小泉首相12月9日記者会見を検証する−−デマと強弁に終始
「人道復興支援」は隠れ蓑。「正当防衛」「テロとの戦争」を口実に武力行使を宣言

(1)小泉政権失速の第一歩。歴史的闘い迫られる反戦平和運動。
 小泉政権は遂に進退窮まった、瓦解と転落の第一歩を踏み出した。私たちはそう考えます。一昨年の春以来、行き当たりばったり、その場限りの思い付きとはったり、「抵抗勢力との闘い」「自民党をぶっ壊す」というデマゴギーはもはや国民に飽きられました。実際、こうした腐敗したマスコミの意図的な小泉礼賛、小泉幻想の下で進んだのは何だったのか。一方で金融的経済的危機とデフレの悪化の下での労働者・勤労者の首切りと賃下げ、増税と様々な負担増、労働と生活の著しい悪化であり、他方で軍国主義と政治反動の急速な進行でした。衆院選挙で明らかになったように、今や自民党を支えているのは公明党であり、このつっかえ棒を外せば瓦解状況になるところまで、自民党と保守反動政権は空洞化しつつあります。ただその中で近視眼的で幼稚な極右勢力、親ブッシュ勢力だけが元気なのです。

 このような中、小泉首相は12月9日、自衛隊派兵「基本計画」を閣議決定し、その日の夕方、記者会見に臨みました。ブッシュの派兵圧力と日本の国内非戦・反戦世論の板挟みにいよいよ答えを出さなくてはならなくなったのです。もちろん米に恫喝されてです。国民からもイラク派兵に関して全てを秘密裏に運ぼうとし異常なまでの「かん口令」をひいたことを批判され、かつまた派兵に関する「説明不足」を厳しく追及されました。今年の6〜7月に「イラク特措法」を強行採決した後、衆院選でも争点から外し逃げ回ってきたのですが、いよいよどん詰まりにきたのです。

 結果は皆さんがご承知の通り。ウソとデマ、詭弁と強弁で、「テロとの戦争」を豪語し、まるで戦争への決意表明のような「説明」でした。首相は、最後的に平和憲法を破る歴史的決断をしたわけです。あの太平洋戦争の敗北以来、公然とは海外に侵略部隊を派兵できなかった日本が遂にその枠組みを破ろうとしているのです。戦後初めて侵略軍を送るのを許すのか否か。私たち反戦平和運動も正念場です。

 今回の首相判断は強さの現れでも考え抜かれたものでもありません。保身とやけくその決断なのです。慎重論を書き立てるメディアを批判するほど焦っているのです。質疑応答で記者から「万が一のことがあった場合、どう対応するのか、政治責任も含めてお考えを伺います。」と聞かれ、「後のことは、どういう責任が生じるか、その時点で私が自分で判断いたします。」と責任回避を決め込んだのです。どこまでも無責任、行き当たりばったり。私たちは小泉首相を何としても首相の座から引きずり降ろさねば、この国を本当に戦争国家、警察国家へ道連れにするでしょう。
※「政府批判ばかりやるな」 首相、報道機関に注文(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031211-00000224-kyodo-pol


(2)「対テロ戦争」への参戦という本音を前に出した首相。一か八か、進退窮まり、やけくそで“正面突破 図る。
 本来理屈の通らぬことをしようとする人間は、「言い訳」だとわかっているから「強弁」せざるを得ず、常に「視点が定まらぬ」ものだから苦しい顔つきになるように、首相の会見はまことに見苦しいものでした。聞くにつれ怒りがこみあげ、果てはあまりのウソとハッタリと曲解とその恣意性にあきれかえるようなものに終始したのです。しかしその結果は非常に危険です。首相はどん詰まりになって非戦・反戦世論の方ではなくブッシュの方を選んだのです。

 今回の首相の記者会見を一言でいえば、“正面突破”を図ったと特徴付けられます。「基本計画」も記者会見も、@「人道復興支援活動」、A「安全確保活動」の2本柱から成りますが、ごまかしの論理は非常に単純なものです。言葉の上では「人道復興支援」を声高に叫びながら、それを隠れ蓑にして「安全確保」、つまり米軍・占領軍(サマワの場合はオランダ軍がこれに加わる)とともに、治安弾圧作戦を担う、占領に反対するイラク民衆のゲリラ闘争、レジスタンス、大衆行動を武力で鎮圧するという正真正銘の武力行使、侵略戦争を行うというものです。
※イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画
http://www.kantei.go.jp/jp/fukkosien/iraq/031209kihon.pdf

