午前十時開議      ――――◇――――― <0001>=杉浦委員長= これより会議を開きます。  参議院提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川堯君。 <0002>=笹川委員= まず、昨年、私が法務常任委員長のときに、オウムの問題で特別立法で参議院で大変お世話になりまして、無事に可決をしていただきましたことをお礼申し上げます。  きょうは、そのお返しという意味ではありませんが、私が何か反対をしているように思っている人もおられるかもしれませんが、私は、少なくとも人を罰するという法律をつくる以上は、やはり厳しく中を精査しながらよりよいものをつくっていただきたい、こういう希望のもとに幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  この法案そのものの趣旨は、罰するということよりは、これから次代を担う小さいお子さんのために健全な精神と肉体をやはり守ってやりたい、こういう趣旨でこの法案をつくられたと思うんですが、その点は間違いございませんか。発議者、どなたでも結構です。 <0003>=林(芳)参議院議員= お答えいたします。  笹川先生おっしゃるとおりでございまして、いろいろな条約等ございましたし、先生御指摘のとおり、次代の日本を担っていただく、児童というのはここでは十八歳未満ということになっておりますけれども、健全な育成をしていただきたいという趣旨を込めましてこの法律をつくらせていただいた次第でございます。 <0004>=笹川委員= 趣旨は私も同感であります。  さて、個別にお聞きしたいと思いますが、例えば児童だとか幼児だとか、いろいろな言葉がありますが、これは、いずれにしても各国とも、あるいはアメリカでも各州でそれぞれ定義が違っておりますので、そういう内容について議論をするつもりはありません。十八歳未満ということで御了解をさせていただきます。こういう法案をつくること自体は、大変我々人間の恥でありますし、特に大人としては寂しい限りでありますが、そういうものをつくらざるを得なかったという背景はよく理解ができます。  さて、皆さんの方に御通知申し上げたと思いますが、実は第二条の中に、性交もしくは類似行為ということがございます。先般同僚議員の質問の中で相当部分は理解できたんですが、実はアメリカでは幼児ポルノが法律によって禁止されております。それから、アニマルセックス、獣姦と言っておりますが、実はこれもアメリカで法律において禁止をされました。それまでは、そういうポルノ映画、雑誌等が販売されまして、供給元は中南米の非常に所得の低い国の方々でありまして、それを買う方はアメリカでありました。そういうことで、アメリカの世論も喚起いたしまして、実はそういう法律ができまして、禁止されました。  ところが、今回のこの法律の中には、類似行為というものの中にアニマルセックスは入っているのかどうか。私は、これは入っていないというふうに理解をいたしております。と申しますのは、アメリカではその項目を一項目ぴしっと立てまして、これはだめですよということをうたっておりますので、できたら私はこの法律の中に、今回間に合わなければ次回でも結構ですから、もう少し明確にわかるように、俗に言う動物を相手にしたアニマルセックスの禁止というものをぴしっと入れていただければありがたい。  これは長い人間の歴史の中で、戦争のときに、まあ国会の場でありますので、言葉を選ばなきゃなりませんのでこれ以上申し上げませんが、それは皆さんがよく御存じのとおりの歴史の中でございましたので、ひとつその点についてお尋ねをします。御案内のように、大人のおもちゃといいますか、バイブレーターその他は性交の類似行為の中に入るという判例も実はもう既に出ているということを見ておりますので、その点につきましては了解いたしますが、動物との性交までがこの類似行為の中に入るのかどうかをちょっとお尋ねをさせていただきたい。入るのなら入る、入らないのなら入らない、それで結構です。 <0005>=大森参議院議員= 性交という言葉は、刑罰法で用いられる場合、通常の理解として、その性交というのは人対人とのものとなっておりますので、そういうアニマルセックスですか、動物と人間との間の行為は性交とは言わないと理解しております。 <0006>=笹川委員= 昨日の御答弁でもそういうふうにお答えになっておりますので、そうなりますと、当然、やはり私が申し上げている項目については明らかに欠如している。私は、この点を指摘を申し上げたいと思いますので、ぜひひとつ、近い将来にそういうことを入れていただく意思があるかということだけを確認させていただきます。どなたでも結構です。 <0007>=大森参議院議員= 今回の勉強会で、さまざまな論点が出てまいりました。ただ、一方で、早くいい法案を成立させようということで急ぎました。それで、もっと時間をかければそういう結論も出たかもしれませんが、これからの、三年後の課題ということで考えております。児童の性的虐待、搾取の形態、ほかにもいろいろあると思いますので、これもこれからの課題で、必要なものは三年後の見直しのときに何らかの形にしていきたいというふうに思っております。 <0008>=笹川委員= 今お答えいただきまして、三年後の見直しということもございますが、将来ともにそういうことをでき得る限り早急に整備をしていただけるように私の方からお願いをいたしておきますので、よろしくお願い申し上げます。  さて、質問の順番が多少ずれるかもわかりませんが、実はこの法律、捜査あるいはまた公判の維持とかいろいろなことがございますが、職務上関係のあった者は、児童の人権及び特性に配慮するというふうに第五の捜査と公判のところに書いてある。これは、今までいろいろなお子さんを相手にするときの裁判は同じであります。  実は、私は国会議員として初めてエイズ問題を国会で取り上げて質問いたしました。御案内のように、当時、新聞でもラジオでもテレビでもHIVの感染者を犯罪人のように追跡されまして、実は物すごく人権が無視されたわけであります。御主人が実はHIVの患者でありましたが、奥さんが看護婦さん。ところが、そのことが知れて、追及するものですから、病院の患者さんが、だんなさんがHIVの感染者なんだから当然奥さんもそうだ、そんな人が看護婦では我々は困るということで、結局、最終的には看護婦さんはその病院から追放されました。  こういうことを、一つの犯罪を摘発するために別な犯罪、特に私は人権にかかわる問題をないがしろにされては困る。特に今回は、お子さんの人権を配慮したいというのがこの法律の趣旨でありますので。  たまたま今回は議員立法であります、閣法ではありませんので、その辺を、国に対して啓蒙運動をするとかということは結構なんですが、実は今から数年前、ちょうど十月の国民体育大会の時期に、皇后陛下が宝島という雑誌にあることないこと書かれまして、心因性の、言葉が出なくなった病気になったことは、皆さん御存じのとおりであります。実は私、当時法務委員会でこれを取り上げまして、数百人の方が天皇、皇后にお仕えしているのにこういう問題一つ解決できないようでは、皇室の安泰は難しいのではないかと。しかも、本来ならば、奥さんがたたかれればだんなさんはあだ討ちをすべきである。ところが、天皇陛下にはそういうことをすることが許されていないし、また法律を使って訴訟の対象にもなり得ない。こういうことで、実は宮内庁に広報官が新たにあれ以後新設をされました。  そのときに私は、大変こういう問題を、今後起きないようにということを思っておりますが、今度の問題が、法律ができて、摘発されないことが望ましいのだけれども、仮に摘発をされたときに、今の放送あるいはまた新聞、雑誌といいましてもピンからキリまでありますから、私は、興味本位で猛烈に書くだろうと。そうすると、とてもお子さんの、仮名でしようが何でしようが、人権の擁護という面について、私は非常に実は不安があります。  そこで、「記事等の掲載等の禁止」というふうにここに書いてあるのですけれども、これは禁止といいましても罰則規定がありませんので、私は、守られるなんて到底思っていない。発議者の皆さん方は、この禁止規定をつくることによって、そういう人権が守られるような雑誌、報道等になるかということをひとつお聞きをしたいと思います。 <0009>=清水(澄)参議院議員= せんだっての本委員会でも御説明いたしました。  まず、今おっしゃいますような、確かに、被害を受けた子供の記事について、その名前とか住所とか学校名とか、被害者がだれであるかという対象がわかる記事が非常に多うございますので、それを今回は禁止行為の中に含めたいということでこの法案の中に入れましたけれども、おっしゃるように、処罰規定はないわけでございます。  ですから、これも先回のときも御指摘ございましたので、今回はそれをまだ入れておりませんけれども、三年後の見直しの中で、必要であればまた御論議いただきたいと思いますが、今回はそれでまずやってみるということと、それから、非常にいろいろな記事を取り締まるということの方のおそれといいますか、そちらの方の意見が非常に多うございましたので、今回はとりあえず罰則規定は入れていない、こういう状況でございます。 <0010>=笹川委員= 今の御答弁で、そういう議論も出たけれども、三年後にやるというお答えじゃないですね。三年後までに議論をしようというお答えだと思うのですが、私は、それでは困るので入れてほしい。  ただし、憲法上、やはり発言の自由だとか、いや出版の自由だとか、いろいろそれはわかります。だけれども、幼児のポルノのこの件にというふうにして限定されているわけですから、何でもかんでも書いてはいかぬと言っているわけじゃありませんので、そのことは仮に処罰規定を入れても、ポルノ、この事件に関して禁止するんですよということだから、私は差し支えないと思うのですが、いかがですか。もう一度。 <0011>=円参議院議員= 先生おっしゃるとおり、例えば表現の自由の価値を極めて重視しておりますアメリカにおいても、子供ポルノの規制は憲法上の審査をパスしてきております。  そういった意味で、私どもも、こういったことに罰則を設けるかどうか、随分勉強会で議論をいたしましたけれども、今回は、報道の自由との関係もございまして、直ちに罰則を設けることには慎重であるべきだということに結論が出ましたので、三年後、先生のおっしゃるように、見直しの時期にまた必ず入れるということは、ちょっと今申し上げられないと思います。 <0012>=笹川委員= 私は、三年以内にこういうことが起きないと心から期待をしております。もしそうであれば入れなくていいんだけれども、おくれるとなかなか入れにくい。最初に火がついて、皆さん方が、こういうのをやるんだと意気込んだときには割とできるんだけれども、時間がたってしまうとなかなかできにくいのじゃないかと私は思うので、報道の自由というのはよく理解できますが、ぜひそういう趣旨をきょうの議事録に私も発言としてとどめておきたいと思いますので、ひとつその精神が生きるように、お子様を守るという人権上の配慮の上に立って、そのことだけは報道してはいけません、書いてはいけませんよという、ごくごく限定された自衛権の発動だという意味に御理解いただいて、これからもしそういう議論があったときには、ぜひひとつお子さんを守るという意味において掲載しないようにしていただきたい。そうじゃないと、興味本位に書いて書いて書きなぐるということになるおそれがあると思います。  さて、次に、国外犯のことをちょっとお尋ねしますが、飛んでしまってごめんなさい、国外犯といったって、そんなに難しいことを御質問するわけではありませんので。  御案内のように、今、日本は非常に経済的にも恵まれておりますし、教育の水準も高うございますから、私は、日本国内でこういうことが起きるということは、可能性としては非常に少ないと思っています。  だけれども、フィリピンだとか、国名を言うことは大変申しわけないのですけれども、あるいはタイや何かも、後進国といいますか、経済的に非常に貧困のところではそういうことがあったということも事実でございますし、そういうことが国連で指摘をされたということで、御婦人の方々がそういう会合に出たときに厳しく詰問をされたということも聞いております。そのことも今回の法案の中に当然くみ入れられたと思っております。  そこで、実は一番困るのは、日本の警察とか検察庁と同等のレベルのときには非常に摘発そのものも容易なんですが、私もフィリピンはもう数え切れないぐらいスポーツ交流で行きましたが、非常にいいかげんな国でありますので、こういうものが日本にできることによって、逆にマフィアだとかやくざが、善良な人が行くわけですから、当然脅迫だとか恐喝のたぐいになるということはアメリカでも過去ずっとありましたから、私は、このことは皆無じゃない、それが起きたときに困るなというような心配をいたしております。  その点について、私はたまたま国外犯というのは難しいかなと言ったのですが、逆に言うと、国外犯を外してしまうと、外国のこの法案に対する評価がなくなってしまうのだということもよく聞いております。  そこで、国外犯というのは、明らかにこれは、法律ができますと、後は我々の仕事から離れまして検察庁、警察の仕事になるのですが、これは運用のときにやはり厳しく、そしてまた公平にやっていただかないと、一つの犯罪を摘発することによって一つの犯罪がまた発生してくる、こういうことの議論もございましたか。ちょっとお尋ねいたします。 <0013>=堂本参議院議員= お答え申し上げます。  そもそもこの法律を立案するときに、日本に児童買春、児童ポルノを禁止する法律がないために、日本のそういった国外犯が野放し状態にあるということが最初の動機でございました。ですから、国内であろうと国外であろうと、今回の法律では罰するということになっているわけです。それでよろしいのでしょうか。  先生の御質問、マフィアとの関係で、善良な人が行ったときにということの意味がよくわかりませんでした。 <0014>=笹川委員= 御婦人の皆様でそこまでおわかりにならないのが当然でありまして、知っている方がおかしいのかもわかりませんが、これは現実としてそういうことがあるのですよ。例えば年齢の問題がありますのでね。  例えば十八歳未満で当然これはひっかかるわけですから。例えば外国に行って、年を聞いた、幾つ、十八だと言った。安心してしまった。ところが、実際は十五だった。そうすると今度、向こうの家族とか悪い人が、十五だったからあなたは法律に触れますよということになり得ないのかなということの心配をちょっとお尋ねしただけであります。 <0015>=大森参議院議員= まず、先生、マフィアと、それから、善良な人が行くので被害に遭うというところ、今お尋ねしましたら、御婦人であるからわからないとおっしゃったんですけれども、御婦人であるからわからないのかどうか、ちょっと確かめたいので、もう一度そこのところを教えていただけませんでしょうか。 <0016>=笹川委員= 今の発議者の答弁の中で、マフィアその他がわかりにくいというお話があったので、私は、そういうことが起こり得るんですということを申し上げただけの話であります。  例えば、「過失がないときは、この限りでない。」九条にありますね。いかなることがあっても処罰を免れないんだけれども、過失がないときというのをお尋ねしようと思ったんだけれども、時間の関係でなるたけ早くやめたいと思ったから。では、IDカードを見せなさい、ドライバーライセンスを見せなさいと言って年齢が確認できたらいいですよ。こんなことをしてはいけないんだけれども、仮にそうしたときに、できないでしょうから、幾つと聞いたときに、いや、十八と言った、だからおれは「この限りでない。」に入ると思うけれども、相手は、そんなこと言わなかった、私は正真正銘十四歳でしたと言われたときに、私は、申し上げたようなことがアメリカでもあったし、日本でも起こり得ますと。  だから、国外犯の処罰というのはやはり難しい面がありますよということは、皆さんの勉強会の中でそういう話が出ましたかということをお聞きしただけであります。 <0017>=林(芳)参議院議員= お答えを申し上げます。  私も先生がおっしゃることは、男性でございますのでというわけでもありませんが、よくわかるつもりでございまして、その意味で、この九条を置いておりまして、児童を使用する者以外は、この反対解釈として、過失の場合は認められないということ、除かれるということに一応して、これは国外犯にも適用がございますので、御懸念のところは、その辺のラインで、あとは運用のところできちっとやってもらわなければいけないというふうに考えておるところでございます。 <0018>=笹川委員= あとは運用という御発言がありましたが、運用というのは、あくまでも警察と検察庁の限りでありますので、それは期待ができるだろうというふうには思いますが、そういう心配もあるんだということだけ、ぜひ頭の中に置いておいていただきたいと思うんです。  では、きょうは運輸省の観光部に来ていただいたんですが、日本人が団体で買春ツアーをすると随分新聞に書かれました。ところが、日本人というのはもともと私を初めとして語学に達者な人は少ないものですから、どうしても団体で外国へ行くわけですね。そうすると、団体というのは、個人のそういう気持ちをばらばらにしてしまう。一人だと横断歩道を渡らないけれども、みんなだから行ってしまうということが実は往々にしてございます。  そこで、観光会社というのは運輸省が免許を与えているわけですね。ところが現実に、例えばフィリピンのような外国に行ったときには、そこでもうその案内は終わってしまって、切れてしまって、あとは地元の業者に引き渡してしまうということになりますと、何か起きたときに、日本の旅行会社は責任ありません、知りませんでした、現地がやったんですから現地の人の処罰ですということになると、日本人がやったものは処罰できるけれども、提供した向こうの人まで日本の法律で罰することはできません、向こうの法律で罰していただくよりしようがないのであるから。  そういうことになりますと、運輸省が、そういうライセンスを持っている業者に、観光で下請に渡すときにそういうことのないように、例えば成田だとか羽田で外国へ行くときに、けん銃の密輸だとかあるいは麻薬はいけませんというカードをいっぱい渡していますね。ああいうことの啓蒙運動をどんどんやってもらわないと、この法律をつくっただけではなかなか実行が難しいから。  