イラク特措法延長閣議決定に強く抗議する!
◎高まる「ノージャパン」の声。いつまで居座り続けるのか。
◎このままでは「永久駐留」の危険。今すぐ撤退せよ


(1)自衛隊のイラク派兵延長閣議決定糾弾
 12月8日午後、日本政府は臨時閣議でイラク特措法の1年延長を閣議決定し、戦地イラクへの自衛隊駐留の継続を決めた。憲法を蹂躙する重大な決定を、国民にも国会にも諮ることなく、政府の手続きにすぎない閣議決定で済ませるなど言語同断である。アメリカのイラク占領支配に加担し、海外派兵の恒常化をはかるこの決定に、私たちは強く抗議する。
 小泉首相は、実に11月半ばのブッシュ大統領との会談で、勝手にイラク駐留延長を「約束」した。イラク情勢の検討やサマワの状況など全く関係なく、日米同盟を優先し、危機に陥るブッシュ大統領を側面から支援するためだけに、イラク駐留延長を決定したのである。
 このような、デタラメを取り繕うために、額賀防衛庁長官は3日サマワを「視察」するという姑息なパフォーマンスを披露した。防衛庁長官がサマワ市内に入ったのはわずか30分だけ、しかもオーストラリア軍の護衛を受けた陸自の車列でのことである。住民の反発をおそれ、短時間でそそくさと切り上げたのだ。そしてわずかの視察だけで「治安は比較的安定している」と自衛隊派兵延長にお墨付きを与えた。
※防衛長官がサマワ訪問「治安は比較的安定している」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051203i315.htm

 ところが、防衛庁長官が訪れた翌日の4日、サマワ近郊のルメイサでは、自衛隊の装甲車に対して撤退を求めるデモがおこり、自衛隊車両を取り囲み激しく揺さぶり、投石を繰り返した。人々は怒り、「ノー、ジャパン」「占領軍は出ていけ」と叫んでいる。
 額賀防衛庁長官は、4日の事件をうけて「初めてのことではない」と開き直った。たしかに初めてのことではない。自衛隊宿営地は幾度もロケット弾や迫撃砲弾の攻撃を受け、6月には、自衛隊車両が直接路傍爆弾の攻撃を受けている。長官は滞在を一日延ばせば、サマワ住民のリアルな感情を目の当たりにできただろう。イラクの人々にとっては自衛隊は、米英豪軍同様、占領軍であることを示している。自衛隊を歓迎しているのは利権にありついている一握りの者だけなのだ。


(2)自衛隊は何もしていない 式典に参加するのが復興支援なのか
 政府は今回の閣議決定で、基本計画を変更した。「英豪軍など多国籍軍の活動状況・構成の変化」などの4項目の条件を挙げ「適切に対応する」とすることで、5月の英豪軍のサマワからの撤退にあわせて、自衛隊が撤収する可能性に含みを持たせたのである。要するに、日本政府は、現地の要望やイラクの人々のためなど全く関係なく、アメリカの顔色をうかがい、イギリス軍とオーストラリア軍が撤退するまで、何とかスケジュール的に駐留を続け、イラクにしがみつこうとしているにすぎない。
 小泉首相は記者会見の中で「イラクの人たちが自分たちの政府を作ろうとしている」「こういう中で今日本が手を引いていいのか」と語った。しかし、自衛隊はもう事実上何もやっていない。自衛隊が活動の最大の目玉としていた給水活動は今年2月4日に終了した。運び込んだブルドーザなども使うことがない。給水部隊も工兵部隊も宿営地にこもっていることだけが仕事なのだ。「復興支援」を口にしながら、壁の塗り替えなど学校や建物の「補修」をアリバイ的に進め、地元の建設業者らに発注した工事の完成式典に参加したり、「点検」や「視察」をしているだけである。
 実際、陸上自衛隊のホームページを見てほしい。「ネイサー中学校の完成点検」「ルメイサ市内路竣工状況確認」「アルホル-ド小学校の施工状況確認」−−教室に机がちゃんとはいっているか、廊下にタイルがちゃんと貼られているか、道路が平らになっているか、等々を装甲車で乗り付け、武装して点検しているにすぎない。投石事件が起こったのも「養護施設の修復工事の完工式」だった。それをメディアは、「陸自が改修した施設の完成式典」「サマワ近郊で担当した道路補修工事の完成式」などと、あたかも自衛隊の工兵部隊が学校を建設し、道路を敷設しているかのような印象を与えている。日本のマスコミはいつになればイラクの真実を報道するのであろうか!
※陸上自衛隊のホームページ http://www.jda.go.jp/jgsdf/iraq/iraq_index_link.html

