2001年11月30日

「雇用継続保障法」策定に当たって

社会民主党

グローバル・スタンダードによる市場経済の下、ますます深刻化する不況は、企業のリストラを強行させ、雇用崩壊をもたらしている。しかも、雇用されている労働者も、雇用と引き換えの形での権利侵害や労働条件の一方的切り下げが強行されている事例は枚挙の暇がない。

企業によるリストラのさまざまな手法は、整理解雇を筆頭に、退職勧奨・希望退職者の募集、配転・出向、賃金等の労働条件の切り下げなどで、労働者や労働組合との十分な協議も尽くされない。企業の経営責任が放棄されていると言っても過言ではない。その結果、完全失業率は史上最悪の5.3%(本年9月)に達し、求職活動をする失業者は、中高年齢労働者だけでなく、高校卒業予定者の4割に満たない内定率とともに、20代の若年労働者も失業・就業できない深刻な状況が続いている。

そこで、「解雇」に関する明確な規制・ルール化だけでなく、雇用におけるライフステージのあらゆる局面すなわち雇用の入り口から出口までの労働者の保護を目指して、「雇用継続保障法」の策定を図る。

以下、「法案の柱立て」の素案である。

1 「採用時」において、「人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身」や「年齢」等を理由とする「差別の禁止」を明確にすること

雇用における男女平等を実現する観点から、募集・採用における女性差別を禁止する現行男女雇用機会均等法第5条があるが、世界水準として機能しているILO雇用差別に関する111号条約を早急に批准すべきである。同条約第2条が明言する「採用」における差別の禁止を法制上に明定する必要がある。

さらに、派遣労働で働く女性にとって「35歳定年」の壁の存在が指摘される現状や、中高年労働者等の厳しい雇用状況と再雇用に関する労働条件の劣悪化に対処するためには、雇用対策法において策定された指針で示されている「年齢差別」についての10項目の中年功序列型の賃金体系や定年までの期間が短い場合などを理由とする条件付けを認めるものなどの是正を図りながら、改めて日本社会における「年齢差別」解消を打ち出す。

2 雇用における均等待遇の確保を図ること

配置、昇進及び教育訓練について男女雇用機会均等法第6条が男女差別を禁止しているが、考課査定に関する使用者の「裁量」による差別も依然として解消されていない。性、年齢等あらゆる事由による差別を禁止し、賃金、配置、昇進・昇格、研修・教育訓練、福利厚生、退職・解雇などにおける均等待遇の原則を確立することが必要である。

「同一価値労働・同一賃金」を含む均等待遇原則の下では、たとえば、ライフ・ステージにおける家族的責任を果たす必要性に応じて、たとえば「フルタイム・パートタイム労働の双方向での転換」制度を活用しながら、雇用を継続し生活の再生を確保することができる。

あわせて、労働者のキャリアアップを積極的に図るための研修・教育訓練に関する有給休暇の保障制度も確立すべきであり、このためにもILOの有給教育休暇に関する第140号条約の批准を早急に行うべきである。

3 雇用を継続するための「配置転換・出向」について、限定的な活用を認めること

企業がリストラ策を実施する過程で、整理解雇を避けるためのあらゆる措置(整理解雇の回避努力義務の履行)を講ずる際に、人事配置の見直し、出向の活用等、労働者の職種・勤務場所等の変更を生じることがある。しかし、大企業は、自己のリストラ策を推進するために、下請け・関連企業の労働者を「玉突き」的に企業外に押しやる結果をもたらしている場合も多い。

リストラ策の履行過程で生じる人事異動の関連では、雇用を失うことを避けるために、労働者の「意に反する」労働条件変更の結果を限定的に労働者が受け入れざるを得ない現状があることに留意して、「解雇回避のための努力義務」の明確なルール化を図ることとする。

4 解雇・退職に関するルールを明確にすること

日本では、判例法上、整理解雇に関する「4要件」(整理解雇の必要性、整理解雇を回避するための努力、整理解雇の対象労働者の選定基準の合理性、対象労働者・労働組合への説明・協議)が確立してきた。しかし、最近では、「整理解雇の必要性」について、より企業の事情に配慮し、労働者にとって苛酷すぎる判断、すなわち企業の経営基盤にかかわるほどの事情がないにもかかわらずリストラを行うことを容認する裁判例も登場していることを視野に入れながら、退職と解雇に関する労働者の権利保護を明確化する必要がある。

改めて、「解雇権濫用の法理」を確認しつつ、次の6点を含めた「解雇ルールの要件」を法制化する必要がある。

  1. 使用者の雇用に関する「社会的責任」を明確化し、労働者の雇用を確保するために、「ワークシェアリング」を実施することを義務づけること。
  2. 使用者が解雇の意思表示をするに際しては、予告期間は現行労基法第20条の「少なくとも30日前」を維持しながら、勤続年数に比例した「解雇予告手当」の支払いを義務づけること。
  3. 「整理解雇後に新たな雇用を行う場合には、退職者の再雇用を優先する」旨の規定(再雇用優先権)を条件とする解雇又は雇入れを使用者に義務づけること。
  4. 解雇の意思表示を受けた労働者は、その理由を使用者よりあらかじめ明確に開示されるべきであり、労働者が異議のある場合には、「弁明権」を保障されること。
  5. 法的に解雇の効力を争う場合には、解雇の正当理由について使用者に挙証責任を負わせること。
  6. 整理解雇を避けるための方策として、「最終的に解雇者が生じることを回避するための労使協議」を前置し、「労働者相互の主体的仕事の分かち合い」を含めた「雇用を確保するための労使協定」の締結を義務づけること。

加えて、ILO使用者の発意による雇用の終了に関する158号条約および雇用の促進及び失業に対する保護に関する第168号条約の批准を早急に実現する。

5 雇用保険制度を見直し、豊富化すること

現在、「雇用のミス・マッチ」を理由としてリストラ強行する企業・使用者は、結果として、雇用責任を放棄していると言わざるをえない。リストラされるすべての労働者は国・地方自治体等による公的責任での雇用政策の対象とされるのであるから、二重に企業の社会的責任が問われなければならない。

そもそも、雇用が確保される状況にあれば、雇用保険財政が破綻に瀕することはありあえない。しかし、雇用の確保および新たな雇用創出が先決である。財政破綻に瀕している現行の雇用保険による給付体系を見直し、企業や使用者によるリストラによって、自己の意に反した離職者が、再就職する場合の労働条件の低下分を補填する仕組みを作ることとする。すなわち、リストラ策を遂行する企業は、「リストラ人員数に応じた一定の経済的拠出金」(雇用の社会的責任を果たさないことに対する「ペナルティー」としての意味をもつ)を負うこととするなど、制度内容の検討を積極的に進める。