午後三時六分開議      ――――◇――――― <0001>=杉浦委員長= これより会議を開きます。(発言する者、離席する者あり)委員の方々、御着席をお願いいたします。――御着席をお願いいたします。――御着席をお願いします。  第百四十二回国会、内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪……(発言する者多く、聴取不能)等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  この際、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案及び犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案の両案に対して、それぞれ、上田勇君外九名から、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の三会派共同提案による修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。上田勇君。――御着席をお願いします。――御着席をお願いします。――御着席をお願いします。――御着席をお願いします。     ―――――――――――――  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案に対する修正案  犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ――――――――――――― <0002>=上田(勇)委員= ただいま議題となりました自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の各会派共同提案に係る組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案に対する修正案及び犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要を一括して御説明申し上げます。  最初に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。  まず、犯罪収益が生じる前提となる犯罪を列挙して定める別表に、スポーツ振興投票の実施等に関する法律に規定する無資格スポーツ振興投票の罪及び加重収賄の罪並びに児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に規定する児童買春周旋の罪、業として行う児童買春勧誘の罪等を加えるものであります。これは、これらの罪が犯罪収益と結びつきやすいものであり、これらの罪と同種の罪が既に別表に規定されておりますので、これらの罪に係る犯罪収益等をこの法律案に定める犯罪収益規制の対象とするものであります。  その他、関係法律の改正等に伴い、所要の規定の整備等の修正を行うものであります。  以上が、この修正案の趣旨及び概要であります。  引き続きまして、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。  第一は、本法律案の目的についてであります。  本法律案は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害している現状にかんがみ、これに適切に対処することを目的とするものでありますから、その趣旨を明記するものであります。  第二は、通信傍受の対象犯罪等についてであります。  本法律案による通信の傍受を必要最小限度の範囲のものとするため、対象犯罪を薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航に関する罪及び組織的な殺人の罪に限定するとともに、別表に掲げる罪の実行に必要な準備のために犯罪が犯された場合の傍受に関しては、死刑または無期もしくは長期二年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪が別表に掲げる罪と一体のものとしてその実行に必要な準備のために犯された場合に限定するものであります。  第三は、傍受令状の請求権者及び発付権者の範囲についてであります。傍受令状の請求及びその発付をさらに慎重に行うことを確保するため、請求権者のうち検察官については検事総長が指定する検事、警察官については国家公安委員会等が指定する警視以上の警察官に限定し、発付権者についても、地方裁判所の裁判官に限定するものであります。  第四は、傍受の実施時における立会人についてであります。傍受の実施の適正を確保するため、立会人を常時立ち会わせなければならないものとし、また、立会人は、検察官または司法警察員に対し、当該傍受の実施に関して意見を述べることができるものとするものであります。  第五は、他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受についてであります。これは、傍受令状による傍受の実施の過程における緊急の措置として認められるものであることから、その範囲を、特に証拠として保全する必要性が高い重大な犯罪、すなわち別表に掲げる罪及び死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪に限定するとともに、この傍受が行われた場合における裁判官による事後的な審査の手続を設けるものであります。  第六は、通信の秘密を侵す行為の処罰等についてであります。通信の秘密を制約する通信傍受制度を設ける以上、その反面として、違法に通信の秘密を侵す行為に対しては厳正な処罰が行われるべきものであります。そこで、捜査または調査の権限を有する公務員が、その捜査または調査の職務に関し、電気通信事業法または有線電気通信法の通信の秘密を侵す罪を犯した場合は、三年以下の懲役または百万円以下の罰金に処することとし、さらに、これとの均衡上、一般人がこれを犯した場合は二年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処し、電気通信事業者等がこれを犯した場合は三年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するものとするものであります。  その他、所要の規定の整備等の修正を行うものであります。  以上が、この修正案の趣旨及び概要であります。  両修正案につきまして、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。 <0003>=杉浦委員長= 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。     ――――――――――――― <0004>=杉浦委員長= これより各案及び両修正案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八代英太君。 <0005>=八代委員= 自由民主党の八代英太でございます。  