シリーズ:ブッシュのイラク新政策と戦争拡大の危険(その3)
ブッシュのイラン封じ込め戦略と戦争挑発
◎ペルシャ湾への兵力増強、周辺基地からの攻撃準備をやめよ!
◎「核開発」問題を口実にした敵視政策と制裁をやめよ!


はじめに−−ブッシュ政権、中東における次の最大の敵をイランに絞る

(1) ブッシュ政権は、イランに対する敵視と軍事的政治的恫喝を強めている。核開発を巡る国連制裁決議、陸海空の軍事的集結と大規模軍事演習の強行、イラク国内でのイラン人大量拘束、イランの反体制活動グループへの支援等々、一連の対イラン強硬策は、中東とペルシャ湾における軍事的緊張をかつてなく高めている。イランによる英水兵拘束事件は改めてこのことを明らかにした。
 緊張の高まりの中で、米軍によるイラン攻撃の計画が次々と暴露されている。2月半ば、イギリスBBC放送は、すでに米軍がイランの核施設とすべての軍事施設を対象とした攻撃計画を策定していることを報じた。3月4日号のニューヨーカー誌には、ブッシュ大統領の命令を受けてから24時間以内に実施可能なイラン爆撃を計画する特別委員会が国防総省内に設置されたことが掲載された。そしてブッシュ大統領は、イラクにおける米軍攻撃へのイラン関与をほのめかし、イラク駐留米軍攻撃へのイランの具体的な証拠が挙がれば攻撃をも辞さないことを明言した。また、イスラエルによるイラン核施設の攻撃計画も暴露されている。
※米国防総省、イラン爆撃を計画する特別委員会を設置=米誌
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?
type=marketsNews&storyID=2007-02-26T102131Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-248575-1.xml

※米国による「イラン攻撃計画」が明らかに=英BBC http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070220-00000848-reu-int
※Revealed: Israel plans nuclear strike on Iran http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/article1290331.ece

 これに対してイランが、戦争の危機が差し迫っているとの情勢認識から、防衛体制を構築し始めたという情報もある。緊迫した事態が伝えられている。欧米の反戦運動は、イラン攻撃の可能性に危機感を強め、闘いを強化している。
※Iran fears U.S. attack in summer: Israeli general
http://www.reuters.com/article/topNews/idUSL018190420070401
※stop war on iran http://stopwaroniran.org/



(2) もちろんブッシュがイランに対して実際に軍事攻撃を加える危険性がどの程度切迫しているのかという点については過大評価することはできない。米軍が過小戦力と過剰展開で限界に直面し、イラク占領支配だけで手一杯になる中で、ブッシュがイランとの新たな戦線を開く現実的条件が存在するとは考えにくい。イランは、アフガニスタンやイラクと比べて、国土の面でも人口の面でも兵員数の面でも圧倒的な大きさを持つ。そしてイランによるホルムズ海峡封鎖や親米周辺国へのミサイル報復攻撃などのリスクを犯すことになしに、対イラン攻撃に踏み出すことは不可能だろう。その限りで、ブッシュの対イラン強硬策と戦争挑発は、現時点においては、反米を強めるイラン・アフマディネジャド大統領に対する示威行動という側面が強い。また、英水兵拘束問題が外交的に解決したことは、陰謀をでっち上げて軍事攻撃や開戦に至るというシナリオはそう容易ではないことを示している。
 しかし、米の世論調査では、イランが「国際社会」にとっての最大の脅威と考えている人が、イラク、北朝鮮を押さえてトップとなっている。イラクはフセイン元大統領の処刑によってもはや脅威の対象ではない。北朝鮮問題では、米の強硬路線は破綻し、6ヶ国協議を再開して対話路線へ方針転換している。世論の支持を失ったブッシュ政権がメディアを駆使してつくりだした「イランの脅威」のイメージを利用し、起死回生の巻き返しを狙って、イランとの戦争といった賭けに乗り出す可能性を排除することはできないのである。すなわち、対イラン軍事攻撃は、後で述べるブッシュの対イラン封じ込め政策の主要なオプションの一つであることは間違いない。
※4割が「最大の脅威はイラン」=軍事行動には慎重−米調査 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070328-00000056-jij-int


(3) ブッシュは、イランの脅威を煽るために、核開発疑惑とイランのイラク武装勢力への援助疑惑という二つの口実をでっち上げている。核開発問題で国連安保理を巻き込み、追加制裁決議を行うことで「国際社会の協力」を演出しながら、イラクの泥沼化の責任をイランに転化することで、イラン攻撃を正当化しようとしているのである。
 確かにこれまでブッシュ大統領は、イランを「ならず者国家」と名指しし、一貫して敵視政策をとってきた。また、イランの独自核開発をめぐって幾度となく戦争挑発を繰り返してきた。しかし、ここ数ヶ月間において繰り広げられている戦争挑発は、これまでとは比較にならない危険なものである。軍事的側面においては、かつてない周到さをもって徹底したイラン包囲網を敷いている。政治的側面においてもライス国務長官、チェイニー副大統領が周辺国を度々訪問、周辺国と対イラン政策を調整、同意を取り付けている。
※米国務長官、中東歴訪 イラク新政策「支持」を獲得 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070117-00000022-san-int


