午前九時三十三分開議      ――――◇――――― <0001>=杉浦委員長= これより会議を開きます。  第百四十二回国会、内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本有二君。 <0002>=山本(有)委員= この組織犯罪対策に大変重要な資料となるのが、私は、イタリアにおけるマフィアの跳梁ばっこ、それに対するイタリア政府のとった措置、そして現在どうなっているか、こういう一つの流れ、外国の例、これを日本にもやはり当てはめてみて、さて今日どうするか、こういう検討が必要だろうというように思います。  そこで、警察庁の林刑事局長にお伺いいたします。  イタリアにおいて、マフィアによる治安関係者への襲撃事件が発生しておったわけでありますが、一九九三年にアンドレオッチ元首相がマフィアとの共謀容疑で告発されるなど、政府中枢にまでマフィアの影響力が及んでいたようでございます。イタリア治安当局による強力な取り締まりが行われていると現在認識しておるわけでございますけれども、日本警察として、このイタリアの問題についてどう認識されておるのか、お伺いいたします。 <0003>=林(則)政府委員= お尋ねのイタリアにおけるマフィアの問題というのは、詳細は承知しておりませんけれども、大変憂慮すべき状況にあり、治安当局による強力な取り締まり等の諸対策が実施をされておると聞いております。  イタリアだけでなく、諸外国におけるそれぞれの組織犯罪が跳梁ばっこしており、組織犯罪が国家、社会に及ぼす影響の大きさと、組織犯罪対策の重要性というものについて、イタリアの例は再認識をさせる格好の実例である、かように考えております。 <0004>=山本(有)委員= そもそもマフィアというのはどういうものかを、御説明というか、ちょっとお知らせさせていただきたいと思います。  一八六〇年、ガリバルディというのがイタリアを統一いたしましたが、これはイタリアの北部中心の政権でございまして、南部にございますシチリア島、このシチリアでは、必ずしも北イタリアに服従するものではございませんでした。  そこで、シチリアは、イタリア政府に対して自治権を申し立てて、一種の自治地域ができたわけでありますが、どうしても北イタリアがシチリアをきちっと統治することができなかった原因が、マフィアでございました。  古いこの時代のマフィアは、シチリア人の生活に深く入り込んだ、特に強固に組織化された犯罪集団、こう定義づけられておりまして、この段階では、マフィアというのはイタリア自治圏の主たる行動隊というような位置づけでございます。  それが、ムッソリーニの時代になりまして、マフィア大量検挙に移ります。そして、マフィアも、シチリアのこういう人たちも、一応中央政府に屈服したかに見えましたけれども、第二次世界大戦後、ムッソリーニが敗れるに伴いまして、アメリカが、何とシチリアにみずからの国のギャングを送り込むわけでございます。  それはすなわち、アメリカは、有名なラッキー・ルチアーノを含む四十余人の名立たるアメリカのマフィアギャングを、米国での刑期を科すかわりにシチリアへ強制送還したんです。イタリアに戻った彼らは、アメリカでの経験を生かして、古いシチリアの組織犯罪を近代化、国際化した。コーザノストラの誕生である。そして、疑いもなく新しいマフィアが息吹いた、こういうわけでございます。  ちなみに、「シチリア・マフィア」という本がございます。毎日新聞から発行されておりますが、この定義によりますと、伝統的マフィアというのは、売春、賭博、みかじめ料を経済基盤としておって、麻薬取引を厳禁しておる。そして、暗黙のおきて、死のおきてと言われますが、オメルタというものを相互に厳守して、兄弟あるいは仲間を絶対に裏切らない、こういう鉄則がございました。  これに対して、いわゆるコーザノストラ、アメリカから帰ってきたシチリア・マフィア、新しいマフィアは、アメリカ流の経済基盤を基礎といたしまして国際化し、それまで禁じられていた麻薬密輸を開放し、イタリア、米国を中心とする国際的犯罪組織に成長して、いわゆる死のおきて、オメルタのおきては無視、兄弟を殺し、反マフィアの公的機関の人物と対決する、いわゆる殺人集団と麻薬密輸、こういう国際的な暴力装置として、これが今日までイタリアの国家中枢を巣くってきたわけでございます。  それで、今我々がマフィアというのは、コーザノストラ、すなわちラッキー・ルチアーノを中心としたアメリカ・ギャングに端を発するこうしたシチリアの犯罪集団でございますが、大変ゆゆしい事態がイタリアで発生いたしました。  それは、一九九三年、わずか数年前のことでございます。二月十一日、元首相のベッチーノ・クラクシ、これは社会党党首であります、これが辞任して、贈賄罪で起訴されております。その翌月、三月二十七日、前首相のジュリオ・アンドレオッチがマフィアと共謀していたとして、パレルモ地方検察庁が告発しております。いずれも有罪でございます。  すなわち、クラクシもアンドレオッチも、かつて野党、かつて与党、そういう国家の中枢人物が、政党が違うといいましても、いずれの機関、野党でも与党でも、すべてがマフィアと何らかの形でつながっていたという事実がここで明らかになったわけであります。  一九九二年の三月十二日、アンドレオッチ首相の補佐官、サルバトーレ・リマというのが、パレルモ郊外の彼の別荘で射殺されました。そして、四月五日、すなわち三月十二日の翌月、選挙がございまして、キリスト教民主党が大敗いたしました。すなわち、この事実はどういう事実かと申しますと、これは、サルバトーレ・リマがマフィアと国家中枢とのパイプ役をしておった、そのリマがマフィアに殺された、そしてキリスト教民主党が大敗した。  私は、実はイタリアというのは政治がマフィアを使っておった、こう思ったわけでございますが、逆でございました。マフィアが政権政党を捨てることによって、その政権政党は選挙に大敗をしてしまう、こういうような事態が起こったわけでございます。すなわち、イタリア国家権力、それは、警察権よりもあるいは検察権よりも、それよりも強い力をマフィアが実は握っておったということがこの事実で明らかになったわけでございます。このことは、世界の各国、G7あるいはG8、先進諸国という中で起こった事実でございまして、他山の石として、我々が漫然と手をこまねいてこうした世界の趨勢を傍観するわけにはまいりません。  そこで、もう一つお伺いをするわけでございます。  イタリア・マフィアは、本国のみならず、米国にも進出しておるわけでございますが、我が国の暴力団、これもまた国際化している、こういうように言われますが、日本の暴力団との結びつきはいかがでございましょう。 <0005>=林(則)政府委員= こうした犯罪組織は、薬物等の密輸事犯でありますとかあるいは密入国事犯に見られますとおり、国際化の進展に伴い、しばしば国境を越えて犯罪を敢行しておるわけであります。  御指摘のイタリア・マフィアについては、現在、我が国における活動実態というものは我々としては把握しておりませんけれども、各国それぞれの犯罪組織が国境を越えて活動しておるのが現状でありまして、将来的には、こういったものも暴力団と結びつく等して、イタリア・マフィアも含めて我が国に触手を伸ばすであろうということはあり得るというふうに認識をいたしておりまして、そういう認識に立って、関係国と緊密に連携しつつ、十分な警戒を行う必要が現実にあろうというふうに考えております。 <0006>=山本(有)委員= この毎日新聞社から出た「シチリア・マフィア」というのは、アレキサンダー・スティルという、ロサンゼルス・タイムズに記事を書いた人が書いた本でございます。また、この人が書いたこの「シチリア・マフィア」という外国の本を訳した人が松浦さんという人でございますが、この松浦さんが訳した後書きがございます。「程度の差こそあれ、ヤクザを国民的英雄に祭り上げ、映画、演歌、浪曲、講談などで、その行為を容認し、美化する日本の気風には、シチリア社会と似た悲しい部分がある。」そしてまた、彼がつき合ったイタリア移民の親友がいる。「彼がマフィアのボスを語る時、そこには日本人が清水次郎長や国定忠治を語る時のような、英雄視する部分があるのに気付く。政治や司法が無力で頼れない時、ヤクザやマフィアに市民が助けを求める気持ちが湧くのだ。」こういうように、日本人の気質とイタリア人の、特にシチリア人の気質、そういうものをあわせ比較しながら、日本にもマフィアを受け入れる要因が国民の中に、心の中にあるのではないか、こういうような問いかけをしておるわけでございます。  そこで、イタリア・マフィアと我が国の暴力団と比較した場合、同質の犯罪組織と見ていいのか、あるいは異質のものと考えていいのか、これを他山の石と単純に考えていいのか、その点、局長にお伺いいたします。 <0007>=林(則)政府委員= お尋ねの、イタリア・マフィアと我が国の暴力団を比較いたしました場合、国情、風土等が違いますけれども、組織維持や経済的利得のためにはいとも簡単に殺人等の重大犯罪を敢行する、そして、ともに国民生活の経済社会の中へ浸透していっておる、他の犯罪組織と、他国の犯罪組織とも結びつきを行う、そして、先ほどお尋ねにもありましたように、薬物、銃器等の取引へ皆進出しておる。そして何よりも、強い団結を誇る非合法な、本当に結社をなしておるという点については、共通の性格を持っております。  その一方で、イタリアでは結社罪等の規定もあるということで、従来よりイタリア・マフィアなどは組織が地下に潜行しておる。他方、我が国の暴力団というのは、特に平成四年の暴対法を施行する前までは、町じゅうにこれ見よがしに看板を堂々と掲げ、事務所の中には構成員の名簿をずらりと並べるというように、割合、組織を公然と社会の中に見せておったということで、その点がやや異質かなという感じがしたわけであります。  しかし、暴対法施行後、我が国暴力団におきましても、組織防衛のために、その他いろいろな目的を持って、組織が次第に潜在化するという動きが見られるという点では、やはりまた、他国の、とりわけイタリア・マフィアと同質の、相通ずる要素というものも次第に出てまいっておるというのが現状でございます。 <0008>=山本(有)委員= ある人が、私はリンゴはいいと思うが、ナシはひきょうだと言った人がございます。なぜナシがひきょうかといいますと、ナシは知らないうちに中心から腐っております。リンゴの場合は外側から腐ります。したがいまして、リンゴであれば腐っていることが早期にわかるので、それを切除すれば、やがて健全な、食べられるリンゴになります。しかし、きれいなナシと思っていざ割ってみると中が全部腐っておって一つも食べられないという場合が、この果物の例で多い。犯罪もそうでありますし、もし国家中枢にまでマフィアの権力が及ぶならば、我が国はナシ化するわけでございます。  そこで、現在、警察庁で押さえておる限り、暴力団が、選挙、政治、こういうものに介入しようとして、いわばナシ化させようとする実態があろうと思いますが、こういったことの危険性、認識についてどうお考えか、お伺いいたします。 <0009>=林(則)政府委員= 私どもの把握しておりますところでは、暴力団は今のところ、利権を求めて、主として地方政治レベルへ介入する、中には、地方公共団体の市長等と癒着したり、あるいは今度は逆に、政治家を標的にしてこれを襲撃するというような事件を現在でもしばしば起こしているというのが現状でございます。  例を若干挙げさせていただきますと、これはたしか検察庁で検挙された事例であったと思いますが、不動産会社の社長の依頼を受けて、農協から同社に対する融資の継続のために必要な書類の発行を和歌山市長に働きかけて、その見返りに現金を受け取った市議とともに、山口組系の直系組長があっせん収賄罪で検挙された、こういうような事例でありますとか、あるいは今度は襲われた例としましては、御案内のように、埼玉県嵐山町において発生した、場外舟券売り場の建設に反対していた町議、町長に対する襲撃事件について、稲川会傘下の組織の組長等が検挙されたというような事例がございます。また、衆議院選挙その他の選挙において、暴力団組員が買収あるいは選挙監視者に対する暴行を働いたというようなことで検挙されたという事例がございます。  かつてに比べると、日本の暴力排除意識というものの、ずっと一貫してそれを進めてきたせいで、政治への介入というのは、我々が把握する限りでは、今のところ薄いのではないかというふうに感じております。 <0010>=山本(有)委員= アンドレオッチの仲間でございます、やがて殺されるときには首相補佐官になるサルバトーレ・リマ、シチリアの首都でございますパレルモの元市長でございます。そしてまた、やがて市長になるビト・チャンチミーノというのが、それぞれ一九五九年から六四年、まだまだ若かりし彼らでございました。  そのときに、パレルモで、公共事業担当、これの報告によりますと、五年間でパレルモ全体四千件の建築許可が出されました。すなわち、民間工事もこれに含まれております。驚くべきことに、二千五百件、四千件のうち半分以上が、何の建築業の経験のない三人の業者に渡されておった。これから、いわゆるアンドレオッチがやがて上り詰めて首相を六回も、そしてキリスト教民主党の党首になるというような初期段階でございます。すなわち、シチリアの公共事業をえさに、だんだんとその勢力をローマまで伸ばしていく、こういう経過がございました。  そのことを考えたとき、日本の暴力団も公共事業や産業廃棄物処理に関与しているのではないか、既にこれに入っているというような新聞紙面を見ます。その実態についてお伺いいたします。 <0011>=林(則)政府委員= ごく最近の検挙事例を見ますと、公共事業に関しまして、地元対策費等の名目で恐喝あるいは予定価格の教示を強要しての競売入札妨害、それから下請参入への強要というような、御指摘のような公共事業に関連して暴力団等の多様な犯罪が見られますほか、産業廃棄物処理業に関しても、無許可営業でありますとか、関連事犯が見られます。  警察といたしましては、取り締まり、暴力団対策法の活用等のほか、関係機関それから業界団体等と緊密に連携して、おっしゃるような状態に立ち至らないように、全力を尽くしてこういうものをこういったところから排除してまいりたい、かように考えております。 <0012>=山本(有)委員= 暴力団対策法が施行されましたが、その後の暴力団の構成員あるいは準構成員の数の推移、組織についてお伺いいたします。 <0013>=林(則)政府委員= 暴力団の構成員及び準構成員の総数というのは、昭和三十八年にピークに達しまして、十八万四千人ばかりいたわけであります。その後、本当に一貫して徹底した取り締まりを続けてまいりまして、漸次減少し、暴力団対策法の施行後は、約八万人前後で推移しておる状況でございます。  ただ、暴力団は、暴力団対策法施行後、団体の名称等の記載された看板を撤去するとか組事務所内に掲げておった名札等を取り外すとか、それから企業の形をとって、関連企業を用いた資金活動を活発化させるとかいうような状態にございます。そういう状態でございますので、実態を隠ぺいしようという傾向が、先ほども申しましたように、大変強まっておる。したがいまして、その行動もより巧妙になってきておるということであります。  とりわけ、一言で言いますと、彼らがある程度限られた世界で活動しておったものが、一般社会、一般経済取引社会へ介入してくるということが非常に強まっておるというのが現状でございます。 <0014>=山本(有)委員= 林局長、現在八万人という数でございますが、この数は多いと思われますか、少ないと思われますか。日本国家の中で、やくざ、広域暴力団含めていわゆる暴力団という人たちが八万人という数は、多いか少ないか。これは、私見、主観で結構でございます。 <0015>=林(則)政府委員= どういう基準で多い、少ないかを言うは別といたしまして、少なくとも、公然と国家の法に従わない、別の論理で動く組織が万単位で国家に存在し、そして非常に大きな活動をしておる、一見して見えないところで社会に大変な害悪を及ぼしておるというのは、近代国家としてやはりゆゆしい問題であるというふうに感じております。 <0016>=山本(有)委員= 実は、この毎日新聞の本によりますと、マフィオソというと、これはイタリア語で名誉ある男という意味だそうです。そして、同時にマフィアの組員のことを言うそうでございます。名誉ある男が組員なんです。このマフィオソというのが、シチリア島は五百万人の人口だそうですが、一万人いるそうです、最盛期に。一万人ですよ。つまり、五百人に一人がマフィアであるというこの島は、世界を席巻しました。そして、世界の犯罪史上特筆すべき事件を毎日起こしました。  さて、五百人に一人、こうなった場合、日本に八万人いるとすると人口どれだけになるか。これは、逆算しますと四千万人になります。四千万人というと、この首都圏と言われるところが三千二百万、近畿の人口密集地域を合わせますとちょうど四千万ちょっとです。そうすると、八万人が大都会を中心に渡世を送っている、生活をしている。こういうことになりますと、私どもの四万十川の田舎にはそんなにやくざはいませんよ。そう考えると、ほぼシチリアに匹敵する、この大都会にやくざが今日日本にいるというこの現実に対して、私は大変な事態だと思いますが、局長、いかがですか。 <0017>=林(則)政府委員= おっしゃるとおりであります。  先ほども申しましたように、こういったものはさらに、本人だけではなくて、本人に周辺部をつくっていく。そして、組織をなしておりますだけに、検挙されても検挙されても次から次、予備軍と申しますか、そういう者がそういう組織にまた加入していく。あるいは、一つの組織がつぶれても、そういう組織が、核になる親分がおれば自然に集まる、そして社会治安を乱すということでありますので、まさに今先生が御指摘になったとおりであろうというふうに思います。 <0018>=山本(有)委員= 実は、イタリアの国家は現在正常化されております。マフィアに侵された政治家は、今は一掃されたというようにこの毎日新聞の本は書いてあります。  その一つの大きな出来事の中に、マフィア大裁判というのがございます。一九八六年二月から一九八七年十二月まで、首相もマフィア、政治家もマフィア、市長もマフィア、こういう中でどうやったんだ。それは、キリスト教民主党の一部正義派、そして検察官と裁判官、これが徹底的に思い切った措置を講じていったというマフィア大裁判、これが一つのイタリアのターニングポイントになります。  国民は、ジョバンニ・ファルコーネそしてパオロ・ボルセリーノという検事長、この二人の検事長を、まるで昔の長嶋か王、あるいは今の松坂かイチローというぐらいの国民的人気で支えました。とにかくこの二人の検事を守り立てました。そこで、このマフィア大裁判を行うのにこんなことを実はしておるわけでございます。大裁判の法廷をつくる事実でございます。  ウッチァードーネ刑務所の一角に建てられた新しい法廷はハイテク技術を使った巨大な建造物で、大きなスポーツスタジアムの広さがある一大法廷であった。数百人の容疑者を収容するため大きな鉄格子の檻三十個が、うしろの壁に沿って半円形に並べられ、全員が前面の判事席を見られるように配置されていた。床全体に明るいグリーンのカーペットが敷かれ、あたかも世界最大の球突き台のように見えた。中央には数十の机が並べられ、そこに数千人の弁護士、検事、証人が交替で座ることになる。