自由民主党発議者の皆さん、そして公明党・改革クラブの発議者の皆さん、自由党発議者の皆さん、大変難しい法案を物の見事に修正していただきまして、そして、その修正案が提示されて、きょうこうして委員会に諮られましたこと、心から感謝を冒頭申し上げたいと思っております。  私は、自由民主党のこの法務委員会の筆頭理事といたしまして、委員長をお支え申し上げながら、いろいろな協議をたび重ねてまいりましたが、かつての時代に、わめき散らしながら委員会に臨む姿勢が、きのうのごとく思い返されてまいりました。やはり、私たちの日本はまだ議会制民主主義が醸成されていないという思いを大変強くすると同時に、みんなで語り合い、話し合い、そして、相対峙するものはしっかりとその意見を主張し合って、最後は、民主主義のルールにのっとって賛否それぞれ明らかにしながら国民に伝えていくのが我々の責任ではないか、このようにも思っているところでございます。  さて、きのうの新聞にこの組織三法につきましていろいろな社説が載っております。もちろん反対を鮮明にしている新聞社もあるかと思いますと、また一方、国の未来を考え、そして国際社会の今日を考え、今麻薬に汚染されつつある子供たちの二十一世紀を考え――あるいは、きのうもいろいろな不法入国した人々の凄惨な殺人事件が展開している。そして、この異国の地で、だまされたかどうかわかりませんけれども、日本に来て最期の命を絶たれるという今日のこの不法入国の問題。あるいは、一昨日の江東区で起きた、何人かわかりませんが、銃が町の中で発砲されている現状。どうして日本に銃が入ってくるんだろう。  こういうことを考えますと、私たちは、グローバル化すればするほど、ボーダーレスになる国際関係にあればあるほど、先進国の中において私たちの国だけにこうしたものの対策がとられていなかったという、私たちは、政治をする者の責任も痛感しながら、この法案の一日も早い成立をお願いもいたしてきたところでございます。  そういう意味では、喧騒の中に始まったきょうの修正案ではございますけれども、私たちは真摯に議論を積み重ねていきたいと思っております。  そこで、その新聞の社説を引用いたしますと、  内外の情勢から三法の成立を急ぐ必要があることなどを総合判断したものだろう。   現時点ではやむを得ない。組織犯罪に対する有効な捜査手段の一つとして、育て確立するために、引き続き国民の理解を得る努力を続ける必要がある。   ただ、野党の一部に「一般市民もいつ盗聴されるかわからない」など、事実と異なる感情論を振りまく議員がいるのは残念だ。法律が、無原則に市民生活を盗聴する構造になっていないことは、明らかだ。   人々をあおるスローガンからは、何も生まれない。むしろ、乱用を防ぐ厳しい歯止め策について、筋の通った提言を行い、修正を求めるのが責任ある 政治家の対応であろう、こう記されております。また、もう一つの新聞は、   通信傍受は各国とも法制化ずみで、今年六月ドイツで開催されるサミットでは、わが国が国内法の整備状況を報告しなくてはならない立場に立たされているからだ。   盗聴と傍受とでは大きな違いがある。盗聴はどのような目的があろうと、またいかなる手段をこうじても違法である。机や部屋の花瓶の中にマイクを仕込んだり、テープレコーダーを隠したりすることももちろん違法だ。   しかし成立が見込まれる法案で通信傍受が認められるのは、犯罪の巧妙化、国際化などで従来の尾行などの捜査手法では摘発が困難なものが対象だ。中国人密航組織の摘発や、暴力団の麻薬、覚せい剤、銃器の密輸などの捜査、オウム真理教事件のような大規模かつ凶悪な組織犯罪の取り締まりがこれにあたる。この法律で、善良な一般市民のプライバシーが脅かされる、と反対するのは、捜査の国際常識を無視した議論である。 こういう社説も私は拝見いたしまして、多くの国民の中にもこの組織三法に対する大きな期待が込められているという思いに立ちまして、これから質問をさせていただいてまいります。  これまで我が国は、良好な治安によって平穏な市民生活を保ってまいりましたが、最近は、こうした組織的な犯罪の実情を見ると、そのような社会を維持することが極めて難しいと思っております。そういう意味で、この種の犯罪を解明して犯罪組織を壊滅させるために必要不可欠な捜査手法であると私も考えております。  本修正案が、本法案の目的を定める第一条において、「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ」と大きく、記載されている文言に加えられた趣旨はいかがなものか、ひとつ発議者からお伺いをしたいと思います。 <0006>=笹川委員= 八代委員にお答えいたします。  近年、薬物乱用の蔓延や暴力団等によります薬物、銃器関連の凶悪犯罪が多発をいたしております。その背後では、暴力団等による組織的な密輸、そしてまた供給、そしてまた組織的な犯罪が平穏な市民生活を脅かし、健全な社会の維持発展を著しく害しているという現状にかんがみますと、これに適切に対処して一般国民の人権を守るためには、必要最小限度の範囲で通信傍受をさせていただきたい、そういう制度を設けさせていただきたいというのがこの法案によります通信傍受の制度でございますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。 <0007>=八代委員= 前法務委員長の笹川発議者から今伺いました。前委員長の時代にもこの問題は私たちも議論をしてきたところでもありますし、委員長を先頭にしてその通信傍受の現場視察等々も、思い返しますと、これはもう一年半にわたる長い議論の上にあるということを私はしみじみ思う次第でございます。  そこで、組織的な犯罪はさまざまな種類のものがあると思うのですけれども、我々がこれと戦うためには、通信の傍受もできるだけ多くの犯罪の捜査に活用すべきではないかという意見もあるし、諸外国における立法例なんかでも、通信傍受の対象犯罪はかなり広く定められているように思っております。  しかし、今回の修正案においては、対象犯罪を薬物に関する罪、銃器に関する罪、集団密航に関する罪、組織的な殺人という四つの類型に限定がされておるわけでありますが、これはどのような考え方に基づくものでありますか、お伺いいたしたいと思います。 <0008>=笹川委員= お答えいたします。  御案内のように、世の中には犯罪というものはいろいろの種類がございますが、国民の皆様方の関心事、あるいはまた憲法に定められた通信の秘密あるいは保障、そういうことを考えまして、今回は御案内のようにその範疇を出ないように最小限度にさせていただくということで、今委員がおっしゃったように、薬物に関する罪、それから銃器に関する罪、そしてまた御案内のように、日常茶飯事に新聞等に報道されております集団密航に関する罪、そしてまた組織的な殺人という、世の中で一番心配の多い順番ということで四つに限定をさせていただく、そのことによって国民の皆様にいたずらに不安な気持ちを起こさせない、こういうことで我々は限定をさせていただいたというわけであります。 <0009>=八代委員= よくわかりました。  さて、通信の傍受は憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるから、その範囲は必要最小限度に限定されるべきであると思います。