(4) 私たちがここで問題にしたいことは、このような対イラン軍事挑発も「核問題」をめぐる国連制裁も、ブッシュ政権が新たに打ち出した対イラン封じ込め政策の一環であるということである。ブッシュのイラク新政策なるものが、「イラク」を焦点にしながら実はイランを中軸とするシーア派に対する包囲網の形成を目指す中東戦略の大きな転換の中にあるということである。
 この点については、セイモア・ハーシュ氏が包括的な形で明らかにしている。ハーシュ氏は、現状でのイラク占領支配を困難と見たブッシュ政権が過去数ヶ月の間に、サウジアラビアをはじめとする親米アラブ国家と連携する形で、イランを中軸とするシーア派に対する包囲網、弱体化を狙った「戦略転換」(strategic shift)を図ったとしている。イラン攻撃の危険の切迫もこの枠内にある。ハーシュ氏は次のように記している。「ブッシュ政権は、公の外交面、内密の作戦の両面において中東戦略を転換した。この『転換』は、ホワイトハウス内部では新戦略と呼ばれているものである。・・・イラクだけの戦闘に飽きたらないブッシュ政権は、イランに対して、また中東の各所において新たな戦端を開こうとしている。」
※『THE REDIRECTION』(THE NEW YORKER 07/03/05 by Seymour Hersh)
http://www.newyorker.com/reporting/2007/03/05/070305fa_fact_hersh

 私たちは本稿において、まず第一に、米によるイランに対する戦争挑発、攻撃準備の危険性を具体的に暴露する。第二に、イランの「核問題」があたかも核兵器開発と核武装問題であるかのように煽るブッシュのテタラメを批判する。そして第三に、対イラン封じ込めの新しい中東政策を批判する。世界のイラク反戦闘争は、イランに対する戦争挑発と軍事攻撃を阻止する闘いとして、さらには中東の不安定化と敵対関係を作り出すブッシュの「戦略転換」との闘いとして前進しなければならない。

2007年4月13日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




[1]イラク戦争の泥沼化の責任を「イランの関与」に転化し、イランへの戦争準備態勢を整えるブッシュ政権

(1) 3月27〜28日の2日間にわたって行われた米軍の軍事演習は、ステニスとアイゼンハワーの2隻の空母が参加し1万人の兵員を動員するという、2003年3月のイラク戦争開戦以来最大の規模になった。敵軍の軍艦や潜水艦を攻撃し、機雷を発見することを想定するなど極めて挑発的な内容で、偶発的な軍事衝突の危険を高めるものであった。イランの革命防衛隊の司令官は26日、米軍が軍事攻撃を仕掛けた場合は徹底抗戦すると述べ、軍事演習が実際の攻撃へと転化する危険性に対して、強い警告を発した。
※U.S. Opens Naval Exercise in Persian Gulf http://www.nytimes.com/2007/03/28/washington/28military.html?ref=middleeast

 イランによる英水兵拘束事件は、このようなかつてない軍事的緊張の高まりの中で起こった。英水兵が、イランとイラクの国境線があいまいな海域であえて活動をしていたこと、事件以降数日は、これをきっかけに米が攻撃に踏み切るのではないかという観測が強まったことなどから、英兵の行動がイランの出方を探るスパイ活動、あるいは挑発行為であったという見方も根強くある。また、事件に対して米軍は、イラク革命防衛隊基地上空を含むイラン領空に戦闘機を飛ばし、挑発的な偵察行動を行うことを提案したことが暴露されている。英はこれを断った上で、計画されていた大規模軍事演習を緩和するよう要請したという。
 イラン政府が4月4日、拘束以来13日ぶりに15人の英水兵を釈放したことで、この事件を巡る異常な緊張と衝突の危機は回避された。問題は、英軍が、イラン攻撃計画を作成し軍事挑発を強化する米軍と一体となってイランに圧力をかけているということであり、一触即発の緊張を高めているのは米と英の側にあるということである。
※Americans Offered ‘Aggressive Patrols’ in Iranian Airspace http://www.guardian.co.uk/iran/story/0,,2051971,00.html
※英軍によるスパイ・挑発活動のすさまじい実態については、2005年9月に起こった英軍によるイラク・バスラ警察襲撃事件を思い起こされたい。シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その16 英軍による許し難い蛮行。バスラ警察署攻撃を糾弾する!(署名事務局)
※U.S. strategy on Iran may have backfired http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-backfire3apr03,0,3611776.story?coll=la-home-headlines
※How I know Blair faked Iran map http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/newscomment.html?in_article_id=445896