二階にもやはり数千の席が、報道関係者と傍聴者のために作られていた。建物はバズーカ砲弾やミサイル攻撃にも耐えられるように鉄筋コンクリートの厚い壁で作られ、建物の周囲を有刺鉄線で幾重にも囲み、正面入口には戦車が一台、昼夜を分かたず警護することになる。 戦車を使って、しかも、これは開廷日には約三千人の兵士がこの建物の周囲に張りついておった。  これですよ。国や検察庁や裁判所がここまで徹底的にやるんですよ。八万人検挙して、八万人裁く法廷はありますか。我が国も、八万人の人たちを検挙、起訴して思い切りやったら、それはもう、小渕内閣がその支持率がちょっと上がったとかなんとかいうような問題じゃないですよ。我々が本当に安心して暮らせる日本になる。ですから、ここぐらいまで頑張ってほしい。  また、起訴状は八千六百七ページ、判決は、いよいよ一時間三十分にわたって行われて、三百四十四人のマフィアの親分が有罪判決を受けた。そのことによって、麻薬で死んだ人たちが一九八五年には二百四十二人になった。ところが、さっき言った中枢が腐っていますから、やがて一九八九年にはまたもとどおりになって一千人を超えているが、とにかくこのマフィア大裁判によって、イタリア全体の麻薬で死ぬ者が五分の一になったというようなことがあったわけでございます。  そこでもう一つ、私がともかく言いたいことがございます。  その検事長、こういうマフィア大裁判を指揮した二人の検事長、ファルコーネとボルセリーノ、やがて一九九二年五月二十三日と七月十九日に、夫婦ともども爆殺されます。皆もうそれで終わり。ところが、十万人の反マフィアデモが、シチリアのみならず、ローマで行われるわけであります。これに至りまして、マフィア対策法ができるわけであります。これが組織犯罪対策法、今日の日本のこの法律でございます。これによって、反マフィア証言者には手厚い保護が行われる、マフィオソには重い罪状が告げられる、マフィア裁判は迅速化される、そしてシチリアには七千人の軍隊が派遣される、こういう法律ができ上がりました。そして、このことによって、この二人の検事長を爆殺した首謀者を解明することができた。  そのくだりを読ませてもらいますと、警察はまず、ボルセリーノの「母親の電話に細工をし、九二年七月の午後、ボルセリーノの到着時間を盗聴していた電話技師を逮捕した。」それからです。その逮捕によって、アントニオ・ジョーエというマフィアの殺し屋の一人を挙げた。警察が数カ月間追っていた。彼のアパートに盗聴器をつけ、ジョーエがファルコーネの爆破事件のことを仲間に話した、これによって全部解明して、イタリアの中枢の汚職を一掃した。つまりこれは、ワイヤタッピングではなくてバギング、会話傍受でございます。住居侵入して会話傍受する。我々はこんなことはいたしません。通信傍受だけで足ります。しかし、とにかくイタリアのマフィア一掃にはこういう手荒なことも行った。  我が国にはシチリアと同じ八万人の暴力団がいる。この事実をもって、我々は、どうしてもこの組織犯罪三法を実現しなきゃならぬというように思うわけでございます。  以上で終わります。 <0019>=杉浦委員長= 次に、福岡宗也君。 <0020>=福岡委員= 民主党の福岡宗也でございます。  私は、提出三法のうち、組織的犯罪について、十一の罪について法定刑を加重する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。  ただいまの御質問によりまして、イタリア・マフィアの恐ろしさというのは私も十分に理解することができました。しかしながら、これは本当に世界でも特異な現象でありまして、我が国は世界に冠たる、治安が最も安定しておる国という評価を受けているわけでございますので、これと一律に論ずるということはまさにできないんだというふうに考えております。  それからさらに、本法の目的の一部に、暴力団の不法行為の対策並びにカルト集団であるオウム真理教の凶悪事件に対する対策という問題が含まれていることは認めますけれども、それに対する限定というものはほとんどないという点と、さらに問題なのは、それ以外の、不法な目的でないところの団体、労働組合、市民団体、または会社なんかもそうでありますけれども、そういった団体にまで適用の可能性が十分にある法案であるということが問題であるわけであります。  そして、肝心の暴力団対策またはオウム真理教対策というようなものがこの法規によって万全を期することができるかといいますと、決してそんなことは期待できません。法定刑を、組織的なというような要件を加えて、下限を上げたり上限を上げたりするというようなことによって対抗できるはずないわけであります。防げるわけないわけであります。  したがいまして、そういう名のもとに、善良なというか、不法な目的のない、正当な目的を持った団体の人たちがたまたま構成員としてそういったような行為を犯してしまったという場合に、むしろ適用が広くされてしまう危険性の方が多いという点をまず指摘を申し上げておきたいわけでございます。  それから次に、私は、この問題について、平成十年の五月二十二日に、反対をするという立場から質問を既に一回いたしております。これは一年も前のことでございますので、そのときの基本的な立場を若干要約して申し上げて、これを前提として、追加して、数点について質問をいたしたい、かように考えております。  本法案は、まず、殺人、身の代金目的略取、常習賭博を初めといたしまして、十一の罪について、犯罪行為が団体の活動として、これを実行する組織によって行われたときは、団体の不正な権益を維持拡大する目的で行われた場合には、その犯した罪の基本的な犯罪の法定刑を、十一の罪全部について包括的に加重をしようとしておるものであります。すなわち、組織的という全く同一の構成要件を基本的な罪の構成要件に付加することによって一括して法定刑を加重しちゃおう、こういう便宜な規定になっておるわけであります。そこには、組織的に罪を犯した者は、個人的に犯した者、もちろんこの中には共犯の者もありましょうけれども、こういった者と比べてその違法性が高い、すべて高いんだという短絡的な評価論というのを前提にしておるわけであります。  しかしながら、刑の量刑というものの重要なメルクマールというものは、まず、個人がどのような立場でそれに関与したかどうかということであります。組織的に行われた犯罪でありましても、その関与の仕方が、首謀者であるか、それとも付随的、無理やりさせられたのかという個人的な非難可能性、責任論というものが量刑の主な基準というふうになっていることは、具体的事件では明白であるわけであります。この点の評価というものが全く欠落をしていて、組織的というだけで短絡的にすべて悪いんだ、違法性が高い、こういうことになっております。これがまず間違いであります。  それからまた、我が国の刑法典の基本的な構成に著しく反しておるのではないか、こう考えるわけであります。すなわち、我が国の刑法というのはどうなっているかといいますと、それぞれ、生命、身体、財産というような保護法益ごとに罪を形成して、構成要件を定めておりまして、その保護法益を侵害する行為というもののみを単純に明快に構成要件として規定をしておるわけであります。例えば、殺人罪については「人を殺した者」、窃盗罪については「財物を窃取した者」、こういうわけであります。  そして、それが組織的に行われたかどうかということ、計画的に行われたかどうかというようなことの犯罪の態様は全く犯罪の成否と関係のない、構成要件としてはなっていないわけであります。そして、このような組織的とか計画的等の、また偶発的であるとかいうような、こういったことは、裁判官が具体的な事件の裁判において刑を盛り込むとき、量刑をするときの情状事由として、具体的な言い渡し刑を決定すればよい、こうされておるわけであります。  そのために、我が国の各罪についての法定刑は、悪質な場合もあれば本当にかわいそうな事例もあるということで、幅は極めて広く、他の国に例を見ないぐらい広くなっているわけであります。殺人罪等は、下は三年から無期懲役から死刑まである、窃盗も、恐喝等の財産犯も十年以下ということになっているわけであります。これは、ドイツの最高刑五年でありますけれども、こういうようなものと比べても倍以上の幅広さを持っております。  したがって、この構成要件には、単純な犯罪、共犯の場合、それから悪質なものも、それから憫諒すべき場合も、組織的な犯罪の場合も、当然態様として予測をして法定刑が定められておるものであります。他の国の法定刑の中には、計画性のあるものと構成要件を別にするとか、組織的なものと構成要件を別にするとか、いろいろな考え方で法規が定められておりますけれども、我が国は、業務上の問題であるとか特殊な事例を除いてはすべてのことが基本的な構成要件に含まれているわけであります。  このような基本的な体制というものをそのまま維持しながら、今度それの上にさらに、組織的だというようなあいまいな概念を付加することによってさらに刑を加重する、こういうことは、いわば二重に違法性の問題を評価しようとする、いわゆるダブルスタンダード的な考え方であるということで、許されることではないわけであります。  それからまた、そこで十一の罪が挙がっていますけれども、これは罪質がまるきり違うんですね、法益も。こういったものについて、すべて組織的だということでいった場合に、本当に加重をしなきゃならないのか、また、加重するとしても加重する程度というものを同じように考えていいのかどうかというものも極めて重要であるわけであります。  そういう意味におきまして、もしこれでどうしても必要なものがあるとすれば、その基本的な罪についてだけ、例えば現行の、実際に裁判において行われている量刑上、現在の法定刑では軽きに失する処罰しかできないとか、そういうような具体的な事情がある罪に限定して個々的に決定をして、しかもその罪と一緒に基本的な刑を第一項、それから第二項にそういったものを、それについての加重要件を定めてする。しかも、そのときの構成要件も、十何罪一律ということではなくて、それぞれの罪について、構成要件的なことも、組織的なという単純な言い方ではなくて、もう少し変化を持たせたものによって構成をする必要性もあるというふうに思っているわけであります。  もちろん、悪質な犯罪、厳罰で私結構だというふうに思っておりますけれども、何と申しましても、刑罰権の行使というのは、国家の治安維持のために必要だから必要悪として当然あるわけです。しかしながら、これはしょせん、国家の国民に対する最も重大な人権侵害であるということは事実であります。要するに、国全体の安寧のため、秩序を維持するためにこれが許されておるということであります。  したがって、その行使、特に法定刑の設定というものは、その罪の重さ、それから責任の重さ、違法性の高さというような観点から合理的に定めなければならないわけであります。したがって、一罪一罪きちっとした形でこれを検討して、法定刑、これについてはもう必要だ、その合理的な理由もちゃんと説明がつくという場合に限ってしなければならないわけであります。  御承知のように、刑罰の法規というもの、法定刑の高い国というのは、やはり人権の後進性の国と評価をされているわけであります。いわゆる人権評価のバロメーターが各国の法定刑のあり方というぐらいのものであります。しかも、後進性の国は、民主化され、さらに安定して近代化されるに従って、すべてこういったものが減少されるという傾向にある。我が国において今特にこれを加重しなきゃならない理由は全く見受けられないというふうに考えられますので、この点も含めて慎重な協議をさるべきだ、かように考えるわけであります。  そして、これらの問題は、国際的なことの視野という点、それからバランスという点から考えても、党利党略で考えるのではなくて、我が国全体の中の本当にあるべき司法制度ということの観点からぜひとも御議論を願いたいと思うわけであります。  若干数点の指摘をしましたけれども、これについての大臣並びに法務省当局のまず所見を承っておきたいと思います。 <0021>=松尾政府委員= 御議論、お尋ねの件は多岐にわたるかと思います。中心的な点は、十一罪を一括して加重することについての御批判と承っております。その点だけこの機会に御答弁申し上げておきたいと思いますけれども、確かに、先生御指摘のとおり、本法案におきましては、第三条におきましてその第一項で十一の罪を列記いたしまして、刑の加重をしているわけでございます。  この十一罪につきましては、端的に言いますと、現行の刑法の法定刑では違法性の評価が不十分である、その尺度の中では適切な量刑をなし得ないと思われる各罪につきまして、それが組織的に実行される場合の類型的な違法性の高さということにまず着目し、また個別的にはその違法性評価を明示し、適切な量刑をなし得るようにするとともに、かかる犯罪の抑止に資するということを目的としているものでございます。  このように、立法の目的に応じまして、一定の類型の行為の違法性あるいは悪質性に着目してその加重類型を設けることは、先生もその点は御否定になっていないところだと思いますが、合理的かつ適切な処置ということだろうと思います。  そのような例は、これまで確かに多数存在しているわけでございます。例えば、罪数として、刑法犯では比較的多い窃盗罪につきましても、確かに常習累犯窃盗というような形で、通常の窃盗が十年以下の懲役であるのに対して、三年以下の有期懲役、こういう手当てをしているということでございます。  ただ、加重する場合に、それを各罪ごとに分けて規定するのか、本法案のように一括してといいますかまとめて規定するかは、すぐれて立法技術上の問題というふうに我々は理解しておりまして、その目的とするところがそれによって損なわれる等の問題を生ずることはないものと理解している次第でございます。 <0022>=福岡委員= 実際に、業務上であるとか常習であるとかということの加重規定は現実に存在をしておるわけであります。それを否定しておるのではございません。そういう場合には、そういう基本的な罪の常習性の場合を一項、二項できちっとして定めればいい。しかも、個別的なものについてはきちっとした検討をする、それは組織的という要件の中身というものも含めて十分に検討していくという体制で、慎重になされなければならぬということがまず第一であります。  さらには、一括にして規定をするということ自体は、我が国の刑法ではそういう体系をとっていないのを、これを立法の方針の問題だとおっしゃいますけれども、これは理念的にも違うのです。個々的な犯罪については個々的にその必要性やら違法性の程度というものを吟味して、十分に審議していくという立場で刑法典ができている。  今回みたいにむちゃくちゃに、組織的な犯罪が起こるから、悪いからといって、組織的という要件で、そう十分な審議もすることなく、しかも同じ要件でやるということ自体は、刑法典の考えている法益主義に伴うところの違法性の類型、それから、組織性というのがそれに対してどういうような意味を持つかということについての十分な討議、不十分という結果になりかねないから、私どもはこれを主張しておるわけであります。まずこれだけ申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。  まず、新しい法案を成立させるというとき、特に新しい刑罰の構成要件というものを創設するとき、または刑罰の加重をするときは、その目的というものがどこにあるのかということを、先ほども申し上げましたように、極めて明確に、国民がだれでも納得できるようなものとする必要があるのですね。それはなぜかといえば、先ほど言いましたように、刑罰権という最も人権侵害を伴うものだからなのです。  したがって、本件のこの目的というのは一体どこにあるのか、どういうためにこれはなされているのかということ、それがまず第一番です。それから、本罪の創設によってその目的に具体的に到達できるか、こういう点が問題になるわけであります。  そこで、まず、その目的についてはどのように理解をして提案されているか、お伺いをいたしたいと思うわけであります。 <0023>=松尾政府委員= お答えいたします。  まず、目的でございます。近年の犯罪情勢を少し申し述べたいと思いますが、暴力団等によります薬物あるいは銃器の取引、これが最近ではかなり大規模化、深刻な状況にあるということは、既に先生も御承知のとおりだと思います。あるいは、そうした薬物、銃器の取引以外にも、この法案で問題にしております不正な権益をめぐる各種の犯罪、例えば、縄張りをめぐる暴力団同士の抗争事件、あるいはその縄張りを維持するために行われた各種の違法な行為、こういった犯罪も少なからず発生しているわけでございます。  こうした暴力団にかかわる犯罪以外に、オウム真理教事件のような組織的な殺人事件、あるいは豊田商事等、記憶に新しいところでございますが、法人組織を利用した大規模な詐欺商法事件等経済犯罪も起こっておるところでございます。こうした組織的な犯罪が近年の傾向として少なからず発生しておりまして、我が国の平穏な市民生活を脅かすとともに、健全な社会経済の維持発展に影響を及ぼす状況にあるということを、まず申し上げたいと思います。  本法案の第三条に規定する組織的な犯罪でございますが、その危険性あるいはその反社会性の点におきまして、類型的に高度な違法性を有するものと考えられるところであります。  刑法の一部の罪については、このような組織的な形態で起こされることが多いと認められるにもかかわらず、その法定刑がこのような場合の法定刑として十分でない、こういう認識でございます。このような場合の加重規定を設けることとしたのが、ただいま御説明申し上げている法案の第三条でございます。これによりまして、違法性の評価を社会に明示いたしまして、各行為者の責任に応じて適切な量刑をなし得るようにする、それとともに、かかる犯罪を抑止することに資するものと考えている点でございます。  また、ここに挙げました十一の個々の犯罪につきましての法務当局としての法定刑加重の必要性等につきましては、後ほど機会がありましたらまた御説明申し上げたいと思っております。 <0024>=福岡委員= ただいま御説明をいただきましたけれども、要約をすると、暴力団の麻薬、銃器等の犯罪が多発しておるということ、オウム真理教のような大規模な組織を有するカルト集団的な凶悪事件が多発しておるというようなことから、これらのものを防止するという立場で、現在の法定刑の中では現実の裁判の中で適切な量刑がちょっとしにくいということが理由だ、かようにお伺いをしたわけであります。  そこで、次にお伺いいたしますけれども、まず、最近の、この数年の暴力団による犯罪の発生率、それと、暴力団以外の一般の犯罪等を含めた全体との比率というのがどの程度の推移を見せておるのかということについて、御説明をいただきたいと思います。  私がさきに衆議院の調査局からいただいた資料の統計結果というものを見てまいりますと、実際には、事件総数としては件数は減っておる。比率としては、暴力団件数の比率が、若干ですけれども、ふえているのは、強姦罪と威力業務妨害等が若干ふえている。あとはほとんど横ばいかもしくは減少というような傾向にあるということで、暴力団事件の凶悪化とか事件多発というものは、実際には、暴対法とかその他の法規の整備によってある程度成果が上がっているというのが実情ではないかなという評価をしておりますけれども、その点もあわせてちょっと御回答をいただきたいというふうに思います。 <0025>=松尾政府委員= 数的なお答えといたしまして、まず刑法犯全体の趨勢、二番目には、凶悪犯罪に関する同様の趨勢、それから三番目に、暴力団について見るとどうか、この三点、順次お答えいたします。  まず、全体的な刑法犯の趨勢でございますが、刑法犯の認知件数を見ますと、戦後、五十年以降、ほぼ一貫して傾向としては増加の傾向を示しております。平成九年には戦後の最高数値を示しておりまして、前年比二・一%増の二百五十二万件となっているものの、窃盗が六六・一%、交通関係業過が二四・六%を占めております。この罪種の割合については過去十年間に大きな変動は見られないところでございます。  次に、凶悪犯でございますが、近年、先生御指摘のように強盗の増加傾向がうかがわれる。それから、罪種の特徴といたしまして、無差別大量殺人あるいは殺傷犯等に銃器を使用したケースが増加している。それから、凶悪犯の被害者として一般市民に対する強盗殺人事件等の、我が国には従来見られなかったような非常に凶悪な内容の強盗殺人事件等が発生しているということで、全体的な凶悪犯に係る犯罪情勢は予断を許さない傾向が認められると思います。  三番目に、暴力団犯罪について見ますと、平成九年末現在の暴力団勢力は、先ほど警察庁の刑事局長からも御報告ありましたが、八万人強、八万百人ということでございます。同年における暴力団相互の対立抗争事件の発生回数は五十三回、前年より二十四回増加しております。その際の銃器使用回数は四十回に上りまして、三名の死者が出ております。  なお、平成九年における暴力団勢力の検挙人員は約三万二千人でありまして、賭博、恐喝、傷害、覚せい剤事犯、銃器関係事犯に係る検挙人員または送致人員の中に暴力団が占める割合でございますが、依然として高水準にある、このような状況でございます。 <0026>=福岡委員= どうもありがとうございました。  先ほど私が申し上げました調査室の資料によりますと、殺人については、平成四年のときのパーセンテージが二一・七%であったのが平成八年には一六・九%に減少をしている。それから、さらに強盗については、四年に一七%であったのが一六%に減少をしている、こういうようなことになっておりますし、さらに恐喝についても、三八%であったのが二九%というように減少している。こういうような事実がここに指摘されておりますけれども、この点は間違いないですね。確認だけしておきます。 <0027>=松尾政府委員= ただいま個々の罪種ごとの暴力団構成員の占める割合についてのこの資料を手元に持っておりません。先生御指摘の点、また調べておきたいと思います。 <0028>=福岡委員= この資料につきましては皆様方のところにも配付されておりますので、三十八ページのところをごらんいただけば明確に出ているわけであります。総計といたしましても減少しておるということがはっきりとしておるわけであります。  それから、次に、問題になっておりますオウム真理教等のカルト集団、いわゆる宗教的確信に基づくところの犯罪というものでありますけれども、これにつきましては、その後、オウム真理教の違法行為的な動きといいますか、実際にその後こういう行為をして検挙されたとか、それから、さらにはそれと類似の教団がこういうような違法行為をしたという具体的な事例が最近あるのかどうか、お伺いをいたしたいわけであります。 <0029>=松尾政府委員= オウム真理教という特定の集団の違法行為についての情報等については、私は所管する立場にございませんので今具体的に申し上げられませんが、事件ということでございますと、先生御指摘のように、かつて起こしたような凶悪重大事犯をまた発生させたというような情報は得ておりません。 <0030>=福岡委員= そうしますと、具体的な事件としては、オウム真理教自体も刑事事件に該当するようなことはやっていないということのようでありますけれども、その他の集団も、結局そういうようなことは特別にないわけですね。 <0031>=松尾政府委員= 今重大な事犯ということで申し上げましたが、そのほかのケースでございますと、オウム真理教については、つい昨日でございますか、私文書偽造等の容疑でオウム教の関連施設が捜索を受けたということは既に報道されているところでございます。そうした、いわば人身にかかわるようなといいますか、あるいは大量殺人といった、かつてオウム真理教というとそういうことをすぐイメージされておるわけでございますが、そういうかつてのような凶悪重大事件ということでは、オウム真理教自体の関連事件ということでは報告は受けていない。  と同時に、そのほかの宗教団体についても同様であるというところでございます。 <0032>=福岡委員= そうしますと、かつてのような凶暴な、凶悪なといいますか、そういった事件は、現在のところは鎮静しているということですね。  しかしながら、そういった事件を過去に惹起して、最近は教団の布宣活動等がまた活発に行われておるという実情でありますので、これはこれで、法案の審議とは別個に、具体的な監視体制やら規制体制というものを考えなければならぬというふうに思っておりますけれども、そのことについては何か法務当局の方で検討をされているというようなことがあるでしょうか。 <0033>=松尾政府委員= ただいまオウム真理教が各地に新しい施設等を開設しまして周辺住民と一部で紛争を起こしているということは、私も承知しております。  オウム真理教のこういった事態に対してどう対応するかという問題は、いろいろ難しい問題があろうかと思いますが、今、関係するところでさまざまな観点から検討が行われているものと承知しております。 <0034>=福岡委員= 私としましては、オウム事件の対策ということについてはいろいろ法的な問題をクリアしなきゃならぬ問題がいっぱいあるわけですけれども、しかし、それをクリアして、二度とああいった事件を犯さないような法的整備というものをするのが問題であって、この組対法のような形の加重ということでこれを防止しようとすることは、これはもう論外じゃないかというふうに思っております。  それから、質問でありますけれども、この目的ということの中に直接はないかもしれませんけれども、本件立法をするに至った端緒といいますか、それには、国際的な組織的な犯罪についての要請というものがあるというふうに聞いているわけであります。そして、その要請というのはどういうことかが、正確にはなかなか理解をされていないようであります。  先ほど、マフィアのいろいろな問題がありましたけれども、やはり直接的にはマフィア対策ということで、これが国際的な論議とされてきた。特に、マフィアが麻薬とか銃器とかというような取引を、犯罪行為を行うことによって莫大な収益を上げ、その莫大な収益を資本にして会社等に投資をするということによって経済的な支配にまで及ぶという状況が世界的になってきた。何とかこれを阻止して、このような国際的な犯罪行為というもの、それから企業支配というものを防止しなければ、健全な国際的な社会の安全と経済の確立ができないという形で、これらの不法利益をどのように抑制し、その浄化するということを防止していくのかという点が中心に論じられてきた、かように考えるわけであります。  そして、各会議の内容等を見ますと、もちろん組織的犯罪に対して厳しく対応をしなければならないというようなことは言っておりますけれども、それ以外に、具体的な各国の刑罰の法的な整備の仕方というのが、法定刑の定め方というもの、また構成要件の定め方というものがそれぞれ特色があるものですから、特に従来の法定刑を加重しなければならぬとか、こうしなければならぬということは全然話題にもなっていないわけであります。  したがって、あくまでもいろいろな態様というものに分かれて構成要件を定めて、フランスのように極めて幅の狭い法定刑を定められておるところにおいては、組織的な犯罪というものをクリアできるだけの幅がございませんから、加重しなければならない。また、ドイツ法の場合でも、窃盗罪で五年以下となっていますから、それでは組織的な場合に低いから十年にするとか、各国の刑罰構成要件というものと法定刑の定め方の考え方に従って、それぞれの国において、全然加重しない国もあれば加重しなければならぬ国がある。  かようなことで、これはそれぞれの国の考え方といいますか、法体系といいますか、これに任せてあるというのが実情だというふうに考えているわけであります。この点について、法務当局はどのように考えておられるか、御見解をお伺いしたいわけであります。 <0035>=松尾政府委員= 組織犯罪につきまして、現在、国際的にその抑圧をどうするか、どういうふうに国際的な協調のもとでこうした暴力団犯罪を含めて抑圧していくのかというのが重要な課題になっているということは、先生御指摘のとおりでございます。  こうした組織犯罪は、国境を越えた活動、ボーダーレスだというような表現もされておりまして、一国が対応措置を講ずれば効果的だというような国際情勢では既になくなっているという点も、先生御指摘のとおりでございます。こういう点で、国際的な協調が必要でございます。協調の中には、少なくとも各国でそれ相応の、足並みをそろえたといいますか、それなりの水準にある対策が講じられていることが必要だということもまた自明のことだろうと思います。  この組織的な犯罪の問題といいますと、先生御指摘のとおり、その対策のための国際会議ですが、余り広く国民の間に認識されているとは言いがたい状況にございます。昨日も達増委員の方から、FATFについての御質問がいろいろな角度からございました。もう少し認識する必要があるという御指摘も、本当にそのとおりだと私も感じております。  若干の経緯を見ますと、平成元年のアルシュ・サミットのときでございますが、この組織犯罪対策を国際的に連携、協調のもとに強化する必要があるということが非常に強くうたわれました。それ以降十年たつわけでございますが、さまざまな国際会議あるいは国際的な話し合いの中で次々とそうした犯罪対策というものが実行に移され、あるいは各国で法整備が進み、現在、先進国では、組織犯罪対策という点からいいますと、まず法整備が整った状況にございます。  そういった中で、我が国は、先進国、つまりG8の比較で考えましても非常に立ちおくれているということをいろいろな会議の際に指摘をされているところでございます。特に、昨年の七月からFATFの議長国に我が国はなっているわけでございますが、議長国でありながら、マネーロンダリングの規制が世界の破れた網になっているという非常に厳しい指摘を受け、そのために現在法案を出しておりますというような説明をしながら現在まで来ているという、実に、ある意味では国際的に非常に苦しい立場に置かれているということもぜひ御理解いただきたいと思います。  それからもう一つは、各国の状況でございますが、例えば先生御指摘の、先ほどから御議論のテーマになっております加重の問題でございますが、それにつきましても、やはり先進国の間では、組織犯罪対策の抑圧の一つの方法として、組織的になされた犯罪についてそれなりに加重する必要があるという議論は、これはむしろ各国間でほぼ合意に達しているといいますか、先進国の間ではそれに応じて必要な手当てが既になされている状況でございます。  したがいまして、その点についても、確かに各国のそれぞれの法制度あるいは歴史が違いますので、個々の構成要件ごとにその法定刑の幅はもちろん違うわけでございますけれども、それなりに組織犯罪については加重規定が置かれているということでございます。 <0036>=福岡委員= 今の御答弁をお伺いいたしますと、やはり国際的な要請というものは、マフィア等暴力団的な団体の麻薬であるとか銃器の犯罪によって得た莫大収益というものを資金浄化する、マネーロンダリングの、そういった行為の処罰規定が日本の国では不十分であるという問題、国際的にも要求されているのはそこだということのようであります。私自身もその点は認めます。  したがって、マネーロンダリングの罪については、やはりそういったものの創設がどうしても必要であろうと思っております。しかしながら、それはあくまでも、やはり財産犯なんかの不可罰的事後処分との関係等がありますので、人権にもかかわってくるので、厳格に、麻薬であるとか銃砲刀剣とか賭博であるとか、そういったような暴力団の資金源となるような罪質の罪に限定をしてすべきであるということであります。  それから、我が国の組織犯に対する加重要件がないということについては、やはり我が国が外国に我が国の法定刑の実態を見せて、我が国では殺人の場合は死刑までありますよ、したがって、これでどういうふうに加重したらいいのかということで、必要性が余りないんだということも十分に説明をして、理解をしていただければ国際的な誤解は解けるというふうに私は思っているわけであります。これだけは指摘をいたしておきたいというふうに思います。  それから、この目的、今御説明をいろいろといただきましたけれども、いわゆる暴力団、それからオウム真理教のようなカルト集団的な凶暴犯というものを防止するということ、これが、法定刑を若干加重したことによって防止できるかということであります。  先ほどからいろいろとマフィアとか暴力団の危険性を御指摘になりましたけれども、彼らの場合は、暴力を背景にして暴行、脅迫を行う、さらには逮捕監禁等、それから麻薬であるとか銃器というような違法行為というものを日常的、継続的、反復的に行っておる集団であるわけですね。したがいまして、当然刑罰というものは覚悟の不法集団というものであるわけです。したがいまして、若干の刑罰刑の加刑というようなことでは実際に犯罪抑止の効力があるのかという点については、一般的予防でありますけれども、これは今極めて疑問であるわけであります。  そしてまた、カルト集団的なものについてはその教義、それから教祖に対する信頼ということによって確信犯的なものでありますので、罪が若干重かろうが軽かろうが、犯罪の成否といいますか、実行するか否かということについての抑止力になるのかということも極めて疑問であるわけであります。  そして、さらに私どもが懸念しておりますのは、この対象になっておる組織犯罪の団体というものの中には、不法な団体ということではないわけですね。正当目的によるところの会社であるとか、それから市民団体であるとか労働組合とかというものもこの対象になっているわけであります。  したがいまして、団体交渉なんかを労働組合がするときに、ある程度強要的な言辞を発したというような場合、集団でやった場合、それから会社でも、中小企業がその商品の売り込みについてある程度詐欺的な言辞というものを弄したという場合、数人で社員並びに社長が共謀してやったということになればこれに該当するとか、市民団体でも、陳情その他の行為の行き過ぎがあって、これを団体でするというような場合にはこれに該当するというような形の取り締まりというものが激増してくる可能性はあるんじゃないだろうか、こういうふうに考えて、その方の危険性の方が怖いんじゃないか。犯罪抑止、結構ですけれども、それよりも、その辺のところがむしろ懸念される危険性はないのか、こういうことでありますけれども、この辺についての御見解をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0037>=松尾政府委員= 二点お答えしたいと思います。  一つは、カルト集団的な集団に対して、刑の加重規定を新設しても、抑止効果は期待できないんじゃないかという点と、二点目は、正当な団体がこれによって影響を受けないかということだろうと思います。  まず第一点でございますが、私どもも、先生御指摘のような集団に対して社会がどう防衛措置をするか、あるいは、そうした集団の違法行為が想定される場合にどう抑圧するかという点についてどんな対応策をとるのかということについては、刑の加重規定だけでこれを効果的に抑圧できるというところまで考えているわけではございません。刑の加重をすること、そうした違法類型の違法性の高さに着目して法定刑を引き上げること、これが一定の効果をもたらすということは、私どもはそう思っておりますが、これだけでは確かに不十分であろうということが言えるかと思います。  それに対しましては、社会的にいろいろな手だてが講じられる必要がある。単に刑事罰の分野だけじゃなくて、行政面等も含めましていろいろな対策を社会全体で講じる中で、そうした違法な集団についての行動の抑止を図っていく。全体構造の中でとらえるべきものと考えている次第でございます。ただ、刑事罰の引き上げもやはり効果的な対策の一つであるということで、ぜひ御理解いただきたいと思っております。  その点についてさらに付言いたしますならば、犯罪を抑圧するということの一つの方策として効果的だということの中には、有効適切に、時期を失せずに違法行為をやった場合に摘発をする、検挙できるということがまた必要かと思います。今、国際的な論議の中で、組織犯罪をどう抑圧するかという議論がありますが、それもまさに同じ議論をしております。その中で、確かに各国で、刑の加重規定を設け、あるいは組織犯罪についての処罰規定を新設しということで、実体法的な手当てをいろいろ尽くしているわけでございます。加重規定というのがその一つということになると思いますが、単にそれだけでは不十分で、犯罪をやった場合に有効適切に摘発できるという手続法的な整備も必要だということは、これはもう国際的な一つの合意事項になりつつあると思います。  我々としては、今回の法案の中に電気通信の傍受を盛り込みました趣旨もまさにそこにあるわけでございまして、単に実体法の整備をして重罰規定を設ける、あるいは新たな処罰規定を設けるという手当てだけでは必ずしも十分でない。そうしたことを有効適切に摘発できる方途もまた講じなければ、いわば、平たく言えば、実体規定の重罰規定等が絵にかいたもちに終わるということであろうと思います。そうしたことにならないためにも、手続法の整備というのがあわせて行われる必要があろうかと思っております。  それから二番目の、正当な団体に適用されるのではないかということでございますけれども、これは、確かに今各方面でそういった懸念が表明されているということは、私も承知しております。ただ、例えば、この法案で規定しております加重類型に該当するためには、例えば殺人の例をとりますと、そういった行為が、団体の意思決定に基づく団体の活動として、これを実行するための組織というさらに要件が加わりまして、それにより行われることなど、要件が二重に付加されております。したがって、正当な目的を有する団体が通常行っている活動にこの刑の加重処罰規定が適用される余地は全くないと考えているところでございます。 <0038>=福岡委員= 後段の構成要件の点で、一般の正当な団体に限定をしていないという点であります。そういうことをお認めになったわけでありますけれども、それを歯どめの行為があると言いますけれども、お聞きしたことでは、私は歯どめにならないというふうに思っております。  ちなみに、ドイツ法の構成要件というものを見ますと、明確にその規定をしておるようであります。まず、ドイツは、組織的な犯罪について加重を認めておる構成要件としては、こういう表現をとっております。犯罪の連続的な実行のために結合した団体の構成員として実行したものというのがまず一つであります。