【巻頭言】百年長計 植樹森森

百年長計 植樹森森
運営委員 高津 佳史


 先日、出張先の宮城県で海岸を歩いた折、偶然にも、松林の中で「植樹記念碑」というものに出会い、 驚き、また感動させられたので、この場を借りて紹介したい。

 表題の「百年長計 植樹森森」は、記念碑の冒頭に彫られていた言葉である。 百年の長きに亘る計画を以て植樹をし、森づくりを行う、との意味であろうか。


 大正三年十月と読める碑文に記された銘の要旨は次のようなものであった。

「この海岸沿いの荒蕪地二十五町歩に百年の大計を以て植林を行った。 東北地方は連年、稲の実りが悪く凶作続きであったが、牽引役となった○○村の長は、 若き日に村で教えを受けた教師某の『眼前の利を願わず百年の長計を成せ』との言葉に従い、 村人を率い莫大な私財を投入して事業を完遂した。」


 海からの冷気や潮風が不作の元凶と分かっていても、日々の生活に追われる身では不可能だった植林事業が、 篤志家と住民の協力で実現した様子が伝わってくる文章であった。

 本来なら公共事業として進められるべきものだろうが、当時は日本という国が、まだ貧しかったということだろうか。 確かにこの地は、夏というのに海からの霧が晴れず、私の滞在中も午前中は日照が遮られることが多かった。 延々と続く松林に当時の苦労を思い、同時に、人を育てることが森づくりにつながるということを実感した。


 凶作の中、眼前の利を願わずに植えられた苗、今や立派な防風林に育っている。 それを見るにつけ、私達サヘルの森も後生の人々から感謝されるような存在になりうるのだろうか?という疑問が浮かんできた。 私自身、事務局を勤めたため実感するのだが、日々の作業で手一杯となり、 当座の対応に追われて「長計」が見えにくくなって来ているような気がする。

 百年後は無理としても、せめて二十年、三十年後のことを考えて、人を育て、森を育ていきたいものである。

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