午後一時三十分開議      ――――◇――――― <0001>=杉浦委員長= これより会議を開きます。  第百四十二回国会、内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、参考人として中央大学法学部教授椎橋隆幸君、弁護士海渡雄一君、弁護士山田齊君、日本国民救援会会長山田善二郎君、北海道大学法学部教授白取祐司君、以上五名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  椎橋参考人、海渡参考人、山田齊参考人、山田善二郎参考人、白取参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、椎橋参考人にお願いいたします。 <0002>=椎橋参考人= 椎橋でございます。参考人として意見を申し述べさせていただきます。  まず、国内外の状況と犯罪情勢と、組織犯罪対策三法案の必要性について申し上げます。  世界的な情勢といたしまして、組織犯罪が、暴力等を背景にしまして、薬物売買など違法、不正な手段によりまして莫大な利益を得、さらにその利益を隠匿したり形を変えたり、さらに収益をふやして、ついには合法な企業の運営にまで影響を及ぼし、その結果、国民の生命、自由、健康、財産、人間の尊厳、そして自由主義の健全な市場経済、さらには民主的な政治決定過程にまでも影響を与えることが問題とされてきております。  そして、組織的な犯罪は、組織の人間がそれぞれの役割を分担し、強い結束のもとに計画的に行われます。そのため、犯行の成功の見込みは高く、また、犯行は秘密裏に巧妙に行われるために、従来の捜査方法では検挙、摘発が困難となってきております。  そこで、先進国を初めとした世界各国は、組織的に行われる犯罪に対しまして重く処罰し、犯罪による不正な収益を没収できるようにし、また、犯罪収益が形を変えてさらなる違法活動に使われないように、不正収益を隠匿する行為を犯罪としております。同時に、犯罪により被害をこうむった者に賠償がなされるように、三倍賠償等の損害賠償を命ずることともされております。没収や損害賠償を実効的に行うために、あらかじめ不正収益を保全する手続も整備されております。さらに、巧妙に行われる組織的犯罪を摘発するために、おとり捜査、潜入捜査、コントロールドデリバリー、通信傍受等の捜査方法が認められておりますほか、訴追、立証を容易にするために、司法取引、刑事免責、匿名証言などの利用も認められております。  そして、この種の犯罪は、今日国境を越えて行われることが珍しくありません。国際的な協力体制の必要性というものが共通の認識となっておりまして、特に、ボン・サミット以来サミットのたびに最重要の議題とされ、日本を除く先進諸国はそのための法整備を既に終えております。我が国が法整備をすることは、国際社会における緊急の課題とされているところであります。  さまざまな点で共通性を持ち、また、人、物、金の移動が容易になりました今日におきましては、世界の常識との比較は無視してはならず、日本がこの点で異質であるということを強調することは正しくないというふうに考えます。  周知のごとく、我が国でも犯罪組織による薬物事件、銃器関連犯罪、悪質な商法違反、大型の自動車窃盗、あるいは集団密航、オウム真理教によるサリンによる殺人事件等一連の事件、このような一般の人々の生命、身体、財産等を害し、社会の安全を根底から覆すおそれのある事件が増加しております。世論調査によりましても、国民の社会の安全に対する不安は増大しております。  特に、覚せい剤の被害は深刻でありますので、申し上げますと、一定水準以下には鎮静化しないまま、平成七年には第三次乱用期に入ったというふうに言われております。一般市民がターゲットとされ、職種も教師、公務員、医師等に及び、また、高校生、中学生にまで及んでおり、特に高校生の乱用が激増しております。覚せい剤の押収量を見ましても、ことしに入って非常に多くの覚せい剤が押収されております。  例えば、二月にパソコンの部品のコンテナに二百キロ隠していたということで押収がされ、三月末には大阪の堺市で二百十キロが押収され、四月には鹿児島の薩摩半島で十九キロが海岸で見つかり、四月十三日は鳥取の境港でシジミの袋に九十九キロの覚せい剤が隠されている、そして、一昨日には東京港で輸入大理石の中に百四十七キロの覚せい剤が隠されていた。海だけではなく空からも、今月になりまして成田空港で二十一キロの覚せい剤が押収されたというふうに、ことしは上半期で昨年の押収量を超えているという情勢でございます。しかも、これは氷山の一角でございますので、実際にこれが一般の市民が使えるような状況にされている量は、この相当数、十倍とか、あるいはそのようなかなり多くの量に達しているということでございます。  このことは、我が国だけが組織犯罪対策を怠っていますと、我が国の犯罪組織と外国の犯罪組織が結託して、あるいは独立して我が国をターゲットにするという兆候が、私はこういうところからその兆候が出始めているのではないかというふうに懸念しております。  組織的な犯罪によって被害を受けますのは一般国民、市民であります。国民が国民に保障されたさまざまな権利や自由を享受するためには、その前提として社会の安全が不可欠であります。社会が安全でないところでは、自由も権利も享受できません。  今日の世界の刑事法の大きな潮流を見ますと、組織犯罪対策と犯罪被害者の保護ということがございます。これは、組織的な犯罪により、民主主義、自由主義を破壊されないため、また、一般の人々がその生命、身体、財産を害されないようにするため、そして、万一諸権利が害されたときには、犯罪によって得た不正な利益を没収して犯罪の被害者の回復に充てる、こういう考え方を示しているものだと思います。  今回の組織犯罪対策関連三法案は、この世界の潮流に沿ったものと評価できると思います。国民がその権利、自由を享受して安心して暮らせるためにも、今回の三法案に私は賛成でございます。  次に、特に大きな争点として取り上げられております通信の傍受について申し上げます。  まず、最近の覚せい剤事犯は、甲府の事件に典型を見るように、転送電話を用いた、売買当事者が直接対面しない形で行われるという巧妙な方法であるために、従来の捜査方法では密売組織内の関与者名、役割分担等が判明しないため、電話の傍受が不可欠の手段と言えると思います。そのほか、携帯電話を用いた密売も多く行われ、そのことは、客のついている数によってその電話が二百万とか三百万とかの値で売買されていることからも判明しております。  問題は、電話傍受等の通信傍受が対象者の知らない間に行われ、しかも犯罪に関係のない通話が架電されてくる可能性があるため、不必要なプライバシーの侵害がないような歯どめがあるのかどうか、また、不必要なプライバシー侵害があった場合に、そのことを争う道があるのかどうかであろうと思います。  その点、通信傍受法案は、対象犯罪を薬物、銃器犯罪、集団密航、殺人、略取誘拐、強盗致死傷等の組織的に行われることの多い重大な犯罪に限定しておりますし、犯罪の嫌疑も、通常の逮捕や捜索・差し押さえに必要な相当な事由以上の十分な理由という高度の嫌疑を求めております。さらに、他の方法によっては犯罪の解明が著しく困難であるという補充性の要件をも課して、これらの要件が存在することを公平、中立な裁判官の審査を経て、令状が発付されて初めて実施できるものでありますから、これらの要件に照らしますと、よく心配されておりますような、市民運動や労働運動に携わる方が、当該の運動に関連してその通話が傍受されるということは考えられません。  また、傍受の期間も、十日、延長で最大限三十日というふうに、これは世界でも最も短い期間を定めてございます。  次に、傍受の実施に当たりましても、通信事業者等に令状を提示し、原則的に立ち会うことを要件とし、犯罪とは関係のない通話は聞いてはいけないということにし、また、傍受の実施状況を記載した書面を裁判官に提出することを義務づけております。  さらに、傍受記録はすべて記録し、原本は立会人が封印して、裁判官が保管し、刑事手続のためには関連性のない通信を削除して使用することとして、不必要なプライバシーの侵害がないように配慮しております。  このことによりまして、傍受の実施状況から、裁判官は、傍受の延長が必要ないと判断すれば延長を認めないということになりますし、また問題が生じた場合には、傍受が違法、不当に行われたかどうかをチェックできるという仕組みがつくられております。  第三に、傍受後の措置といたしましても、捜査機関は、三十日以内に、傍受した通信の罪名、罰条、日時、期間、当事者等を通知することが義務づけられております。また、当事者は、正当な理由と必要がある場合は、裁判官が保管している原本を聴取、閲覧、複製をすることができます。さらに、不服のある者は、傍受に関する裁判官の裁判、検察官等の処分に対して不服申し立てをすることができます。これらの規定によりまして、傍受の対象者は、事後的に傍受が適法に行われたかどうかということを知ることができ、また争う道が保障されております。  さらに、民主的統制として、政府は毎年傍受の運用状況を公表し、国会に報告しなければならないこととされております。  第四に、違法な傍受自体は犯罪になりますが、これは、もしこの罪で訴追されない場合には、裁判官にそのことを申し立てて、審判に付されるという道まで開かれております。  このように、先進の諸国の通信傍受法制を参考にした上でつくられた今回の通信傍受法案は、今述べましたように、世界で最も厳格かつ慎重な手続的保障を持つ法案でありまして、この点についての反論は見当たりません。  最後に、通信傍受法案で最も議論されている特定性の問題について申し上げます。  これは、通信傍受の場合は、犯罪とは関係のない通話が架電されてくる可能性があるということで、その分、通常の捜索・差し押さえよりも特定性が緩くなるとも言えます。だからこそ、法案は他の点での要件を厳しくしたのであります。  私は、この点について一番核心であると思われるのは、その通話の特定性は困難だという議論に対しては、誇張があるのではないかと思われます。つまり、憲法三十五条は、不合理な捜索・差し押さえから住居、書類、所持品等を保障されることを規定しております。  住居は、個人のプライバシーがたくさん詰まっている城のような、宝物の入った城のようなものであります。しかし、そのような貴重な場所であっても、その住人が犯罪を犯した疑いがあり、またそこに証拠が存在する蓋然性があれば制約を受けるということになります。例えば、覚せい剤や銃器が隠されている場合、簡単には見つかりません。その捜索の過程では、ほかのものも目に触れることがあります。しかし、それは当然伴う不利益というふうに甘受されております。  そして、その範囲は、例えば書類になりますと、これがもっと包括的な差し押さえがなされることがございます。さらには、最近のフロッピーディスクの場合などになりますと、これは、その部分の特定が難しくなる、対象者が協力しないということになりますと、瞬時にしてこれを消すことが、証拠隠滅ができるという可能性がありますので、ある程度包括的な差し押さえがなされるということになります。  このように考えますと、必ずしも電話の傍受についてだけが、これだけは絶対に許されないものだ、これだけは特定性ができないというような異質なものではないというふうに考えます。  以上、簡単な、重要な点についてだけ申し述べさせていただきました。(拍手) <0003>=杉浦委員長= ありがとうございました。  次に、海渡参考人にお願いいたします。 <0004>=海渡参考人= 本日は、貴重な意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私は、日弁連の三法案に対する対策本部の委員をしておりますけれども、本日の意見陳述は、私個人の見解に基づくものであり、日弁連などの団体を代表するものではありません。  本日の意見陳述要旨を書面にまとめましたし、付録資料を配付してあります。さらに、日弁連がこの間つくりました四冊ほどのパンフレット等も配付しておりますので、審議の参考にしていただきたいと思います。  まず、この法案は組織的犯罪対策三法案というふうに呼ばれておりますが、法文上、組織的な犯罪の対策に限定されているのは組織的犯罪の重罰化だけであります。通信の傍受やマネーロンダリング規制は組織的犯罪の対策には限定されない一般的な新たな法制度の導入であり、組織的犯罪対策というのは立法の口実に使われているだけではないかというふうに考えられます。  政府も、日本国内の凶悪犯罪の発生状況が欧米諸国と比して極めて低い水準に推移しているということを認めています。人口十万人当たりの発生率で、日本はアメリカの、殺人が九分の一、強盗では何と百十三分の一であります。銃器を使用した犯罪も増加しておりません。  オウム事件に対する捜査が、盗聴法やマネーロンダリングの規制がなかったため十分できなかったと主張されることがあります。しかし、そのような事実は論証されておりません。  結局、このような強力な対策立法を必要とする根拠、立法事実は十分説明されていないというふうに言わざるを得ないのであります。  通信傍受、盗聴制度は、地びき網的な捜査方法でありまして、自己増殖をしていくという性質を持っています。  会話は、個人の内面に直接触れる、プライバシーの中核的な部分をなすものです。現実に、盗聴の対象とされるのは、アメリカ、フランス、ロシアなどの例を見ましても、与野党を問わない政治的な反対派、ジャーナリスト、市民運動などであり、犯罪プロ集団は電話などの通信手段は使わなくなると思います。  盗聴捜査の先進国アメリカでも、盗聴捜査は膨大なコストがかかる割には捜査の効率が悪いということが批判されております。とりわけ、テロ犯罪の摘発には全く役に立っておりません。捜査手段としての通信傍受、盗聴制度を導入することの正当性、合理性そのものが鋭く問われているのであります。  次に、盗聴立法を構想する際に絶対に避けて通れない課題が、警察機関の違法盗聴に関する責任の明確化と、違法盗聴の全貌の解明であります。  日本共産党の緒方国際部長宅盗聴事件では、神奈川県警が組織的に盗聴を行っていたことが裁判でもはっきり認定をされております。家族全員の電話がほぼ一年間にわたって盗聴されたこの事件の裁判で、警察は全く非協力的な姿勢を示しました。裁判所から出頭を命じられても出頭せず、出頭しても証言を拒否するなど、裁判制度を真っ向から否定するような対応をとってきました。  付録四にある朝日新聞は、五月十九日付の社説で、「この盗聴事件の真相解明と過去の行動への謝罪、具体的な再発防止策の表明が、何よりも欠かせない。その宿題に答えるのが、法律制定の大前提である。」と述べています。この日曜日のテレビ朝日サンデープロジェクトでも、田原総一朗氏が、この事件は氷山の一角ではないのかという指摘をされています。緒方事件後に警察から盗聴器の納入の依頼を受けたという丸竹洋三氏の証言が、付録七に掲載しました雑誌記事に掲載されております。本日はたくさん新聞にも載っております。ぜひこの委員会でも聞いていただきたいと思います。この問題をあいまいにしたまま立法化を急ぐことは許されないと考えます。  現在、裁判官の令状却下率はわずか〇・一%以下であります。令状による司法的コントロールは非常に困難です。実は、アメリカでも盗聴令状に関する限り却下率は〇・一%以下で、十年間に却下されたのはわずか一件です。盗聴に関する司法的な抑制が不可能であるということが日米のこの事実によって実証されていると思います。  公明党からは、傍受、盗聴の対象犯罪を限定するので、人権侵害の危険性はなくなるという御提案がなされております。薬物関連、銃器関連、組織的殺人、集団密航の四種類に限定したと言われております。しかし、実は薬物関連犯罪の中には非常に広範なものが含まれております。大麻、覚せい剤の単純所持が含まれているのであります。大麻、覚せい剤の所持を疑われた者の電話はすべて傍受、盗聴の対象になり得るということであります。  また、法案は、別件盗聴や予備的盗聴、現実に発生していない、将来発生するかもしれない事件に関する盗聴を認めています。たとえ対象犯罪を限定しても、刑事事件と関係のない膨大な会話が警察の盗聴の対象とされ、データとして記録されることは避けられません。この法案の修正によっても、盗聴の対象は十分限定されていないというふうに言わざるを得ないのであります。  次に、Eメールの盗聴のための方法、この点は法案ではきっちり説明されておりません。法案では、プロバイダーの協力の義務が課されているだけであります。