炭焼報告(2002/11-2003/01)

ティンナイシャ

2)炭を取り巻く環境

(1)森が出来たティンナイシャ

ティンナイシャの炭焼


すり鉢状の床をつくる


床に炭材を組む


火入れ


燃えさしを移し、オキだけを残す


オキに土をかけて蒸らす
T ファギビンヌの炭流通

ファギビンヌ周辺で、炭が商人の手による流通で市場を巡る量は少なく、村人達は、日常の生活での煮炊きや焚き火で「消し炭」をつくり、お茶や料理に利用している。

このため、自家生産−自家消費となっており、村での生活で換金商品として炭の流通は非常に少ない。

しかし、ファギビンヌ西部のラゼルマ地域では、天然林が枯渇しており日常の生活で薪を利用することが難しく、他の村に比べて燃料として炭を利用する比重が大きくなっている。

ラゼルマ以外にも、ディレ、トンカ、ニアフンケなど燃料としての薪が枯渇し、日常の燃料として炭に依存する地域は多くある。

このため、モプチ周辺で生産された炭が船でディレに運ばれ、その後、トンカ−ガルガンドゥと市場を巡る商人の手に運ばれる。最終的にガルガンドゥの市場からラゼルマへ炭が供給されている。

マリのマイラー製炭法


炭材を組み上げる1


炭材を組み上げる2


火を点けて土をかける


炭を取り出す
U 周辺の炭焼

村落地域で炭の流通は少ないが、それぞれの市場で、必ず炭を売っている姿を目にする。

多くの場合、市場に集まった人たちがお茶を飲んだりする場合に、一山25CFの炭を購入する程度の消費と思われる。

このような市場の炭は、各家庭で煮焚きの度に消し炭を作りそれを貯めておき、市場に出すのが一般的で、製炭業という形で炭を生産することは少ない。

ティンナイシャでも、炭焼をして市場で炭を売っている者は数名しかいないと言う話である。

ここでの炭焼は、積極的な消し炭作りという感じで、炭材を効率的に炭化させるような炭焼とはかけ離れている。

まず、浅いすり鉢上に土を掘り、そこに炭材(直径5cm以上)を積み、炭材に直接火をつけて炭材を燃やし、1時間ほど燃やしてオキが出来た段階で燃えさしの炭材をはずして、そのオキに土をかけて2日間蒸らして炭が出来るとのこという方法で生産されている。

この方法では、製炭というより、「消し炭」をつくるといったもので、良質の炭は出来ない。また、炭材は事前に十分に乾燥させておく必要があり、細い炭材では燃えて灰になってしまうため、太い炭材でしか炭を焼くことが出来ない。

しかし、マリ国内では、炭材を円錐状に積み上げ、藁で通気抗を作りながら土をかけて炭窯を作る方法で、マイラー製炭法(ヨーッロパ式伏せ焼き)の変形した形で、良質の炭が焼かれている所もある。杉野が見た炭焼は、バマコから100キロほどのティンゴレ村で、家族労働で家長と息子で炭材を切り出し、女性達が炭を焼き、長男が道端で販売しているというもので、常に1〜2窯から煙がでており、コンスタントに炭焼が行なわれている。

同様の炭焼はバマコへの舗装道路の沿道で頻繁に目にすることができる。聞いた話では、かつて炭焼で潤っていた村も、炭材を切り尽くし炭焼が出来なくなり、他の村が炭焼の中心的な村となり、その中心地は徐々にバマコから遠ざかっているとのことである。

このような村々で焼かれた炭の殆どは、個人、業者などが購入してバマコへと運ばれて消費されている。

炭焼方法だけで見てみると、ティンナイシャでの炭焼の技術移転は、粗放的な「消し炭」つくりをベースとする場合、マイラー製炭方での炭焼が次のステップと言える。そしてマイラー製炭法で炭化を理解して初めて、炭窯での製炭という手順が考えられる。

しかし、これまで炭焼と無縁であった人々が製炭に取り組む場合、無理に技術的な変遷をたどる必要があるか? 議論の余地が残される。

V 炭焼に対する住民の関心

炭は、生活で消費されるエネルギーであり、薪などの調達が容易な村落部より、都市部での需要が大きく、村落部で必要とされる炭は自家生産で十分に賄えることでは、商品としての流通は少ない。

ティンナイシャも例外ではなく、プロソピス林を利用して炭を焼き市場で販売している者は、村の中でも比較的に貧しく、他に現金収入を得る術を持たない者とされている。市場での収入も、市場に集まった人たちが茶を飲むときに消費される程度の販売量で、多くて500CF程となっている。(週に1回)

また、プロソピス林の管理主体がクミンとなっていることから、コンスタントな製炭で生活の糧を得る為のビジネスとして取り組む場合、コミュニティーフォレストとの整合性を取るためには、クミン内部のコンセンサスを得る必要がある。

これらのことから、炭焼は、村落内でのヒエラルキーが低く、コミュニティーフォレストの商業利用との整合性などがあり、積極的に炭焼に取り組む姿勢は見られない。

一方、都市部では、炭は日常的に利用されるエネルギーで、日々購入しなければならない炭に対する関心が強く、都市部周辺の村落でも製炭業に対する関心は非常に強い。これは、以下の表、1サック当たりの炭の価格を見てみると、炭の生産地と都市部の消費地での価格差が大きくなっていることでも、村落部と都市部での炭への関心の違いが理解できる。

1サックあたりの炭の価格
場所価格 CF備考
ティンナイシャ1000〜1500地方の村
グンダム3000〜3500地方都市
トンブクトゥ4000〜5000州都
ディレ4750地方都市
ティンゴレ1500地方の村
バマコ5000首都
(2003.12調査)
W コミュニティーフォレストと民有林

炭焼を製炭業に育てて、森を育てながら現金収入を得られることを考えると、ティンナイシャのようなコミュニティーフォレストという形態で、行政上の森の責任者(クミンの上層部)と製炭を行なう者とが異なる場合、その両者間で調整が難しくなる。

また、村人であれば自由に森から薪や建材を取ることが認められているため、炭を焼きながら除伐、間伐などの作業で優良木を残すような森を管理しても容易に他の村人が利用できるため、製炭業と森林管理を組み合わせても、他の村人が優良木を切って持ち去ることを阻止することが難しい状況にある。

一方、トンブクトゥ周辺の氾濫原に点在するユーカリの植林区は、家族単位のグループでプロジェクトとして運営されており、主に建材として販売し、その森のからの収入が生活の糧の一部になっている。この場合、森の責任者(プロジェクトの)と施行管理を行なう者が同一或いは親族で、製炭業と森林管理の両立が容易になる。

森の利用についても、ティンナイシャでは薪を得るために粗放な火入れなどが行なわれているが、ユーカリ林(ハッタイのユーカリ林)では、建材として切りそろえられた材とは別に、枝先の小枝なども薪として販売する為に、太さごとにまとめて集められているなど、森を利用して行く姿勢に大きな違いが見られる。