それからさらに、それよりも具体的な加重を盛り込んでおりますのは、連続的に実行するための結合を目的とした団体の構成員として、その団体の他の構成員との協力のもとに実行したとき、こういう二通りの要件で、いずれも、すべてその団体というもの、組織というものは、不法な目的によるところの結合体。だから、端的に言えば暴力団的な、それは目的にそれを書いていなくたっていいのですよ、実質的にそういうものだというふうに認定ができた団体ということになるわけであります。  したがって、会社であるとか労働組合とか、労働者の権利を守るための組合とか、それから、それぞれ目的を定める、市民の目的を明記してある団体にはこれは及ばないということになる。そこで外れるわけです。  しかも、実行をした人間が、今回の構成要件では、構成員である必要のない者も、その団体の行為として評価されるような形で構成員と一緒にやった場合は、当然これは今回の要件、「組織的な」という目的に該当するという説明がされておりますけれども、そうするとますます広くなってしまうのですね。  したがって、あくまでも団体の不法性ということと、それからさらに、みずから犯した者が加重されるためにはその構成員であるということの要件まですれば、相当に歯どめがかかるというふうに思いますけれども、この点については検討されなかったのでしょうか。 <0039>=松尾政府委員= 各国の法制はこの点についてそれなりの差があるということでございます。  例えばアメリカ合衆国では、一九七〇年に薬物事犯に関しまして、継続的な犯罪的エンタープライズ、団体といいますか、という一定の組織的な形態で行われた場合には加重するという規定を設けております。アメリカの連邦法では、犯罪組織と一定の関係を持って行われる殺人等について、その刑を通常の場合よりも加重する規定があるということもまた承知しております。  先生、ドイツの例を御指摘になりましたが、ドイツにおいても、確かに以前から、一定の類型の組織的な窃盗等について加重処罰規定がございます。さらに、一九九二年のドイツにおける法改正によりまして、一定の組織的な類型の盗品等の譲り受け等、これについても加重処罰規定が設けられております。一九九四年の法改正によりまして、今度は一定の組織的な類型の恐喝、これを通常よりも重く処罰する旨の規定が設けられております。恐喝の場合でいいますと、恐喝の連続的な実行のために結合した団体の構成員として実行しているものは加重する、こういうようなことのようでございます。  それから、フランスにおいては、以前から窃盗、放火等の加重処罰規定がございます。一九九二年に制定された新しい刑法典においては、さらに麻薬の違法製造、強盗、詐欺等の罪についても、一定の組織的な類型の加重規定が設けられているものと承知しております。  どのような構成要件のもとに加重規定を置くのかということは、各国の刑法典全般の問題、あるいはその歴史的な経緯、あるいはその社会情勢、犯罪情勢等によりましてそれぞれ差が出るということもまた仕方のないことだろうと思いますが、今回の法案では、我が国としてはこのような構成要件を設ける必要があると考えた次第でございます。 <0040>=福岡委員= 我が国ではやはり、法定刑の幅が広くて、必要性というのは極めて薄いと考えざるを得ないわけですね、各国に比べて。そういう必要性のあるドイツ法の場合でも、先ほど言いましたような、本当に、組織的だということについては明確に、だれが考えても明々白々な構成要件にしているわけであります。したがって、これはぜひとも修正という形で御検討をいただきたいわけであります。  それから、もう一つわからないのは、不法な権益ということであります。  いわゆるやくざの縄張りとかシマとかというものを対象にしておるというのですけれども、正当な行為の中にも、縄張りとか、それからのれんとか得意先範囲とかというようなもの、シェアというものがあるのですよ。これが、不法な手段でそういうようなことをやって獲得をするというようなものまで含まれるかどうかということで、具体的イメージとしてそれ以外のものも結構あるのじゃないかなという気がするのですけれども、その点についてはどういう見解をとっておられるのか、最後にちょっとお伺いをしたいわけであります。 <0041>=松尾政府委員= お尋ねの不正の権益、法案の第三条の二項に規定している概念でございますが、これは、犯罪等によって継続的に利益を得ることを容易にするような支配力を団体に得させ、あるいは団体のそれを維持し、もしくは拡大する目的で行われる場合であるというふうにしております。  この加重類型に該当する例として、イメージと先生がおっしゃいましたので考えてみますと、例えば殺人等の犯罪行為が、新たに結成された暴力団が飲食店からみかじめ料等を獲得するための縄張りを新たに設定することを目的として行われる場合なんかまさにこの例でございます。また、ある市内の飲食店からみかじめ料を獲得するための縄張りを既に持っている暴力団が、別の隣の市に同じようなみかじめ料を獲得するために縄張りを設定しようと、当然そこには対抗勢力がいるわけでございますので、殺人がその関連で計画される、実行されるというようなケース。あるいは、暴力団が一定の地域内に縄張りを持っていましたところ、今度は逆に、ほかの勢力がそれに進出してきた、対抗するために、つまり不正の権益の喪失または縮小を防止するということで殺人行為が行われるというようなことが、この二項に言う不正権益に係る殺人の類型で申し上げますと、想定される犯罪ということになろうかと思います。 <0042>=福岡委員= そうしますと、この不当な権益という中の不当ということの意味は、権益自体が当然に持っておる性質といいますか、それから来るところの不当性というものであるということで、例えば先ほど申し上げましたのれんであるとか、それから、ある一定の範囲内のシェアだとか顧客だとかというような普通の場合には、もちろんそれは犯罪行為に結びついて行われることでありましょうけれども、そういう行為に伴うところの犯罪の場合は一切含まれない、あくまでもやくざのシマみたいなものに限定されるというぐあいにお聞きしていいのですか。 <0043>=松尾政府委員= 先生の御指摘の点がまさにそれに該当するということだと思いますが、抽象的に申し上げれば、それにぎりぎり限られるということまで申し上げると、将来、そうした同種の違法性の強い行為があった場合の問題がございますので、まさに先生のおっしゃったことが中心であるということは申し上げられるかと思います。 <0044>=福岡委員= それは中心であるということはわかりましたけれども、やはり立法者側の検討でも、具体的にそれ以外のものがどうあるかということは説明がなかなかしにくいようであります。そういうような要素をまた持っておる法案でもあるということでありますので、ぜひともこの点はさらに検討して、表現的にも、この構成要件を罪刑法定主義上きちっとしたものにするということの修正等も検討をお願いをしたいと思うわけであります。  先ほども申し上げました、他の法令の中では明確なそういう構成要件もあるわけですね、不法な団体というものの要件を定める、構成員に限定するとかという。そういう明確化というものをさらに進めていただいて、修正することによって、よりいい法案に、この法案、私どももこの加重の問題については絶対反対というわけではありません。やはり厳重なチェックをして、人権を守るような形にするということならば、十分討議に応ずるという用意があります。  さらにまた、追加的な質問はきょう積み残しましたので、次回に譲らせていただきますけれども、その点はぜひとも検討していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。 <0045>=橘委員長代理= 佐々木秀典君。 <0046>=佐々木(秀)委員= 民主党の佐々木です。  ただいまは同僚の福岡委員から大変格調の高い質問がありまして、刑事局長とのやりとりで、何十年ぶりに大学の法学部の教室に戻ったような感慨を催しまして、これまた感慨ひとしおでございます。  私は、なかなかそこまで格調高くはいきませんけれども、しかし、このいわゆる三法については非常に大きな問題が含まれていると思っておりますので、きょうは時間が一時間しかございませんから、いわゆる通信傍受法についてもたくさんお聞きをしたいことがありますけれども、また議論をしたいことがありますけれども、きょうは、そちらには触れないで、組対法あるいはマネーロンダリングなどなどを中心に少し意見を交換したいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  ところで、先ほど福岡委員からも御指摘がありましたけれども、今度のいわゆる組対法が、これまでの我が国における刑事法上の犯罪の類型あるいは犯罪の体系、これを大幅に変更することになりはせぬかという御指摘がありました。私もそれを痛感しております。  実は、昨年五月の二十二日だったかと思いますけれども、私は、当委員会において、この問題について三十分だけ質問させていただいて、本当に入り口だけの論議しか私もやらなかったわけですけれども、そのときに、当時の原田刑事局長も、これまでの日本の犯罪の体系、刑法上は個人責任を問うようになっていたんだ、集団犯罪あるいは組織犯罪に対する対応というか、刑法上の取り扱いというのが必ずしも十分ではなかったという指摘をされていたと思うのですね。  ただ、集団的な犯罪ということになりますと、刑法上の理論としては、これは、かつて私は早稲田大学の法学部で学びましたけれども、その当時、私が刑法を教わりました斎藤金作教授がいわゆる共謀共同正犯論というのを確立されて、これが複数者による犯罪、特に実行犯の裏に、大物でそれを策謀しあるいは指示するというような者がいる、この刑事責任を問うためにはということで立てられた一つの理論だろうと思うのですけれども、こういう共謀共同正犯論というのができているということを私は教わりました。  しかし、法律の上では、我が国の場合にも全くないかというとそうではなくて、例えば暴力行為等処罰ニ関スル法律だとか、あるいは先ほども御指摘がありましたけれども、平成四年のいわゆる暴対法、暴力団に対する取り締まりの法律、正確には暴力団員による不当行為の防止に関する法律ですか、暴対法と私どもは呼んでおります。こういうものは、暴力団などを念頭に置きながら、集団的な犯罪ということに対応する法律としてつくられたのだと私は心得ております。  そこで、本法案の言うところの組織犯罪と、今言いました暴力行為等処罰ニ関スル法律、これは第三条で集団による犯罪の規定があるのですけれども、これ、それから暴対法二条二号で集団的暴力的不法行為というような概念規定があるのですが、その両者、二つの法律に言うところの集団的な犯罪と、本法で言うところの組織犯罪とはどういうような違いを持っているのか、また、本法ができた場合にはこれらの関係はどうなるのかというようなこと、この点についてまずお伺いをしておきたいと思います。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0047>=松尾政府委員= 先生御指摘のとおり、現在の日本の刑法の体系は、個人の責任主義ということで、団体そのものを処罰するということはその基本にはなっていないわけでございます。一つだけお断りしておきますと、今回の法案も刑法の大原則を崩すものではございません。これが第一点でございます。  その点についての第二点目でございますが、確かに、個人の責任ということを中核にした刑法体系になっておる点で、ややもすると従来の刑事司法の分野では、団体が団体の力を利用してといいますか、今回の法案はまさにそこをとらえているわけでございますが、そういったところについての非常に違法性、危険性の高い行為について十分にそれを刑法の法定刑の中に取り込んできたかどうかという点については、十分でなかったのではないかと思います。  そういった点で、今回の組織犯罪対策三法でございますが、そこらあたりの強い問題意識のもとに新しい法律をつくるということでございまして、ある意味では非常に重要な法案であると我々は考えております。その点をまず申し上げておきたいと思います。  それで、先生御指摘の暴力行為等処罰ニ関スル法律というのがございますが、その第三条に、団体もしくは多衆の威力を示し、団体もしくは多衆を仮装して威力を示し、または凶器を示しもしくは数人共同するという方法で殺人、傷害、暴行、脅迫、強要、威力業務妨害、建造物等損壊または器物損壊の罪を犯させる目的で金品等を供与するなどの行為を処罰する、こういう法律がございます。確かに、これは特別法といたしまして、従来の刑法の中で手当てのしていなかった分野に一歩踏み出したものであることはまた同じでございます。  今読み上げたところがまさに構成要件ということになるわけでございますが、これに対しまして本法律案の第三条の罪は、殺人等の犯罪行為が、団体の活動として、ある罪に当たる行為を実行するための組織により行われる。団体というものがあります。その中で、単に構成員がたまたまやったんではなくて、その中に犯罪を実行するための組織がさらにつくられる、先ほども御答弁申し上げましたが、二重の要件がかかっております。これがこの第三条の構成要件ということが言えるわけでございますが、そのねらっているところが一つの集団であるという点については共通性がございます。ただ、構成要件的に言いますと、今申し上げたような相当な差異があるということでございます。  それからもう一つは、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律がございます。この第二条二号には暴力団の定義として「団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。」こう定めております。この法律は、一定の要件を満たす暴力団を指定暴力団として指定しまして、公安委員会による中止命令等の行政的な手法によりましてその活動を抑制しようとするものでありまして、やはり刑の加重類型を定める本法律案第三条とは全く別個のものだと言うことができようかと思います。 <0048>=佐々木(秀)委員= というお答えですけれども、先ほど福岡委員からも御指摘があり、また、さきにこの法案が本会議で提案されたときに、私ども民主党の枝野議員が代表質問に立たれて、そこでも指摘をされておられることなのですけれども、本法の第二条一項に言うところの団体、これは、今の、例えば暴対法で言うところの暴力団というような、犯罪集団と言えるような規定はしていないわけですね。先ほど、これも福岡委員からも御指摘がありましたけれども。そうすると、この団体の中には、市民団体だとか労働組合だとか、場合によったら政党だとか、いわゆる合法的な団体も当然その範疇の中に入るということになるのだろうと思うんですね。  そういうところから、先ほども御指摘があったように、関連する犯罪としての罪種が非常に多くなっている。そしてまた、別表の関係で言うと、刑法上の犯罪だけではなしに、特別法上の特別事犯、特別刑法事犯なども細かく挙げられて五十七ぐらいになるわけです。  そういうこととの関係を考えると、場合によると、例えば威力業務妨害だとか、そのほかにもありますけれども、最近は余りないようですけれども、しかし皆無とは言えないかもしれない。かつては、労働争議などが非常に多く行われたときに、例えば、会社に対して労働組合が、交渉上の立場をよくするために、あるいは会社の不当な行為を指摘してそれを指弾するというようなことのためにチラシをまいたり、あるいはかなりな実力行使を伴うような実行行為で会社に対して迫るというようなことが威力業務妨害罪になったり、あるいは信用毀損罪として捜査の対象になるというようなことがなかったわけではないわけであります。  そういうふうなことからくる心配が非常に多いわけで、それというのも、やはりこの二条一項の団体を犯罪的な集団と規定していないところに私は懸念が払拭できないと思うんですけれども、この点についてはどういうようなお考えで、どういうような歯どめを用意しているのか、していないのか、その点についてお答えをいただきます。 <0049>=松尾政府委員= 第二条の一項には、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われる」、こういうふうになっております。これはいわば無色の定義規定といいますか、つまり、こういうような内容に当たる限りは、正当な団体も含めまして団体がこれに該当するということにはなろうかと思います。  ただ、法案の目的というのは、単に一つの条文だけをごらんいただくのではなくて、全体的にぜひごらんいただきたいと思います。先生のお尋ねの歯どめということはまさに第三条に具体的に書いてあるわけでございまして、これは先ほどからも何度も申し上げていることでございますが、三条一項には十一の犯罪類型が掲記されておりますが、この各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動、これもさらに括弧書きで明確にされております。「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。」こうなっております。さらに、「団体の行動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」という、先ほどから二重の歯どめと言っておりますが、厳重な歯どめがかかっております。これがその十一の罪について加重するための構成要件ということになります。  確かに、先生のお尋ねの中にも、例えば労働組合等の構成員が犯罪に関与したり、あるいは労働運動等に関連して犯罪が行われたという場合にこれが適用される余地が生じるのではないかという御懸念が入っていたかと思いますが、ただそうした犯罪が行われたというだけで同項の規定が適用されることはあり得ないことになります。  第三条第一項各号に掲げられた、限定された犯罪に該当する行為が労働組合の活動として、しかもその犯罪を実行するための組織により行われた場合に限って適用されるものでありますので、正当な労働運動にこれが適用されるということはおよそ考えられないことだと思います。  また、その歯どめのところのもう一つの問題としては、この三条の二項に、先ほどお尋ねもありましたが、不正な権益の問題がございます。これも、労働組合が同項に言う不正な権益を有しているということはおよそ想定しにくいことでございまして、また、労働組合にそのような不正な権益を獲得させるということも想定が困難であります。同様に、同項の規定が正当な労働運動に適用されることはあり得ないということでございまして、そうした御懸念には及ばないということだと思います。 <0050>=佐々木(秀)委員= と言われるんだけれども、やはり御懸念に及ぶんですよ、私どもは。過去の例を見ながら。今私は労働組合の例を引いたけれども、労働組合だけじゃないんです。市民団体、ボランティア活動なんかにも影響してくるんです。  例えば、公害なんかの被害者が、被害者で組織をつくって、そして加害企業に対して補償交渉をする、これは今まで随分ありました。いろいろな事例がありましたね。カネミなんかもそうですし、さまざまあったわけですね。そういうときに、いわば労働組合なりそういう市民団体は、団体の活動として、それを自分たちの正当な活動として、そして、特にさまざまな具体的な行動、運動についての企画あるいは実行のチームをつくってやるということはあることで、今までもやってきていることです。  