デジタルデータというものは、短い時間の間に膨大なデータの送信が可能です。標準的な転送速度でも、一分間に日本語二十四万五千字ものデータを送ることが可能と言われています。そして、この蓄積されたデータの中から必要な情報を検索することも現在のコンピューター技術からは極めて容易なことであります。コンピューター通信と電話とは、アメリカでも法律を分けております。これを一つの法律で取り扱うことそのものが間違っているのではないでしょうか。少なくとも、コンピューター通信は規制対象から外すべきです。  法案は、将来発生するかもしれない犯罪についての傍受を認めております。犯罪捜査とは、既に発生した犯罪に対するものであるということが刑事司法の大前提であります。日弁連は繰り返しこの事前盗聴の規定に反対する強い意向を表明してまいりました。付録三の、最近の会長談話でもこのことに触れております。将来の犯罪に関する逮捕令状というものは存在しません。戦前において行政検束という手段が存在していました。今回新たに設けられる強制処分である盗聴において、なぜこのような広範で無限定な規定を設ける必要があるのでしょうか。公明党案では、この問題を今後検討するとされています。事前盗聴の規定は絶対に認めることはできないと考えております。  また、法案は、令状記載の犯罪以外の別件傍受を認めております。このようなことを認めること自体が必要最小限の原則に反するものだと考えます。別件傍受を制度として認めれば、全く予測もできない別件犯罪に関する会話が行われる可能性があったという理由で、すべての通信の盗聴を続ける理由とすることができます。別件犯罪を長期三年から短期一年に限定したらいいというものではないのであります。別件傍受、盗聴は認められません。  この法案のもとでは、立会人は被疑事実を告げられませんし、会話内容も聞くことができないとされています。このような立会人が常時立ち会っても全く意味がありません。公明党の修正案では、立ち会いを常時するということが目玉とされているようです。しかし、会話内容も犯罪事実もわからない立会人が一体何を監視し、どのようにして意見を述べればいいのでしょうか。この点は、従来の判例理論からも大幅に後退しているものです。  私自身は盗聴制度の導入そのものに反対ですが、もしどうしても導入するというのであれば、犯罪事実の内容を理解した立会人が常時立ち会い、この立会人に切断権を与えることが絶対に必要であると考えます。当初公明党では、立会人が会話内容を聴取できる前提で弁護士が立ち会うという案を検討されたと聞きます。日弁連は、当番弁護士など公益的活動に取り組んできた実績を踏まえ、このような適正な手続を担保するための立会人の派遣に前向きに取り組みたいというふうに考えております。公明党は、ぜひこの弁護士による実質的な立ち会いという案を貫いていただきたいというふうに思います。  捜査機関が盗聴を行ったときは、同時に二本の録音テープに記録されます。そのうちの一つに立会人に封印をさせ、裁判官に提出保管されます。残りの一つから、捜査機関は関連性のない通信を除いて刑事手続で使用するための刑事手続用記録を作成します。傍受の原記録中の刑事事件用記録以外の部分は削除抹消を行うとされています。しかし、この削除抹消を担保する手続がありません。一体、緒方事件の盗聴記録は今どうなっているのでしょうか。きちっと抹消されたというふうには考えにくいのであります。  また、刑事手続用の記録に記録されなかった大部分の通信については、通知自体がされません。犯罪と無関係な通信の当事者は、裁判所に記録は保管されているのに盗聴の事実すら知ることができないままとなり、不服申し立ても不可能となってしまうのであります。  次に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案について意見を述べさせていただきます。  まず、重罰化の必要性がはっきりと説明されておりません。現実には、刑法の定める刑には大きな幅があり、言い渡される刑が法定刑の上限に集中しているといった事情もありません。現実に、労働組合、消費者団体の交渉に強要罪、監禁罪等が適用された例は数え切れないほどあります。労働組合のピケなどの争議行為が威力業務妨害とされた例も少なくありません。最近も、この法案に反対する活動を活発に行っていた労働組合員五名が逮捕されるという事件が発生しております。この法案が、争議団など労働組合をその標的の一つとしていることは否めないというふうに考えます。  マネーロンダリングについてであります。  今回のマネーロンダリングでは、麻薬、銃器など典型的な組織的犯罪とされる罪だけではなく、傷害、窃盗、詐欺、横領など刑法上の主要犯罪だけで五十以上、商標法、著作権法など極めて多数の特別法上の罪が前提犯罪とされ、その範囲が著しく拡大されました。さらに、この犯罪収益等には、犯罪収益に由来する収益さらには混和財産なども含まれるとされております。  日弁連は、この犯罪収益収受罪が弁護活動を著しく困難にする可能性があるということをこの意見書で強く警告してきました。依頼者が一定の犯罪に基づいて取得した金を、違法に取得された金であるという未必的な認識、何か違法性を帯びた金かもしれないという認識がありながら受領すると、それだけで犯罪収益収受罪となります。暴力団構成員の刑事事件はもちろんのこと、詐欺や窃盗などのありふれた犯罪でも、被告人や被告人と生計を同じくする家族から弁護費用を受け取るということ自身が非常に危険、犯罪収益収受罪に当たりかねないという事態になると思われます。  実は、このような事態はアメリカで既に起きていることなのです。アメリカでは、ここに書きましたユナイテッドステーツ対モンサント事件という事件、これについての一九八九年六月二十二日の連邦最高裁判所の決定で、没収となり得る財産の判決前の凍結が憲法修正六条の弁護人依頼権の保障規定、憲法修正五条のデュープロセス条項に違反しないという判決が五対四の僅差で出されています。しかし、最高裁判事のうちの四人はこの法律を憲法違反としているのであります。この法律は刑事司法システムの基本的な公正さを掘り崩してしまうとしている連邦最高裁判所裁判官が四名もいるということに注目していただきたいと思います。  日本では、起訴前の段階では国選弁護の制度もありません。起訴前は、弁護士会が費用を出している当番弁護士制度と私選弁護士制度しかないのであります。にもかかわらず、法務省は、与党協議の場でこの判決を引用しながら、この法律のもとで弁護人が受け取る報酬に犯罪収益収受の罪を適用する可能性を肯定しております。  贈収賄もマネーロンダリングの前提犯罪に含まれています。政治家が収賄の罪で逮捕されても、私選弁護を引き受けてくれる弁護士がいないといった事態もあり得ないことではないのであります。  次に、金融機関に対する疑わしい取引の届け出ですが、このような制度化は、現在の低金利のもとでは大変経済に萎縮効果をもたらしかねないというふうに考えます。大量の資金がアングラ化し、銀行の経営、ひいては国の経済政策に大きな打撃を与えかねません。不況の日本経済をさらに萎縮させる金融機関による疑わしい取引の届け出規定は削除すべきだと考えます。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案についても、当事者対等の原則に反する証人保護等の規定については、日弁連も強く反対してきたということを申し上げたいと思います。  残り、少し足りないところもありますが、質疑の中でお答えさせていただきたいと思います。以上です。(拍手) <0005>=杉浦委員長= ありがとうございました。  次に、山田齊参考人にお願いいたします。 <0006>=山田(齊)参考人= 弁護士の山田齊と申します。  私は、民事介入暴力に取り組んでいる弁護士として意見を述べさせていただきます。  私は、日弁連の民暴対策委員会組織犯罪調査研究部会の部会長も五年間やっておりまして、平成八年に日弁連内に組織されました組織犯罪対策立法連絡協議会の委員も務めまして、約二十回の議論をしました。その中で、民暴委員会の意見も十分考慮に値するものとして、意見書にも多少反映されております。  それは別としまして、本日は、皆さんに御配付させていただきましたレジュメの、時間の関係からいきまして、特に太い字で書いた部分を中心にして述べさせていただきます。  まず第一に、組織犯罪対策法制の必要性について述べさせていただきます。  我が国は、暴力団及びその周辺者が後述のように八万人以上存在しますけれども、こういう暴力団及びその周辺者は、一般市民及び企業に対する基本的人権を侵害している、そういう実態に目を向ける必要があると思います。私の問題の出発点は、こういう先進国最大規模の暴力団勢力と共存し続けることがいいのかどうかという点に原点があります。  暴力団の年間収入は、平成元年では合計して一兆三千億円余りと推計されております。現在、その後では、企業対象暴力は、平成九年から十年の東京地検等による総会屋事件の摘発等によって、企業恐喝が非常に多い。それから、覚せい剤犯罪は、先ほど椎橋教授も述べられましたように、第三次乱用期に入りまして、暴力団勢力へ年間数千億円から一兆円程度が流れている、そういうことが明らかにされております。平成元年当時では三千億円から四千億円でした。ですから、二倍から三倍に上っておるわけです。こういうことを考慮しますと、現在では、暴力団勢力の最近の年間収入というのは、平成元年の二倍から三倍程度に達すると推測されます。  こういう数字が犯罪検挙としてあらわれないというのは、特に金融機関を初めとする企業というのは、企業恐喝について捜査機関に申告しないというのが日本の特性であります。だから、表面にあらわれた犯罪以上の犯罪が暗数となってたくさん存在するということを看過してはならないと思います。  それから、暴力団勢力というのは、実態は犯罪組織と言ってよいと考えます。その根拠は、まず、平成五年から九年までの総人数に対する割合は平均して四〇・七%に達します。それから、我が国のほとんどの暴力団は暴力団対策法による指定暴力団に指定されていますけれども、その指定の要件というのは、資金獲得活動を目的とする、犯罪経歴保有者比率が著しく高い、それから階層的に構成された団体、こういう要件を満たす必要があるわけです。こういう要件を満たした指定暴力団というのは犯罪組織にほかならないと言って差し支えありません。  この点につきましては、最近、川出敏裕東大助教授がジュリストに書かれておりますけれども、組織犯罪の特色として、第一に組織性、継続性、二番目に犯罪行為の密行性、それから三番目に国際性、四番目に経済的利益の追求、こういう特色を指摘されておりますけれども、指定暴力団はすべてこの要件を満たすと言って差し支えないと思います。  順を追って述べさせていただきます。  それから、弁護士による民事介入暴力対策というのは限界があるということです。国際的に見て、弁護士が組織犯罪と戦っておるという国は我が国だけです。民事介入暴力の被害者救済活動を行っているという、弁護士が組織犯罪に対して被害者救済活動を行っているという国は日本だけであるということです。  これは何を意味するかといいますと、我が国では暴力団犯罪に対する刑事法制が著しく不備である、そういうことを意味すると考えます。諸外国では、こういう民事介入暴力に属する問題も刑事法制によって捜査機関が対処しているわけです。丸腰の弁護士が犯罪組織と戦うなんてもともと無理であります。弁護士ができる事柄というのは極めて限られた分野だけです。  それから、日本の暴力団勢力の規模をアメリカ、イタリア等と比較しますと、アメリカ、イタリアのほぼ四倍以上に上ると言って差し支えありません。平成十年末の日本の暴力団勢力、これは構成員と準構成員を合わせたものですが、八万一千三百人です。このほかに、えせ同和、えせ右翼、総会屋、占有屋等の周辺者がいます。  それから、アメリカは、千人から千二百人と言われております。これは、平成八年九月に日弁連からアメリカに視察に行ったときに、直接司法省の当局者から聞いたものです。これは、RICO法等によって、その適切な適用によって激減したものであります。今現在では、ボスというのはほとんど終身刑として刑務所に収容されているという状況にあります。ボスのなり手がないと言われております。  それから、イタリア・マフィアは、構成員は千七百五十人。これも、平成九年四月に日弁連から視察に行きまして、直接司法当局者から聞いた話です。周辺者を含んで一万七千人程度という話です。  そうしますと、日本はもう先進国では最大の暴力団勢力を抱えた国家である、こういうことでいいのかということが一番私が重視する点でございます。  それから、ドイツ、フランス、イギリスにつきましては、マフィアのような何でも犯罪をやる、種類を問わないというような犯罪組織は存在しません。その原因も後述します。  それから、最近、我が国もこういう組織犯罪対策法制が今国会で議論されておりますのは、冷戦が終結したということと、犯罪組織打倒のための国際的な要請があるということが直接的な原因だと私は考えております。つまり、冷戦思考が国際的に転換されたと考えてよいと考えております。その経過については、細い字で書いてあるとおりです。  そこの中で特に重要なナポリ政治宣言について述べさせていただきますと、第三項「我々は、犯罪組織の社会経済並びに合法的経済に浸透し、犯罪収益を洗浄し、かつ、暴力及び恐怖を使用する能力を打ち負かすために特別の努力を傾注する。」そういう項がありまして、これは我が国が遵守する義務があると考えます。  あと、個別的な問題について若干触れさせていただきます。  刑の加重につきましては、第三条一項に列挙された十一個の罪は暴力団勢力が犯すことの多い犯罪である。現行刑法は常習賭博や賭博等開張図利の罪が定められていますが、これをもって現行刑法は組織犯罪を考慮して法定刑が定められたとは言えないと思います。現行刑法は、その模範としたドイツ刑法やフランス刑法が犯罪的結社の罪を定めているのに、あえてその罪は刑法典に盛り込まなかったように、博徒の犯すこれらの罪を犯罪組織のゆえにそれに適した刑罰が定められたとは言えないわけであります。他の九つの罪も同様でございます。  不法収益等は、ちょっと時間の関係で割愛させていただきます。  重要な通信傍受について触れさせていただきます。  六ページ以下ですが、憲法との関係につきましては、これは理論的な問題ですので、私が言うよりは学者の先生方の見解を参照された方がいいと思いますけれども、一応の考えを書いておきました。  それから、通信傍受の必要性につきましては、犯罪組織は、暴力団に典型的に見られますように階層的構造をとっておりまして、一次団体から五次団体まである暴力団もあります。このような犯罪組織では、そのトップがみずから犯罪に手を出すのは覚せい剤の輸入のような場合だけであります。他の犯罪については部下にやらせるのが普通であります。この場合に、部下は上位者の命令で犯罪を実行したことを供述することはまれであって、我が国の暴力団についても沈黙のおきては厳然として生きていると言って差し支えありません。  ナポリ世界行動計画十七項にも「各国は、組織犯罪と効果的に戦うため、沈黙及び脅迫の掟を克服しなければならない。」と書かれておりまして、この辺はやはり犯罪組織の持つ特性であります。これを克服しなければ犯罪組織を撲滅するということは不可能であります。  それから、末尾にあります暴力団収入の三〇%を占める覚せい剤収入の根絶というのは、通信傍受以外の捜査手段では発見がほとんど不可能であります。この犯罪に通信傍受を認めなければ、暴力団最大の収入源が手つかずのまま放任されることになります。これまでがそうであったことは、覚せい剤の価格が、一九七〇年代後半の一回分、〇・〇三グラム一万円が、一九九七年には二千円まで下落していることから明らかであります。  通信傍受の必要性という点につきましては、細かい字でも書いておきました。もう絶対的に必要な犯罪が存在する、しかもそれは通信傍受以外の方法では捜査ができないという事実は、通信傍受が不可欠であるということを言って差し支えないと思っております。  以上でございます。(拍手) <0007>=杉浦委員長= ありがとうございました。  次に、山田善二郎参考人にお願いいたします。 <0008>=山田(善)参考人= 最初に、私は、こうした機会をつくっていただいた委員長及び各委員の先生方にお礼を申し上げたいと思います。  私は、本法案の廃案を求めて陳述いたしたいと思います。  私が関係している日本国民救援会は、戦前、弾圧犠牲者とその家族の救援を任務として解放運動犠牲者救援会という名称で結成されました。