自民党・民主党・財界入り乱れての憲法改悪の暴走を許すな!
−−民主党・岡田代表の改憲=武力行使発言の撤回を求める−−


【1】早くも息を吹き返した憲法第9条改悪論議。きっかけ作った民主党岡田代表の改憲=武力行使発言。
 先の参院選での自民党の“歴史的敗北”によって「失速」の可能性も出ていた憲法改悪論議が、7月末に民主党の岡田克也代表が米国で行った改憲=武力行使発言によって、早くも息を吹き返しました。政財界こぞって憲法改悪論議に邁進している時に、躍進した野党第一党が改憲論議に拍車をかける発言をしたのです。社会全体の雰囲気を右にぶれさせ、ただでさえ進みつつある憲法改悪論議を暴走させかねないきっかけを作ったという意味で本当に許せない犯罪的行為です。有事法制の成立でやってのけたように改憲でも自民党と大同団結するというのでしょうか。言語道断です。今すぐ発言を撤回すべきです。
※岡田代表ワシントンで講演 対等な日米同盟構築を(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040730-00000008-san-pol
※来年中に民主改憲案 岡田代表、前倒し表明(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040728-00000093-kyodo-pol
※自民党:参院選敗北で憲法論議失速も(毎日新聞 7月19日)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20040720k0000m010011000c.html

 岡田氏の米国行脚はまるで「改憲行脚」でした。7月27日には有力者相手に「来年中の民主党改憲案前倒し」を表明、29日には講演で「憲法を改正して国連決議を条件に武力行使を可能にする」と公然と主張したのです。「自民党と同じ政権担当能力」を認めてもらおうと米国の政府関係者・有力者に涙ぐましいお願い。まず最初に米国ありき。対米公約から日本の政治が始まる。日本の国民に向かってではなく米国に向かって媚びへつらう政治をしてきた小泉首相とどこが違うのか。米国で多国籍軍参加を勝手に「公約」してきた小泉首相と何が違うのか。民主党の親米的・保守反動的性格、軍国主義的性格が早くも前に出た感じです。
 案の定、小泉首相は介入しました。岡田氏と「ほぼ同じ意見だ」と加勢したのです。もちろん、岡田改憲発言をきっかけに民主党内がガタガタし内紛状態に陥っている足元を見てのことです。そして被爆地広島での平和を願う平和記念式典という行事の後の記者会見で、あろうことかあからさまに戦争につながる「憲法第9条の改正論議をすべきだ」と呼びかけたのです。
※民主・岡田代表の「改憲」発言 首相「ほぼ同じ意見」(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040805-00000007-san-pol
※平和主義が9条改正の前提 改憲論議で小泉首相(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040806-00000053-kyodo-pol

 岡田代表は何を誤解しているのか。参院選挙の結果が示したことは、選挙民の多くが何も民主党の政策を支持したのではありません。反自民の「受け皿」として消去法で民主党に投票したのです。民主党の「創憲」に賛成したわけでも、まして自衛隊の海外での武力行使や集団的自衛権の行使に賛成したからでもありません。何よりも年金法案や多国籍軍参加問題に端的に見られたような、小泉の対米追随、国民不在、強引なやり方、要するに小泉政治そのものにノーを突き付けた結果だったのです。それを何を勘違いしたのか、勝負である臨時国会の初日に日本にいず、浮かれ果てて米国までノコノコ出かけて行き、改憲行脚をしたのです。何のことはない、こうしたやり方そのものが小泉首相と同じではないですか。岡田代表が小泉政治を受け継ぐのは勝手です。民主党が「第2自民党」「自民党の補完物」として自滅の道を歩むのも勝手です。しかしこんなデタラメな政治をやることで結局は失速した小泉政権の延命に手を貸したり、国民の政治不信を再び高め、いわんや改憲論議を暴走させる引き金を引くことなど絶対許すことはできません。