 イラン国境付近で米軍の活動が極めて活発になっており、米軍がイランに対する陸・空両面による軍事作戦の準備を進めているとの見方も出始めている。ブッシュ政権は、3隻目の空母ニミッツをペルシャ湾に派遣しようとしている。これは、空母アイゼンハワーと交代する予定であるが、一時的に3空母体制を取ってイランに恫喝を加える危険な策動である。  
※U.S. Carrier Nimitz to Deploy to Persian Gulf http://www.defensenews.com/story.php?F=2662256&C=america
※米軍、対イラン軍事作戦準備か=ロシア軍当局者が警告http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070329-00000229-jij-int

 イラン包囲網は強化され、対イラン情報戦は激しさを増している。昨年から、イランの包囲網は着々と進められてきた。確認されているだけでも、昨年末から次のような軍備増強が実行されてきた。
−−すでに述べたように、2空母機動部隊をペルシャ湾に配備。大規模軍事演習でイランを恫喝。「砲艦外交」の強化・拡大。国境線が定まらないペルシャ湾で、空母機動部隊に属する掃海艇等の小型艦船をイラン領周辺海域で遊弋させるならば、イラン海軍の警備艇は厳しい監視行動に踏み出さざるを得ず、それだけで重大な戦争挑発である。
−−米軍の攻撃機をトルコと他の国のイラン国境に移動。
−−サウジアラビアやイスラエルなど周辺国に地対空型のパトリオットミサイルを配備の方針。イランを攻撃した場合の反撃に対する予防措置。
−−イスラエルにおけるイラン攻撃・迎撃訓練の強化。3月20日には、イスラエルが米国の資金協力を得て独自開発した弾道ミサイル迎撃システム「アロー」と米国のパトリオット対空ミサイルのテストが行われている。
−−イラクでの大規模掃討作戦の一環として、イラン、シリアとの国境閉鎖、挑発。
−−米中央軍の司令官に、現太平洋軍司令官のファロン海軍大将を任命。沿岸からの空爆と海兵隊による強襲上陸を想定した配置であるとの観測さえ取りざたされている。等々。



(2) ブッシュ大統領は、イラク新政策の演説において、「イランは米軍を攻撃するための武器支援を行っている」などと述べ、イラク占領支配の破綻の原因を「イラン関与」に転化し、イラン、シリアに対する敵意を剥き出しにした。
 これまでブッシュ政権は、イラクを「“アルカイダ”をはじめとするテロリストとの戦いの最前線」として、米軍攻撃の主体を“アルカイダ”としてきた。米軍攻撃の圧倒的多数がイラク人の反米武装勢力によるものであり、このような見解も戯画ではあるが、ブッシュ大統領はそのように、米国民に語ってきた。しかし今になって、イラクにおける占領支配破綻の責任をイラン、シリアの関与に転化し、両国を恫喝し始めたのである。
 ブッシュ大統領は1月26日、イラク国内で米軍への妨害活動を行っているイラン人工作員に対する拘束、殺害を許可することを明らかにした。すでにイラク国内においては、ここ数ヶ月でイラン人500人以上が駐留米軍によって拘束されている。マリキ首相は、「米とイランがイラク国内で争うことは許せない。イラクの外で問題を解決してもらいたい」と苦言を呈したほどである。
 最近の情勢は、ブッシュによるイランに対する軍事挑発が、イラク国内での小競り合いから、国連を舞台にした制裁のエスカレーションと直接的軍事行動の危険の段階へと入ったことを示している。
※1月10日のイラク新政策表明の演説においてブッシュは以下のように語っている。「イラン、シリアの二つの国家は、テロリストと武装勢力がイラクに出入りするために自国を使うことを容認している」、「われわれは、自軍への攻撃を阻止するであろう。われわれは、イランとシリアからの支援の流れを塞ぐであろう。そしてわれわれは、イラクにおけるわれわれの敵に改良された兵器を与え、訓練するネットワークを見つけ出し、破壊するであろう」。また、その後の上院公聴会においてライス国務長官は、「イラク国内におけるネットワークを絶つために」、イランの国境を越えて作戦を展開することもありうることを明言した。
※Iraqi PM tells U.S., Iran to take their fight elsewhere http://www.cnn.com/2007/WORLD/meast/01/31/iraq.almaliki/index.html

