−「市民の党」井上さくら、与那原ひろこ両市議を「除名処分」−
横浜市議会多数派による暴挙に
満身怒りを込めて抗議する


■横浜市議会で重大な事態が起こっています。自民党を中心とする与党が議会での日の丸掲揚に頭を垂れず服さない市民派議員の資格を剥奪するという前代未聞の暴挙に出たのです。現地の新聞以外ではほとんど問題にされていないので、急遽全国各地の市民の方々に真実を伝えたいと思い、私たちの署名運動の立ち上げ時から協力いただいている「日の丸・君が代による人権侵害」市民オンブズパーソン事務局(大阪)の井前さんに情報提供をお願いしました。ぜひ抗議の声を集中して下さい。(抗議先は本文にあります)

■私たちが危機感を持つのは、第一に、これが単に一市議会の問題ではないからです。同じ事態はすでに学校現場で起こっています。私たちの署名運動には教職員の方々がたくさん関わっておられるのですが、学校現場ではすでに日の丸・君が代が有無を言わさず強制され、校長・教育委員会・文部省の言うことを聞かない教員を強引に排除する傾向がエスカレートしています。子どもたちに真理と正義、平和と民主主義を説くはずの学校で憲法の「良心の自由」は完全に否定され、専制的な学校運営が幅を利かせています。日の丸・君が代は平和と民主主義の教育を目指して奮闘する良心的教員の排除のテコになっているのです。今回の事件は、平和と民主主義の信念に基づいて発言し行動すること自身を否定する傾向が学校から地方議会へ拡大するきっかけになりかねません。絶対阻止すべきです。
 第二に、有事法制との関係です。有事法制は「有事」が起こる前から、法律が成立した直後から、「有事に備えた準備」と称して、教育現場だけではなく、地方自治体でも、「民間防衛」の名の下に地域でも、そして今回のように議会でも戦争準備が始まることを意味しています。この時のテコになるのも日の丸・君が代であることは容易に想像できます。日の丸・君が代は天皇制とそのイデオロギーへの服従を強いると同時に、軍国主義化・反動化の最も便利なテコになるからです。
 横浜市議会の与党側は、また保守陣営と右翼論壇は、与那原議員と井上議員の側の「実力行使」が本質であるかのような形式論を持ち出すことで、日の丸と「数の暴力」を振りかざして少数会派を黙らせ反動的で強権的な議会運営を正当化しています。事の発端、事の本質は「実力行使」ではなく「日の丸の強制」です。「議場の秩序を乱し」、「議会の品位を傷つけ」、「議会制民主主義を踏みにじった」のは少数会派の両議員ではなく、カネと力を持ち議会全体を牛耳る自民党と与党の側ではないでしょうか。

2002年6月28日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




 横浜市議会は、25日の本会議で、「市民の党」の井上さくら市議と与那原ひろこ両市議を「除名処分」とし、議員資格を剥奪することを決定した。「除名」に賛成したのは、自民(32人)、公明(16人)、民主(16人)、横浜みらい(5人)による多数派各会派の計69人の議員である。彼らは、「(日の丸の議場への掲揚強行に対する質問への回答を求めて議長席に座り込みをした)2人の行動は議会制民主主義の否定あり、除名は当然だ」などと自らの決定の「正しさ」を強調している。しかし、議会制民主主義を否定し蹂躙しているのは、「除名」提案を強行しそれに賛同した市議会多数会派議員団の側である。私たちは、横浜市議会多数派による暴挙に満身怒りを込めて抗議するとともに、議決の無効確認と両議員の議会への復帰を強く要求する。

