戦争と貧困、食糧危機、地球温暖化危機、原油・資源暴騰をもたらした張本人たちが集まる
G8洞爺湖サミットに反対する!


政権危機の首脳たちが集う洞爺湖サミット

 7月はじめ、G8洞爺湖サミットが行われます。これまで欧米で行われてきたサミットには、会場と主催都市に反グローバリズム運動や反ネオリベラリズム運動が結集し、激しい現地行動、抗議行動を展開してきました。今回の特徴は、客観的には、今春から世界中で繰り広げられている食糧危機と原油高騰に対するデモンストレーション、ストライキ、暴動、大規模な大衆行動の真っ直中で開催されることです。今年の議題となるのは、「地球温暖化問題」、「生物多様性問題」、「アフリカの貧困問題」、「核とテロ対策」、「食糧危機問題」などですが、それぞれの問題が大きく、また利害対立を抱えていることから、何を中心議題にするのかさえ定まらない状態です。いずれも人類の生存と地球環境そのものを根底から脅かす全人類的な危機です。そしてG8に集まる首脳たちは、他でもないこれらの矛盾を生み出した張本人たちなのです。私たちは、彼らがあたかも世界の指導者であるかのように振る舞う洞爺湖サミットの開催そのものに反対します。
 G8サミットの国々と首脳たちは、例外なく政治的危機に陥り末期症状を示しています。イラク戦争の盟友であるアメリカ、イギリス、日本が特に顕著です。まずホスト国の福田政権は支持率わずか10%台に落ち込み、参院で問責決議を突き付けられました。後期高齢者医療制度をきっかけに人々の不満は爆発し、衆院山口補選に続き、沖縄県議会選挙でも自公与党は敗北を喫しました。戦争に明け暮れたブッシュ大統領は、その政治的威信を回復できないまま、来年1月で任期切れとなります。英ブラウン首相は、統一地方選、ロンドン市長選、英下院補欠選と次々と政治的敗北を喫し、瀬戸際に追い込まれています。
 このような、いずれも死に体化した首脳たちがあつまって一体を何を議論し取り決めようというのでしょうか。
※福田内閣支持率:政権発足以来最低の18% 医療など不評
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2008/05/02/20080503k0000m010054000c.html
※ブッシュ米大統領の不支持率71%、歴代大統領で最悪
http://www.cnn.co.jp/campaign2008/CNN200805020022.html
※英下院補選、労働党が大敗 ブラウン首相さらに窮地に
http://www.asahi.com/international/update/0523/TKY200805230305.html

温暖化阻止のため、原発に頼らない厳しい総量規制、国別排出量削減を

 G8の最大の焦点の一つが温暖化問題です。この問題での日本政府の役割は犯罪的です。議長国として主導権を握るべく、2050年排出量60〜80%削減(2005年比)を打ち出しましたが、これ自身法的規制のないアドバルーン的な長期目標に過ぎません。5月に行われた環境サミットでは、中期目標の設定を先延ばししました。6月9日発表の「福田ビジョン」の20年までの05年比14%減という「中期目標」は何の責任も伴わない排出予想でしかありません。90年比ではわずか4%減です。その達成は原発稼働率を84%に挙げるという非現実的な前提に立っています。また諸外国が反対するセクター別積み上げ方式です。厳しい総量規制ではなく、排出権取引という市場原理に依拠しています。日本の「温暖化対策」とは、低利円借款による省エネ投資の支援などに名を借りて更なる途上国支配のテコとしようというものに過ぎません。それはまた、国内版CDMすなわち大手企業が中小企業のCO2削減を「支援」した見返りに排出権を取得できるという、系列化=中小企業支配のテコでもあります。
※「低炭素社会・日本」をめざして
http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaspeech/2008/06/09speech.html
 環境戦略を軸にしたドイツ・EUと石油依存浪費構造を続ける米・日との対立は鮮明です。しかし、EU諸国の要求もそれほど強いものではありません。このままでは、深刻な地球温暖化を食い止めるための一切の実行ある措置が回避される可能性が高くなっています。私たちは、京都議定書における「柔軟性措置」である「排出権取引」や「クリーン開発メカニズム」(CDM)、「共同実施」(JI)などの市場メカニズムに依拠するのではなく、原発に頼らない厳しい総量規制、国別排出量削減に実際に乗り出すことを要求します。