 イラクにおけるイラン関与の「証拠探し」も行われている。2月11日、イランによる武器支援の証拠として、精密爆破装置が公表された。ブッシュ政権は、これこそが具体的関与の証拠として、さらなるイランへの敵対心を煽り立てた。しかしその後、この爆弾に刻印された製造年月日がイスラム暦ではなく、イラン製造とは考えにくいとする専門家の意見が噴出した。今度は、イランのイラク武器輸出をめぐる精度の悪い、劣悪な情報をブッシュ政権が流そうとしたところ、ライス国務長官とゲイツ国防長官が公表に反対し、延期されるといった事態も生じている。このような情報を捻じ曲げ戦争を仕掛けるそのやり方は、イラク・フセイン政権に対して戦争を仕掛けた時を想起させる。また、すでに米軍、特殊活動部隊がイラン国内における情報収集活動をエスカレートさせており、イラクからのイラン人工作員を追跡するためにイランへ越境しているとの報道もある。このようなブッシュ政権のやり方に対して、かつてベトナム戦争において「戦線を拡大しない」と明言しつつもカンボジア越境攻撃を仕掛けた過去の戦争犯罪を再び繰り返そうしているとの批判も沸き起こっている。
※イラン工作員への対抗措置許可 米大統領 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070127-00000021-san-int
※イラン軍精鋭部隊がイラク過激派に爆発物提供と確信=米大統領 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070215-00000267-reu-int



[2]NPT体制の露骨極まりない選別的政治的な運用−−「イランの核開発」はブッシュ政権が作りだしたトリック。不当な対イラン制裁をやめよ

(1) 国連安保理は、3月24日、イランの「核開発」に対する追加制裁決議を採択した。決議は金融制裁、資産凍結、武器輸出の禁止などに踏み込む厳しい内容である。今回の決議と追加制裁は、12月21日に国連安保理が制裁決議を挙げ、60日の濃縮停止期限を一方的に設定し、これに対してイランが拒否して核開発継続の姿勢を鮮明にした事に対する懲罰的性格を持っている。一貫して動きを主導しているのは米のチェイニー副大統領である。チェイニーは、イランがウラン濃縮を続けるなら、あらゆる対抗策を取るなどと強硬発言を繰り返し、軍事行動をも示唆しながら対イラン対決を全面に押し出している。
 しかし、決議はそもそも矛盾に満ちたものである。事態は必ずしも米の思惑通りには進んでいない。決議は、米、英、仏、中、ロの常任理事国と独が作成した。中・ロは対話路線を強調した。「原子力の平和利用」を推進する南アフリカやインドネシア、カタールなど非常任理事国からの強い修正要求があった。米はこれらの国々に対して外交的圧力を加え賛成に回らせた。しかし、3月26日には中・ロが首脳会談の中で、軍事対決ではなく対話と交渉で解決するよう確認した。この過程自身が、世界第二位の産油国イランを追いつめることに一致することの困難性を示している。
※<国連>イラン革命防衛隊制裁などに中露が反対姿勢http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070310-00000043-mai-int

 「イランの核開発問題」は、「対テロ戦争」の中で、ブッシュがイランを「悪の枢軸」と世界に印象づける為に持ち出してきたトリックである。ありもしない「核兵器開発」をでっち上げ、さらにIAEAの査察に応じていないというウソを垂れ流し、イランの脅威を煽ってきたのである。
−−昨年2月、米は一方的にイラン核問題を国連安保理に付託し、それ以降制裁決議を執拗に追及しようとしてきた。国連安保理に持ち出すことで、イランの核脅威が単なるブッシュと米政権の思いこみではなく、あたかも国際政治の中心環の一つであるかのように祭り上げようとしたのである。
−−6月には、核開発をめぐり米国と関係改善のための交渉を持ちたいとイラン側が呼びかけたが、米国がこれを一方的に無視し、敵視政策を強化した。
−−7月31日、国連安保理は、イランの核問題に関するものとしては初の安保理決議である決議1696を採択(賛成14、反対カタール1)し、イランに対し研究開発を含むすべてのウラン濃縮関連・再処理活動の停止を義務づけ、8月31日までに同決議を遵守しない場合には国連憲章第7章第41条に基づく措置を採択する意図を表明した。これはイランに対する警告決議であった。
−−つづいて12月24日、国連安保理は、最初の制裁決議1737を全会一致で採択した。ウラン濃縮作業の全面停止を義務化し、イランに対する核関連技術や資材の供給禁止などを要求した。決議は、イランの回答の猶予期間を60日とした。イランはこれを全面的に批判し、期限を無視した。
−−国連安保理は今年3月24日、イランにウラン濃縮活動の停止を改めて求め、追加制裁を科す決議1747を全会一致で採択した。制裁決議1737を強化し、イランによるすべての武器の輸出禁止などの追加措置を盛り込んだ。資産凍結などの制裁対象者リストには、新たにアフマディネジャド大統領の出身母体であるイラン革命防衛隊の関連3企業と個人7人を含む13団体15人が加わった。前回決議同様、イランが60日以内にウラン濃縮活動を停止しない場合は追加措置を取るとしている。だが、イランのモッタキ外相は採択後、核開発の継続を宣言し、対決姿勢を明確にした。