 しかし、イラクにとって焦眉の急は電力施設の復旧、伝染病の蔓延を防ぐ上下水道の再建、病院の復興等々、米軍によって破壊された国土の復興である。いや、何よりも、「掃討作戦」の名の下に米軍・多国籍軍がやっている民衆の殺戮や家屋・インフラへの空爆や破壊を今すぐやめることなのである。そして今すぐ軍事占領をやめ、米軍・多国籍軍を撤収させることなのである。ところが、日本がやっていることは、これの全く逆のことなのである。
 小泉政府は、米政府の意向通りに、侵略者・殺戮者・破壊者の側に立って、イラクで“軍事プレゼンス”を誇示しているだけなのだ。「人道復興支援」はアリバイ作りそのものである。だから、まともにな復興活動をせず、まるで子供騙しのようなパフォーマンスを繰り返す自衛隊に対して現地住民の怒りが高まっているのである。


(3)日米軍事一体化のもとで進む自衛隊の戦場体験と戦闘訓練
 それでは、「復興支援」を一切放棄している自衛隊派兵延長の意味は何なのか。それは第一に、ブッシュ政権を支援するためである。多国籍軍は次々と撤退を加速している。ブルガリア、ルーマニア、ウクライナ、ポーランドなどが今年末、または来年初めまでに撤退する予定である。イギリスに次ぐ規模の韓国は規模を千人縮小させ、4位のイタリアも撤退を開始し、来年中には撤退の予定である。このままでは国際的な支持を受けているというフィクションも崩壊し、支持率が低下し危機的状況にあるブッシュ政権に対する米国内の批判は強まるばかりである。小泉首相はブッシュを支えるために自衛隊をイラクに派兵し続けているのである。
 それだけではない。延長の第二の狙いは、自衛隊に実際に戦場・戦闘体験させることである。実戦経験のない自衛隊員たちを戦場に送り込み、緊張状態におき、訓練させることである。日本全国の陸上自衛隊の駐屯地から順繰りに海外派兵させるローテーション実施もその一部であろう。一昨年の北海道を中心とした第一次派遣部隊から現在の第8次派遣部隊まで、全国の自衛隊基地からこれまでのべ5000名近い陸上自衛隊員が戦場に足を踏み入れた。今では、サマワ宿営地は、米英軍と一体となった占領軍の拠点の一つとなり、市街戦訓練、民衆の治安維持、住民懐柔と情報戦のための訓練・教訓の蓄積の場となっている。イラク派兵の継続は、米軍再編の下で、米軍との軍事一体化を進める自衛隊にとって無くてはならないものなのである。
 11月に出された2プラス2会議の「中間報告」において、米軍の横田基地に航空自衛隊の総隊司令部をおくこと、座間に米第1軍団司令部を置き、そこに日本側も「中央即応集団司令部」を置くことを明らかにしている。これは、航空自衛隊の司令部と陸上自衛隊の海外派兵部隊の司令部を米軍と一体化、従属させることを意味している。すでに海上自衛隊の司令部は、横須賀におかれ、米軍と一体化している。アフガン戦争とイラク戦争への加担を通じて、日米軍事一体化が急速に進んでいるのである。
 座間に移転される米第一軍団のフォートルイス基地で今年10月には、自衛隊の富士の幹部候補生が参加し、日米共同の市街戦訓練を行った。指導するのは、実際にイラクで市街戦を経験した米軍のストライカー旅団であり、まさにイラクで住民を殺戮するための訓練であった。
イラク派兵継続そのものが、このような米軍の侵略戦争体制、海外軍事介入体制への実戦的な組み込みとの一体化を促進しているのである。


