イラク派兵による「新たな戦死者」を念頭に置いた――
小泉首相靖国元日参拝に強く抗議する!

1. 2004年、年明け早々小泉首相はまたしても暴挙に出た。いきなり靖国神社に参拝したのである。
 今回の参拝は、これまでの参拝とは質的に異なる全く新しい危険性を持つ。昨年暮れの空自先遣隊のイラク派兵に始まる自衛隊のイラクへの出兵命令、陸自本体派兵が具体化されようとしている中での、また戦地イラクへの派兵が間違いなく戦死者を出すと考えられている中での参拝だからである。
 この男は本当に戦死者を欲している!わざと戦死者、「英霊」を出したがっている!背筋が凍る思いがすると同時に心底からの怒りを禁じ得ない。

 憲法を踏みにじり世論を愚弄してまで、戦後初めて自衛隊を侵略軍・占領軍として派兵を強行するその首相が、天皇への参賀の後、靖国へ参拝するというそのきな臭さ、おぞましさ。首相は派兵される自衛隊員に、君たちの死後はまかせろ、安んじて死んでこいと言っているのだ。もはや怒りを通り越して出る言葉さえない。小泉首相は私たちを一挙に戦前・戦中に引き戻そうとしている。

2. 小泉政権には外交というものはない。ましてや平和外交など全く念頭にない。こんな政権は歴代自民党政権の中でも初めてだ。中国、韓国、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は即座に抗議した。いつ行っても抗議されるなら好き放題する。非難される筋合いはない。初詣は「文化」「伝統」だ。等々。首相からは、中国・韓国はじめ近隣諸国をなめきった発言が繰り返されている。小泉首相の頭には、近隣のアジア諸国との善隣協力、平和友好関係など端からない。あるのは日米軍事同盟とブッシュの戦争への参戦・加担のみである。

3. 今回の参拝は、日本軍国主義の新たなエスカレーションの現れである。昨年末には戦略ミサイル防衛という新たな軍拡計画を柱に据えることを決定した。イラク派兵の後は「恒久法」という名のグローバル派兵法、米軍の下請けとして世界中へ軍事介入する常時侵略軍構想が控えている。教育基本法改悪と改憲の具体化に着手し始めている。等々。等々。−−一体この首相、この政権は、どこまで行くのか。どこに行き着くのか。国民には反対のいとまさえ与えない、考えさせない、とでも言うかのように、日本の軍国主義は戦後かつてないテンポで休みなく突き進んでいる。

4. 小泉政権は「名誉の戦死者」の後始末を考え出したのではないか。私たち反戦運動は、派兵反対と同時に、「名誉の戦死」のイデオロギー攻勢にどう反撃していくのかを予め考えておかなくてはならない。
 そもそも交戦権を放棄した日本国憲法下では、他国に侵略した結果「戦死者」が出ることなど予測していない。イラクで自衛隊に戦死者が出たとしても、アジア太平洋戦争の戦前・戦中のように靖国神社に「英霊」として国家あげて祀るようなことは、日本国憲法上は許されないことである。しかし小泉政権は戦死者を軍国主義化・反動化にどう利用するかを考えていると見なければならない。

 2つの危険がある。年に一度の靖国公式参拝を表明している小泉首相にとっては、靖国こそが戦死者を「英霊」として祀る「伝統的」な場所である。靖国への合祀は絶対阻止しなければならない。もう一つ、福田官房長官の私的懇談会「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」が2002年末とりまとめた報告書による国立の戦没者追悼施設がある。これは靖国推進派、自民党・日本遺族会の反対で宙に浮いたままであるが、イラクでの戦死をきっかけに復活する恐れがある。私たちはこの2つともに反対である。

5. 私たちは靖国神社が、再び戦死者を「英霊」として迎える場として復活することに反対する。そのために小泉首相が参拝することによってその利用を内外にアピールすることを拒絶する。何よりも平和主義を掲げる日本国憲法下で新たな戦死者が出ることに反対する。
 従って私たちは、新たな戦死者を生み出す戦地イラクに自衛隊員が派兵されることに何より反対する。そのために今進めている反対運動を一層強化する。小泉首相が靖国に参拝し、靖国の軍事的・政治的利用を再び開始することに断固反対する。

2004年1月4日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局