そういう意味で、きょうは運輸省に来てもらったので、そういうことのないように、現地の会社だから我々の手が及ばないということでなくして、そういう責任を、やったところにはもうライセンスは国内で取り上げますよというぐらいの行政指導をぜひひとつやってもらいたい。そうじゃないと、この法案をつくっても実行が非常に難しいと思うので、この点については運輸省の答弁を求めます。 <0019>=大黒説明員= お答えいたします。  運輸省といたしましては、従来より、旅行業者が日本人海外旅行者の不健全な行動に関与しないよう指導してきたところでございますけれども、この法案が成立した際には、この法律の趣旨を踏まえ、旅行業者及び現地子会社その他代理人を含め、この法律に違反する行為に関与しないよう旅行業協会等を通じて旅行業者を指導してまいりたいというふうに思っております。  また、旅行業者、その代理人等含め、そうした行為に万が一関与した場合については、旅行業者に対し、運輸省といたしましても適切に対応してまいりたいと思っておるところでございます。 <0020>=笹川委員= 運輸省、適切というのは、なかなか役人の答弁で適切というのはあいまいなので、厳しく対処するというふうにひとつもう一遍答弁してくれませんか。 <0021>=大黒説明員= いろいろなケースが想定されるといいますか、どういうケースが生じるかということは非常に想定しがたいところがございますけれども、旅行業法におきましても、旅行業者または代理人、使用人その他従業者が、その取り扱う旅行業務に関連して、旅行者に、旅行地の法令に違反する行為をあっせんし、またはその行為を行うことに関し便宜供与を行うこと等を禁止しておるという条項もございます。  ケースによっては旅行業法に違反している場合も想定されるところでございまして、旅行業法に基づく処分、それから、そうした場合以外であっても、旅行業者に対して指導その他厳しい対応を行う必要があると考えております。 <0022>=笹川委員= 発議者の皆さんに大変御苦労をおかけしました。今運輸省にお尋ねしたのは、この法案がうまく機能し、海外から非難を受けないように協力をしてもらうという意味でこの席で発言をしていただきましたので、ぜひ、そのこともひとつ頭の中に入れていただいて御留意をいただければありがたい。時間が早いんですが、どうもありがとうございました。 <0023>=杉浦委員長= 次に、池坊保子君。 <0024>=池坊委員= 公明党の池坊保子でございます。  昨年の十一月、ストラスブルグのEUの会議に出席いたしました折に、イギリスの議員より、今東南アジアは大変な貧困にあり、生活のために子供たちが売春を強いられている、そしてそれを買う外国人もいる、これは憂慮すべきことなのではないか、東南アジアのリーダーにある日本人としてそのことについて何らかの手だてをしてほしいという要望を私はいただきました。  私も、速やかにそれは善処できるよう努力いたしますと答えました。と同時に、そういうことが行われている、そして、買う外国人がいるんだということは日本人を指しているのかなと思って大変に恥ずかしい思いがいたしました。そういう面から考えますと、むしろ遅きに失したのではないかというぐらい、私は、この法案ができますことを強く望むとともに、発議者の御努力に心から敬意を表するものでございます。  日本は、世界で最も富裕な国、経済大国と言われ、日本が風邪を引いたら東南アジアすべてが風邪を引くのだと言われるほど非常な影響力を持っております。ですから、経済のみならず、本来、東南アジアにおいて日本はすべての国の見本にならなければならない。にもかかわらず、日本は先進国の中で唯一、児童ポルノを製造、売買、保有することが違法でない国でございます。その結果、今まで世界じゅうに日本製のものが出回るという結果になったんだと思います。  カナダの税関当局の調査によると、カナダに入る児童ポルノの八〇%が日本製であるとの報告をしており、それを裏づけるかのように、アメリカの税関当局が、アメリカに入ってくる児童ポルノの出版物などのほとんどが日本のものであるという確認をしております。本当にこれは、私恥ずべきことなのではないかというふうに思っておりますので、今回の法案は、そういう意味で、児童買春、ポルノは犯罪だという、極めて当たり前のことですけれども、日本人の認識は大変希薄である、これを規定しているということを私は高く評価したいというふうに思っております。  他方、公序良俗の維持、子供の健全育成だけでなく、子供の人権を第一の目的としているのが、現行の刑法や児童福祉法などと大きく異なる点ではないかと思っております。  現在の青少年保護育成条例の取り締まりでは、買った大人だけでなく、児童も非行少女として扱われることがございます。本法案では、児童を犯罪者扱いしたり、傷を深くしたりしないよう警察官や検察官などに配慮を求めているとともに、身体的、精神的ケアやリハビリの必要性も織り込まれている点は、やはり女性でなければわからない細やかな配慮、それからいたわりがなされているのだと私は思っております。この提案理由説明の第五、第六、第七にもそのようなことが書かれておりますけれども、他方、私はこんなことも考えております。  私は文教委員をいたしておりまして、この中には当然援助交際ということも入ってくると思うんです。今、子供たちは、援助交際がふえておりますとともに、それに対しての罪の意識というのが全然ございません。私は、学校現場の中で、援助交際というのは犯罪であるんだという認識を強く持たせるよう努力しております。大阪でも、援助交際は売春ですときちんと教えております。今の子供たちは、物を盗むのは悪い、でも自分の体をどう使おうとそれは自分の勝手じゃないかと考えているような子供たちもいるわけでございます。  十八歳未満と申しますと、十六、十七はある意味でもう大人に近いのではないかと思いますときに、自己責任ということもあるのではないかというふうに考えております。本法案ではその辺のことはどのようにお考えなのかを、ちょっと発議者にお伺いしたいと思っております。 <0025>=清水(澄)参議院議員= 大変すばらしいお考えで、私たちがこの法案をつくることになりましたその趣旨を全く御理解いただいていて、私は非常に感謝をいたします。  そして、今おっしゃいましたところは、実はこの法案には啓発、教育というのが第十四条にございます。これは、刑法の特別法に教育まで入るというのはどうなんだろうというのがあったんですが、しかし、先ほどおっしゃいましたように、これまでの性風俗の問題ではなくて、本来、子供をそういう大人の性的な対象物として扱ってはいけないという、子供の人権の保障という視点から出発をしております。  そのためには、特に児童買春、児童ポルノをなくすためには、ただ取り締まるというだけではこの問題はなかなか解決できない。ですから、こういうことは今おっしゃったように、人間としての犯罪なのだ、そういう意識が、親も含めて社会全体の多くの人々の意識を変えていく必要があるという形で、教育の果たす役割という点でこの十四条に規定をしているわけでございます。  しかし、これらをもっとさらに未然に防止していくときに、もちろん親や社会的な教育はあるんですが、やはり子供自身に、自分の性的自己決定権というのはこれは人権ですから、その性的自己決定権が、今日のような非常に性情報がはんらんしている中で、本当に自分の性というものを、意思なきそういう性を強要されるということとか、また、そこに深い自分の権利としての性という問題を自覚できるような性教育、そういうものをもっと徹底していかなきゃいけない、これが非常に日本では欠けているのではないか。  そういうことで、ここではやはり、十分な論議をしてまいりましたけれども、この法律が通った後これらがどういうふうに具体化されるか、そこで今後私たちはフォローアップしていかなきゃいけないんじゃないか。特に、自分がそういうものを要求されたときにはノーと言える権利、子供自身に子供にはこういう人権があるんだという子供の権利の教育を徹底しよう、そういう意思がここに込められております。  以上です。 <0026>=池坊委員= 十八歳未満と申しますと、私なんかが考えますと、十六、十七はもう大人なんじゃないか。十六歳で結婚することができるわけですから、十七歳だったら子持ちのお母さんもいるということで、私は、むしろもうちょっと低く下げた方がいいんじゃないかと思ったぐらいなんですけれども、児童福祉法も、それから子どもの権利条約も十八歳未満までを児童とみなしますから、それに準じておつくりになったというふうに認識しております。  例えば、小さな、十四、十五ぐらいの子供で、今、児童虐待ということが盛んにございます。それで、その中には性の虐待というのがございます。お母さんがあっせんしたり、あるいは義理のお父さんに犯されたりということがございます。その辺のことはこの中には含まれないんでございましょうか。 <0027>=堂本参議院議員= 優越的地位ということで、例えば施設の施設長とか学校の先生、あるいは親というのを本当に議論してまいりました。しかし、今回の法律の中にはそれが規定されていないという状況です。  それから、先ほどおっしゃいました、援助交際は悪いということで大阪でそういうふうにしていらっしゃると。私も文教委員をしていたものですから、援助交際についてはさんざん議論してまいりましたけれども、十八歳未満でもこの法律の場合にはあくまでも買春で、対価を得た場合のみ罰則の対象になっておりまして、十八歳以下の子供たちの性的な自己決定権という領域ですべてが悪いというように規定していないということをちょっとつけ加えさせていただきます。 <0028>=池坊委員= これは施行後三年に見直すというふうに書かれてございますけれども、この点においては見直さないでこのままにするのでしょうか、あるいは、買春だけでなくて援助交際なども含め、それから親たちのそういう指導とかあるいは教育の面までも拡大していらっしゃるおつもりか、ちょっと将来的なことを一言伺いたいと思います。 <0029>=円参議院議員= 今の御質問に即答えになるかどうかわかりませんけれども、先ほどの援助交際のことでちょっとあいまいだったので補足させていただきますと、まず、いわゆる援助交際は、対償、すなわち児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を児童に供与し、またはその供与の約束をして当該児童に対して性交等をするものであると認められる限り、いわゆる援助交際において、児童と性交した者の方が、十八歳未満の児童ではなくて、いわゆる買うというかその買った人の方が児童買春罪に該当するわけです。ですから、大阪府などで子供の側が取り締まられるというようなことは、今回の児童買春の法律とは全く逆になるわけです。  それから、今先生がおっしゃった優越的な地位のことは、先ほど堂本議員からもお話がありましたように、さまざま議論されましたけれども、入れませんでしたのは、もともと性的搾取と申しますのは、性的に大人が子供を物として使用するということが含まれております。その使用する性的搾取や性的虐待ということは、いわゆる年少者で力のない子供たちを大人が利用するわけですから、そこに既に優越的地位等が入っているのではないかと私は考えております。 <0030>=池坊委員= 次に、児童ポルノの単純所持についてお伺いしたいと思います。  先進国、イギリス、オランダ、ドイツ、カナダなどでは、これを処罰するところが多くなっております。スウェーデンもことしから単純所持を処罰対象にするといたしております。つまり、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方なんだと思います。日本では、プライバシーの介入といった意見が強く、この法案では外されていると思います。そのことについて、いろいろな議論がなされた結果だと思いますので、どのような経過を経たかを簡潔にお答えいただきたいと思います。 <0031>=大森参議院議員= まず、この法律は、児童ポルノの頒布や頒布等目的での所持等の行為が、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときは、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり、また、児童ポルノに係る行為については国際的な対応が強く求められていることから、かかる行為を処罰するものであります。  この趣旨から考えて、いわゆる単純所持というものを処罰するかどうか、非常に大きな問題となりました。自社さ案の方には出ておりました。  それで、ほかの諸外国の例がございますけれども、ただ諸外国で、みんな同じ形で処罰しているところもあるし、処罰していないところもある。また、処罰しているところも、特に違法性の強いものに限って処罰するもの、あるいはその所持する主体が親とか監護者でないものとか、こういう違いがございます。それから、スウェーデンの場合も、たしか既にこの児童ポルノ禁止法案というのがありまして、その議論から続いて単純所持に至ったというふうに聞いております。  今回、自社さ案では明文がございました。「何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。」という規定がございました。刑罰法令でございますから、禁止行為というもの、特に違法性を問題として処罰するのであるならば、罰則を設けるだろう。そして、罰則を設けないのであれば、いたずらにこういう規定、特に「自己の性的好奇心を満たす目的」という、その所持している者の内心にまで入り込む文言がございますので、処罰しないのであれば規定を設けるべきではないだろう、こういうことになりました。  それで、いろいろ議論しまして、まだこの段階では、例えば、それがいいか悪いかは別としまして、銃器とか薬物とか、こういうのは所持自体禁じておりますけれども、これと同じような禁制品、極めて違法性の強いものという社会通念が今の日本社会に出ているかどうかということが問題になりまして、やはり刑罰を科すということは重大な問題ですので、もう少し様子を見て、三年後の見直しのときに検討しよう。  私たちが望むことは、この法案の成立、施行によりまして、児童ポルノは非常に違法なものなのだということを広く啓発して、また皆さんにこういう意識を持っていただいて、そして国民一般の皆様が、こういうものは個人であっても所持させるべきではないという社会的合意といいますか、これができましたときには処罰すべきであろう。その場合には、目的を余り記入しないで、何人も所持してはならない、こういう形になるのではないかというふうに考えております。 <0032>=池坊委員= 私も、そういう意味では、まず意識変革というのが必要と思います。  先ほど申し上げたように、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方は、日本人の中には全然ないと言ってもいいと思うのですね。ですから、まずそれを浸透させることが必要なのではないか。法律というのは、いろいろな段階を経なければ日常生活の中で機能をしてまいりませんから、今大森発議者がおっしゃったように、三年後に見直すことの一つに入れていただけたらなというふうにも思っております。  それから、国際的には、コンピューター合成の疑似ポルノというのも規制の対象になりつつございます。日本では、コミックは、実在の児童が被害者でなければ対象外になっていると思うのです。  インターネットなどで、頭部は実在の児童で、裸の体の部分をコンピューターグラフィックスでつくり、合成したものなどが流れておりますけれども、このような行為は、この法案ではどのように処理されていくのでしょうか。 <0033>=大森参議院議員= ちょっと整理させていただきます。  まず、コンピューターグラフィックスなどの合成写真ということですね。これは、児童の姿態そのものは存在するという前提でございましょうか。 <0034>=池坊委員= つまり、顔はその少女である。つまり、全体が写された場合には、これは当然に対象になりますよね。ただ、それが合成されていて、顔は少女の顔だけれども、体がちょっとグラフィックになっている、だからそのものではないということ。あるいはその逆で、顔はちょっとぼけていて、体が全部その少女の体。いろいろな合成がこれからできると思うのですけれども、そういう場合には、この処罰の対象というのになるのでしょうか。これから巧妙にいろいろな策を弄してくると思いますので、それについてちょっと御説明いただきたい。 <0035>=大森参議院議員= 児童ポルノとは、実在の児童の姿態を描写したものであります。したがって、絵の場合にもなり得る場合もあるというのは、それが実在する児童の姿態を描写したものであり、性欲を刺激もしくは興奮せしむ、これに当たる場合に、「その他の物」に入り得ると理解しております。  それから、今おっしゃったように合成写真等とかですが、実在の児童の姿態が頭部のみである場合には、その頭部の部分のみでは、第二条第三項各号の児童の姿態に当たると認められない限り、児童ポルノには当たらないというふうに考えております。  それから、この問題につきまして、前回、実は木島委員の方から質問をいただきまして、合成写真を利用したいわゆる疑似ポルノについては児童ポルノには当たらないというふうなお答えをいたしました。それで、一部正確でありませんでしたので、改めて述べさせていただきます。  この法案では、児童ポルノとは児童の一定の「姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」をいうとされておりまして、ここに言う児童とは、十八歳に満たない者、すなわち実在する児童を意味します。  今回の法案の中では、外国の立法例にあるような、疑似ポルノについて明文の規定は置いておりません。したがって、写真等が実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限り、児童ポルノには該当しないことになります。  ただ、合成写真等を利用しました疑似ポルノの中には、実在する児童の姿態を描写したものであると認定できるものもあると考えられ、このようなものについては、今回の法案の児童ポルノに当たり得ると考えます。  ですから、先ほどの御質問ですと、顔が少女で、体が何か全然違うもの、これは各号に当たりにくいと思います。  それから、体がまさに実在する児童の姿態でありまして、多少手が加えられている部分があるかもしれませんが、その描写物が実在する児童の姿態と認められる場合には、このポルノに当たり得る場合もあるというふうに考えます。  