戦前は、悪名高い治安維持法やその他の悪法によって特高警察に逮捕、投獄された多くの人々を、戦後は、アメリカ軍の占領下に引き起こされた三鷹事件や松川事件など、そして講和条約発効後は、警察によって仕組まれた菅生事件、青梅事件など、謀略事件の犠牲者とその家族を救援してまいりました。  現在は、弾圧犠牲者を初め、無実を訴えている人々の救援運動や、緒方靖夫氏宅電話盗聴事件その他警察の不法行為によって侵害された人権の回復と救済を求めて裁判に訴えている人々を支援し、人権と民主主義を守るために活動しております。  私は、これまでの経験から、警察に電話盗聴の法的権限を与えるならば、新たな深刻な人権侵害が引き起こされるのではないかと強く危惧を抱いております。  電話盗聴は、一般市民までもが対象とされます。恐ろしいのは、犯罪と全く無関係の人の電話機に知らぬ間に盗聴器が設置されても、これを回避するすべも阻止するすべも抗議するすべもないということであります。市民の心の中まで丸裸にされてしまうものです。それ自体が重大な人権侵害であるだけでなく、盗聴の結果、新たな深刻な人権侵害事件がつくられるおそれなしとも限りません。  それを裏づけるために、私は警察の違法な盗聴活動の幾つかを、私どもが支援してきた事件から事実を挙げて申し上げたいと思います。  第一は、日本の警察は、違法であることを十分承知の上でスパイ活動や盗聴行為を重ねている極めて強大な国家権力機関だということであります。  緒方氏宅電話盗聴事件がこのことを最も端的に示しています。この事件が警察庁の最高幹部をトップとして実行された組織的で計画的な犯罪行為であることは、東京地方検察庁の不起訴決定や検察審査会の議決、事件を審理したすべての裁判所の判決と決定によって明白にされてまいりました。警察の違法行為がこれほど厳しく断罪されているにもかかわらず、いまだにその事実を国民の前に明らかにして、被害者に謝罪もしておりません。警察はこのような違法行為を今後も重ねる意図を捨てていないのでしょうか。  警備警察研究会編、立花書房発行の「警備警察全書」という本がございます。この本には、労働組合の事務所に入って情報を入手することから、情報提供者、つまりスパイをつくって特定の団体の中に潜入させることなど、詳細な情報活動の手口を解説しています。  注目すべきは、この活動を行う場合は、相手に気づかれないように隠密にすることが必要である、秘聴器やカメラを使用する場合は特に慎重な配慮が必要であると書かれたくだりがあります。警察用語の秘聴器とは盗聴器のことであり、警察ははるか以前から盗聴を含む違法な情報活動をしていることがわかります。  加えて、この本には、警察活動が、正当性を持たない場合であっても、その手段、方法が職権濫用など刑罰法規に触れない限り、処罰を受けないのはもちろんであると記しています。違法であっても処罰しないから、発覚しないように大いに情報活動、スパイ活動をやりなさいと奨励しているとしか思えません。  緒方氏宅電話盗聴事件はその象徴的事例でありますが、そのほかの幾つかを御説明いたしたいと思います。  一つは、一九六三年八月、福岡県警によって引き起こされた直方スパイ摘発弾圧事件であります。ある労組の中の共産党員が警察のスパイであることがわかったため、共産党の地区委員会が調査委員会を設けてその人を調査したところ、福岡県警が、これを不法監禁だとして弾圧を加えた事件であります。  逮捕、起訴された四名の幹部は有罪とされましたけれども、しかし福岡高裁の判決は、金銭を与えたりして人を籠絡し、平穏な日常活動を行っている政党や団体の内部情報を収集するような警察活動は、結社の自由を侵害するだけでなく、社会的、倫理的に非難され、不当、違法であると断定しているのであります。  しかし、警察はその後も違法なスパイ活動を行っています。一九九五年八月、同じ福岡県下で発生した芦屋派出所不法監禁スパイ強要事件がそれであります。警備公安警察官が、帰宅途中の川上誠一君という青年を覆面パトカーで追跡して、一時停止違反をしたと欺いて派出所に同行し、深夜一時間にわたり二階の一室に監禁し、警察のスパイになるよう執拗に迫った事件であります。  被害者川上君が提訴した国家賠償請求を審理した福岡高裁は、不公正で違法な捜査活動により川上氏の身体の自由を不当に侵害したものと断定して、原告勝訴の判決を言い渡したのであります。  この二つの確定判決が示しているように、日本の警察は、違法な情報活動を、裁判所の判決さえ無視して重ねているのであります。  このような情報活動の対象は、日本共産党だけではありません。広範な団体に及んでいるのであります。  元長野県警本部警備一課の係長だった警部補が、一九九五年十月から翌九六年二月までの約四カ月間に、三十八カ所の建物や住居に侵入して、被害者総数八十一名、現金約四百六十三万円、物品など九千三百九十三点、被害総額は一千万円を上回る金品を窃盗したのです。長野簡易裁判所は、実刑、懲役二年の判決を下しました。いわゆる現職警備警察官泥棒事件というのがこれであります。長野県の地方新聞、信濃毎日がこの事件を報道しましたが、「勝手知りたる仕事場で」と報道したとおり、被害団体は、日常的に警備情報活動を行っている労働組合五カ所、保育園六カ所、市民劇場などであり、盗品の中には、フィルムの入ったカメラ、ワープロ、フロッピーなど、警備警察にとっては最もおいしい資料が含まれていたのであります。  第二は、警察は、権力を行使して証拠を隠し、隠滅し、犯行警察官を隠匿するということであります。  私どもは、緒方氏宅電話盗聴事件が発覚した直後から、真実解明と責任追及を求めて闘う被害者、緒方氏を支援してまいりました。緒方氏の居住する町田市玉川学園地域では、家庭の主婦を中心に、警察による電話盗聴事件を考える住民の会が組織され、また全国的には、警察による電話盗聴事件を究明する会が、思想信条の違いを乗り越えて結成され、緒方さんの裁判闘争を支援してまいりました。民主社会にあるまじき警察の違法な人権侵害を見逃すならば、国民の人権が、そして我が国の民主主義がどうなるのか、痛切に考えたからであります。  この事件が発覚した直後、町田警察署は、盗聴警官のアジトから、裁判官の証拠保全手続をも妨害して、証拠物件をほとんど持ち去ってしまったのであります。しかし、現場に残された冷蔵庫や洗濯機、寝具、しょうゆ、マヨネーズなどの調味料品、さらにはゴキブリホイホイその他もろもろの生活必需品などから、犯行警察官は長期間交代で宿泊して盗聴していたという事実が歴然としたのであります。  実行犯人は神奈川県警の公安四係五名、すべて雲隠れしてしまいました。この四係というのは、警察庁警備局が直轄し、通称さくらと言われている秘密情報機関で、本部を中野区にある警察大学の中に置いていることが判明しました。  その後、緒方氏が提起した国賠請求訴訟の法廷に町田署が持ち去った証拠物件の一部として提出された十本の録音テープは、すべて消去されていました。捜査中になぞの死を遂げた一名を除く四名の犯行警察官はすべて、出たくないと言って法廷にあらわれませんでした。裁判所の調書には、本人尋問に応じない正当な理由については、主張も立証もしないと記載されております。自分の名誉のためにといってただ一人、その事件後退職した警察官も法廷に出たが、そこでは、言いたくないと証言を拒否するだけでした。また、警備局長その他の幹部も、盗聴器など見たこともないなどとひたすら否認と証言拒否に終始し、何らの反証も提出せず、真実解明のために協力する姿勢はみじんも示さなかったのであります。  警察当局は、当委員会においても、嫌疑を受けたことは厳粛に受けとめる、しかし電話盗聴はしていないと答弁しています。このような態度をとり続ける限り、警察に電話盗聴を行う法的権限を与えるならば、一体国民の人権、プライバシーの権利はどうなるでしょうか。多くの国民が憂慮しているところでございます。  第三は、警察には自浄の意思はかけらもないということです。  警察は、最高幹部から末端に至るまで、徹頭徹尾、自浄の意思を持ち合わせていないという、これも緒方宅電話盗聴事件が明らかにしました。東京地裁の一審判決が言い渡されたその日、神奈川県警の幹部は、晴れた日だって気象庁が雨だと言えば雨なんだ、そして何年かたって、その日は雨だったということが真実になるんだと新聞に報道されておりました。  国会で、警察は過去も現在も盗聴していないと公言した当時の警察庁長官は、退職直後に、警察庁の初代顧問となりました。盗聴に関与したある人は、その後、長野県警本部長、そして警察大学校長を経て、中部管区警察局長へと栄転しました。かの松本サリン事件の被害者、河野義行さんは、この人が警察本部長在任当時に真犯人扱いされた、このことは余りにも有名だと思います。当時の警察庁警備局公安一課理事官もまた、鹿児島県警本部長から茨城県警本部長へと栄転しています。  犯罪を実行し、それに関与したとされる警察官がことごとく出世している、だが被害者には謝罪すらない。この冷厳な事実を目の当たりにして、私は、多くの国民が心を痛めていることを訴えたいと思います。それだけではありません。この事件は、国連の人権委員会で日本の人権状況が審査された際、一体、日本には警察用の法律と市民用の法律、二つの法律があるのかと厳しい批判さえ受けたのでございます。  警察のこのような体質は、あしき伝統であると言えましょう。それは、一九五二年、大分県菅生村で警察が仕組んだ謀略事件、菅生事件とその後の経過を見ることによって御理解いただけると思います。  この事件は、共産党の組織の中にスパイとして潜入した現職警察官が、党員を駐在所の近くにおびき寄せて、内部に仕掛けた爆発物を爆発させてその党員を逮捕した事件でございます。犯行警察官はその後姿をくらまし、緒方氏宅電話盗聴事件で明らかにされた公安四係、通称さくらという秘密機関があるあの警察大学の構内に一時かくまわれていたことは、当時の新聞を通じて社会に大きな驚愕を与えたのであります。  以上申し上げました事実によって、警察は自浄の意思を何ら持ち合わせていないということをぜひとも御理解いただきたいと思います。  最後に、この法律が新たな人権侵害や冤罪を生み出す危険を申し上げたいと思います。  私どもはこれまで、死刑判決が確定した後に再審無罪となった松山事件や島田事件など、多くの冤罪事件の犠牲者の救援活動を行ってまいりました。その中で、捜査当局によって証拠が隠されたり、つくられるなど、痛ましい事実の数々を知っております。こうしたことから、私は、盗聴で得た情報をもとにして、いわれのない嫌疑をかけられて犯罪者にされるという新たな悲劇が生まれることを危惧するものでございます。これは決して私はオーバーだとは思いません。  ぜひとも慎重な上にも慎重に御審議され、この法案を廃案とされることを重ねて重ねてお願い申し上げまして、私の陳述とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手) <0009>=杉浦委員長= ありがとうございました。  次に、白取参考人にお願いいたします。 <0010>=白取参考人= 白取でございます。  今回の組織的犯罪対策三法案に反対であるという立場から意見を申し上げます。  時間も限られておりますので、反対の理由のポイントを五点にまとめて申し上げたいと思います。お手元にごく簡単なレジュメがございますので、それに沿ってお話しいたします。  まず第一点目は、法案が総論と各論で分裂しているということです。  三法案のそれぞれについて申し上げますと、最初に組織的犯罪処罰犯罪収益規制法案ですけれども、提案理由説明には、組織的な犯罪に対処するため、処罰の強化などが必要だ、対策が必要だとありますが、法案二条で定義されている団体というのは犯罪組織に限られず、余りにも広範な団体としか読めない、そういう定義になっています。  通信傍受法案では、数人の共謀によって重大犯罪が行われる場合の盗聴が認められることになっていて、この法案の提案理由説明書にある大規模な組織的形態による凶悪事犯に限られていないどころか、普通の二人あるいは三人の共犯事件まですべて法の網にかかる仕組みになっています。説明書を読むと、組織的犯罪は、犯罪自体密行的に行われ、あるいは犯人の特定を困難にするための種々の工作が行われることも少なくない、だから特に通信傍受が必要だと書いてあります。しかし、法案の通信傍受の要件には、組織的な犯罪に限るという絞りは全然入っていません。  三つ目の、刑訴法一部改正案、これは証人保護のために証人尋問について制約を課すという内容ですけれども、これも提案理由説明を読むと、組織的犯罪に関して証人威迫などが行われやすいからという説明があります。しかし、これも法案を見ると、組織的犯罪という絞りはここでは一切入っていないということが指摘されます。これが一点目。  第二に、三法案における立法事実と手段としての法案との分裂の問題があります。  組織的な犯罪に対処するため法整備が必要だというのが立法事実でした。しかし、一九九一年に麻薬二法、当時は麻薬新法と言われました麻薬二法ができ、それから同じ年に暴対法が制定され、九一年から九五年までにかけて、三度銃刀法が改正されるという形で、実は着々と法の整備はなされてきている。薬物事犯に限っては、マネロンの罪も立法化され、それから、コントロールドデリバリーという従来なかった新しい捜査の方法も法律によって整備されました。それがいいかどうかは問いませんけれども、とにかくそういう整備が着々となされてきた。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕  仮に、法の整備が必要だという立法事実が必要だと認めるというふうにしたとしても、今回の法案は必ずしもすべての組織的犯罪を捕捉するものにはなっていない。例えば、組織的な公務員の犯罪については一言も触れられていませんし、それから金融犯罪等々についても、通信傍受の別表を見ると、そこには掲げられていない。そもそも、実際に通信傍受の対象になりそうなものとして覚せい剤の取引など考えられるわけですが、組織の中枢にいる幹部あるいは首謀者がこの盗聴によって摘発されるということは非常に考えにくいと思います。  現行法のもとで裁判所がつくり出したちょっと特殊な令状で、電話検証と俗に言われている検証令状による盗聴が、散発的ではありますが行われています。北海道の旭川で行われた例、これは札幌高裁の判決、平成九年五月十五日に出ておりますが、この事件でも、現実に逮捕されて起訴されたのは末端の電話番にすぎません。それ以上にさかのぼることはなかったのです。このときに、五十本ほど盗聴されたもののうち、三分の一が無関係通話であったということも指摘しておく必要がある。仮に立法事実にいろいろ必要性が言われたとしても、しかし、今回挙げられている対策、手段が必ずしも実効的なものかということについては疑問があるということです。  第三に、多少これは専門的な話になりますが、今回の法案は今の日本の法体系を大きくゆがめることになるという点が指摘できます。  これについて三点簡単に申し上げますが、まず一点目、通信傍受法案において、今回の法案を見ますと、将来の犯罪捜査のための傍受を認めています。これから起きるかもしれない犯罪についての通信傍受を認めている。これは、伝統的な捜査概念を否定し、強制処分が本来できないはずの犯罪の予防、これを行政警察といいますが、行政警察の領域に司法警察権限を及ぼし、そして強制処分を認めようとするものであって、これは極めて不当なものだというふうに思います。  現行の憲法、刑事訴訟法は、既に起きた過去の犯罪を捜査するために、裁判官が事前に令状を発付することを条件に捜査機関の強制捜査を認めています。これを令状主義というふうに呼びますが、将来の犯罪に関する捜査ということになると、余りにその枠が広がり過ぎて、捜査に対する裁判所のチェックという歯どめがきかなくなってしまいます。戦前の行政警察の濫用の反省の上に立って、現行法は司法警察と行政警察にきちっと分けて、行政警察については原則として強制処分権限は認めていない、こういう建前を大きくゆがめることになってしまう。ちなみに、憲法、刑事訴訟法は、犯罪を犯す前に被疑者、犯人を逮捕することは認めていません。こんなの当たり前のことですが、あした犯罪を犯しそうだからといってきょう逮捕するなんということは認めていない。捜索・差し押さえについても同じ原理が当てはまるとすれば、将来犯罪が起きそうだから盗聴という令状を発付していいということにならないはずだ。これが学説の多数説、通説だと思います。  次に、法案にある犯罪収益等の隠匿罪、マネーロンダリングの罪ですが、これが新設される。