(4)陸自のサマワ撤退後も、空自の米軍支援を画策
 さらに政府は、5月の陸自の撤退を視野に入れながら、航空自衛隊の駐留を継続し、空自による武装米兵や米軍の軍事物資の輸送など、あからさまな米・有志連合軍支援を継続・拡大する方針を示している。
 しかし、これは、露骨な戦争・占領加担であり、現行のイラク特措法をも、基本計画をも逸脱するものである。現在航空自衛隊の任務は、サマワの陸上自衛隊への物資の輸送を主任務としており曲がりなりにも「人道復興支援」活動とされている。一方、米軍物資の輸送は「安全確保支援」活動とされ、限定的で付随的な活動にすぎない。ところが、イラク占領支配と掃討作戦を続ける米軍を直接支援する活動が、付随任務から主任務に格上げされようと言うのである。しかも現在クウェートの米軍アリ・アルサレム基地に拠点を置く空自が、カタールの米軍司令部との輸送をも担当する、強化拡大の方針を示している。
 ブッシュ大統領は新たな駐留方針を提起し、米軍を10万人規模に縮小する一方、空軍力を増強する占領支配のやり方を提起した。空自派兵継続・拡大の方針は、「永遠に続く米軍駐留」に加担し続けることである。


(5)このままでは米軍と共にイラクへの「永久駐留」に道を開く。米軍・有志連合軍と手を切り、いますぐ撤退せよ!
 ブッシュ大統領は11月30日、イラクからの米軍の削減の可能性に言及した。支持率が軒並み40%を切り、出口のない戦争でいたずらに米兵の犠牲者だけが浪費されていくことに反対する米国内の世論が、曲がりなりにも削減を口にせざるを得ない状況を作り出したのである。しかし、この「削減」なるものはイラク各地に軍事拠点を維持し、10万人体制を継続、撤退の時期さえ示さないという代物であった。しかもブッシュ大統領は一方では、「私が最高司令官である限り、米国は逃げない」と虚勢を張り、泥沼化するイラク情勢の元で、打開のためのまともな戦略さえ持ち合わせていないことを自ら露呈したのである。共和党よりのワシントンポストでさえ、「ブッシュ演説は、むしろ駐留が永遠に続くと国民に印象づけた」と批判した。
 ブッシュ政権はレイムダック化している。CIA情報漏洩スキャンダルをめぐって、「大量破壊兵器」がでっち上げであったことが明らかになり、フセイン政権とアルカイダの結びつきもデタラメであったことが暴露された。さらに米軍がファルージャで白燐弾=化学兵器を日常的に使用していたこと、新しい虐待・拷問をおこなっていたこと、ドイツでCIAが秘密の拘束施設を作っていたこと、米軍が「情報戦略」として地元メディアを買収し、米軍翼賛の記事を流させていたことなど、イラクでの新しい戦争犯罪が次々と発覚している。
 イラクでの戦争はまだ続いている。米軍による掃討作戦、殺戮と破壊は続いている。そして10月25日に2000人に達した米兵の犠牲者は、一ヶ月も経たない内に2100人を越えた。
 アメリカの反戦平和運動は、米軍の新規募集に反対する若者たちによって呼びかけられたはじめての全米行動「兵士になるのを拒否する行動日」の敢行や、シーハンさんによるクロフォードで座り込みの再開など新しい行動を生み出しながら、さらに前進しようとしている。
 小泉首相は、行き詰まっているブッシュ大統領にどこまでついていくのか。どこまでブッシュ政権を支えるつもりなのか。ブッシュと手を切り、今すぐ自衛隊を撤退させるべきである。

2005年12月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



***********************

 この間、署名事務局ホームページへのアクセス回数が増え、「自衛隊の即時撤退を求める署名−イラク民衆に銃を向ける前に−」へのオンライン署名も増えています。事務局まで郵送された署名と併せて、今回の閣議決定に対する抗議表明として小泉首相に提出します。
自衛隊の即時撤退を求める署名−イラク民衆に銃を向ける前に−」