 開口一番、首相は「これはイラクの人道復興支援のために活動してもらうということです。武力行使はいたしません。戦闘行為にも参加いたしません。戦争に行くのではないんです。」と強調しました。しかしこれは真っ赤なウソです。質疑応答で本音を出しました。下記の発言を読んで下さい。全て記者会見の発言です。はっきりと対テロリストへの「正当防衛」を口実に戦争を宣言しているのです。終始一貫してブッシュの米軍を支持支援してきた日本が「正当防衛論」と重武装でイラク現地に「人道復興支援」するなど、誰が信じるでしょうか。これは“戦争挑発行為”でしかありません。しかも「武器使用基準」は緩和どころか、曖昧なまま。「先制攻撃もあり」などという声も上がっています。
※銃口向けば危害射撃可能 イラク派遣で防衛庁(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031211-00000017-kyodo-soci
※「治安活動参加も検討を=自衛隊海外派遣で安倍自民幹事長」(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031211-00000661-jij-pol
自民党幹事長は、単に「正当防衛」だけではなく、積極的に米軍と一緒に「治安維持」活動をすべきだと主張するまでエスカレートしている。

 イラク民衆の側から考えて下さい。イラク民衆からの公式のかつ正当な要請も何もないのに日本は一方的に他国領土に踏み込むのです。しかも陸海空全軍を率い重装備で武装した1000名規模の軍隊が、「正当防衛論」を掲げて事実上占領者である米軍に加勢するのです。れっきとした侵略軍です。これに反撃することのどこが「テロリスト」なのでしょうか。本末転倒、白を黒と言いくるめるデマゴギーです。結局小泉首相は自国に侵攻してきて自国民の安全を脅かす軍隊に抵抗する人民を「テロリスト」と称してなぶり殺すことを国内外に宣言したに等しいのです。

●「テロリストというものに対して正当防衛はしなければいけない。そのための装備はしていかなければならない、十分考えていかなければならないと思っております。正当防衛までも武力行使に当たるとは私は思っておりません。」

●「日本が人的支援をしたからテロをするんだ。そんなことにおびえて、日本が国際社会でテロをなくそうと、テロを撲滅しようと、テロ対策をしようと、国際社会で協力しながらやろうとしているときに、日本が自衛隊を出したからテロの標的にする。そこに屈して、果たして日本はどうなるんでしょうか。国際社会と協力してテロ撲滅に当たらなければいけないと言っている言葉はどうなるんでしょうか。テロに屈してはならない。そのために、国際協調体制を築いていくことが重要だと思っております。」

●「今回のイラクの復興支援についても、日本だけが「危険だから行くな」、「危険なことはほかの国でやってくれ」と言って、本当に国際社会の中で名誉ある地位を占めたいという憲法の理念にかなうんでしょうか。私はそうは思いません。今こそ、イラクに安定した民主的政権をつくるために国連安保理の決議によって、すべての国連の加盟国にイラクの復興支援に努力してくれという訴えに応えるときではないでしょうか。テロに屈してはならない、イラクの復興、安定した政権をつくるために日本も相応の支援をする必要があると思います。」

 また首相は繰り返し、「一般国民には出来ない」「自衛隊だからこそ出来る」などと言いますが、何のことはない「戦争」なのです。なるほど一般国民に出来ないのは当然です。そして「戦意は高い」「士気は高い」と戦意発揚まででっち上げているのです。首相は閣議決定後、石破防衛庁長官を通じて、自衛隊員に直接「参戦を讃えるメッセージ」を送ったという。
※「危険な任務果たしてほしい 首相が自衛隊にメッセージ」(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031211-00000167-kyodo-pol
 「メッセージで首相は「危険な任務であるが、自衛隊は日ごろから努力して訓練を行ってきた。自衛隊は、自衛隊でなければできない任務を果たしてもらいたい」と励まし、「政府としても最大限の努力をしたい」と派遣を後押しする世論作りなど環境整備に努力することを約束した。」と言う。

