2001年10月31日

与党の衆議院選挙制度改革案の問題点について

社会民主党選挙制度・政治改革プロジェクト

1.中山正暉案

9月20日に与党で合意した中山正暉案は、大都市を中心に小選挙区の一部を再編し、中選挙区を導入する衆院制度の見直し案である。これは、市区域が二つ以上の選挙区に分割されている札幌など24市と東京都の世田谷区など5特別区の合計29を見直すものである。

見直しのきっかけは、公明党が今年初め、与党幹事長会談などで「定数3、全国150選挙区の中選挙区制」の導入を求めたことにあるが、すでに現行小選挙区制度で当選している議員が多数いる自民党と、中選挙区復活を求める公明党との調整で中山案に至った。

この中山案は、(1)政治的、経済的に結びついている自治体が分割されているのは不合理である、(2)同じ市や区に住んでいて選挙区が違うのは不自然であり、住民としても分かりにくい、(3)国会議員が都議や区議よりも狭い選挙区から選ばれるのはおかしいなどの議論を背景としている。しかし、小選挙区では党勢が拡大しない公明党を救済するきらいが拭いきれない。同時に、昨年の総選挙の際、大都市部で民主党に負けたことを受けて危機感の強かった自民党の中にある、「都市部だけ中選挙区制にすれば議席が増える」というご都合主義の党利党略に乗っていたものである。

しかし、一方、自民党内では、参院選においては小泉人気によって都市部で復調したため、次第に公明党の中選挙区制復活要求に対しての批判・反対が強くなっていった。結局、自民党は本案を決定できなかった。

9月20日の与党合意の概要

  1. 小選挙区を原則
  2. 市町村や東京都23特別区は分割しない
  3. その人口が、議員定数1に見合う人口よりも多い場合は、定数を複数の区にできる
  4. その定数が4を超える場合は、政令指定都市の区や各特別区の区域を分けずに選挙区を分割する
  5. その分割する選挙区の定数は可能な限り等しくなるようにする
  6. 比例区との重複立候補制や惜敗率当選のあり方も検討

→全国で約80選挙区が、複数定数の選挙区に再編される。具体的な区割りは衆院選挙区画定審議会が行うため、どんな選挙区がいくつできるかは未定。30前後の中選挙区と220前後の小選挙区に再編の見込み。

2.与党3党幹事長案

その後、自民党は現行の小選挙区制で行政区が分割されている東京都世田谷区などを念頭に、一部の選挙区を合併して二人区を新設する案を公明党に打診した。しかし、公明党は、二人区では自民党と民主党の勢力に押されて議席確保が難しいとの判断から受け入れを拒否し、与党三党間で新たな妥協案づくりが焦点となっていた。

10月24日、与党3党の幹事長は、現行制度で行政区域が分割されている小選挙区を合区して、「二人区」12、「三人区」2の中選挙区を復活し、分割を解消する「中選挙区一部復活案」をまとめた。これは、小選挙区に中選挙区をつまみ食いのように入れ込むという、いわば木に竹をつぐようなものであり、以下のような大きな問題がある。まさに党利党略、個利個略極まれりであり、政党の利害で選挙制度を勝手に変えることは国民を愚弄し、民主主義を冒とくするものにほかならない。社民党は、かりに法案が提出されれば審議拒否の構えも含めて重大な決意を持って、あらゆる手段を講じて反対する。

(1)手法の問題

(1)選挙制度は、民意を国会にどのように反映させるかを決める、民主主義の基本ルールであり、与党の都合だけでねじ曲げようとするのは、議会制民主主義に対する背信行為である。

(2)改革の理念も伺えない、理屈もない党利党略・個利個略であり、連立維持のための政党エゴ丸出しの案である。

(2)内容的な問題

(1)行政区画が分割されている選挙区を合区して分割を解消するとしているにもかかわらず、高知市と大分市は合区の対象にはならないのはなぜなのか、また、分区をなくすといいながら、相模原市はなぜ新たに分断されるのか、なぜ2人区を12つくるのか、なぜ政令指定都市では川崎市だけ合区されて3人区になるのか、なぜ3人区が2つなのか等々、以前の与党案に比べても整合性や一貫性がまったくない、きわめて恣意的なものである。

(2)当選者が一人の小選挙区制と複数の当選者が出る中選挙区制という異なる制度を混在させると選挙区によって少数派や多数派の意見の反映の度合いが異なる事態が発生し、公正さを欠くおそれもある。

(3)中選挙区の立候補者にも比例区との重複立候補を認めるのかどうか、認める場合惜敗率の算定方法がどうなるのか、中選挙区と小選挙区での落選者の間で算定方法に不公平感が出ないのか。

(4)その他、選挙運動のあり方や制限の中身がどうなるのか(選挙区ごとに有権者数が大幅に異なれば、候補者が配布できるビラの枚数や選挙費用をどうするのか)、など問題は多い。