法相執行に執着か、日弁連の動きは今後の展望へ

人殺しの装置を見て感動してしまった法相!?

 国会は12月3日閉会しました南野知恵子(のうのちえこ)法相は12月6日、東京拘置所の刑場を視察しました。死刑執行の舞台装置を見た印象を「本当に厳(おごそ)かだった。最期の瞬間にこういう厳かな環境を準備していることに、感激というか、納得した」と述べた(毎日新聞・東京版)。なんと悍(おぞ)ましい感性の持ち主でしょう、この人は赤ちゃんを取り上げ、病んだ人を癒し、死にいく人を看取ることを仕事にしてきた人で、看護師を誇れる仕事とも発言してきました。その彼女が誇れるという仕事と最も対峙するはずの殺人のための装置と舞台をみて、厳かという印象を持ち感激したというのです。「怖い・恐ろしい」との感覚はなかったのでしょうか。いささか古いことですが「特攻隊」を見送る「おかあさん」を思い出させました。
 法務省に対し「いつでも執行命令に判を捺しますよ」との再度の強いメッセージになったはずです。この人が法務大臣でいる限りいつでもやりかねません。今号ではハガキ作戦をお願いすることにしました。

議論をリードしていってください、日弁連殿

  日弁連は今回の人権擁護大会ではじめて[死刑」をテーマに分科会を開催しました。本大会に先立ち埼玉・名古屋・東京・大阪・仙台・松山・札幌・広島・福岡でプレシンポが実施され、この一連の取り組みの中で「フォーラムがこれまっでやってきたことをなぞっている」との指摘もありました。しかしそれ以上に死刑問題についてフォーラムではなしえなかった課題とテーマ設定に、本気で取り組もうという方向が見え、頼もしい動きと期待しています。
 とりわけ検察量刑基準についてと権利としての恩赦についての報告は改めて報告書を読み直し、強く関心を持ちました。
 「検察量刑基準」についてはさっそくお願いして右のような日程でシンポをおこいます。「死刑判決と無期判決との量刑基準がはたして明確になっているのか、運用自体において明確な量刑基準によって判決がなされているのかという問題意識からなされた調査研究です。
 死刑の選択は、「犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性、残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の遣族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察し、その罪責が重大で、罪刑の均衝の見地からも、一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合に許される」という92年の永山事件最高裁判決が一応の基準とされ、検察は「永山判決以後死刑の科刑を是認した最高裁判所の判例一覧表(検察一覧表)」を作成、これを引用して死刑の求刑を行い、また控訴の理由としています。人権擁護大会で現在検察が定着化を図りつつあるこの「検察量刑基準」に疑問を投げかけ、分析し、死刑量刑の基準などというものはないという方向性を見いだしたと報告されました。大会最大の注目すべき報告でした。
 いったいどのような「罪」が死刑相当となるのか。「仮に死刑と無期の量刑基準が明確でないとすれば死刑判決を適用することは正義に反し、被告人に対し不公平になる。無基準が死刑制度に内在的必然的に伴うものであるなら、死刑制度の存廃そのものが検討されなければならない」死刑事件に関わっている弁護士や支援の皆さんは、死刑判決を出させないため、過去の判例を集めに大きなエネルギーを使い、分析されているはずです。前記永山事件最高裁判決はあまりにも曖昧、単なる留意点の羅列にしかすぎないのですが、この留意点に個別の被告がなした事実を重ね合わせ、検察基準の判例を付け加えれば、「死刑求刑・死刑判決できあがり」となるやっかいな側面を持っていました。曖昧であるがゆえにいかようにも料理できる、だから判断そのものが恣意的なものだと指摘しているのです。
 検察が声高に「死刑」を求刑すれば死刑判決が出しやすい、裁判所は検察に追随してしまいがちです。この報告は事実に基づく批判のための資料集です。共同通信記事データーベースを基に、「@検察が死刑を求刑したが判決は無期であった事案(一覧表B)」、A「検察がもともと無期を求刑している事案(一覧表C)」を、永山判決の項目に沿って分析一覧表化する。それらと検察一覧表(一覧表A)とを比較検討してみると、なんとその3つには明確な相違違はなかったばかりか、一覧表B・一覧表Cの事件の方が留意点においてよりマイナスと思われるものがあったと報告されました。
 報告者はこのことを「量刑の誤判」と説明し、この報告書を検察一覧表を斬るものとして裁判の実務で役立ててほしいと発言しました。そのためにこの報告書は別冊となっていて、座右におき活用しやすいものとしたとのことでした。大会に参加できなかった弁護士さんたちにもこのシンポへの参加を呼びかけます。