2002.6.26
「日の丸・君が代による人権侵害」市民オンブズパーソン
事務局(大阪)井前弘幸



「除名処分」に賛成した会派への抗議を

抗議先
小林昭三郎横浜市議会議長    TEL 045(671)3000 FAX 045(212)0906
和田邦夫横浜市議会事務局長   TEL 045(671)3002 FAX 045(681)7388
自民党横浜市議会議員団      TEL 045(671)3010 FAX 045(681)1530
公明党横浜市議会議員団      TEL 045(671)3023 FAX 045(681)2060
民主党横浜市議会議員団      TEL 045(671)3028 FAX 045(681)2410
民主党横浜みらい市議会議員団  TEL 045(671)3036 FAX 045(227)5290


多数会派による一方的な議員資格剥奪はファシズムではないのか


(2市議作成のチラシより)
 26日付の朝日新聞社説は、「いくら何でもやりすぎだ」との社説を掲載し、次のように主張した。「汚職や不祥事にからんだ国会議員について、政権党は法的拘束力のない辞職勧告決議案でさえなかなか認めない。有権者の負託を受けた議員の身分は重い、というのがその理由だ。そう考えると自民党が先頭に立って2人の議員資格を奪った横浜市議会のありようは尋常ではない。気になるのは、日の丸という機微に触れる問題だったからこそいきり立ったのではないか、という点だ。」また、元逗子市長の富野暉一郎・龍谷大教授(地方自治)は、「市民の信託を受けた議員の除名は議会による有権者の選択の否定で、非常に重い。除名を是認できるほどの行為だったか、市民が納得できる議論があったかどうか、市民側からも議会の判断へのチェックが必要だ」と指摘している。(朝日新聞)
 首相官邸の記者会見場で、記者から鈴木宗男議員に対する辞職勧告について質問された福田官房長官は、「首相が議員に対して辞めろというのはファッショ的ですね」と答えていた。政権党・多数派が、自分の都合のよいように「議会制民主主義」という言葉をもてあそび、多数の暴力によって民主主義をねじ曲げ否定し、少数派・少数意見を封じ込め、排除していく。これこそファシズムではないのか。


自公民三会派による専横的議会運営−−少数意見の封じ込めと少数者排除は計画的意図的

 横浜市会の「市会運営委員会」は、5月22日、本会議等での少数会派の発言時間を削減する提案を強行した。民主党が提案し、自民・公明がこれに賛同して、多数会派のみで一方的に決定した。自民党会派の質問時間は61分から72分に延長する一方、市民の党の質問時間を6分からわずか4分に削減した。(横浜市議会は、本会議や特別委員会での質問時間を、5人以上の交渉会派に「会派割」時間と「人数割」時間を合計した持ち時間としてきた。民主党提案は、この「会派割」を廃止し、少数会派の質問時間を削減して多数会派に回すことを要求するもの。)また、横浜市議会は、市会運営委員会での5人未満の少数会派の議員の発言を一切認めていない。
 議場への「日の丸」掲揚も、同じ5月22日に市会運営委員会で、少数会派質問時間の削減とセットで一方的に「決定」し、わずか一週間後の29日に掲揚強行したのである。この強行に対して、井上、与那原両議員は、議長に対する質問状等を繰り返し提出し、議場での発言を求め続けたのである。しかし、自民、民主、公明3会派多数派は、「非交渉会派の発言は認められない」として両議員の発言を認めないばかりか、質問書への回答も拒否し続けたのである。


井上、与那原両議員の行動−−−「議会制民主主義」のために闘ったのは


(神奈川新聞HPより)
 与那原議員の主張を引用させていただきたい。私たちは、彼女たちの行動を支持し、ことの真相をできうる限り多くの人に伝えたいと思う。
 「議場への日の丸掲揚に対する私たちの発言を6度にわたってことごとく不許可とした横浜市議会。初めて日の丸が立てられた29日の本会議では、議長に詰め寄った井上議員に職員が暴行(全治7日)、自治法を無視した『退去』命令で議場から排除。共産党の反対意見の表明も議事録から削除することが決められました。
 今回の議場への日の丸掲揚問題は、自民、公明、民主と前高秀市長与党が、民主党から分裂して中田市長を推した会派「横浜みらい」(5人)等の発言時間カットとセットで持ち出してきたものです。この3党がやりたい放題。憲法も法律も『国旗・国歌法』制定時の『強制はしない』という政府の約束も無視し、数にまかせてまともに議論する気がない。こんな市議会の現状をもう許せないと、私たちは5日、議長席に座り込んで、議長への公開質問状に対する回答を求めました。
 せっかく市長が替わったのに、今の市議会では何も変わりません。だから私たちは行動しました。『懲罰』の動議が出されましたが決して負けません。ご意見をお聞かせください。」(与那原ひろこ市議)

