「テロ特措法」再延長法案の衆院可決を糾弾する!
◎海自艦船をインド洋から即時撤収せよ!
◎イラクから自衛隊を即時撤退せよ!


(1)憲法のみならず「テロ特措法」を破ってまで、イラク戦争に加担
 10月18日午後、衆院本会議において、テロ対策特別措置法の再延長法案が自民・公明などの賛成多数によって可決された。まともな審議さえ行わない、衆院選圧勝の数の力を背景にした強行採決である。
 「テロ特措法」をもとにしたインド洋、アラビア海への自衛艦の派遣はアメリカの侵略戦争への加担であり、平和憲法のあからさまな蹂躙である。しかも政府は、なし崩し的に同法の枠組みを大きく逸脱し、憲法のみならず法律を破ってまで、対アフガニスタン作戦における米艦船への給油からイラク攻撃を行う米と有志連合軍への給油さえ行っている。絶対に許すことは出来ない。この暴挙をわれわれは断固糾弾する。
*テロ特措法改正案、衆院本会議で可決…参院へ送付
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051018i212.htm


(2)最後まで賛成論に固執し小泉首相を援護した民主党・前原代表
 私たちが今回特に警戒するのは前原誠司が代表となった民主党の対応である。民主党は最後には、共産党、社民党とともに反対した。しかし前原代表は、10月4日に「テロ特措法」が閣議決定された直後から「事前承認は必要ない」などの発言を繰り返し、早々と反対しないことを表明した。そして党内からの反発を押さえ込む形で、実に採決日の18日の午前中まで、賛成を模索し続けたのである。前原代表は、本来の敵である小泉首相とではなく民主党内の「護憲派」と闘い、党分裂の危機に直面して土壇場でしぶしぶ反対を決めた。民主党は、反対の理由を、2001年のテロ特措法の成立時や2003年の延長時に主張した「国会の事前承認」という手続き論からさえ後退させ、「政府の説明不足」に求めただけであった。曲がりなりにも最大野党の代表が、侵略戦争への加担か否かという政府提出の重要法案で賛成で突っ走ろうとし、党内の反発によって賛成を断念する−−このような政党がどうやって与党と対決していくというのか。私たちは怒りと危機感を募らせずにはいられない。
*テロ特措法改正案、衆院通過 民主は反対 前原氏、持論より融和
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051019-00000003-san-pol


(3)日本の給油活動の目的は、インド洋、アラビア海での軍事的プレゼンスの維持
 現在、海上自衛隊はインド洋に補給艦、護衛艦各1隻を派遣している。その意味は、アフガン戦争を行う米軍への給油支援から、「有志連合軍」の常駐態勢の維持へと大きく変質している。これまで自衛艦は、11カ国の艦船に計約540回、約41万キロリットル(約160億円相当)の給油を無償で行ってきた。そのうち米艦船への給油は約310回、その他の国への給油は約230回にのぼる。
 11カ国の艦船は半年ごとに2グループに分かれ、「海上阻止行動」なるものを行い、小型船舶などを臨検し、乗組員を拘束しているという。日本の自衛隊は、「イスラム過激派」との闘いを演出するために派遣されたパキスタン軍艦船などに「無料のガソリンスタンド」として燃料を供給する事で、「有志連合軍」に引き留める役割を果たしている。そして、「有志連合軍」は、インド洋、アラビア海に常駐し、我が物顔で動き回っている。給油量がピーク時の10分の1に激減しているとしても、日本が「有志連合軍」の一員として常駐し続けることに大きな意義を見い出しているのだ。
*テロとの闘い 多国籍軍支援に成果 国は決意を明確に (読売新聞 解説 9月17日)


(4)海外派兵「恒久法」を見据え、インド洋自衛艦常駐にしがみつく小泉政権
 さらに「テロ特措法」再延長と自衛艦の派兵継続・常駐化は、海外派兵「恒久法」制定を見据え、それを先取りするものである。現在日米が進めている「在日米軍再編協議」では、日本の自衛隊の新たな役割を、@米が対テロ作戦を行う地域へのP3C哨戒機やイージス艦の派遣、後方支援、Aイラクのような侵略戦争後の米軍支援と「復興支援」、B大規模災害での救援活動への自衛隊派遣などを想定し、自衛隊が米軍が世界中で行う軍事行動の任務を代替・補完できるようにしようとしている。これは、アフガン戦争における「テロ特措法」、イラク戦争における「イラク特措法」のように時限立法ではなく、いつでも発動できる「対米支援恒久法」の制定を前提としている。「テロ特措法」を延長し続け、「給油のため」という口実の元に自衛艦を常駐させ、イージス艦やP3C派遣のモデルケースにしようとしているのである。
*自衛隊、米軍任務を代替 対テロ・災害復興で 再編協議中間報告 (日本経済新聞 10月6日)


(5)「テロ特措法」にも、「イラク特措法」にも反対! 一切の戦争加担をやめ、自衛隊は今すぐ撤退せよ!
 「テロ特措法」の延長は、イラク情勢とも深く結びついている。イラクでは、「有志連合」の中枢であるイギリス軍、オーストラリア軍にも撤退論が出始めた。両軍は来年5月にもイラク・サマワからの撤退を検討している。そうなれば、自衛隊は、丸裸でサマワの駐留を継続しなければならなくなる。
 小泉首相は、今年12月には、「イラク特措法」の延長を強行し、自衛隊のイラク・サマワ駐留を継続しようとしている。しかし、サマワ撤退を余儀なくされた場合の、対米協力継続のいわば「保険」として、自衛艦のインド洋派遣を継続しようとしているのだ。実際、サマワから今春撤退したオランダ軍は、近く部隊をアフガンに派遣する。英軍もサマワ撤退の代わりに、アフガンに派遣することを検討している。アフガニスタンとインド洋・アラビア海での常駐体制の追求は、アメリカの「対テロ戦争」を支援し「有志連合軍」を維持するための政治的意味を持っているのだ。
 このような中で、テロ特措法が可決された18日、航空自衛隊が行っているクウェートからイラク国内への輸送支援について、米政府が、仮に陸上自衛隊がサマワから撤収した場合も継続するよう日本に要請していることが明らかになった。また、輸送先をバグダッドなどに拡大することも要望している。これは、日本政府の「サマワ復興支援」の宣伝にも関わらず、「イラク特措法」に規定された二次的業務、すなわち武装米兵や軍事物資のイラクへの輸送こそが、本来の米軍支援であることを暴露している。
*イラク復興の空自支援、陸自撤収後も継続を…米が要請
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051019-00000001-yom-pol

 イラク人民、アフガニスタン人民の命を奪い彼らの民族自決の権利をこれ以上弄ぶことは許されない。私たちは、「テロ特措法」にも、「イラク特措法」にも反対である。日本政府は一切の戦争加担をやめ、自衛隊艦船をインド洋から撤収させ、イラクから自衛隊を撤退させるべきである。


2005年10月21日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局