この議論の中でもずっとそうでありましたが、かりそめにも捜査当局が不信のそしりを受けることがあってはならない、私はこう思っているのです。その実施の適正が確保されるよう、十分な配慮が必要であるとも思っております。  その意味で、立会人の制度は極めて重要であると考えますけれども、今回の修正案において、傍受の実施を行うときにはその立会人を常時立ち会わせなければならないものとした趣旨をひとつ明らかに御説明いただきたいと思います。 <0010>=笹川委員= 御説明をいたします。  御案内のように、通信傍受というのは憲法の保障する通信の秘密を若干なりとも制約するというふうになりますので、これはもう十分にその実施については配慮しなきゃいかぬ、そういう建前で、捜査当局だけでやりますと、また一般国民から不信の念を持たれたり、あるいはやり過ぎたり、そういうことが過去にもなかったということは否定できませんので、今回は立会人という第三者を置いて、国民の皆さんに安心していただける、こういうことで実は立会人をつくらせていただきました。  また、立会人はいろいろなことをするわけでありますが、例えば期日の厳守、あるいは時間の厳守、あるいは傍受の原記録の封印を行う等、その傍受が適正に行われているということのあかしのために立会人制度というものを導入させていただきましたので、御理解いただきたいと思います。 <0011>=八代委員= その立会人の話になるのですけれども、今回の修正案におきましては、検察官または司法警察員に対しまして、傍受の実施に関して意見を述べることができる、こうなっているわけですね。ただ立っているだけじゃない、意見を述べることができる。これはどのような考え方に基づくものでありますか。大変これは救いでもあるような気が私はしておるのですが、実際には立会人はどのような意見を述べることができるようになるのでございましょうか。 <0012>=笹川委員= お答えいたします。  立会人というのは、御案内のように、令状に記されたとおりきちっとこのことが行われるかどうかということを実は見ていただくわけでありまして、第三者の方々に立ち会いをしていただく。先ほど申し上げましたように、期間だとかあるいは時間がきちっとできているかどうか、あるいはまた録音がきっちりできたかどうか。言ってみれば、国民のサイドに立って、私は、国民が安心できるようなことを、事によっては立会人が意見を申し上げることができるということで、その意見の内容についてはいろいろあると思います。  例えば、捜査官の態度だとか、あるいはまたそれらに類して、やはり人間のやることですから、時には気持ちよくやっているか、あるいは不愉快な思いを立会人にさせたかということも当然立会人としては意見を言うことができる。これは当該の裁判所に対して言うことができるわけでありますから、そういう意味で私は、傍受そのものが適正にそして公平に運営できる一つの制度であって、これが導入されたということは、国民の皆さんにも、何でもかんでもしゃにむに傍受するんじゃないんだという、そういう不安感を一掃するためには非常によかったと思っています。 <0013>=八代委員= 笹川委員長のときに、NTTの通信全般につきまして視察に参りました。日本の通信技術というものは大変高度の高いものだ、このように思います。高度が高いものであればこそ、また一方、組織犯罪をねらう人たちの通信ということも高度なものに、これはイタチごっこという言葉がありますけれども、そういう状況になっていくだろうと思いますが、その辺、現場を視察されて、笹川前委員長、どのような感じを持たれたか、ちょっと御披瀝いただければと思います。 <0014>=笹川委員= 私も、御案内のように、生まれて初めてああいう設備の中に入ったわけでありますが、ふだんは当然その中に一般人は立ち入ることができません。これは、当委員会並びに法務省の要望によりまして、特別にNTTの施設を見せていただいた。  そのとき私は委員長でございましたが、各党の皆さんにも、見ないで反対をしないで、ぜひひとつ現場だけは見てほしい、こういうことでお願いをして見させていただきました。電話の回線は、もう素人が見たのでは、順番どおり並んでいるわけじゃありませんから、専門家でなければ、NTTの職員の協力なくしてこの通信傍受は不可能であります。  ところが、テレビ映画だとか、そういう盗聴という言葉を使われた場合には、電信柱へ行ったとか、あるいは家の中にマイクをおさめたとか、そういうふうにどうしても悪い方に持っていかれがちでありますが、間違いなく高度の通信設備というものはしっかりした人がきちっと立ち会って技術者がやっていただくということで、捜査官がちょこちょこっと隣のまで聞いてしまおうなんということができない制度だということで、逆に私は見せていただいて安心をいたしました。 <0015>=八代委員= やはり百聞は一見にしかず、前委員長のもとで、そうしたことも踏まえますと、大変よかったな、このように思っております。  先日の参考人質疑におきまして述べられたのですが、立会人の立ち会いによる傍受の実施の適正を担保するためには、傍受している通信の内容を聞いて、傍受すべき通信に当たらない場合には切断する権限まで与えるべきではないかというような意見もございました。今回の修正案の立案に当たりましては、この点についても検討がなされたと思うのですけれども、立会人のその会話の切断権についてはどのようにお考えになられたのでしょうか。 <0016>=笹川委員= 御案内のように、立会人というのは捜査官でございませんし、またこれからも捜査に従事するわけではありませんので、公平にやっておるかどうかということを見るのが立会人の責務でありますので、内容を全部立会人が聞いて、これはまずいからということで切ることも一つの方法ではあると思いますが、捜査官ではない人がすべての記録を聞くことになりますと、今度は逆にプライバシーの侵害というものも私はやはり考えられるのではないか。そういうことで、やはり今回は、切断権についてはいろいろ議論がありましたけれども、切断権は与えない方が立会人に対していいのではないのかな、私はそういうふうに思っております。  なお、通信の当事者あるいはまた捜査機関がこの内容について不審に思った場合には異議を唱えることもできますし、そういうことの裏づけもあると私は思いますので、今回は立会人は切断権を持たない方が、かえって切断権を持って今度は証人に呼び出されたり、犯罪の内容を知ったりということは、私はやはりそれはやらない方がいいのではないのかな、こういうふうに思っております。 <0017>=八代委員= 実は、先日、社民党の保坂展人君がどうしてもあの映画を見ておけと言うので、エネミー・オブ・アメリカという映画を見ました。まさに科学の粋を集めた、娯楽映画としてはおもしろかったわけでありますが、しかし諸外国の司法機関と、日本の警察を含めた司法関係者の信頼度という点では、先日も刑事局長が御答弁されておりましたけれども、はるかに日本は、八〇%以上の国民が日本の司法を信頼している、こういう状況であるだけに、やはり通信傍受というのは、繰り返し私は申し述べたいと思うのですが、捜査機関による濫用の心配という点が一つの大きなこの委員会での議論になっていたような気がするのです。  