[署名事務局声明]
小泉首相による靖国神社参拝強行を糾弾する!

 天皇制軍国主義・日本帝国主義の敗戦の日であり、アジア・太平洋諸国にとって解放の日である8月15日、小泉首相は、内外の強い反対を押し切り、挑発的・挑戦的に靖国神社への参拝を強行した。私たちは、小泉首相のこの暴挙を満身の怒りをもって弾劾する。
 8月15日の靖国参拝は、アジア・太平洋諸国に多大な犠牲を生み出した日本の侵略戦争を美化し、植民地支配を正当化することに他ならない。それは、侵略され、植民地にされた苦難の歴史をもつ韓国や中国に対する悪意と敵意に満ちた挑発行為・侮辱行為であり、外交関係を根底から破壊する行為である。それだからこそ、現役首相による8月15日の靖国参拝は、1985年の当時の中曽根首相を最後に、実に21年間も封印されてきたのである。

 小泉首相の靖国参拝は明らかに憲法違反である。2005年の大阪高裁、2004年の福岡地裁で、小泉首相の参拝が憲法の政教分離原則に違反するという違憲判決が出て確定している。一国の首相がその国の憲法に違反するというのは、およそ法治国家の首相としては最低、最悪の行いである。この問題について、小泉首相はぬけぬけと、「憲法上の思想及び良心の自由、まさに心の問題だ」と述べた。しかし、そもそもこの問題が政治焦点化したのは、小泉自身が総裁選の公約としたからである。先の大阪高裁の違憲判決は、靖国参拝が小泉首相の政治公約であったということを違憲判断の最大の根拠の一つとしているのである。自ら政治の中心課題としておきながら、それに対する批判が高まると「心の問題」として逃げるのはあまりにも卑劣なやり方である。私たちは、このように憲法を愚弄する態度を決して許してはならない。

 中国政府や韓国政府は即座に、首相の靖国参拝を批判する厳しい『抗議声明』を発表した。中国の北京や韓国のソウルの日本大使館前では、激しい抗議集会が展開された。中国や韓国をはじめとするアジア諸国政府とその人民が小泉首相の靖国参拝に強く抗議するのは、それが過去の侵略戦争を美化しているからだけではない。日本政府が進めている、海外派兵を主任務とした侵略部隊への自衛隊の改変や、中国や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を想定した軍事力の強化と日米同盟の強化、米軍再編、基地移転等々がアジア諸国にとって直接的な脅威となっており、それが靖国参拝と深く結びついてとらえられているからに他ならない。

 小泉首相は、「国のために犠牲になった人々を追悼するのがなぜ悪いのか」と開き直っている。これほど戦死者を愚弄する言葉はない。天皇制の下で天皇のために死ぬことを名誉と教えこまれ、侵略戦争の加担者として死んで行かされた旧日本兵達を本当に追悼することは、過去の侵略戦争の過ちを真正面から認め、犠牲者やその遺族たちに謝罪する事である。侵略戦争の最高責任者であった天皇の戦争責任を明らかにすることである。そして侵略戦争の精神的支柱であった靖国神社は、責任追及し糾弾されなければならない対象なのである。ことはA級戦犯だけの問題ではない。

 さらに小泉首相の靖国参拝は、アメリカの侵略戦争への加担と自衛隊の海外派兵における戦死を想定し、それを奨励する新たな危険性を持っている。実際、防衛庁の陸上幕僚監部がイラク特措法成立後の2003年8月、派遣隊員が戦闘で犠牲になった場合を想定し、靖国神社への合祀が可能かどうかを研究していたことが最近明らかになった。靖国神社は過去の侵略戦争に尽くした者の死を顕彰するだけでなく、現在のそして未来の新たな侵略戦争と戦死を称えるものにされようとしているのである。

 靖国神社参拝問題は、小泉首相の問題にとどまらない。次期総裁が確実となった安倍官房長官も、4月に靖国神社を密かに参拝していたことが明らかになっている。安倍氏は、女性国際戦犯法廷のNHK番組改竄問題の張本人であり、「つくる会」教科書採択運動の最先頭に立ち、ミサイル問題や拉致問題で北朝鮮強硬外交を押し進めてきた。首相の参拝強行によって靖国問題はポスト小泉政権の政治の焦点のひとつに浮上した。靖国参拝問題をあいまいにしたままで、どん底にあるアジア外交を立て直そうとすることなど絶対に出来ないだろう。
 私たちは、小泉首相の靖国神社参拝を糾弾するとともに、安倍氏の右翼的、復古主義的、アジア蔑視的、軍国主義的政治姿勢と政策を徹底して批判し、対決しなければならない。ポスト小泉の新政権による軍国主義化と反動諸政策、とりわけ秋の臨時国会の焦点になろうとしている教育基本法改悪に反対し葬り去るための運動を作り出していこう。


2006年8月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局