衆院本会議での強行採決糾弾!
教育関連三法案を廃案に追い込もう!


 本日5月18日、衆院本会議において、教育関連三法−−教育免許法「改正」案、学校教育法「改正」案、地方教育行政法「改正」案−−が強行採決された。14日の国民投票法の参院強行採決・成立に続く暴挙であり、数の力を背景にした安倍政権の暴走である。私たちは断固抗議する。

 安倍首相は自身の政治公約である憲法「改正」にむけて着実にコマを進めながら、昨年12月に成立させた改悪教育基本法の具体化に向けて突き進んでいる。教育関連三法改悪攻撃は、「日の丸・君が代」の強制はもちろん、今年4月に実施された、小中学校の序列化と市場化をもたらす全国一斉学力テスト、教職員評価・育成システム導入などの攻撃と一体のものである。
 私たちは何よりもこの三法案の本質を暴き立てねばならない。それは、教育基本法の改悪を受けて、「愛国心」・道徳訓をはじめ国家が法定した教育内容を、教える道具と化した教員が生徒に押し付ける教育体制を具体的に作り上げるための法的整備である。それらの実現のために、教職員を人事制度と差別給与体系によって支配し、「文科省→各教育委員会→学校(校長→副校長→主幹教諭→指導教諭→平教諭)」という上意下達のヒエラルキーを作り上げるものである。将来的には日米一体となった「戦争のできる国造り」を支える子どもたち、国のために喜んで死ねる子ども作りを目指すものである。公教育を破壊する安倍政権の教育改革=教育三法改悪を絶対に許してはならない。

政府・文科省の言うことに忠実なロボット教員を作り出す教免法改悪

 教育への国家統制、国家支配を狙う全面的な攻撃の中で、政府・文部科学省は、学校現場で実際に教育を担っている教職員の支配こそ最重要課題、戦略目標と考えている。その軸が教員免許更新制度である。
 現在国会に提出されている教育職員免許法の「改正」案は、これまで期限のなかった教員免許状を有効期限10年に制限するものである。免許を更新するためには10年毎に30時間程度の更新講習を受けねばならない。教員は子どもたちの教育や指導のためではなく、免許更新のために膨大な時間と労力を費やしなければならなくなる。そして「講習」という形で一つの思想改造を迫られる。これを受講しないと免許は失効する。さらに「指導が不適切な教員」と認定された者は研修を受けさせられる。研修修了時に指導が不適切と認定された者は、免職等の措置を受ける。安倍のいう「ダメ教師」は排除される。ここでいう「ダメ教師」とは、教育行政に忠実でない、「日の丸・君が代」の強制に反対し、「愛国心教育」や「道徳教育」を実践しない教職員、「全国学力テスト」に協力しない教員であることは言うまでもない。
[緊急投稿]子どもと学校に格差拡大と差別を押しつける全国一斉学力テストに反対する!

 教職員を支配するもう一つの重要なテコは教職員評価・育成システムとその結果の給与反映制度である。政府、教委の方針に忠実に従う教職員を高く評価し給与を上げる、批判的な教職員や自己申告票を出さないような教職員の給与は懲罰的に凍結する。差別賃金体系をテコに教職員を自分の思うとおりにしようとするやり口である。
 文科省は教員免許更新制と差別給与システムを通じて教職員を文科省、教育委員会、校長の言うことに従順に従うロボットに変えてしまおうと策動している。
※新勤評反対訴訟ホームページ
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/

管理職制度と「愛国心」教育で学校を支配する学校教育法改悪

 教員免許を担保に教職員を縛る教員免許法改悪とともに、学校教育法改悪は、政府が教育現場と教育内容を支配するための制度改悪である。
 学校は校長を「社長」とする一種の「経営体」に変化させられる。学校教育法「改正」案の規定によって、校長以下、「副校長」「主幹」「指導教諭」等、平教諭の上に各種の「中間管理職」が配置され上意下達の体制が飛躍的に強まる。校長、教頭を除けば皆が平等で相互に教育の専門家として協力して働くというこれまで当たり前であった体制は最後的に廃棄される。学校は校長を頂点に上から下に命令で動く組織へと変えられてしまうのである。そして、その学校全体を支配するのが教育行政である。
 さらに行政は、上に述べたヒエラルキーをベースに、学校教育法改悪で「我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度」を義務教育の持ち込み、「愛国心教育」さらには「規範意識」「公共の精神」に基づく「道徳教育」の推進を盛り込んできている。学校教育法「改正」案を受けた新学習指導要領は「愛国心教育」「道徳教育」を全科目で要求することになるだろう。

国による教育委員会への権限強化を狙う地教行法改悪

 地方教育行政法改悪は、国・文科省による各教育委員会に対する権限強化を狙っている。「緊急に生徒等の生命・身体を保護する必要が生じ、他の措置によってはその是正を図ることが困難な場合等」という但し書きをつけながら、文部科学大臣は、教育委員会に対する是正・改善の「指示」ができるようになる。「地方分権」によって失った地方教育委員会への命令権(是正要求)を奪い返し、再び上からの命令で全国を支配しようとしている。この条文が成立すれば、「全国学力調査」への参加を拒否した犬山市教育委員会など、教育委員会の「怠り」と断じられて「是正の要求」を突きつけられ、否が応でも文部科学大臣に従わせられる。なぜなら「教育委員会や学校等の教育機関は、文部科学大臣・都道府県教育委員会が行う調査に協力するものとすること」との条文が滑り込まされたからである。さらには、私学を監督する知事が必要と認めるときは、教育委員会に対し、学校に関する専門的事項について「助言・援助」を求めることができるとして、私学行政に対する教委の関与も法案に滑り込ませた。

教育三法改悪に反対し、廃案をめざして闘おう!

 残念ながら国会内で三法案そのものに反対する勢力はきわめて少数派にとどまっている。衆院での強行採決は、最大野党民主党の対案路線の破綻を改めて示した。徹底した反対の姿勢を示した上での対案提示ではない。腰が最初から引けている。むしろ教免法改悪、学校教育法改悪については自民党と選ぶところのない議員も存在する。
 しかし、安倍の「教育再生」、参院選を念頭に置いた教育政策での強硬路線の推進はさまざまな矛盾を引き起こさずにはおかないだろう。現にアリバイ的に行われた「教育改革」についての地方公聴会においても、現職の中学校校長から「教員評価が給与の面にまで影響を与えると、教員の和を保つことが難しい」という発言がでるなど、教育現場に耐え難い矛盾を引き起こす可能性があることから強い反発が生み出されている。それは一言で言えば公教育の破壊である。改悪教基法の成立過程で噴出した教育における深刻な諸矛盾−−自殺にまで至る深刻ないじめ問題、学力・受験偏重主義教育、学校選択制の導入による公教育の差別・選別化、教育格差の拡大、教職員に多発する精神疾患による休職や過労死、自殺問題等々−−が、改悪教基法の具体化によって一層深刻化する危険がある。私たちは絶対に安倍流「教育改革」を許してはならない。教育三法改悪に反対し、廃案を要求して闘おう。

2007年5月18日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局