政府首脳による非核三原則再考発言への抗議声明

プルトニウム・アクション・ヒロシマ

内閣総理大臣 小泉純一郎 様
Fax: 03−3581−3883

政府首脳による非核三原則再考発言への抗議声明
プルトニウム・アクション・ヒロシマ
2002年6月3日

私たちは、軍縮と核不拡散を目指して日本のプルトニウム政策の転換を求め、広島を中心として活動する市民グループです。

南アジアでの核戦争勃発防止に緊急に行動しなければならないとき、政府首脳から「核兵器保有は憲法に違反しない」「非核三原則再考もありうる」という発言があったと聞きました。わたしたちは、この発言とそれを容認する日本政府のあり方に強く抗議します。

貴職は、「非核三原則の見なおし」を否定されたとのことですが、このような発言が政府首脳から平然と語られたことを、どのようにお考えでしょうか。貴内閣が進める有事立法化が、核武装論の台頭を促していることはまちがいありません。

日本の核武装可能性については、総理の一言ですべてが解決するとは思われない現状があります。原子力長期計画によると、日本は最終的には450トンもの大量のプルトニウムを保有することになっています。高速増殖炉もんじゅでは、スーパー核兵器級プルトニウムが製造されます。その高純度プルトニウム再処理の技術は、米国ロスアラモス研究所など米国の5つの核兵器研究所から違法に移転された「機微な核技術」(Sensitive Nuclear Technology)でした。また、H2ロケットは、大陸間弾道弾(ICBM)であると、核拡散専門家は指摘しています。「非核三原則」をかくれみのにして、日本は核保有への道を着実に進んでいると思われます。

「テロとの終わりなき戦争」を口実に、米国はNPT体制の枠組みさえも逸脱して新型核兵器の開発を続けており、6月には弾道ミサイル制限条約(ABM条約)を廃棄して、宇宙でのレーザー兵器や原子力利用など、宇宙への軍拡を計画しています。

本来、国際的な核不拡散体制の見地からは、絶対に許されないような高速増殖炉計画や、六ヶ所村核燃料サイクル施設建設、そして東海村リサイクル機器試験施設(RETF)を米国は見逃してきました。

非核三原則のもとでさえ、在日米軍基地の核の存在は公然たる秘密になっています。9・11を境に、あからさまに「宇宙支配」を表明し、迎撃ミサイルに核弾頭搭載まで計画しているブッシュ政権が、これまで以上に明確に在日米軍基地を核基地として位置付けることは、当然と言えます。

このような状況下で、被爆国であることを強調し、すでに空洞化した「非核三原則」を何度再確認しても、国内外の疑惑を払拭することはできません。非核政策の一貫性を明確にするために、私たちは、有事立法案の取り下げとともに、貴職が以下のことに直ちにとりくまれるよう要請します。

1. 六ヶ所村再処理工場運転を開始しないこと。
2. 高速増殖炉もんじゅの廃炉および、これ以上の高速増殖炉計画の中止。
3. 1,2を含む、プルトニウム利用政策の中止と安全なエネルギー政策への転換。
4. 米ミサイル防衛計画への日本の協力中止。
5. 国際熱核融合実験炉(ITER)六ヶ所村誘致を中止し、また日本のどこにも誘致しないこと。
6. 日本政府の新アジェンダ連合への参加。
7. 「非核三原則見なおし」発言者は、政府閣僚として不適格なので、処分すること。

以上、厳重に抗議、要請します。

プルトニウム・アクション・ヒロシマ代表 
アボリション2000グローバル評議員
宇宙の兵器と原子力に反対するグローバルネットワークアドバイザー
大庭里美