そうした合法的な団体が、合法的だ、正当だと思われる活動をやった場合でも、その行動が時に過激に走ることだってないではない。それに対しては、今局長は限定的な犯罪列挙と言われましたけれども、私が指摘したように、三条の中には、例えば七号には刑法二百三十三条の信用毀損及び業務妨害罪がある、それから八号には刑法二百三十四条の威力業務妨害罪があるんですよ。この辺は一番使われやすいところなんだ。事実使われているんだ、今まで。使われているんですよ。だから私は指摘しているんだ。絶対に間違いないなんてことはありません。  しかも、この第三条で言っている利益というのは、不法な経済的な利益ではなくても、例えばさっき言ったような公害の被害請求ということになると、金銭的な請求になるわけですからね。あるいは、ここでは金銭的な利益とか経済的な利益とまでは言っていない、もっと広いわけでしょう。そうすると、ここだって、それによって求める利益というのはいろいろなとらえ方があるわけです。だから、私は、ここで濫用の危険がないとは言えない。ですから、三条の二項というのは、そうした正当な行動に対する歯どめには、私はなっていないと思うんです。そういう心配が非常にあります。  こういう点でも、私は、ぜひこの法条というのは見直す必要があるのではないだろうか。このままつくってしまうと、法律というのはしばしば言われているようにひとり歩きすることになりますし、捜査に当たる者としては、濫用にわたるような運用の仕方というのもないではない。絶対に、それは現在の捜査あるいは警察なり検察なりを信用しろといっても、今までの長い長い歴史の上でのさまざまな事象を見てきたときに、私はやはりその心配は払拭できないと思っているんですね。だとすれば、法律の上でそういう心配がないような配慮をきちんとしておくことが必要だと思うので、この点を指摘しておきます。きょうはこの程度でとどめます。  そこで、犯罪収益罪、第二条三項、この定義ですけれども、どうもよくわからないところがあるわけです。  例えば、この二条三項に言う「犯罪収益に由来する財産」、特に四項の「犯罪収益等」という「等」が入っていますけれども、これは一体具体的にはどういうことを想定しておられるのか。この四項で、「「犯罪収益等」とは、犯罪収益、」これは犯罪によって直接に得られる利益と考えればわからないことはないんだけれども、「犯罪収益に由来する財産」、この後がまた非常にわかりにくいんだけれども、「これらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産」、こういうのがありますね、いわゆる混和財産。これらもちょっと概念として、構成要件上の概念規定としてこれでいいんだろうか、不明確に過ぎるんじゃないだろうかという心配があるんですけれども、この辺はどうでしょうか。 <0051>=松尾政府委員= 具体例を織りまぜながら御答弁申し上げたいと思います。  「犯罪収益等」というのは、今先生がお読みいただきました二条四項に書いてありますが、犯罪収益そのものと、犯罪収益に由来する財産、そのほかに混和財産、この三種類から成っております。  この場合に、混和財産というのは、犯罪収益または犯罪収益に由来する財産を得た者が保有する財産全体を意味するわけではございませんで、例えば、一口の定期預金というものを想定いたしますと、そういう個別の財産ということをまず対象としているということでございます。  それぞれの概念をちょっと申し上げますと、犯罪収益に由来する財産と申しますのは、例えば、犯罪収益の結果として、ある人が不動産を取得しましたというケースでございますが、そこから上がります家賃は、この犯罪収益に由来する財産ということになります。  それから、現金を獲得してそれを預金しました、一億円預金しましたら一千万円、昨今では百万円ぐらいにもならないと思いますが、その百万円の利息がつきましたということになりますと、この利息が由来する財産ということになります。  犯罪収益の対価として得た財産、例えば犯罪収益を売却して得た売買代金というのがこれに当たると思いますが、あるいはこれらの財産の対価として得た財産その他の犯罪収益の保有または処分に基づき得た財産、例えば犯罪収益を売却して得た代金で、その売却代金でさらに何か物を購入した場合のその物ということになります。このようなものが犯罪収益に由来する財産ということになるわけでございます。  混和財産というのは、先ほども申し上げた一口の定期預金の中で、犯罪収益によって得たものが例えば百万円のうちの十万円である、しかし、これはもう既に区分けできない形になっておりますので、これは全体として混和財産、そういう概念でございます。 <0052>=佐々木(秀)委員= お聞きをすればするほど非常に範囲が広がって、いわゆる因果関係といいますか、これがますます広がっていきそうな気がして、果たしてこれでいいのかという思いを強くするわけですね。  例えば、犯罪収益によって得た、犯罪から直接得た金なら金で、あるいは経済的な利益で不動産を購入して、例えばうちを建てた、うちを買った、それを人に貸した、その家賃もというんでしょう。それから利息もというんですからね。非常にこれは概念が拡大していくんじゃないかと思って、これも心配でなりません。もう少しこれも、私、具体的にケースを考えてみたいと思いますけれども、きょうのところはこの程度にまずしておきます。  それから、次にマネーロンダリングの方に入るわけですけれども、麻薬事犯の収益については、これも前から話が出ておりますけれども、いわゆる麻薬特例法で資金洗浄罪、これは規定がありますね。しかし、本法では、なお麻薬事犯による収益ということを挙げてこれを規定しておられるわけですけれども、そうすると、麻薬事犯の収益、マネーロンダリングの罪ですね、両者の関係は一体どういうことになるのか。これができた場合に、麻薬特例法の方の規定というのはどういう扱いになるのか。  特に、この組対法の提案理由の御説明では、犯罪集団による麻薬、いわゆる薬物事犯だとか銃砲刀剣の類の事犯ですね、これを意識しておられるということが書いてあるんだけれども、そうすると、麻薬特例法があるのに、さらに本法をつくる理由というか、これは屋上屋を重ねることになりはせぬかというような思いがするのですけれども、この点はどうですか。 <0053>=松尾政府委員= 御指摘のとおり、現在、麻薬事犯の収益については、麻薬特例法によりまして、マネーロンダリングを規制する法律になっております。今回の法案は、そのマネーロンダリングの前提犯罪を必要なものに拡大していくということでございます。それが大きなねらいということでございます。  それからもう一つは、現在ある麻薬特例法によるマネーロンダリングの規定も、現在の国際的なマネーロンダリングの規制の法整備の状況からいいますと、はっきり言うと、不備がございます。  というのは、違法に得た収益で会社経営をするような場合に、現在の麻薬特例法では、それをマネーロンダリングとして対象となし得ないことに、その範疇外になってしまっているというのが一点でございます。  それからもう一点は、現在でも、麻薬特例法で、疑わしい取引については金融監督庁に金融機関が届け出るということになっておるわけでございますが、これが捜査当局に対する利用、その届け出が監督庁における分析等を経て捜査機関に対してどういう関係になっているかといいますと、そこのところは規定がないということでございまして、事件としての捜査という観点からいいますと、不十分ということでございます。  薬物事犯についてのマネーロンダリングの規定といいますと、主にその二点、細かい点は若干ありますが、二点が今回の法案では手当てをされている。そのほかに、前提犯罪を必要な範囲内で拡大したというふうに御理解いただきたいと思います。 <0054>=佐々木(秀)委員= どうもこの辺も、せっかくそういうものがあるのにさらにというような感じが私は否めないのですね。前の質問のときにも、この麻薬特例法ができてからの検挙の実態などを去年も警察庁にお聞きしているのですけれども、これも必ずしも十分ではないようにも聞いているのです。さらに今度の法律をつくったからといって、それではこれが非常に強化されるかということになると、必ずしもどうかなというような思いがいたします。これもまた後にもう少し詰めた議論をしたいと思います。  それと、法律的に言うと、犯罪収益罪の関係ですけれども、大体、犯罪の収益を使ってしまうということは、今まではどういう使い方をしようと不可罰的事後行為ですね。ところが、今度はそうでなくなるということなんです。先ほどお話を聞いたように、犯罪収益として、あるいはそれが他の財産に形を変えて、でも残っているというような場合、そしてそれをまた使う、そこから利益を得るというような行為については独立の犯罪になるというわけです。  それと、時効の関係がありますね。時効がないのですね、収益罪については。そうすると、本犯の方が場合によったら時効になるということがあるわけですね。例えば、窃盗罪を犯して、その窃盗によって収益を得た。その窃盗については捕まらないで、時効を過ぎてしまった。そして、時効後にそれが発覚をして捕まった。しかし、彼に対してはもう有罪ということにはならぬわけですね、科刑もできないことになる。  にもかかわらず、彼の収益がその時効後もまだ残っているあるいは別な財産に姿を変えていた、さっき局長が言われるように、そこから一定の収益が上がっていたというようなことがわかった場合には、本犯とは別に、これだけが独立して、収益罪として本法によって起訴され、そして刑罰を受けるということになるのですか。そうだとすると、その間に本犯との関係で矛盾が出てきませんか、現在の刑法の体系の上で、犯罪類型として。この辺どうですか。 <0055>=松尾政府委員= お尋ねは、それぞれの罪が何を保護法益としているかということに帰着するんだろうと思います。  必然的に不可罰的事後行為の理論とも絡むわけでございますけれども、例えば窃盗をやりますと、確かにその後の財物の処分については不可罰的事後行為でございます。壊そうと燃やそうとそれは勝手じゃないか、こういうことで、それが新たな犯罪としてとらえられることはない、器物損壊だの何だのということにはならない、おっしゃるとおりでございます。  そこにある考え方としては、新たな保護法益の侵犯がないということでございます。窃盗でありますと、もう処分権全体を手に入れたわけですから、それを煮ようと焼こうとということでございまして、そんなのどうでもいい、それはもう、社会は窃盗だということで評価し尽くしたんだ、こういう考え方だと思います。  今回の犯罪収益についてのいろいろな処罰規定でございますが、これは、犯罪収益等が例えば法人等の事業支配を目的としてさらに再投資されるといいますか、使われる、あるいは犯罪の発覚を防ぐためにその犯罪収益等が隠匿される、あるいはそれを受け渡しして転々させる、そういうようなことを対象としておるわけでございます。  確かに、そういった犯罪収益についての事後的な行為につきましても、例えば合法的な経済活動に重大な悪影響を及ぼす、あるいは組織犯罪自体が拡大再生産される、あるいはその領域を拡大する、そういったことで社会に大変な影響を与えるということで、これは抑圧しなければならないということで、その点に着目しまして、一つの犯罪類型として設けるわけでございますので、不可罰的事後行為の概念はここには入る余地がないということでございます。  それから、もう一点は時効の問題でございます。  確かに、財産犯が時効になります。しかし、今回規定をしております犯罪収益等に係る罪につきましては、本犯の時効の完成に何ら関係なく成立するということになります。その相互関係はないということになります。  ただ、誤解があるといけませんが、この犯罪収益等についてのいろいろな処罰規定自体も、これはその行為の性格にもよりますが、この行為自体は一つの犯罪でございますので、やはり時効の概念は入ります。したがって、これ自体が時効になっていくことはあり得るわけでございます。ただ、本犯の財産行為の時効との関係で影響されることはないというふうに御理解いただきたいと思います。 <0056>=佐々木(秀)委員= ですから、本犯との関係が切断されて、本犯の方は不問に付されるのに、そこから生じている行為が別の独立の犯罪ということになるというのは、これが法理論的に、私が頭が悪いせいかもしれないけれども、どうも納得いかない、ぴんとこないんですよね。  それと、もう一つ納得いかないのは、今の収益罪というのは、主体は団体に限らないわけですね。個人も当然その犯罪主体になるわけですね。そうなってくると、今まで不可罰的事後行為とされていたものがそうでなくなる例があるというんだけれども、これからも、犯罪によって不法に得た収益、例えばそれが金銭だとすると、飲んだり食ったりしてそれをぱっと使っちゃった、これは問題にならないんですね。だけれども、それを残しておいて、銀行に預けたり、物を買って別のものにしたり、それが残っているということについては犯罪になるという、ここのところも、使い方、残し方というか、それによって違ってくるというのはどうも納得いかない。  そうしたら、例えば犯罪によって得た利益を競馬、競輪につぎ込んだ、そうしたら当たっちゃった、そこでもうけた金が残っている、その因果関係が明らかになったという場合に、これもやはり問題になるんですね、その点はどうですか。 <0057>=松尾政府委員= 競馬とか宝くじということになりますと、なかなか難しいところでございます。例えば三百円投資したら一億円当たったというのは、これも理屈の上では犯罪収益が転化しているというわけでございますので、それにはなろうかと思います。ただ、そこらあたりは可罰性の程度といいますか、そういった範疇の話でございまして、その一億円をまたさらに隠したら、今度は一億円の隠匿罪だというような形にして、一億円の財産犯が一億円隠したのと同じように扱うということは、今の刑事司法の考え方でいいましてもそれは相当でないものでございますから、それぞれ具体的な事案において妥当な結論になっていくんだろうと思います。 <0058>=佐々木(秀)委員= 事ほどさように、いろいろなことが想定されて、全部を規律することはできないと私は思うんですよ。  それで、一々、ケースで、これがよくてあれがだめだといったって、例えば、おっしゃるように、今の宝くじなんかでわっと当たる可能性がないとは言えない。その使った資金がやはり犯罪によって得た利益だとすると、これはゆゆしい問題で、黙っておけないということにもなるんじゃないかと思うんです。これは、あとは具体的なケースごとに捜査の方に任せればいいのかというと、私はそういう問題ではないと思うんで、ゆゆしい問題になる。つまり、どういうふうにでも使われることになるということが問題なんですよ、実は。だから、ここのところも突っ込んで、そんな安易に考えてもらっては困ると私は思っております。  それと、念を押しておきますけれども、今言ったように、これらの問題は団体へのものではないですからね。本法は組織犯罪法と言っているけれども、ここのところは団体性とは切り離されているんですからね。個人個人の刑事責任を問うことになっているんですからね。そこのところをごっちゃにしたら、これはえらいことになると思います。  それから、それ以上に私が心配だと思われるのは、第九条のいわゆる事業経営の支配罪、これはマネーロンダリングの罪とは全く別のものでしょう。質的には違うものでしょう。これは、ある意味では株主権の不当な制限にもなるんではないかと私は思うんですよ。企業の人事などに口を出す行為、これを予防的に処罰しようというようなことになるわけですから、下手をすると、これは株主権の不当な干渉にもなりかねない。これは、金を使ってということになっているようだけれども、しかし、この第九条というのはマネーロンダリング罪とは全く別な問題、異質の問題だと私は思うんですよ。これは、下手をすると、いろいろな事業の合法的な経済活動まで抑制していく危険が非常に大きくなってくると思うんですけれども、この点はどう考えていますか。 <0059>=松尾政府委員= 犯罪収益を用いまして法人等の経営に乗り出すといいますか事業経営をするという行為自体でございますけれども、やはりこれは健全な国民感情にまず反するんだろうと思います。そこで行われる事業活動がまたさらに犯罪その他の不正な行為に利用されたり、あるいは事業経営に際して犯罪収益等が不法な競争手段に用いられるなどの不公正な活動が行われるおそれがあるわけでございまして、やはり法人制度全般に対する信頼の問題にも影響しかねないものだろうと考えております。  犯罪収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為の処罰は、このような合法的な経済活動への悪影響を防止するというために、犯罪収益等を用いることによりまして法人等の事業経営の支配をする手段として最たるものであります役員等の変更行為を処罰しようということでございます。この罪は、法人等の事業活動自体を犯罪としてとらえようとするものではございません。この罪の検挙、処罰によりまして、当該法人等や善意の第三者に不測の損害を与えるものではなく、企業の合法的経済活動を抑制するおそれはないと考えております。  なお、諸外国においても、犯罪収益の運用、これは投資等が含まれております、これがマネーロンダリングの一部と理解されまして、範囲に多少の広狭はあるところでございますが、いずれも処罰の対象とされていることを申し述べさせていただきます。 <0060>=佐々木(秀)委員= この第九条は、私は二つの点で非常に問題があると思うんです。一つは、そういう犯罪収益を使って人事に口出しをするなどということをやめさせようというんでしょう。大体、その使われる金が犯罪収益による金なのかどうかということの特定性は、先ほどもお尋ねしたように、非常に犯罪収益の範囲が広いから、この点で非常に問題があると思うんですね。それと、今言ったように、事業経営支配の目的というのがどこまでなのか。場合によったら株主権の正当な行使まで抑制することに、干渉することになりはせぬか、こういうこともありますので、本当にこれは私は心配だと思っております。これはもう時間がありませんから、とりあえずこの程度、問題提起だけしておくことにいたします。  そしてもう一つは、第五章、五十四条のいわゆる疑わしい取引についてです。金融機関に、犯罪性を認定した場合にその届け出を義務づける。これは確かに今も麻薬特例法第五条にあるんですけれども、果たしてこれはうまくいきますかね。一体、犯罪的な取引だということをだれがどういう基準で認定するんですか。前例があるということなので、麻薬特例法に規定があるけれども、これは警察にお伺いしますけれども、捜査の端緒として、実際にこういう届け出がどのぐらいあったのか、この麻薬特例法ができてから。それによって検挙に至るというようなことが、そういう実績があるのかどうか、それをちょっと言ってくださいよ。 <0061>=小林(奉)政府委員= 御質問の件についてでございますが、いわゆる麻薬特例法第九条、第十条違反事件として検挙した事件のうちに、金融機関からの疑わしい取引の届け出を端緒として検挙した事件はないというのが実態でございます。  