これによると、今まで処罰されなかった、犯罪を犯した後の不可罰的行為が幅広く処罰されることになってしまう。もちろん、新たな処罰であっても、それなりの合理性があれば立法をすることも許される場合はあります。しかし、例えば窃盗などの財産犯で得た金銭を隠匿することを、窃盗とは別に処罰する必要性あるいは合理性があるのでしょうか。マネロンの罪の前提犯罪が余りにも広過ぎるように思われます。しかも、マネロン罪は前提犯罪が時効になっても成立するわけですから、法案は、現行刑法にはない、時効のない犯罪を創設することにもなります。  最後に、没収保全手続ですが、これは本来付加刑である没収を起訴前まで前倒しにして行うことができるとするもので、無罪の推定原則に反する疑いがあります。確かに、法案を見ると、後で無罪判決が言い渡されると没収保全命令は失効することにはなっています。しかし、前倒しの処分が許されること自体、これまでの制度的枠組みを超えて財産権に対する大きな制約を課すことにはならないだろうか。そういう疑問が残るわけです。  第四に、組織的犯罪対策三法案は、これによって害されるプライバシーなどの法益、利益の侵害の重大性に比べて、チェックシステムが極めて不十分であるという問題点が指摘できます。とりわけ、通信傍受によって人の会話の傍受を事前にチェックするということができるのか、そういうことの本源的な困難性というものが指摘できると思います。  すなわち、人の会話、電話の会話などを含む人の会話というのは、もともと非常にフレキシブルなものであって、相手の応答、答えに応じて発展したり変化していくものです。したがって、会話は、令状審査を受ける対象として憲法上要求される特定性を持つことが極めて困難なものであるということが言えます。当然のことですが、令状が発付される段階では、傍受対象の会話は常に将来の会話です。しかも、今回の法案は将来の犯罪に関する会話も対象となる、いわば二重に緩められた形でしか令状が出せない仕組みになっている。これで事前の司法的チェックが期待できるのかというと、大いに疑問があります。  法案に、立会人を立ち会わせるということになっていますけれども、常時立ち会わせるわけではない立会人、しかも法案では立会人は会話を直接聞くことができないというふうになっているそうですので、そういった意味で、立会人によるチェックというのも期待はできないようにも思われます。  また、法案では、いわゆる別件盗聴あるいは緊急盗聴という制度が認められています。これは、本来の被疑事実について通信を傍受していたら、たまたま別の犯罪、長期三年以上の懲役、禁錮といいますからかなりの犯罪になります、これをキャッチした。この場合、そのまま傍受することを認める、そういう盗聴です。  しかし、例えば現行法上、捜索・差し押さえをある被疑事実についてやっていたところ、別の犯罪の証拠が見つかった。その場合、その証拠を押収するには改めて令状を請求しなきゃいけない、これが現行法の建前です。それを、今回の通信傍受の法案はできるようにしてしまっている。憲法三十五条の令状主義というのは、裁判官が個々の被疑事実ごとに令状発付の必要性があるかを慎重に審査するのが建前です。その点で、憲法の令状主義を大きく緩める、あるいはゆがめることになっている。  チェックシステムに関しては、最後に、通信傍受の結果を国会に報告することになっている点に触れます。法案二十九条を見ると、毎年、傍受令状の請求及び発付の件数、罪名など幾つかの点を国会に報告することになっています。しかし、報告事項が概括的、一般的な事項あるいは数値に限られていて、これだけで本当のチェックになるのかという点については、疑問があります。  第五点目として、最後に少しマクロ的な観点から、憲法の目指す社会と今回の法案とのそごがあるのではないかという点を申し上げて、終わりにしたいと思います。  日本国憲法は、非常に豊かな人権条項を持っています。とりわけ捜査と刑事裁判に関しては、少なくない人権保障、権利保障の規定があります。しかし、刑事実務においては、例えば捜査段階に国選弁護制度がない、被疑者に保釈が認められていない、黙秘権を侵害するような取り調べが代用監獄制度を背景にして行われたという裁判例が多数報告されています。このように、刑事手続は、日本においてはまだ近代化が果たされていない。立法論として、黙秘権、弁護権を充実するための立法提案というのは、これまでないわけではなかったけれども、いずれも実現してこなかった。現代型犯罪に対処するための法整備が全く不要だというふうには言いませんけれども、まずはおくれている近代化が先ではないだろうか。  この点について、欧米先進諸国の例がよく出されます。しかし、例えばマフィアの本家とされているイタリアでは、一九八九年に、未決拘禁の期間を制限し、弁護権を充実する新しい刑事訴訟法ができました。これが施行されたために、四千人あるいは五千人のマフィアを釈放せざるを得なかったということが報告されています。そこまでやって近代化を果たすという、産みの苦しみがイタリアでもあったということを指摘しておきたい。  日本国憲法に沿った自由で平和な社会を目指すということ、そのためには、まず人権保障のための改革をすることが先決であって、組織的犯罪対策三法案というのは、憲法の理想に逆行する監視社会をつくるおそれがあり、賛成できないということを最後に申し上げて、私の意見陳述を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0011>=杉浦委員長= ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     ――――――――――――― <0012>=杉浦委員長= これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。 <0013>=小杉委員= まず、民暴対策で御苦労されております山田齊弁護士にお伺いいたします。  先ほど、通信傍受は不可欠である、現在の弁護士では力に限界がある、こういう趣旨のお話をされました。今まで、いろいろ現行法も法整備が行われてきたわけですが、通信傍受というものがなぜ不可欠なのか。この辺は、私は、一連の最近の、オウムによる集団殺害事件とか、あるいは密航事件とか、あるいは銃砲、あるいは麻薬等のことで、これが組織的、計画的に行われてきているために、従来の法体系ではなかなか対応が難しいということは理解できます。この通信傍受がこうした組織犯罪を防止する有効な武器になるというふうに私も思いますけれども、その点をもう少し御説明いただきたいと思います。 <0014>=山田(齊)参考人= ただいまの御質問に対しまして意見を申し上げます。  通信傍受法が特に不可欠だと考えられますのは、先ほども申し上げましたように、それから先生も今言われましたように、覚せい剤の密輸でございます。覚せい剤の密輸というのは、暴力団の資金源の三分の一を占める最大の収入源であります。これは、暴力団の存続基盤をなしているものでありまして、この金が蓄積されていろいろなところに投資されている、マネーロンダリングにも利用されているということです。  それでは、通信傍受法を制定するとどういう具体的な効果があるかという点ですが、暴力団で資金を動かす権限を持っている者はほとんど、首領かそれに準ずる若頭等のトップクラスです。そうでなければ、何千万円というような金は動かせません。それから、先方の中国だとか台湾とか、仕出し地の方の送る方も、だれだか全然わからない人と話をして取引なんてできるわけなくて、初めからわかっている人と会話をして、受け渡しの場所、時期等を決める、金額、数量を決める。そういうことをやっておりますので、通信傍受法を導入すれば、的確にその幹部クラスの商取引が傍受できる。それで、あらかじめその予測された位置へ捜査するということが可能になるわけです。この点につきましても、法理論的には難しい点があるようですけれども、私は、そういう点で非常に効果的だと考えております。 <0015>=小杉委員= 次に、椎橋教授か白取教授、どちらでも結構ですがお答えいただきたいのですが、我が国は今まで通信傍受という手段を持っていなかったのですけれども、既に我が国を除く世界の主要先進国ではこの通信傍受制度が整備されています。これからの捜査というのは、やはりグローバルにやっていく必要性がますますふえてくると思うのですね。そういう点で、このような制度が違うというのは、一体どういう由来があったのか。  そしてまた、ついでに聞きますけれども、この傍受の要件とか手続について、かなり厳格に定めてあると私は考えておりますけれども、諸外国の通信傍受制度と比べて、その要件、手続の厳格性はどうか、御意見を伺いたいと思います。 <0016>=椎橋参考人= お答えいたします。  従来は比較的に犯罪情勢が落ちついていたということはあろうと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、最近は非常に犯罪情勢が深刻になってまいりまして、そして、犯罪が非常に巧妙に行われているということでありますので、私は、日本も先進諸国と同じような問題に直面しているというふうに考えますので、それらの犯罪に対処するためには、通信傍受が必要である。  それから、第二点目の通信傍受の要件でございますが、これはもう学界でもどこでも全く異論を見ませんが、我が国の今回の通信傍受法案は、その手続、要件が世界で最も厳格に定められております。そういう意味で、私は、全体として見ますと、人権侵害のおそれというものは防げるというふうに考えております。 <0017>=白取参考人= 直接のお答えになるかどうかわからないのですが、従来、日本で盗聴の捜査手法が特に必要だということが捜査機関の方から強く上がってこなかった理由というのは、日本では、捜査機関が被疑者に対して長時間取り調べをして自白を得ることが比較的容易であった。それで、自白に基づいて起訴をして有罪にするということがスムーズにいった。それが、どの程度それが事実かわかりませんけれども、自白が最近とりにくい事例がふえてきたというのが背景にあるのかなという感じはいたします。  ただ、その場合に、通信傍受あるいは刑事免責等いろいろ議論はありますけれども、そういう捜査手法を認めていくのがいいのか、あるいはもっと、例えば科学捜査とかそういう面での工夫が可能かどうかとか、いろいろな方法はあり得るかと思います。  それから、諸外国との関係でいいますと、今回の法案は比較的絞った案になっておりますけれども、ただ、現在裁判例で認められている電話検証という要件から見ると、相当緩いものにはなっております。  以上です。 <0018>=小杉委員= この通信傍受法案は、あくまで犯罪が行われたことを前提として、犯罪捜査のために証拠収集のための傍受、すなわち司法傍受について定めるものだと理解しています。これに対して、情報収集を目的とした行政傍受というものがあると言われていますが、どんな違いがあるのでしょうか。これはちょっと椎橋先生に、通信傍受法案が行政傍受を認めるものでないということは明らかであると思いますが、いかがでしょうか。 <0019>=椎橋参考人= お答えいたします。  小杉先生おっしゃるとおりに、世界の多くの先進諸国では、例えばアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア等々では、司法傍受と並んで行政傍受が認められております。これは国家の安全保障、それから防衛、外交の秘密保持のために行われる情報収集のための傍受でございます。これはその性格上、主体でありますとかあるいは実行するところ、それからその要件というものが、それぞれ司法傍受の場合に比べますと緩くなっております。  例えばドイツの場合を見ますと、この行政傍受を命ずる権限は、憲法擁護局それから国防軍の保安局であります。それから、対象となるのも、平和に対する反逆の罪とか、民主主義的政治国家に対する危害行為の罪、あるいは国防に対する犯罪行為等、そういう行為を計画し、行い、または行ったという嫌疑が存在するときに行われます。そして、ドイツは比較的厳格で、補充性の要件というものを認めておりますが、ほかの国では要件としておりません。それから、それ以外にも、連邦大臣が武力攻撃を適時に知り、対処するために必要なときに、情報収集を行う必要があるときにはそれを認めるということでございます。それから、傍受をされた対象者にはその旨を告知しないというふうに、一般的には行政傍受は緩い要件で認められている。  今回の法案は、まさに犯罪捜査のために行われる司法傍受でありますので、行政傍受というのは全く含まれておりません。 <0020>=小杉委員= この委員会で議論になっているのは、要するに、人権とか自由とかプライバシーの保護ということと、それから社会の安定した生活とか、健全な社会の発展とか、そういうものとの衝突だと思うのですね。私どもはやはり、最近の状況を見ますと、平穏な市民生活を脅かしたり、健全な社会経済の発展に悪影響を及ぼすようなことは断固として排除しなきゃいかぬ、そういう観点に立っているわけですけれども、私は、通信の秘密を守るということも、そういった社会全体の利益ということとの対比において考えられるべきことであると思いますが、一番最初の椎橋先生に、最後に伺って終わります。 <0021>=椎橋参考人= おっしゃるとおりだと思います。  ともかく、非常に深刻な状況になってきつつあるというときに、憲法はいろいろな自由が保障されております。国民が全体として自由で濶達に生きられる、そういうような世の中を目指しているのが日本国憲法だと思います。  そのときに、憲法の保障を超えるような不正なことをして、それでもうけたり、人の生命や財産やあるいは人間の尊厳を害するというような行為をする者に対しては、それを制限するということは許される。しかも、考えられるだけの厳格な要件のもとにそれを行うというのが今回の法案の立場でありますので、まさに国民を全体としてその権利、自由を保護する、調和的に保障するということが目指されているのが今回の法案であろうというように私は考えております。 <0022>=小杉委員= ありがとうございました。 <0023>=杉浦委員長= 次に、坂上富男君。 <0024>=坂上委員= 民主党の坂上富男でございます。私は、通信傍受、私たちは盗聴法と呼んでいますが、これは廃案を求めていろいろと頑張っておるわけでございます。そういう立場でございますので、ひとつ先生方からお教えをいただきたいと思っております。  本日、学者の先生、お二人いらっしゃいます。いわゆる賛成派、あるいは反対派と言わせていただきましょうか、大変失礼でございますが。  そこで、私の刑法理論は貧弱でございまして、私が刑法を習いました当時は、団藤先生とか、あるいは木村亀二先生の時代でございました。その習ったところによりますと、刑法学界の刑法の中には、客観説あり、主観説あり、これが対立している、あるいは応報刑あり、教育刑がある、こんなようなことをお習いをして、刑法には学説の対立といいましょうか、認識の違いがあるんだというようなことを聞いておるわけでございます。  しかし、本日、学者の先生に来ていただいておりますし、学者の先生からお知恵を拝借しておりますのは、このいわゆる通信傍受などというものは、国民の人権の侵害、国民のプライバシーの侵害になるんじゃなかろうか。そうだとしたならば、これは社会的に許されることなんだろうかというようなことが議論の対象になっているんだろうと私は思っておるわけでございます。  そこで、こういうものは、まさに刑法の専門家の先生方の学者の間では、真理は一つでございます、真実は一つでございますから、これを見きわめていただいて、いや、君らが心配していることは全くありませんよ、いや、とんでもないことだよこの侵害は、どちらかが私は出なければいけないと思っているのでございますが、お二人の先生方、いかがでございましょうか。なぜ刑法学者の先生方の中で意見がこうやって対立しておるものでございましょうか、それについてまずお聞かせをいただきたいと思いますが、先生、いかがでございましょう。 <0025>=椎橋参考人= お答えできるかどうかわかりませんけれども、なかなか難しい問題で、私は、今回の法案に従って法執行がなされれば、濫用のおそれもないということで考えておりますけれども、反対される方は、多分そのようなことについて心配をされ過ぎているのではないか、そのように考えております。(発言する者あり) <0026>=杉浦委員長= 静粛に願います。 <0027>=椎橋参考人= 実際に、どういう場合にどういうような違法な傍受がなされるかということを考えて、この法案に当てはめて考えていけば、そういう濫用はなされないのです。