通信の秘密は、我々市民生活においては極めて重要でございますし、それが捜査機関によって不当に制約されるようなことは断じてあってはならないと思っております。今回の修正案においては、捜査機関による濫用の防止という点でどのような改善がなされたか、伺っておきたいと思います。 <0018>=笹川委員= 御案内のように、当委員会におきましても、捜査官の濫用という点につきまして担保がない、こういう議論がございました。私自身も、捜査機関は信頼されておりますし、信頼をしなければ我々国民は不幸であります。しかしながら、人間のやることですから絶対に間違いがないという保証はないわけでありますので、今回は通信法を改正させていただいて、そういう濫用した人については、刑期を懲役三年、罰金百万円以下というように新設させていただいて、厳しく処分をいたしますよということで、そういう事件は起きないだろう、私はこういうふうに考えております。 <0019>=八代委員= この組織三法につきましては、紆余曲折ございましたけれども、杉浦委員長のもとで真摯な議論が積み重ねられてまいりまして、法務委員会、長い歴史の中におきましても最長時間は二十五時間ぐらい、大きな法律もそのくらいでほぼ収束といいますか、最後は賛否という一つの歴史的な記録もございます。  もう既にこの法案におきましては、十一人の参考人の方々に、それぞれ専門分野で学識経験豊かな皆さん方を初め、反対側の人、賛成する人、いろいろな人の声を私たちは聞きながら今日まで議論を積み重ねてまいりました。そして、議論の中から、それぞれ三党による修正案が提示されてまいりました。  恐らくほかの政党の皆さんも、修正すべきは修正を出していただきながら、そしてそれをしっかりと議論をしていただきながら、そして私たちの毎日の暮らし、すべての国民にとって安全な日本の国、そして普通の国になるように、そういう思いを持ちますと、先進国、先進国と言いましたけれども、この日本がそうした犯罪の天国になり、また各国から指弾されるようなことがあっても国際社会の中では生き残ることはできません。  日本に行くのは怖いというようなことになったら、今はまだ日本の警察は治安を維持されて安心だ、こういう評価をそれぞれいただいている国の方が多いかもしれませんけれども、もし、きのうの事件、おとといの発砲事件、こういうものが繰り返されて、もう日本に行くのは怖いぞ、こういう国際社会になったときは、まさにこの愛すべき日本は沈没してしまうようなときだ、このように思っております。  最後に、ひとつ大臣に、せっかくお出ましでございますので、この修正案に対する御評価を一言伺えれば大変ありがたいと思います。そして、質問を終わらせていただきたいと思います。 <0020>=陣内国務大臣= このたび、貴重な取りまとめをしていただきまして、大変敬意を表しておるところでございます。 <0021>=八代委員= ありがとうございました。 <0022>=杉浦委員長= これより民主党の質疑時間に入ります。  質疑者がまだおられませんので、委員の方々、大変恐縮でございますが、自席にて御待機いただきますようにお願いを申し上げます。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0023>=杉浦委員長= これにて民主党の質疑時間は終了いたしました。  次に、漆原良夫君。 <0024>=漆原委員= 公明党・改革クラブの漆原でございます。  修正案は、対象犯罪を麻薬関連、銃器関連、集団密航、そして組織的な殺人の四種類に限定をしております。  原案が通信傍受の一般法と言われたことに比べてみますと、修正案は、特殊な犯罪に対する特殊な捜査方法を導入したというもので、私は大変評価したいと思っております。  そこでまず、対象犯罪をこの四つの罪種に限定した理由についてお尋ねしたいと思います。 <0025>=笹川委員= 御案内のように、本法案は、通信傍受制度は組織的な犯罪に適切に対応することを目的といたしております。特に、憲法の保障する通信の秘密を制約するものでありますから、その範囲を最小限度に抑えるということも必要であろうと思います。特に、対象犯罪につきましては、その捜査方法が必要不可欠と考えられる組織的な犯罪に限定することといたしました。  なお、薬物、銃器犯罪に関しましては、その密輸、密売、供給が暴力団によりまして組織的に行われている、その手段といたしましてしばしば電話が使われておるというのも現実でございます。そのように、密行的に行われる事犯を摘発し、首謀者を検挙するためには、どうしても通信傍受による捜査が不可欠であります。  特に、集団密航に関する罪は、我が国社会に与える影響が大きく、また、外国人の犯罪組織や暴力団が反復して行うことが多うございますし、また、組織間の連絡や密航船との連絡に電話が多く用いられている例も多いと思います。  そのように、本来は、捜査当局としてはあらゆる犯罪の通信傍受というものを期待するところでありますが、我々といたしましても、それでは余りにも間口が広過ぎて、国民の信頼といいますか不安感というものもあるだろう、そういうことで、この四つに厳しく限定をして運用していただきたい、こういう趣旨でございます。 <0026>=漆原委員= 本法は、あくまでも組織的な犯罪に対処するものとしてつくられた法律でございますが、今回は、組織的なものを要件とする犯罪は組織的な殺人だけで、あとの麻薬関連、銃器関連、集団密航、これは組織性ということが要件となっておりません。二人以上の共謀で足りるということでございますから、要件となっておりません。全体について組織性を要件とすべきではないか、あるいは、組織的な殺人だけ組織性を要件として、あとは要件としないということでは整合性に欠けるんじゃないか、こういうふうな考え方もありますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。 <0027>=笹川委員= 先生の言われることも理解はできますが、御案内のように、殺人については一応組織的なものというふうに定めておりますが、例えば銃器だとか薬物にいたしましては、それぞれの形態がありますので、必ずしも組織的に全部やられておるということをなかなか限定することは難しい。そういうことで、殺人に関しましては組織性というものを条件にいたしましたが、そのほかにつきましては二人以上の共謀ということでくくらせていただきました。  先生の御意見も十分に今後生かされるように期待いたしておりますが、とりあえず、この四項目につきましては、そのようなもので、組織を条件にしないということにさせていただきました。 <0028>=漆原委員= この前は、参考人として意見を述べていただきました民暴事件に取り組んでおられた弁護士の山田齊さんという方は、組織的な殺人を対象にするだけでは不十分である、組織的な逮捕監禁、略取誘拐もぜひとも対象にすべきであるというふうな意見を参考人として述べておられましたが、この点はいかがでしょうか。 <0029>=笹川委員= 山田参考人の御意見も傾聴すべきものはあると思いますが、必ずしも、略取誘拐等は暴力団が組織的にやるんだというふうに全部限定するということはなかなか困難であろうと思います。したがいまして、対象にするということは、ちょっと難しい場面もあるんじゃないのかなというふうに考えられております。  