(2) 「イランの核開発」に対しては、何よりもまず、ブッシュ政権とその挑発的意図をそのまま垂れ流すメディアの悪意に満ちたデマゴギー、すなわち「核開発」を「核兵器開発」にねじ曲げてセンセーショナルに煽り立てることを批判しなければならない。「ウラン濃縮」を通じてイランが核兵器の保有と核武装に向けて邁進しているというのだ。しかしそれは事実ではない。イランは、3月24日の決議に対して、あくまでもウラン濃縮は平和目的であることを改めて主張し、ウラン濃縮活動を停止しないことを明言した。 また、現在イランが所有する遠心分離機の数は200台以下である。仮にこれをフル稼働させたとしても、核爆弾1個を完成させるのに10年から15年が必要と言われている。メディアは、イランのアガザデ原子力庁長官が濃縮ウラン製造に使う六フッ化ウラン(UF6)の貯蔵量が250トンに達したと表明した事を受けて、核弾頭50個分の高濃縮ウランが製造可能な量だなどとわめき散らしている。しかし、正当にも長官はUF6製造について「これはイラン独自の技術で、制裁では制限されない」と言明した。
※イラン、2015年に核兵器完成 米情報長官証言 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070301-00000014-san-int
※Iran Nuclear Bomb Could Be Possible by 2009 http://blogs.abcnews.com/theblotter/2007/04/exclusive_iran_.html

 IAEAはこの問題では一貫して米寄りの姿勢を貫き、イランの「核の脅威」を煽るのに一役買ってきた。エルバラダイ事務局長は11月23日の理事会では、「イランが(IAEAの保障措置協定で定められた)法的義務以上の協力を求められるのは当然だ」と指摘し、「平和利用目的かどうかの検証には時間がかかるうえ、核施設を常時監視下に置く査察体制が必要だ」などと、イランを敵視する発言を行っている。実に、イランにだけは、核武装を目指しているのではないことを証明するために「法的義務以上の厳しい査察や監視」を受け入れることを迫ったのである。 
 しかし、イランがIAEAに敵対した事実はない。イランは国連安保理の相次ぐ決議と恫喝に強く抗議しながらも、あくまでもIAEAとの協定を遵守する姿勢を強調してきた。そして最低限の対抗措置として、協定に抵触しない範囲で、IAEAによる抜き打ち査察を認める追加議定書の自主運用の停止や中部ナタンツのウラン濃縮施設からの監視カメラの撤去など抗議の行動を行ってきたにすぎない。


(3) イランは、NPT(核不拡散条約)に加盟している。加盟しているなら、NPTに基づいてイランには核の「平和利用の権利」がある。つまり、NPT体制は、米、英、ロ、仏、中の5大国以外に核兵器の開発・保有が広がることを禁じるという極めて帝国主義的な不平等核兵器独占体制であるが、その見返りとして、加盟国には平和利用のための核の平和利用の権利が認められ援助が保証されているのである。そもそも米は、核の「平和利用」を主張するイランにウラン濃縮の放棄を要求し制裁を加えることなどできない。ところが米とIAEAは、イランにだけは一貫してこの権利を認めず、いわばダブルスタンダードで、権利剥奪を公然と強要しているのである。その意味では、むしろ米やエルバラダイの側こそが、NPT条約体制に完全に違反しているのだ。
※核拡散防止条約は「原子力の平和的利用」は締約国の「奪い得ない権利」と規定するとともに(第4条1)、原子力の平和的利用の軍事技術への転用を防止するため、非核兵器国が国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受諾する義務を規定(第3条)している。イランは完全にこれに従っている。

 一方、核兵器を保有するインドとパキスタンはNPT未加盟である。ところが、アメリカはこの2国の核保有を認めている。また別の点から言えば、ウラン濃縮どころか核実験さえ強行した朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に対して、アメリカは一時は金融制裁を含む厳しい制裁を加えていたが、制裁と強硬策が効果を上げず米国内からも批判が噴出するや、6ヶ国協議を再開し北朝鮮との対話をすすめる方針に転換した。その北朝鮮は2003年1月にNPTからの脱退を表明している。また、昨年12月イスラエルのオルメルト首相が自国の核保有について口を滑らせ、あわてて撤回するという一幕があった。イスラエルが核兵器を保有していることは公然の秘密である。イスラエルもまたNPT未加盟である。−−つまりNPT体制と米とIAEAの運用も、極めて恣意的で選別的政治的なものなのである。
※イスラエル首相、「核保有」発言の打ち消しに躍起 http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4800/news/20061213i205.htm