それから、どういう場合がというのは、具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題となりますが、実在する児童について、その身体の大部分が描写されている写真等を想定いたしますと、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当いたします。その写真に描写されていない部分に他人の姿態をつけ加えて合成したとしても、ある児童の身体の大部分を描写した部分が実在する児童の姿態でなくなるわけではない。当たる場合もあり得る。  非常に複雑な説明になりましたが、こういうことです。 <0036>=池坊委員= 何で細かいことを伺ったかと申しますと、これから業者はいろいろな法の目をくぐって巧妙なことをつくり出していくと思います。このような場合、例えば、顔の部分だけかわいらしい少女が使われた、その少女の心身に大変に深い傷を負わせるのではないかと思いますので、こういうことも含めましてインターネットの規制というのはこれからも必要になってくると思いますので、三年後の見直しの中に私は入れていただきたいというふうに望んでおります。  次に、警察の方にちょっとお伺いしたいのですが、この法案をつくるきっかけの一つとして、スウェーデンのECPATというNGOがあると思います。これはユニセフからも大変な信頼を得ているNGOでございますが、これに協力するインターポールを通じて警察とも交流があったかのように聞いておりますけれども、これまでにどのような協力をしていらしたかを伺いたいと存じます。 <0037>=小林(奉)政府委員= ECPATとの交流についての御質問でございますが、警察庁におきましては、本年四月にインターポールが主催いたしました未成年者に対する犯罪に関する会合に、ECPATを初めとしますNGOとともに、その会議に参加させていただいているという状況でございます。  また、一九九六年八月に、ECPATを含むNGOとユニセフ、スウェーデン政府との共催によりストックホルムで開催されました児童の商業的性的搾取に関する会合に警察庁の職員を派遣しております。また、その会議のフォローアップの会議が東京等でも開催されておりますが、その会議はユニセフ、ECPATが主催しておるということで、私どももそういう会議に積極的に参加しておる、こういう状況でございます。 <0038>=池坊委員= ECPATの書類を詳しく読みまして、NGOが果たす役割というのは大きいのだなということに感慨深い思いをいたしました。  では、ついでにと言ってはなんですが、もう一つ警察の方にお伺いしたいと思うのですが、これから、国際的な協力ということなくしてこの児童買春の法を施行することはできないと思います。アジアにおいて日本人が児童買春などを行ったり、児童ポルノを製造した場合に、日本においてこの者たちを処罰するためには、現地の警察と密接な協力というのが必要である、つまり、証拠を集めなければだめであるというふうに思っておりますので、これはどのような計画をしていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。 <0039>=小林(奉)政府委員= 御指摘のように、児童買春等は国際的な問題となっております。そういった意味で、国外犯についても我々として積極的に対応しなきゃいけないと考えておるわけでございます。そういった観点で、私どもといたしましては、都道府県警察とともに、外国捜査機関等との連携強化を図りつつ、情報の収集、捜査の推進等、積極的な対応に努めてまいりたいと考えております。  具体的に申し上げますと、私どもといたしましては、都道府県警察を指導いたしまして、国内におきまして、そういった国外犯が行われたんじゃないかという、そういう情報を積極的に入手するようにいたしたいと考えております。また、警察庁の職員を随時海外に派遣いたしまして、外国捜査機関等に対しまして、この法律案の、できますれば法律になりますが、その内容を周知徹底しますとともに、外国捜査機関やICPOルートを通じてその情報を収集して、積極的な事件化に努めてまいりたいと思います。  そういった観点で、私どもにおきましては、この種事犯の国外犯捜査の体制強化を図るため、今春、生活安全局の少年課に少年保護対策室を設置したところでございます。この保護対策室を中心にいたしまして、こういった事案に対して対応してまいりたい、このように考えております。 <0040>=池坊委員= 現実の問題として、東南アジアで児童ポルノを製造し、これをヨーロッパで販売した者は、もちろんこの本法案では処罰されるのですけれども、そういう人を摘発することができるというふうにお考えですか。可能ですか。 <0041>=小林(奉)政府委員= この法案によりまして国外犯の処罰規定ができるわけでございます。したがいまして、そういった国外犯について、我々としては全力を挙げて摘発するように努めてまいりたい、こう考えております。 <0042>=池坊委員= 処罰はできる、だけれども摘発はなかなか現実にはできないということになりますと、この法案があっても生かされないということになりますので、あとはもう警察の方のお力にかかる部分が大であると思います。こんなにいい法律ができましても、ざる法と言われないために、細かいことをやはり私は詰めていきたいなと思いますので、法務省の方にもちょっと伺いたいと思います。  この児童買春についての刑は、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」というふうに書かれて定められております。百万円以下と申しましても、何千円から九十九万円までありますので、安いお金だったら罰金ぐらい払ってもいいよという人も私はいるのではないかと思います。具体的な事件でどのようにしてその刑は決められるのか。刑罰の決め方とかいうことも頭の中におありかどうかをちょっと伺いたいと思うのです。 <0043>=松尾政府委員= 一般に刑の決定、これは具体的事件では裁判所が最後に決するわけでございますが、その決定に当たって、通常どういうことが考慮されるかということですが、例えばその犯罪の性質それから軽重、動機、方法あるいはその結果、それから社会的影響及び犯罪後の被告人の態度並びに被告人の年齢、性格、経歴、環境その他の事情が総合的に考慮される、これがいろいろな判決の中で触れられている事項ということができると思います。  今回の、児童買春をした者あるいは児童ポルノを製造した者等についてでございますが、例えば犯罪の性質でいいますと、これらの罪が、児童の心身に有害な影響を与える、あるいは児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するということになりかねない性質を有するというような、今回の法案の立法の目的といいますか、趣旨、こういったことも、この犯罪の性質を考え、処断刑を決定する上では重要な事項というふうに考えております。 <0044>=池坊委員= 私は、処罰は厳しくしないと、そういうことにかかわります当事者も、多少の罪、多少の罰金ぐらいはいいとかいうことで、いろいろな法の網の目をくぐり抜けることを考えてくると思っておりますので、細かいことを言い過ぎだとお思いかもしれませんけれども、現実には法を施行するには、細かいことの周辺整備ということがなされてこそ初めて法は生きていくというふうに私は思っております。  これは、世界の中で、日本が経済のみならず、良識ある国民だということを認知されるためにもぜひ必要な法律というふうに私は認識しております。そして、それがただ成立されるということだけでなくて、細やかに実行されるということを願って、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。 <0045>=杉浦委員長= 次に、福岡宗也君。 <0046>=福岡委員= 民主党の福岡宗也でございます。  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。  この法案の問題は、一九九六年にストックホルムにおいて開催をされました国際会議において、我が国が児童ポルノ製造販売の輸出国であるとして、また子供買春ツアーをアジアに多数送り出している加害国として指摘をされました。そして、これらの行為が子どもの権利条約に違反をする行為で、これを是認しているんではないかという国際的な大きな非難をこうむることになったわけであり、我が国としましては、国際的な信用を回復するためにも、我が国の児童の権利を守るという立場からも、早急にその対応が迫られていた問題であるというふうに理解をしておるわけでございます。  その意味におきまして、このたび、発議者の皆様方が中心となりまして、研究調査をされまして、本法案が提案をされ、参議院で可決をされましたること、心より敬意を表するものでございます。  ただ、問題は、この法案を子細に検討しますと、若干いろいろな問題があるわけでございます。そして、その問題につきましては、いろいろな角度からもう既に同僚議員の方から御質問がございました。しかし、私といたしましては、本法案が、刑罰法規の新設という、国家が国民に対する最も重大な人権制限、また侵害ともいうべき刑罰を適用する、こういうような内容を含んでおりますので、罪刑法定主義の要請を十分に充足をしておるか、その他、人権上の配慮は十分かという点、さらに、被害者である児童というものは当然捜査の対象にされてくる、また公判などでも証人等に呼ばれる、それが大きく報道されるという第二次的な被害というものが当然に予想されるわけであります。したがって、この問題については万全であるかどうかということであります。  さらに、これらの問題については、処罰するための法益、目的こそ違いますけれども、他の法律によっていろいろと規制があるわけであります。例えば売春防止法、刑法の強姦、わいせつ罪というような刑罰法規というのが既に存在をしているわけでございます。これらの法規との間の整合性、それから構成要件の相違点、刑の均衡というようなものについて、その違法性の程度に均衡しておるかどうかなどについて十分に討議がなされなければならないなというふうに考えているわけであります。したがって、この点について、ちょっと私が気がつきました点だけ、二、三御質問を申し上げたい、かように存ずる次第でございます。  そこで、まず第一番に、いずれの法規も、法律の目的というのは、その法律の理念というもの、さらには運用を決定づける最も重要な基本的なものであるというふうに考えております。そこで、本法案におきましても、第一条において目的が明記をされておりますので、この目的の内容、ちょっとわかりにくい点もありますので、まず簡単に御説明をいただきたい、こういうふうに思います。 <0047>=円参議院議員= お答えいたします。  この法律の目的は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみまして、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることによって、児童の権利の擁護に資することでございます。  ただ、児童買春や児童ポルノに係る行為を放置しますことは、児童買春の相手方となり、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、まだそのような対象となっていない児童につきましても、健全な性的観念を持てなくなるなど、その人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながりますので、そこから児童一般を守ることもこの法案では目的としております。そこで、この趣旨を、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えると表現させていただいたものでございます。  したがいまして、児童の性的自由を保護するというのがこの法案の第一次的目的でございますが、同時に、以上述べたようなことも目的とすべきであると私どもは考えました。 <0048>=福岡委員= ありがとうございました。  今の御答弁をお聞きしておりますと、一言で言いますと、本法案の目的は、あくまでも児童の権利を守る、虐待、搾取から守るというところがまず第一義的なものであって、あとそれにプラスするところは、その被害に遭った児童を救済するためのケアという問題を含んでいる、こういうことで、それ以外の一切の目的は、これはないということでお伺いしていいかということであります。  といいますのは、売春防止法の目的は健全な性風俗の維持であるとか、刑法のわいせつ罪の目的は善良な風俗の維持確保というようなこと、さらに児童福祉法においては健全育成というように、法益というのがそれぞれ目的の中にもあるわけですけれども、そういった目的というのはこの法案の中にはないので、児童を指導しようとか補導しようとか、それから相手になる者も十分な取り締まりをしようとかというような趣旨は一切含まれていない、かように理解をしてよろしいでしょうか。 <0049>=円参議院議員= あくまで児童を性的搾取、性的虐待から守り、その児童の人権を保護するものと考えております。 <0050>=福岡委員= ありがとうございました。  私もそうありたいということで、そういうような理解だということならば、私も安心をいたしたわけであります。  そこで、今のことに関連をいたしまして質問をしたいのでありますけれども、それは、児童買春の被害者となった児童、それから児童ポルノのモデルになった児童などについて、少年法のいわゆる虞犯少年、これは少年法第三条の一項三号というのがありますけれども、いわゆる少年審判に付することのできる少年としてこういう虞犯少年というのがあります。それからまた、不良少年という概念もあります。こういうものに該当するとして捜査の対象にされて被疑者的な扱いを受ける、ひいては少年審判に付される、こういうようなことはあり得るのかどうなのか。  一見しますと、児童買春の相手方となる行為は、いわば売春防止法に言うところの売春行為にも該当する可能性があるわけでありますし、それからまた、十四歳以上の児童については刑事責任能力もあるということですから、取り締まりをしようと思えば当然にできるような感じもするわけであります。そうなれば、これは、本件でもって買春した人は処罰はされますけれども、同時に、児童の方についても、そういう法的な不利益というものは当然降りかかってくる対象になりますし、捜査のやり方いかんによっては、相手方の大部分がこれにひっかかってくるような取り締まり方法というものもあるのではないか。この点が、私、本法案について一番懸念をしていたところでございますので、この点につきましては、発議者とそれから法務省、それぞれ簡単に御答弁をお願いしたいと思います。 <0051>=大森参議院議員= 今先生おっしゃられたように、少年法の審判に付すべき少年の中に、犯罪少年、触法少年、そして虞犯少年というものが類型化されております。  それで、犯罪少年が、罪を犯した少年、これは刑法の規定によりまして十四歳以上になります。それから、触法少年、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年であります。いずれにしても、刑罰法令の構成要件に該当するような行為をした者が対象となります。  それで、このような買春の相手方となった児童の場合ですけれども、こういう行為が、先ほど福岡先生、売春行為に該当し得るというようにおっしゃったわけですが……(福岡委員「いや、私が問題にしているのは虞犯少年だけです」と呼ぶ)虞犯少年だけですか。わかりました。  虞犯少年の要件につきましては、少年法の各号に当たるその要件を満たすかどうか、これは個々に買春の相手方となった児童、それから、例えば児童ポルノの対象になった児童につきましても、日ごろの素行がどうであるかとか、そのさまざまな行為態様というものをこの虞犯少年に当たるかどうかという基準に従って判断するわけでありまして、虞犯少年等、少年法の適用によってするということについてはこれまでと変わらないだろうと思います。 <0052>=福岡委員= ちょっと答弁の最終的な結論の部分がよく了解できなかったんですが、要するに、児童買春行為の相手方となったという場合に、この虞犯少年の要件であるところのイからニまでの事項というのがあります。例えば、保護者の正当な監督に服しない性癖があるとか、正当な理由なく家庭に寄りつかないとか、犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りする、自己または他人の徳性を害する行為をする性癖がある。  そうすると、これは、ニの徳性を害するということにも該当しますし、犯罪性のある人と交際をするというような問題、それから、両親の言いつけを聞かないというような問題もやはり虞犯少年の要件ということですから、いわば当然に、児童買春の相手方となって対償をもらったような場合には該当しそうな行為が列記されているので、こういった場合に、児童買春をした大人を処罰するのはいいんですけれども、同時に、捜査官の捜査の対象という形に取り上げられるということについては、私は取り上げてもらっては困ると思っているんですね。  そうしないと、両方とも被疑者扱いということの取り調べになってきて、児童の人権が守られないという取り扱い。単純被害者の場合ですらもいろいろな形の二重被害が起こっておるわけであります。先ほど言いましたように、証人に出る、取り調べの段階で厳しくまた道徳的な問題でも追及されるとか、先ほども御質問がありましたように、援助交際はけしからぬ、道徳観念がいかぬのだという観点は確かにあります。いわゆる純風な性道徳に反する行為をおまえしておるんじゃないかという取り調べを受けるということになると、児童を守るどころか、児童弾劾法となりかねないというところを恐れているわけですから。  その辺について明確に、ならないんならならない、なってもそういう取り扱いをしない、それはどういうことで取り扱いをせずに済むのかという点を明確にしてもらわないと、ちょっと安心できないということであります。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0053>=大森参議院議員= 虞犯少年の要件については、今先生の方から述べていただきました。  