 アフリカの新たな債務奴隷化反対

 福田政権は、アフリカ問題に力点を置き、5月のアフリカ開発会議(TICAD)と連動させ、千載一遇のチャンスとばかりに、アフリカ支配を強めるテコにしようと動き始めました。それは、国連常任理事国入りへの支持を取り付けるという露骨な政治的意図と結びついています。福田は、対アフリカで、5年で40億ドルの円借款、5年で25億ドルの国際融資をぶち上げました。新たな債務を課し、さらに借金漬けにしょうというのです。アフリカは、石油やレアメタルなどの獲得をめぐる資源戦争の集中点であり、とりわけ中国とのせめぎ合いの中にあります。日本政府はそれに遅れまいと、また最近活発化している日本のグローバル独占資本の進出を後押ししようと、「援助」外交を展開しているのです。しかし、援助をエサにしたアフリカ首脳とのマラソン会談にもかかわらず、日本支持を表明したのは53ヶ国中17ヶ国にとどまりました。国連ミレニアム開発目標で問題にされているアフリカの極度の貧困と飢餓とは、帝国主義によるどう猛な収奪と支配そのものであり、温暖化問題、生物多様性の問題、食糧危機の問題、対テロ闘争の問題と不可分一体の問題です。アフリカにおける貧困の撲滅と自立した発展のための喫緊の課題は、まさに先進国による「援助」の名目で強制される借款をやめさせ、債務を帳消にすることです。そして資源メジャーの武力による支配と略奪をやめさせ、グローバル独占資本による権益を取り上げること、エイズ薬などをはじめ知的所有権を放棄させることです。
※アフリカ開発会議 日本の分野別温室ガス削減策、明確な支持得られず
http://data.news.goo.ne.jp/article/sankei/world/e20080530016.html?C=S
※「アフリカ資源を狙え」日本、官民連携外交へ
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=100558&servcode=A00&sectcode=A00&p_no=&comment_gr=article_100558&pn=2

 凶暴な投機マネーとアグリビジネス支配、バイオ燃料がもたらした地球規模、同時多発的な食糧危機

 アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国を中心とするグローバルな食糧危機の爆発は、投機マネーのコモディティ市場への流入と価格暴騰、特に米国の対中東戦略・エネルギー自立化戦略に基づくバイオエタノール転換を原因としています。そして昨夏のサブプライム危機は投機マネーを穀物市場に向かわせる転機となりました。地球人口60億人の内、現在8億5千から10億人が飢餓状態にあり、さらに数億人が新たに加わるとされています。IMFでさえ「静かな大量虐殺」と表現しているほどです。
※米、主導権発揮へ バイオ燃料反論 GM作物普及の思惑 食糧サミット
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080603-00000135-san-int
 6月3日からローマで行われた食糧サミットでは、アリバイ的なわずかの「食糧」支援が決定されたにすぎません。焦点となったバイオ燃料についてもアメリカの抵抗によって、「詳細な検討」を呼びかけるにとどまり根本的な規制に踏み込むことはできませんでした。食糧危機の根底には、WTOが農業の自由化を途上国に強制し、農業のグローバリゼーションを推し進めた新自由主義路線があります。米国を筆頭に食料輸出大国から途上国に安価な食糧が殺到し、伝統的な現地の主食農業はことごとく崩壊してしまいました。また食糧危機の背景には、生物多様性の破壊と結びつく、カーギルやデルモンテなどのアグリビジネス、モンサントやシンジェンタなどの巨大種子ビジネス、遺伝子組み替えビジネスによる世界の農業市場独占があります。彼らは、知的所有権を独占し、自由貿易協定で市場をこじ開け、さらに食糧危機を逆手にとって、遺伝子組み替え作物への代替と化学肥料、農薬の拡大へと突き進もうとしています。このようなアグリビジネスのやりたい放題を放置すれば、危機はますます激化するばかりです。早急な規制が必要です。

