防衛省疑惑を徹底追及し、新テロ特措法を廃案に追い込もう!


(1)次々と発覚する防衛省疑惑は、対米軍事加担最優先路線の矛盾の噴出

 10月23日から新テロ特措法の質疑が特別委員会で始まったが、一連の防衛省がらみの疑惑が噴出し、野党からの批判だけでなく、与党内部からも臨時国会延長と衆院再議決の強硬姿勢に対して異論が相次いでいる。福田首相は、国会延長を強行したとしても、新法案を可決・成立させる展望を全く描けないでいる。新法案との闘いを、インド洋での給油の継続問題に止まらず、福田政権と自民党支配を掘り崩すための大きな契機としていかなければならない。
 守屋前事務次官と軍事専門商社「山田洋行」「日本ミライズ」との癒着、とりわけ次期輸送機(CX)エンジンの受注をめぐる贈収賄事件にとどまらない。辺野古基地建設に絡む元防衛相への利益供与も含め、防衛省全体、政官財の一大疑獄事件になる様相を呈してきた。給油問題についても、「F76」といわれる特殊な米軍艦船用燃料の契約、220億円とも330億円とも言われる巨大利権の中身が隠されたままである。イラク流用疑惑での補給20万ガロンのねつ造と隠蔽工作、イラク派遣補給艦航海日誌の破棄等々−−防衛省、テロ特措法がらみで次々と吹き出すスキャンダルは決して偶然でも一過性のものでもない。「防衛利権」に深く結びつき、米軍再編を強硬に推し進め、防衛省に昇格させ、海外派兵を強行した小泉・安倍の対米協力最優先、軍事同盟強化の中でこれまで闇に封じ込められてきた矛盾が、与野党ねじれ国会の政治的緊張の高まりのもとで、ここにきて一気に噴出しているのである。そして守屋前事務次官こそ、2002年1月に防衛局長、そして2003年8月に事務次官に上り詰め、テロ特措法とイラク特措法、一連の有事関連法、米軍再編法等々を指揮してきた張本人に他ならない。29日の守屋の証人喚問は、これまで隠されてきた闇利権や政官財の癒着構造、対米加担を最優先した制服組の暴走の事実を新たに明るみに出す契機となるだろう。徹底して追及しなければならない。

(2)改めて明らかになったテロ特措法と給油活動の犯罪性

 この間の国会論戦などを通じて改めて明らかになったことは、2001年からまともな議論もなく3度も延長されたテロ特措法が、6年間にもわたってブッシュの侵略戦争と大量殺戮を支え続けてきたとんでもない法律であったということである。集団的自衛権の行使に他ならない憲法違反、テロ特措法そのものの違反が公然と行われていた。アフガニスタンへの空爆を直接的に支援し、戦争行為であるはずの臨検活動と一体となって航行船舶の乗組員の拘束を支援し、イラク戦争準備と大規模空爆に加担し、イラクへ掃討作戦要員を派遣する米艦船に給油するなど、比重の大きさに違いはあるとしても、アフガニスタン戦争からイラク戦争へとアメリカが立て続けに行った侵略戦争の主要な作戦に対して日本がテロ特措法を通じて加担してきたのである。
 「低姿勢内閣」などと言いながら、提出された新法案は、危険きわまりない内容となっている。当初案では浮上していた「給油艦への補給はしない」「海上阻止行動支援に限定」などの制約を一切取り払い、現行法にある国会事後承認さえ削除し、インド洋からペルシャ湾に至る広範な海域での活動を認めるている。国民から真実を覆い隠し、米の軍事行動への加担のフリーハンドを得ようというに等しい。

(3)「80万ガロン」の隠蔽は、制服組、背広組、政府も関与!?