なお、営利誘拐だとか略取につきましては、犯人側から必ず連絡がございます。あるいは身の代金の要求とか、あるいはまたそのほかの要求も出てくる。必然的にそれは、被害者の了解があれば、当然傍受はできるわけでございますので、そういう意味で、組織的な殺人だけで、略取、監禁、誘拐はこの中に入れなかったということでございます。 <0030>=漆原委員= 目的についてお尋ねしますが、この目的の中に「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ」、こういう文章が今回修正案で挿入されたわけでございますが、この文章を挿入した意図はどこにあるのかということが一点。  それから、もともと、今お答えいただいたように組織性が要件となっていない本法において、この文章を挿入したことによって何か法的な意味があるのかないのか。  この二点についてお尋ねしたいと思います。 <0031>=笹川委員= 御案内のように、現在の社会情勢、まことに厳しいものがございまして、企業の国際間の交流が自由になる、あるいは規制緩和をどんどん進めていきましたら、残念ながら犯罪の方も規制緩和でございまして、外国からいろいろな犯罪が入ってくる。また、御案内のように、新聞紙上で大変凶悪な犯罪もございますので、そういう意味で、平穏な、健全な社会生活を害しているという認識は国民の皆様方もお持ちだということで、このような趣旨を入れさせていただいたわけであります。 <0032>=漆原委員= これは法務省にお尋ねした方がいいのかな。こういう文章を入れることによって、原案に入っていなくて、新たにこれを挿入されたわけですけれども、これを入れることによって何か法的な意義があるのかないのか。もともと組織性の縛りがかかっていないこの法案に、あえてこの目的のところに組織性ということ、組織的な犯罪が行われていることにかんがみという文章を入れるということは、何か法解釈における縛りをかけるような法的効果があるのかないのか、これは法務省、いかがお考えでしょうか。 <0033>=松尾政府委員= 法律が制定される場合には、その立法目的といいますか、そういったことが非常に重要でございます。と申しますのは、法律の条文というのは時に非常に抽象的になることがございます。具体的な事例にこれを適用する際に、それでは何が一番基本的に考えるべき事項かといいますと、今申し上げた法律の立法目的でございます。したがいまして、第一条に、この組織対策の三法が全体として組織犯罪に対応するためであるということが明確にされることによりまして、そうした際の適用、運用の際には大きな指針になるということでございます。 <0034>=漆原委員= それでは、十二条関係、立ち会いについてお尋ねしますが、修正案では常時立ち会いということを要件として、例外を認めておりません。こういうふうな常時立ち会いとした理由についてお尋ねしたいと思います。 <0035>=笹川委員= 御案内のように、国民の間には、通信傍受につきましていろいろな御意見、特に心配もあろうと思いますので、そういう意味で、今回特に法律に許された範囲の中で通信を傍受するということでありますので、国民のそういう心配を払拭する意味におきましても、常時立会人を置くことによって、公平に公正に行われているということをぜひ担保したい、こういうことで常時という言葉を使って立ち会いをしていただく、こういうことにしたわけであります。 <0036>=漆原委員= 原案も修正案もこの立会人の切断権は認めておらない、こうなっております。これは法務省にお尋ねしたいと思うんですが、検証令状では立会人に切断権を認めておりました。しかし、今回の法案でいずれも立会人の切断権は認めておりません。この点に関しては、判例が積み重ねてきた理論からの大いなる後退だというふうに批判をされているところでございますけれども、この批判に対してどのような反論をされるか、お尋ねしたいと思います。 <0037>=松尾政府委員= ただいまの御質問は、確かに委員御指摘のように、従来、検証令状で行ったケースが五例、電話傍受がございます。その例に比べますと、今回の法案の電話傍受というのは、人権保障等の面で後退したのではないか、後退したんだ、しているんだというような議論がありますので、若干長くなりますが、その点についてお答えしたいと思っております。  まず、従来、検証令状で傍受が認められておりましたケースが五例あると申し上げました。この五例でございますが、いずれも覚せい剤の密売事案でございます。検証許可令状によりまして、密売に用いられているということで特定されました電話についての傍受をしたということでございますが、この五件の検証令状による傍受では、確かに先生御指摘のように、立会人がその内容も傍受します。それから二番目に、そのうちの二例だったと思いますが、立会人が切断をしたということも現実にあったわけでございます。  確かにそれが前例としてあるわけでございますが、従来、こうした検証という刑事訴訟法上の一つの手続を利用して行った電話傍受については、これから申し上げるようないろいろな問題点が逆にございました。  例えば、この検証許可状によりまして、今申し上げた覚せい剤の密売事犯についての傍受ということで実施されましたが、では、そのほかにどの程度の傍受が可能であるかとか、あるいは検証の手続において、傍受を想定して実施した手続の関係者の権利保護はどういうふうに図っていくのかとか、あるいはどの程度、例えば期間の問題等はどの程度が適当なのか、あるいは最大限どの程度認めるべきなのか、こういった点につきまして、電話傍受を規定している法律が整備されていないゆえをもって逆にいろいろな問題が発生していたところでございます。法律上、そういういろいろな問題が指摘されていた。  同時に、捜査の面におきましても、この五件の検証はいずれも薬物の密売事案でございまして、その者の検挙には確かに有効でございました。ただ、その背後にある薬物の密売事案の首謀者の特定あるいは検挙、全体像の解明、あるいはどのような組織がいかなる程度にこれに関与しているのか、あるいはさらに根源をたどっていきまして、我が国の覚せい剤の密輸、つまり覚せい剤がどういう経路で入ってきたのか、こういった取引の解明には必ずしもどの程度これが利用されるのかが明快でございませんでした。  また、現在、実例として集積している五例は、そうしたより深い捜査、あるいは本来罰せられるべき首謀者が罰せられているかという点から見ますと、限界があったということでございます。  また、人権保障の面におきましても、傍受の要件あるいは手続が刑事訴訟法の検証に関する規定の解釈によって行われました。  通信傍受は、継続的かつ密行的に行われるという点で、関係者の権利保護等について、従来の強制処分とは異なる配慮が必要であるということは指摘されるわけでございますが、対象犯罪その他の要件を明示して限定するとともに、所要の権利保護の手続を設ける必要があるというような指摘も強くなされていたところでございます。  この五件の検証令状によりました実例というのは、今回の法案の作成に当たりましても、十分に参考にしているところでございます。  今回の法案でございますが、先ほどからいろいろ答弁の中でも出ておりますが、権利保護の手続の点からいいますと、非常に厳格な規定になっております。