「慰安婦」問題解決へ 8.7院内集会 開かれる
 8月7日1時半〜3時  参議院議員会館第一会議室
 主催:アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む会

 8月7日1時半〜3時「慰安婦問題解決へ8.7院内集会」が、参議院議員会館第一会議室で開催された。「慰安婦」被害者や米・EUの市民活動家らを招聘した“アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む会”が主催した。昨年のアメリカ、オランダ、カナダ、EUでの議会決議を受け、日本国内でも「慰安婦」問題解決にむけた取り組みが進む中、秋の臨時国会に備え、謝罪と賠償の法制定に向けさらに運動を強めるために議員会館内で開催されたものである。100名近くの市民、議員、秘書らが参加し、会議室は参加者で満杯になり、熱気にあふれた。同様の集会が全国各地で開かれていく。
 冒頭、谷岡郁子(民主)議員が、事柄の深刻さからこの問題に取り組むのは躊躇してきたが、アメリカ訪問時にオバマ氏にアナベル・パクさんを紹介され、引くに引けなくなったと言い、なんとしても被害者の生きているうちに謝罪させたいとあいさつした。
 心に刻む会の上杉聰さんは、アメリカ、EUの議員招請を断念せざるを得なかった経緯を述べながら、アムネスティ・インターナショナルの計らいでオランダ政府が駐日大使を参加させることを認めてくれた、ある意味で議員の参加以上に大きな成果だと語り、世界からみんなで力を合わせてやっていけば必ず謝罪させられるとアピールした。



駐日オランダ大使 フィリップ・ヘルさん
 駐日オランダ大使のフィリップ・ヘルさんは、「自分の叔父が九州に強制的にかり出された」など個人的な戦争体験も交えながら、オランダで「慰安婦」問題は極めてよく記憶されている、強制があったかどうかということなど問題ではないと、日本での扱われ方を批判した。


チェン・タオさん(左)とライ・ツァイアールさん
 台湾の「慰安婦」被害者陳桃(チェン・タオ)さんは、被害の記憶と思いを日本語で語った。学校に行く途中に警官にだまされ制服を着たまま慰安所に連れて行かれたこと、便所に逃げてクレゾールを飲んで自殺をしようとしたこと、「みはらし荘」に入れられ1年2ヶ月「慰安婦」生活をしたことなど。チェンさんは、日本の降伏後はほったらかしにされ、帰ったら父母は亡くなっており、叔父には「汚い女」とののしられたという。彼女は「私は何もいらない、日本政府に出てきておばあちゃんたちに詫びてほしい」と訴えた。60年以上前のことが鮮明に語られ、苦しい場面になると言葉に詰まりハンカチを目に当てる様子は、心の傷が深く残っているだけでなく、日本政府の対応が一層傷口を広げていることを物語っていた。会場は静まりかえっていた。

 台北市婦女救援基金会のョ采兒(ライ・ツァイアール)さんは、92年以降台湾で進める被害者の調査と救援活動について語った。被害者の平均年齢は87歳、最高齢は92歳となっており、今すぐ解決をと訴えた。


アナベル・パクさん
 アメリカでの決議運動の中心を担った121連合のコーディネーターであるアナベル・パクさんは、アメリカで決議を挙げた運動をつくったのは本当に普通の人たちであると、その草の根の広がりを強調した。これまで決議を出しても証言を聞いても無視され続けてきたが、安倍首相が07年3月に「慰安婦」否定発言をしてから突然大問題になった、それは戦争の傷がいまだに生々しく生き続けていることがわかったからだという。パクさんは、決議があがったのは安倍首相ののおかげだ、感謝しなければならないと皮肉混じりに言った。あらためて日本での右翼政権の誕生とその崩壊の意味を考えさせられる。パクさんは、「もし日本政府がきちんと謝罪すれば、それは今後このようなことはやらないということ、謝罪しなければ、やってもいいということだ」と、謝罪と賠償の現在的な意義を語った。


キャサリン・バラクロウさん
 EUでの決議運動を進めたアムネスティ・インタナショナルのキャサリン・バラクロウさんは、2005年に、女性に対する暴力に反対するキャンペーンを始めたが、「慰安婦」問題が解決されていないことは運動のカギだと思うようになり、この問題に集中するようになったという。EU決議が27ヶ国代表が集まる中で緊急決議として満場一致で採択されたことは、日本政府への喫緊の呼びかけであり、過去の問題であるが同時に現在の問題である。最後にキャサリンさんはこんなにいっぱい人が来てくれてうれしいと語った。

 8月10日の関西フォーラム実行委員会方清子さんの発言は、この問題を放置する日本政府への怒りがこもった力強いものだった。司会の人も言っていたように、関西の動きが東京をはじめ全国へと波及していったことを、改めて感じさせた。集会では特に地方での取り組み、地方議会決議の必要が訴えられた。清瀬市で意見書採択運動をした“清瀬子どもと教育ネット”の方からのアピールもあった。
 今後臨時国会に向け、法制定の運動が一つの焦点になる。福島瑞穂議員は、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」が前国会で提出されたが審議未了・廃案になったことから、改めて法制定運動を強める必要があることを強調した。谷岡議員は、6月の会期末ぎりぎりになって法案が提出されたのは民主党での優先順位が低いからだ、今度は国会のはじめから法案の提出と議論を作っていかなければならないと語った。そして、自民党内でも法案に強固に反対しているのは一部の有名な人だけであることから、衆院の票読みでは圧倒的に不利だが、希望も見えてきたと締めた。この集会への国会議員の参加者も多かった。議員秘書も含め10数人が参加した。集会で改めて感じたのは、被害者たちの高齢化でもうあとがないという思いと、世界から見た日本政府の対応の異常さ、無責任さ、傲慢さである。
 市民の運動をさらに広げ、謝罪と賠償の法制定へ、真の解決へと進んでいきたい。

2008年8月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 N