 給油燃料のイラク戦争流用問題については、争う余地のない事実となった。問題は、それを指示し、また真実を隠蔽した責任に発展する。イラク戦争直前の2003年2月25日に補給艦“ときわ”が米の補給艦ペコスに約80万ガロンの燃料補給を行い、対イラク作戦に向かう空母キティホークに間接給油を行った問題では、03年5月に当時官房長官であった福田が「瞬時で使用してしまう量」などといってイラク戦争流用疑惑を否定した「20万ガロン」がウソであることが明らかになった。福田は「取り違え入力ミス」などとしらばっくれたが、当時すでに「ミス」は発覚していたにも拘わらず、海上幕僚監部(制服組)の協議の上で組織的に隠蔽され、その後も福田や石破が4年以上も「20万ガロン」のウソを堂々と答弁し続けてきたのである。政府は、この問題を「シビリアンコントロール」の問題に解消しようとした。しかし、この「入力ミス」の情報は海幕だけでなく、政府の応答要領を作成する防衛省内局(背広組)にも伝わっていたことが明らかになっている。制服組だけでなく、背広組、政治家も含めた組織ぐるみ、政府ぐるみの隠蔽であったのは間違いない。当時の官房長官であった福田も、防衛庁長官であった石破も自らの責任を明らかにしなければならない。

(4)給油活動の全貌を明らかにし、イラク戦争転用の責任をとれ!

 「取り違え入力ミス」の発覚は、新たな事実を暴露することになった。ペコス向けとされた20万ガロンは米駆逐艦ポール・ハミルトンに対して“ときわ”から直接給油された量であった。そしてこのトマホーク搭載の駆逐艦ポールハミルトンこそ、当時イラク戦争に対する先制攻撃を準備していたのである。
 しかしペコスもポールハミルトンもキティホークも氷山の一角である。給油延べ回数777回全体が問題にされなければならない。すべての情報が開示されなければならない。とりわけイラク戦争開戦前後には、海自の給油活動が急増したことが明らかになっている。1日に7回も補給活動を行うフル回転であったという派遣自衛隊員の証言もある。2005年には、沖縄に駐留する米海兵隊をイラク国内に投入するためペルシャ湾北部に派遣された巨大なドック型揚陸艦ジュノーに給油した事実も当時のジュノー艦長が証言した。
 さらには、防衛省が「テロリスト拘束」と誇示した2003年末から2004年はじめにかけての臨検・拘束活動が、実は「イラクの自由作戦海上阻止行動」というイラク侵略戦争の一環としてペルシャ湾で行われたことも明らかになっている。この拘束活動を実行したのは、補給艦“ときわ”が給油した強襲揚陸艦ペリリューを中心とする遠征攻撃群である。また、03年3月の補給艦エリクソンへの給油実態は全く明らかになっていない。間接給油で「イラク戦に転用」された可能性が極めて高い。おなじく“ときわ”から06年3月に補給を受けたミサイル駆逐艦ディケーターは、イラクの自由作戦と不朽の自由作戦に従事していた、等々。
 政府は問題が発覚するごとに米軍関連のホームページの閉鎖を依頼して証拠隠滅をはかったり、「入力ミス」などとデタラメを繰り返してきたが、もはや破綻は明かである。18日には、米国防総省自身が「艦艇が『複数の任務』を受けることもあり、任務ごとの追跡調査は困難だ」とする報告を出し、転用疑惑を事実上認めた。
 さらに問題にしなければならないのは、イラク転用を前提にした給油活動を認めた責任の所在である。現場の指揮官が権限を逸脱してイラク戦争に従事する米艦に給油したのか、海上自衛隊のトップが指示したのか、政府がわかった上で許可していたのか、あるいは全く知らなかったのか、それとも米軍のやることには一切関知せず白紙委任をしていたのか、責任が徹底して問われなければならない。

