11月第2週がヤマ場。反対の声を集中し、教基法改悪採択を絶対に阻止しよう!
−−政府・与党内の綻びを突いて強行採決にストップを−−


(1) 教育基本法に関する特別委員会の審議が10月30日から本格的に始まりました。教育基本法改悪が今国会で成立させられてしまうのかどうかの最大のヤマ場にさしかかっています。政府・与党は、先の補欠選挙での勝利を追い風にして、一方では「共謀罪」法案の議論を後回しにするなど万全の体制を取りながら、他方では「すでに50時間も審議をした」などと居直り、ひたすら「審議時間の超過」を狙い、11月第2週(11月6日から始まる週)に照準を定め強行採決に持ち込もうとしています。
 野党4党は教基法強行採決阻止で共闘を強めることを確認しています。地方公聴会の開催などをめぐって激しいせめぎ合いが行われています。私たちは、教基法反対の声を一層強め、集中しなければなりません。特に民主党が安易な取引に走ることを許してはなりません。

 10月19日に始まった教基法改悪に反対する国会前のリレーハンストは多くの参加者を迎え入れて継続しています。ハンストを取り囲むように、日教組組合員の座り込みも継続しています。日教組は「非常事態宣言」を出し、ここにきて闘う姿勢を強めています。11月8日には、国会を包囲する「ヒューマンチェーン」(人間の鎖)が提起されました。そして最大の結集点として11月12日の「教育基本法の改悪をとめよう!11.12全国集会」が準備されています。
 私たちは、与党議員への反対と抗議の声を送ると共に、野党議員に対する激励の声をとどけ廃案まで徹底して反対し闘うよう求めたいと思います。周りの人に教基法改悪反対の声を広げ、国会にメール、ファックス、電話を送りましょう。

(2) 教基法改悪がヤマ場を迎えるまさにその時に、教基法をないがしろにする政府・文部科学省や教育委員会・校長のデタラメな「教育」の実態が一斉に暴露され始めました。学校での「いじめ」を苦にした子どもの自殺問題の噴出、教委と校長による隠蔽、有名公立・私立高校の大学受験優先と必修授業の切り捨て、これにかかわる校長の自殺、教員にひろがる精神疾患の増加や過労死、自殺等々。必修科目不履行問題には意図的なリークの臭いがしますが、しかし事態はおそらく思惑を越えて広がっています。
 そしてこれらは学力偏重主義や受験競争と落ちこぼし、教職員に対する締め付けと統制、数値目標を掲げた異常極まりない競争の強制など、子どもたちや教職員に対して加えられる極度のストレスが噴出したものに他なりません。重要なことは、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」という教基法の基本精神に立ち返り、これら教育を巡る諸問題を具体的に丁寧に議論し検討していくことです。教育基本法の改悪ではなく、教育基本法を適用することこそが求められているのです。ところが安倍は、こうした諸矛盾を「だから教基法を変えなければならない」と逆手に取ろうとしています。伊吹文明文科相は特別委員会審議冒頭、法改正を視野に、教育長任命の際の認可権を文科相に付与することなど教育に関する国の指揮監督権限強化を図る考えを露骨に表明しました。教育現場の責任になすりつけたり、現場の「規範意識」の問題にすり替えることなど、もってのほかです。右翼勢力と「教育再生会議」の主導権奪取のために利用することも、断じて許すことはできません。

 私たちが主張してきたように、上記の諸矛盾は、どれもこれも政府・与党の教基法改悪案が成立すれば、さらに加速し深刻化しそうなものばかりです。こんな状況の下で、安倍が掲げるような「教育改革」、すなわち全国学力テストや学校間競争を煽り立て、学校・教員・子どもを序列化し、「勝ち組・負け組」を作ればいったいどうなるのか。しかも、これに反対し子どもたちを守ろうとする良心的教員たちを「教職員評価・育成システム」と成果主義賃金で格差付けし、果ては教員免許制度で「不適格教員」に仕立てて教育現場から排除すればいったいどうなるのか。そして行き着く先、「愛国心」教育や「公共心」教育、ボランティアの強制などを乱暴に推進する、「つくる会」教科書や日本会議などのごろつきのような右翼勢力が学校現場でやりたい放題をやればいったいどうなるのか。「教育再生」どころか、まさに「教育崩壊」です。
 次々に明らかになる諸事件、諸事実は、現実の矛盾を隠蔽して一気に教基法改悪に進もうとする動きに対する強い警告なのです。