それから、電話傍受の令状の発付されるまでの要件、あるいは対象犯罪も厳格に絞られている、手続も非常に厳格に規定されているということが言えるかと思います。  それから、この法案では、傍受した通信についてはすべて録音等の記録がなされます。それから、立会人の封印を得て、これは裁判官が保管するということになっております。この記録によりまして、捜査機関がいかなる通信を傍受したのかが明らかになるようにしております。  そして、さらには、通信の当事者は、この記録をもとに通信の傍受に関する不服申し立て等を行うことが可能でございまして、検証令状に基づく通信傍受にはない制度の整備が図られているところでございます。  今御説明のありました修正案におきましても、立会人が傍受をしている通信の内容を聞き、傍受すべき通信に該当するかどうかの判断をすることとしていないという点は修正案も同様でございますが、捜査の対象となっている事件についての詳細を把握していない立会人に、その判断が困難であるということが一つあります。  それから、立会人がそのような判断をするために、事件の詳細を知り、あるいは通信の内容を聞くものとすることは、かえって関係者のプライバシーの保護上も問題があるということも言えようかと思います。  また、電話傍受という事の性質上、非常に長時間傍受をすることが考えられるわけでございますが、立会人も当然、単数よりも、むしろ多人数が交代で立ち会いをしていただくということが想定されるわけでございまして、そのような多人数の方に事件の内容の詳細を告知しまして、さらに通話の内容を傍受していただくということは、今申し上げたプライバシーの保護上では、問題がむしろ大きいということが言えようかと思います。  以上で、検証とそれから今回の電話傍受との違いといいますか、手続規定あるいは人権保障規定が非常に厳格に整備されているという点を御理解いただきたいと思っております。 <0038>=漆原委員= 修正案では、常時立ち会いということを要件としているわけでございますが、この立ち会いの意味は、私は、捜査の適法性を担保するということに大きな意味があると思うのですね。  しかし、今回、切断権を認めるべきではないとおっしゃっていますけれども、本来ならば、常時立ち会いをするのであれば、第三者機関が、内容をわかって切断権を行使できる人、ある意味ではこれは弁護士会なんかがやったらどうだとか、あるいは裁判所の事務官がやったらとか、いろいろな案が出ておるのですが、これを排斥した理由はどんな理由なんでしょうか。 <0039>=笹川委員= 今先生がおっしゃるように、第三者機関で、裁判所の事務官や弁護士がやったらどうだという御意見は、この間の参考人の中にもございました。傾聴すべき御意見だと思うのですが、実際問題として、立会人というのは相当の人数が要りますし、あるいはまた弁護士さんをというような話もありましたが、それは逆に、委員の中でも、そんなに暇で失業している弁護士はいないよなんというような、実は厳しいお話もございまして、私は、現実問題としてはそれは難しい。  それならば、やはり常時獲得できる立会人ということにして、そのかわりに、内容につきましては、裁判所に封印して全部渡すわけですから、確実につながったか、令状の内容のように期日、時間が正確であったかどうか、そういうことができ得れば、私は、この通信傍受の目的は十分に公正に果たせるんじゃないのかな、こういうふうに思っております。 <0040>=漆原委員= 最後に、法務省にお尋ねしますが、この立会人は通話内容も聞くことができない、通話内容を聞けないということは、当然、切断権を持たない、こうなっておるわけでございますけれども、ただ立会人がそこで立っているというだけで、本当に捜査の適法性というのは担保できるんだろうか、こういう疑問を持っておるのですが、この点はいかがでしょうか。 <0041>=松尾政府委員= まず、全体的に、電話傍受の適法性というものは、立会人がいることだけではなくて、先ほどいろいろ申し上げましたが、テープが封印されまして裁判官の手元に保管されるとか、あるいは、そこまでに至るいろいろな手続が厳格に決められているとか、傍受が終了するまでの全体の中でのいろいろな制度的な担保、保障がいろいろ図られているわけでございます。  その上に、立会人の問題でございますが、まず第一には、立会人という、いわば捜査機関からいいますと第三者でございますが、第三者がその場に現にいて監視をしているということは、それ自体としても一つ意味がございます。  それから、二番目に、電話傍受でございますから、時々、テープが終わると交換したりいろいろする。直ちにこれは封印されて、裁判官のところへ届けられるわけでございますが、その際に、この封印という非常に重要な役割は、この立会人が担っております。  それから、立会人は、例えばNTTの職員でございますと、電話交換の専門家でございますので、適切にその傍受のコードが引かれているかどうかという技術的な点のチェックは十分可能でございます。  それから、前回の委員会でも申し上げましたが、電話傍受といいましても、全部ずっと傍受するわけではなくて、その傍受対象犯罪に関連する会話が傍受されるわけでございます。関連するかしないかは、短時間聞いてみて、関連するという明らかなものだけが傍受されまして、それ以外は切断されます。  つまり、そういうような切断と、入れる行為、これは外形的にわかるわけでございますが、そういうことをきちっとやっているかどうか。少なくとも、外形的にはずっと聞いていましたよということはやはりおかしいわけでございまして、その場合は、立会人は意見を記録に付するように、あるいは意見をその場の捜査官に言うということになります。  そのような意味で、外形的なチェックということではございますが、立会人がいる意味というのは非常に大きいものと思っております。 <0042>=漆原委員= 以上で終わります。ありがとうございました。 <0043>=杉浦委員長= 次に、達増拓也君。 <0044>=達増委員= 自由党の達増拓也でございます。  私も、組織犯罪関連法案の中で、特に議論の多い通信傍受関連について、まず質問をさせていただきたいと思います。  修正案提案者の方に質問いたしますけれども、そもそも、政府案に対して、市民の通話が広く傍受されるのではないかという懸念を示す声が見られたわけであります。  通信の傍受は、言うまでもなく、憲法上保障されております通信の秘密や個人のプライバシーを制約する側面もありますから、その範囲は必要最小限度に限定されるべきで、犯罪と無関係の一般市民の通信が傍受の対象になるということはないように十分な配慮が必要であるわけであります。  今回の修正案の立案に当たりまして、これらの点についてもさまざまな観点から検討されたと思うわけでありますけれども、修正案による通信傍受制度においては、一部懸念が出ているような、市民の通話がみだりに傍受されるというおそれはないと言えるでしょうか。 <0045>=笹川委員= 委員が心配されることはごもっともでありますし、また、私個人といたしましてもそういう心配をいたしたことも現実にございます。一般国民のそういう心配をぜひ避けなければ、この法案をつくった意味もないし、国民からの捜査当局に対する信頼もかち得ない、私はこう思っています。  