米国はキューバとベネズエラから手を引け!
米軍、ベネズエラとキューバを標的にカリブ海で前代未聞の大軍事演習
――5月20日、世界の反戦団体・反帝勢力が全世界的な抗議行動を提起――


(1)上陸演習を含む2ヶ月に及ぶ米の大軍事演習、その後NATO軍が続く。
 来る5月20日に、ワシントンD.C.とロサンゼルスおよび世界各地で、「米国はベネズエラとキューバから手を引け!」というスローガンを掲げた大抗議行動が行なわれる。

 米軍は、現在、カリブ海水域で、大規模な軍事演習を行なっている。これは4月4日に開始され5月下旬までの2ヶ月にわたって続くもので、総勢6500人の海兵隊員(上陸作戦・空挺降下などを任務とする侵略部隊)が参加し、60機の戦闘機(F-15など)を搭載した空母ジョージ・ワシントン、巡洋艦、駆逐艦、フリゲート鑑、さらに数隻のUSSバージニア原子力潜水艦までもが加わっている。
 また、今回の演習では、ベネズエラの海岸からわずか24qのアルーバ島に軍隊を上陸させている。
 さらに、米軍が演習を終えた後、今度は5月23日から6月15日まで4,000人のNATO軍が別の軍事演習を続けるという。

 この前代未聞の大規模かつ挑発的な軍事演習は、キューバとベネズエラ、さらには反米的傾向を強めているラテンアメリカの国々に対するあからさまな脅しであり、現実の侵攻をも視座に入れた活動となっている。というのも、米軍の軍事演習は、これまでの歴史では、しばしば実際の侵攻に必要な情報の収集のために行なわれてきたからである。

 米国はベネズエラへの敵視をもはや隠そうともしないばかりか、最近一層エスカレートさせてきている。
 3月16日に、ブッシュ大統領が提起した新国家安全保障ドキュメントにおいて、ベネズエラは、米国が「予防攻撃」を行なう際の対象国のリストに追加された。また4月28日には、ライス国務長官が、「テロに対する戦争」を放棄したとしてベネズエラを非難した。
参考:
ワーカーズ・ワールド2006年5月10日「米国の軍事演習がカリブ海を脅かす 5月20日の抗議行動の要求:‘キューバとベネズエラから手を引け!’」
http://www.workers.org/2006/world/caribbean-0518/
グランマ2006年5月13日「ベネズエラに対するブッシュの挑発 軍事的脅威とやみくもな攻撃」
http://www.granma.cu/ingles/2006/mayo/sabado13/20venezuela-i.html
ハンズ・オフ・ベネズエラ 2006年4月1日「米国主要な軍事演習着手へ ベネズエラ・キューバに対する警告として」(Emerging Revolution in the South)http://agrotous.seesaa.net/article/16198735.html
原文http://www.handsoffvenezuela.org/us_military_exercises_venezuela_cuba.htm


(2)またもやでっち上げを画策−−ベネズエラとイランの核開発を無理矢理こじつけ。
 また、イランの核開発にベネズエラが関わっているという、途方もないでまかせが、さかんに言い立てられている。ベネズエラがイランにこっそりウラニウムを送り、その代わりにイランの核技術や核兵器がベネズエラに送られているというのである。
 昨年10月、ベネズエラのチャベス大統領は、アマゾンのジャングルで活動しているニュー・トライブ・ミッションの宣教師を追放すると発表した。チャベス大統領が、この宣教師たちが「帝国主義が突破口を開くための秘密情報部員であり、機密戦略情報を収集し、先住民を搾取していた」と判断したためである。
 ところが、この問題が、なんとベネズエラがイランの核開発に協力している証拠であるとして、米国の右翼的な論客によってさかんに言い立てられている。宣教師たちはその地域に存在するウラン鉱脈に関わる機密を調査していたというのである。
 しかし、米国務省でさえ、ベネズエラでウランの商業的な利用を見たことがないと述べている。また、イランは自前のウラン鉱山を持っているので、何もわざわざベネズエラから輸入しなければならない必然性はまったくない。

 しかし、こんな愚にもつかない噂を撒き散らすということは、ベネズエラのチャベス政権を追い落とすためならどんなことでもしかねないという、米国の自暴自棄的な態度を示している。イラク侵攻の根拠となった情報――ニジェールからイラクに核兵器を作るための部品がイラクに送られているという開戦の口実となった情報――が、実は真っ赤な嘘であったことを、今は米国自身までもが認めている。しかし、米国はその二番煎じを行なおうとしているのである。
 ベネズエラ国内における米国が後ろ盾となっていたチャベス打倒の策動はことごとく失敗した。そのため、もう米国には、最後の切り札としては、米軍の直接的な侵攻という手段を行使するしかないというところまで追い込まれている。