(神奈川新聞HPより)
 25日の本会議後の記者会見で、両議員は訴訟準備と県知事への審決要請並行して行う方針を明らかにした。(※審決−−市町村議員の「除名」に対しては、地方自治法に定められた「知事の審決による救済」を求めることができる。「審決」で「不当」との判断がなされれば、「処分」は無効となる。)


6月25日横浜市議会本会議傍聴報告より

◎井上さくらさん弁明
 「日の丸」は個人の思想・信条の自由に関わる事なのに、掲揚決定を知らされるだけで全く意見を述べる機会が一度もなかった。この間少数会派の発言する機会がなく、議会での議論ができなくなっている。6時間の空転は事態打開の為の方策が取られなかたために起きたもので責任を一方的に押し付けられる事は不平等でないか。議会での議論ができなくなっている議会体質となっていて、多数会派による多数決で全て決めている
全て多数決で決めて行くやり方が本来の議会制民主主義であるのか、今一度立ち止って考えて欲しい。

◎与那原さん弁明
 6月23日は沖縄慰霊の日、沖縄出身の私にとりいまだ米軍が駐留する沖縄の現状を考えれば日の丸掲揚は見過ごす事のできない問題である。発言の機会を求めていたが与えられず、発言不許可の理由が明らかにされていない。発言の中身(日の丸掲揚について)に対しての不許可だと思う。国旗・国歌を尊重するしないはその人の良心の領域の問題である。一つの意見に強制する事に反対である。議会に思想・信条を侵すものを持ち込まず自由闊達に議論できる場の保証をしてほしい。

(「日の丸・君が代」強制に反対する神奈川の会 6月25日市議会傍聴報告より)


横浜市議会「日の丸」強制の経過
02年5月10日
21日
22日
29日


31日

6月 3日
5日
21日
議会運営委員会理事会で自民党が議場への「日の丸」掲揚を提案。
理事会で共産党、神奈川ネットが反対表明。市民の党の発言は不許可。
議会運営委員会。賛成多数で「決定」。市民の党の発言は不許可。
議会運営委員会。市民の党の発言は不許可。
本会議で市民の党の2市議が開会前に議長に発言を要請。
職員が井上議員に暴行。全治7日間の負傷。自治法違反の「退去」命令。
理事会。29日の本会議進行に疑問が出されるが、録音テープの公開拒否。
市民の党の発言不許可。抗議申し入れ提出。
市民の党が議長に公開質問書提出。
議会運営委員会で6度目の発言不許可。議長に回答を求めて座り込み。
懲罰委員会で両議員の「除名」採決強行。自民、民主、公明、横浜みらいの4党は「除名」、共産党は「公開の場における陳謝」、神奈川ネットは「処分なし」を表明。