【2】 要注意! 財界の司令塔・日本経団連が憲法改悪で本格的に動き出した。
 日本経団連も改憲に向けて本格的に動き出しました。7月15日には改憲を視野に入れた「国の基本問題検討委員会」の初会合を開いています。7月22〜23日の夏季セミナーは軍事外交戦略と改憲論議中心に設定されました。
 まず開会あいさつで奥田会長は、「日本という国が、国民や企業にとって胸を張って誇れる“かたち”になっているかを考えなければならない」「国のあり方を明確にするための道筋をつけることが必要だ」と訴え、憲法改悪を実現し米軍と共に世界中で武力行使を可能にできるよう軍事外交戦略を転換すべきだと示唆しました。「国家や企業が胸を張って誇れる“かたち”」とは、彼ら財界や支配層にとっては、米欧の帝国主義諸国と同様、縦横自在に途上国や石油・天然資源集中地域に軍事介入することなのです。

 この「国のあり方」の検討と同時並行で日本経団連は「今後の防衛力整備のあり方について」を提言し、現在首相が主導している軍事外交戦略の転換を積極的にバックアップしています。軍事外交戦略の転換→憲法改悪というコースは、政府与党と財界が二人三脚で進めているのです。そしてその中で、軍需産業の復活・生き残りを公然と要求しているのです。
[シリーズ日本の軍需産業(上)]財界の司令塔=日本経団連が「意見書」を提出
財界の総意として軍需産業の復活=『武器輸出三原則』の放棄を迫る−−いよいよ動き出した日本の軍需産業−−
(署名事務局)


 夏季セミナーは四つのセッションに分かれ、「日本の政治・外交・安全保障・憲法・経済がいかにあるべきかについて意見が交換」されたと伝えられています。ことに第1セッションでは、東京大学東洋文化研究所所長の田中明彦教授が講演。「安全保障戦略や外交戦略、憲法改正など、国の基本にかかわる問題をどう考えるべきか整理した」として、田中教授はこの講演で「憲法問題については、全面改正を考えるのではなく、憲法解釈を迷宮化させ、日米・国際協力の障害となっている9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)を削除するだけで足りるのではないかとの」見解を示しました。時間がかかる全面改悪ではなく、本筋である第9条廃棄に狙いを絞って一刻も早くズバッと切り込めとせき立てたのです。
※第1セッション/講演「国際情勢の変化と日本の針路」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2004/0729/02.html
※夏期セミナーの様子は「日本経団連タイムス」7月29日 No.2732参照。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2004/0729/01.html

 ここへきての政財界こぞっての憲法改悪、とりわけ9条改悪は、現実的な政治日程に上ったという意味で非常に危険な段階に入りました。憲法改悪は、これまでの解釈改憲=第9条のなし崩し的掘り崩し―限定的な集団自衛権行使―限定的な海外派兵=「後方支援」「人道復興支援」など条件付きの海外派兵、といった段階から、明文改憲=第9条の廃棄―無制限の集団的自衛権行使容認―全面的海外派兵=直接的な武力行使の容認への踏み込み、というきわめて危険な段階に入ったのです。
 首相も、政府与党も、グローバル企業トヨタがトップを牛耳る財界の司令塔・日本経団連も、日本商工会議所も、日本を侵略国家へ転換させ、そうした国家作りを完成させるために改憲と教育基本法改悪を次の一大政治目標に設定した、というのが改憲論議の現段階なのです。


【3】改憲阻止が反戦運動の差し迫った課題に。臨時国会に向けた多国籍軍参加撤回、自衛隊即時撤退を求める運動、海外派兵「恒久法」上程阻止と結び付けて闘おう!
 そして改憲論議を更にエスカレートさせるのか否か、暴走させるのか否か。そのカギを握っているのが野党第一党の民主党なのです。同党は元々「創憲」を掲げ、憲法改悪をマニフェストに盛り込んでいます。「自衛のための戦力」と言おうと「制約された自衛権」と言おうと、いずれにしても軍事力の保有を認めています。「集団的自衛権」であれ「集団安全保障活動」であれ、日米の共同軍事行動をも認めています。自衛隊そのものであれ、「第2自衛隊」=「国連待機部隊」であれ、海外派兵とそこでの武力行使侵略軍を認めています。自民党案と民主党案はほとんど一致しており、その主張においては五十歩百歩といったところです。それはそれぞれの党のこれまでの発言や「論点整理」「憲法提言中間報告」に示されている所です。−−反戦運動と国内世論がどこまで、この民主党の改憲の動きを麻痺させ頓挫させられるか。そこに改憲阻止の展望がかかっているのです。
※自民党の「論点整理」全文 http://www.jimin.jp/
※民主党「憲法提言中間報告」(要約版)http://www.djp.or.jp/seisaku/sogo/BOX_SG0058.html
※民主党「憲法提言中間報告」本文 http://www.dpj.or.jp/seisaku/sogo/image/BOX_SG0058.pdf

