法務省 殿
警察庁 殿

2000年8月4日
ネットワーク反監視プロジェクト(NaST)
小倉利丸
ogr@nsknet.or.jp

電子メールの「通信傍受(盗聴)」についての質問状

拝啓
時下ますますご清勝のことと存じます。通信傍受の施行規則では、主とし
て電話の盗聴(以下、捜査機関による通信の傍受を「盗聴」とよぶ)のみが想定さ
れていると推測されます。電子メールの盗聴(コンピュータを介したデータ通信
一般にもあてはまることであるが、以下電子メールに代表させる)について、規
則に記載された条項や書類の様式等がどのように用いられるのか不明な点が多い。
そこで、下記の通り質問いたします。後日、面会の上ご回答いただくよう要望
する次第です。

 記

1 施行規則では、電子メールの盗聴が想定されているのか。もし、想定され
      ていない場合、別途電子メールの盗聴についての施行規則等が存在するの
      か。
2 施行規則が、電子メール盗聴を想定している場合、以下の質問にお答え願
      いたい。
(a)盗聴装置に使用されるコンピュータのOSは何か。またネットワークインター
      フェースは装備されているのか。
(b)第11条「スポット傍受」は、電子メールでは不可能ではないか。電子メー
      ルの盗聴の最小化措置は別途明示的に示されるべきである。
(c)平文のテキストベースの電子メールは第13条の外国語等通信に含まれる
      と想定されているのか。
(d)第16条 の傍受記録の複製の具体的な段取りを明記すべきである。
(e)通信事業者の行う操作と捜査官が行う操作の分担はどのようになるのか。
(f)電子メールは直接フロッピーに複製されるのか、それとも盗聴装置のハー
      ドディスクにいったん複製(あるいは、メールサーバから転送)された後に
      フロッピーに複製されるのか。前者の場合、ハードディスクのフロッピー
      に納めることの出来ない容量の電子メールの場合はどのような措置をとる
      のか。
(g)盗聴装置を接続した時点ですでにメールサーバに蓄積されているメールも
      盗聴対象に含まれるのか。
(h)組織内の施設に設置されているメールサーバを外部の施設から盗聴する場
      合の手順はどのようになるのか。
(i)複製に際して、誤操作を含めて通信の改竄が行われないような技術的な歯
      止めはどのようになされるのか。
(j)別記様式について、特に下記の様式は電子メール盗聴を想定したものとは
      いいがたい。電子メール盗聴の場合の記載の方法について例を示されたい。
  (i)第1号の2
  (ii)第2号の2、3
(k) 傍受記録の警察署内での取り扱いについて一切の規定がない。デジタルデー
      タは複製、改竄が容易であるから、この点の歯止めが必要である。
(l) 警察官による違法、不当な行為についての組織内のチェック体制と懲戒等
      の処分規定がない。
3  盗聴装置を作動させるコンピュータプログラムのソースコードを公開して
      ほしい。\\ソースコードを公開し、適法な装置であることを第三者の専門
      家によって確認する手続きをとるべきだと考える。また、プログラムを改
      竄したり、追加するなどの措置が取れないような装置の仕様にすべきであ
      ると考えるが、この点についての見解をうかがいたい。