10/23 教基法改悪阻止・国会行動緊急報告


 10月23日、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が提起した、国会での議員要請行動、院内集会に参加してきました。先週から伝えられているように、教育基本法の強行採決が迫っているのではないかという中での参加です。結論から言えば、やはり情勢は緊迫しています。衆院補選で連勝し、カサにきた自民党は「弾丸列車」(社民党;保阪議員)で事を進めようとしています。それぞれの各地での取り組みと国会行動をさらにいっそう強める必要があると感じました。

 院内集会が開催されていたちょうどその時間に、教基法特別委員会の日程を決める理事者懇談会が開かれていました。社民党の保阪議員によると、そこでのやり取りは大まかに以下の通りだったとのことです。
−−与党側は、閉会中に公聴会を開くよう要求。野党側は拒否したが、与党側はそれを逆手にとり、公聴会そのものを拒否したとし、公聴会については、野党が拒否したので与党は要求しないと強引。
−−与党はもう審議は十分尽くしたとして25日(水曜日)にも総括審議を開始するよう要求。安倍首相の参加を求め、NHKテレビ中継付きで6時間ぶっ続けの審議を行う、審議時間はあと少しでよいとの提案を行う。
−−野党側はそれを突っぱねて押し問答。結局明日24日朝10時から再度理事懇を開き、そこで決めることに。従って、審議入りは、水曜日でなければ、来週の月曜日。水曜日か月曜日かというレベルの議論。来週の月曜日であれば、来週の審議日程は4日しかないが、与党側はそれで十分とにらんでいるよう。その程度の審議しかしないつもり。補欠選挙の結果を受けて、与党は一気に進めようとしている。
−−明日24日10時からの理事懇の決定次第では来週早々の強行採決もあり得る状況。等々。

 さて、議員会館前(国会裏)は本日、日教組の座り込み、シュプレヒコールがあり(23日は近畿ブロックの動員だったようで、大阪・兵庫・奈良の各府県教組が参加していました)、さらにすでに5日目に突入したリレーハンスト(都教委包囲・首都圏ネットがサポートしている)の人々が陣取り、また沖縄辺野古新基地に反対する人々(「ヘリ基地反対協」)が座り込むという緊迫した状況に包まれていました。

 しかし拍子抜けの印象を残したのは議員回りでした。沖縄県知事選のために帰沖している議員だけではなく、選挙区に帰っている議員も多く、たまたま時間を割いてくれた民主党議員の話を聞いても、民主党が総力をあげて採決を阻止する体制を取っているとは率直に言ってとても思えない印象でした。理事懇後の対応ということなのかもしれませんが、教基法についてもスタンスはバラバラの民主党という他ありません。それだけ余計に、私たちが頑張らねばという気持ちがこみ上げてきました。
 与党議員の秘書がポロリともらしたのは、参院でも教基法の特別委員会を設けるというものです。特別委の設置ということもさることながら、すでに衆院での可決を前提にしてすでに自公側は参院での採決スケジュールと体制を作ろうとしているということです。

 議員回り後参加した院内集会は140名の参加者で会場があふれんばかりのものでした。短い時間でしたが、内容の濃い集中したものでした。
 共産党議員井上氏の挨拶、小森氏の挨拶が続きました。井上議員の話は、教基法には十分な審議が必要だ、与党側は、50時間も審議しており、あと20〜30時間もあれば十分と言っている。諸野党は教基法案を今国会では通させないということでともかく一致しているが、25日にも総括質疑に入る可能性がある、と危機感を表明しました。両氏の話に共通していたのは、この間相次いだ「いじめ自殺」は、政府の側の計画でいじめ「半減」の数値目標を設定した結果、現場も各教委もいじめの実態に目を背け、これを隠ぺいしたことの結果であること、政府の政策そのものの結果であるということです。