要するに、これは認定の問題でございまして、児童買春の相手方となった児童、それから、児童ポルノの対象の児童、この行為等、振る舞い等、これが虞犯少年に当たるかどうかという判断でありますので、ある場合には当たる場合もあるでしょうし、ある場合には当たらない場合もある。したがって、言えますことは、児童買春の相手方となった児童が直ちに審判の対象とはならない、こういう言い方ができると思います。  それから、今、被疑者扱いと言いましたが、これは虞犯少年についてもということでしょうか。そこのところにつきましては、そういう懸念がありますので、捜査、公判上の注意ということで特に規定を設けております。 <0054>=福岡委員= 今の御答弁をお聞きしても、やはり虞犯少年という対象になって、場合によっては捜査ということがあり得るという可能性を残しておるというふうに私は理解をいたしたわけでありますけれども、やはりその点については、運用上において十分な配慮をなされて、いきなり買春行為をした人と同レベル的な扱いは絶対に避けるというようなことをここで確認をしておいていただきたいと思っております。  それから次に、本法案につきましては、児童買春、児童ポルノの対象とされておる児童の年齢を十八歳未満の児童と定めております。  我が国の刑事責任能力年齢というものは、刑法において十四歳と規定をされておりますし、それから、民法におきまして結婚可能年齢は満十六歳とされておる。したがって、我が国の法規としては、遅くとも十六歳においては責任能力もあるし、性的行為についての決定能力というものもあると考えているわけであります。また、外国の立法例も、いわゆる児童を買春行為から守るということについては、ドイツは十四歳、フランス十五歳、ベルギー十六歳というふうにされております。  これらの問題を勘案しますと、本案の十八歳というのは高きに失しているんではないかという感じがするわけであります。そして、それは同時に、半面的に、十分に成熟をし判断能力のある児童についての性的意思決定権というものも制約をする結果にもなっているわけであります。そういう点からしますと、やはり、一部の人が言っているような義務教育年齢までに下げる必要があるという主張ももっとものような気がいたします。  そういうような観点で、この対象の児童年齢を満十八歳と定めたその理由について発議者と法務当局、これで他の法令との整合性がいいかどうかは法務省の方で御答弁をお願いいたします。 <0055>=円参議院議員= 先生が今おっしゃったようなさまざまな国内の法律や、また諸外国の法律について、この年齢については随分議論が交わされました。その結果でございます。  ですから、今先生がおっしゃったようなことは繰り返しませんけれども、御懸念のように、子供の定義というものは必ずしも一義的に定まっているわけではございませんので、先生も御存じだと思いますが、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というのがございまして、その条約の中で、その対象となる児童を十八歳に満たない者とすることを原則としております。そして、この条約は世界的に普及しておりまして、この十八歳という年齢は、子供と大人を分ける緩やかなメルクマールになりつつあると私は思っております。  また、我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者となっております。  これらの条約や法律の目的と今回つくります法律の目的から考えまして、対象とする者の範囲も同一ですべきであるという結論に私ども達しまして、十八歳未満の者をこの法律に言う児童としたものでございます。  ちょっと今、林議員からも指摘がありましたが、先ほど先生がおっしゃった、婚姻年齢が女性の場合我が国は十六歳でございますけれども、この十六歳ということに関しましても、児童福祉法では同法の対象となる児童は十八歳に満たない者でございますが、かつ、それは女性の婚姻による例外を認めておりませんことは先生も御承知のとおりと思いますので、そういう結論に達しました。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0056>=福岡委員= どうもありがとうございました。  この問題は確かに難しい問題でありますけれども、児童福祉法の関係のは姦淫をさせる行為というのが処罰の対象になっているという制約がありますので、同一ではないとは思いますけれども、問題は、諸外国について、保護すべき年齢は高く、しかしながら処罰するときは意思決定年齢にという考え方もあるものですから、運用の上でまた今後御検討をいただきたいというふうに思っております。  それから次に、本法案の第二条の三におきましては、児童ポルノを定義いたしております。  これは、ちょっと長いもので省略をしますけれども、要するにどういうことかといえば、これを見ますと三つの分類になっているわけです。まず第一は、性交とか、また類似行為というものについての姿態、それから次は、性器に接触をするというものの姿態、それからさらに、第三番目は、裸体または一部露出みたいなものの姿態、この三つの姿態ということがこれに当たるんだ、こういう考え方であります。後半の二つの問題については、それにさらに歯どめをかけまして、性欲を興奮させまたは刺激することをいう、こういう要件にしておるわけであります。  そして、これと対比する意味で、刑法の百七十五条におきましては、わいせつな文書、図画その他のものを頒布等の行為をした者、これは二年以下の懲役という形になっております。  わいせつなものというものについては、やはりいたずらに性的興奮を刺激する、善良な性的道徳観念に反するようなものとか、羞恥嫌悪の情を抱くようなものというようなことが今までの判例の積み重ねではっきりしておるわけでありますけれども、これはどう見ても、先ほど言った性的興奮をさせるような姿態だということや、それから当然性交行為自体を見ている。それで、単なる裸や一部露出であってもそういう刺激をさせないものはいいのだということだとすると、結局わいせつの概念と同じではないかという感じがするわけですよ、はっきり言いまして。したがって、わいせつ物とほとんどの場合は重複するようなものが児童ポルノであるのだ。  そこで、ほとんど違わないか、違うとすれば、両方に該当する行為はどんなものであって、例えばわいせつ罪には該当はしないけれども児童ポルノには該当するというようなものは典型的なものとして何があるか、こういうようなところをはっきりさせておきたいというふうに思うわけであります。そこで、その辺についての、両構成要件の相違点について御説明をちょっといただきたいわけであります。 <0057>=大森参議院議員= まず、刑法第百七十五条の「わいせつ物頒布等」の中に出てきますわいせつの意義につきましては、今委員もおっしゃいましたが、最高裁の判例がありまして、正確に申し上げますと、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」というふうに判断されております。ですから、刑法のわいせつ物頒布等につきましては、「わいせつな文書、図画その他の物」ですが、すべてに「わいせつ」がかかるという意味で、この概念において判断されることになります。  児童ポルノの方は、まず一号ポルノと言われるものにつきましては、性交または性交類似行為に係る児童の姿態に関するものでありまして、このときには、こういうものであれば、それだけで違法性が強いものとして処罰の対象としております。そして、二号、三号につきまして、一定の児童の姿態を記載してございますけれども、これにつきましては、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こういう文言を入れてございます。  そこで、最高裁判例のわいせつ概念とどこが違うかといいますと、まず、「徒らに」ということはこちらは要求しておりません。つまり、過度にという意味ですけれども、過度であることを要しないということです。それから、「普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であるか否かについて、論ずるまでもなく規制すべきものとした趣旨でございます。  このために、児童ポルノの方につきましては、刑法のわいせつに該当しないものも含み得ることになります。 <0058>=福岡委員= そうしますと、わいせつという抽象的概念といいますか、先ほど言いましたように、善良な性的道徳観念に反するとか「徒らに」というような要件というのはなくて、形式的にこれに該当すればいいというような感じの御答弁だったというふうに思うのです。  そこで、ついでにもう一点だけお聞きしておきます。  わいせつ行為の場合に、芸術作品かわいせつかというような問題が非常に問題になりまして、いろいろな判例がありますけれども、最高裁は、最終的な判例としては、芸術作品であってもわいせつ行為であるということを免れることはできないというような結論であるというふうに思っておりますけれども、その点については、本件の場合は多少そういった問題が論議されましたでしょうかどうか、ちょっとお答えをいただきたいというふうに思います。 <0059>=大森参議院議員= まず、たしか前回の衆議院法務委員会の質疑でもそのような質問をいただいたかと思います。いずれにしましても、ここで言う児童ポルノにつきましては、この第二条第三項各号に該当すれば児童ポルノに当たるというふうに考えております。  それから、芸術作品の場合はとよくおっしゃるのですが、例えば、芸術作品というのは客観的な基準があるわけではございませんで、確定したものはございません。よく、これは芸術作品だと本人が思っているだけのような場合もございます。したがって、言えますことは、芸術作品であるかどうかはこれとは関係なく、児童ポルノの判断につきましては、あくまで今申し上げました一号、二号、三号ポルノ、この構成要件に該当するかどうか、これで判断することになります。 <0060>=福岡委員= ということは、端的に言うと、芸術性の有無というような問題は判断基準にはならない、そういうことで理解してよろしいですね。 <0061>=大森参議院議員= 芸術性の有無云々ということは、表現の自由との関係で、刑法のわいせつ物かどうかでは問題になるところでございます。芸術性の有無が問題にならないとおっしゃる場合に、先生がどういうことを頭の中に描いておられるかちょっとわからないので申し上げますが、例えば、本来、芸術というものは時代を超えて多くの人がその価値を認めるものというふうに言うことができるかと思うのですが、そういう真の価値が付与された場合には、この「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という、これは一般通常人を基準にいたしますから、この認定のところで多少の違いが出てくるのかという気がいたします。 <0062>=福岡委員= 私が質問しました趣旨は、先ほどの御答弁の中に、「徒らに」ということがないということだから、目的的に、芸術作品をつくるということで、客観的に多くの人が芸術作品として認めるような絵画とか写真とか、そういうものについては、やはり芸術性があるからこれらに該当しないというのではなくて、そういうものであっても、ここの要件でありますところの「性欲を興奮させ又は刺激するもの」を視覚によって認定することができるというものに該当するとすれば、芸術性があろうがなかろうが、「徒らに」という目的的な概念は判断基準にならぬということですから、判例もちょっとそれに近いですけれども、だから当然、これはもう処罰の対象のポルノというふうになるのではないかなと僕は理解したのですよ。「徒らに」というのが判断基準にないとおっしゃるから。 <0063>=大森参議院議員= わかりました。先生のおっしゃるとおりであるとこちらも理解しております。  要するに、この構成要件に該当するか否か、この判断によって、児童ポルノであるかどうかが決まります。 <0064>=福岡委員= はっきりしました。  客観的なそういう基準に合致するかどうかで、主観的な要素というのは加味の対象にはちょっと難しい、こういうような御主張だというふうに思いますので、理解をしておきます。  それから次に、刑法百七十五条わいせつ物の頒布等の罪の具体的な行為というのは、頒布と販売と公然陳列、この三つなんですね、行為が。ところが、今回の児童ポルノの罪は、そのほかに賃貸、製造、所持、運搬、輸入、輸出と、極めて多岐にわたっているのでありますけれども、こういった行為まで処罰するというのは、それぞれの持っておる法規のいわゆる保護法益という観点からこういう相違が出るのかどうか、また、その他の理由があるのか、ちょっとお聞かせを願いたいわけであります。 <0065>=大森参議院議員= 処罰範囲の違いというものは、今先生触れられたとおりに、それぞれの法律の目的によって影響してくると思います。  刑法のわいせつ物頒布等の罪につきましては、これは性風俗に対する罪ということです。ところが、こちらの児童ポルノ頒布等の罪は、多分時間をお気になさっているでしょうから繰り返しませんが、先ほど円委員等がその目的として述べたところでございます。このような法の目的から、今おっしゃったところでどこまで処罰の対象とすべきかということで、刑法とこの法案との差ができたものでございます。 <0066>=福岡委員= どうもありがとうございました。  そこで、次に、本法案においては、自由刑だけで申し上げますと懲役三年以下。それから刑法では、百七十五条でやはり懲役二年以下ということで、法定刑に一年の差があるわけですけれども、これはどうしてこういう差が出てくるのか、その合理的な理由があるのかどうかということです。 <0067>=大森参議院議員= 刑法のわいせつ物頒布等の罪が二年以下の懲役なのに、児童ポルノの頒布罪というのが要するに刑罰が非常に重くなっていること、これはそれだけ違法性が重大だと考えるからでありまして、性風俗に対する罪と、それから、もう繰り返しませんけれども、円発議者として説明しました本法案の目的から考えまして、このような児童ポルノに該当するものはより違法性が高い、強いものである、こういう判断が働いております。  それから、例えばわいせつ物は、刑法の方ですと文書も入りますが、図画も入ります。その場合には漫画とか絵とかそういうものも入りますが、法律の目的の違いから、写真、ビデオテープその他の物ですけれども、これは実在する児童の姿態を描写したもの、こういう制約がありますので、児童ポルノに当たる場合にはより違法性が強いことは容易に御理解いただけると思います。 <0068>=福岡委員= そうしますと、結局、保護法益の面が、一般的な性風俗というような抽象的なものよりも、具体的な、モデルになった児童というものの人権保障、人権侵害的な要素というものを強く取り上げて違法性が高いという判断をした、こういう趣旨でいいわけですね。  それから次に、児童買春の規定と相対応するものといたしまして、刑法においては強姦罪と強制わいせつ罪という規定がございます。そして、それぞれの規定につきまして比較検討をちょっとしなければならないかというふうに思うわけでございます。  本法案におけるところの買春行為は二条の二で規定をされておりまして、要約いたしますと、対償を供与するということがまずこの要件になっておって、性交と性交類似行為、性器等の接触または接触させる行為ということになっていると思います、一言で言いますと。そして、その行為をした者は三年以下の懲役ということに処罰される、こうなっているわけでございます。  一方で、刑法の方は、百七十七条において、十三歳以上の女子に対しては暴行、脅迫を要件として強姦罪が成立するけれども、十三歳未満の女子に対しては、暴行、脅迫をしなくても、姦淫行為をしたということだけで懲役刑に処せられるということであります。そして、その刑も重くて、二年以上の有期懲役ということで、かなり最高刑は高いということであります。  それからまた、百七十六条の強制わいせつの罪としましては、十三歳以上の婦女子に、暴行、脅迫してわいせつな行為をした場合。十三歳以下の場合には暴行、脅迫がなくてもわいせつ行為が成立する、こういう二本立てになっているわけでございます。  そこで、言うところのわいせつ行為というのをよく考えてみますと、結局、ポルノの先ほどの要件でありますところの行為、それとやはり概念的にほとんど同じような感じ。具体的に考えてまいりますと、対償を供与しというのはございませんけれども、性交は強姦の方でありますし、それからあとは性交類似行為、性器接触とか、それから性器をさわらせるというような行為も、結局強制わいせつ罪の従来の判例上で認められているような行為だと思うのですね、ほとんどすべてが。  これはどういうような相違点があるのか、重なり合うところと、それからはみ出すといいますか。それから、どちらの方がむしろ広いというふうに考えるのか。私ども検討をしましたけれども、なかなかわかりにくいので、簡単に説明をいただきたいというふうに思います。 <0069>=円参議院議員= 先生のおっしゃった本法案の児童買春罪の構成要件と、それから刑法第百七十六条、第百七十七条との違い、先生今一応刑罰の違い等はお話しなさいましたけれども、とりあえずこの児童買春罪の構成要件は、児童等に、「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすること」でございます。  これに対し、強制わいせつ罪の構成要件は、十三歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること、及び十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をすることでありまして、おっしゃるとおり。また、強姦罪の構成要件は、暴行または脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫すること、及び十三歳未満の女子を姦淫することでありまして、これらの罪の構成要件は、十三歳以上の者に対する場合については、暴行または脅迫が要件とされております。また、十三歳未満の者に対する場合については、対償の要件がないこと等の点において、児童買春罪とは異なるものでございます。  この児童買春罪と強姦罪、強制わいせつ罪の性質の相違についてでございますけれども、児童買春罪は、児童買春がその相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものでありますことから、かかる行為を処罰しようとするものであるのに対し、刑法の強姦罪、強制わいせつ罪は、個人の性的自由を保護法益とするものでございます。 <0070>=福岡委員= そうしますと、やはり保護法益の相違点ですね。そういうような点、片方は個人の性的自由というものを保障するというのが刑罰の保護法益と私も理解しておりますけれども、そういうことよりももっと広いところがあるということだということです。それからもう一つ、今のお話を聞いておって思ったのは、やはり十三歳以上の人たちが、暴行、脅迫がない場合は野放しになってしまう、これをやはりきちっとしないといけないのだという御趣旨もあると。そこのところが違うところの主なものですね。  そうしますと、あとの、中身である性交というものについては、これは姦淫という言葉を刑法では使っておりますけれども、これは同意語でいいわけですよね。そうすると、従来の強姦罪だけでいけば、十三歳以上の婦女子に姦淫をした場合には暴行、脅迫がなければ逃げられてしまうということ、特に十八歳未満の人が逃げられるわけですね、十八歳以上の人はフリーになっちゃいますから、本法案でも。だから、十三歳以上十八歳未満の人を、いわゆる対償という構成要件を付加することによって処罰するのが目的だ、こうお伺いしていいですね。 <0071>=円参議院議員= これまでは暴行や脅迫がなければ十三歳以上十八歳未満の児童にわいせつや姦淫をした場合に取り締まるのは難しかったということがございますが、今回はそれを対償の供与というようなことで取り締まることができるとしたものでございます。 <0072>=福岡委員= よくわかりました。  そこで次に、児童買春については行為が列挙してありますけれども、いわゆる性交から性器接触まで、これはすべての行為というものを一括して同じ刑、三年以下としているわけです。ところが、強姦罪と強制わいせつ罪は、強姦罪の方は二年以上ということですから、上は十五年まで行く可能性があるわけでありますし、それからさらには、強制わいせつの方は六月から七年以下ということで、もう法定刑としては格段の差がある。これはどういうことかといいますと、姦淫行為そのものの自由権の侵害というようなものは極めて大きい。その他の類似行為であるとか、接触行為とかというわいせつ的な行為とは比較にならないという考え方が基本的に刑法にはあると思うのですね。  その点について、やはり児童買春の場合でも、姦淫行為にまで及んだ場合と、性器にちょっと接触をしたという場合とでは違法性において大きな違いがあるとどうしても思わざるを得ないのですけれども、この点、二つの刑に分けて規定するということは考えなかったのかどうか。また、考えなかったとすれば、その理由だけちょっと聞かせていただきたいと思います。 <0073>=大森参議院議員= この二条二項の中には、児童買春の構成要件が規定されております。そして、これを受けての法定刑が三年以下の懲役または百万円以下の罰金でございます。要するに、いろいろな行為態様によりまして、性交した場合あるいは性交類似行為にとどまった場合、あるいは性器等にさわったような場合と、その行為態様によりましてその法定刑の範囲内で適当な刑の言い渡しがされるのであろうというふうに思っております。  それから、強制わいせつの場合で、例えば十三歳未満の児童に対しましては暴行、脅迫等が要らないわけでありまして、十三歳未満の者に対する強制わいせつ等の行為につきましてはそちらの構成要件にも該当するし、こちらに該当する場合もあり得ると思います。その場合は観念的競合になりまして、重い強制わいせつの方で処罰されることになりまして、個々具体的な事例につきましては、そんなにおかしな結論にはならないというふうに考えております。 <0074>=福岡委員= 両罪に該当して観念的競合になる場合の選択はそれでいいと思うのですけれども、一罪だけが成立をした場合の、例えば対償性の要件とかいろいろなことがありますので、そういう場合ですとそれではできないので、強姦罪が二年以上の有期懲役だということになれば、これに類するような姦淫行為だけはある程度引き上げるとか、何かそういうような配慮がないと刑法とのバランス上ちょっと据わりが悪いんじゃないだろうかなということを考えます。これ以上質問しませんので、運用上、また将来の検討事項として検討はしていただきたいなというふうに思っております。これだけ申し上げておきます。  それから、第八条の買春目的の人身売買の規定がございますけれども、「当該児童を売買した者」、こういうことで対象者が規定されているわけでございます。ここで言う売買をしたというのが、どうも概念が私としてははっきりわからないわけであります。  我々、売買といいますと、民法の規定の売買概念として、一方が財産権を相手方に移転をすることを約して、相手方がこれに対して対価を支払うということによって成立するんだ、こういうふうになっております。そうしたら、児童は財産権の対象ではありませんので、ずばりは来ないし、それからまた、さらにこの場合に、児童を引き渡しをして、それによって対償を受領したときに成立するのか、それともそういうようなことを抽象的に約束すればそれでもいいのかとか、その約束の内容はどうすべきかということについて、具体的に適用として非常に難しい問題が出てくる可能性があるなというふうにちょっと今私ども思っているわけであります。  その点についての要件の内容、非常に認定が難しくて、これによって逃げられるようなことはないのかという、そこの懸念がちょっとありますので、御説明をお願いします。 <0075>=大森参議院議員= 買春目的の人身売買の規定でございますけれども、売買とは、対価を得て人身を授受することをいうとされております。これは、刑法第二百二十六条第二項それから第二百二十七条第一項に規定する売買と同義に理解しております。  それでは売買というのはどういうものかということにつきましては、刑事局長の方から答弁させていただきます。 <0076>=松尾政府委員= 今発議者の方から答弁がありましたが、刑法にやはり売買という規定が出ております。  先生のお尋ねの中に、例えば売買の約束だとか、あるいは対価を払う約束をしたけれども現実にそれが実現していないとか人が動いていないとか、この規定の仕方からいたしますと、売買したということでございますので、予備罪とか未遂罪についてはこれは触れていないわけです。特別にそういう規定がありますれば、そこらあたりも処罰の対象に行為としては包含されるわけでございますが、この規定ぶりからいたしますと、売買した、いわば現実にそういうことが行われたということが前提になろうかと思います。 <0077>=福岡委員= そうしますと、民法の売買みたいに意思表示主義というわけにいかないと。したがって、現実の引き渡しとかそういう具体的行為がないとなかなか難しいということでございますので、取り締まりがちょっと難しいのじゃないかななんというふうに私思うわけであります。それも一遍また御検討はいただきたいというふうに思っております。  それから、次に、第九条の児童の年齢の知情の点についての規定でありますけれども、これについて、使用した者という表現があるんですよね。この使用した者というのはどういうことをいうのかちょっと明確じゃないものですから、どういうような行為をしたときか、どういうような立場の人間を使用した者というのかということをちょっと御説明お願いします。 <0078>=林(芳)参議院議員= 御答弁申し上げます。  「児童を使用する者」というのは九条の規定にございますが、これは児童福祉法の六十条の三項に同様の規定がございまして、本法案はこれに倣って作成をいたしたところでございます。  同規定におきます「児童を使用する者」というのは、判例がございまして、「児童と雇用契約関係にある者に限らず、児童との身分的若しくは組織的関連において児童の行為を利用し得る地位にある者」、こういうふうな判例になっております。あるいは、「特にその年齢の確認を義務づけることが社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者」というふうなことが判例になっておりまして、本法案における「児童を使用する者」の意義もこのとおりでございます。 <0079>=福岡委員= そうしますと、今その判例に従うということですから、実際的には、法的な意味で従属制があるとか親権に服するとかということよりもっと広い概念だということですね。事実上支配をしているというような関係に立つ者がそういうことをしたということですね。わかりました。  それで、次にそれに関連しまして、第九条の規定全体を見てみますと、私は、本来、第五条ないし八条の罪というものは故意犯だと思うんですよ。故意犯を前提として、その年齢を知らなかった、十八歳未満であるということを知らなかったということに過失がある場合は処罰をするという、いわゆる過失犯を設定した規定だというふうに全体として認識するわけですけれども、それで間違いないでしょうか。 <0080>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、委員の御指摘のとおりでございますが、五条から八条までに規定する犯罪は故意犯でありますから、児童である、この場合は十八歳未満でございますが、その認識がなければ処罰ができないというのがこの原則でございますけれども、児童を使用する者については年齢に関する調査確認義務があるというふうに考えられますので、このような者については、児童の年齢を知らないということを理由にしてのみ処罰を免れさせるのは妥当でないという判断をいたしまして、これらの者については、認識がないことについて過失があれば処罰するということにいたしたところでございます。 <0081>=福岡委員= そうしますと、この規定の仕方を見ると、何か、裁かれる被告人側の者が過失がないことについて立証責任を負うというようにも読めるんですよ。要するに、原則として、知らないことは処罰される、ただし、知らないことについて過失がない場合には免れるというような感じになりますから。ところが、実際は刑事訴訟法の大原則は、すべて構成要件的なもの、過失もいわゆる構成要件ですから、それについては検察側の立証の義務があるということははっきりした事実ですね。したがって、その点をやはり変更しているというわけじゃないでしょうか。そこのところだけ明確にしていただきたいんです。 <0082>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  これも委員のおっしゃるとおりでございまして、このような規定には児童福祉法六十条三項というのもございますが、本条はこれに倣ったものでございます。これは解釈上、学説等いろいろあるようでございますが、我々といたしましては、憲法の三十一条に規定されております検察官の立証ということの原則にのっとりまして、検察官が過失を立証すべきであるというふうに考えております。 <0083>=福岡委員= もう大体時間になりましたので、あとちょっと省略いたしますけれども、一点だけ確認をいたしたいわけであります。  先ほど、冒頭に私の方では、買春行為の相手方になる児童がまた虞犯少年だというような取り扱いでもって審判を受ける、厳しい捜査にさらされるということは非常に問題であるということを申し上げました。私は、それとプラス、やはり我々弁護士として、被害者の場合の損害賠償その他の、その後のケアとかなんかの相談を受けたことがたくさんあるわけでありますけれども、そういう場合に、やはりそういう性的な行為というものに対する被害者といたしましては、それを公表されるということ、さらには、それが問題とされ、その場に証人に出ていく、参考人として出るということ自体が本当に、家族を含めて苦痛であるということになるわけであります。そういう意味で強姦罪の方は親告罪としたわけであります。要するに、角を矯めて牛を殺すことになりかねない、守るつもりであったのが逆に被害拡大になるということが親告罪の歯どめであるわけです。  今回は親告罪ではないという形になっております。その理由はいろいろあったでしょう。それは何かというと、犯罪の親告すること自体が自由な意思において行われたかどうかということは、問題になりやすいんですね。ところが、そういう被害というものは、成人の場合以上に二重被害というものを起こしやすいということも実態であるわけですね。  だから、そういう点についての配慮が十分なされた上で、これでいいのか、家族も子供も、取り調べを受けるのは絶対に嫌だと言って拒絶をして泣き叫んでおるときにも、あえて官憲の方で押し込んでいって捜査するというようなことがいいのかどうなのか、これが本法案についての私どもの一番心配するところではあったわけでありますけれども、この点についての御見解をちょっとお伺いいたしたいわけであります。 <0084>=円参議院議員= 先生がおっしゃるとおり、親告罪にすべきか非親告罪にすべきかという議論は随分私どももいたしましたし、また、捜査の過程においてセカンドレイプ等の人権侵害がないようにしなければいけないということも随分考慮した上でこの法案をつくったつもりでございます。  御存じのように、強姦罪や強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、これを訴追し、処罰することによって、被害者の精神的苦痛等の不利益がより増すことが考えられますことから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されております。  しかし、今回の児童買春罪につきましては、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保護者への金銭の支払いで示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられますので、これを親告罪といたしますと、児童買春の相手方となった児童の保護や、児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図ることが困難になりますので、このような観点から非親告罪としたものでございます。  また、児童ポルノ頒布等の罪につきましても同様であると考えております。  捜査、公判の過程におきましては、児童買春の相手方となったり児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えないように、本法律案は、第十二条第一項で、この法律に規定する罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないことを定めました。もう先生のおっしゃるとおり、そのあたりは十分配慮していきたいと考えております。 <0085>=福岡委員= どうもありがとうございました。  時間が参りましたので、質問としては終わらせていただきますけれども、今最後の点でありますけれども、了解はいたしましたが、ただ、現実の捜査の開始については、法的にできるという場合でありましても、実際に、その買春行為の悪質性、それから、被害者である児童の置かれている環境、家庭環境その他を含めて、その人の意思も十分確認をして、実際に着手するかどうかというのは、相当な程度、その意思決定権というものを児童に置くというような姿勢というもの、これは関係当局の方の実際の取り締まりのときの姿勢でありますけれども、十分それへ配慮をして運営をいただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。 <0086>=杉浦委員長= 次に、佐々木秀典君。 <0087>=佐々木(秀)委員= 民主党の佐々木です。お昼の時間までおつき合いをいただきたいと思います。  子供たちを性的な被害から守ろうという国際運動として、ECPATキャンペーンという運動があると聞いております。日本でも、この趣旨に賛同する方々が少なからずいて、そして、この方々の運動などがこの法案をつくるきっかけにもなっているというように聞いておりますけれども、この国際運動の概要、それから、この種の世界各国の取り組みの代表的な事例などについて御説明をいただけるとありがたいと思います。 <0088>=清水(澄)参議院議員= ECPATキャンペーンといいますのは、特に一九九一年、タイで、アジア観光における子供買春根絶キャンペーンという運動が始まりました。そして、特にアジアにおけるセックスツーリズムの実態を、ツーリズムで入ってくるのはほとんど先進国のヨーロッパなりオーストラリアなりアメリカなり日本なんですね、そういう国々に対してその実態を訴えるという中で、各国の政府に対してそれぞれの国の法改正などを具体的に働きかけていくという大きな運動を起こしてきております。  そして、子供買春、子供ポルノ、性的目的での子供の取引根絶キャンペーン運動というのを国際的なNGO運動として取り組んでおりまして、三十カ国以上にそういう団体が広がって、そこが主としてそれぞれの国の政府に対してその実態を知らせ、そして、今私どもがやっているように、その国のこれまでの性風俗維持とかそういう概念ではない、子供の人権をどう保護していくのか、子供の人権を守るという大きな運動を展開しておるわけです。  そして、現在、そのECPATが取り組んでいますテーマの一つとしては、インターネット上の児童ポルノの問題に力を入れておりますし、特に、大人だけじゃなくて若者の参加を重視した取り組みをしております。  このECPATというのは非常に大きな力を持っておりまして、これが実は、一九九六年にストックホルムで開かれました児童の商業的性的搾取に反対する世界会議、これを、ユニセフとか国連機関、国連子どもの権利委員会、それからスウェーデン政府がそれを受けまして、そしてその国際会議が開かれ、そこに国連の各機関が来ましたし、日本からも何人か参加いたしました、私もその一人でした。そして、多数のNGOと対等な形でその会議が開かれて、これは本当に国際的に、千二百人もの国連の会議のような大きな会議でございました。  そして、このストックホルム会議で、今日問題になっている児童買春、児童ポルノ、性的目的での児童の売買を根絶する、そういう宣言を行いまして、そのために、国際協力、それから被害児童の権利保護、ケア、リハビリとか、子供自身をそこに参加させていく、そういう具体的な取り組みを、行動計画を各国でつくろう、二〇〇〇年までに国内行動計画をつくろうということを決定をして、そしてそれが、各国取り組んでおって、今二十カ国以上国内行動計画ができております。  