パンフレット案内
共謀罪の危険
自由に議論することが
犯罪とされる社会をつくる」


憲法改悪・教育基本法改悪に反対する連続講座 第3回
「共謀罪が危ない!!差し迫る国会成立の危機」

弁護士 永嶋靖久さん講演録


 このパンフレットは、5月7日に署名事務局が開催した「憲法改悪・教育基本法改悪に反対する連続講座第3回 共謀罪が危ない!! 差し迫る国会成立の危機」での弁護士永嶋靖久さんの講演録です。永嶋さんは講演の中で、「共謀罪は、自由に議論することが犯罪とされる社会をつくるものだ」とその危険性の本質を明らかにし、共謀罪法案の危険性を詳しく説明しています。永嶋さんは、与党修正案やさらには民主党修正案も厳しく批判しました。

 民主党案丸呑みという奇策も失敗に終わり、共謀罪法案の今国会での強行採決・成立の危険性は遠のきました。与党による幾度もの強行採決を遅らせてきたのは、全国の反対世論、反対運動の力です。しかしながら、法案は継続審議になる可能性が強く、私たちはあくまでも廃案を目指さなければなりません。
このパンフレットを活用し、共謀罪反対の大きな世論を作り出していきましょう。

2006年6月4日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




A4版 42ページ 頒価400円 (送料別)

お申し込み、お問い合わせは署名事務局まで。
e-mail: stopuswar@jca.apc.org
*パンフレットご希望の方は、宛て先と希望冊数をお知らせください。
パンフレットと振り込み用紙をお送りします。代金は後払いで結構です。





[パンフレットの内容目次]

発行にあたって

講演録 「共謀罪は、自由に議論することが犯罪とされる社会をつくる」

連続講座アピール
 「話しただけ」で罪になる新たな治安弾圧立法 「共謀罪」の導入・新設を阻止しよう!

共謀罪とは何か(永嶋靖久さん講演レジュメ)


〔資料1〕共謀罪が適用される事例集

〔資料2〕1996年度近畿公安調査局内部資料の抜粋・
   インターネット上の合衆国に関する記事から

〔資料3〕共謀罪が適用される法律名一覧

大阪労働弁護団メーデービラ





発行にあたって

 共謀罪法案は、今国会で成立させられてしまうのか、阻止できるのか、決定的に重要な局面に入りました。マスコミも共謀罪の危険性を取り上げ始め、世論の動向が急速に変わりはじめています。法務省は「共謀罪Q&A」という異例のホームページを立ち上げ、「弁明」に躍起になっています。政府・与党は勢いを失っています。全国からどれだけ共謀罪反対の声をあげていくのかによって法案の行方が決まっていきます。

 私たちは、多くの人々が共謀罪法案の危険性を知り、反対の世論と運動をさらに強めて行くならば、2回にわたって廃案になったきわめて危険な共謀罪法案を最後的に葬り去ることができる−−このような確信を持って、急遽このパンフレットを発行することにしました。
 このパンフレットは、5月7日に私たち署名事務局が開催した「憲法改悪・教育基本法改悪に反対する連続講座第3回」の弁護士永嶋靖久さんの講演録です。「共謀罪が危ない!! 差し迫る国会成立の危機」と題した講演会には、危機感をもつ多数の市民が参加し、熱心に講演を聴き、質疑応答をおこないました。

私たちは、永嶋さんの講演を通じて、あらためて共謀罪法案の危険性について認識を深めました。共謀罪法案は、すでに犯した犯罪のみを処罰する(既遂処罰)という現行刑法の基本原理を根本的に転換するという、憲法違反のとんでもない法律であること、集会・結社・表現の自由を奪ってしまうこと、共謀罪の対象犯罪が自動的にどんどん拡大する仕組みをもっていること、文字通り「話しただけ」「目くばせしただけ」「よっしゃと言っただけ」で共謀罪が成立すること、一般の市民も対象とし2人だけでも団体と見なされてしまうこと、警察の捜査は「事件の証拠集め」から「相談の証拠集め」に変わってしまうこと、スパイ・盗聴・密告などが奨励される暗い社会をつくりだす危険性をもっていること等々。そして、永嶋さんは、対マフィアの国際条約を対テロに勝手にすり替え、共謀罪新設の根拠にしているのは日本政府だけだと、法案の根拠についても厳しく批判しました。