 NPT体制=核不拡散体制は建て直しの見通しがつかないほど崩壊過程が進行している。しかし、それに最大の責任を負っているのはアメリカである。なぜ、インド、パキスタンは核兵器の保有をみとめたが、イランは「平和目的の濃縮」さえ認めないのか。なぜ公然とした秘密となっているイスラエルの核保有を放っておくのか。それは、イランが反米・反帝・反イスラエルだからである。そして世界第二位の産油国だからである。親米国家は核兵器を保有しても容認し、反米国家はウラン濃縮を開始しただけででも攻撃対象にする−−こんな理不尽なやり方がNPT体制を滅茶苦茶にしてきたのだ。
 日本を含む世界中のマス・メディアが垂れ流すデマゴギー−−核拡散の新たな脅威イラン、NPT体制を掘り崩すイラン、核兵器とミサイルで武装し世界中を脅すイラン等々−−も、よくよく検討してみると、全てがアメリカ自身のことを言っているということが分かるだろう。実際、ブッシュが執拗にイランの核の脅威を煽るのは、対イラン戦争に踏み出す場合、「核施設」が格好の攻撃対象にできるというのが正しいのではないか。攻撃目標の中に核施設を含むことで、マスコミや世論の理解を得られ易くし、イラン攻撃を正当化できるのだから。もう一度思い出して欲しい。ブッシュがイラクを攻撃する前にやったこと、それは今イランにやっていることと全く同じなのだ。
※U.S. Stepping Up Plans to Attack Iran, New Yorker Article Says http://www.nytimes.com/2006/04/09/world/middleeast/09iran.html?ex=1176004800&en=db6f38e6462db90f&ei=5070
 イラン攻撃計画が作成された時期とアメリカがイランの核開発の脅威をことさら強調され始めた時期とは符合している。

 繰り返し確認したい。「NPT体制の建て直し、核拡散のこれ以上の拡大を阻止し回避するに、まずもってイランの濃縮ウラン、平和利用を封じ込めねばならない」−−この論理は間違いである。それはイランへの戦争挑発の論理である。
 もちろん、核開発における「平和利用」と「軍事利用」の境界はあいまいであり、容易に相互に転じることができる。核兵器開発、核実験、原発でも日常的に放射能をまき散らし、取り返しのつかない事態を引き起こす。ヒロシマ、ナガサキとチェルノブイリ、スリーマイル、セミパラチンスクとネバダ等々の被害はその最たるものである。だからこそ私たちは原子力の軍事利用(核兵器)にも平和利用(原発・核燃料サイクル)にも反対である。しかし、この点でもまず断罪されるべきは世界最大の核保有国であり、核兵器を歴史上最初で唯一使用し、現在もなお未臨界核実験という核実験を強行し高性能の小型核兵器を開発し続けているアメリカである!この核の脅威の元凶であるアメリカの核と核兵器の根本的な削減、米の核軍縮を包括的計画的に成し遂げることなしに、核拡散の防止は不可能である。



[3]イラク新政策のもう一つの側面−−イランを主敵とする「中東政策の転換」(strategic shift)

(1) イラク新政策と並行して、中東全域における米国の覇権の巻き返しを目指す新たな「戦略転換」(strategic shift)が同時に進められている−−このような指摘が、既に紹介した『THE REDIRECTION』において言及されている。著者であるハーシュ氏は次のように主張する。「イランを弱体化することを狙い、ブッシュ政権は中東における優先順位を変更した。レバノンでは、サウジアラビアと協力しヒズボラを弱体化することも目的とした秘密活動を行っている。米国は、イランとその同盟国であるシリアを狙う秘密活動にも参加した」と。
 すなわち、「戦略転換」は、イラン封じ込めを柱にし、中東の各所で伸張する反米シーア派勢力を弱体化させることを目的としている。それはハーシュ氏によれば、@シーア派勢力の総本山であるイラン包囲網の形成、軍事的締め付け、Aシリアのアサド政権への揺さぶり、Bレバノンにおけるシーア派・ヒズボラの弱体化、スンニ派であるセニオラ政権支持・援助、Cハマスの弱体化、ファタハ支援、パレスチナとイスラエル間の「和平」前進、によって構成される包括的な戦略である。
※セニオラ首相はスンニ派である。レバノンは、スンニ派が20%、シーア派が30%、キリスト教マロン派が20%を占めると言われている。首相はスンニ派、大統領はマロン派、国会議長はシーア派から選出されるシステムとなっている。セニオラ首相は反シリア派のハリーリ派の後ろ盾でその座に就いている。

 @については、すでに見てきた通りである。Aについては、ヒズボラへの資金援助、武器援助を行っているシリアのアサド大統領の政府を弱体化するための広範な活動に対する直接支援、資金援助が含まれる。Bについては、ブッシュ政府は、すでに今年1月、サウジアラビアからの10億ドル以上の見込みを含む80億ドルの提供を約束した。その中には、軍事援助の2億ドル以上、治安維持のための4000万ドルを含む。また、セニオラ政権に対する秘密支援−シーア派に対抗するスンニ派グループへの資金援助−も与えているという。Cについて、イスラエルだけではなく、サウジアラビアによるはハマスへの締め付けがある。彼らはハマスを、イランから支持を受け取ったシーア派組織として攻撃を強めている。そして、より宗派色の薄いファタハと権力を共有することを求めている。