そのことが各国の中で、例えばEUなども早速、閣僚会議、ヨーロッパ審議会が開かれまして、さらにEUでは、人身売買、子供の性的搾取を撲滅する共同行動計画というものを採択しております。各地でそういう行動が広がっている中で、日本が行動計画もないではないかという、またここでそういう問題提起がされているわけです。  ですから、ヨーロッパ等では、イタリアでも昨年ですし、スウェーデンでも昨年、子供の人権の立場に立ったポルノの禁止の問題とか、そういう新しい法律制定への大きな流れをつくり出している。  そして、さらに国際機関では、そこだけではございませんで、これはもともと八九年に国連で採択された子どもの権利条約、これに基づくものですから、この条約の三十四条にはきちんと、児童買春、児童ポルノを根絶しようということを各国で、国内の法律改正とか国際連帯でやろうということを決めていまして、国連では人権委員会がこの問題に対する特別報告者を任命してずっと作業が続いており、そして、ことしがちょうど子どもの権利条約採択十年目に当たりますので、ことしまでにそのことをみんなで努力している。そして、ユニセフとかILO、ユネスコなど国連機関もECPATのNGOと一緒になって各地においてこの運動に取り組んでいる、これが実態でございます。 <0089>=佐々木(秀)委員= お昼になりましたので、これで一応中断をいたします。  午後からまたお願いいたします。 <0090>=杉浦委員長= 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十一分開議 <0091>=杉浦委員長= 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所白木刑事局長、安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0092>=杉浦委員長= 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ――――――――――――― <0093>=杉浦委員長= 質疑を続行いたします。佐々木秀典君。 <0094>=佐々木(秀)委員= それでは、引き続き質問させていただきます。  先ほど提案者からECPATキャンペーンの国際的な運動の概要、それから、各国のこの種問題に対する取り組みの状況を伺わせていただきまして、ありがとうございました。  お聞きをするところによりますと、このECPATキャンペーンでは、子供の売買、先ほども福岡委員の御質問の中で子供の人身売買のことが問題になっておった。この子供の人身売買の禁止ということが独立の目的に掲げられているように伺っておりますが、今度のこの法律案では、第八条でこの人身売買の禁止をされている。しかし、これは買春目的の人身売買に限定しているように思われるわけですね。もっとも、ポルノ製造の目的ということもあるわけですけれども、しかし、あのECPATキャンペーンでは、こういう目的だけではなしに、いわゆる労働に従事させる目的、あるいは里子の目的とか、それから、日本でも臓器移植法案が通ったわけですけれども、子供の臓器の売買目的なんというのも、これは東南アジアでは実際にあるようですね。悲惨な話をたくさん私どもとしても聞くわけですけれども、これを、今度のこの法案では、いわゆる性的な問題に絡めた売買だけに限っているんだけれども、これは広げる必要がないのか。  もちろん、この法律案は、児童買春、児童ポルノに係る行為、いわゆる性的な虐待の禁止ということに主眼があるのはわかるんだけれども、要するに、それは一つの典型であって、児童そのものの人権を大事にするという精神がもっと徹底されなければならないということを考えると、この児童の人身売買ということについては、さらに目的を広げてもいいのではないかなというような思いもしているんですけれども、この辺についてのお考えはいかがでしょうか。 <0095>=大森参議院議員= 労働目的、里子目的とか臓器売買目的なども入れるべきではないかという御質問でございますが、それぞれの法律をつくります場合にはその目的というものがございます。それについて規定するのはその目的の範囲内という限定がございまして、保護の必要性がないという意味ではございませんけれども、今回のこの法案につきましては、この目的、第一条に書いておりますように、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。」こういう法案となっております。  児童の売買につきましては、さまざまな態様が確かにあり得るわけでございますが、本法では、このような目的から、当該児童を児童買春の相手方とさせ、または当該児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的での売買を処罰することとしたものであります。 <0096>=佐々木(秀)委員= つまり、私がお尋ねをしたような事柄については、別の法律ないしは別の措置によって保護の措置を考えるべきである、こういうお考えだということでよろしいですね。  それから、私が予定した質問は大分先ほど同僚委員からの御質問があり、それと重複している部分もありますので、もうお答えいただいたところについては割愛をさせていただきたいと思いますが、ただ、先ほども年齢についてのお話がありました。例えば、本法では児童については十八歳未満にしているわけですけれども、しかし、先ほども御指摘がありましたけれども、もう十五歳、十六歳などというと、例えば身体的には大人と変わりない、大人よりも立派な体をしている女性もたくさんいるわけです。諸外国の例で言うと、ドイツでは十四歳、フランスでは十五歳、ベルギーでは十六歳となっていると聞いております。それからまた、先ほども御指摘がありましたけれども、我が国では女性の婚姻適齢が十六歳になっているなどということもある。  それで、これは先ほど福岡委員からも御指摘があったところですけれども、いわゆる第九条の、児童の年齢についての情を知っているかどうかということについてです。児童を使用する者が、児童の年齢を知らないことを理由にして、第五条から第八条までの規定による処罰を免れることはできない、ただし、過失がないときはこの限りではない、こうなっているわけです。今のような子供たちの身体の発育状況などからいうと、これは情を知るという、九条関係でいうと、使う場合に、一々戸籍抄本あるいは戸籍謄本などを出せというところまでは、恐らくどんな企業でも余りやってないんだろうと思うんです。まともな企業でもですよ。  そうすると、そうでなくて、特に風俗だとか何かで使うような場合に、それを聞かない、それで本人の年齢を聞いて、本人の年齢についての偽りの申告、それを受けたという場合に、それをさらに突っ込んで確かめないままにというようなことが過失に当たるのかどうか、これは先ほどの御指摘にもあったけれども、なかなか難しいんじゃないかと思うんですね。  それと、その外国の事例での年齢の問題などと比べると、これは経過の中でもいろいろ私どもも議論に参加したところだったんですが、十八歳という年齢はちょっと高過ぎるんじゃないかという意見がかなりあったんです。しかし、これで、十八歳で決めたということについて、簡単で結構ですから、そこを決断されたという事情について。 <0097>=円参議院議員= 先ほど福岡委員にもお答えしたんですけれども、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というものがございます。その対象となる児童は十八歳に満たない者とすることをこの条約では原則としておりまして、また我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等、児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者でございます。そして、これは女性の婚姻による例外を認めておりません。これらの条約や法律の目的とこの法律の目的から考えて、対象とするものの範囲も同一にすべきものと私どもは考えまして、十八歳未満の者をこの法律による児童としたわけでございます。先生がおっしゃるような議論はさまざまございましたけれども、そういうわけでございます。 <0098>=佐々木(秀)委員= 一応そのように伺っておきます。  それから、先ほど来他の委員からも御指摘がありましたように、これが刑法との関係で、特に児童に対する性的な犯罪、処罰も重くなっているというようなこと、あるいは犯罪類型としても構成要件的にぴたっといくのかどうかなというようなことから、これが濫用されるおそれはないんだろうかというようなことがありますね。  例えば、児童ポルノの販売目的の所持だとか製造だとか運搬、これが禁止をされ、違反をすると処罰をされるということになるわけですが、そういうことが、例えば憲法二十一条二項の検閲の禁止に触れないか。つまり、原稿の作成だとか印刷段階だとかあるいは映画だとかビデオの撮影段階がこの販売目的の所持、製造、運搬禁止ということに触れないとは限らないのではないか。そうすると、今言ったような後者の段階でも強制捜査の機会が生じるのではないかというようなおそれが指摘をされたりするわけですね。そういうことから、第三条では「国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」こう書いてあるわけですね。  そこで、これはむしろ法務省にお聞きをした方がいいのかと思いますけれども、私が今挙げたような例のほかに、ここで心配されている国民の権利の不当な侵害のおそれというのはどんなような事例が考えられるのか、そして、それに対する歯どめとして、この法律で賄えるのかどうか。先ほど、第九条関係では、過失の立証責任は捜査官の方にあるだろう、検察側にあるだろうというお話もあったんだけれども、私が述べたようなことからして、果たして立証可能なのかどうか、そんなことも含めて刑事局長にお尋ねをしたいと思います。 <0099>=松尾政府委員= まず、憲法の問題といいますか、重要な問題である検閲になるのかどうかという、ここのところからお答えしたいと思います。  最高裁の判例で、昭和五十九年十二月十二日に、検閲についての判例がございます。その判決での文言でございますが、検閲というのは何かということでございます。これは「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」、これが検閲だ、こう判示しているわけでございます。  この法案の第七条では、確かに頒布等の目的で児童ポルノの製造、所持、運搬等をした者について処罰するという規定になっております。これは「対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査」するというものでないことは、この法案の文言からも明らかでございます。判決に言う検閲の概念には該当しないということがまず言えるかと思います。  それから二番目に、この法案が成立した際の運用等で、例えばその濫用のおそれとか、あるいは概念の混同等が生じて混乱することがないのかという御趣旨かと思いますが、例えば、本法案では、既存の刑法あるいは児童福祉法その他の用いている文言と同じ文言がございます。同じ文言は、当然のことでございますが、従来の解釈あるいは判例によってその内容が逐次明らかにされてきている部分につきましては、その判例の流れといいますかそういうことが実務に定着しておりますので、その趣旨を体して、あるいはその趣旨を尊重しながら運用するということに当然なろうかと思います。  ただ、この法案では、若干のところにつきまして従来よりも処罰範囲を広げたことがございます。この法文上の文言あるいはその趣旨につきましては発議者の方から何回かにわたっていろいろな観点からの御説明がございました。我々捜査当局といたしましては、国会におけるそうした法文についての御論議、あるいは参議院も通じてでございますが、委員会でいろいろ交わされましたことについて、その趣旨にのっとりまして慎重に適用してまいりたいと思っているところでございます。 <0100>=佐々木(秀)委員= 確かに、ほかの法律などで概念がもう確定しているものについてはそういう問題はないんだろうと思うんですけれども、例えば買春という言葉も、恐らく法律用語としては今度初めて使われることになるんだろうと思うんですね。そうすると、例えば、刑法百七十四条のわいせつ行為それから刑法百七十七条で言う姦淫行為、これと、本法の四条で言う、これは対償の相手は児童に限るわけですけれども、買春という行為、これとは、概念として全く違う概念なのか。共通する部分もあると思うんだけれども、こういう言葉が初めて法律上用いられることによる取り締まり側の不安感とかそういうことはないのか、この辺はどうですか。 <0101>=松尾政府委員= 結論といたしましては、そうした不安感は全くございません。  念のため申し上げますと、刑法第百七十七条には姦淫という言葉が出てまいります。これは性交と同意義でございます。それから、同じ刑法の百七十六条にはわいせつな行為という概念が出てまいります。これは本法案の児童買春の定義における性交等よりも広い概念でございます。  一つ例を挙げますと、東京高裁の昭和三十二年一月二十二日の判例でございますが、例えば無理やりキスをする行為もわいせつに当たる場合があるというふうになっております。今回の法案ではそれはもう対象外ということになっておりますので、こういった例から見ても、刑法のわいせつな行為というのは今回の買春の意義からはかなり広いというふうに理解されます。  また、その具体的内容については、個々の事例ごとに判断をしていくことで、運用上のおそれ、あるいはその心配等は全くございません。 <0102>=佐々木(秀)委員= 時間が参りましたので一応これで他の委員に引き継ぎたいと思いますけれども、私も、児童の権利は保護されなければならない、性的な虐待などという忌まわしい犠牲になることを何とかして抑えたいものだと思います。  この法律がそのために大きな力を発揮することを期待はするのですけれども、しかし同時に、各委員からもさまざまな御指摘があるように、やはり新しい概念を用いてこれを法律にするというようなこともあって、これが濫用されるおそれがなきにしもあらず。かえって目的と違ったような使われ方をするということになると、これは提案者としても大変残念なことになるわけですから、これは運用に全きを期していただかなければならないわけですね、慎重でなければならないと思うのですね。  特に、表現の自由などに深くかかわってくる問題がありますから、これは警察にはきょうはお尋ねしませんでしたけれども、十分にその点は運用の上で留意していかなければならないし、場合によったら、やはりこれを見直していくということも必要になってくるのじゃないだろうかと思います。  そのことを希望として申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。 <0103>=杉浦委員長= 次に、日野市朗君。 <0104>=日野委員= 日野市朗でございます。よろしくお願いします。  本当に皆さん御苦労さまだと思います。それに、きのう、きょうの委員会でもいろいろ勉強会の話なんかも出ておりまして、随分長い間いろいろ御研さん賜ったというふうに仄聞をしているところでございまして、このようにおまとめをいただいたということ、本当に御苦労さまだったと思います。  ただ、私は勉強会にも参加いたしませんで、非常に客観的にこの法案を拝見させていただきまして、やはり問題点というものはあるなというのが率直な私の思いでございます。  それで、私の方から、幾つか非常に主観的に私が感じております問題点について、きょうはそれを提起して、御解明をいただければ、そう思っております。  まず第一番目に、買春という言葉をお使いになった、そして売春という概念がございます。私は、この買春という言葉が日本語としていいかどうかは別として、そこのところは細かく言いますまい、私は余り好意を持っていないのですがね。この買春と売春という概念との間に、これは、売春といい買春といっても、やはり売春という一つの概念の中でいろいろ論じられている事柄であろうというふうに思うわけでございます。  売春というのは、これはもう昔から世の中の一つの恥ずかしい部分、恥部でありましたと同時に、それをなくすことはできないという非常に重苦しい一つの文化現象であったわけであります。  それで、私、現在の日本における売春というものについての一つの法的な規制といいますか、それから、売春という行為が行われる、それに対する一つの形づけ、枠組みづくりといいますか、そういったものを与えているのはやはり売春防止法だと思うのでございますよ。それで、この売春防止法というのは、私はこれは基本法と考えてもいいのではないか。今度の児童買春法、今問題になっているこの法案、これは一つの新しい別個のものを売春という一つの法律のシステムといいますか、その規制の態様の中に持ち込んだということであって、これは、私の感じとしては、今までの売春防止法が決めていた世界の枠をまた一つ拡大したのかなというような感じがするわけであります。  それで、そこらの関係を、売春防止法というのは基本法と考えて、そして本法案は特別法をつくろうとしているのかどうかということについて一つお伺いをしたいと思います。  なぜこんなことを聞くかといいますと、売春防止法というものの中にいろいろある概念と同じような概念でこの買春というものをとらえていいのかどうか、そこらに私は疑問を感ずるものですから、一つその点をお伺いします。 <0105>=円参議院議員= 今の先生の御質問に直接お答えする前に、買春についてちょっとお話しさせていただきたいと思っております。  先生が今、買春という言葉は余りなじみがないのではないか、また、御自身は余り賛成できない言葉であるというふうにおっしゃったように承りましたけれども、私ども、これは今まで、バイシュンといいますときは、漢字では売る春と書きます。今回、買う春という書き方をしておりまして、これもまたバイシュンとも読めるわけで、どう読むかということもあるかと思いますが、私どもは児童カイシュンと読むこととしております。  なぜあえてカイシュンと読むことにしたかと申しますと、児童の売買春は、仲介する者が弱い児童を強制的に売買することが組織的に行われているなど、大人の優位な立場を利用して行われている点で、性を売る側の是非を問われがちな売春とは違い、買う側の是非を問う問題だと考えたからでございます。