 次いで立った社民党議員辻本さんは、補欠選挙の結果が出る前後、先週あたりから与党がきわめて強気になっていること、共謀罪審議の法務委員会は開催されないものの、26日からは防衛「省」格上げ法案が審議入りというように、民主党が態度を決めかねている間に悪法の数々を一挙に片づけようとしていることの危険性を指摘しました。
 共産党の沖縄選出議員赤峰氏が沖縄知事選挙の重要性、ことによると教基法審議のピークに、沖縄の野党5党こぞって愛国心をおしつける教基法改悪反対の選挙が闘われるということを発現しました

 その後、主催者である「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の大内氏が登場しました。大内氏はこの集会では一つのこと、すなわち今月号の雑誌『世界』に発表した「格差社会の拡大・固定化をもたらす教育基本法改定」の線で、教基法改悪が教育の機会均等を奪い、学校間格差を生み、格差社会を固定化させるということを、法案4条(教育の機会均等)における、「能力に応ずる教育」から「能力に応じた教育」への転換、第5条(義務教育)2項の「各個人の有する能力」という文言の挿入等の指摘を通じて、具体的に暴露しました。氏は教基法改悪の問題点を世間の人々に広く知らせるにはどのような暴露が必要か、といった運動の実践的要請に、教基法改悪による「格差社会」「格差拡大」の到来を広く知らしめることで応えようとしています。

 次いで立った高橋氏は少し視点を変え、教基法の生みの親の一人ともいうべき南原繁氏の論文を取り上げ、教基法改悪反対の「歴史的意義」ということについて述べました。改悪論者が言う「教育基本法は占領軍によって押しつけられた」というのは事実ではない。戦前の旧い教育理念は天皇を中心とした国家的精神であった。敗戦により、旧い教育が崩壊した。教育が国家の道具であり天皇のためであったという反省が、戦後教育基本法の出発点であった。南原氏自身が、学徒動員で戦場に学生を送り込むことを止められず、これに対する後悔の念があった。等々。
 こうしたことを述べた上で、高橋氏は、氏の結論にもなる部分を南原氏の著作から、(少し長くなるが)引用します。「新しく定められた教育理念(引用者注;教育基本法によって定められた「個人の尊厳」)に、いささかの誤りもない。今後、いかなる反動の嵐の時代が訪れようとも、何人も教育基本法の精神を根本的に書き換えることはできないであろう。なぜならばそれは真理であり、これを否定するのは歴史の流れをせき止めようとするに等しい。ことに教育者は、われわれの教育理念や主張について、もっと信頼と自信をもっていい。そして、それを守るためにこそ、われわれの団結があるのではなかったか。事はひとり教育者のみの問題ではない。学徒、父兄、ひろく国民大衆をふくめて、・・・世界人類の現下の運命につながる問題である。」(1955年4月、朝日新聞社編『明日をどう生きる』所載 『南原繁著作集第八巻』)
 55年当時にも教育反動の動きがあり、南原氏はこれを危惧して言ったのだが、教基法の精神を根本的に書き改める反動に立ち向かう時代を、先人があたかも予見していたかのごとき事実に、改めて驚かされます。
 最後に、高橋氏は、北海道で、君が代で処分をうけた先生に対し、人事委員会で処分取り消しの勝利裁決が出た、東京に続く勝利だと力強く報告しました。

 続けて三宅氏は、OECDの「日本に関するブリーフィング・ノート」から日本の教育に関して、例えば「日本の教育支出のGDP比は非常に低い水準にある」等具体的数値を引用し、今必要なのは教育の「公的支出をあげる」ことであり、教基法の改悪はそれに真っ向から反するものであることを指摘し、さらに大学人がその研究の場から「初めて」教基法改悪反対の声をあげたものとしての「千葉大学有志のアピール」の内容と意義を訴えました。

 最後に参加者からのアピールがありました。10/23「日の丸・君が代」通達に反対して停職をくらった東京の養護学校教諭のハンストリレー参加のアピールです。先述したように10月17日から20数名の人から人への国会前でのハンストが続いています。「教基法が改悪されれば君が代解雇もすぐそこ」という指摘は他人事とは思えないものでした。

 集会散会直後に、社民党保阪氏が理事懇解散後会場に現れ、最初に述べた状況報告を行ったわけです。以上駆け足の東京行きでしたが、国会行動の速報とします。

2006年10月24日 大阪教員 M