

(1)様変わりのイラク情勢。「戦争の大義」が崩れ占領支配が破綻した下で、持続するイラク反戦闘争。

New York City (ANSWERサイトより)
 3月20日の米英によるイラク戦争開戦の日が、無法な侵略戦争を弾劾する記念日として、全世界の人々の記憶に刻まれ、世界的規模で一斉に反戦運動に立ち上がる日となった。現にアメリカが行っているイラク戦争と占領支配をやめさせ、イラクからの米の撤退を要求する闘いと共に、イスラエルによるパレスチナ・ガザへの攻撃と侵略、米によるハイチやベネズエラに対する軍事的政治的介入に反対する闘いとして闘われた。

 この行動は、イラク戦争開戦が迫った昨年03年2月15日、米のインターナショナルANSWERや英のストップ戦争連合などが呼びかけ、戦争が開始される前としては歴史上空前の2000〜3000万人、世界の600カ所で開催された反戦集会、反戦デモの流れを引き継いでいる。昨年のこの日、全世界の人々は、石油のための戦争反対、軍需産業のための戦争反対、イラクの子どもたちを殺すななどと叫び、「始まる前に戦争を止めよ!」を最大の目標に据えて、差し迫ったアメリカの侵略戦争を阻止するために街頭に出た。

 1年後の今年3月20日、状況は全く違っている。
−−今回の3・20行動そのものが、ブッシュ「有志連合」の支柱の一角スペインでのアスナール政権の崩壊という劇的な情勢の中で行われた。幾つかの「有志連合」派兵国で「撤退ドミノ」が静かに浸透、ポーランドでも大統領自身が「米国に騙された」と言わざるを得ない状況にまでなっている。そして世界のあちこちで「スペインに続け」が合い言葉になった。
※<ポーランド大統領>イラク戦争は「誤った情報で起きた」(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040319-00001025-mai-int
※「スペイン社会労働党の勝利と軍撤収表明を受けて−−−−改めて自衛隊派兵の中止・撤収を求める−−3・20国際反戦行動を機にイラク反戦の闘いをさらに強化しよう」(署名事務局)

−−アメリカが戦争の大義として持ち出した大量破壊兵器は、米によるでっち上げであったことが明らかになった。米大量破壊兵器捜索チーム前団長デビッド・ケイ氏による「なかった」という爆弾発言の衝撃はまだ収まっていない。これで事実上公式に近い形で大義が喪失した。イラクの罪無き人々が一般市民だけで1万人、イラク軍兵士を含めると3〜5万人以上も殺された。イラクの占領支配は行き詰まり破綻している。イラクに送られた米兵は600人近くが犠牲になった。精神障害、自殺と殺人、PTSDが深刻な問題になっている。−−「うそつきブッシュ」「戦争もウソもゴメンだ」「占領をやめろ」「米兵を家に帰せ」が新たなスローガンになった。

−−3・20行動は、また様々な前段行動や取り組みと連携して行われた。3/20直前の3/16にはイラクで治安維持任務中に休暇で一時帰国したまま所属部隊に戻らなかった米フロリダ州兵が、「良心的兵役拒否者」としての取り扱いを求めて同州の州兵部隊本部に出頭するという衝撃的な事件が起こった。ブッシュ大統領に対する問責決議の可決を米議会に求めている米民間団体は6/17、全米から集めた署名約56万人分を下院議員事務所などに提出した。
※<イラク駐留米軍>離隊の州兵、良心的兵役拒否を申請(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040317-00001065-mai-int
※<ブッシュ大統領問責>決議求め56万人署名提出 米の民間団体(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040319-00002032-mai-int

−−スペインを始め、今秋から来年にかけて、日本、アメリカ、イギリスなどで選挙がある。いずれもイラク占領体制に重大な影響を及ぼす国で行われる選挙である。反戦運動の持続は間違いなくこの選挙で戦争推進勢力を落選させる動きを促進するはずだ。
※「Ken Loach: Was it futile to march? No! No! No!−−We recognise what Spain has highlighted - that we must move from protest to politics」Independent Digital (UK) この記事は、副題にあるように明らかにスペインを意識してイギリスでも「抗議から政治へ(投票へ)」とブレア政権の転覆の必要性を訴えているのである。
http://argument.independent.co.uk/commentators/story.jsp?story=503370