 全世界的規模で爆発する食糧暴動、デモ、ストライキ

 全世界的な規模で、とりわけ食糧高騰問題、原油高騰問題に対して闘争が爆発しています。食糧危機に対する暴動、反乱は、危機が最も深刻なアフリカに集中しています。カメルーン、コートジボワール、モーリタニア、ギニア、マリでの大暴動、セネガルやブルキナファソでの激しい抗議デモ。ブルキナファソはで6月8日から物価高騰に抗議する全国ストライキに発展しました。世界銀行はアフリカなどの途上国や最貧国33カ国が政治・社会的混乱の危険に直面していると警告しています。中東では、エジプトで4月、パンの高騰で暴動が起き90人以上が死傷しました。アジアでは、6月5日よりインドの西ベンガル州で燃料高騰に端を発したゼネストが全土に拡大しました。タイのバンコクでは民営路線バス約200台がデモンストレーションを敢行ました。インドネシアでは5月に抗議デモの学生が暴徒化し、マレーシアでも軽油値上げに対する抗議デモが闘われました。中米ハイチでは抗議行動が、首相解任の事態にまで発展しました。
※食糧危機:きしむ世界/1(その1) 暴動で政権倒れたハイチ
http://mainichi.jp/select/world/news/20080602ddm001030082000c.html
※食品・燃料の高騰、アフリカで拡大する社会不安
http://www.afpbb.com/article/economy/2374792/2805530
 さらにヨーロッパでも動きが始まっています。フランスの漁師は5月中旬から燃料値上がりに抗議してストライキを繰り広げ、イギリス、スペイン、ポルトガル、イタリアへと波及、港湾封鎖などのデモが拡大しています。またイギリス、フランスではトラックやタクシーの運転手、さらには救急車までもが抗議に合流しています。ドイツでは南部を中心に酪農団体が牛乳の出荷を停止する無期限ストを続けています。日本でも、漁業団体が一斉休漁に入ることを決めました。
※原油高、世界が悲鳴 デモ暴徒化・マグロ休漁…
http://www.asahi.com/business/update/0607/TKY200806070269.html?ref=goo
 食の安全の問題でも火がつき始めています。韓国では、BSE牛の輸入規制撤廃をめぐって、市民からの爆発的な反対運動が立ち上がり、6月10日の100万人集会にまで発展しました。李明博大統領は窮地に陥っています。米韓自由貿易協定(FTA)押しつけに対する反米意識と結びついて物価高に対する怒りが爆発し、民主労総のゼネストにまで発展しようとしています。
※韓国、最大のデモ 米産牛肉問題
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080611AT2M1004810062008.html

ネオリベラリズムとグローバリゼーションの行き詰まりの中で、「持続可能な社会」の実現の道を探る

 人類の生存の危機、地球規模の危機は、石油の浪費と石油のための戦争、持続不可能なテンポでの資源略奪と無政府主義的資本主義的生産・浪費構造、グローバル独占資本による地球環境を犠牲にした利潤追求等々と深く結びついています。これらの危機は、とりわけ80年代以降加速したネオリベラリズムとグローバリゼーションの行き詰まりと破綻です。このような歴史的で全面的な危機に対して、もはや小手先だけの「対策」で対応することなど不可能です。またG8にその能力も意志もありません。人類の生存とと地球環境を守るためには、G8である先進国のくびきからの脱却によって、「持続可能な社会」を実現していくという選択しか残されていないというようなところまで来ているのです。
 洞爺湖サミットにむけて、日本では「G8サミット市民フォーラム北海道」「G8サミットを問う連絡会」「G8サミットNGOフォーラム」などが結成され、途上国搾取や温暖化と闘う海外の著名人やグループを招いて交流と反対行動を準備しています。アイヌを北方の先住民族とみとめ権利保障を要求する立場で、世界の先住民族が集う「先住民族サミット」も開催されます。私たちもこれらの動きに合流し、戦争と貧困、食糧危機と食の安全の危機、地球温暖化危機、原油・資源暴騰、自然と生物多様性破壊、化石燃料依存という諸矛盾からの脱却の道を探っていきたいと思います。

2008年6月17日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局