井上、与那原議員が提出した公開質問書
2002年6月6日
横浜市議会議長 小林昭三郎 様
市会事務局長 和田邦夫 様

市民の党横浜市会議員 井上さくら
与那原ひろ子


問答無用の強制退去と居直り懲罰動議についての抗議と質間


 昨日、私たち市民の党の市会議員井上さくら、与那原ひろ子二人に対し、またしても議場からの実力による強制退去が行われ、さらにはこの間の事態に対する何らの検証や説明もないまま、私たちへの懲罰動議が出され可決されるという事が起きました。
 昨日は予定されていた中田新市長の補正予算案に対する質疑という重要な議題に入ることができず、市議会としてはこれを開きに来た多くの傍聴者をはじめとする市民に対し、この混乱をもたらしたものが何であるのか、真剣に検討し明快に説明する義務があると考えます。
 まず、私たち二人がなぜ開会前に議長席と事務局長席に座り続けていたのか。それは憲法や自治法に抵触する重大な事態が市議会で起きながら、これを解決するために本会議開会前に話し合う通常の方法がすでに奪われており、不正常な状態の放置と既成事実化をやめるよう議長に求めるには他に方法がなかった
からです。
 私たち市民の党は「日の丸」の議場への掲揚を「決定した」とする5月22日の運営委員会からここにいたるまで、計6回にわたって、運営委員会や理事会などで発言を求め、その全てで発言を不許可とされてきました。5月29日の本会議ではついに不当な強制退去にあい、けがまで負わされたため議長に対し、
この本会議での@日の丸の強制A議員に対する暴行傷害事件B地方自治法遼反の退場命令等について公開質間状を提出し、当日の運営委員会までお答えを待ちつづけましたがついに一切の具体的回答を頂くことができませんでした。
 問答無用で議場に日の丸を掲げることは「国旗国歌法が成立しても強制はしない」という政府見解に反しますし、問答無用で議員を議場から実力で排除するなどは、憲法と民主主義の基本的なルールに反します。この間に起きたことを放置することは議会の自殺行為にも等しく、けっして見過ごすことはできな
かったために議長席、事務局長席に座るという「非常手段」に訴えたのです。
 わたし達に対する懲罰動議には「議会の品位をおとしめた」とありますが、おとしめているのは長年、密室の談合によって議会を専横し、議員、職員をして違法行為に対してさえ無感覚にさせてしまった自・公・民の旧「与党」会派の側であると言わなければなりません。今回の一連の事態を引き起こしたのは、数さえおさえれぱ何でもできると勘違いし、少数会派の発言時間の削滅や日の丸の強制などを強行した前市長支持派の横暴です。彼らの行いこそ議会制民主主義を危うくするものであり、厳しく自戒すべきです。

 一方、昨日の運営方法が、「制止」を繰り返した後に退去命令を出したこと、その直後は実力行使をせずに「休憩」としたこと、実力行使の前の職員への議長による「指示」を読み上げたことなど5月29日の運営と明らかに違っていたことは、わたし達が指摘した自治法違反の問題などを自覚し、事実上29日の運
営が誤りであったことを認めたものと言わざるを得ません。にもかかわらずこれを明らかにしようともせず,その問題を指摘して見解を求めているわたし達に対し懲罰などとは「居直り」というほかありません。
 このような事態を生み出した議長、事務局長に対し、以下質間いたします。
@6月3日提出の「公開質間状」になぜ回答しないのですか。
A6月5日本会議場で、通常の業務を離れ「日の丸」を取り囲んでいた職員の行為は何を目的としたものですか。職員が交代で壁をつくらなければ掲揚できない「日の丸」は自発的意恩に基づくものとはいえず、強制であることを身をもって示したのではないですか。
B5月29日と違う議会運営をしたのはなぜですか。自治法129条についてはどのような場合も実カ行使は認められないとする解釈もありますが、仮に認める考えに立ったとしても、6月5日に行った「制止」、「休憩」、「指示」といった手順を踏むことが必要であり、これらを欠いた29日の運営は少なくとも適切ではなかったと言えるのではないですか。
C6月5日の実力行使の際は毛布が用意され、体に触れる織員は全員手袋をしていました。なぜそのようにしたのですか。また、そのようにせず、結果的に井上議員を負傷させた5月29日の職員の行為には過失があったということですか。

以上4項目と6月3日提出の公開質間状に対しあわせて、6月10日に予定されている懲罰委員会の前までに文書にてご回答いただくようお願いいたします。