心配されるのは、もしこの法案を超えて行われた場合には、濫用がされることはあり得ます。これはあると思います、どの世界でも。だけれども、それは別の問題であると思います。 <0028>=坂上委員= なぜ一致しないかということ、どうぞ先生、お願いします。 <0029>=白取参考人= なぜ一致しないかというのは、答えるのは極めて難しいのですけれども、価値判断ですので、価値判断が違うというのは、通常、やはり前提となる事実認識が大きく違うんだろうと思うんです。  だから、例えば、チェックの仕組みは一応ありますけれども、それを運用する裁判所が本当にチェックしてくれるかどうかということの予測。あるいは、現実に今の令状は裁判所がちゃんとチェックしているかどうかということについての認識。それから、緒方事件の問題についてどう見るかという問題。そういうことについての、一つ一つの事実をどう見るかという違いが、最終的には結論の違いになるのかなというふうには思います。  それから、もう一つだけ申し上げますと、椎橋先生は多分楽観的に、制度がきちっと整備されればうまく運用されるだろうという御認識だと思うんです。  ただ、こういう制度というのは、ある種の性悪説というとおかしいですけれども、もしかして濫用されるかもしれない、善人ばかりではないかもしれない、捜査に熱心な余り、もしかしたら行き過ぎるかもしれないという心配をしながら、歯どめをどこまでかけられるのかというふうな気持ちで見ていくか、楽観的に見ていくかの違いはあろうかと思います。  私は、民主主義的な国の制度としては、やはり濫用がなされないような歯どめがしっかりあるものでなければ、立法化というのはすべきではないと思っています。  以上です。 <0030>=坂上委員= 今、法務委員会でも議論が出ております。  と申し上げますのは、警察は盗聴したじゃないか、盗聴器を購入して、全国的な規模で盗聴をやっていたんじゃないかという指摘がありました。そういたしましたら、警察幹部がここに参りまして、警察は盗聴しません、したがって購入いたしません、こういう論理で言っておりました。  そこで私たちは、では、盗聴器を納入した業者の証言した人から、直接来てもらってお話を聞こう、こう思って、今、証人または参考人として召喚していただきたいとお願いをしているわけでございますが、意見の対立もありまして、採用することがまだ決定しておりません。  そこで、まず、予備的調査というような立場で、私たち廃案を求める議員は、警察盗聴器納入問題調査団というのを編成いたしまして、きのう、丸竹さんという方でございますが、御出頭をいただきまして、会館のところでお話をお聞きいたしました。  そういたしましたら、間違いなく百三十個、百三十ケース納入をいたしました、納入の場所というのは中野警察学校のさくら寮だ、こうまでおっしゃいました。時価三万円ですが、秘密を条件にしたものですから一つについて二十万円、こういうようなお話がありました。  そこで、私は最後の締めくくりで、あなたはそうまでおっしゃいますが、警察当局はこの法務委員会に出まして、そういうことはありませんと、そういたしましたら、質問者が委員長に質問をして、政府答弁が間違いであったらどのような対処、処罰がありますかとお聞きをいたしましたら、国家公務員法違反があるから、多分それの処罰でしょう、私的見解でございますが、こういう御答弁もありました。そういうもとでの答弁でございまして、そういう事実があったんですが、あなたの御主張は、事実認識は間違いございませんでしょうか。絶対に間違いありません、これがそのとき納入をいたしました盗聴器でございますと。そして、この盗聴器が、よそで盗聴されまして、その盗聴器を持ってきまして私が見たら、私がハンダづけをしました盗聴器でございました、こういうような証言があるわけでございます。  そこで、私は非常にこの問題は、今、濫用という問題を白取先生おっしゃいました。まさに私も、人権の心配がない、こういう処置をしてあるというようなことは、やはり一つ一つ綿密に検証されなければいけないなと思っておるわけでございます。もちろん私たちも、もう全く人権侵害の心配なし、プライバシーの侵害なしという保証がつくならば、たとえ私といえども賛成はいたします。しかし、この心配があればこそ私たちは、国民全体のお立場から考えてみましても、これはどうも賛成するわけにいかないんじゃなかろうかな、こんなふうにも思っておるわけでございます。  そして、最後に、そこにいられた方で、そこの会社に一緒に勤めておったという人が証言しました。今丸竹さんがおっしゃった証言は、間違いない、私が同じ会社にいて確認をしております、証言間違いありませんと言って、会社の人が来たなんというものだから反対の話がされるのかと思ったら、そのとおりです、こういうことで、私は非常にびっくりいたしました。  そんなような事実があるのでございますが、椎橋先生、こういう問題についてどんなふうな御認識でございましょうか。 <0031>=椎橋参考人= お答えいたします。  その盗聴器の納入の事件に関しましては、私は新聞報道を読んだだけでございますので、これはしかるべき機関で解明していただくということを私は希望したいと思いますが、確かに緒方事件というのはございました。私は、あの事件については、判決でも違法な傍受だということが出ておりますので、遺憾なことだというふうに思います。二度とあってはならないことだというふうに考えております。  ただ、人間、あるいは機関というものも、完璧なものではございません。したがって、不祥事が一つでもあればだめかということにはなりませんで、これはどの機関でも、大変恐縮ですけれども、政治家の場合でも、官僚の場合でも、マスコミでも、それぞれの分野で不祥事はございます。しかし、不祥事があったからといって、国会は要らないとか、あるいはマスコミは要らないということにはならないというふうに思います。  しかも、その量ですが、私はこれはしかとはわかりませんけれども、傍受事件については、戦後、新潟十日町事件というのがありました。それから、判例集には登載されていない事件がもう一つあったと思います。それから、その緒方事件というのがありました。判例で出てきている事例というのは極めて少数でございます。それから、先ほどの山田善二郎参考人が出された例も、傍受の事件は一件でございました。  我が国のような民主主義の社会でありますと、不祥事があれば必ずや表に出てくる。全部ではありませんけれども、その何割かは必ず出てくる。それは、諸外国におきまして、こういうときに外国でどうかというのが非常に重要なことで、欧米ではたくさんの違法な傍受というものが問題とされてきております。それに比べると我が国は極めて少ないということで、私は、そういうのがあることは許せないことだと思いますけれども、警察が信頼できないということにはならない。  七、八カ月前の世論調査でも、司法に携わる者の信頼度ということで、裁判官、検察官それから警察官というのは八〇%以上の国民が信頼しているという結果が出ておりましたので、私はそれは重要な資料だというように考えております。 <0032>=坂上委員= 白取先生、濫用という問題をお話しになりましたが、今の盗聴器納入問題について、濫用との関係においてひとつ御意見を。 <0033>=白取参考人= どんな犯罪でもそうですけれども、濫用の問題でも暗数というのがあると思います。ですから、一件から多数あるかないかということについて言うというのは、ちょっと正確なことは言えないと思いますのであれなんですが、ただ、何か一件事件が起きたときに、どういう対応をとったかということは重要なことだと思います。その対応の仕方を見て、もしかしたら暗数がいろいろあるのかな、組織的にやっているのかなという疑いを持つことはあり得るかもしれません。  それ以上のことは、ちょっと申し上げられません。 <0034>=坂上委員= 私たちが学者の先生に期待をいたしますものは、できるだけ真実はこうだというお話を承りたいと思うのでございますが、その意見が相対立すると本当に私たち国民は迷うのでございますので、先生方にもまたよろしくお願いをしたいな、こう思って聞いておりました。  さて今度は、検証として今まで五件やりましたいわゆる傍受と、今立法化しようとする通信傍受の違いでございます。  私は、ちょっと申し上げますと、五件の検証令状によるところのいわゆる傍受は、立会人も通話の内容を聞いておって、そしてそれが裁判所の許可令状に相反するかどうか、俗に言うと切断権もあったようでございますし、それから、そこにいる人がみんなその話を聞いておって、これが犯罪に当たるかどうかというようなことを審査したというように聞いておるわけでございます。  そして今の法案は、全く立会人は聞くことができない。聞いているのは捜査官だけであって、それが犯罪の必要な通信だかどうかというようなことは全くわからぬで、それでまた、切断権も立会人にはないというようなことから見まして、本当にこの法案というのは、裁判所から令状を持って検証できるというような今までのことが、さらにそれを大きく乗り越えまして、これをチェックする手段もないというようなことを私は非常に気にしておる部分でございます。  この辺につきまして、今までの検証でも十分電話の通信傍受が裁判所の許可によってできるのに、今、事改めてまたこの法案をつくらなければならないという意味はどこにあるのでございましょうか。白取先生、その辺はどういうふうにお考えでございますか。 <0035>=白取参考人= これはある警察関係の雑誌で読んだことですけれども、現在の、検証を用いた、判例による電話検証令状では要件が厳し過ぎて非常に使いにくいというようなことが言われていました。だから、そういうことが一つあるのかなと思います。  それから、現在五件あるのは、捜査の側からすると比較的パイロットケースだと思うのですけれども、相当慎重に捜査を遂げた上でなされたもので、したがって短時間の盗聴でも目的を達したということができるわけで、その五件だけからどうこうというのも、ちょっと言えないかなというような感じもいたします。  以上です。 <0036>=坂上委員= 次に、海渡先生にお聞きをいたします。  特にまた、海渡先生は人権擁護のために大変な活動をしておられることも、私は高く尊敬をしておるところでございます。  先生、この法律ができると国民一般のいわゆる人権が侵害される、プライバシーが侵害される、そういう点、もうちょっと具体的にお話しできますか。 <0037>=海渡参考人= お答えいたします。  この法案で、先ほどもお話ししましたが、対象犯罪が限定されたということになっておりますけれども、覚せい剤の単純所持というのが入っているわけですね。ですから、単純所持をしていると疑われているだけで当然、盗聴の対象となります。  それから、この法案の中では事前盗聴というのが認められるわけですね。事件を犯したというふうに疑われているのではなくて、これからそういうことをするかもしれないということで、禁錮以上の刑、これは非常に微罪が含まれていますけれども、そういうものを犯したということ、その段階で既に盗聴令状が出せる。  それから、この法案の構造をよく見てみますと、被疑者だけの電話を盗聴するというふうには法案上読めないのですね。捜索・押収の場合でも、第三者の自宅の捜索・押収というのはできます。それと同じように、犯罪関連通信が行われる可能性のある電話、その被疑者が契約している電話だけではなくて、被疑者がそこにかけると思われるような電話も盗聴の対象になり得ます。  先ほど、麻薬の密輸のような場合に、非常にこの捜査は効果を上げるのじゃないかというお話が山田先生からありました。確かにそれは考えられますけれども、逆に言うと、麻薬密輸のようなことをやる場合には、電話で連絡ということは非常に危険があってやらない。もしやるとしても、毎日のように携帯電話の番号を変えていくとか、そういう形でやるはずです。  したがって、被疑者と疑われている人本人が使っている電話というのじゃなくて、その人がかけてきそうな電話を次々に盗聴していくというような形にしないとやはり犯罪捜査の効果は上げられないということで、結局どんどん広がっていく。現実に、アメリカでも最近、年間二百万件ぐらいの電話が盗聴されているそうですけれども、そのうち八三%までが一般の人の全く犯罪とは関係のない、捜査機関によっても犯罪捜査と関係のない通話だというふうに言われているんですね。同じような状況は日本でも生まれてしまうというふうに考えざるを得ないわけなんです。  以上です。 <0038>=坂上委員= 山田先生、本当に犠牲者のために頑張っていただいて、御苦労さまでございます。ぜひまた、さらに頑張っていただきますことも期待をしながら質問させていただきます。  今は、活動家の皆様方や、それから民主主義を守るために戦った人たちに対する弾圧のお話だったように聞いたのですが、一般国民、全く一般の市民が、この法律ができることによってどんな影響が出てくるのでしょうか。その点はどんなふうに見ておられますか。 <0039>=山田(善)参考人= お答えいたします。  先ほど海渡先生もおっしゃいましたように、この盗聴法が制定されますと、盗聴される範囲というのは国民すべてに及ぶ。Aの犯罪を摘発するために盗聴器を設定して、そしてその電話で交わされるすべての人が盗聴されるわけですね。ですから、その被害は大きいと思うのです。  警察官僚出身の、自民党の国会議員になられたある方が「日本の警察」という本を書いておられます。その本の中に、一件の犯罪を摘発するのに九十九人の人たちの盗聴をした、通信傍受をした。その結果、九十九人の人たちはプライバシーが侵害されたと言って怒るであろうけれども、警察当局としては、その一つの犯罪を摘発することによって成功したんだということ。つまり、今の日本の警察は、一つの犯罪を摘発するために九十九人のプライバシーを侵害しても差し支えないといった考え方をもしお持ちであったならば、国民の受ける被害というのは大変大きいものになるのではなかろうかなと私は危惧いたしております。 <0040>=坂上委員= 海渡先生にお聞きしますが、市民運動をしている団体の方、あるいは労働組合の運動をしている方、あるいは例えば報道関係の方々、こういうような人たちは、これによってどんな影響を受けるのでございましょうか。 <0041>=海渡参考人= お答えいたします。  確かに、その人自身が犯罪を犯さなければ大丈夫だというふうに一般の市民は説明を受けているわけですけれども、例えば、その人の友人に覚せい剤を持っている人がいるかもしれない、現に持っていなくても、持とうというふうに考えていて将来持つかもしれないという段階で、その人にかけている電話は盗聴される可能性があるということなんですね。  例えば、会社の電話、報道機関の電話などは、電話機自身が非常に特殊な構造になっていて、会社の電話の構造になっているわけです。そういう場合には、ワンフロアにある一つの交換機からの電話を全部聞かなければ盗聴できないという構造になっています。報道機関の中に不心得な人がいて、覚せい剤や大麻を持っている人がいる、そうすると、そのフロア全体の、ほかの電話まで盗聴できてしまう。少なくとも該当性判断のための盗聴ができる。  そこでの記録は確かに、先ほども言いましたけれども、削除抹消しなければいけないことになっていますけれども、警察官がメモをとったり、自分の控えのためにコピーをとったりするということについての罰則は定められていないわけです。削除抹消するというふうに法案上なっていますけれども、それについての担保となる規定はないということなんですね。したがって、そこで交わされているような市民運動や労働運動や報道機関の会話についても、盗聴されてしまう可能性は否定できないというふうに考えます。 <0042>=坂上委員= もう最後になるのでございますが、この法案をつくればオウム対策に十分だ、まあ十分とまで言っているかどうかわかりませんが、相当効果があるのだ、こういうようなことを言っていますが、これはどうですか、海渡先生。 <0043>=海渡参考人= 私自身はオウム対策の問題をやっていません。私の同僚で、山口広弁護士という、宗教問題を一生懸命やっている弁護士がいるのですが、彼と最近その話をしましたけれども、少なくとも、今オウムの問題というのは、オウム真理教という団体が合法的に土地を買ったりとか、地域に進出してくるということをその地域住民の方が非常に嫌に思っているというレベルの問題なのですね。  