●「そういう点を考えますと、私は自衛隊だから行ってはいけないという、そういう考えは取っておりません。一般国民にできない仕事を、自衛隊が日ごろの訓練によって鍛えております、装備も持っております、一般国民にできない仕事を自衛隊ならできるんです。  自衛隊の諸君は、今回の状況に対して、どのような心境でいるか、私も心配しております。しかし、防衛庁長官から聞くところによりますと、多くの自衛官諸君が命(めい)に応え、使命感に燃えてイラクに赴くという決意を固めているということを聞きまして、誠に心強く、誇りにも私は思っております。」

●「一般の国民にはできない、日ごろの厳しい訓練に耐えて、あえて決して安全ではないかもしれない、危険を伴う困難な任務に決意を固めて赴こうとしている自衛隊員に対しまして、私は多くの国民が、願わくば、敬意と感謝の念を持って送り出していただきたいと思います。」

●「一般市民にはできない、自衛隊だからこそできる活動を自衛隊諸君はしてきてくれるんです。私は、今回もイラクに赴いて、イラク市民の必要な、イラク市民から歓迎されるような活動を自衛隊が行うことは、必ずや今までの活動と同じように高い評価を受けるものだと思っております。」

●「その際に、自衛隊だったならば、一般市民のできないような日ごろの訓練もしております。危険を回避する努力もできます。また、危険を防止する装備も持っております。一般国民にはできないことを自衛隊ならできる分野があると思ったから自衛隊の派遣を決断いたしました。
 そういう必ずしも安全とは言えないかもしれないけれども、危険を伴う困難な任務に、使命感に燃えて行ってみようと決意している自衛隊職員に対して、私は心から敬意を表したいと思っております。」


 まさにこれは9・11以降、ブッシュ政権が始めた「テロとの戦争」への参戦表明です。しかしすでにイラク戦争・占領の泥沼化が証明しているように、このブッシュの戦争は出口のない戦争に次ぐ戦争という未来でしかありません。国際法をも無視した他国への侵攻、侵攻に対する反撃、反撃を上回る徹底した暴力の行使という「暴力の連鎖」「憎悪の連鎖」しか生みだし得ようがないからです。
 これこそ20世紀に二度もの凄惨な世界大戦を経験した人類の教訓、その教訓が生みだした日本国憲法が最も否定したことではないでしょうか。次にその憲法解釈のデタラメを取り上げましょう。


(3)「戦争することが名誉あること」!?−−現行の平和憲法を戦争憲法だと正反対にねじ曲げる驚くべき憲法解釈。
 驚くべきことに、首相は憲法前文を持ち出して、自衛隊の派兵と戦争を正当化しました。首相は憲法を持ち出して“奇策”を気取ったのでしょうが、子供だましもいいところです。会見「冒頭発言」の中ほどで、自衛隊派遣が憲法違反ではないかという声があると牽制しつつ、しかし「憲法をよく読んでいただきたい」、これこそ国際社会が「日本国」と「日本国民」に求めているものであり、自衛隊はこれに合致する活動をまさに行うのだと読み上げた憲法の前文を読んだのです。(首相はこの会見の一週間前から、会見に望むために他の準備は一切せずこの暗唱のみにあてていたと揶揄され、それを書いた紙は演台にうち捨ててあったという裏話つきですが)。
※小泉内閣総理大臣記者会見[イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画について]12月9日「内閣総理大臣の談話」
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/12/09press.html

 何よりもまず第一に、現憲法の基本精神、基本理念は、二度と戦前の天皇制軍国主義の暗い過去、侵略戦争と植民地支配に明け暮れた戦争に次ぐ戦争の過ちを繰り返さないという「平和国家」の枠組みを規定しているのです。小中学生なら分かり切ったこの常識を、文章のつまみ食いでねじ曲げたのです。全体の意味を無視し、一部を意図的に切り取って、自己に都合の良いように利用するのを“詭弁”といいます。いつもは首相を持ち上げるメディアでさえ、さすが反論を載せざるを得ないほどです。憲法への冒涜と愚弄、私たちは首相のこの「奇策」を逆に利用して、ここで大いに護憲論議を巻き起こしていきましょう。なぜなら、今回の首相発言ではっきりと戦争勢力と平和憲法との“対決点”が明らかになったからです。
※イラク・自衛隊派遣 「ねじ曲げた解釈」 首相の憲法引用に弁護士や学者ら憤り/広島(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031212-00000003-mai-l34