特に捜査当局としては、犯罪でありますから、どの犯罪がよくてどの犯罪が重いなんて話ではないので、できたらすべての犯罪を、やはりどうしてもという場合には通信傍受をしてでも検挙したい、犯罪のない国にしたいということがもともとの原案にございましたが、それでは今申し上げたように、国民の心配をなくすということには少し難しいのではないかということで、この四つに厳しく限定をさせていただきました。一般国民の普通の方々の電話を傍受するようなことは全くあり得ないし、そういう心配はないのだということを、私は声を大にして申し上げたい。  ですから、憲法で保障されている通信の秘密あるいはプライバシーというものも最小限にしか侵さないんだよということがこの法律の趣旨であり、そのことが満足させられなければ、この法律をつくった意味もないし、今後国民の信頼を捜査当局がかち取ることもできないし、犯罪の重さということだけで論じることは難しいかもわかりませんけれども、この四つに限ってということは委員の御理解もいただけるというふうに私は確信をいたしております。 <0046>=達増委員= 一般人の、普通の人の電話がみだりに傍受される、盗聴という言葉が使われておりますけれども、そういう不安については、やはりこの通信傍受制度についての誤ったイメージがあると思うのですね。  実際に、今、ストーカーですとか、あるいはいろいろなマニアが盗聴をして一般人の普通の生活のプライバシーを暴いたり、そういう嫌らしいことをするということが現実に発生して、そういったたぐいのことを何か警察官がやるのじゃないか、そういう素朴な不安、疑問、こういうものがあると思うのですが、これは国会審議等きちっとした議論で克服していかなければならないところなのだと思います。  実際には、この通信傍受制度、これは一言で言えば、公的機関と一般市民が一体となって組織犯罪に対抗していく、そういう性質のものであって、まず、そもそも通信傍受の令状を裁判所に請求するためには、今度の修正案では、警察であれば警視、検察であれば検事以上でなければならない。  法務省にちょっと質問しますけれども、例えば警察で警視という人たちは、身近な警察署であればどのくらいのポスト、役についているような人が警視なのでしょう。 <0047>=笹川委員= 全国の警察の警視の数についてはちょっと私はわかりませんが、東京みたいな大都市とそれから普通の郡部とでは警察署の規模が違いますが、大体、警視というのは、警察でいえば署長、副署長、それから刑事官、それから刑事指導官、それから交通安全官、それから生活安全官、そういう人であります。東京の場合には、署が四百人とか三百人態様でありますから、刑事課長まで警視というところはたくさんございます。  全国で、警視は七千百七十一人おるそうであります。そのうち警視庁で千二十一人、七分の一おるそうです。高知県の場合には七十一人。県警本部におきましては、警視というのは大体普通の課長ですね。課長クラスが全部警視。それから、課長補佐でも時には警視の人もいらっしゃいますし、各部長になれば大体警視正。しかし、大阪だとか東京みたいに、部長になると警視長だとか警視監の人も時にはおられるということであります。 <0048>=達増委員= 大変詳しい説明、ありがとうございました。  そういう、一つの県で七十人くらいしかいない、あるいは身近な警察署では署長さんとか副署長さんをやっている、そういう人たちがまず令状を裁判所に請求し、それも地方裁判所の裁判官がきちっと令状を発付して行われる。そして、通信傍受に当たっては立会人、大体地域社会でしかるべき人を立会人とするわけでありましょうけれども、そういう人が立ち会って、また、通信傍受の結果については、裁判所に対して報告されるのはもちろんですけれども、麻薬とか覚せい剤とか組織犯罪に関連する被疑者、犯人と疑われている人の電話の相手方にも通知が行く。  この通知について、自分のボーイフレンドと電話をしていて、そのボーイフレンドがたまたま覚せい剤とかに関連していて、ボーイフレンドとの電話が通信傍受されていて、突然そういう通知が来たら驚くだろうとかいう言説が一部あるわけでありますけれども、驚くべきなのは電話が傍聴されていたことではなく、下手をすると、麻薬とか暴力団絡みで東京湾の底にセメント漬けにされて沈められてもおかしくないようなことに自分が巻き込まれていたということに驚くべきなのであって、そうしたことを守るために、公的機関と地域社会、市民社会が協力してやっていくのが通信傍受なんだ。さらに、そうした通知に対してもし不服があれば、申し立てをする道も開かれている。これは、国民主権に基づいて、極めて民主的な手続にのっとって行われる非常に正式な活動行為でありまして、その辺のストーカーとかマニアがやるような盗聴のたぐいとは、これはもう質的に全然違うものだという認識を持つ必要があるんだと思います。  そうした通信傍受制度について、修正案ではさらなる厳格化が図られているわけでありまして、以下、さらに検討させていただきます。  政府案では、傍受の実施をしている間に、傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の犯罪であったとしても、それが死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる犯罪の実行を内容とするものと明らかに認められる通信が行われたときは、これを傍受することができることとしております。これについて、修正案においてはこのような、いわゆる他の犯罪の実行を内容とする通信傍受の対象をさらに限定し、引用しますと、「別表に掲げるもの又は死刑若しくは無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる」罪としたわけでありますけれども、その趣旨を御説明いただきたいと思います。 <0049>=笹川委員= 御案内のように、通信傍受をしている最中に犯罪の計画だとか実行だとか話があった、しかし令状に記載している以外は一切だめだよということになりますと、みすみす重大な犯罪を見過ごすことになるわけですから、その場合には御案内のように傍受ができる。  実は、ほかの犯罪の実行を内容とする通信の傍受につきましては、原案では、緊急逮捕の場合と同様に長期三年以上をその基準といたしております。傍受令状に記載のないほかの犯罪につきましての傍受であることを考慮すると、たとえ犯罪の実行を内容とする明白な通信であっても、裁判官の令状を必要としないとしても、かかる通信を証拠として保全する必要が特に高い、すなわちそのまま見過ごすことが許されないと認められた場合に限るのが適当である、そのかわりに、その対象とする犯罪は短期一年以上の犯罪または刑事手続上法廷合議事件、裁判所法第二十六条第二項とされ、または権利保釈が除外事由にされている刑事訴訟法八十九条第一号でありますが、そういうものにさせていただきたいというふうに直させていただきます。 <0050>=達増委員= 当初、令状に基づいて通信傍受の対象となっている犯罪以外の他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受については、まさに令状が出ていないということで、裁判所の事前の審査がないではないかという問題を指摘する向きもあるわけであります。  