それは、確かに住民の心情としてはよくわかりますし、今までオウム真理教のやっているさまざまな行為について、もう少し行政法規のレベル、建築基準法であるとか、お金の面での規制とか、そういうことがどうしてできなかったのかなという感じはありますけれども、少なくとも、現在提案されている盗聴法であるとか、マネロンの規制の問題であるとか、そういうものは、オウム真理教が今行っている活動、サリンをまいたりしていた時期のオウム真理教に対してだったら効果的かもしれませんが、現実はそういう暴力的な犯罪は起こっていないわけですから、現状のオウム真理教に対して、今行っている地域への進出等をとめるための対策としてはほとんど意味がないというふうに考えます。 <0044>=坂上委員= 先生方、ありがとうございました。質問もしないで失礼しましたが、お許しください。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。 <0045>=杉浦委員長= 次に、漆原良夫君。 <0046>=漆原委員= 公明党・改革クラブの漆原でございます。きょうは大変ありがとうございます。  まず、今回対象となっている犯罪は非常に広い犯罪なのですね。これはやはり必要最小限度に絞り込まなければならない、組織性だとかあるいは必要性だとかという観点から必要最小限度に絞り込まなければならないというふうに考えております。  いろいろなところでいろいろな人と話をするのですが、大変素朴な質問を受けて、例えば、ある御婦人が、子供が誘拐された、誘拐犯人の居場所はわかっているのだけれども子供の居場所がわからない、そういう場合に、逮捕するにも踏み込めない、通信傍受という方法によってその子供の居場所がわかれば子供の命が救えるのだ、そういう被害者の立場からの保護というのは認めてもらえないのでしょうか、こういう非常に素朴な質問を受けることがあります。  確かに、通信傍受法案、この法案によって侵害される憲法の通信の秘密という、これも重たい人権でありますが、一方、また、この法律をつくることによって守られる国民の生命、身体、財産、これも大きな人権だ、それをどう調整するかというのは非常に難しい問題であろうと私も思うのですね。  そういう意味で、まず、この一般の家庭の奥さんの素朴な疑問に対してどのように答えていいのか、この辺は海渡参考人と山田善二郎参考人にお尋ねしたい、こう思います。 <0047>=海渡参考人= 誘拐犯人の電話を逆探知で、例えば御自宅にかかってきたときにするということは、この法案がなくても全く問題なくできるわけですね。それがまず前提です。確かに、誘拐が起きて、その状態で、別のところにかけているかもしれないという前提で、その人が使うかもしれない電話を盗聴したい、その場合はわかりますが、その場合、この法案がなくても、非常に限定されていますし、犯人が特定されている、電話がわかっているというのであれば、検証令状でやればいいというふうに私は思います。それで十分バランスはとれると思います。 <0048>=山田(善)参考人= 素朴な御質問ですから、素朴にお答えさせていただきます。  私の孫に、おまえ、電話を盗聴されたらどうだと言ったら、嫌だなと言うのですね。それから、私の家に、二階と下の親子電話があります。孫に電話をかけると、自分がとって、もういいよと言って、下にいる私の電話を切らせます。それほど人に電話を聞かれるというのは嫌なものなのですね。その嫌なものの感情を逆なでするような法律というのはよくないと思います。  それからもう一つ、かつて警察犯処罰令の後身として制定された軽犯罪法ですね、この軽犯罪法がさまざまな形で人権侵害に使われるであろうということを恐れて、当時、国会でも議論になりましたが、その議論の結果、第四条に濫用の禁止規定というのが設けられました。しかし、この濫用の禁止規定というのは、事実上、これはもう踏みにじられて、あの軽犯罪法によって、労働組合や民主団体、あるいはまた商店街の大売り出しの広告を電柱に張ったということだけで逮捕、起訴されるといったような事件が頻発しております。  もし、この盗聴法が対象とする犯罪を限定したとしても、その枠がだんだん広がっていく危険性というのは十分あるし、濫用される危険性というのは十分ある。現実にそういうことが、私たち体験しておりますので、御理解いただけたら大変ありがたいと思います。 <0049>=漆原委員= 我が党は、この法案に対する一応の見解をまとめて、対象犯罪、これは必要最小限度ではなかろうか、我々がこう考えて、薬物関連それから銃器関連、集団密航それから組織的に行われた殺人、この組織的に行われたというのは、組織的な犯罪の処罰に関する法律で言う組織的という枠をはめておりますが、この法案を認めるのであればこの四つに限定すべきだ、こういうふうな一応の部会の意見をまとめたのですが、これに対して、皆様の御意見を賜ればありがたいと思います。 <0050>=椎橋参考人= お答えいたします。  対象犯罪を限定されるというのは、よく考えられたお考えだというふうに考えまして、一つの見識だというふうに思われます。  ただ、先ほど先生がおっしゃいました誘拐でありますとか、そういったような重大犯罪は、組織的に行われますと非常に大事な結果に至る、そして誘拐とかいいますと、これは人の生命につながる問題でありますので、そこら辺はちょっと外さない方がいいのではないかなというふうに私は考えております。 <0051>=海渡参考人= 大変御苦労されたということについては私も敬意を表したいと思いますが、薬物の中に覚せい剤、大麻の単純所持が入っているというのは、非常に膨大な数の犯罪がそこに入ってしまいますから。それから事前盗聴と別件傍受、これが入ってしまっているので、結局しり抜けになってしまう要素が強いのではないか。  さらには、立ち会い等について、今まで検証令状で認められていたような切断権、常時立ち会い、中身を聞くという意味での立ち会いがないということ。こういった点からすると、判例理論で認められてきたものよりも後退しているなという印象は否めないというふうに思います。 <0052>=山田(齊)参考人= お答えします。  対象犯罪を限定されるというお考えは、人権を維持する、守るという視点からいきますと、かなり重要な考え方だと私も評価しております。特に、通信傍受で最も重要な対象犯罪は薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航。要するに、海外と取引をするというような犯罪が最も必要性と有効性が高いと考えておりますので、これを入れられるということは非常に有益だと思います。  それから、一つだけ、重大犯罪のうち組織的殺人に限るという、これは少し狭過ぎるのではないかという気がします。  といいますのは、直接的な殺人でなくても、例えば暴力団が逮捕監禁した場合、いわゆる拉致した場合には、言うことを聞かなければ殺されるという危険が非常に高いわけです。だから、そういう、人の生命が侵害されるというおそれがあるものは、強盗致死傷も含めて、これはぜひ含めていただきたいなと思っております。  以上でございます。 <0053>=山田(善)参考人= 人権のことを考えて対象犯罪を限定するようにと考えておられるということを伺って、私は先生方の御努力に大変感謝したいと思います。  しかし、対象犯罪が限定されたとしても、全く事件と無関係の人たちが盗聴される、しかも、それが全く本人には気がつかないところで盗聴されて、その記録が警察に蓄積されていくということは、これは私は問題があると思います。ですから、先生、ぜひ、人権を尊重されるという精神に基づいて、対象犯罪限定ということにせずに、この法案を廃案にしていただくようお願い申し上げたいと思います。 <0054>=白取参考人= 現在提案されている通信傍受法案と比べますと、もちろんベターだと思います。よりましであることは間違いないと思います。  ただ、二点だけ指摘させていただくとすると、この通信傍受法案の持っているさまざまな問題のうちの一つを相当限定したなというふうに思いますけれども、残る問題はやはりあろうかと思います。  それから、限定して導入したとしても、その後そこからせっかくの限定がまた広がっていく危険性はないか、消費税じゃありませんけれども。そういうような危険性を考えると、今は、全か無か、導入するか否かという議論をしていますけれども、そういった意味の危惧もございます。  以上です。 <0055>=漆原委員= 先ほど海渡先生から立会人の切断権について御要望いただいたようでございますが、弁護士の立ち会いを認めるかどうか、これは非常に私も、捜査の適正を担保するという意味で立会人を置くわけですから、そうだとしたら、きちっと通信の内容を聞いて、そして令状をよく理解して、そして的確な処置をとれる判断能力を持った人、そして客観的な第三者である、こういう人が必ず必要だと思うんですね。NTTの職員で果たしてできるかどうか、僕はできないだろうなと思っているんです。  ただ、弁護士会がこれに対応していけるのかどうかの問題があると思うんです。捜査ですから、朝から晩まで、いつどうなるかわからない。その捜査の必要性に応じて弁護士会がきちっと人を出せるのかどうか、この辺が一番我々も議論をし心配しているところなんです。  不可能ではないのかなと、自分の経験を通してもそういうふうな感触を持っているんですが、この点、海渡先生、いかがでしょうか。それから、同じく弁護士の山田先生にもお尋ねしたいと思います。 <0056>=海渡参考人= ただいまの点は、新聞に公明党案でそういう案が上っているということがありまして、日弁連の対策本部の中で緊急に会議を開いてディスカッションしました。  確かに、我々日弁連としては、盗聴制度導入自身を思いとどまってほしいという希望が非常に強いわけですけれども、法案の審議の過程でそういう案がもし持ち上がったときには、我々も当番弁護士ということで日本全国隅々まで弁護士を派遣するという活動を現に行ってきているわけで、これからは弁護士は年間千人ずつぐらいふえていって、最近は弁護士になっても失業中というような弁護士も既に出てきております。弁護士の職域拡大という観点からも、公益的な意味での弁護士の派遣ということには前向きに取り組もうじゃないか。本当に、冗談なしにそれは前向きに受けとめようということを日弁連の中では申し合わせております。それは会長も知っておられると思います。もちろん盗聴制度を導入しろと言っているわけじゃないですけれども、もしそういうお話があったら前向きに協議に応じたいと思っております。 <0057>=山田(齊)参考人= お答えします。  現状では弁護士が常時立ち会うという余裕はないと思います。失業状態にある弁護士というのはほとんどおらないと認識しておりまして、一つの案としては、予算をつけて第三者機関をつくって、その組織が監視する、立ち会うということはあり得ると思いますけれども、弁護士がというのはかなり無理ではないかと思っています。それと、弁護士の数をふやすというのも、弁護士過疎地域にくまなく弁護士を配置するということが目的ですので、この立ち会いのために弁護士をふやすという意図はないと思います。  それからもう一つの問題点として、立ち会いというのは日本だけの制度だと私は認識しておるわけです。というのは、長期間一緒に立ち会っておりますと、やはり人間同士ですから、同じ狭い部屋に二人が二十四時間おればだんだん親しくなってくる。そういうことで監視という機能が果たして果たせるのかという疑問もありまして、それにかわる制度として、アメリカでは、スポットモニタリング、二分聞いて一分切断するというような客観的な制度を導入しておる、そういうふうに考えております。そういう客観的な制度の方が予算も伴わないし効果的ではないか、そう思っております。 <0058>=漆原委員= 日本の捜査に弁護士が立ち会うという制度はまだできていない。例えば被疑者の取り調べだ何だかんだでも、弁護士がそこに立ち会うという制度はできていないわけですね。そういう日本の今の現行法制度の中で、通信傍受の際に弁護士がそこに立ち会う、こういう制度を導入するということ、これは現行制度の中で法的整合性を欠くのかどうか。これは椎橋先生と白取先生にお尋ねしたいと思います。 <0059>=椎橋参考人= お答えいたします。  立ち会い自体は手続を適正にするために重要なことだと思いますが、憲法上の要請ではございません。ただ、法律上この事項については、立ち会いを認めるのがいいかどうかということは立法府で決められることだと思います。  今回の通信傍受につきましては、立ち会いはやはり第三者が立ち会うというのが適切でありますので、一つは、やはり捜査の秘密がございますので、捜査活動を行っているときに、余りにも弁護士さんは当事者性が強過ぎるということに、後に争う立場になる可能性が非常に強いですから、当事者性がやはり強過ぎる。そういう意味では、通信事業者であるとか公務員といったような方の立ち会いの方が望ましいというふうに考えます。 <0060>=白取参考人= 被疑者の取り調べのときの弁護人の立ち会いと通信傍受のときの立ち会いというのは、同じ立ち会いという言葉が使われますけれども、全く性質の違うものだと思います。被疑者の取り調べの場合の立ち会いというのは、いわゆる弁護権、弁護人依頼権の具体化として現在議論のあるところだと思うんですが、それに対して通信傍受のときの立ち会いというのは、弁護とか防御というよりは、捜査が適正になされるために、これは言ってしまえば中立的な立場の人であればだれでもいい。それを、例えば弁護士にということであろうかと思います。そういう点では、整合性ということは、形式的に見たら起きないかなというふうに思います。  ただし、先ほど私申し上げましたように、立会人をつけるにしても、被疑者の弁護権、防御権が不十分な段階で、そういう従来になかった強制的な捜査方法を導入することがバランスを欠くといえば欠く、その限りでは整合的でない要素を持ち込むということは言えようかと思います。 <0061>=漆原委員= 以上で終わります。どうもありがとうございました。 <0062>=杉浦委員長= 次に、達増拓也君。 <0063>=達増委員= まず、椎橋参考人に質問をさせていただきたいと思います。  椎橋参考人、刑事法に関する世界的な二大潮流として、組織犯罪対策と被害者保護が今あるということをおっしゃられました。この組織犯罪対策、中でも通信傍受を取り入れていくことについては、ほかの国々では既に通信傍受の制度は確立しているわけではありますけれども、やはり通信の秘密ですとかプライバシーですとか、基本的人権の中核的な部分との関係で問題になる。そこは比較考量の問題なのかなとも思うのですけれども、既に組織犯罪に対しての取り組みを進めている諸外国等含め、世界的にはどのように考え方として整理されているのでしょうか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0064>=椎橋参考人= お答えいたします。  世界の各国、いろいろな国で、通信の秘密というのは国民の重要な基本的人権として保障されております。ただ、各基本権も絶対無制約のものとは考えられておりません。  通信の秘密もその一つでありまして、特に、社会的にいろいろな人と人との交渉が多い場面になればなるほど、そういう性格の種類は制限を受けるということがございます。世界各国とも通信の秘密を基本権として保障しながら、しかし、組織犯罪に対応するような通信傍受の場合にはこの例外に当たるというふうに考えて許容しているという状況でございます。 <0065>=達増委員= これも椎橋参考人に伺いたいのですけれども、通信傍受をめぐっては、捜査当局の信頼性の問題との関係で我が国で盛んに議論されているわけであります。日本の捜査当局というものが、そういった通信傍受という強力な手段を与えるに足りるほど信頼できないのではないかと。  これは、そもそも日本の捜査当局、警察等が諸外国の捜査当局や警察に比べて特に信頼性が低いのかどうかという問題もありますけれども、諸外国においても、何も警察というのは、捜査当局というのは、絶対間違いを犯さないとか、決してそこには邪悪な人間はいないとか、そういう大前提で通信傍受を認めているわけではないと思うのですね。警察にあるいは捜査当局にどんどん強力な捜査手段を認めていくことについて、特に捜査当局の信頼性の問題との関係で、諸外国はどのような考え方でそういうことを進めているのか伺いたいと思います。 <0066>=椎橋参考人= お答えいたします。  相対的な問題ですけれども、一つ一つの捜査活動について、どこがこうでここがああでというふうに申し上げることは時間もありませんので難しゅうございますが、全体として見ますと、日本の警察は、先進諸国の警察に比べますと与えられている権限は弱うございます。権限は強くありません。