恩赦の請求は権利である

 大会議案書を持ち帰り読んでみて我が意を得たと感じた報告がありました。龍谷大学の福島至教授に委託された「恩赦の研究」報告です。現在死刑に変わる最高刑として有力視されているのは「仮釈放のない終身刑」です。重無期刑などとも言い換えていますが「獄死するまで閉じこめておばいい」との世論受けする視点です。死刑廃止法案が上程直前と伝えられる韓国においても死刑に代わる刑は「終身刑」のようです。世論を背景にするとどうしてもここから抜け出ることは出来ないように思います。私たちの目的は日本の「刑罰」から死刑を廃止することですが、考えを実効力のあるものとするためには、法律化する必要があり、意見の一致のためには百歩譲って終身刑の導入も考慮すべき案の一つであるということです。
 恩赦に関しては司法と行政との間でそれぞれの独立という観点で議論があります。諸外国(ことにアメリカ)では恩赦制度が活発に機能していて、ライアン元知事がとった「死刑囚全員の減刑」措置など耳に新しいところです。日本においては死刑囚への恩赦が全く機能していなくて、フォーラムでもかつて「恩赦は権利である」との視点を表明してはいましたが主張を掲げただけでした。
 福島教授は大阪でのプレシンポの当日(6月26日)午前中に持たれた研究会で「仮釈放と恩赦とは歴史的ルーツが同じ事から社会復帰へのサポートとして、同じ制度目的と考えていたが、国際人権(自由権)規約から見て、別の視点で考えてみることも視野に入れ受刑者本人の恩赦出願権を検討したい(人権擁護大会第三分科会基調報告書p273)」と、研究の中間報告をされたとのことです。
 報告書では恩赦の権利制を以下のように今後の検討課題としてまとめています。
 国際人権(自由権)規約6条4項「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑はすべての場合に与えることができる」は端的に恩赦を求める権利を保障していること。ここから導かれる具体的な内容は@本人もしくは代理人が直接請求できること、A不服申立の道が開かれていること、B弁護士の援助が受けられること、C請求審理中は死刑の執行が停止されること、が求められる。と整理しています。
 日本における現状は、@死刑確定者から監獄の長への「出願」、A中央更生保護審査会へ「上申」、B審査会から法務大臣への「申出」の3重構造がとられているため権利性の観点からかけ離れている、規約が保障する権利性を明確にし、具体的に実のある内容に構成し直すのが、緊急の課題である。としています。
 日弁連の中で真摯に議論され始めたことに力強いものを感じました。(文責 えがしら)

2005年フォーラムシンポ第一回
死刑と無期の量刑基準に関する調査研究報告

死刑と無期のはざ間で

・・検察量刑基準を斬る・・

報告 村上満宏弁護士(愛知弁護士会)

 時:2005年1月15日(14時00〜
 所:東京都文京区文京シビックセンター5階
 交通:東京メトロ・後楽園:都営地下鉄・春日
参加費:500円+資料代

死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開
及び 死刑問題調査会の設置を求める決議

 死刑が法定刑として規定されている罪に直面している者に対し、そうでない罪の事件で付与される保護に加えて、特別な保護が与えられるべきことは国連総会決議で強く要求されているところである。しかし、わが国の刑事司法制度は、捜査段階、公判段階、刑の確定後、執行段階のいずれにおいても、十分な弁護権、防禦権が保障されておらず、国際人権基準に大きく違反している状態にある。4つの死刑確定事件における再審無罪に見られるとおり、死刑判決の誤判が明らかとなっているが、死刑事件についての誤判防止のための制度改革も全くなされていない。死刑と無期の量刑についても、最高裁、高裁、地裁において判断の分かれる事例が相次ぎ、死刑判決への信頼が揺らいでいる。これらの重大な問題点について抜本的な改善がなされない限り、少なくとも死刑の執行は許されない状況にある。
 死刑制度そのものについて見れば、死刑を廃止したヨーロッパ諸国をはじめ世界の6割の国と地域が死刑を法律上あるいは事実上廃止し、死刑廃止は国際的な潮流となっており、この流れは、アジアにも及んでいる。かかる状況下において、わが国においても死刑制度の存廃について、早急に広範な議論を行う必要がある。
 よって、当連合会は、日本政府及び国会に対し、以下の施策を実行することを求める。
1 死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定すること。
2 死刑執行の基準、手続、方法など死刑制度に関する情報を広く公開すること。
3 死刑制度の問題点の改善と死刑制度の存廃について国民的な議論を行うため、検討機関として、衆参両院に死刑問題に関する調査会を設置すること。
 当連合会は、国会議員、マスコミ、市民各層に働きかけ、死刑制度の存廃について広範な議論を行うことを提起する。また、当連合会は、過去の死刑確定事件についての実証的な検証を行い、死刑に直面している者が、手続のあらゆる段階において弁護士の適切にして十分な援助を受けることができるよう、死刑に直面する者の刑事弁護実務のあり方についての検討に直ちに取り組む決意である。
 以上のとおり決議する。
2004(平成16)年10月8日 日本弁護士連合会


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