 本格的な改憲論議は夏休み明けすぐにも始まる予定です。すでに岡田発言後、自民党調査会は8月5日に参院選後初の総会を開き、来年11月の決定を目指すという憲法改悪案の起草委員会設置を決めました。今月中にメンバーの人選を進め、来月から作業に着手するとしています。「論点整理」に基づき、スケジュール通りに粛々と、年内に改正草案の素案をまとめる方針です。
 民主党も同日「次の内閣」会合で、「中間報告」の議論に入りました。民主党の場合、「党内左派」も対抗して動き始めており議論の行く末はまだまだ予断を許しませんが、「2大政党」が改憲を競い合う深刻な状況です。
※<衆院憲法調査会>論点整理に関する報告・質疑行う(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040805-00000114-mai-pol
※<自民憲法調査会>起草委員会の設置決める(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040805-00000123-mai-pol
※<民主党>「次の内閣」会合で憲法改正論議スタート(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040805-00000098-mai-pol
※“民主左派”が勉強会 集団自衛権反対の若手46人(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040802-00000164-kyodo-pol

 10月に始まるといわれている次の臨時国会から来年の通常国会にかけて、改憲論議の活発化は軍事戦略の転換と並行して進んでいく見通しです。自衛隊のイラク派兵を皮切りに日本の新しい軍国主義ともいえる事態が始まっているのです。年末に明らかになる「新防衛大綱」という名の新しい軍事戦略、通常国会に上程される予定の米軍を補完する形での海外派兵の「恒久化」法。異常なほどの対米追随外交、対米追随軍事戦略。そしてその行き着く先、目指す所が、憲法改悪、憲法第9条の破棄なのです。戦後日本の国のあり方そのものを根本からひっくり返す軍事戦略の転換と憲法改悪−−この2つは一つのものなのです。
※海外派遣の恒久法で対策室 通常国会提出を目指す(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040731-00000126-kyodo-pol
※「日本の新しい軍国主義」については「自衛隊の多国籍軍参加と日本の新しい軍国主義」(署名事務局)参照。

 しかし参院選挙の結果は、日本の民衆がまだこの新しい軍国主義、自衛隊の海外派兵型戦力への転換、ましてや憲法第9条の破棄など受け入れていないことを示しています。世論は6〜7割が多国籍軍参加に反対なのです。「憲法改正」に賛成の人の割合は確かに増えているものの、9条破棄に賛成の人はまだまだ少数派です。
 改憲阻止の闘いはまだ勝算があります。日本の反戦運動が、臨時国会から通常国会にかけてどこまで押し返すことができるかです。まだ始まったばかりの新たな日本軍国主義に対する闘いがどこまで闘われるかに、ひとえにかかっています。

 私たちは、憲法改悪阻止を日本の新しい軍国主義に反対する闘いと結び付けて闘わねばなりません。ブッシュの先制攻撃戦略に加担し世界中に海外派兵するための「新防衛大綱」や「海外派兵恒久法」に反対すること。米軍再編に呼応した在沖・在日米軍の強化、米軍・自衛隊の統合運用に反対すること。ミサイル防衛、対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、対中国敵視・対決に反対すること。日本経団連が唱え始めた軍需産業の生き残り、武器輸出三原則の見直しに反対すること。教育基本法改悪や政治反動に反対すること。−−私たちは、これら新しい軍国主義の台頭、軍事戦略転換に反対する闘いを憲法改悪を阻止する闘いと結び付ける必要があります。自民党の「改憲」・「論点整理」、公明党の「加憲」、民主党の「創憲」・「憲法提言中間報告」・「国連待機軍」構想に反対する闘いと結び付けて闘ねばなりません。

2004年8月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局