それから、いろいろな国でよく見られますように、暴行事件でありますとか、アメリカで問題になりました事件がございましたが、あのような事件を時々見かけます。そういったような事例に比べますと、相対的にそういう事件は少ないということで、信頼性は高いのではないかというふうに私は言えると思います。 <0067>=達増委員= 組織犯罪というのは個人で対抗できるようなものではなく、組織的な犯罪の前で個人は非常に無力であると思うわけであります。そういう無力な個人が組織犯罪を前にどういう手段をとるかというときに、警察等、そういう正当な権力に頼るというのが一つあるでしょうし、それ以外に自警団のようなものをつくって組織には組織で対抗する、そういったこともできずに、死ぬよりはましということで、長いものに巻かれろということで、抵抗もせず我慢するという状況もあるんだと思います。  そこで、山田齊参考人に伺いたいのですが、暴力団とその周辺者の数、これが先進国と比べても、日本は他の先進国にないくらい数が多く、その収入もどんどんふえているということを先ほど指摘されました。これは我が国の中で余りきちっと議論されていないな、特に、最近のこの法案をめぐる議論の中できちっと出てきていないところだなと改めて目からうろこが落ちた思いなのです。  民暴をやっておられて、本当はもっと世論の盛り上がりとして、世界に例を見ない暴力団王国、我が国は治安がよい、だから欧米とは違うのだという意見もあるのですが、逆に欧米と違って異常な暴力団王国である。そういうところから、もっと市民からの何とかしてくれという要求が上がってきてもいいと思うのですが、いま一つそういう後押しが出てこないようなことを私は感じているのです。日本社会の風土的なものとして、どうも暴力団に対し長いものに巻かれろ的なところで、世論の盛り上がりがいま一つ欠くのかなということをさっきの説明を聞いていて感じたのですけれども、この点についていかが考えますでしょうか。 <0068>=山田(齊)参考人= お答えします。  我が国ではやはり和を重んずる、和をもってとうとしとなすというような特性が、国民性がありまして、余り恥を外にさらしたくない。それから、銀行などを見ますと、私の経験からいきましても、融資詐欺の件数は物すごく多いわけです。私は前に日総リース詐欺事件というのをやったことがありますけれども、約百五十社ぐらいの金融機関がトータルで千五百億の融資詐欺に遭ってだまし取られたわけですけれども、どの金融機関も告訴しなかったし、被害届も出さなかったわけです。  少なくとも金融機関、それから企業には、特に金融機関が、だまされてお金を取られたというようなことは恥ずかしい、そういうことが新聞に出ると信用が落ちるというようなところがあるのですね。だから企業も同様で、あの企業は犯罪の被害者になった、こういう被害を受けたというようなことが報道されますと、またその企業の信用が落ちる、そういうようなことを恐れるという風土が非常に強いと思うのですね。そういうところにつけ込んで、暴力団が日常的にショバ代みたいな、賛助金とか、そういうような名目でお金を集めているという事実があると思います。  それが日常的な資金源ですけれども、やはり一番大宗をなすのは覚せい剤の密輸による収益だと思います。これが日本の暴力団勢力の経済的な存在基盤をなしていると思うのですけれども、もう一つの基盤をなしているのがそういう日常的な暗数となっている企業恐喝、これがあると思っています。それがなかなか表面に出づらいという風土があるということです。 <0069>=達増委員= 引き続き山田齊参考人に質問いたしますけれども、暴力団、やくざについては、日本のマスコミ等の報道ぶりよりも、諸外国の雑誌に時々取り上げられたときの方が、非常に日本社会全体をむしばんでいて、経済社会の根本的な、構造的な問題になっているという指摘があると思うのです。日本の、諸外国にないほどの、他の先進国にない暴力団やその周辺者の存在、そしていろいろな活動をしているということについて、諸外国からいろいろ指摘とかされていることについて、何か御存じでしたら紹介していただきたいのです。 <0070>=山田(齊)参考人= お答えします。  私も前に、平成八年、住専問題のときにエコノミストに論考を書いた経緯がありまして、そのときに、ニューヨーク・タイムズだとかフィナンシャル・タイムズだとかロサンゼルス・タイムズだとか、最近でもワシントン・ポストが取材に来たりしておりますけれども、やはり海外は、日本の暴力団についてはすごい関心を持っております。  なぜこんなに、八万人、十万人近い暴力団が存在しているのに、それを規制するような法律をつくらないのか、不思議で仕方がないというような質問ですね。やはり、これと共存しているということ自体が、海外から見れば極めて奇異に映っているようです。日本社会や経済に寄生している団体で、ほとんど生産活動もせずに、他人が苦労して上げた収益をおどし取るというようなことをやっている人間が八万人もいると。  アメリカ、イタリア、特にアメリカは、以前は、こういう通信傍受法やRICO法が制定される前は、やはり同じように大勢力を持っていたわけです。ところが、通信傍受法やRICO法が適用されるに至って、どんどん数が減少していったわけです。  だから、こういう犯罪組織の存在を許さないという国民世論の形成が非常に重要だと思うのです。現在のアメリカで犯罪組織を容認するような政治家というのは一人もいないと思います。だから、犯罪組織と対決するということについて強力な法律をつくるということに反対意見を言う人はいないし、RICO法はやり過ぎだという意見もないというふうに私は聞いております。 <0071>=達増委員= 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。 <0072>=橘委員長代理= 木島日出夫君。 <0073>=木島委員= 日本共産党の木島日出夫でございます。  参考人の皆さん、ありがとうございました。  山田善二郎参考人にお聞きをいたします。  先ほど意見陳述で、緒方事件や大分県で発生した菅生事件の例を挙げまして、日本の警察は違法な盗聴や違法な行為をしても自浄の意思がないということを指摘されました。ほかの参考人からは、不祥事一つあったら警察は要らないというような、そんな針小棒大な議論はいかぬという趣旨の発言もあっただけに、ほかに具体的な、こうしたことを裏づけるような例があったら述べていただきたい。 <0074>=山田(善)参考人= お答えいたします。  警察が自浄の誠意がないというのは、何も警備公安警察に限ったのではないということを私は知りました。  それは一九九七年六月六日付の日刊警察、これは国会図書館にもありますけれども、この日刊警察で「警部昇任試験問題と解答」という例があります。これは、隣の警察署から連絡があった、おたくの警察署員が飲酒運転で事故を起こした、その際の措置の仕方について適切な解答をしろ、こういう問題です。  一つは、報道関係者の事実察知の有無を確認し、察知されていなければ報道を控えるように依頼するというのです。それから、事故の調査については、当方に有利な情報の収集にも努めよというのですね。さらには、被害者に対しては誠意を尽くせ、これは当たり前のことだと思いますが、報道対策として、組織に対するダメージを最小限度にとどめるのがこの事案処理の目的である、秘密の保持に細心の注意を払わなければならないというのです。  末端の警察官が交通事故を起こした、そのことについて絶対に秘密にしていく。ここに警察の自浄能力というか誠意というか、そういう体質がないということの一つの事実があると思います。一事が万事、そういうことだと思います。  以上でお答えいたしたいと思います。 <0075>=木島委員= ありがとうございました。  次の質問なんですが、警察は盗聴などを含んでさまざまな情報を収集します。日本の警察はそれらの情報をどう利用するのか。その情報の利用の仕方について、人権侵害に当たるような、あるいは問題に当たるような具体例をお知りであったら、ひとつ指摘していただきたい。 <0076>=山田(善)参考人= お答えいたします。  これは現在東京地方裁判所八王子支部に、鈴木亜英という弁護士さんが原告となって、国を相手に損害賠償請求の裁判を提起している事件です。  この事件はどういうことかといいますと、鈴木亜英弁護士がある方から相談を受けた。若い者三人が酒に酔っぱらってけんかして相手にけがをさせた。そして警察の取り調べを受けたところ、警察は、自分たちが身に覚えのないことについても、被害者がこうされた、こうされたと言うから、そのとおりおまえらしゃべろと言われるわけですね。そこで、その青年たちが鈴木弁護士に相談に行ったわけです。  鈴木弁護士は、憲法第三十八条ですか、規定されている黙秘権の問題について話して、話したくなかったら話さなくてもいいんだから、自分の知らないことは知らないと答えればいいんだと話した。青年たちはそのとおり警察の取り調べに対応したところ、鈴木弁護士の身元が調べられてくるわけです。その理由は何かというと、こんなくだらない事件に黙秘権を教える弁護士なんというのは変な弁護士だというのですよ。  アメリカでは、話によりますと、スピード違反で捕まった、その運転手に警察が今何キロで走ったということを質問する。その際、修正憲法第五条、黙秘権のフィフスだ、こう答えると、アメリカの警察はそれ以上質問しないそうですね。それほど黙秘権というのは重要なものであり、憲法にも規定されているものです。  ところが、その黙秘権を教えた弁護士が変な弁護士だと、一体あれはどういう弁護士だということで調べたところ、それが警視庁の訟務課に資料があるのです。その資料を警察が調べて、そして検察庁に送り、検察官がこれをまた裁判所に証拠として出すのです。  中身をちょっと御紹介いたしますと、弁護士とはさきに説明のあった三多摩法律事務所の鈴木亜英弁護士かと質問したところ、そのとおりであると回答した。本職は被疑者に対し、すべて話してあると言っても、君のやったことは云々、こうなっている。  そこで、こうなっているのですね。「鈴木弁護士に対する調査結果」。何年何月何日早大卒、そして司法試験合格、三多摩法律事務所所属。なお、警視庁訟務課等で調査の結果、右事務所は日共系であり、同弁護士も青年法律家協会に所属で、かつ党員として把握されているものである。  こういう報告を検察庁に送る。検察庁はこれをまた裁判所に訴訟資料として提出しているのですよ。  このことについて鈴木弁護士が検察庁及び警視庁に質問書を出したところ、お答えする必要はないといって、そのまま文書は警視庁から突っ返されたそうです。  これは恐らく、私は、警察がさまざまな形で情報収集をして、その収集した資料がうずたかく積もっていて、この弁護士の資料もそこに入っておる、そしてあっという間にこれが裁判所にまで提出されたということだと思うのです。  事ほどさように、日本の警察は国民の思想調査をし、全員の動向を監視する。盗聴法が通ったならば、これは大変なことだと私は思っておるわけです。 <0077>=木島委員= ありがとうございます。  三点目、質問しますが、参考人は最後のところで、この法律ができると新たな人権侵害や冤罪を生み出す危険があるのではないか、それを危惧するとおっしゃられました。具体的な例は挙げませんでしたが、もし具体的な例を挙げることができたらお話しいただきたい。 <0078>=山田(善)参考人= お答えいたします。  これは私自身も支援を訴えるためにパンフレットなどをつくった事件ですが、昭和二十九年、静岡県で発生した幼女殺害事件。  この犯人として、子供のときに脳膜炎を患って精薄になって、放浪生活をしていた一人の青年が逮捕されました。彼は非常にひどい拷問を受けたと裁判で訴えております。そして法廷では無実を訴えましたけれども、死刑判決がついに確定して、仙台拘置所から、かわいそうなかわいそうな私を助けてくださいと、自分で自分をかわいそうだといって何回も訴えの手紙を出した人です。  この事件で死刑の決定的な証拠となったのは、被害者である幼女の胸の傷、その傷が、握りこぶし大の石で殴って与えた傷であると認定されたわけです。それは、警察が言うには、本人が自白をして、自白の結果捜査をしたところ、その石が発見されたというんですが、再審開始決定になって、静岡地方裁判所で再審裁判が開かれた。そこで、実はその石は、その青年が放浪生活をしていた当時、まだ犯人がだれかわからないときに警察署の刑事部屋にあった、それを地方新聞の記者がはっきり目撃したということを供述しているわけです。つまり、犯人の自白によって証拠が発見されたのではなくて、あらかじめ証拠となるものを用意しておいて、それに自白をくっつける。こういったような事件は私たち数々体験しておりますが、一つの事件として申し上げたわけです。  平成元年、三十五年ぶりにこの方は無罪になって、そして晴れて自由の身になりましたけれども、実に三十五年間ですよ、いつ殺されるかわからない、絞首台の前に置かれたまま生活をしておったわけです。  このように、無実の者を警察が証拠をつくって有罪にしてしまうという過去の事例から見て、もし盗聴をして、その結果、例えば、あいつ片づけてやれなんというようなことを言ったとすると、殺人罪の疑いがあるといってその人がさらにマークされて、そして新たな冤罪事件の犠牲者にならないとは限らない、決してこれは誇大的な想定ではないと私は思っております。そういう点からも、ぜひひとつこれを廃案にしていただきたいと私はお願いをしております。  以上です。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0079>=木島委員= ありがとうございました。  椎橋参考人にお聞きをします。  参考人は、先ほどの陳述の中で、通信傍受法によって傍受された当事者は、裁判所に保管された記録を聞くことができる、争う道が残されている、このことを人権侵害のおそれが排除できる大きな根拠として述べられました。  私は、ここに大変な問題があるんじゃないかと思います。それは、この法の仕組みでは、傍受した会話、通話が犯罪に関連する会話として刑事手続用に傍受記録として捜査当局に保管された場合にのみ、そういう場合にのみ傍受された市民に通知がなされるわけであります。それ以外の通話はすべて、警察官によって聞き取られたとしても、犯罪に関連のない通話、まさにプライバシーが盗み聞きされた部分ですが、基本はそれは聞くことができない建前になっており、そして、仮に聞いたとしてもそれは記録から消去される建前になっているわけであります。  問題は、その建前どおりにいくかどうかが最大の問題ですが、仮にそうなったとして、そういう場合にのみ通知がされる。ですから、プライバシーが、犯罪に関連のない部分が聞き取られたとしても、一〇〇%それは本人には通知されない、そういう基本的な仕組みなんですよ。ですから、プライバシーが聞かれたとしても、その部分は一〇〇%当事者に通知がされないという仕組みなんです。  通知がされなければ、自分の通話が裁判所によって保管される記録に残っているかどうかなんというのは確かめようもないし、この法律は、そういう人に対して救済の手続は全く一〇〇%ありません。ですから、私は、先ほど参考人がおっしゃられたことは基本的なところで法の誤解があるんじゃないか、それをもって人権侵害でないというのならちょっと考え直していただきたいと思うんですが、どうでしょうか。 <0080>=椎橋参考人= お答えいたします。  先生おっしゃられたように、まず、関係のない会話は聞かないということになっております。これはしっかり守っていただかなければいけません。それは運用の上で、マニュアルをつくったり等して、どういうような形であれば守っていくのかということがこれから運用によって積み上げられていくと思います。ですから、まずそれはないということになっているんですね。  それから、対象者に通知をするというけれども、犯罪の会話をした者についてだけ通知するということです。これはそのとおりですけれども、犯罪に関係のあるものについて会話をした者について通知するというのは、これはその者に対して違法、不当な傍受がされていないかどうかということを確認することができるようにすると同時に、その後証拠に使われる可能性がありますので、したがって、裁判になった場合にそれに対して防御をしなければいけません。したがって、その方には通知をするというのは当然のことだと思いますね。  それ以外の、犯罪に関係のない会話をした方に対しては、これは何のたわいもない話もあるでしょうし、ともかく犯罪に関係ないので、余り公益といいますか、捜査の必要とかいろいろなそういう意味での必要性が余り高くない会話ですね。