主張「明るい高齢社会に向けて」

「高齢者特別寄付金」制度の創設を提案します。

NPOへの支援税制や寄付者の支援税制で置きざりにされている、高齢者(特に年金受給者)が寄付をする寄付金の 控除を一般と区別し、その税制支援を検討してみました。

高齢者は一律弱者でもなく、強者でもない 現在、国民健康保険制度にも、厚生年金制度にも、税徴収の制度の面にも、高齢者(60歳以上)の取り扱いが優遇されて いるものがあります。 特に税徴収の面では、控除対象者には、本人所得の控除は65歳以下について38万円であり、65歳以上の老齢者控除額 は50万円という優遇があります。 今年より始まった介護保険では所得実態に合わせて保険料を設定しようとしました。 しかし高齢者の所得がつかめない為に、住民税非課税高齢者(全体の46%)を基準とした上で、世帯全体が非課税の低所得 者(28%)の保険料は四分の三に、生活保護や老齢福祉年金受給者(2%)は半分とした経緯がありました。

明るい高齢社会のビジョン 高齢者の所得の概要が捕まえられないのは、老年者控除や公的年金控除等で税制優遇され課税最低限が高い為であります。 現役サラリ−マンの夫妻の課税最低限は220万円で、年金生活者夫妻の場合は354万円であります。 これらの高齢者所得 の全容をつかむには、納税者番号制度を導入すれば簡単ですが多くの物議をかもしだすこともあり、さらには最近の有識者 会議では年金収入の課税強化も取りざたされております。 とは言え高齢者の所得が今までよりも明らかにならなければ、高齢社会に向けての本当に優遇しなくてはいけない高齢者弱 者を見つけ出すことにはなりません。 しかしながら今後、高額の年金をもらう高齢者が益々増えれため、税の負担を求める動きは益々強まる傾向にあると想像さ れます。 その事をふまえ、明るい高齢社会を目指すためには、その施策を行うにしてもまず高齢者所得額を現在より透明化すること が重要なことではないかと考えるところです。 それには手始めに確定申告制度を積極的に進めることであり、そのための一手段として「高齢者特別寄付金制度」の創設を 検討してみたわけです。 これは、戦後に国民皆保険制度を導入するために、保健診療を行う保健医奨励の為に医師の税制優遇制度を採り入れ、その 結果今日の国民皆保険制度が定着したという経緯があることからのヒントを得たものです。

現在の高齢者所得額と可処分所得 各省庁から出されている統計では、年金受給者60才以上の貯蓄額平均は、概ね2千3百万円であります。一方40〜59 歳下の貯蓄額の平均は概ね1千5百万円と報告されています。 又、60歳以上の所得額では、年金所得者一人当たりは約220万円と報告されており、40〜59歳の所得の平均収入額 856万円を大きく下回っています。 (総務庁:平成10年度貯蓄動向調査報告、厚生省:国民生活基礎調査・平成8年) これは裏返せば、可処分所得が平均的に60歳以上の高齢者がどの世代より多いことを示しているものです。 これは、高齢者消費や地域とのつながりや社会教育にも60歳代と70歳代とでは行動の差があることが伺えます。 つまり個人の寄付者の多くは、高齢者でも70歳以上の世代層が多いことは、町内会、神社、寺、社会福祉協議会、地方公 共団体等の寄付金収入状況を見ても自ずと頷けるところであります。しかし60歳世代は従来型地縁組織のあり方に疑問視 し、そこを通しての寄付金等の徴収方法よりも自由に選択できる方向に動き始めている傾向にあるようです。 この理由は未だ解明されていませんが、個々で取られているアンケ−ト調査からすると70歳以上の層では、政治活動への 寄付は少なく、とくに街頭募金や、お付き合いの寄附、社会福祉協議会、地方自治体そして宗教活動への寄附が多い傾向に あるようです。 (経済企画庁:市民の目で見た市民活動・平成10年)

拍車がかかる新しい高齢者の多様化傾向 又60歳以上の「老人クラブ」への参加が昭和63年から比較し6.3%も減少し、それに比べ「趣味のサ−クル・団体」 が7.4%増加し、旧来型「老人クラブ」への参加率の減少が拍車をかけております。 これは多様な価値観と多様な選択視の表れに伴う活動範囲が多様化している傾向がうかがえ、従来の高齢者像より多様な考 え、社会性を持つ新しい高齢者世代の段階に入ったと考えられるように思はれます。 (総務庁:高齢者の地域社会への参加に関する調査結果報告・平成5年、国土庁:高齢社会に対応した地域活性化のあり方 ・平成10年) さらに、新しい高齢者像としての生きがいの手段に、インタ−ネット等の情報関連からグル−プ集団の設立や、情報収集に も多様な手段が行われ始め、寄付に関して、寄附先団体の活動の情報収集から寄附先の選定も始めているようでもあります。 (シニアプラン開発機構:高齢後期のクオリティ・オブ・ライフに関する調査・平成10年) このように新しい高齢者世代については、各種の調査から考えられる大きな点として以下の事が想定されようであります。 1)社会参加活動に積極的に加わろうとする傾向が見えてきはじめています。