[詭弁その1]憲法前文のねじ曲げ。後半の一部だけを借用。
 以下は憲法前文です。首相が切り捨てた部分を太字で示しました。良く読んで下さい。説明する必要はありません。一目瞭然でしょう。

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

[詭弁その2]憲法第9条を無視し切り捨て。
 小泉首相は武力の放棄と、交戦権の放棄を謳った憲法第9条には一切触れませんでした。言うまでもありません。自分のやりたいことに都合が悪いからです。自衛隊派兵は「交戦権の放棄」を全否定するものだからです。表題はまさしく「戦争の放棄」、首相が言う「テロとの戦争」を含めて、一切の戦争を放棄するのが、現在の憲法の崇高な理念、目的なのです。 

第2章 戦争の放棄 第9条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


[詭弁その3]首相が借用した前文の引用もデタラメ。
 実は首相が借用した前文部分の一字一句もまた、ウソ・デタラメなのです。

 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」――9/11以降、米ブッシュ政権は、アフガニスタンそしてイラクの人民に「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」など与えたでしょうか。米が両国人民に与えたものはまさに「恐怖」でしかなく、「平和のうちに生存する権利」を奪うことだけだったのではないですか。それとも米が言う「ならず者国家」や「テロリスト国家」の人民はその指導者と同様にそのような権利などないと言うのでしょうか。今またイラクで米軍は「テロリスト掃討」を口実に大規模な作戦を開始しているのです。そこで行われることはイラク人民に対する虐殺と虐待、国土と農地の焼尽等まさにベトナム戦争末期に米軍が行ったと同様の行為です。そんな「戦争状態」の真っ只中にいよいよ自衛隊を送り込もうと言うのです。

 「われらは、いづれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって・・・この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」――首相が引用した部分のみならず憲法前文に貫いている精神は、武力・軍事力の行使なき、徹底した「平和主義」「平和外交」によって日本国政府と日本人民が国際社会に栄誉ある地位を占めねばならないという、文字通り「崇高な理想と目的」です。「戦争外交」=「対テロ戦争」への参戦、「戦争国家」への道とは正反対のものです。日本国憲法に基づく恒久平和と善隣協力関係に裏打ちされた平和外交など、憲法前文が指し示す道に真っ向から敵対するものです。
 

(4)「人道復興支援」など大ウソ。真の人道復興を叩き潰し、妨害する自衛隊派兵。
 小泉首相は、記者会見で「人道復興支援」を隠れ蓑に使いました。しかしその詳細を一切語りません。なぜでしょうか。現地が「人道復興」どころではないからです。

[人道復興支援のウソ・その1]米占領、米の大規模掃討作戦の下で、真の「人道復興支援」などあり得ない。それを言うなら米占領の廃止、米軍の撤退を要求すべき。
 ブッシュの5月1日の「戦闘終結宣言」以降、イラク領土からの米英軍や外国軍の撤退を要求する反米・反占領闘争とゲリラ戦が急速に高まっているからです。石油資源や領土支配の野望を抱く米英の帝国主義に対して抵抗しそれを駆逐する民衆の運動は全く正当なもの、国際法上合法なものです。「テロリスト」というレッテル張りは決して許せません。
 彼らイラク民衆は、主権回復、自国資源の確保、民族自決権の回復を要求しているのです。彼らは自分たちが国の将来を決めると主張しているのです。イラク民衆の真の民主政権が樹立されなければ、まともな人道復興支援など不可能なのです。もし人道復興というなら、真っ先に米英の占領中止、米英軍の撤退を要求すべきです。ましてや自衛隊を派兵してこれに加勢することではありません。片手でイラク人を殺しながら、もう一方の手で援助するなど不可能かウソ、デタラメです。

[人道復興支援のウソ・その2]“砦”に閉じこもるのが「人道復興支援」なのか。
 想像して下さい。「基本計画」によると、「テロリスト」から「安全」を「確保」するために、砂漠の真ん中に強固な“砦”を作り、そこを重火器とコンクリートで固めて、時たま水の浄水活動や公共設備の復旧等に装甲車で出向くといったものです。しかし実際には、“砦”に閉じこもる期間の方が多くなるだろうというのが専門家の一致した見方です。これはアリバイ工作以外の何物でもありません。

