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前号では、自治体政策の総合的な課題から、現に先行する条例制定の動きについて、本質的な問題提起がなされ、具体的な神原提案への反響がいくつか寄せられた。今回も条例制定に関わる「首長の参加」という提案から始まる。そして、北海道をめぐる道州制の議論は、鮮やかにここ数年の道州制議論の虚妄をつくに違いないと考える(編集部)
基本条例制定における「首長参加」
<伊藤> 自治体基本条例が「生きる基本条例」であり続けるためには、制定過程に市民、職員、首長、議員の4者の参加が必要であるとおっしゃいました。条例制定に市民参加は当然のことと思いますが、首長参加とは具体的にはどういうことでしょうか。
<神原> 先ほど制定過程における4課題で言いましたが、各地の状況を見ると条例案の策定手続が貧しいと思っています。市民参加をやるのはいいのだけれど、4者の関係なのだから、4者がきちんと参加して作るかたちになっていないとね。首長が、「基本条例の素案のご検討をお願いする市民委員会を設置します」ではだめですね。
市民参加で基本条例を作るというときの市民参加には、二つの意味があります。ひとつは文字通り市民が参加して意見を表明して討論する市民参加。もうひとつは市民が参加する市民委員会が中心になって、4者の参加を推進して条例案作りをプロデユースする市民参加。ところが現実は前者の市民参加だけで、首長が素案作りを市民委員会に丸投げするケースが多い。これでは駄目です。市民だけではわからないことがたくさんあるからです。
ですから4者の参加をバランスよく進めなければなりません。市民として、首長・職員・議員も異なる経験を生かして、どんな基本条例がよいのか、意見を出し討論しなければならない。「首長参加」を率先して行なう。「職員参加」も当然です。これをきちんとやらないから「議員参加」も進まない。その結果どうなるかと言えば、基本条例の議会関連規定は美称的なものに終わり、それにあわせて、基本条例全体の条文が抽象的になります。
<司会> 少し難しい話しですが、今流行のネグリの「構成権力」、つまり自治体版の「憲法制定勢力」をどうするかということですね。つまり、本当に自治体を支える主体、先生のいう4者の合意にしないと、実効力がないわけです。
<神原> そう。「基本条例制定権力」は主権者市民であり、そこから最高規範性も出てくるのですが、内容を作る上においては、やはり現場体験を持つ首長、職員、議員の説明や意見を聞かないと、自治体運営の課題や情報が共有されません。ですから「基本条例制定会議」は、市民主導で進めるのは当然ですが、実効あるものにするには最初から4者の参加が不可欠なわけです。基本条例の議決という政治的な決済手続を考えれば、例えば、札幌市の場合は市長が言いだしっぺですから、自ら率先参加し、議員にも参加を呼びかけるべきです。
そうした環境を整える努力なくして、市民に委ねるだけだとすれば、明るい展望は開けない。それよりもなによりも、私は、条件が整わないなら、自治基本条例などは慌てて作るべきではないと思うのです。先の6原則と4課題をクリアするには相当な時間と労力が必要です。そこを省略すると作文条例になります。実は私はそこを一番恐れているんです。
<伊藤> 上田市長には、市民、職員、首長、職員の参加を対等につくり、基本条例に対してどのような考えでこれに望むのか示してほしいですね。実効性のある条例を期待したいところです。
自治体基本条例への近道
<神原> 優れた自治基本条例に到達できる一番効果的な方法は、総合計画型のアプローチです。つまり、総合計画をきちんと策定し、計画中心の政策運営の体制を構築すれば、よい自治体基本条例が制定できるということです。自治体の総合計画といえば。武蔵野方式が有名ですが、最近は岐阜県の多治見市がより発展的な素晴らしい計画づくりをやっています。
ここでは原則として総合計画にない政策は行なわない、という大命題があります。前期5年の実施計画と後期5年の展望計画に分け、実施計画の3年目に市長選挙が来る。その選挙公約と当初の展望計画の再検討を加えて、4年目に実施計画を見直し、1年前倒しして次の5年の実施計画を確定する。もちろん計画には、事業一覧や政策の数値目標とか財源構成も示される。
非常に斬新で実効性に富んだ総合計画ですね。そればかりでなく、策定手続における市民参加、職員参加、情報公開、それに計画運用と政策評価、財務会計、組織改編などの問題が連動しているのですね。これらはみな自治体基本条例に不可欠の基幹的な仕組みです。ですから、きちんとした総合計画をやれば、実効性に富んだ優れた自治体基本条例がつくれます。
少しそれますが、選挙のマニフェスト運動がありますね。公約が単なる口約に終わらないように、数値目標や財源構成を示した政策論争を行うようにと。これは大変よいことで私も大賛成ですが、いまお話したような意味での総合計画による自治体運営、あるいはそうした総合計画の理念や制度、原則を組み入れた自治基本条例ができていないとマニフェストも作れないのです。公約ないし口約をマニフェストと言い換えただけになってしまいます。
もうひとつは、市民参加型のアプローチで、これは二番目に有効です。まず市民参加条例を制定する。これも、ある程度具体的な市民参加の場面を想定することになります。総合計画の策定、重要事項の決定、予算の編成、政策の評価を行なうとき、などなどですね。そうしますと、それぞれの場面が具体的な仕組みになっていないと参加は推進できません。そういう意味で参加条例は優れた自治体基本条例への効果的な道のりになりうると思うのです。
<司会> 確かに……。基本条例を作って、市民の直接請求権や、住民投票をやる権利を縛るようなものを作ったりなんかする自治体もありますから。‥‥続く
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