 中東で勢いづく反米勢力に対する包囲網を形成し弱体化を図るための手段として、米国(イスラエルも含む)と、イランの影響力の伸長を嫌う親米アラブ国家の盟主であるサウジアラビアとの戦略的協力関係の構築することがポイントの一つに挙げられている。従来からサウジアラビアは、親米国家として米国、イスラエルと協調する姿勢を取ってきた。「戦略転換」では、サウジアラビアとイスラエルを新たな戦略的関係に引き込むことを狙っている。サウジアラビアもまたイランを脅威としてみなしているということが、その新たな戦略的関係の基礎である。米国は昨年、サウジアラビア、イスラエルと一連の非公式会合を持ち、シーア派封じ込めの一連の政策に合意したという。当然のこと、「戦略転換」の具体的な戦術内容の多くは公表されていない。非公然の作戦は、秘密裏にされており、いくつかのケースでは、サウジアラビアに実行または資金提供を任せるか、あるいは、通常の議会支出過程に則り形で活動する様々な方法が模索されていると言われている。すでに各所において、秘密作戦が開始されているという。
※The Secret War Against Iran http://www.afterdowningstreet.org/?q=node/20865
 

(2) ブッシュ政権は、この戦略転換についてしばしば言及している。1月の上院外交員会においてライスは、「中東における新たな戦略的調整」に触れている。その中でライスは、「改革派」と「急進派」という区分を持ち出し、スンニ派諸国を穏健国家とし、イラン、シリア、ヒズボラを「向こう側」(敵側)とした。そして「イラン、シリアには選択肢があり、彼らの選択肢は不安定化することだ」として、敵意を剥き出しにした。ブッシュ大統領の新イラク政策の発表とともに、中東全域における勢力再編成を目論んだ壮大な計画−−イラン、反米シーア派の弱体化を追及する明確な転換がはじまったのである。
 このような戦略転換に関する指摘は、中東で進行している様々な出来事を結びつける重要な視点を提供する。この間の米国とサウジアラビアによるパレスチナ問題への関与については尋常ならざるものがあった。ハマスとファタハの対立を深めるや、サウジアラビアは仲介を主導した。イスラエルが抵抗したにもかかわらず、ハマスとファタハの新連立内閣発足に暗躍した。パレスチナ問題においてサウジアラビア、米国、イスラエルが連携し、シーア派のハマスの影響力排除とイスラエルの承認に向けて新たに動き出しているとするならば、またレバノン問題においてセニオラ政権がヒズボラと対決姿勢を強める影にサウジアラビア、米国の影があるとするならば、それらは「戦略転換」の証左と理解してもよいだろう。
※「戦略転換」の中心的画策者がチェイニーと言われている。そこに、エイブラムズ国家安全保障担当副補佐官、カルザイ駐イラク大使とバンダル皇太子(サウジアラビア)が加わる。米国とサウジアラビアの強固な同盟関係には、突出した親米ぶりを示すバンダル皇太子の存在がある。
※Top Cheney Aide: 2007 Is ‘The Year Of Iran,’ U.S. Attack ‘A Real Possibility’http://thinkprogress.org/2007/02/12/hannah-iran/
※議長とハマス指導者 「内戦回避」へ最後の協議 パレスチナ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070208-00000011-san-int

 しかし、ブッシュ政権の戦略転換は矛盾に満ちており、中東に分断と混乱をもたらす危険性をもつものである。米国がスンニ派国家を「穏健国家」とし、イラン、シリアをはじめとするシーア派国家を「過激派国家」に分類、敵味方を鮮明にするやり方を貫き、手を突っ込んだならば、各地域において宗派間の対立を煽るこは必定である。イラク国内における宗派間の対立は、米国が煽ったものである。いったん宗派間の対立に火がつくとどのような事態になるのか、イラクから日々伝えられる悲惨なニュースが、そのことを物語っている。中東全域において、シーア派、スンニ派間の宗派間の分断を拡大すればどうなるのか。「戦略転換」はそのような危険性をはらんでいる。
 中でもサウジアラビアの政治的役割は突出している。そして、バンダルのブッシュ政権との接近ぶりに対してアラブ世界では不信感が芽生えている。サウジアラビアの役回りは、ヒズボラ、ハマスをはじめとする新たなアラブナショナリズム高揚に対する危機感の反映である。それは、自らの腐敗・腐朽する王政国家が、新たな民族意識高揚とともに脅かされていることを反映したものである。米国、イスラエルと共同歩調を強めるサウジ王家に対するアラブ民衆の怒りは必ず爆発するであろう。
※「中東包括和平案」再提示へ きょうからアラブ連盟首脳会議 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070328-00000011-san-int

 この「戦略転換」なるものは、イラク政策の混迷とともに出されたものである。すでに繰り返し述べているように、イラクにおける政情安定化に失敗したその原因をイラン、シリアの関与に帰し、イラクにとどまらず、一気にシーア派勢力に対して巻き返そうとする危険に満ちた野望である。イラク政策がうまくいかないからといって中東の各所において戦端を開こうなど、絵に描いた餅に過ぎない。早晩、ブッシュ政権の「賭け」であるイラク増派は失敗に終わり、さらに新たなアラブナショナリズムの台頭を迎えるであろう。その時、米の中東覇権はさらに根底から脅かされるであろう。