[人道復興支援のウソ・その3]無反動砲、対戦車弾、軽装甲機動車でイラク民衆を威嚇すること、「正当防衛」で銃撃戦・砲撃戦をすることが「人道復興支援」なのか。
 一体、人道復興支援をするのに、なぜ拳銃や小銃、さらには機関銃、はては無反動砲や個人携帯対戦車弾といった重火器、さらには軽装甲機動車まで必要だと言うのでしょうか。陸上自衛隊のこうした武装は、戦車を除けば、戦争に必要な武器全部と言ってもいいのです。現に派遣予定の部隊は「対テロ戦」の銃撃、砲撃訓練を終えてから出発するというではありませんか。
 今陸上自衛隊が派遣予定のサマワでは失業者たちの職を求めるデモが連日行われています。そこで「治安を預かる」オランダ軍が民衆に発砲する事態まで起こっています。サマワでもし自衛隊がオランダ軍と同様な振る舞いを行ったとするならば、自衛隊を標的とした「暴動」が起こるとさえ囁かれています。そんな場所へのこのこ出かけていって米軍に支援を行う。これはイラク人民にとっては米軍と同様の「敵」であり、標的でしかありません。

[人道復興支援のウソ・その4]米軍の武器・弾薬・兵員の輸送が「人道復興支援」なのか。
 しかし航空自衛隊や海上自衛隊はもっと露骨なものです。アリバイ的に「人道復興援助物資」を運搬することはあっても本質は別、「安全確保支援」と称して米軍と一体となった活動を行うのです。例えば米軍の武器や弾薬、兵員の輸送です。小泉首相は会見で「武器・弾薬の輸送は行わない」と言い放ちました。下記の記者会見録をよく読んで下さい。

【質問】 今回、武器弾薬の輸送は行われるんでしょうか。
【小泉総理】 武器弾薬の輸送は行いません。
【質問】 行わない。
【小泉総理】 行いません。
【質問】 それは、実施要項の中とかで担保されるんですか。
【小泉総理】 そうです。
【質問】 そういうことですか。
【小泉総理】 はい。復興支援活動であります。日本は戦争に行くのではありません。自衛隊は復興人道支援活動に行くんです。


 しかし、その舌の根も乾かぬうちに福田官房長官は記者会見の翌日12月10日、首相発言を否定しました。しかも小泉首相までがこれを追認したと言うではありませんか。ウソ、デマ、ごまかし・・・・。万事がこの調子です。自衛隊の最高司令官はこんなデタラメな人物なのです。
※自衛隊派遣>「武器持つ兵士輸送も」 福田官房長官(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031210-00001052-mai-pol
※「武器・弾薬除外」を軌道修正=「対米支援」無視できず−イラクでの兵員輸送(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031210-00000422-jij-pol
※「武装兵士輸送」を記載=イラク派遣実施要項−防衛庁(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031212-00000817-jij-pol

[人道復興支援のウソ・その5]自衛隊派兵で人道復興支援してきた日本の民間NGOが敵視され出国せざるを得なくなる。これが「人道復興支援」なのか。
 軍隊が「人道復興支援」をやるなんてウソ、デタラメか、何か魂胆があるからです。イラク現地でボランティア活動をやってきた人々は口をそろえて、自衛隊派兵の危険と逆効果を指摘します。自衛隊派兵によって「逆に出国せざるを得なくなった」とも言います。本当の人道復興支援を追い出しておいて、何が「人道」、何が「復興」なのでしょうか。「人道復興支援」を真剣に考えていない証拠です。
※「サマワはNGOも視野の外 『軍隊』の人道支援に潜む危険」東京新聞2003/12/10
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20031210/mng_____tokuho__000.shtml
この記事によれば、「イラク北部のモスルで戦争からの避難民の援助活動を六月上旬から十月下旬まで行ったNGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」の三好正規さんは「国際的には、戦時の人道支援はNGOと国連が主体となり中立的に行うのが常識。日本の顔として軍隊が入ってくれば、それが崩れることになる。外国人なら誰でもテロのターゲットになるといわれる昨今、日本のNGOは今後、どう見られるのか。活動への影響は避けられない」と首をかしげる。」「外務省邦人保護課によると、イラクで活動する日本のNGOは三月の戦争開始直前まで一、二団体の五、六人が滞在していた。ブッシュ米大統領が五月に行った戦闘終結宣言後は、ピースウィンズ・ジャパンやJVCなど五、六団体の約十人が常時駐在していた。しかし、十一月下旬のラマダン明けの騒乱を警戒してほとんどがイラクから脱出。同月二十九日に外交官が襲撃されて以降、日本人NGOはいない状態という。」