(3) それだけではありません、安倍首相が就任以降「あいまい戦術」によって乗り切ってきた政権運営が綻びを見せ始めています。安倍首相は、中国・韓国訪問を実現させ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)核実験実施への強硬姿勢を貫くことで、何とか政権発足の約1ヶ月半を乗り切ってきました。すでにテロ特措法の延長の可決によってインド洋における自衛艦の対米戦争加担は恒常化しており、さらに海外派兵を本来任務とすることなどを柱とする防衛省昇格法案も民主党を抱き込みながら、今国会で成立させようとしています。
 しかし、政権の足元では早くも綻びが見え始めています。ここに来て安倍首相の右翼取り巻き連中が勢いづき、抑えが効かなくなっているのです。私たちはこの綻びを徹底して追及しなければなりません。下村博文官房副長官は、旧日本軍慰安婦問題に関する93年の河野談話について「もう少し事実関係を考えるべき」と見直し発言を行いました。中川昭一自民党政調会長は「核保有の議論はあっていい」など何度も繰り返して発言し、麻生外相も「言論封鎖に組みしない」と拍車をかけています。
 これらは単なる一般議員の妄言ではありません。下村氏は、安倍政権の「教育再生」政策のキーパーソンです。中川氏は日本軍慰安婦番組でNHKに改竄圧力をかけた「盟友」です。麻生氏は、言うまでもなく安倍政権の外相であり、右翼的タカ派的発言を繰り返しています。安倍がメインに掲げる教育政策、外交政策の要人なのです。その要人たちから、河野談話見直し、核保有発言などが出てきているのです。

(4) 安倍首相にとって、これら一連の妄言は、まさに弱点そのものです。閣内不一致であり、問題閣僚の辞任に値するものです。いずれもが安倍個人の本音、信念でありながら、首相の立場からはストレートに言えない代物なのです。現に首相は、「議員としていうのは全く問題ない」「私も官房副長官時代に議員としての資格でいろんな意見を言ったことがある」「言論封鎖することはできない」等々と容認し、擁護しています。下村氏自身が「安倍首相は村山富市首相談話についても、河野談話についても100%そのままというのではなく、首相の立場から答弁をしている」などと、安倍首相の本心を代弁したと暗に言及しています。「核武装発言」も同様です。安倍氏は、かつて「憲法上は原子爆弾だって問題ではない」と発言していました。対敵地攻撃能力の保有も主張してきました。
 国民を騙し、また北朝鮮に対する制裁と戦争挑発で目先を逸らすことで衆院補選の連勝と「高支持率」を獲得したことによって、逆に右翼的本質が露呈し政権のタガが外れ始めたのです。これらの危険な発言を放置すれば大変なことになります。一面では、これら発言はアドバルーン的な性格を持っているからです。首相として封じ込められた発言内容を、取り巻き連中の口を通じて、公然化させている側面もあるのです。
 しかし、このような対応に対して政府・与党内からも批判が出はじめています。下村発言について伊吹文部科学相は、「個人と内閣の一員という立場を使い分けられない」と批判しました。核武装論については、与党内各議員から反発が出てています。また別の問題として、菅総務相によるNHKへの拉致問題に関する「放送命令」方針については、与党内だけでなく、マスコミからも強い異論や批判が浴びせられています。さらに、「郵政反対派」の復党問題を巡って、党内は大きく揺れています。これは、政策的には小泉路線の継承を表明しながらも、それだけでは選挙に勝てないという安倍政権の矛盾が露呈したものに他なりません。

(5) 野党各党は、安倍政権の「閣内不一致」を突いて追及を強める構えをみせています。私たちは反戦・平和運動も、この機をとらえ、政府・与党を押し返さねばなりません。「あいまい戦術」の綻びと与党内対立の芽を捉えて、その亀裂を広げることによって、国会運営そのものを困難にしていくことが重要です。これは、単なる国会戦術の問題ではありません。安倍政権が本質的に抱えている右翼的・反動的性格の弱点です。一連の諸問題の徹底した追及と教育基本法反対闘争を結合して、最大のヤマ場に闘いを挑みましょう。

2006年10月31日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局