そのため、バイシュンと読みますと弱い児童自身を犯罪者あるいは逸脱者として扱う懸念があります。むしろ、子供が性的な対象物として売られ、買われることの問題性が現在問われているのだと思いまして、そこで、買う側の大人の責任を明確にするために買春と表現したものでございます。  ぜひとも、今回、参議院、衆議院でこうしてこの児童買春罪についての議論を進めておりますことが人々に広く知られ、カイシュンということの意義、そういう読み方をするその意味合い等をわかってもらい、性的搾取、性的虐待は本当に子供たちの権利を侵害するものであるということが広く伝われば本当にうれしいと思っております。  さて、それで、先生が直接お尋ねの売春防止法と本法との関係でございます。これは基本法と特別法との関係かというお尋ねでございますけれども、売春防止法は、その第一条におきまして、その規定は、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。」というふうに書かれております。もう先生御承知のことでございます。  これに対し、この法案は、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資すること」を目的としております。  そして、この法案では、金銭等の対償を供与し、また、その供与の約束をして児童に対し性交等をする児童買春は、児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり、また、児童買春については国際的な対応が強く求められるところから、かかる行為を規制、処罰することとし、かつ、日本国民においては国内外を問わず罰則の適用を認めることとしたものでございます。  このように、売春防止法とこの法案とは、基本的な趣旨、目的を異にするものでありまして、一般法と特別法との関係にはございません。 <0106>=日野委員= よくそこのところは理解をしているのですが、やはり同じ売春という一つの性的な出来事、そういったものを対象にしていることは、これは間違いないだろうと私は思っております。  そこで、売春防止法と児童買春法、そこに規定されている犯罪同士の関係というのはどういうふうになるかということを、私、確認をしておく必要があると思う。  つまり、売春防止法が処罰している犯罪、これは売春防止法に幾つかございます。その売春防止法が規制をしている、処罰をすることとしている犯罪と児童買春法の犯罪というのは違います。明らかに違っているわけです。それでは、児童買春法ができたからといって、売春防止法の適用関係、それからその運用、これは全く変わらないというふうに見てもよろしいのでしょうか。もっと具体的に言いましょう。つまり、十八歳未満の女性たちが売春防止法に該当するような行為をとった場合、それは売春防止法の適用がありますか。 <0107>=吉川(春)参議院議員= この売防法の適用問題について、私個人としては売防法を適用しない選択を考えておりまして、勉強会の中でもその意見を申しましたけれども、結局、売防法の適用をしないということにはなりませんでした。今先生がおっしゃいますように、基本的には売防法の適用がされる、形の上ではそういうふうになっていると思います。同時に、売春してもされても、児童はやはり被害者であるという立場を考えるときに、この売防法の適用にあっては非常に慎重な運用が望まれるのではないか、そのように私は考えておりますが、形の上では先生のおっしゃるとおりでございます。 <0108>=大森参議院議員= このことは勉強会でも議論がございました。十八歳未満の女の子といたしましょう、それが売春の相手方となった場合、両方の法律に該当するような事態があるのではないかということでございますね。  売春防止法の場合には、第一条の目的というものがございまして、「この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。」こうございます。要するに、性道徳に反する罪とか性風俗に対する罪と考えられておりまして、この中に規定してありますように、「売春を助長する行為等を処罰する」、このように規定がございます。  これは、よく誤解されることなのですけれども、売春の方で、男性の方が処罰されない、女性だけと言われるのですが、対償を得てですけれども、性行為そのものの場面については、男性も処罰されませんし、女性も処罰されません。反面、ここでは助長する行為として挙げられております勧誘等ですけれども、この構成要件に該当しましたならば、女性であれ男性であれ、この構成要件に該当するということで、処罰の対象となっております。  それから、児童買春につきましては、その目的、保護法益等、既に述べてありますので繰り返しませんけれども、まず、法の目的というのが違っているということでございます。そして、十八歳未満の女子に対しましても、その行為が売春防止法に規定する構成要件に該当する場合、勧誘等の行為をあえてしたような場合ですけれども、これを処罰しないという積極的な理由づけがまだ十分ではない、こういう結論ですので、特に売春防止法について、このような行為をした場合まで処罰しないという理由はないと思います。  確認して申し上げますけれども、性行為そのものの場面では、売春防止法でも、女性の方が処罰されるようなことにはなっておりません。 <0109>=日野委員= 私も、本法、つまり児童買春法ができたからといって、売春防止法の適用を手控えるということにはならないのだろうと思わざるを得ないわけですね。そしてまた、一方では、買春をする男の側、これは逆の場合もありますが、大部分は男が女をということでしょうからそういうことでお話をしますが、これは確かに買う方も悪い。しかし、買われる方に対する道徳的非難というもの、これを全くしないというわけにもいかないというふうに実は私は思っております。そこで、やはり売春防止法の適用ということはきちんとやって、売春防止法の守るべき法益というものはきちんと守らなければならないのではあるまいか、こう思っております。  この点に関して、法務省と警察庁、どういうふうにお考えになりますか。児童買春法ができて売春防止法の適用というものがどういうふうに、変わるのか変わらないのか、いかがでしょうか。 <0110>=松尾政府委員= 両者の関係については、ただいま発議者から答弁したとおりだろうと思います。  売春防止法の適用の問題で、たまたま売春の勧誘行為をした者が児童に当たるあるいは少年に当たるという場合には、従来の運用でありましても、少年法自体が十九歳、二十歳未満の者については健全育成を旨としてということをうたってありますので、そうした趣旨も十分に配慮しながら、捜査あるいは運用に当たってきたところでございます。そのことは、この法案が仮に成立いたしました後の運用においてもやはり尊重すべきでありますし、またそうした趣旨も十分考慮しながら運用すべきものと考えております。 <0111>=小林(奉)政府委員= 運用方針につきましては、ただいま発議者の説明がございました。また、法務省の刑事局長からの説明がございましたが、そのとおりでございます。さらに、加えて申し上げるならば、本法律案におきましては保護のための措置という概念が入っておりますので、そういった面も視野に入れながら、この法律の適用を図っていくことが必要じゃないか、こういうように考えておる次第でございます。 <0112>=日野委員= わかりました。ただ、売春防止法と児童買春法の間で、ちょっと嫌みなところが残るのですよ。つまり、児童買春法は、十八歳未満の子供に対して買春行為を行えばこれは罪になる。しかし、売春防止法ではこれは罪にならないのですね。つまり、十八歳未満の者に対する買春行為をした、これは犯罪です。ところが、その相手方、これはその相手方をしたということで、犯罪行為の相手方になっているわけですから、当然捜査の対象になるわけですね。当然捜査の対象になってきます。裁判でも、証人として出ていくというようなことも必要になってくるわけです。  そうすると、少年法上、先ほど実は福岡先生の方からも質問がありましたが、虞犯少年というようなレッテルを張られる可能性が出てくる。これは嫌みなところですね、この両方の間で。ここについて、先ほど大森先生の方からちょっと説明がありましたけれども、私はここのところで、十八歳未満の子供たちに対してこれは虞犯少年というレッテルを張ってしまうようなことが起こりやしないか。少なくとも、そういう児童買春罪、四条の罪において相手方になっているわけですから、必ずこれは捜査機関、特に警察、検察のリストには載るわけですね。こういうのは非行であるとか虞犯少年ということで、不利益な取り扱いになるようなことがあるのかないのか、私はここを非常に危惧するところなのですが、いかがでございましょうか。 <0113>=大森参議院議員= 十八歳未満の児童が買春の相手方となった場合、捜査の対象となるということでございますけれども、これは、この法案上は被害者という立場になりますので、被害者として事情を伺うことになります。仮に証人とかになる場合でも、被害者としての証言ということになります。  それから、虞犯少年というレッテルを張るおそれがあるのではないかということでございますけれども、この法案というものは、児童の性的搾取、性的虐待、これから守ることを目的としておりますので、この法案によりまして虞犯少年としてのレッテルを張るおそれがあるということは我々が予定していないことであります。もし虞犯少年あるとするならば、この法案の問題ではなくて、あくまでその相手方となった児童の日常の行為等によって個別的に判断されることでありまして、この法律ができたからといって、虞犯少年というレッテルを張るおそれがあるということにはならないと思います。  ただ、もちろん児童というのは非常に可塑性に富むといいますか、デリケートな存在でございますから、事情聴取等につきましては、捜査、公判の職務担当者は十分な注意をするということで、注意喚起は明文の規定でしております。 <0114>=日野委員= 私は、捜査の対象となる、これは、被害者として捜査の対象になるんだからということは余り理由にならないと実は思うのです。捜査の対象であることはこれは間違いないわけで、そこのところはよろしいでしょう。  では、警察の方に特に伺いますが、被害者であろうと何であろうと構いません、十八歳未満の子供がこういう事件で、児童買春をやった被疑者の相手になったという事実、これはやはり警察としては記録に残るのでしょうな。いかがですか。 <0115>=小林(奉)政府委員= 記録に残るかどうかということでございますが、どういった意味で記録に残るかなというのがちょっとわかりにくいのですけれども、いずれにいたしましても、私どもは、こういった事件につきましては、少年の特性ということとこういった児童買春の被害者となったという面と、いろいろな面がございますので、その部面を具体的なケースごとに応じて適切にやってまいりたい、こういうふうに考えております。 <0116>=日野委員= 余りよくわからなかったですが、ここのところは非常に気を使った取り扱いをやっていただかなければならない部分だろう、このように私は思っております。  それでは、今度は、問題をいわゆる援助交際というものに絞って少し論議をしてみたいと思います。  いわゆる援助交際というのは、結局は、十八歳未満の子供に対して対価ですか、対償を支払って、そして性的な行動をすること、性交等をすることということでありますから、これは本法案の第四条に該当することは明らかでございますね。いかがですか。一応確認のために伺います。 <0117>=円参議院議員= お答えいたします。  いわゆる援助交際が、対償すなわち児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を児童に供与し、またはその供与の約束をして当該児童に対し性交等をするものであると認められる限り、いわゆる援助交際において児童と性交等をした者は児童買春罪に該当すると考えております。 <0118>=日野委員= この議論をするのに、誤解をされると困りますからお話ししておきますが、私は、特にこの法律が問題としている児童に対する性交等、特に東南アジアにおける日本人の買春行為などというものは、本当にああいうものは断固として禁圧すべきもの、こう思っています。それと同時に、それと同列で、援助交際というものを同一の法文で禁圧するということが適当かどうかということについては、実は疑問を持っているわけなんです。  そこで幾つか伺いますが、いわゆる売春行為であるとか性交等の行為、こういうことをする場合というのはこれはいろいろ考えられるわけですね。何が一体その動機づけになっているか。一番多いのはやはり貧困でございましょう。特にアジアにおける貧困。そして、それに乗じてそのような行為をするということはまことに人間として恥ずべきことだというふうに私は思います。それを厳重に禁圧すべきこと、これは私は全く同感なんです。  ただ、日本のいわゆる援助交際と言われるものとは同列に論ずることはできないのではないかというふうに私は一方で思うのですが、率直な感想、いかがでございましょう。 <0119>=円参議院議員= 先生にちょっとお尋ねしたいのですが、先生は、貧困による売春ならばいい、または援助交際はいけないとか、そういうふうな価値観でお考えの御質問なのでしょうか。 <0120>=日野委員= 私が誤解ないようにと言ったのは、貧困等によって売春をしている人がいるわけだ。そういう人を金で買うなどということはまことに恥ずべきことだ、これは禁圧すべきだ、こう言っているわけです。私はそれを肯定しているわけではありません。  しかし一方で、いわゆる援助交際と言われるものはまた別でしょうということを私申し上げているわけで、なぜなら、そこには貧困という動機は余りない。むしろ、よりぜいたくをしようとか、そういう動機づけの方が多いというふうに、日本のような豊かな社会では、そう考えた方がいいのではないかと思うから、同じ条文でこれを処罰しようというのは少し違和感があるということを申し上げたい。 <0121>=円参議院議員= やはり今の先生のお話から推測させていただきますと、貧困というような事情がある場合と貧困がない場合とでは同じ行為でも随分違うので処罰を考えた方がいいのではないかというふうに解釈ができたのですけれども、確かに、法律をつくって処罰するということだけでは、東南アジア等で行われております貧困からくる売春というようなものを撲滅することはとても難しい問題で、法律だけでは力が足りないところもあるかと思います。  しかしながら、今回の法律は、買う側、買春のところに重点を置いておりまして、子供たちの性的搾取、性的虐待をすることが子供たちの人権を侵害するというところに重点が置かれておりまして、その子供たちの保護を考えておりますので、たとえどういう動機や原因がありましても、買う側の人、これは別に男だけではありません、女性だってそうです、男女全く差別ございません。買う側の大人の方を処罰するということでございますので、私は先生のおっしゃるような貧困からくる売春と援助交際と違うのではないかという意見には賛成しかねますし、そういうような論点から、今回の法案ができたものと思っております。 <0122>=日野委員= ではもう一度、さらに伺いますが、いわゆる援助交際の場合、買われる側は常に被害者であるという発想に立っているわけですね。いかがですか。 <0123>=円参議院議員= 今回の法律は十八歳未満の児童を対象としております。十八歳未満の児童を対償をもって性交等をするという行為は、私は、大人はすべきことではない、そういう発想がこの法案の前提にあると思います。 <0124>=日野委員= よくわからないのですが、そうすると、性行為そのもの、これは悪なんですかな。いや、金を払えば悪になる、こういうわけでしょう。ただし、児童全体が、十八歳以下であれば、当然それは被害者であるという前提に立っているわけですね、この法律は。  ただ、私、考えてみまして、現在いわゆる援助交際と言われるもの、これは、買われる側も結構豊かな人たちが多いと思うのですよ。これは日本における場合を言っています。それからかなり成熟化しています。それから動機も多種多様であると私は思う。決して貧困であるとか特別の、一般的に考えてそうせざるを得ないような理由、これが必ずしも存在していない場合が多い、こういうことだと私は日本における援助交際の態様を見ているわけですが、これは間違っているでしょうか。 <0125>=円参議院議員= 援助交際についてはさまざまな意見があることは承知しております。ただ、いわゆる援助交際について悪とか善とかの発想に立っているわけではなくて、性的な虐待や性的搾取が子供たちの人権侵害になるということを、その子供たち自身も今の世の中でわかっていない部分もあると思います。  今の社会は、私は今まで、国会議員になる前に二万人ほどの家庭の相談を受けてまいりましたが、そうしたケースの中には、本当に日本のカップルは性的な話し合いもできなければ、豊かな性的関係を持てない方々が多くて、その中から、自分よりも劣った、おとなしい、何も自己主張をしない子供たちをお金で買うというようなケースが多々ございました。そうした、今回の児童に対する性的搾取や性的虐待、それを対償をもってするという中には、どうも性差別的な発想や、また人種差別的な発想、そして性欲を誇示することが男らしいというような社会通念等まであるような感じもいたします。  そういった社会の中では、何をもって豊かというふうに言うか、ちょっと私は、お金があり、物が買えることが豊かだというふうには、そこだけでは言えないかと思いますけれども、子供たちの人権というものを考えるときに、性的な人権、自己主張、そういったものがしっかりできるようになるには、ただ体の肉体的な発達があってもできない子供たちも大変多いところから、今回の法案はそうした大人の側こそ範を示すべきであるということもありまして、十八歳未満の子供たちに対してはこういった法案をつくったわけでございまして、いわゆる援助交際もその中に、法に関する限りは入るものと考えております。 <0126>=日野委員= 売春という一つの性文化現象といいますか、こういったものはだれも褒めたことはないのですね。しかし、これを全くなくすこともできない。  