したがって、それは削除して終わりにしてしまいますし、そういうような関係のない会話についてまで対象者に通知をするということは、これはいろいろなコストの面で考えても、そこまでする必要はないのではないかというふうに考えます。 <0081>=木島委員= まさにこの法の建前は、犯罪に関連のない通話は聞いてはいけない、聞かないという建前になっている。しかし、それが守られるかどうかが決定的な問題なんです、最大の問題。それが先生さっきおっしゃった特定性の問題なんです。しかし、通信というのは、何がしゃべられるか、どんな犯罪事実をしゃべり出すか聞いてみなきゃわからないという根本的な問題があるわけです。  先ほど先生おっしゃられましたが、特定性の問題について、この通信傍受のことだけあげつらってはならぬ、実際は、捜索・押収でも、裁判所の令状にはこの文書というのは特定されているけれども、その文書を捜し出すためには関係ない書類みんな引っ張り出して調べてみて、ようやく特定性のある、令状が示した文書にありつくんだ、そういうことは現行法の押収・捜索でもやられているんだから、通信傍受だけあげつらうことはできない、そうおっしゃられましたね。  ということは、逆に言うと、あなたは、通信傍受の場合でも、聞くべき通信か聞くべからざる通信か、その特定性なんというのは守れないということを言っていることになるんじゃないですか。そうなるじゃないですか。だから、あなた、自己矛盾じゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。 <0082>=椎橋参考人= お答えいたします。  まず、聞かないということはありますね。それから立ち会いがございます。それからさらには、原本は裁判所が保管しております。したがって、後で何かあった場合に、これは非常に重要な問題だということであれば、原本がございますので、それとの比較対照がされて、そして何で関係ないのに聞いていたのかということになります。そういうようなチェックは可能でございます。 <0083>=木島委員= 時間ですから終わりますが、関係ないものを聞かれた当事者は、通知がないんですから、そもそも裁判所にそんな記録があるということを知らされないわけですから、全くこの法律は、そういうもので根本的なところで人権侵害救済の道が閉ざされているということを私どもは考えておりまして、廃案しかないということを我々は考えていることだけ御披露いたしまして、終わります。  質問できなかった参考人の皆さんには大変恐縮をいたしました。  終わります。 <0084>=杉浦委員長= 次に、保坂展人君。 <0085>=保坂委員= 社会民主党の保坂展人です。  まず、海渡参考人に伺います。  本委員会のこの法案審議の中でたびたび、オウム真理教がかつて起こしたたぐいまれな凶悪事件、とりわけ坂本弁護士一家殺害事件、こういうものが、あのときにこの盗聴法があれば、組織犯罪対策法があれば、こういうことが何度も議論として出てきておりますが、私は、これは話はあべこべではないかというふうに思っているわけです。  なぜなら、緒方宅盗聴事件の弁護に当たった横浜の法律事務所に坂本弁護士も属していたなどの経過もあって、あの坂本弁護士が失踪したときに、警察ではまともに捜査をやったのか。プルシャも落ちていた。ところが、誘拐あるいは殺人の疑いまで持って初動捜査をきちっとやらなかったのではないか。そのあたりのことを端的に伺います。 <0086>=海渡参考人= 私は、坂本堤弁護士とは同じ国労という労働組合の弁護をしていましたので、その関係で知っております。  彼が行方不明になったときも、新聞等に出る前にそのことは聞いておりました。その段階から、周りにいる人たちは、オウム真理教が怪しいというふうに言っていました。現にその場にはプルシャが落ちていたわけですね。しかし、結局のところ、強制捜索は全然行われない。内部から、これはオウムの犯行だというようなことを言っていた、重要な内部告発まであったにもかかわらず、そのことは全く放置されてきた。  松本サリン事件についても、地下鉄サリンの事件があった年のお正月には、読売新聞でサリンが発見されたというような報道がされていた。しかし、それでもやらなかった。  そういう非常に不可解な、捜査のサボタージュともいうべき事態が生じていて、その結果としてああいう地下鉄サリン事件という忌まわしい事件が起こってしまったわけですけれども、その関係に携わってきた弁護士はみんな、警察がなぜこんなに消極的だったのかということを言っていたということを御報告しておきたいと思います。 <0087>=保坂委員= 続けて海渡参考人に伺いますが、盗聴というのは非常に大きな問題。もう一つ、マネーロンダリングの方も、比べてみると十分大きな問題であることにおいては変わらないと思うのですね。  先ほど犯罪収益収受についてお触れになりましたけれども、未必的な認識ですか、違法性を帯びたお金かもしれないなという程度の認識で、例えば贈収賄などの犯罪もマネーロンダリングの前提犯罪に含まれているとすると、永田町の政治家が、国会議員が贈収賄容疑で逮捕された、けれども私選弁護人をつけられない。つまり、弁護人に報酬を払うわけで、あるいは着手金を払う、それ自身が犯罪収益だと押さえられたら、これは弁護人はつけられない可能性もあるという、そのあたりのことをもう少しかいつまんでお願いします。 <0088>=海渡参考人= 最近毒カレー事件というのが起きました。これは私選弁護人がついているわけですね。彼らは被告人とされている人からお金をもらったということで、新聞等にも出ています。しかし、そのお金はどこから出ているか、大変疑問ですね。保険金から出ているんじゃないか。今はそれでその弁護人が逮捕されることはありませんけれども、この法律ができればそういう弁護はできなくなります。覚せい剤の事件でも、詐欺の事件でも、窃盗でも、贈収賄でも、すべて、被告人が持っているお金が犯罪性があるお金かもしれないというだけで、もう弁護士はしり込みしちゃって、私選弁護は受けなくなると思います。そういう事態が現実に迫っているんだということをぜひ考えていただきたいと思います。 <0089>=保坂委員= 私ども、そういうふうに法務省とのやりとりで主張すると、あるいは指摘すると、保坂議員、そんなことはありませんよ、捜査機関はきちっと、ほどよくやりますよということで、問題なのは、やろうと思えばできるというところに問題があるわけで、これだけ大きな裁量権を、犯罪収益収受、あるいは混和財産ですとか、あるいは事業経営支配罪とか、ほとんど国会審議でなされていない領域ですけれども、大変問題だと思います。  ところで、もう一問海渡参考人に伺いますが、国際組織犯罪防止条約、これが今ウィーンで審議が行われているというふうに聞いています。この委員会でたびたび、日本が先進諸国の中で組織犯罪に最も甘い国、世界じゅうから非難ごうごうで、日本はなぜ盗聴法をやらないんだ、マネロン、何やっているんだ、こういう非難の声がごうごう、こういう声もあるんですが、事実、いかがでしょうか。 <0090>=海渡参考人= きょうの私の陳述要旨の最後のところにそのことを少し書いておいたんですが、四月二十八日から五月三日まで、ウィーンで行われているこの国際組織犯罪防止条約の審議というものを傍聴してきました。確かに、ここでたくさんの、盗聴の問題であるとかマネーロンダリングの問題を条約化しようということで議論されています。  私も国際会議を非常に興味深く聞いていたんですが、各国とも非常に慎重なんですね。この法律制度化というのは各国の刑事司法の原則に重大な影響がある、だから慎重に議論していきましょう。私が行ったときはマネーロンダリングの対策だったんですけれども、前提犯罪は厳しく絞った方がいいんじゃないか、組織的な犯罪に絞った方がいいんじゃないかという提案がアメリカから出されていました。日本はそれに反対している、そういう事態が起こっていました。  現実に、盗聴問題についての条約審議はこの十月に行われるんです。六月の国際会議までに間に合わせようと言っていますけれども、盗聴の審議は十月なんですね。その審議を見てからでも十分間に合うと思うんです。  ですから、国際的な批判があるからとおっしゃいますけれども、この条約の審議の動向を慎重に見守って、その動向を見きわめてから、その条約のレベルに合った立法を考えるのでも十分遅くないんじゃないでしょうか、そういう考えを述べたいと思います。  以上です。 <0091>=保坂委員= 続いて、白取参考人に伺いますが、先ほど坂上委員からの質問の中で少しあったかもしれませんけれども、この委員会で私は、いわゆる違法盗聴の事実、これを関係する警察当局がどういう姿勢で答弁するのかということをずっと注目してまいりました。何回も答弁修正をして、去年のちょうど五月に、盗聴と反省という二文字を入れた一応当時の警備局長の答弁ができ上がったわけですが、どうもそれが、何回聞いても、この前の委員会質疑でも警察は、盗聴器を警察に納入したということを言っているけれども、一回もそういうことはないんだ、警察というのは盗聴と言われるような行為は行っておらないので、そうした機材を購入したこともないと、ずっと繰り返し、やっていない、やっていないということなんですね。  こういう答弁姿勢だと、一体暗数の部分でどの程度なのかなということを我々は一番心配をしているんですが、その点についてお尋ねします。 <0092>=白取参考人= ちょっとお答えしにくいんですけれども、恐らく問題の大きな一つは、やはり司法警察、行政警察というふうに二つに分かれているうちの、行政警察の部分でいろいろ盗聴がなされているんではないかという疑いが持たれていて、それについて十分な説明がなされていないという状況だと思います。  立法の問題にしても、司法警察で例えば一定の要件のもとに盗聴がもし認められたとしても、それが警察の情報なりデータの蓄積として、もしかしたら行政警察としていろいろ使われるのではないかというような懸念がやはり払拭されない、そのあたりに問題があるのかなというふうな、これは感想でございます。 <0093>=保坂委員= 続いて、白取参考人に伺いますが、通信傍受というのはこれで日本で初めてなんだという声もありますが、これはそうではなくて、検証令状における傍受、いわゆる電話盗聴による捜査、これは行われているわけですね。そうであるとすれば、薬物対策における電話盗聴、通信傍受という、ここのところをきっちり検証して、これがどういう効果があるのか等をきちっと議論する必要があると思います。  昨年、白取参考人のお話を伺った際に、後に裁判になった検証令状における傍受テープを聞かれたチャンスがあられたという話を聞きました。実際、そういう生の現場でのテープ、あるいは現状はどういう問題点を含んでいるのか。そこを押さえた上でさらに、立会人等が非常にハードルが低くなるこの法案の問題点について伺います。 <0094>=白取参考人= 旭川の事件について、録音テープをたまたま聞く機会がございました。そのときに感じたことなんですけれども、今回の法案でも、該当性判断の傍受ができることになっています。それは、犯罪に関係あるかないかを判断するための傍受です。しかし、これは現実には極めて難しいなというふうな印象を持ちました。  というのは、例えば、まるで先輩と後輩の会話のような極めてざっくばらんな、気さくな会話が一分ぐらい続いた、あるいは二分続いた、それが突然、がらっと覚せい剤の売買のビジネスライクな会話に変わったりすることがあるんですね。そういうことがあるということがわかれば、いつまでたっても、おっかなくて捜査官は切れないんじゃないかなというふうに、正直私思いました。  そういった点で、犯罪に関係ある会話とない会話を区別することができますよというのは、楽天的過ぎるのではないかなというのが私の感想です。 <0095>=保坂委員= 白取参考人にもう一点伺います。  刑事司法の根幹を変更するような、特にマネーロンダリングの規定においても多々問題点がある。例えば、この委員会でも出た議論ですけれども、窃盗は時効があるわけですね。しかし、その時効切れの直前にお金を天井裏に隠したというと、隠匿罪というようなことになる。そういうふうにして時効が事実上延長されていく。あるいは、盗んだ金を飲食に使って散財をした犯人と、そうではなくて、全然使わずにこれをとっておいた、これは裁判所の情状においても、散財した者の方が心得がよろしくないというふうになったのかと思いますが、今回のマネロンの規定では、そういう意味ではかなり根幹を揺るがす問題が出てくるのではないかと思いますけれども、そのあたりについて、御説を伺います。 <0096>=白取参考人= ちょっと専門的な話になるんですけれども、今の日本の刑法というのは、悪いやつだから行為者に着目して処罰するのではなくて、悪い心情を持っていても、悪い性格であっても、そういうことを問うのではなくて、実際にその行為者が何か犯罪を犯したら、その行為をつかまえてその部分だけ処罰することになっているんです。ところが、今回のマネロンとか、没収関係もそうなんですけれども、どうも一度悪いことをしたやつについてはどこまでも追及して、財産についてはどこまでも没収しよう、あるいは別の犯罪を成立させてという形で、行為というよりは行為者に注目した立法になっているような気がしてしようがないんですね。  そうすると、これまでの刑法の理論でいうと、不可罰的事後行為といって、財産犯を犯したら、その犯した窃盗なり恐喝で処罰されればそれで終わったものが、その後きちょうめんにそれをたんすに預金したりすれば、そのこと自体が別に犯罪になってしまうということになると、これまでの刑法の枠組みが随分狂ってしまう、そういう問題があろうかと思います。 <0097>=保坂委員= 海渡参考人に伺います。  今のマネロンの規定もしかりです。これだけ重大な、通信傍受だけでも大きな問題ですけれども、ようやく国民の間にも関心が広がってきた、何が起きているんだろうと。それから、疑わしい取引を金融機関が届け出る義務、これも新しく、法制審議会の中にも盛られていないことが入ってきた。これも影響を受ける人は大きいですよね。  こういう意味で、これまでごらんになってきて、国会審議がどの段階に達しているか、十分行われているかどうかを含めて、最後に、特にマネーロンダリングの点について御意見を伺います。 <0098>=海渡参考人= 私、ずっと国会の動向は注目しておりました。それで、盗聴制度についてはかなり突っ込んだ議論が行われるようになってきて、逆に言うと、むしろ問題点が明らかになってきている。立会人が中身が聞けないとか、そういった点まで明らかになってきていて、これで本当に人権侵害を防げるのかという問題がはっきりしてきたと思うんですね。  マネーロンダリングの点については、これは議論が非常に不足しているなと。これは本当に国の司法を揺るがすような大問題なんです。本当に私、驚きましたけれども、世界じゅうの五十カ国からの代表が参加して、三日間朝から晩まで議論してもまとまらないんですよ。現実に案はまとまりませんでした。次の回に持ち越したんですね。それだけ具体的に議論しなければいけない問題があるのに、この日本の国の国会の中で、やはりこの問題を徹底的に議論してほしい。国の刑事司法はどういう制度をつくるか、マネーロンダリング自身は、確かに麻薬については現実にもう実施されているわけです、それがどういうふうに実施されてきたのか、そこに問題点が浮かび上がってきている点がないのかどうか。  先ほど申し上げました弁護人の依頼権の問題や、金融機関に取引の届け出義務を課す、これ自身は、きょうの私の付録資料にも入れておきましたけれども、アメリカでは同じような制度をつくろうとして、産業界の方から反対が強くて、市民団体ではなくて銀行などの産業界からの反対で、結局この金融機関の届け出義務は撤回されているわけです。  そういう恐ろしい制度を、日本の銀行さんというのはなかなか余りそういう意見が言えないんでしょうけれども、それだからといってそういう制度を導入したら、金融秩序自身を乱してしまうわけですね。市民が銀行を信頼してお金を預けなくなってしまうかもしれない。それだけ重大な問題をやはり議論すべきです。これだけ日本経済が、金融秩序というものが脅かされているときにこういう制度を導入していいのかどうか、金融機関の人たちにも参加してもらって議論してほしいなというふうに思います。 <0099>=保坂委員= 時間に限りがありまして、お二人の参考人にしかお聞きできなかったことをおわびして、私の質問を終わります。 <0100>=杉浦委員長= 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十六分散会