[人道復興支援のウソ・その6]「人道復興支援」を言うなら米軍による劣化ウラン/ウラン使用と放射能汚染の事実を認めるべき。被爆国として放射能戦争への加担は許されない。
 小泉首相は、記者会見では一言も「大量破壊兵器」のことを語りませんでした。もはや“大義名分”などないことを自ら証明したようなものです。代わりに持ち出したのが「人道復興支援」です。
 しかし劣化ウラン/ウラン弾こそが大量破壊兵器であり非人道兵器です。「人道復興支援」を言うなら何よりもまず小泉政権が、米軍による劣化ウラン/ウラン弾の大量使用の事実を認め、サマワとイラクの人々の命と健康を破壊している深刻な現状を認めるべきです。自衛隊派兵は放射能戦争への加担であり、共犯者になることです。被爆国として断じて許せません。
 私たちが最近招請したUMRCのドラコビッチ博士が語ったように、イラク全土が劣化ウラン/ウランで汚染されています。しかもかつての湾岸戦争と違って今回の激戦地は砂漠ではなく都市部です。かつてとは比較にならない大勢の劣化ウラン/ウラン被曝者がイラク全土に生み出されているのです。
 米政府に対し、劣化ウラン/ウラン弾の使用場所と使用量を明らかにさせ、その撤去と汚染除去、住民の健康調査、医療・治療と補償を要求することが必要なのです。
 もちろんサマワも汚染しています。自衛隊員が行けば確実に被曝します。しかし政府は交戦用の重装備には一生懸命ですが、被曝測定・被曝防護・被曝医療など一切指示していません。イラクの人々の命はもちろん自衛隊員の命も何とも思っていないのです。劣化ウラン/ウランによる被曝と汚染の事実の否定−−この点だけから言っても政府に「人道」や「復興」を語る資格はありません。
※サマワで高レベルの放射線 劣化ウラン弾の影響か(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031211-00000025-kyodo-soci

(5)その他、記者会見での首相のウソ、デタラメはとどまるところを知らない。

−−「イラク国民から歓迎される活動をしなければならないと思っております。」「イラクの安定した民主的政権をつくるために、米英始め、各国が協力しております。日本も国際社会の責任ある一員として、イラクの国民が希望を持って自国の再建に努力することができるような環境整備に責任を果たしていくことが必要だと思います。」「まず、イラク人の、イラク人による、イラク人のための政府をつくらなければならない。そして、イラクの国民が希望を持って、自国の安定と発展のために活動したいと多くのイラク国民は願っていると思います。その支援のために、私は自衛隊の派遣が必要だと考えて判断したわけであります。」 −−米が占領と石油支配に固執し、イラク民衆が希望を抱けなくなっていることをわざと隠しています。

−−「どの国も国際社会も、「米軍、手を引け」という言葉は聞かれません。そういう中で国際協調を図っていかなければならない。日本にとってアメリカは同盟国であるし、日本もアメリカにとって、信頼に足る同盟国でなければならないと私は思っております。」−−フランス、ドイツ、ロシアや国連の大多数の加盟国、圧倒的多数の世界の民衆が「米軍、手を引け」と言っていることは周知のことです。

−−「もし今、米軍が手を引いて、イラクのテロリストの脅迫に屈して日本が手を引くということになって、一番不安定になるのは世界であり、イラクの国民であり、その被害を被るのは日本であります。」−−イラク民衆の反米反占領闘争が拡大し激化しているのは、米が撤退しないからです。首相は全く正反対のことを主張しているのです。

−−「自衛隊は、今まで海外の活動で、多くの成果を挙げてきております。今から12年前初めて海外活動を自衛隊は行いました。ペルシャ湾での掃海活動、その後十数年の間においてカンボジアでのPKO活動、モザンビークでのPKO、ルアンダでのPKO、ゴラン高原でのPKO、インド洋での対テロ支援、東ティモールでのPKO、いずれも規律正しい自衛隊諸君の活動は、現地の住民から歓迎され、評価されて、強い信頼関係を築いてまいりました。」−−これまでのPKO活動と今回のイラク侵略への加担とを同一視する問題のすり替え、デマゴギーです。等々。等々。これでもう十分でしょう。

2003年12月12日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局