 しかしながら、国際世論はさらに慎重さを増し、米国のこの策略に再度欺かれる者は、以前よりもはるかに少なくなってきている。
参考:
カウンターパンチ 2006年5月10日「ベネズエラは新しいニジェールか? ブッシュ政権はウーゴ・チャベスとイランの核計画との関連付けを画策」http://www.counterpunch.org/birns05102006.html

注釈:「ニュー・トライブ・ミッション」は、1946年からアマゾンでの布教活動を開始した米国のキリスト教団体であり、聖書を先住民の言語に翻訳することを任務としている米国の「サマー言語学研究所」と密接な関係を持っている。1970年代から、多国籍企業のための鉱物採集や先住民への強制的な改宗と文化の押し付けをしているとして、左翼政治グループ、環境保護者たち、先住民の組織、研究者、カトリック教会の指導者、そして軍のメンバーからも批判を受けていた。彼らはそこに壮大な近代設備を整えていた。1980年までには、彼らは、2つの聖書研究所、6つの基礎訓練キャンプ、言語学研究所、放送局、メディカル・センター、退職した宣教師のための住宅団地、さらに彼らの軽飛行機船隊のための29個の滑走路を造っていた。
参考
『Venezuela to Expel U.S. Evangelical Group』 Oct 13, 2005
http://www.venezuelanalysis.com/news.php?newsno=1784
『Evangelicals in Venezuela: Robertson Only the Latest Controversy』Sep 21, 2005
http://www.coha.org/NEW_PRESS_RELEASES/New_Press_Releases_2005/
05.103_Venezuelan_Evangelicals_and_Robertson.html



(3)「米国はベネズエラとキューバから手を引け!」
 5月20日は、アフリカ解放記念日(African Liberation Day)でもあり、この日が「米国はベネズエラとキューバから手を引け!」をスローガンに掲げた抗議行動の日に選ばれたことは、キューバやベネズエラとの連帯を掲げた平和運動とアフリカ系アメリカ人の活動家グループとの新たな連携が生まれていることを表している。
 5月1日に行なわれたヒスパニック系移民の完全な権利を求めたボイコット運動には、かつてなく大規模にラテンアメリカ出身者が参加した。この参加者の間にも、5月20日の行動への参加が呼びかけられている。全米から、ワシントンD.C.とロサンゼルスに続々と労働者、市民、学生が集まろうとしている。
 この日にはベネズエラとキューバ両国の元首の演説が放送されることになっている。また、ベネズエラで航空機を爆破させたことで指名手配されているポサーダの引渡しを米政府に要求し、米国に不当に拘束されている5人のキューバ人の釈放を求めている。

 アメリカ帝国主義は、新自由主義とグローバリズムという名の人間と自然に対する徹底した搾取によって、世界中を破壊しながら富を収奪してきた。しかし、この5月20日の米国内外の広汎な行動は、そうした帝国主義の支配に苦しめられてきた人々が、強い連帯を築き上げつつあることを示している。 

2006年5月17日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


 以下に米国の左翼系雑誌「ワーカーズ・ワールド(http://www.workers.org/)」からの翻訳を紹介する。




[翻訳]
米国の軍事演習がカリブ海を脅かす
5月20日の抗議行動の要求:‘キューバとベネズエラから手を引け!'
シェリル・ラバシュ
『ワーカーズ・ワールド』 2006年5月10日発行

http://www.workers.org/2006/world/caribbean-0518/


 核戦力を有する米国艦隊と6,500人の海兵隊が、カリブ海でキューバ、ベネズエラおよびアメリカ大陸における他の反帝国主義的諸国を脅しつける大演習を行なっている。まさにその時に、もうひとつ別の大動員が地球をまたいで生じている。

 5月20日に、オーストリアからオーストラリアまで、ブラジルからカナダまで、大規模なデモンストレーションがワシントンDCの行進と同時に行なわれる。その要求は、「米国はベネズエラとキューバから手を引け(U.S. hands off Venezeela and Cuba:Manos fuera de Venezuela y Cuba)」である。

 状況は緊急である。キューバの新聞グランマによると、米軍のこの大軍事演習の範囲は、1962年10月の「ミサイル危機」の時のペンタゴンによる海軍の展開さえ小さく見えるほどである。過去の同様の軍事演習は、侵攻を開始するのに必要な情報を収集するのに利用された。ちょうど1983年の米国によるグレナダの侵攻に先行して行なわれた「演習」のように。

 また、軍事演習は、直接的な脅威を送りつけるためにも使用されうる。極度に軍事化されているハンプトン・ロード一帯で発行されている「バージニアン・パイロット」紙は、3月28日の記事で以下のように注意を喚起した。