 また、永嶋さんは、自身が最近手がけた裁判などから、団体に所属しているだけで具体的証拠がなくても「幇助」「共犯」などとして有罪になる判例が増えていること、「共謀するような団体は、犯罪が目的の団体だ」とみなされ、事実上団体の構成員全体が一網打尽にされる危険性があること、まず共謀罪で逮捕をしてから証拠集めをするというようなメチャメチャな捜査がまかり通る危険性があることなどをわかりやすく説明しました。

 そして永嶋さんは、まさにこの法律は、世の中を「自由に議論することが犯罪とされる社会」に変えるものだと糾弾しました。
 確かに、一億人を越える日本の市民の「相談」を絶えず監視し、「悪いこと」を企めば片っ端から逮捕する−−このような状況はリアリティがないと思うかもしれません。しかし最近、米国家安全保障局(NSA)が通信会社に情報提供を要請し、全米2億人の通話・通信記録をブッシュ政権が監視・把握していたことが発覚しました。すでに外国と通信するすべての米国人の通話を令状無しに盗聴していることも暴露されています。アメリカでは「テロリスト」を摘発すると称して、事態はここまで進んでいます。

 一方、日本では、イラク派兵に疑問をなげかけるビラを撒いただけで逮捕され、公園の公衆便所に反戦の落書きしただけで若者が有罪とされています。また日の丸・君が代での起立を拒否しただけで、教職員が停職になるという事態も起きています。いずれも政府の政策に対する抵抗への弾圧です。消費税増税、医療制度改悪と負担増、年金の削減と保険料の増大。基地の押しつけ、自衛隊海外派兵、BSE牛の米からの輸入再開等々、対米最優先と戦争支持、弱者切り捨ての政策は、国民の中に反発を生み出さざるを得ません。政府がどのような政策を打ち出してきたとしても国民にそれを甘受させる−−しかし、このようなやり方には国民の不満や反対の世論が高まり、行動しようという動きがでてくる、その動きをあらかじめ察知し、「相談」の段階で逮捕し予防弾圧する、政府批判や反対運動を事前に封じ込める−−共謀罪はこのような目的を持っているのです。国民一人一人に関わっているのです。

これは、現在進められている教育基本法改悪、憲法改悪に向けた国民投票法作成という反動法案と一体のものです。少数のエリートを生み出すための差別選別教育と愛国心をもった従順で忠実な子どもをつくりをめざす教育基本法改悪、個人の尊厳を踏みにじり基本的人権を制約して戦争国家への道を開く憲法改悪。いずれも「国策」に異を唱えない国民づくりを目指しています。しかし、永嶋さんはいいます、「反対の議論が自由に出来る前提があれば、ひっくり返すことは出来る。しかし、自由に議論すること自体が犯罪といわれてしまうと、一番下の前提のところが壊れてしまう」。共謀罪法案は、これらの悪法の中でも特異な位置にあります。

 今国会には、共謀罪法案とともに監獄法改悪法案、少年法改悪法案、入管法改悪法案が上程されており、政府は世間の中に「安心」「安全」をもとめる風潮を作り上げ、市民監視と犯罪厳罰化の動きを強めようとしています。
 いま最も重要なことは、出来るだけ多くの人が共謀罪の危険性を理解し、まわりで話をし、抗議の声を国会やマスコミに届けることです。政府・与党は守勢に立たされています。廃案にすることは決して不可能ではありません。このパンフレットを活用し、共謀罪反対の大きな世論を作り出していきましょう。

2006年5月21日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




[参考記事]

憲法改悪、教育基本法改悪に反対する連続講座第3回報告
共謀罪の危険−−「自由に議論することが犯罪とされる社会」へ
「共謀罪が危ない!! 差し迫る国会成立の危機」講師:永嶋靖久さん(弁護士)