(翻訳 『ハンギョレ21』第596号 2006年2月14日より)
貴方たちのゾクッとした"聖地"
六ヶ所村の核廃棄場を称揚しつつ、人類の福利を脅かす大韓民国の核賛成勢力の核軍備拡散の脅威に、積極的に対応しなければならない国会は何故沈黙しているのか
□洪性泰(ホン・ソンテ)/尚志(サンジ)大教授

 大韓民国に六ヶ所村が知られたのは、1990年代初めに遡る。当時、日本政府は、"核燃料サイクル施設"の美名の下、巨大なプルトニウム生産施設を作り始めた。この施設が招く新しい核兵器拡散の脅威に対処するため、大韓民国国会は、議員訪問団を組織した。その訪問団には、当時平和民主党の初当選議員だった現李海鑽(イ・ヘチャン)総理もいた。彼は、六ヶ所村を訪問し、戻ってきて月刊『話』に、「日本の核兵器開発の現場六ヶ所村を行く」という題名の文章を書いた。

 「日本核兵器開発の現場」という題名自体が、非常に恐ろしいことだった。しかし、どうしたことかその危険千万な施設が完工して、プルトニウムの生産を目前に控えている今は、何も言わないでいる。

政府部局・財閥・保守言論の複合体
 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が、1991年10月11日、民主党議員として国会本会議において、六ヶ所村関連の発言をした事実もある。国会速記録を見れば、彼はこのように質問した。「日本の青森県の六ヶ所村では、大規模な核処理施設が建設中であると言う。この場合、日本は、強大な核戦争力を保有するようになるのではないか。」

 実のところ、李海鑽総理や盧大統領の沈黙だけが問題ではないだろう。六ヶ所村の背後には、日本を真の"血盟"と思う米国の支持と支援がある。この点で、六ヶ所村は、米国が主導する国際核秩序の不公平性を雄弁に物語る象徴といえる。しかし表面的に見れば、日本政府は、国際原子力機関の基準をよく守り、このために、核再処理施設を保有できるようになった。したがって政府としては、公式に意見を伝えるのが容易でない。しかし議会は違う。国会議員たちは、六ヶ所村の問題に対して、それが引き起こす新しい核兵器拡散の脅威に対して積極的に対応しなければならない。しかし国会は、そのようにできなかった。『国会核軍縮の会』はもちろん、すべての国会議員たちがこの問題に深い関心を寄せるよう促す。


△昨年の11月19日、韓-日市民らの六ヶ所核再処理施設稼動反対デモに参加した筆者(前列右側)。英国セラフィールドから来た住民運動家マーティン・フォワード(左側から2番目)も一緒に参加した。

 大韓民国の核賛成勢力は、六ヶ所村をあたかも"聖地"のような所だと宣伝している。このために国会の関心が低いのかも知れない。しかしそれは、とんでもない間違いだ。六ヶ所村の最も代表的な施設としては、低レベル放射性廃棄物埋設センター(*1)、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(*2)、ウラン濃縮施設、使用済核燃料再処理施設など4種類を選ぶことができる。大韓民国の核賛成勢力は、この中で低レベル放射性廃棄物埋設センターだけが六ヶ所村にあるように宣伝し、さらにその施設を何か福祉施設や文化施設であるかの如く宣伝した。これについて六ヶ所村の住民たちは、既に久しい前から強力に抗議している。六ヶ所村がある日本の青森県の『放射性廃棄物処理場を憂慮する住民の会』(*3)は、1994年1月21日、大韓民国放送委員会委員長宛に、六ヶ所放射性廃棄物処理場が民主的に選定されたように描写した広告に強力に抗議する手紙を送ってきた。

 大韓民国の核賛成勢力は、事実上巨大な『複合体』を形成している。産業資源部(*4)、科学技術部、大韓民国水力原子力公社、大韓民国原子力文化財団などの政府部局と公企業がその核心に位置していて、財閥を中心にして恨み多い諸企業、そして保守言論が一緒に一塊になっている。六ヶ所村に対する彼らの主張は、大きく3種類に分けることができる。

 まず、原子力発電のために六ヶ所村と同じく核廃棄場施設を必ず建設しなければならない。二番目に、ここから更に進んで、究極的には六ヶ所村と同じく核廃棄物処理場はもちろん、核再処理工場も建設しなければならない。三番目に、六ヶ所村のように原子力発電はもちろん、核武装についても有用な施設を建設しなければならない、というのだ。いわゆる"核産業論"は、"核主権論"とコインの両面を成している。大韓民国の核賛成勢力には、六ヶ所村は最も立派な模範だ。

 かかる目標を追求するために、大韓民国の核賛成勢力は、日本の核賛成勢力と積極的な連帯活動を繰り広げていたりもする。彼らは、『韓-日原子力発電セミナー』のような定例的学術会議を開くだけでなく、活発な技術交流と産業提携を行っている。そして保守言論の記者たちを六ヶ所村に連れていき、観光をさせて一方的な広報記事を書いて出すようにしている。


△昨年7月13日、東京で、「大韓民国の平和運動と六ヶ所村」をテーマとして講演会が行なわれている。六ヶ所村は、日本を越えて世界の問題として浮び上がる。

韓-日の危険千万な連帯
 しかし六ヶ所村は決して"聖地"ではない。そこの『核燃料サイクル施設』は、世界で最も危険な施設だ。どんな広報によっても、この事実を隠すことはできない。仮に低レベル廃棄場の必要性を認めるとしても、六ヶ所村全体を"聖地"として宣伝するのは大変間違ったことだ。そうではないと言っても、六ヶ所村『プルトニウム生産工場』の問題に目を閉じるのは、あまりにも間違ったことだ。大韓民国の核賛成勢力は、原子力発電の必要性を強調するために、しばしば国家と民族の福利を打ち出す。しかし、六ヶ所村のプルトニウム生産工場は、人類の福利に対する脅威であり、したがって国家と民族の福利に対する脅威だ。

 大韓民国の核賛成勢力は、六ヶ所村のプルトニウム生産工場に対する反対の意思を明確に表明しなければならない。そうではないなら、彼らも内心、同様の施設の保有を追求する危険千万な勢力だという疑惑から抜け出すことはできないだろう。



(*1)原文では、「中・低レベル核廃棄物永久処分場」となっているが、日本名の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」と訳した。
(*2)原文は、「高レベル廃棄物臨時処分場」とある。
(*3)この団体は、確認できていない。
(*4)"部"は、日本の"省"にあたる。