[4]イランへの軍事的包囲=戦争挑発阻止−−反戦平和運動の重要な課題

(1) ブッシュ大統領は、イラク泥沼化の冒険主義的な打開のためにイラン攻撃を準備しているのであるが、実行に踏み切ることを逡巡させている最大の要因もまたイラク問題である。イランと戦争状態に入ったならば、イラク革命評議会などマリキ政権を支えるイラクのシーア派勢力とも全面的に対決することになる。スンニ派の反米武装勢力と並んでシーア派勢力とも戦争状態になることになれば、イラクはますます泥沼化するだろう。これが、ブッシュ政権にとっての最大のジレンマである。「戦略転換」はイラク国内の対立関係に、複雑な影響を及ぼしていくだろう。シーア派の脅威を煽るあまり、「米国に敵対的であるアルカイダに共感するスンニ派過激派グループを強化」しているとも言われている。この勢力による自動車爆弾テロも多く発生していると見られる。

 ブッシュのイラク新政策、「戦略転換」、イラン封じ込め政策は、中東支配の破綻に対する米帝国主義の巻き返しである。イラク戦争の泥沼化によってブッシュは中東における石油略奪計画、再植民地化計画、軍事覇権の復活に失敗した。この破綻をもたらしたのは、イラクの反米・反占領武装闘争だけではない。レバノンでのヒズボラの武装抵抗闘争、さらにはパレスチナにおけるハマスの武装抵抗の勝利と長期にわたる粘り強いインティファーダ等々、アラブ民衆の新しい民族解放闘争が台頭した結果である。アラブ・ナショナリズムが再生・復活を遂げようとしているのである。
レバノン侵攻におけるイスラエル敗北の軍事的・政治的意義−−米・イスラエルによる中東覇権の行き詰まりと破綻(署名事務局)

 イラク新政策に基づく増派とバグダッド掃討作戦は、イラク市民の犠牲者を急増させ、米兵に対する攻撃の急拡大、治安の極端な悪化、国内避難民と難民の増大等々被害をもたらしている。バグダッドの治安悪化は、米軍の要塞であるはずのグリーンゾーンに対する攻撃が頻発する迄に至っている。
 また、フセイン政権崩壊4周年の4月9日には、イラク各地で反米デモや集会が組織された。シーア派の聖地ナジャフでは、数十万人が激しい反米集会・デモを展開した。この集会はシーア派スンニ派の枠を越えた反米・反占領の人民集会の性格を色濃くし、人々は「ブッシュくたばれ」「米軍は撤退せよ」などの要求を掲げた。
※Officials:Attacks on Green Zone increasing http://www.armytimes.com/news/2007/04/airforce_greenzoneattacks_070407/
※フセイン政権崩壊4年、米軍早期撤退訴え数十万人デモhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070409-00000016-yom-int


(2) アメリカ国内では、イラク負傷兵への劣悪待遇問題での米陸軍長官の更迭とブッシュの謝罪、イラク帰還兵の精神疾患の急増問題等々問題が噴出しブッシュは追い込まれている。そしてブッシュは、イラクからの撤退期限を設定した追加戦費法案が上下院で可決されたことから、イラク新政策遂行のための予算法案に拒否権を行使せざるを得ない状況に陥っている。商業メディアは、これをブッシュの窮地として連日大きく取り上げている。
※イラク帰還兵:4分の1にPTSD 3割以上治療必要 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070313k0000e030046000c.html
※米陸軍長官を更迭、イラク負傷兵への劣悪待遇問題でhttp://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4500/news/20070303it03.htm
※Civilian Toll: Iraqis Exibit More Mental Health Problems http://www.commondreams.org/headlines07/0319-02.htm


 しかし、アメリカの反戦運動センターや先進的なグループは、民主党の中途半端な決議はイラク戦争容認を基調とするものとして批判を強め、即時撤退に向けてさらなる攻勢に出ようとしている。
 アメリカでは今年に入って、全米で50万人、ワシントンで15万人を結集した1月27日の反戦大行動、3月12日からのワシントンでのキャンプ行動、3月17日のペンタゴン大行進、イラク戦争への追加予算措置に反対する実力行動「占拠プロジェクト」など波状的な反戦行動が展開されている。ブッシュ政権に対してイランへの戦争を押し止めるのは反戦平和運動の力である。現在、ブッシュを弾劾し辞任を要求する闘い、ベトナム反戦闘争を再来させようという運動が生み出されつつある。これこそが、イラクからの米軍の撤退を実現させる現在の動きを作り上げており、イランへの攻撃を押し止める力となるであろう。
※Dems claim vote for war budget is anti-war http://www.workers.org/2007/us/war-budget-0412/