ただ、この九条、十条違反の検挙件数について若干報告させていただきたいと思いますが、まず、九条の不法収益等隠匿事件の検挙事件件数は、平成五年に一事件、平成七年が二事件、平成八年が二事件、平成十年が二事件、本年が現在まで一事件の計八事件でございます。  また、十条の不法収益等収受違反の検挙事件数についてでございますが、平成六年が一事件、平成九年が一事件の計二事件、こういう検挙状況になっております。 <0062>=佐々木(秀)委員= 届け出は麻薬特例法の九条とおっしゃった。五条じゃなかったかな。  しかし、これは法務省としてもどこまで期待するんですかね。基準は政令かなんかでつくることになるらしいけれども、麻薬特例法でもつくっているわけでしょう。今お話聞いたように、届け出が端緒になった例というのはないというんでしょう。私は、これは端緒になんかなりっこないと思うんですよ。  例えば、窓口にいて、お金を持ってきた、そのお金を持ってきた人の人相風体でこれは怪しいと見るのか、あるいは継続的な取引があったとしても、銀行の方で、その取引先が麻薬取引をやっている暴力団だということをわかっていてというのなら別だけれども、そんなことを預ける方で言うはずがないでしょう。そんなばかじゃないでしょう、預ける方、暴力団にしても。それに対して義務づけをするなんというのは、それによってこれが捜査の端緒になるというようなことを本当にまじめに期待しているんですか、法務省。僕は、ここはナンセンスだと思うよ。 <0063>=松尾政府委員= まず事実関係からお話ししたいと思いますけれども、麻薬特例法の五条から七条にかけまして、薬物犯罪の収益等に係る疑わしい取引の届け出制度が御質問のように設けられております。  この届け出の件数でございますけれども、平成九年ごろから、つまり、金融監督庁ができましてからということですが、その届け出件数が増加いたしまして、平成十一年度もその増加傾向が続いております。金融機関の担当者にこの制度についての理解が深まりつつあるということで、それなりに機能しておるし、またその機能の度合いを深めているという法務省の認識でございます。  ちなみに、その件数でございますが、届け出件数、取引件数ということで、問題はその取引件数ということになろうかと思いますが、確かに、平成四年度の制度発足当時は年間で約二けたということです。例えば、初年度の平成四年度は、五十六の取引について届け出があったということでございますが、比較の点で申し上げますと、平成十年度は、この届けられた取引が七百五十八取引、十一年度は、五月十八日現在、まあ一カ月半ぐらいですが、既に四百四十一の取引の届け出があります。こういうことで、今申し上げましたように、この制度自体がだんだん理解が浸透しているということが、この数字からもおわかりいただけるかと思います。  確かに、この麻薬特例法の届け出を直接の端緒として検挙した事件は、今警察からも報告がありましたけれども、まだないわけでございますが、これは、一つは制度的な欠陥がございまして、先ほど申し上げていますとおり、麻薬特例法では、金融機関からの届け出、疑わしい取り引きに関する情報を監督庁は整理分析することになっておりますが、その結果等を捜査機関等に提供することとはされていないわけでございます。  今回の法案は、その問題点を解決しようということで、五十六条をごらんいただきますと、「捜査機関等への情報提供等」、こう書いてありまして、その制度的な穴といいますか、そういったものをこういった形で埋めまして、監督庁の方から、犯罪情報等に資するものがあれば、それは適宜適切に回付されてくるということを新たに設けております。これも大きな一つの制度的な改善でございまして、先ほど申し上げました届け出の件数が、私どもに言わせれば非常に急増しているという実情と、こういった法改正をあわせまして、やはりこの疑わしい取引に関する届け出制度というのは有効に機能するものという理解でおります。 <0064>=佐々木(秀)委員= 先ほど条文の関係で、麻薬特例法第九条は不法収益等の隠匿罪ですね。私の言った金融機関の取引届け出は第五条じゃないですか、麻薬特例法では。そうですね。そういうことですので、確かめをしておきます。  ただ、恐らく局長も御案内だろうと思うんだけれども、例えばことしの三月二十五日の産経新聞などで御紹介があるんですけれども、アメリカでもこれはやっているわけですね、金融機関の届け出義務。ところが、これは非常にプライバシーを侵害するということで、金融業界だとか人権団体からこれに対しては物すごい批判があって、それで、アメリカの金融当局、これはアメリカの連邦準備制度理事会、FRBですけれども――実施でなくて計画していたんだね。あのバーミンガム・サミットなどを受けて、これをやろうということで準備をしていた。ところが、反対が強いんで計画を撤回した、こういうことが報道されております。  そして、ことしの六月にドイツで開かれるケルン・サミットでも再びこの対策の見直しを迫られる可能性が出てきたということが報道されているんですね。これは御承知だろうと思います。こういうことがあるにもかかわらず、日本としては、今度の六月の会議に今のこの法案で、そのままでいくよということを言うんですか。この辺、どうなんです。 <0065>=松尾政府委員= ただいま先生御指摘の報道は、平成十一年三月二十五日に確かに日経にございます。ただ、これは若干の誤解を生んだ報道でございまして、ちょっと正確に申し上げておきたいと思うんですが、アメリカ合衆国におけるこうした疑わしい取引についての届け出の法制でございますが、現行は、その本人の確認、あるいは疑わしい取引の届け出制度というようなものを整備されているわけでございますが、アメリカの、今回政府当局が考えました内容というのは、さらにそれを一歩踏み込んだものでございます。  その内容を見ますと、顧客との取引監視を強化徹底させるために、新たに銀行において主として三点の義務を課するという内容になっていたようでございます。  一点は、新規顧客の本人確認を行い、資金源を特定する。つまり、お金を持ってきましたら、これはどこから得た金かというところまで特定しなさいと、極めて厳しい要求を銀行側に要求しています。  それから二点目は、特定の顧客の通常取引及び予想される取引を決定する。つまり、この顧客についてはどういう取引が通常だということを金融機関に判断させるという、これもまたなかなか難しい。  それから三番目には、取引を監視。顧客にとって通常でない取引を見きわめ、取引が疑わしいかどうかを決定する。  銀行側にそういうような一歩踏み込んだ判断をさせるという内容になっておりまして、恐らくこれは、こういった提案についての金融機関の反発は相当強かったんじゃないかと思います。そんなこともありまして、なかなかうまくいかなかったということが報道されたことでございまして、疑わしい取引についての法制そのものが疑問視されたということではないので、その点は誤解がないようにお願いしたいと思います。  つまり、現在の制度よりも相当踏み込んだ制度を政府は企画したところが、なかなか賛同が得られなかったということでございます。 <0066>=佐々木(秀)委員= そろそろお昼になりますので、もう終わりにしたいと思いますけれども、多少ほかにも予定していた質問もあるんですが、また質問の機会もあると思いますのでそれに譲って、最後に一点。  私は、昨年の質問のときも、組織犯罪対策、集団的な犯罪を取り締まるということ、あるいは摘発する、あるいはそれをなくするようにしていくという対策は総合的に立てられるべきものだということを申し上げました。例えば麻薬の関係、薬害の関係でも、この薬の関係が未成年者にも及んでいるということなどを考えると、教育の問題なども含めて、総合的な対策というのが必要なのではないだろうかということを申し上げました。ただ罰則を強化したり、あるいは犯罪類型をふやすというようなことだけでは、とてもとても根絶できるものではない。一つは、やはり社会的な、全体的な取り組み、そういうことがなければならないのではないか、あるいは、国民の意識改革ということも必要なのではないかということを申し上げてきました。  実は、きょうの新聞各紙、今私が持っているのは日経新聞と朝日新聞の朝刊ですけれども、これによると、総会屋だとか暴力団の威圧がなお続いていて、そして上場企業など優良企業の約四割が金銭の要求を受けて、それに応じているというような報道が、時間がありませんので全部を読み上げませんから少し正確を欠くかもしれないけれども、いずれにしても、こういう違法行為が行われている。  しかし、そのさまざまな形の要求に対して応じるということになると、これは犯罪とは言えない、すれすれのところであるわけですね。場合によったら明らかな違法の行為もあると思いますけれども、私どもは、当委員会において商法の改正をして、総会屋対策の条項もつくったわけですね。にもかかわらず、こういうようなことが横行しているというのは、これは企業の方もだらしないし、それからまた、摘発する側、あるいは行政の側も、私はしゃんとしてないからじゃないかと思うのですけれども、こういうことを総じてやらないで、ただ法律を新しくつくろうとか、罰則を強化しようというだけでは、とてもなくならないと思うのです。  そういうことを考えますと、私はもっとほかに考えるべきことがあるんじゃないか、やるべきことが国としてもあるんじゃないかと思いますが、これは法務大臣、どんな御感想をお持ちですか。 <0067>=陣内国務大臣= 今、専門的なお立場からずっと御議論いただいたことを拝聴しながら思ったわけでございますけれども、法務当局といたしましては、組織的な犯罪対策として法整備すべき事項が今回の三法案の内容で尽きているというものではないのじゃないかな。それからまた、刑事司法の分野においても、犯罪による被害の回復等、いろいろな取り組みが必要だということを感じたわけでございます。  ただ、国際組織犯罪にどう対応するか、これも迫られた課題でございますので、この法の趣旨が生かされますような、そういう意味合いでいろいろとまた御議論を賜りたいと思っております。ありがとうございました。 <0068>=佐々木(秀)委員= では、時間ですので終わります。ありがとうございました。 <0069>=杉浦委員長= 午後三時三十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十七分開議 <0070>=杉浦委員長= 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所金築人事局長、白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0071>=杉浦委員長= 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ――――――――――――― <0072>=杉浦委員長= 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案審査のため、来る二十五日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0073>=杉浦委員長= 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ――――――――――――― <0074>=杉浦委員長= 質疑を続行いたします。漆原良夫君。 <0075>=漆原委員= 公明党・改革クラブの漆原でございます。  犯罪捜査のために通信の傍受を認める本法案は、通信の秘密の保障という国民の基本的人権と深くかかわっております。他方、犯罪のための通信傍受を認めることによって保護される利益も、国民の生命、身体、財産といった大変重要な人権でございます。この相反する人権の保護をどのように調整すべきか、この本法案の審議に課せられた大きな命題であると考えております。  私は、この問題を解くためには、次の二つの点を検証する必要があると思います。  その第一は、裁判所の令状実務が現在どのように行われているのか。そして、裁判所に人権擁護の最終的なとりでとしての機能を期待できるかどうか。第二番目は、本法案そのものの検証でございます。本法案が相反する利益の調整のためにどのような措置をしているか。この二つの観点から質問をさせていただきたい、こう思います。  裁判所は、逮捕状、差し押さえ・捜索令状、勾留状、保釈などの令状実務を担当しておりますが、簡易裁判所、地方裁判所でほとんどの実務を担当しておるところでございます。  まず、簡易裁判所でございますが、簡易裁判所の判事の任命資格としまして、裁判所法四十四条は、判事補、検察官、弁護士など司法試験に合格した者及び司法研修所の教官だとか大学の法律学の教授など司法試験合格と同等と認められる者を挙げております。しかし、四十五条では、例外として、四十四条の任命資格に該当しない場合であっても、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て判事に任命されることができる、こう規定しておりますが、その任命の基準について教えていただきたい、こう思います。 <0076>=金築最高裁判所長官代理者= 簡易裁判所判事の任命の根拠は、今委員御指摘のとおり、一つは裁判所法四十四条でございまして、これは、判事、判事補、検察官、弁護士等の一定の職にあった者、一定期間、三年以上になる者からこれを任命する。これはもう資格で決まっているわけでございまして、基準ということになりますと、その資格が基準ということになろうかと思います。  それからもう一つは、これも御指摘ありましたように、裁判所法四十五条でございまして、多年司法事務に携わったり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者が、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て任命されるという道があるわけでございます。こちらの方は資格ということではございませんで、最高裁判所の選考委員会の選考で決まる。これは、法律学の試験その他をしておりまして、こちらの方は試験でございますので、基準という言葉が適当かどうかわかりませんが、そういう選考形態になっております。 <0077>=漆原委員= それでは、四十四条で任命された裁判官の人数は一体どのくらいいるのかということと、それから、選考委員会の選考を経て判事に任命された簡裁判事の数はどのくらいいるのか、教えてください。 <0078>=金築最高裁判所長官代理者= 現在、簡裁判事の合計数は七百六十八名でございますが、そのうち、四十四条による者が二百十二名、四十五条による者が五百五十六名でございます。 <0079>=漆原委員= それでは、地方裁判所は、判事及び判事補でこれを構成することになっておりますが、地方裁判所での令状実務の担い手は未特例判事補であるとよく言われております。この判事補と未特例判事補についての御説明をいただきたいと思います。 <0080>=金築最高裁判所長官代理者= 判事補は、修習生修習を終えた者から任命するわけでございますが、判事補の中には、裁判所法二十七条によりまして、判事補は、法律に特別の定めがある場合を除いて、一人で裁判をすることができない、また、同時に二人以上合議体に加わったり、あるいは裁判長になることができない、こういう職権の制限が規定してございます。  ただ、特別の定めといたしまして、判事補の職権の特例等に関する法律というのがございまして、その一条で、判事補、検察官、弁護士等の職の一つまたは二つ以上の年数を通算いたしまして五年以上になる者から最高裁判所の指定する者は、判事補として、先ほど申しました職権の制限を受けないということになっているわけでございまして、この職権の制限を受けない判事補を一般に特例判事補と呼んでおりまして、その特例がまだつかない人を未特例判事補と呼んでいるわけでございます。この特例判事補は、裁判事務に関しまして判事と全く同一の、同等の権限を有するということになっております。 <0081>=漆原委員= 判事補は、原則として十年たたないと判事になれない。それで、特例で五年以上の者を判事補の制限を外して一人で裁判ができるようにする。未特例判事補というのは五年未満の判事補のことである、こういうことでよろしいですね。 <0082>=金築最高裁判所長官代理者= そのとおりでございます。 <0083>=漆原委員= 未特例判事補が勾留実務を担当できる根拠は、今おっしゃった刑訴法の四十五条だ、こういうことだと思うのですが、今、未特例判事補というのは何名ぐらいいて、日常的にはどのような職務を担当しているのか、教えてください。 <0084>=金築最高裁判所長官代理者= 現在、未特例判事補の数は三百六十名でございます。  どういう仕事をしているかということでございますが、先ほど申し上げましたように、原則として一人で裁判をすることができませんので、通常は合議体の一員として、合議体に加わって裁判をするということになります。最も典型的なものは、民事、刑事の訴訟事件で、いわゆる主任裁判官として判決の起案をしたりするというのが一番代表的な仕事かと思います。そのほかに、法律の特別の定めがある場合には一人で裁判をすることができる場合がございますので、一人でできる裁判をすることがある。どういう事件かと申しますと、民事事件でありますと民事保全とか民事執行における決定、刑事事件でありますと令状の発付、あるいは少年審判等でも一定のものを除いて決定ができる、こういうことになっております。そういう仕事をしております。 <0085>=漆原委員= 地方裁判所の令状実務は、昼間は大体未特例判事補が担当して、夜間は一般の判事が当番制で担当しているということをよく私ども聞くのですが、どんなものでしょうか。 <0086>=白木最高裁判所長官代理者= お答え申し上げます。  各庁における令状事務をだれがどの程度担当するかは、その庁の裁判官会議により定められているところでございます。  私どもといたしましては、その詳細を逐一承知いたしているわけではございませんが、身近な者に聞いてみたところでは、いろいろな方が担当されているようでありまして、専ら未特例判事補のみが担当しているというわけではないようでございます。 <0087>=漆原委員= この未特例判事補の令状実務は、当然裁判官独立の原則に基づいて行われていると思うわけでございますが、その判事補に対する令状実務の研修、教育、これは、五年未満の方ですから、そういう方が令状実務を担当しているということでございますから、その令状実務の研修とか研究会とか、これは裁判所全体でどのように取り組まれているのでしょうか。 <0088>=金築最高裁判所長官代理者= 裁判官にとりまして、令状事務はだれもが担当する重要な職務の一つでございますので、判事補に対しましても、令状事務について研究会とかあるいは研修などをいろいろ行っているところでございます。  まず、新任が任命されまして配属されました庁におきましては、令状事件の処理を担当いたします。そのときに、もちろん自分で勉強する、自己研さんをするということもございますけれども、いろいろ仲間で研究会をやる、あるいは令状部の裁判官がおるところではそういう人がいろいろ講義などをすることもある。それから、司法研修におきましても、判事補が任官した直後に行われる研修などにおきまして、いろいろな研究会、令状事件処理についての問題研究等、いろいろ行っております。 <0089>=漆原委員= 現在、日本の地裁は五十カ所、支部が二百三カ所、簡易裁判所が四百三十八カ所、こう聞いておりますが、このうち、令状専門部という専門部を持っている裁判所はどことどこで、何カ所ぐらいありますか。 <0090>=白木最高裁判所長官代理者= 令状事件のみを専門的に扱う部が置かれておりますのは、東京地裁本庁と大阪地裁本庁の二庁でございます。  そのほかに、令状事件について特定の部で集中して処理する体制をとっております庁として、横浜地裁本庁、名古屋地裁本庁、それから札幌地裁本庁がございます。この三庁では、そういった体制をとっております部としては、令状事件だけを扱うのではなく、ほかの種類の事件も扱っているということでございます。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0091>=漆原委員= それでは、地裁の支部が二百三カ所あるということでございますけれども、支部に裁判官が一人しかいない、こういう支部が幾つあるか。それから、支部のうちに数名の裁判官がいたとしても、民事の専門とか、あるいは刑事の専門という区別のない裁判所の支部、これはどのくらいあるんでしょうか。 <0092>=金築最高裁判所長官代理者= まず、裁判官が一人しか配置されていない支部でございますが、全国で六十二支部ございます。  それから、複数置かれていても区別がないところが幾らぐらいあるかということでございますが、地裁支部のうち、部が設置されている支部というのは比較的規模が大きい庁でございまして、これは十六庁だけでございます。そういうところでは、担当裁判官が分かれている場合が多いだろうと思います。それ以外の支部は部がございませんので、裁判官の間で事件分配を決めているわけでございますが、これは庁の規模とか事件数でどういうふうに分担するかというのはさまざまでございまして、区別がある庁、ない庁というのを一概に数字で申し上げるということはなかなか難しいと思います。  実際問題としては、事件数がそれほど多くなくて規模の小さな庁では、両方の事件を担当しているケースの方が多いんじゃないだろうかというふうに見ております。 <0093>=漆原委員= 支部に一人しか裁判官がいないとか、あるいは民事、刑事の部の区別がない裁判所では、令状実務としては大変忙しいんじゃないかな。一般の裁判実務をやったり、民事、刑事の裁判をやったり、あるいはその他の訴訟外の事件を担当したりしますね。  よく法務委員会で、裁判官が大変忙しいという実態が何回も議論されております。日曜も祝日も記録をうちに持って帰って記録読みだとか判決書きをしている、こういう裁判官の忙しい実情がよく問題にされているわけでございますけれども、そういう場合の裁判官というのは、一般の民事、刑事の仕事の合間を縫って、あるいは夜遅く令状請求が自宅に飛び込んでくる、そこで令状を発する、こんなふうなケースになるんでしょうか。 <0094>=白木最高裁判所長官代理者= おおむね委員御指摘のような状況であるというふうに思いますけれども、ただ、裁判官がそういうふうに非常に少ない庁というのは、おのずと令状請求事件数も極めて少ないということでございます。 <0095>=漆原委員= 私どもがよく簡易裁判所に行きますと、地元の警察官が逮捕状を何通か持ってきて、逮捕状の申請をする。大体、廊下で待っているケースが非常に多いんですね。逮捕状というのは、一件につきどのぐらいの時間で審査しているかわかりませんけれども、廊下で警官が待っているくらいの範囲内で出てくるものなんでしょうか。 <0096>=白木最高裁判所長官代理者= 委員仰せのとおり、ケースによって違うと思います。これは、警察が持ってまいります資料が膨大な場合とか、あるいは大変薄い場合、さまざまでございますが、通常の場合ですと、さほど時間はかからないのではないかというふうに思います。 <0097>=漆原委員= 逮捕状を請求する場合には、逮捕の理由と逮捕の必要性の存在、この二つについての資料の提供を義務づけておりますね。  逮捕の理由というのは、多分、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由だ、こういうふうに思うんですが、これはどの程度の資料なのか。それから、逮捕の必要性があると認めるべき資料というのはどの程度の資料なのか。通常、簡単な事件でいいんですが、大体どんなものが裁判所に出てくるのか、教えていただきたいと思います。 <0098>=白木最高裁判所長官代理者= 刑事訴訟規則百四十三条には、逮捕状の請求には、逮捕の理由及び必要性を認めるべき資料を提供しなければならない旨定められておりまして、一般的には、この規定に基づきまして、犯罪事実を明らかにする被害者の供述調書であるとか、あるいは被害者等から事情聴取をした捜査官が作成いたしました捜査報告書でありますとか、あるいは被疑者の罪証隠滅や逃亡のおそれがあることを示す捜査報告書、これは内容的にはさまざまでございますけれども、そういったものが提出されているものと思われます。  なお、逮捕の理由及び必要性に関する資料が不十分であったり不明確であったりしたような場合、同じく刑訴規則によりまして、裁判官が逮捕状の請求者から事情聴取をすることも認められております。 <0099>=漆原委員= 犯人がわからないという、被疑者不詳のまま家宅捜索令状を請求する場合には、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料というものを提供しなきゃなりませんね。  松本サリン事件の被害者の河野さんは、みずからサリン事件の被害者であったにもかかわらず、マスコミからも世間からも犯人扱いされて大変な被害をこうむられたわけでございますが、私は、その大きな原因の一つが、裁判所が捜索令状を出した、それに基づいて河野さんのうちの家宅捜索が行われた、これは非常に国民に与える影響が大きかったんじゃないのかな。裁判所が令状を出したんだからとか、あるいは裁判所が何の根拠もなく令状を出すわけがない、こういうふうな思いに国民がなるのは私は当たり前だなと思っております。  本件の場合はまさに被疑者不詳で捜索令状が請求されておるんですが、先ほどの、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを認めるべき資料というのは、どんな資料が出されたのか、教えていただければ教えてください。 <0100>=白木最高裁判所長官代理者= 御指摘の事件につきましては、いつどこで捜索・差し押さえ令状が発付されたかということはわかりますけれども、その際どういった資料に基づいて発付されたかという点につきましては、わかりかねるところでございます。 <0101>=漆原委員= どんな資料が出て、どんな理由でこれを判断したのか、これは最高裁としては調査の及ばないところだということなんでしょうか。 <0102>=白木最高裁判所長官代理者= 仰せのとおりでございまして、捜査官が疎明資料を裁判所に持ってまいりまして、裁判官が判断いたしますと、そういった疎明資料は全部お返しいたしますので、もとより最高裁の方でそういったことを調査するなどということはいたしておりません。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0103>=漆原委員= まさに河野さんの立場からすれば、捜査に対する裁判所のチェックが適正になされていなかったという思いを強く語っておられましたが、何か御感想があったら。 <0104>=白木最高裁判所長官代理者= 具体的な事件の裁判につきまして私どもが意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じますが、今後とも、令状事務が適正に行われますよう、研修等に力を入れてまいりたいと考えております。 <0105>=漆原委員= 裁判所の実態というのはまことに外部からわかりにくい。ましてや令状審査は公開じゃありませんから、本当に実態がわからない、国民の目から見えないというのが実態だと思います。  そこで、今回、日弁連で、裁判官出身の弁護士による座談会、「裁判所は令状審査のチェック機能をはたしているか」と題する小冊子、事前に差し上げておりますけれども、これを出したわけでございますが、読ませてもらいました。元裁判官の実務体験を通じて裁判官の令状審査の実態が赤裸々に書いてありますが、大変勉強になったというふうに思います。  この中で、令状請求の却下率が著しく低い。逮捕状については、これは平成九年ですが、〇・〇四%、それから勾留状は〇・二六%、差し押さえ・捜索令状は〇・〇七%、これは全裁判所を通じた数でございます。この数字を見る限り、裁判所は本当に捜査機関に対するチェック機能を果たしているのかなと疑問に思う人も多いと思います、一%に満たないわけでありますから。  この却下率が大変に低いということについて、最高裁、御意見がありますか。どのようにお考えになっておりますか。 <0106>=白木最高裁判所長官代理者= 委員御指摘のように、逮捕状の却下率、それから勾留状の却下率など、おおむねそのパーセンテージは下がってきている状況にございます。ただ、実際には、却下のほかに捜査機関による取り下げというものがございまして、この却下と取り下げの総数を合わせた数字で見てみますと、逮捕状につきましては、却下、取り下げ率は逆に上がっております。なお、勾留につきましては、却下と取り下げ総数を見ましても下がっているという状況でございます。  なお、事件は一つ一つに個性がございますので、そういった却下率だけを見て議論するのは適当ではないのではないかというふうに考えております。令状の請求があった場合、裁判官としては資料を厳密に検討して判断をしているものというふうに承知をいたしております。 <0107>=漆原委員= その点について、この本の中にはこう書いてあるんですね。「裁判官が捜査機関から独立した中立公正な判断を憲法に忠実に行うという意識、実態がだんだんなくなって」きているんだ。「国家としての一体意識、犯罪なり悪いことに対しては裁判所も含めて国全体が取り組むんだと、そういう意識が強くなってきている。」座談会の中でもこういう御指摘がありますが、これについて御意見があったらおっしゃってください。 <0108>=白木最高裁判所長官代理者= 捜査を実施いたします捜査機関と裁判を担当いたします裁判官とは全く立場を異にしているわけでございまして、御指摘のような意識を持っている裁判官はいないものと私は考えております。 <0109>=漆原委員= 刑事記録について聞きたいんですが、この座談会の中でこう言っています。東京地裁刑事十四部、これは令状専門部でございますが、保釈請求の事件では記録を読まない。「特に必要のある事件、裁判官が指示した事件については記録を取り寄せる。そうでない分は検察官の求意見をできるだけ詳しく書いて貰って間に合わせる。その上で、尚かつ電話のやりとりで行うというのが運用だった」「只、軽視出来ないことは、記録が手元にないと裁判官が判断に迷ったときに、検察官のそれこそ「言いなり」になる要素になる場合がある」、こんな指摘をしております。  東京地裁刑事十四部の保釈の運用については、今でも、記録は地検から裁判所に上げないというのが原則なんでしょうか。 <0110>=白木最高裁判所長官代理者= 東京地裁の令状部では、保釈の請求がございました場合、令状の専門部として、既に勾留の時点あるいは勾留延長の裁判の際に記録を十分に検討していて、あえて記録を取り寄せなくても保釈の許否を判断できる場合には記録を取り寄せないこともございますが、多くの場合は記録を取り寄せているというのが実際の扱いのようでございます。  なお、保釈の請求をいたしました弁護人とは、必ず面接をして事情をよくお聞きするという取り扱いをしているとのことでございます。  それから、東京地裁以外では、どこの裁判所もすべて記録を取り寄せていると思います。 <0111>=漆原委員= 原則的には記録を取り寄せないんだというのが僕はちょっと信じられないんですが、裁判所は、弁護人とは必ず打ち合わせはしてくださっていると思います。ただ、本来原則的には、記録を全部請求のあった事件ごとに地検から十四部に取り寄せて、記録を見て判断すべきところが正しいやり方じゃないのかな。それを、必要がなければ記録は取り寄せしない、こういう取り扱いはいかがなものでしょうか。 <0112>=白木最高裁判所長官代理者= このたびの御質問をいただきまして、問い合わせてみたわけでございますが、その結果が先ほどのようなことのようでございまして、原則取り寄せないという扱いではないというふうに申しておりました。 <0113>=漆原委員= なるべく記録は取り寄せて、読んでいただいた上で判断をしていただきたいということを申し添えておきます。  「日本の裁判官の実情と「チェック機能」」について、こんな内容になっております。  私の場合ですと、勾留請求を却下したときに、地検の幹部検察官に部屋に来られて説教されたことがあります。   同じ管内の簡裁判事で令状実務をきちんと処理する裁判官がいましたが、その方は警察の方から所長にクレームが来て、所長が本人に注意したようなことがありました。役人の裁判官ですから出世や転勤などのいろんな問題がある。捜査機関に不利益なことをすると、それが裁判所の上層部に聞こえて、それが、その人の処遇につながることがあるのです。不利益処遇が目に見えているのに、敢えて裁判官にそれを要求することは非常に厳しいことだと思います。   裁判官が、検察庁との仲が悪くなれば、それが裁判所の上層部へ反映し、本人の処遇に響いてくる。あいつはもう二度と刑事事件をやらせるなとか、合議の陪席には向いていないとか、そういう形で処遇上不利益を受けている人がいるわけです。そういうことも含めた日本の裁判所の実情というものを見ずに、裁判官がチェックできるから大丈夫 というのは「まやかしなんです。」という、こんな大変ショックな内容が書いてあります。  令状審査を厳しくすると捜査機関の方から裁判所の上層部の方に文句を言われる、こんな実態は本当にあるのでしょうか。いかがでしょうか。 <0114>=白木最高裁判所長官代理者= 私は、そのような話は聞いたことがございません。具体的な裁判につきまして、所長にはその当否を判断する権限がないことはもちろんでございますし、実際にも、記録を見ていない所長が判断できるはずもございませんので、そのような事実はないものと断言して差し支えないと思います。  私ごとで大変恐縮でございますが、私自身、東京地裁の令状部に着任いたしました日に、勾留請求を何件か却下したことがございまして、その際、恐らく検察庁は腰を抜かしているだろうなというようなことをおっしゃった方もおられますが、何らのリアクションもございませんでした。 <0115>=漆原委員= ぜひそうあっていただきたいと思っております。  本法案との関係では、次のような記述があります。  勾留裁判自体が正に捜査の必要性に引っ張られて、勾留理由の十分な審査なしになされているという現状があります。これは「罪証隠滅のおそれ」、「逃亡のおそれ」ということで請求・発付がなされるわけですが、この「おそれ」というのは、裁判所では「可能性」ということなんです。可能性ということで全て令状裁判が行われているという現実があるのです。そういう現状から見るならば、通信傍受法案の令状審査も、やはりそれと同じようにならざるを得ないと思います。「疑い」とか「蓋然性」なんていうものは、全部可能性でやってしまうわけです。あとは「捜査の必要性」が前面に出てきて、捜査の必要性があればもう発付してしまうという形が見えているんじゃないかと考えています。 というような指摘がありますが、御意見がありましたらお答えいただきたいと思います。 <0116>=白木最高裁判所長官代理者= おそれと可能性はもちろん違うわけでございまして、先ほど人事局からも御答弁申し上げましたが、研修等でそういったところは十分教育しているところでございます。 <0117>=漆原委員= 私は、かつて橋本総理大臣に、通信傍受法案は捜査機関の暴走だとか濫用の危険性がある、こう質問したことがあります。総理はこの質問に対しまして、通信傍受の法案は、厳格な要件のもとに認められているので、濫用の危険性はない、こうお答えなされました。しかし、幾ら法が厳格な要件を定めていても、裁判所に厳格なチェック機能がなければ、それはただ条文に書いてあるだけだということになってしまいます。  長い時間をかけて、私、令状実務の実態とチェック機能について嫌な質問をしながらお尋ねしたわけでございますが、法務大臣、今の話をずっと聞いておられて、本当に裁判所に人権のとりでとしての令状審査のチェック機能を期待できるや否やということについて、ずっと議論を聞いた感じでの感想をお聞かせいただきたいと思います。 <0118>=陣内国務大臣= 裁判官による令状審査は、言うまでもなく我が国の刑事手続の中で極めて重要な役割を担っておるものでございます。令状請求を受けた裁判官は、独立した立場から慎重に審査を行って令状発付の可否を判断しておられるということを、今委員の御審議を承りながら力強く感じたところでございます。したがって、その手続は適正に行われているものと認識いたしました。  ただいま御審議をお願いしている法案による通信傍受についても、裁判官の適正な令状審査等を通じてその適正を図ることができるものと考えております。 <0119>=漆原委員= 法務大臣の御感想は私の意図と逆な方向だったような感じがしますが、それはそれで法務大臣の御感想ということで承っておきます。  ぜひ、今法務大臣が述べられましたように、裁判所に任せておいて大丈夫だというふうな方向になっていただければ大変ありがたい、こう思っております。  次に、法案の内容についてお尋ねしたいと思います。  まず、令状なしの通信傍受の禁止規定それから処罰規定の必要性という観点について、本法案は、通信傍受の一般的な禁止規定と、捜査機関の無令状傍受の場合を特に重く罰するという趣旨の規定がございません。電気通信事業法、有線電気通信法では、通信の秘密を侵した者に一年以下の懲役または三十万円、有線電気通信法で二十万でございますが、以下の罰金を科することが定められておりますが、公務員を特に重く処罰する規定はありません。  しかし、憲法で保障された通信の秘密の例外として捜査機関に令状による通信傍受を認めるわけでございますから、捜査機関が無令状で通信の傍受を行った場合には電気通信事業法等の処罰よりも重く処罰されてしかるべきだと思いますが、この点、いかがでございましょうか。 <0120>=松尾政府委員= 通信の秘密の侵害に関する罰則のあり方の問題だと思いますが、法制審の答申におきましても、今後現行法制にも留意しつつ検討されたいという附帯要望事項というものが今お尋ねの件には付されているところであります。  法務省としても、公務員あるいは捜査機関による通信の秘密の侵害に関する加重処罰規定についても、通信の傍受の一般的禁止、処罰規定を設けている電気通信事業法あるいは有線電気通信法との関係も含めまして、関係省庁と協議しつつ、今後とも検討を進めてまいりたいと考えております。 <0121>=漆原委員= その場合にはぜひ、検察官の不起訴処分に係る場合には、刑訴法二百六十二条の付審判請求の対象としてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、この点はいかがでしょうか。 <0122>=松尾政府委員= ただいまの御指摘の点も当然検討事項でございます。こういった、公務員あるいは捜査機関に対する規定を設ける際には十分検討していきたいと思っております。 <0123>=漆原委員= 次に、対象犯罪でございますけれども、本法案はもともと、法務大臣の諮問のとおり、最近における組織的な犯罪の実情にかんがみ、組織的犯罪に対処するための刑事の実体法及び手続法の整備の一環として作成されたものでありますが、この場合、組織とは何かということが問題になるわけでございます。  組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案第二条で組織の定義がございます。同法では、組織とは「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。」こういうふうに規定されておるわけでございますが、まず、この別表に掲げられている犯罪はどのような基準で選択されたのでしょうか。その基準をお尋ねします。 <0124>=松尾政府委員= 通信の傍受でございますが、差し押さえ等の従来の強制処分とは異なりまして、継続的かつ密行的に行われるという点で、権利の保護に特に慎重を期すべきであるということだと思いますが、こういった点にかんがみまして、一定の罪に限定してこれを行うということといたしました。  組織的な犯罪対策という本法案の趣旨をも考慮しまして、組織的に行われる可能性、犯罪の重大性、通信傍受の有用性等を考慮して、次のような罪を選択いたしました。  その山ごとに若干申し上げますと、まず初めは、法定刑の極めて重い、死刑、無期懲役または無期禁錮の定めのある罪のうち、組織的な犯罪として行われることが多い、あるいは組織的に行われることが現実に想定し得るもの、この類型のものとしては、具体的に挙げますと、内乱罪、外患罪、現住建造物等放火罪、殺人罪、強盗致死傷等の罪がこれに該当すると考えます。  死刑、無期懲役または無期禁錮の定めのある罪のうち、現住建造物浸害あるいは詔書偽造関係の罪、強制わいせつ致死傷等は、組織的な犯罪として行われることが多い、または組織的に行われることが現実に想定し得るというものではないことから、その対象からは除外いたしております。  次の山でございますが、人命にかかわる重大な犯罪であって、被害者の安全のため特に慎重かつ的確な捜査が必要とされ、かつ組織的な犯罪として行われることが多いもの、具体的には、逮捕及び監禁、略取及び誘拐等の罪、人質による強要等の罪がこれに該当すると思われます。  三番目の山でございますが、暴力団その他犯罪との親和性が非常に強い団体等の犯罪組織が反復して行うことが多い、密行性の強い犯罪でありまして、社会的に重大な問題とされており、その検挙の必要性が特に高いものの類型がございます。これに当たるものといたしましては、薬物または銃器に関する罪、集団密航に関する罪がこれに該当するというふうに考えております。  このような基準で選択したものでございます。 <0125>=漆原委員= 重大犯罪のうち、組織的な犯罪として行われることが多い、あるいは組織的に行われることが現実に想定し得る、こういう基準があるわけなんですが、この別表の犯罪一つ一つについて、今までの統計上これが組織的に行われることが多かった、これも多かった、こういう今までの犯罪の統計上からの検証による結果なのか、それとも、考えられるということでの絞りなのか。おっしゃった、組織的な犯罪として行われることが多い、または現実に想定し得るという根拠は一体何なのか、これを教えていただきたいと思います。 <0126>=松尾政府委員= この選択に当たりましては、犯罪の類型からいいまして組織的に行われることが多いというものもその一つの基準でございますが、委員御指摘の、これまでの犯罪の概要を見まして、その正確な統計があるわけではございませんが、捜査機関としてやはり組織的に行われることが多いと認められる犯罪というものもその選択肢として、あるいは選択の基準として一つあるわけでございまして、ただいまの御指摘の点は、両方とも選択の基準としては考えられるということだろうと思います。 <0127>=漆原委員= 今まで統計をとっていなかったということをおっしゃいましたが、暴力団犯罪の罪種別検挙人数というのが平成八年、出ております。例えば、殺人二百十人、一六・九%、強盗三百八十五人、一六・一%、放火四十七人、六・六%、強姦百八十九名、一六・九%、逮捕監禁三百五十二名、六〇%、身の代金目的略取等八人、四二・一%、それから銃刀法千百十人、三〇・七%、麻薬取締法違反三十四人、一五%、覚せい剤取締法違反七千八百八十三人、四〇・六%、こうなっていまして、暴力団関係を見ても、三〇%を超えているのは逮捕監禁、身の代金目的の略取、銃刀法、覚せい剤取締法違反、これだけなんですね。これは、組織的に行われた犯罪の、これから行われるか、行われやすいかということの大きな参考資料になると思うんですが、これを見ると、今回入っているような犯罪はほとんど抜けているんですが、この辺はいかがでしょうか。 <0128>=松尾政府委員= 先ほど、別表の選択の基準について幾つかの類型に分けまして申し上げました。要約しますと、組織的に行われる可能性あるいは現実にそういう犯罪が多発したということ、あるいは犯罪の重大性、通信傍受の有用性等を考慮いたしまして選択したということになるわけでございます。御指摘のような、暴力団関係者の検挙人員に占める割合というのも確かにその要素ではありますが、一つの要素ということで御理解いただきたいと思います。  例えば、殺人等の罪は人命にかかわるわけでございまして、またその影響からいいますと、非常に市民生活に重大な反響を与える、凶悪、重大な犯罪であるということがまず挙げられますし、さらにこれらの罪種については、組織的に行われることが現実に想定し得るというものでございます。  とりわけ、対立抗争事件等に見られますように、暴力団によって組織的な犯罪としてこうした殺人事件が行われ、市民を巻き込む重大な結果が生じる場合が多いわけでございます。また、暴力団等の犯罪組織が、意に沿わない者を抹殺したり、また対立組織を制圧するなど、組織あるいはその不正権益を維持拡大するために用いる最たる手段がこの殺人だということが考えられるわけでございます。こうした罪種につきましては、通信傍受を用いて的確な捜査を行って、組織犯罪対策として行うことが不可欠であると考えております。  さらに、暴力団に限らず、今話題になっておりますオウム真理教事件のような組織的な殺人事犯などにつきましても、組織的な態様での犯行が少なからず発生しております。殺人等についても通信傍受の対象犯罪に含めることが必要だと考えますのは、以上のような理由でございます。 <0129>=漆原委員= 犯罪が広過ぎて、本来例外である通信傍受による捜査が一般化しているというふうに非難をされておりますが、私もそう思います。犯罪対象を、組織的に行われやすい犯罪で、かつ通信の傍受がその捜査に必須だというものに絞り込むべきだなというふうに、私の意見を申し上げておきます。  法三条は、令状発付の要件として、数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるべきだ、こうしております。数人の共謀には、これは二人も含まれるわけでございますが、組織的な犯罪に対処するためにつくられた本法案が組織性を要件としないのは矛盾ではないかというふうに指摘されております。実際、カナダの法律では、共同して行動する多数の者により計画され組織された継続的犯罪活動の一環であるとする合理的理由があることというふうな、きちっと組織性を要件としているわけですね。日本の本法案は組織性を全く要件としない、二人の共謀であればいいという、この辺はもうちょっと組織性を出すべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。 <0130>=松尾政府委員= 御指摘のような議論も、法制審議会等でもなされたところでございます。ただ、電話傍受の対象とする犯罪、別表に、一覧表に掲げてある罪種になるわけでございますが、組織性が当初から、令状を請求するほど明確でない場合もまた多いわけでございます。捜査の過程で、数人共同して犯行が行われたということが認められましても、それが組織で、かつ組織の中にそれぞれの役割分担等をして計画的に行われたというようなところまでの証拠がない。つまり、裁判官に電話傍受の令状を請求する際に、数人共同してというところまではいろいろなそれまでの捜査で認定し得るとしても、それ以上のところまで踏み込めない場合も現実問題としてはあるわけでございまして、そうした捜査の実態あるいは捜査の現実の流れからいきますと、この段階で組織性をさらに明確に打ち出すということについては、全体的に、電話傍受というものの有効性、あるいは捜査官側に対する有効性といいますか、そういった観点からいいますと、必ずしも現実の捜査の過程に合わないものではないかということで、本法案では、今先生のおっしゃるような数人共同してということを要件として掲げたということでございます。 <0131>=漆原委員= 令状発付の要件として、高度の嫌疑性というのを今要求されておりますが、「罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由がある」「罪が犯され、かつ、引き続き次に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある」「準備のために犯され、かつ、引き続き当該別表に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある」、「疑うに足りる十分な理由」ということを要件としています。通常の逮捕状の場合ですと、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、今度は「相当な理由」。  犯罪の証明について最高裁は、真実の高度な蓋然性、すなわち、通常人ならだれでも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得させるものでいいという、こういう三段階に分けているわけなんですが、この三段階の心証形成について、これは一般の人が読んだらさっぱりわからない、私もよくわかりませんが、どうかこれをちょっと説明していただきたい。どの程度のことがあれば十分な理由なのか、どの程度であればこれは相当だなということなのか、どの程度であればこれを証明できたというふうになるのか、その辺、わかりやすく説明していただければありがたいと思います。 <0132>=松尾政府委員= 心証形成の過程での三つの段階というのは、今先生の御指摘のとおりでございまして、相当な理由、十分な理由、その次は合理的疑いを超える、要するに証明といいますか、その三つの段階ということになろうかと思いますが、本法案は、その中で、その真ん中にあります「十分な理由」というものを掲げております。  抽象的なことで申し上げますと、逮捕状を請求する相当な理由よりももう少し嫌疑は濃厚でなければいけない、しかし、有罪だということで処断を下す合理的疑いを超える、証明というところまでの強度なものは必要がない、その間にあるということで、個々具体的に例を出して説明するというのもなかなか難しいと思います。それだけ、請求の理由としては慎重にやりなさい、逮捕状の「相当な理由」の程度ではなくて、さらに高度の蓋然性ということを慎重に考慮して、それがあるという場合にのみ請求をしなさいという法案の趣旨でございます。 <0133>=漆原委員= まさにここがこの法案の、裁判所から見ればチェック機能の果たすべきところなんですね。まさに命だと思うんです。  最高裁いかがでしょうか。今まで、たしか十分な理由があるという心証形成はなかったと思うんですね。緊急逮捕のときに「充分な理由」がありましたが、それ以外にはなかった。これは初めてのことだと思いますが、この三段階、人権が守られるように三段階きちっとやれる自信がおありでしょうか。 <0134>=白木最高裁判所長官代理者= 法案が審議されております最中でございますので、直接的なお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、法案が成立いたしました場合には、裁判所といたしましては、法の趣旨にのっとりまして適正な解釈に努めたいというふうに考えております。 <0135>=漆原委員= ぜひそこのところはきちっと検討をして、できるだけ明確な基準をつくっていただければありがたい、そう要望しておきたいと思います。  三条の三号について聞きますけれども、これは、将来の罪に対する通信の傍受とよく言われているところでございますが、既に犯された罪とこれから犯される罪は法理上全く別な事件であります。しかも、既に犯された罪もこれから犯される罪も、その段階ではいずれも通信傍受の要件を満たさない、こういう犯罪。刑訴法では、捜査は犯罪があると思料するときに開始するということを大原則にしているわけですね。そういう場合に、本条を認めるということは、本来通信傍受の対象とできない軽微な犯罪を足がかりにして将来発生するかもしれない犯罪の傍受を認めることになって、刑訴法の百八十九条の原則から大きく逸脱するもとになるのではないか、こういう批判がされております。私もそう思います。この点はどんなふうにお考えでしょうか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0136>=松尾政府委員= これは、第三条第一項二号、三号両方共通するかと思いますが、既に行われた犯罪行為、それから、これから行われる犯罪行為、双方の関係ということになろうと思います。  この考え方といたしましては、その二つの行為、既に行われた犯罪行為とこれから行われる犯罪行為の双方に共通して証拠となる関係があるような場合を想定しております。換言しますと、それらの犯罪行為が社会的に見れば一個の犯罪現象と認められるような関係にある場合、既に行われた犯罪とこれから行われる犯罪から成る一連の犯罪行為全体として傍受の対象にするというものでございまして、単純に将来行われる犯罪を対象としているということではないので、この点はまず御理解をいただきたいと思います。  そのうち、三条一項二号のイというところに、別表に掲げる罪が犯され、かつ、引き続き当該犯罪と同様の態様でこれと同一または同種の別表に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由があるというような場合も今の御議論の対象になると思うわけでございます。  この場合に、どういう例が考えられるかということを申し上げますと、例えば大麻取締法の罪あるいは覚せい剤取締法の罪が現に行われた犯罪としてあります。それにつきまして、これと同種の、例えば覚せい剤取締法違反あるいは麻薬及び向精神薬取締法の罪等のそういった犯罪が引き続き行われる、それが一個の、一連の行為として社会的に見られるような犯罪というときには、ただいまの将来の犯罪ということにはなると思いますが、傍受の対象になるということでございます。 <0137>=漆原委員= 二号の場合は、私何となく理解できるのです。三号の場合が、全く罪名は別な犯罪のわけですから、禁錮以上の刑が定められている罪を犯した、将来別表に定められた罪を犯すであろう、こういうふうになるわけですね。  だから、この場合は全く別な犯罪との関係性が問題になるわけであって、そうすると、本来通信傍受の対象としてはならない犯罪が行われた、それを足がかりにして将来通信傍受の対象になる犯罪が行われるであろうというかかわりがあるんですけれども、そういうことで、将来の犯罪の傍受を認めると。本来ならばできないわけですよね、まだ発生していないわけですから。そうすると、本来、軽微というかどうかはわかりませんが、軽微な犯罪を足がかりにして広く通信傍受の窓口を開くことになりはしないかという心配があるんです。  もともとどんなことを予想してこの三号の条文をつくられているのか。どんな場合が典型例なのか。これを足がかりにして無限に広がっていくというふうなことにならないのか。この心配についてお答えいただきたいと思います。 <0138>=松尾政府委員= 具体的な例といいますと、例えば、当委員会でもいろいろ罪名として論議され、よく出ております蛇頭のケースでちょっと考えてみたいと思うんですが、蛇頭が大量の密入国者を日本に連れてこようという事案だと思います。  その場合に、その準備行為として、合法なものもあると思いますが、非合法なものもいろいろあろうと思います。例えば、許可なく船舶を動かすとか、あるいは禁錮以上の刑が定められている罪をその準備のためにいろいろ犯すということが想定としては考え得るんだろうと思います。それが犯罪行為として捜査機関に認知されまして、それは何のために行われたのか、これは直近で行われる密入国の事案の準備であるということが想定されたといたします。  そうなりますと、禁錮以上の刑が定められている罪がまずあります。それが次に、別表に掲げる罪の実行に必要な準備のために犯されたということが疎明資料としてある場合でございますが、かつ、引き続きその別表に掲げる罪が犯されると疑うに足りる十分な理由、これもまた令状請求の際には疎明をする必要がございます。その当該犯罪が数人の共謀によるものであることもまた、単独犯じゃなくて数人が相談しているという点も疎明する必要があるかと思いますが、そうしたものの疎明がありますと、この場合は、第三条第一項三号ということで、全体として電話傍受の対象になる、こういうふうに御理解いただければよろしいかと思います。 <0139>=漆原委員= 時間がないので、最後の一点だけなんですが、準備のために犯されたということと、それから、引き続きこの別表の罪が犯されることを疑うに足りる十分な理由というのは、どの程度の疎明資料を出した場合に十分な理由と言えるんでしょうか。どんなことをお考えなのか、お聞かせ願いたい。 <0140>=松尾政府委員= お尋ねは、個々のケースによって違うと思います。令状請求の記録も、どの程度の厚さになるかも、個々で変わってこようかと思います。今、にわかにこれならば十分だというのを個別に申し上げるというのは、なかなか個々具体的に大分違いますので申し上げかねます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げた逮捕状請求に伴う相当な理由の程度を超えた高い蓋然性があるということでございますから、そういった記録に比べましても、それなりの厚みと内容を持っているものだろうというふうに考えております。 <0141>=漆原委員= 時間がなくなったので、これで終わります。ありがとうございました。 <0142>=橘委員長代理= 安倍基雄君。 <0143>=安倍(基)委員= 質問時間も限られておりますから、答弁は簡単にしていただきたいと思いますけれども、この法案審議の一つの大きな推進力となったのはオウムの事件でありますが、実は我々は新進党時代に、オウムには破防法を適用すべきではないかと強く迫ったわけです。  最近、我が党の野田大臣もオウムの破防法の適用問題を取り上げておりますけれども、現に各地でオウムが、新しい家を借り、そこに事務所を設けるというような問題が起こっております。この場合に、オウムが事務所を買った、そこに