 私たちはイラク戦争開戦一周年に闘われた反戦運動の広がりの大きさに改めて注目する。参加者は推定200〜300万人と言われている。確かに全世界の参加者の数からすれば大幅に減ったかも知れない。しかし、昨年3月20日の開戦を阻止することが出来ず、4月9日にフセイン政権が崩壊し、5月1日にブッシュ大統領が戦闘終結宣言をするというあまりにも急速な事態の進行の中で、反戦運動全体が意気消沈し、ANSWERらも次の方針を模索し、日本国内でも数百人程度の参加者しかいないデモなどが細々とやられていた時期と比べると、大きく息を吹き返したことが分かる。昨年の9月27日に呼び掛けられた国際行動では、ロンドンの反戦行進に10万人近くが参加し、スペインのバルセロナでも数千人が行進するなどの闘いがあったものの、アメリカのサンフランシスコで5000人、ロサンゼルスで3000人、ニューヨークシティでは数百人が参加したにすぎなかった。
※<イラク反戦デモ>全米の約300都市で ブッシュ政権打倒も(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040322-00000018-mai-int

 しかしこの9.27国際行動の前後からイラクの情勢は大きく変化し始めた。イラクの占領支配の泥沼化が明らかになり、アメリカの大規模掃討作戦が本格化した。占領下におけるイラク市民虐殺が大規模化すると共に、いわゆる「ラマダン攻勢」といわれるイラクの反米武装闘争が激化し、米兵の犠牲が急拡大し始めたのである。−−「持続するイラク反戦闘争」、これが1周年を特徴付けるものとなった。


(2)動員数は昨年の10分の1だが、反ブッシュ・反米イラク反戦の強固な“中核部隊”が浮き彫りに。
 息を吹き返したというのは正確では無いかも知れない。昨年の2月15日を頂点とする国際反戦行動を闘った部分は、組織を残し継続し、確固たる闘争の「核」として存在し続け、次なる闘いを見据えていたというべきだろう。新たな情勢のもとで、開戦前の中心部隊でありその後もあきらめることなく闘いを継続し節目節目で国際反戦行動を提起してきた反米・反帝の反戦行動の“中核部隊”(hard core、ハード・コア)が形成されているのである。
 今回の参加者200〜300万人は反戦の意志が固い。1年経とうとも、どんなことがあろうとも、アメリカのANSWERやイギリスのストップ戦争連合が呼びかければ、即座に反戦平和のために民衆を動員する、そういうコアな部分が国際反戦運動の中に厳然として存在するのである。
※「One year on, and still the hard core march the world over」(一年経ち、世界中で強固な核が行進を続けている)22.03.2004 By COLE MORETON 英INDEPENDENT特約New Zealand Herald http://www.nzherald.co.nz/storydisplay.cfm?storyID=3556103
 この記事によれば、行動は300都市で行われたが、参加者はずっと少ない、シドニーでは昨年20万人が集まったが今年は3000人、日本でも同じようなもの、反戦政府を生み出したスペインを除いて抗議者の数は軒並み減った、と一見否定的な評価を並べた上で、イギリスの一般参加者に語らせる、「ブレアとブッシュがイラクに行って事態は悪くなった、自国軍にイラクから撤退してほしい」「ここにいるのが10人であろうが10万人であろうが200万人であろうが問題ではない、正しいことを言っているのだから、イラクはイラク人の手に返すべきだ。」

 持続する国際反戦行動−−この持続性の背景にはもちろん、反戦運動の側のねばり強い、暴露宣伝活動がある。その最大の一つが「イラク・ボディカウント」である。今では誰もがイラク市民の死者が1万人を超えたことを知っている。また公然と闘いの声を上げた軍人家族の会「BRING THEM HOME NOW」の闘いがある。さらに劣化ウランの被害を発信し続けた日本や世界のジャーナリストらの闘いがある。これら戦争の真実を暴露する活動が、3.20の成功をもたらしたのである。


