マリ北部 炭焼レポート

2002年11月から2ヶ月間の日程で、杉野が現地での炭焼の可能性を見てきました。 炭焼のフィールドは、ファギビンヌ湖畔のティンナイシャ村とニジェール川沿いのティンテール村の2ヶ所。 両村合わせて30日間という短期の滞在でしたが、10回の炭焼を試してみました。
(運営委員 杉野二郎)


○森が出来た
 サヘルの森は、これまで植林を中心に進めてきた。 木が育つことで一部の古い植林区では、大きな森が育ち、 それらの森の利用についても考えて行かなければならない程になっている。

 例えば、ティンナイシャ村の植林帯は、1990年、植栽当時、幅100m、長さ2kmのものだったが、 プロソピス(樹種名)の種を食べたロバが糞を拡散させ自然に芽生えたプロソピスが大きくなり、 森が自然に広がりだし、現在では6km離れたティンナファラジ村の植林帯とつながり、 長さ10km、幅5kmの台形の森が出来上がっており、 その面積は大雑把に見積もって2500ha程となっており、 現在も自己増殖を続け、森は広がっている。


○マリの炭焼
マイラー製炭法  マリにおける炭焼は、大別して2つの方法がある。 自家消費用に一般的な消炭による方法と伏せ焼きに近い方法である。

 消炭は田舎で自家消費用に一般的な炭焼で大きな焚き火をして薪(炭材)が熾きになったとき土を掛けて消して作る方法である。

 伏せ焼きは、バマコから放射状に伸びる幹線道路沿道の炭材が十分に手に入る地域で多くみられ、 炭材を円錐状に積み上げて土を掛けて焼くヨーロッパ式のマイラー製炭法に近い方法である。 商業生産の炭はこの方法である。




積み上げられた炭材  消炭生産の場合、細い炭材はすぐに燃えて灰になってしまうため、 薪として利用できない大きな材を炭に焼く訳だが、その歩留まりは悪く、 1/2〜1/3が灰になるように見受けられる。

 一方、伏せ焼きの場合は、見る限りではそれほど大きなロスは無いように思われるが、 土を掛けただけの伏せ焼きの窯で内部の熱対流を均一にすることが難しいのではないか思われる。

 そこで、出来た炭が均一ではなく、良質の炭から、消炭までが入り混じって出来上がることが問題点と思われた。





○サヘルの炭焼き窯
 ティンナイシャ村で行なわれている炭焼は、自家消費用の消炭作りで、 日常の煮焚きで燃えさしを貯めておく炭から、 木を1本立ち枯れにさせて火を点けて最後に砂を掛けて火を消して作ったりしている。

 そこで、ドラム缶を利用した炭窯を作り、炭焼を試してみた。

 ドラム缶の窯の場合、200gの容積で一度の製炭できる量が少ないこともあり、 炭窯の本体を日干しレンガで積み上げ、半割にしたドラム缶を屋根に使う方法で300gの炭窯を作成した。 煙道、焚き口も日干しレンガで作成し、炭材や炭の出し入れは屋根のドラム缶を外して行なう形にした。

 日本で一般的なドラム缶の炭焼は、炭材の出し入れの度に焚き口を取り外さなければならないことがあり、 炭材の出し入れの度に焚き口を作らなければならないことを考えると、 この屋根の開閉で炭材の出し入れをする方法では、 焚き口を作り付けにして置く利点があり、 炭窯の気密性を維持することが容易で炭窯の取り扱いが楽に行なえるようになった。

カマダキ 炭窯準備



○既存のマリの炭焼との違い
 消炭やマイラー製炭法など既存の炭焼法がある中で、 何故、ドラム缶での炭焼を進めるかと言う事になるが、 まず、製炭での歩留まりが上げられ、消炭生産では、 特別の施設(炭焼き窯)や知識が無くても炭焼は可能であり、 簡単に取り組むことができるという利点があるが、 その反面、炭材の半分が灰になってしまい、更に出来上がった炭も、 焚き火の燃え残りのようなスカスカの軽い炭しか生産できないことが上げられ、 炭の火持ちも短いといったことがあり、森林資源の効率的な利用とは言いがたい炭焼法といえる。

 また、マイラー製炭法では、製炭の歩留まりは改善されているが、 円錐状に積み上げた炭材に土を掛けただけの窯では、 窯内部の熱対流をうまくコントロールすることが難しく、 出来上がった炭の質も、 硬い良質の炭からスカスカの消炭に近い質の物までが入り混じった形で生産されており、 この製炭法で、良質で均一の炭を生産する場合、かなりの熟練が要求される様である。

 現在、サヘルの森の技術的なレベルでは、マイラー製炭方に熟練するほどのレベルに無く、 窯を使っての炭焼と言う事になる。

 窯での炭焼の場合、窯がうまく出来ていれば、窯内部での熱対流が一定しており、 焚き口での火や空気の量で窯内部での炭化をコントロールすることが容易で、 安定した製炭が可能になるという利点がある。 また、炭材についても、直径1cm程度の細枝でも製炭することが容易で、 マリでの既存の製炭方法では、炭材として利用できない細枝でも炭を作ることができ、 資源の有効利用と言える。


○ドラム缶の炭焼窯の問題点
出来上がった炭  ティンナイシャ村では、日干しレンガが簡単に入手出来たため、 ドラム缶の半分で1つの炭焼窯を作成できたが、 ティンテール村では、滞在期間が短いこともあり、日干しレンガを入手できなかった為、 日本で紹介されている一般的なドラム缶の炭焼窯での炭焼となった。

 この二つの炭焼窯を比較してみると、容積や材質の違いなど色々な要因が考えられるが、 日干しレンガの窯の方がドラム缶の窯に比べて保温効果が高く、 窯を閉めた後の炭化が促進されるためか、炭材の殆どが炭になっていた。

 一方、ドラム缶窯の場合、窯の底部の炭材1/4が炭にならない事から、 最後まで窯内部の温度を保つことが難しく、 炭材の熱分解(炭化)が途中で終わっている事から理解できる。 そこで、日干しレンガの窯は、窯の内部温度を保つのが容易で安定的な製炭が可能であると言える。

 しかし、サヘル地域で、特に砂の多い地域では、日干しレンガを手に入れることが難しい場合があり、 日干しレンガの代わりに、その場で土を練って窯を作る方向で考えることが望ましいといえる。

 例えば、炭窯の側枠を作り、そこに練った粘土を流し込み、窯を成型して行く方法などが考えられる。

 日干しレンガやドラム缶の炭窯で炭を焼くとき、 狭い焚き口で火を燃やして窯内部の温度を上げて行く訳だが、 早く温度を上げて炭を作ろうとすると、焚き口でガンガン火を燃やす事になる。 そこで、窯で火を焚く経験が少ないと、焚き口に薪を詰めすぎて、 焚き口の火がうまく窯の内部に入らずに、逆に窯の温度上昇を鈍らせるケースが多く、 その結果、十分に炭化しない炭(生焼けの炭?)が出来たりする。

 そこで、焚き口の構造がとても重要で、安定した製炭を左右すると言えるが、 まだ、焚き口の構造についてこれといった結論は出ていないので、 まだまだ試行錯誤を続けながら炭焼に取り組んで行く事になります。


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