「何人もの防衛アナリストが示唆したところによると、4月前半に開始が設定された異常な2カ月にわたる軍事展開は、ベネズエラとキューバの反米政府に、軍事力の誇示として解釈されることであろう。ワシントンの防衛支持シンクタンクであるレキシントン・インスティチュートのロレーン・トンプソンはこう述べた。『カリブ海地域における米国の空母機動部隊のプレゼンスは、確実にある種のシグナルとして、キューバとベネズエラの政府に解釈されるだろう。』『もしも私がベネズエラの首都に座してこの米国の機動部隊を見るなら、アメリカはカリブ海地域への利害・関心を現実のものとすることができないほど、イラクに力をそがれているわけではない、というメッセージを受け取るであろう。』と。」

 ラジオ・ハバナによれば、この不吉な武力の誇示が、さらに、4,000人のNATO軍部隊を含む5月23日から6月15日まで続く別の軍事演習によって続けられるという。

学生、労働者、ラテンアメリカ出身者(Latin@s)の動員

 5月20日の街頭行動の呼びかけに誰が応じているのか?

 ニューヨークの高校生は2台のバスを満席にし、3台目を調達しようとしている。ニューヨーク保健病院組合(1199SEIU)はリーフレットを印刷した。そのリーフレットは、すべての移民に対する完全な権利を要求する5月1日の大規模なボイコットと、イラクからの軍の撤退を要求する4月29日のデモ行進で、配布された。

 キューバ系アメリカ人と「ボリーバル・サークル」の活動家たちは、マイアミからワシントンD.C.へ向けて旅をしている。その他、デトロイトとアトランタからはライトバンで、ボストン、フィラデルフィア、ニューヨーク、バージニア州リッチモンドなどその他の地域からはバスで、ワシントンDC では車と地下鉄で、それぞれにデモ参加者が首都に集まることになっている。彼らは、米国政府によって計画された新しい反キューバ・反ベネズエラの方策に、自分自身で直接首都に出向いていってノーと言うつもりである。

 また、5月20日はアフリカ解放記念日(African Liberation Day)である。特に注目に値するのは、このALDオーガナイザーとの共同行動である。ALDオーガナイザーと今回の大動員は、マルコムX 公園の集会場所で、ステージと音楽を共にすることになっている。また、「人民のハリケーン救援」、「全アフリカ人民革命党」、「ベネズエラ連帯アフリカ系人民」などの組織を含むアフリカ系アメリカ人の諸組織と指導者たちの力強い参加も予定されている。

 俳優のダニー・グローバー、反戦リーダーのシンディ・シーハン、作家のノーム・チョムスキーも、皆新しい支持者で、演説するよう招かれている。

 デモ行進は、「キューバ利益代表部」[訳注:キューバ大使館の役割を果たすもの]への挨拶から始まり、それから準政府組織の「民主主義のための国民基金(NED:National Endowment for Democracy)」への抗議へと続く。この組織は、ホワイトハウスの向かいのラファイエット・パークへの途中にあって、ベネズエラの右翼的反対派にかなりの資金を供給してきた。

 西海岸では、ロサンゼルスでの行進が、5月20日正午に、繁華街の連邦政府ビルに結集することになっている。

 ボリーバル・ベネズエラとキューバの両方の国家元首からの演説の音声が、ワシントンDCとロサンゼルスで放送されることになっている。他の招待された演説者は、レオナルド・ワイングラス弁護士とホセ・ペルティエラ弁護士、ルシアス・ウォーカー師とルイス・バリオス師、コロンビアの労働組合からの参加者ヘラルド・カハマルカ、そして虐殺されたプエルトリコ人の自由の闘士フィリベルト・オヘダ・リオスの妻エルマ・ベアトリス・ロサードである。

 ワイングラス弁護士は、米国の刑務所に不当に拘束されている5人のキューバ人反テロリストの1人アントニオ・グエレロの代理人である。ホセ・ペルティエラ弁護士はルイス・ポサーダ・カリレスの引き渡し手続きにおけるベネズエラ政府の代理人である。このポサーダは、1976年、キューバ航空機を空中爆破し、若いフェンシングチームを含む73人を殺害したことで、ベネズエラで指名手配中のれっきとしたテロリストである。

 5人のキューバ人の釈放とポサーダの引渡しのための闘いは、今回の活動を特徴付けるものとなるであろう。その他のテーマとしては、ベネズエラへの米国の介入と敵対的キャンペーンの停止、ワシントンのキューバに対する経済的、政治的戦争の終結、米国の市民と合法的な居住者の自由なキューバ旅行の許可、米国とキューバの関係の正常化、グアンタナモの拷問キャンプの閉鎖とグアンタナモのキューバへの返還、ラテンアメリカとカリブ海におけるすべての米国の軍事介入の阻止などがある。

 オンラインの寄付はwww.may20coalition.orgで可能である。またさらなる情報もこのサイトで得られる。西海岸の情報は(213)383-9283か(323)936-7266へ。www.iacenteria.orgでLos Angelesのリーフレットがダウンロードできる。




ベネズエラ革命(索引)