(3)地球を一周する反戦の波。−−行動が行われた地域・都市は昨年の最盛期に匹敵。
 しかし私たちにとって意外であったのは、反戦闘争の広がりである。この日の行動は、60ヶ国、700を超える都市でおこなわれた。しかしこれまで反戦運動に無縁であったような地域や都市において反戦運動が根付き、継続している。3月20日の国際反戦行動は、アジアから中東、ヨーロッパ、アフリカそしてアメリカへと、反戦のウェーブが波及していく文字通りの国際反戦行動になった。確かに参加者200〜300万人は昨年の最大動員規模2000〜3000万人の10分の1である。しかし広がりから言えば十分昨年の最盛期に匹敵する規模であると言えるだろう。
※主催者のHPに記録されているのはごく一部に過ぎない。例えば日本では、ワールドピースナウに把握されただけでも140を超える地域で行動が組織された。世界の約260都市を掲載したイギリスのストップ反戦連合のホームページにのせられた日本の運動はわずか数カ所(東京、大阪、京都、和歌山など)にすぎない。ここから推測すれば、おそらく全世界で闘いが組織された都市や地域は数倍にのぼるだろう。

 参加人数についてはいくつかの報道があるが、世界各地の概況は以下のようなものである。いずれの国・地域でも、米の戦争と占領支配に反対すると共に、派兵国では自国軍、自国警察、治安部隊の撤退を要求した。戦争の大義、市民殺戮の責任を問い、「うそつきブッシュ」「戦争もウソもゴメンだ」「占領をやめろ」を掲げた。アメリカでは、「End the Occupation」「Bring the Troops Home」とともに「Bring Them Home Now」−−兵士を帰せという米兵家族の会の要求が掲げられた。同時にハイチ、ベネズエラなどアメリカの新たな侵略と干渉政策に対する闘いの日としても闘われた。

●アメリカ−−−

New York City (ANSWERサイトより)
 全米300カ所で闘いが繰り広げられた。サンフランシスコでは5万人、ニューヨークでは10万人、シアトル15000人、ロサンゼルス2万人、カルフォルニア3000人、シカゴ1万人、フィラデルフィア3000人、ヒューストン2500人、クロウフォード800人、ノースカロライナ1000等々。各州で大小さまざまな闘いが行われた。(United for Peace & Justice によれば、60ヶ国、全米で319都市、米を除く全世界で398都市で反戦行動が行われた。)
 合い言葉は「Bring them home now」(いますぐ帰還させよ)米国防省が公式に認めているだけでも600人近い兵士が犠牲になり、それを悲しむ600の家族がいる。そして500をこえるグループが行動に立ち上がったという。
※「おまえが息子を殺したんだ−−ニューヨークのデモより」http://www.bringthemhomenow.org/
※インターナショナルANSWERの写真集参照 「March 20 Global Day of Action」
http://www.internationalanswer.org/news/update/032004m20report.html

●イギリス−−−

London(by Richard Searle;
Stop the War Colaitionサイトより)
 「有志連合」の要であるイギリスのロンドンでは10万人が参加し、ハイドパークからトラファルガー広場を行進した。「ブレア」+「ライアー」(嘘つき)=「ブライアー」など、ブレアのウソを追及するプラカードがたくさん掲げられた。
※「National Demonstration 100,000 demand the truth」ストップ戦争連合 http://www.stopwar.org.uk/

●イタリア−−−
 3000人の部隊を派遣しているイタリアでは、ローマに40万人〜100万人(主催者発表としてJNNウェブサイトより。20万人から40万人の幅がある。一部で100万人、200万人という報道もある。)が結集し集会・デモを繰り広げた。行動に賛同した団体が2000に登り全国から貸し切り列車やバスなどを連ねて共和国広場に結集したという。


ローマ(AP Photo/Andrew Medichini)

マドリード(AP Photo/Denis Doyle)


バルセロナ(REUTERS/ Victor Fraile)
●スペイン−−−
 軍の撤退を表明したスペインでは50カ所で集会デモが開かれ、バルセロナで20万人、マドリードで6万人が参加した。かつて無く激しいものとなった。

●ポルトガル−−−
 治安部隊として警察官を派遣しているポルトガルでは「警官を引き上げよ」として、リスボンで5000人の集会デモが行われた。

●フランス−−−
 フランスでは1万人がバスチーユ広場からデモを行った。

●ドイツ−−−
 ドイツではベルリンなど実に100カ所で行動が組織された。

●オーストラリア−−−
 850人の部隊を出しているオーストラリアのシドニーでは6000人が集会、デモを繰り広げた。

●中東−−−
 中東ではエジプト、トルコ、ヨルダン、バーレーンなどで集会デモが行われた。エジプトでは3000人が参加した。

●アジア−−−


ニューデリー(AP Photo/Sebastian John)