(5)今年にはいっても行われている、アフガン空爆=無差別殺戮への加担

 アフガニスタン戦争との関係でも、改めて大量殺りくへの直接的関与が暴露されている。日本政府はあたかも給油活動がもっぱらインド洋での「海上阻止行動」艦船に対して行っているかのように語っていた。しかし、国会での追及を受けて、アフガニスタンに対して空爆を行う空母や駆逐艦などに対する給油を認め、「アフガン戦争当初はやっていた」「いまはやっていない」(高村外相)などと修正を行った。米軍がコンバット・ゾーン(戦闘地域)と指定するアラビア海北部などで、アフガニスタンに対して出撃・爆撃を加える米艦船に対する給油活動を行っていたことが暴露された。それは、「戦闘行為には直接関与しないから集団的自衛権の行使ではない」との言い訳さえ成り立たない。侵略行為と一体の活動である。
 だがそれは「当初」だけではなかった。2006年9月にはイオウジマ遠征攻撃群の中心、強襲揚陸艦イオウジマへ補給艦“ましゅう”が給油を行い、2週間近くに渡って艦載機ハリアーが136回もアフガニスタンを攻撃したことが明らかとなった。その後この遠征攻撃群はイラク攻撃に作戦を転じている。また、2007年2月17日にはアイゼンハワー空母攻撃群から艦載攻撃機スーパーホーネットなどが200回に渡って空爆を行っているが、その攻撃群に属するイージスミサイル巡洋艦アンツィオに対して補給艦“とわだ”より給油が行われている。この攻撃群もまた、3〜4月にはイラク攻撃に転じた。海上自衛隊は今まさにおこなわれているアフガニスタン人民の大量殺戮に直接的に加担しているのである。これらの遠征攻撃群、空母攻撃群などは、アラビア海からペルシャ湾の広大な海域を作戦海域とし、アフガニスタンとイラクへの攻撃を好き勝手に行っている。自衛隊が給油した燃料が、「海上阻止行動」を行っているときだけ消費されているなどというデタラメが通用しないのは明らかである。
 「海上阻止行動」への加担の犯罪性も追及されなければならない。一体何人の無実の乗組員たちが海上で不当拘束され、「アルカイダ」「テロリスト」のレッテルを貼られ、悪名高い収容施設グァンタナモ基地に送り込まれたのか。日本政府が「海上阻止行動」への協力を正当化するのであれば、グァンタナモで起こっていること、のみならずCIAが全世界に張り巡らした秘密拘束施設で起こっていること、ジュネーブ条約と国連憲章を蹂躙した拷問・弾圧についての責任を明らかにしなければならない。

(6)世論と運動の力で、戦争協力法=新テロ特措法を廃案に!

 問題の核心は、テロ特措法が、インド洋からアラビア海、ペルシャ湾、紅海、オマーン湾、アフリカの角におよぶ中東海域の軍事作戦を担う米中央軍第5艦隊に対する支援法として存在し、「不朽の自由作戦」と「イラクの自由作戦」、「海上阻止行動」を区別することなく給油活動を行ってきたという事実である。したがって、インド洋、アラビア海であろうとペルシャ湾であろうと米艦船への給油を行うことは、これらアメリカの軍事作戦に対して全面協力することに他ならない。そもそも油に色は付いていない。日本政府は、中東の「石油利権」を確保するために、シーレーンでの米の軍事行動と軍事的プレゼンスに関与し続けなければならないと考えているのだ。
 イラクでは、サドル派の離脱で最後的危機に陥ったマリキ政権のもとで、市民の犠牲が急増し、400万人とも800万人とも言われるおびただしい数の難民・避難民が生み出されている。開戦来の民間人死者は100万人を突破した。米軍に対する攻撃も激増している。アフガニスタンでは、昨年末から今年に入って犠牲者が激増している。米軍による空爆と掃討作戦が激しさを増しているのだ。アフガン政府の発表でも、今年4月から8月までの5ヶ月間で民間人が1000人以上死亡し、すでに昨年一年間の死者の2倍以上に上っている。
 ペシャワール会の中村医師は、「『殺しながら助ける』支援というものがあり得るのか」「『国際社会』や『日米同盟』という虚構ではなく、最大の被害者であるアフガン農民の視点にたって、テロ特措法の是非を考えていただきたい。」と、米の侵略戦争とそれを支援する日本政府を厳しく指弾している。
 世論の動向と運動の力が決定的に重要である。新テロ特措法に反対する行動は徐々に大きくなりつつある。給油活動についての世論調査は賛成、反対が拮抗し、再び反対が増える傾向にある。11万6千人が結集した教科書検定沖縄集団自決削除反対の沖縄県民集会、米軍再編強化に反対する全国各地での反基地闘争、元日本兵の侵略行為の証言集会、日本軍「慰安婦」の証言集会など軍国主義化と反動化反対、過去の侵略戦争の責任追及の闘いが、粘り強く闘われている。私たちもこれらの闘いに積極的に参加し、強く結合して給油活動反対闘争を闘っていきたい。防衛省疑惑−−贈収賄、燃料のイラク戦流用問題、隠蔽工作等を徹底追及し、福田政権に対する批判と闘争を強化し、アメリカの無法な侵略戦争へ戦争協力法案を絶対に葬り去ろう。

2007年10月26日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局