自民・公明・民主賛成による
宇宙基本法成立に断固抗議する!
宇宙開発を、侵略戦争加担と軍事的恫喝のテコとしてはならない


(1)宇宙基本法が5月21日、参院本会議で成立した。40年近くにわたって宇宙の軍事利用を禁止し続けてきた国会決議を覆す法律が、衆院併せてわずか4時間の議論で、与党だけでなく民主党まで賛成にまわって可決、成立したのである。全くの異常事態である。私たちは断固抗議する。
※ミサイル監視衛星も保有可能に 宇宙基本法が成立(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0521/TKY200805210132.html
 1969年に採択された宇宙の平和利用に関する国会決議では、日本政府は国連の宇宙条約にある「宇宙の平和利用」を「非軍事」と解釈し、宇宙の軍事利用を厳しく禁じてきた。宇宙基本法は、その国会決議にあった「平和の目的に限り」の文言を削り、「日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ」という一文を入れてお茶を濁している。このことで民主党は賛成に回ったという。「非軍事」の原則を破棄し勝手に「非侵略」と解釈し直し、「防衛」の名の下に軍事利用に踏み切ろうというのである。
 宇宙基本法成立は、宇宙開発の目的を「平和目的」から「安全保障」へ変え国家戦略として位置づけ推進するという宇宙政策の大転換である。従来の文部科学省や経済産業省などに分散したやり方から、軍事が先導する形で推進する。つまり、アメリカの侵略戦争加担という日本の軍事政策に従属させる形で宇宙開発を進めるというとんでもない法律だ。内閣に首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を置き、宇宙基本計画をつくる。その元に防衛省も参画する宇宙局が作られる。基本法には宇宙開発を「我が国の安全保障に資するよう行わなければならない」と明記されている。宇宙開発の主従が完全に逆転し、防衛省が発言力を強め、「安全保障」=軍事が最優先されるようになるのである。
※宇宙基本法(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16601050.htm

(2)この宇宙軍拡構想には、自民党国防族議員、軍需産業、財界の強い意志が強く働いている。自民党は05年、「日本の安全保障に関する宇宙利用を考える会」を発足させ、69年の国会決議の見直しを強硬に追求してきた。「宇宙利用を考える会」は、石破茂が座長となり、額賀福志郎、久間章生ら自民党国防族議員・防衛閣僚経験者、安全保障専門の学者、防衛省(庁)幹部、軍需産業が一体となって宇宙軍拡をごり押しする組織である。日本電気、三菱重工業、三菱電機、IHI、川崎重工業、アイ・エイチ・アイ・エアロスペース、東芝、日立製作所らが「専門委員」に名を連ねている。
※宇宙基本法成立「産業化へ弾み」・航空宇宙工業会会長(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080521AT1D2105121052008.html
 彼らにとって、苦境に陥っている宇宙開発の現状を打破し、防衛予算の頭打ちの元でいかに軍需産業の利益を確保するかが大きな関心の一つである。総額6兆円というミサイル防衛は、軍需産業の生き残り戦略の中心環であり、かつ宇宙開発の維持強化策の中心でもある。このミサイル防衛を進めるために、宇宙の軍事利用の制約を取り払おうというのだ。日本経団連は、04年7月「今後の防衛力整備のあり方について」、06年6月「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」等々において、宇宙の軍事化競争の流れから取り残される危機感から、また衰退の危機にある軍需産業を救うために、とりわけミサイル防衛と日米共同開発、そのための武器禁輸三原則の見直しを執拗に提言してきた。今回の異様な形での宇宙基本法の成立は、このような流れの中にある。
※ 今後の防衛力整備のあり方について(日本経団連 2004年7月20日)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/063.html
※ わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言(日本経団連 2006年6月20日)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/046/honbun.html

(3)さらに現に行っているイラク派兵、アフガン派兵との関係、さらには海外派兵恒久法との強い結びつきがある。「宇宙を考える会」は、06年に「我が国の防衛宇宙ビジョン」を発表し、ミサイル防衛システムや衛星による偵察活動とあわせて、イラクやインド洋へ自衛隊を派遣した際の通信インフラについて、宇宙の軍事利用を進める必要性を論じている。海外に派遣した自衛隊を迅速に展開し、通信網を「即時開通、利用」するためには「専用の通信衛星が不可欠」と主張するのである。彼らによれば、イラク派遣では通信容量と安全の確保に数カ月から1年を要し、インド洋給油への派遣では音声通信しか利用できていないという。自衛隊の海外展開、軍事即応体制をささえるために、「自律的宇宙インフラ」を整備しようというのだ。
※宇宙基本法:MD、通信網で活用 原点は「政産官」勉強会(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080522k0000m010090000c.html
 この動きは、海外派兵恒久法制定と一体のものである。政府は恒久法の合同プロジェクトチームを早急に設ける方針を固めている。現在狙われている海外派兵恒久法では「安全確保活動」「警護活動」「船舶検査」など事実上の戦闘行為が海外任務に追加され、武器使用基準が大幅に緩和さてしまう。集団的自衛権行使に踏み込む危険性を持っている。これに加えて軍事衛星による情報収集、軍事通信などを自前でできる体制を作り出し、米軍の要請があればどこへでも展開できる体制を構築しようとしているのである。
 だが、すでに名古屋高裁は、バグダッドが戦闘地域であり、武装米兵の輸送は武力行使に当たることから、イラク派兵は違憲であるとの憲法判断を下している。イラクやアフガンでの米の軍事作戦に対する後方支援が憲法違反であるとすれば、軍事衛星による支援が許されるはずがない。 
自衛隊イラク派遣違憲判決(名古屋高裁)が確定===憲法9条の意義を改めて確認し、平和的生存権を具体的に認めた画期的判決(署名事務局)

(4)宇宙基本法は、アジア周辺諸国への恫喝であり、軍事的脅威を与えずにはおかない。監視性能の優れた高解像度の偵察衛星、ミサイル防衛(MD)で弾道ミサイル発射を瞬時に探知する早期警戒衛星−−など朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、中国を対象とした敵対的監視システムを想定している。また、上記のように、宇宙も含めた大規模な形でアメリカの侵略戦争に加担する自衛隊海外派兵の条件を整備し、自衛隊のより侵略的な軍隊への変貌を促すことになってしまうだろう。ミサイル防衛やイラク・アフガン海外派兵への情報提供を行う軍事衛星などは明らかに「専守防衛」を逸脱している。あからさまな集団的自衛権の行使である。宇宙軍拡を進めることで集団的自衛権行使を既成事実化してしまう危険がある。
日米同盟のグローバル侵略同盟化に向けた条件整備 集団的自衛権行使「個別研究」をやめよ!(署名事務局)
 だが、軍事最優先、人民生活切り捨ての福田政権の支持率は落ちつづけ、いまや2割を切るまでになっている。宇宙基本法と宇宙の軍事利用の具体化を批判し阻止する闘いはまだまだこれからである。戦争加担反対と人民生活防衛を結びつけ、運動の力で福田政権との対決を強めていこう。
※クローズアップ2008:毎日新聞調査・支持率18% 危険水域の福田内閣
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20080503ddm003010087000c.html
※内閣支持19%、不支持65% 本社世論調査
http://www.asahi.com/politics/update/0519/TKY200805190225.html

2008年5月22日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局