マニラ(REUTERS/Romeo Ranoco)

●中南米−−−


チリ、サンチアゴ(AP Photo/Roberto Candia)

リオデジャネイロ(AP Photo/Renzo Gostoli)



(4)日本では、北海道から九州・沖縄まで140カ所、13万人が参加。
 日本では、3.20国際反戦行動の呼び掛けに呼応し、東京でのワールドピースナウ主催の日比谷公園の集会に3万人、芝公園で行われた全労連の集会に3万人、計6万人が参加した。また、大阪では扇町公園で平和人権センターと市民実行委員会らが呼び掛けた集会に1万人、大阪城公園で行われた3.20世界反戦共同行動大阪実行委員会主催の集会にそれぞれ1万人、計3万人が参加した。そして全国で140を超える地域で行動が行われ、主催者発表で13万人が参加した。名古屋や京都などでも数千人規模の集会が行われ、また各地で数十名規模のデモなどが行われた。
※全国で13万人、反戦訴え イラク開戦1年(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040320-00000165-kyodo-soci
※WORLD PEACE NOW 報道情報 http://give-peace-a-chance.jp/118/320press.html

 この13万人という数字は重要である。日本はイラク反戦の最盛期にも世界と比べると動員数が少なかった。しかし1年が経過してもイラク反戦の時の参加者数レベルを維持していることになる。東京のワールドピースナウのイラク開戦前の集会が5万人−そして今回は3万人であるが、当日が激しい雨であったことを考慮すれば、参加者数はほとんど減っていないと評価することができる。一方大阪では昨年3月15日の反戦集会が2500人、これまでで最大規模の参加であった開戦直後の昨年3月23日の集会が8000人。今年3月20日の1万人集会は参加者数を増やしている。もちろんイラク開戦当時のように、各地でピースウォークが頻繁にやられるような状況にはない。しかし、イラク反戦だけではなく自衛隊派兵反対へ、自国の軍隊の侵略行為、自国の軍国主義に反対する闘いへと新しい前進を勝ち取っている。これでむしろ怒りは増大したのである。

 私たち署名事務局は、「フォーラム近畿ブロック会議/近畿市民実行委員会」主催で大阪市の扇町公園行われた「世界の人々とともにイラク占領反対!自衛隊はイラクから撤退を!3.20一万人集会」とその前段集会として1時10分から野崎公園でおこなわれた市民集会に参加した。前段集会の市民集会にはは500名の市民が参加し、自衛隊のイラク派兵反対の声を上げた。扇町集会の一万人集会には、雨の中文字通り1万人の参加者が公園を埋め尽くした。7000名近くの労組員と3000名近くの市民が一緒に「イラク派兵反対、米軍のイラクからの撤退」を呼びかけ、集会、デモを行った。私たちは、大阪城公園までの市民デモの中で、「自衛隊派兵をやめろ!」「米軍は子どもたちを殺すな!」などに加え「有事法制反対!」「イスラエルはパレスチナに侵略するな!」「ハイチへの軍事介入反対!」「ベネズエラへの内政干渉反対!」などのシュプレヒコールをあげ、「There was the time」「We shall overcome」などを歌った。
※「大阪 扇町公園 3.20 国際反戦行動−−1万人が米軍、自衛隊の撤退を求めて行進」(署名事務局)

 3日20日に示されたものは、政府の「復興支援」や「イラクの人々のため」という宣伝や「現地の子どもたちと談笑する自衛隊員」「給水活動を開始」などのマスコミが垂れ流す翼賛プロパガンダにも関わらず、多くの人々が、自衛隊派兵が侵略戦争への加担であり、重大な憲法違反であることを見抜き、軍国主義化の流れに危機感を持ち行動に立ち上がっているということである。日本でも国際反戦運動に呼応して即罪に反戦・非戦の意思表示をする運動が開戦から1年経った現在も持続しているということである。

2004年3月27日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局