こうした通信傍受について、さきの質問に述べましたとおり、範囲の限定はなされているわけでありますけれども、そもそも、そういういわば令状のない通信傍受のような格好になるわけで、そういう構造自体は修正案においても認められているわけでありますけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。 <0051>=笹川委員= いずれにしても、捜査官というのは、違法性があった場合には捜査をするのは、これは一つの義務であります。しかし、通信傍受という特殊の中においてその犯罪を知り得た、こういうことでありますが、裁判官の令状がなかったらできないんだよということになってしまうと、現場を押さえられる、あるいは犯罪の事実が確保できるのにみすみすということになりますから、いずれにしても、後ほど裁判官がそれを審査することになっていますので、もし裁判官がそれはだめだよということになれば、それは使用できないというふうに定められておりますから、私は公平に実施ができるんではないのかな、このように考えています。 <0052>=達増委員= 今、御答弁の中にありました裁判官による事後審査の規定、これが恐らくその濫用の危険を未然に防ぐための規定として盛り込まれたものと思われるわけでありますけれども、改めてその趣旨を御説明いただきたいと思います。 <0053>=笹川委員= 御案内のように、裁判官の令状によりまして傍受をするわけでございますから、当然、そのテープも全部裁判所が保管する、あるいはまた聞きたいときも裁判官の許可ということになっておりまして、あくまでも裁判官の主導のもとにこの通信傍受は行いますので、当然、令状にあっても、あるいは事後であっても、裁判官は慎重に国民のプライバシーを守る、人権を守る、こういうことによって私は犯罪の追及ができるというふうに考えておりますので、今までと違って裁判官の職責はまことに重いというふうに考えております。 <0054>=達増委員= 私が先ほど述べましたように、この通信傍受制度は、捜査当局と裁判所、また地域社会一体となって、極めて幅広い協力体制の中で、しかもかなり高いレベルでの意思決定等があった上で行われるわけでありまして、不良警察官が勝手に盗み聞きをするとかいうようなたぐいの話では全然ない。そういう基本があるわけでありますけれども、それでもまだ国民の中に残るかもしれない不安を払拭していくために、万々が一、現場で捜査官が違法な盗聴行為を行ってしまうようなことがないように、もしそういうことがあった場合には、厳重な処罰を加えるという担保が重要になってくると思います。  その意味で、現行の電気通信事業法等による通信の秘密の侵害罪の法定刑は非常に軽いものとなっておりまして、今回の修正案三十条において、捜査または調査の権限を有する公務員による職務上の通信の秘密の侵害行為について新たな罰則を設けている点は非常に重要なところであると思います。この規定について、これを設けた趣旨を説明いただきたいと思います。 <0055>=笹川委員= 今、委員が言われたように、やはり犯罪の捜査、撲滅というのは一般国民の協力なくしてはなし得ない、私もそう思っております。  そこで、今までない重大な捜査上のこういうものを与えたわけですから、万が一、捜査当局がそういうものを漏らしたり利用したり国民に迷惑をかける事態ということになったときどうするんだという、この素朴な疑問には、これはやはり三年以下の懲役または百万円以下の罰金とする大変厳しい罰則規定を左側に設けまして、これで担保したいと思います。しかし、それは懲役三年でも五年でも、それでも悪いことをするやつはいるじゃないかと、もし言われると、それは答弁できません。  アメリカでも、脱税を起こす人は、脱税の期間がございませんから、永久に追徴されます。一生追徴されるわけであります。それでもやはり脱税する人はアメリカにもおりますから、ここまでの議論になりますと平行線になるかもわかりませんが、少なくても役人として、国家と国民に奉仕している公僕としては、懲役三年、百万円の罰金というものは相当厳しいものである。これによって、私は、必ず厳しく運営をしてくれるというふうに捜査当局を信じていきたいと思っております。 <0056>=達増委員= 捜査当局と裁判所の間のチェック・アンド・バランスや、さらに地域社会、一般市民が参加しチェックできるような体制、さらに万が一違法なことがあった場合の罰則規定というふうに、二重三重のチェックがかかったような体制ができていると思います。ただ、もちろん、どんなものでもそうですけれども、制度さえできればいいというものではなく、そこにはやはり制度をきちんと有効に使って、国民の権利を、基本的人権をきちっと守っていくための不断の努力、これが公的機関の側にも、また一般市民の側にも求められていくんだと思います。  最後に一つ、通信傍受と別の論点で。  今回の修正案には、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰等に関する罪がマネーロンダリングの処罰の前提犯罪に加えられているわけでありますけれども、まさにこのマネーロンダリングの問題、国際的にも非常に協力体制をしっかりつくっていこうということで、サミットや国連でも取り上げられているわけでありますけれども、そこに今回このような新しい法律の犯罪をつけ加えた理由を伺いたいと思います。 <0057>=笹川委員= 御承知のように、児童買春、児童ポルノの法律は、つい最近、参議院で先議され、衆議院で通過いたしましたので、本案を提出したときにはまだできていない法律でありましたので、今回はそれを追加させていただいた。御案内のように、暴力団が組織的にこういうものをやっているということは、もう既に一般国民の認識の中に十分あるわけでございますので、今度の修正案の中に入れさせていただいた。  それからもう一つは、来年から行われますサッカーくじ、これも実はこの中に入ってございます。これも、不正行為をやって、八百長なんかをやった場合には、今までの自転車競走、自動車競走、モーターボート競走と同じようにこの中に入るということでございます。 <0058>=達増委員= 時間でございます。以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。 <0059>=杉浦委員長= これより日本共産党の質疑時間に入ります。  四十五分間でありますが、委員の方々、恐縮ですが、自席にて御待機いただきますようにお願いをいたします。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0060>=杉浦委員長= これにて日本共産党の質疑時間は終了いたしました。  これより社会民主党・市民連合の質疑時間に入ります。  委員の方々、御苦労さまですが、自席にて御待機いただきますように、よろしくお願いいたします。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0061>=杉浦委員長= これにて社会民主党・市民連合の質疑時間は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時十八分散会