2)社会参加活動に直接加わらない場合でも寄付をする傾向が見えてきています。 また高齢者前期(60歳代)、高齢者中期(70歳代)、高齢者後期(80歳代)とした場合に高齢者前期の生きがいを、 社会参加活動に自ら活動として取り組むか、活動には取り組まないが、主旨に賛同し寄付と言う行為で参加する傾向は、介 護保険の導入により、介護について真剣に考えだしていることからも頷けるようです。

高齢者寄付金の考えの試み 日本特有な源泉徴収制度を利用した「高齢者特別寄付金制度」の創設であります。 60歳以上の高齢者を対象に、法人格の有無に関わらず、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を出している市民活 動団体に寄付をしたときに、その団体が寄付金の10%を「高齢者特別寄付金源泉税」として納税し、「高齢者特別寄付に 関わる源泉徴収票」を寄付者に発行する方法であります。 団体は「給与等の源泉徴収票」の取り扱いと同じく、寄付額の10%を税務署に「高齢者特別寄付金源泉税」として納付し、 寄附額の90%は団体が自由に使える寄付金科目に計上し、寄付された団体は自由に使用します。 高齢者寄付者は、年度末に「高齢者特別寄付に関わる源泉徴収票」を添付して確定申告をすることにより、「高齢者特別寄 付に関わる源泉徴収額」を還付請求できることとします。

この提言のメリットは 1)団体に流れる寄付金の流れが公になり、団体の運用資金の活動がより透明性が増すと共に、それにより   団体運営に責任がより生じてくると思はれます。

2)「高齢者特別寄付金源泉税及び徴収票」を徴収・発行できる団体は、従来より「給与支払事務所等の開   設届出書」を届けている団体に限りますので、新たな認定機関を作らなくても、現行制度の「届出」だ   けにより恣意的要素がなく運用されると思はれます。

3)「高齢者特別寄付金制度」が出来ると、団体は寄付を受ける際に「高齢者特別寄付に関わる源泉徴収額」   を支払うことが必ず義務化するために、団体における「給与支払事務所等の開設届出書」による「給与等   の源泉徴収票」の取り扱い方に透明性が増すことになると思うはれます。

4)国税としての「高齢者特別寄付に関わる源泉徴収額」が国庫に入り、社会全体でお金の流れが出てくる可   能性も考えられます。

5)高齢者が確定申告する事により還付金が入ることで確定申告の制度が定着してくると思はれます。

6)高齢者の寄付が単なるお付き合いではなく、自分が望む団体への寄付として生かされることで、その団体   や活動に関心をよせることで、「生きがい」につながると思います。

7)さらに還付金で、孫の進学期やこどもの日等に合わせて何某のプレゼントが可能になり、還付金を孫のた   めにとしての目的で寄付金の額が増加する可能性があると思はれます。

8)確定申告をすることで高齢者の所得が現在より透明化になります。 以下の参考事例で試算すると 昭和10年1月2日生れ。所得は年金のみ。配偶者、父母との同居で、生命保険に50万円、損害保険に10万円、国民健康保険料 40万円を支払っていることを仮定した。 年金所得350万円の場合では公的年金等に係る雑所得は、計算表より225万円となる。 控除される項目と金額には国民健康保険料40万円、生命保険料控除10万円、配偶者控除38万円、扶養控除(老人父母116万円) そして高齢者基礎控除50万円がある。    この控除額の合計は254万円(この控除項目に実は寄付金控除項目がある) 課税所得金額計算は (225万円)−(254万円)=−29万円となり税金対象の金額が赤字になるので非課税扱いになる。 (多くの現役給与所得者では、当然年金所得者よりも所得が多いので、税金対象額の計算で赤字になることはない。 そのために、所得金額から差し引かれる控除が多いほど支払う税金額が少なくなる。 そこに寄付の控除が更に加算されれば、課税対象所得金額が少なくなることで、優遇税制としての有効性がある。

同じ計算方式で、年金所得においては、年金所得より控除される金額が多くなると、課税対象所得がマイナスと なり課税されません。 課税されないとなれば、この寄付控除は優遇税制にはならないので、年金所得者の寄付金に対する税制優遇制度 は別な方法が検討されなければいけない) 計算式で課税対象所得額がマイナスとなると非課税扱いになるため、その後に控除される配当控除、住宅取得、政党等の 寄附があっても控除対象としては差し引く事が出来ない。 しかし、課税所得対象所得額がマイナスになっても、災害減免、外国税額控除、源泉徴収税額等だけは還付される 仕組みである。 今回の高齢者特別寄付金制度は、この源泉徴収税制度を利用したものであります。                                 平成12年12月1日 原案作成者 小坂 雄二     ご意見等をお寄せ下さい。

宛先:kosa@jca.apc.org

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