そして、これは私もちょっと前に読んだ本をもう一回引っ張り出して見てみたのですが、これはまじめな本でございますが、一橋大学の阿部謹也さんという教授をなさっている方がお書きになった本で、その中で、これはフランスのその分野のかなりの権威でありますが、ジャック・ロシオという方の引用をしている。いわゆる中世のキリスト教の戒律が非常に厳しく維持された当時における「西洋中世の男と女」という本を書いておられて、その中で言っておられるのです。  これはもちろん大人の売春の例ですが、売春婦の全体の大体一五%というのは自己の意思に基づいて売春婦になっている。しかも、売春婦のうち約二〇%というのは裕福な家庭の女性だというふうな、こういうことも言っているわけですね。そして、ヨーロッパでは十五世紀にペストが大流行いたしまして、人口が三分の一に減ります。ここで、人口をふやさなくちゃいかぬということで、非生殖的なといいますか、非生産的な性行為というのは禁ずるわけですね。  それで、そういうことになると、当然売春という方向に、男性たち、主として男性でしょう、ずっと女性を買うというような形で自分たちの性欲の処理をするということで、各都市には売春宿が置かれ、その伝統は今でも飾り窓の女などという形でずっと残るわけですが、そういう形でキリスト教の非常に強い伝統で、戒律でおさめようとしても売春というのはなくならなかった。  私は、今度は十八歳未満の相手方、子供と性行為をするということを罰するわけですが、それを罰するのは、子供たちは性的に未熟である、それから考え方も未熟であるということはわかりますけれども、しかしこれほど重い、三年以下、そして百万円以下の罰金かな、こういう重い刑で処罰をするだけの規範的な妥当性があるのだろうかということを考えざるを得ないんですね。いかがでしょう。 <0127>=大森参議院議員= 元郵政大臣の御質問ですので緊張してお答えしたいと思うのですが、実はちょっと正直に申しまして、私の理解力がないためか、よくわからないのですが、要するに、児童買春をした法定刑が軽過ぎるのではないかということではないですか。  先ほど規範的なとおっしゃいましたけれども、この法案につきましては、要するに、十八歳未満の児童を、対償を供与することによって、あるいはその約束をして、性交とか性交類似行為とかをする行為は違法性が非常に強い、刑罰をもって処罰に値するという考え方を私は持っております。  そして、児童の権利というときに、それはさまざまいろいろな児童がいると思います。貧困な児童もいればあるいは裕福な児童もいれば、まじめな児童もいれば遊びほうけているような児童もいると思いますが、ただ、私が見まして、児童の権利ということを考えたときに、私たちは個々の児童によってその権利を差別するつもりはございません。そして、貧困な児童に対する行為と、そして、裕福なのほほんと暮らしている児童に対する行為と、あるいは何というんですか、大人を手玉にとるような児童、もしかしたらいるかもしれません、それに対しての評価というものはこの法定刑の範囲内で、その違法性の程度とかあるいは情状とか、この中で考慮されることであると考えております。  こんなものでよろしいですか。 <0128>=日野委員= まあ結構でございましょう。  では、ちょっと今度は役所の方に伺います。  これは、この法案の主なねらいと言ったら語弊がありますか、大きなねらいはやはり、日本の男性が外国に出ていって買春をする、これを抑えたいというところにあるのでありますね。私も全くそれについては同感するところでありまして、あんなものは国辱物ですよね。外国に行って子供の春を買う、これは国辱物だ。ですから、これは、この法律ができたら機能的にそういった行為は取り締まられなければならないと思う。  それをやるために、外務省は一体どういう準備をなさいますか。それから、警察庁はどのような準備をなさいますか。法務省はどのような準備をなさいますか。これはいいという方法をちゃんと見つけていただきたいものだと思っているんですが、今のところどんなふうにお考えになっておられるか、ひとつお願いします。 <0129>=内藤説明員= 海外において邦人が違法行為を行うことを取り締まるということは、外務省が出先に持っております大使館、総領事館といった在外公館はできないわけでございます。それは、海外においてはその国の法律をその国の治安当局が実施するということでございます。  したがいまして、私どもとしては、このような行為は個人の行為ですから、その個人がみずからを律していただくように持っていくといいますか、結局は御本人の意識の持ち方が変わっていただきたいということですから、そのための啓発活動というのがまず考えられます。  現に、実は平成八年に国際会議がございまして、児童の商業的性的搾取に関する世界会議というのがございまして、そのフォローアップの一環として、海外での旅行者、さらには国内でもそうでございますが、意識を高めるということで広報用ポスターをつくっております。それを海外では領事の窓口に張って、一人一人の日本人の啓発に資するということを行っております。 <0130>=小林(奉)政府委員= この法案の背景としまして、いわゆる外国での児童買春が大変批判を招いている、こういう実態が一つあると考えております。そういった観点から、私どもといたしましては、国外犯というものがこの法律で規定されたということで、その実効ある取り締まりをすることが必要だと思っています。そのためには、まずもって必要なのが外国の取り締まり機関との連携でございます。主権の問題がございますので、この連携をその範囲内において最大限効果があるようにやっていくことが重要だと考えております。  そういった観点から、私どもといたしましては、警察庁の職員を外国に派遣いたしまして、それぞれの捜査機関との協議、あるいはこの法律の趣旨をよく徹底して、そういった関連の情報を収集するとともに、正規の手続にのっとった国外犯の取り締まりをする、こういうことをやってまいりたいと思います。  また、国内的にはそういった意味で、警察庁にそういったことを所掌する部署をこの四月に設けたところでございますので、そういった方法でもって私どもはやってまいりたいと考えております。 <0131>=松尾政府委員= 法務省といたしましても、第一に、捜査機関が関係国の捜査機関と緊密な連絡協調体制をとりまして、いろいろな捜査に資することを行っていくことになるかと思いますが、そうした際にも、今捜査共助法というものがございます。国際間の捜査協力がこういう分野でも非常に重要性を増してくると思いますので、担当の検察官等十分な研修を施しまして適切に対応してまいりたいと思っております。 <0132>=日野委員= 午前中、運輸省が、こういった買春ツアーのようなものをやるような会社なんかは旅行業者としての免許を取り消せみたいな質問が出たのに対して、どうもあいまいな答えだったな、そんなふうに私思っているのです。  実は、私も韓国の方々といろいろ話をする機会があるんですが、あのキーセン観光と言われたもの、あれがいかに韓国の民族の誇りを傷つけたか、それから買春ツアーなどというものがいかに日本人の名誉を傷つけ、現地の人たちの心情を傷つけたか、これはまさに大変なものであります。我々が想像しているよりもはるかに、そういったことを行った人たちの罪は重いと私は考えておりますので、この法律ができて、そしてその取り締まりに当たる当局の皆さんも、そこいらのことは十分に考えて、きちんとした対応をしてもらいたいというふうに思います。  そのことを強く希望しまして、終わります。ありがとうございました。 <0133>=杉浦委員長= 次に、坂上富男君。 <0134>=坂上委員= 提案者の先生方、本当に大変な御努力をいただきまして、とにかくここまでこぎつけていただいて、御苦労さまでございました。また、二日間にわたります御答弁、これまた親切丁寧に、かつうんちくのある御答弁をいただいておりまして、大変勉強させてもらっております。  したがいまして、もう相当問題がダブるようにもなりますので、私の質問は簡単明瞭でございますので、御答弁も、説明は要りません、イエスかノーかだけでお答えいただければ結構でございます。  また、大臣、わざわざ私の質問のためにお出かけをいただきました。この問題、極めて私は重要だと思っておりますものですから、担当大臣とされましては、本当に皆様方の声をぜひ聞いていただきまして、この法律が成立をした場合の運用に当たりましては、きちっと運用していただきますこともお願いをしなければならぬ、こう思いまして、来ていただいたわけでございます。  それから、この法律は、やはり刑罰の適用に関することでございまするから、国民の人権にも影響をするところが大きいのでございます。したがいまして、こういう法律の中の解釈なりがあいまいでありますと捜査当局に濫用されるおそれがありますものですから、私たちはきちっとこの解釈を厳格にして、余すところなく、先生方の御答弁をもとにいたしまして、この法律の運用がなされるということにしなければならぬと私は思っておるわけでございます。  そこで、もう一つ、私はこの審議をやっておりまして、私たちの責任の重さを痛感していたわけでございます。と申し上げますのは、福岡先生ちょっといませんが、福岡先生の質問、大変重要な質問をなさいました。そして、この審議の状態がインターネットを通じまして日本じゅうに、聞いておられる方がたくさんあるわけでございます。そこで、もう早速福岡先生の質問に反応が出てまいりまして、まことにまた大事な指摘でございまして、福岡さんからお話がありまして、私は、通告してありませんけれども、先生方からも御理解もいただきたいと思って、これを質問させてもらいます。  インターネットを聞いておられまして、福岡事務所に電話が入ったそうです。そして、文書がまたすぐ来たそうでございます。この方は、こういう法律の推進のために努力をなさった活動家の方でございます。そして、こう書いてあります。「福岡様が御質問の中で非常に重要な点を挙げていらっしゃいました。」私もそう思っていました。さすがだなと思いました。  「それは、買春の相手方となった子供が虞犯少年などとして不利益な扱いを受けることがないのかという点です。私たちは、買春の相手方やポルノの被写体とされた子供が、虞犯少年として、また売春防止法違反などで不利益な扱いを受けることを非常に懸念しています。そのようなことが一般的に広がるのであれば、この法律を何のためにつくったのかが疑われることになるでしょう。」  いろいろ書いてあるんです。そして、最後の方に、「先ほどの審議では、発議者の回答は、虞犯少年として扱われることもあるというものでした。」それはまあ確かにこれだけが条件ではないとおっしゃってはおりますが。「これは別の発議者の、子供は被害者であり、この法律は買春者を処罰するものであるとの答弁とも矛盾しています。この法律が子供の不利益処分を規定していないものである。」ちょっとここが欠落しています。それから、「他の法律ともあわせた全体的な体系として、どのような結果を期待するのか、つまり子供買春、子供ポルノの問題をなくすためにどう取り組むのかという姿勢であります。ぜひこの点について、午後の審議で再度確認し、子供の不利益な扱いをしないような確認をとられるようお願いを申し上げます。」  こういう質問でございまして、本当に、私たちの審議が大変責任のあることを私は痛感をいたしまして、もっともっと勉強しなければならぬなということを私自身が実は思っておるわけでございます。  そこで、率直でございますが、相手方となった子供たちがいわゆる虞犯少年としての扱いを受けることはない、こういうことを僕は捜査当局の方からひとつ御答弁いただきたい、こう思っていますが、どうでしょう。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0135>=松尾政府委員= なかなか難しい御質問だと思います。  先ほど発議者側からも、また警察庁あるいは私からもこれに触れた答弁をさせていただきましたけれども、売春防止法等既存の法律と今回の法案とは、それぞれ目的において重なる部分もありますし、また、違う部分もございます。したがいまして、ただいま先生の御質問にあります、今回の買春の相手となった児童でございますが、これが絶対的に虞犯の対象にならないというふうに言明できるかという御質問だと思います。  それは、端的に申し上げますと、極めて限られたケースあるいは例外的なケースだと思いますが、先ほどの日野先生の御質問の中にもございました。例えば、買春の相手となった少女といたしましょうか、が、それなりに社会的に見ましても問題がある、少年法の観点から見ましても、やはり健全育成という点からそれなりの指導をその周辺なり何らかのそれに関与した者がする必要があるなというようなケースも、それは例外かもしれません、あると思います。そうしますと、やはり少年法に言ういわゆる虞犯ということで考え得る場合も、それは排除し切れないだろうと思います。  ただ、最後にちょっと申し上げておきたいのは、今回の法案の趣旨を体しますと、やはり、そういった児童を買う行為そのものの違法性、これに着目して今回処罰規定を拡充するといいますか、置くわけでございますので、そういった観点からは、買春の相手となる児童についてのさまざまな影響を社会的に減らしていこうということだろうと思います。  この法案のそういった目的に照らしますと、今回いろいろな御議論は、従来の、既存のそういう法令の運用、特に少年法に言う虞犯という概念がございますが、そうしたことを捜査当局として考えるに当たっても、十分に、あるいは十二分にといいましょうか、配慮する必要があるということはおっしゃるとおりだと思いますし、また、そういうものを運用する当局といたしましても、そうした御趣旨を十分に尊重しながら運用していきたい、このように思っております。 <0136>=坂上委員= 立法の趣旨を捜査当局は間違いなく承って、施行するに当たって、運用するに当たってそれを厳守する、こういう答弁でございます。  しかし、この御連絡をいただいた方が御心配なさるように、買春の防止をするために徹底的な摘発が行われた場合、やはりその相手方となった児童たちがばんばんと出てくるわけでございます。そうしますと、こういう虞犯少年になるおそれのある場合もないわけではない。こういうことになってまいりますと、このことによってこれらの児童たちがふえてくるということをやはり御心配なさっているんだろうと私は思っておるわけであります。  でありますから、これのみをもって虞犯少年の取り扱いをしないようにということの意味なんだろうと思いますし、それに対して、捜査当局としてはそれなりの御答弁なんだろうと思います。思いますが、そういうような意味で私はこの文書をいただき、御要請をいただいたんだと思いますので、今後の運用に当たりましては、ひとつ厳重に対応していただきたい、こう思っております。  裁判所、来ていますか。  裁判所はこの場合どうしますか。例えば、第十二条「捜査及び公判における配慮等」。この児童たちが被害者になる、買春した人が起訴される、調書を否認される、証人喚問する、こういうような場合、この子供たちが結局証人として出廷をすることになるわけでございます。私は、多分傍聴禁止の措置はとるだろうとは思うのですが、こういう配慮はどうするのですか。ここにこう書いてありますが、具体的にはどういう配慮をなさいますか。 <0137>=白木最高裁判所長官代理者= お答え申し上げます。  今、委員の方から傍聴禁止という問題もあると仰せになりましたが、むしろそれ以前に、そういう年少者であるとかあるいは性的犯罪の被害者等につきましては、できる限り裁判所外で期日外の尋問という形で、公の目に触れないような形で尋問が行われるのが普通でございます。 <0138>=坂上委員= そうすると、裁判所、今言ったようなことがもう最大限の配慮ということになるのですか。 <0139>=白木最高裁判所長官代理者= 現行法制のもとでは、今申し上げたようなことが普通に行われ、一番有効な手段であるというふうに考えております。 <0140>=坂上委員= なかなかこの法律の運用というのは、児童の保護という観点から見ると、また一面非常に難しい問題もあるのですね。捜査当局は、極秘裏に捜査ということは可能ですからいいのでございますが、公開の席上を原則とする裁判では、やはり今言ったような配慮なんかはもう最大限なされていないと、児童たちが証言すること自体もなかなか容易なことでもございませんで、この辺もひとつ特段の御配慮をしていただかないと、私は、皆様方がせっかくつくっていただいたこの法律の趣旨が変になることも大変恐れているわけでございます。  そこで、裁判所、少年法三十七条で、児童福祉法等のいわゆる成人が犯した事件については家庭裁判所を専属管轄としておりますが、この趣旨は、このことについて少年法の規定があって、少年法の規定の中に専属管轄の規定があるわけでございますが、この立法の趣旨でございますが、立法趣旨の答弁責任者は法務省だそうでございますが、法務省、これは何で少年法の中にあって家庭裁判所にこういう児童福祉法の成人刑事事件などは起訴されるようになっているのか、この辺、ひとつ御答弁をお願いし、裁判所はこれについてどういう留意をしながら裁判をなさっているのか、これもちょっとお聞きをしたいのでございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0141>=松尾政府委員= 少年法三十七条の置かれた趣旨でございますけれども、少年法三十七条は、少年の非行の背景といいますか、その背後には成人の無理解とかあるいは不当な取り扱いが多いという、これは社会実態だろうと思いますが、そうした非行少年の原因となるような一定の成人の犯罪につきましては、やはり少年の非行を専門に扱っている家庭裁判所で同じように審理することが適当であろう、こういうことで、家庭裁判所の専属管轄として成人の刑事事件も入れているということだろうと思います。 <0142>=安倍最高裁判所長官代理者= 家庭裁判所における審理の実情について御説明を申し上げたいと思います。  この少年の福祉を害する成人の刑事事件の手続は、地裁と同様に、刑事訴訟法の手続に従って行われるわけでございます。この審理に当たりましては、今委員から御指摘もありましたように、被害児童の情操やプライバシーを必要以上に害しないように配慮すべきことは当然だと考えられておりまして、地裁における審理と同様に、例えば、今御指摘がございましたような被害児童を証人として尋問する場合には、裁判所外における証人尋問でございますとか、さらには公開停止とか、被告人の退廷でございますとか、あるいは傍聴人の退廷でございますとか、こういった方策を事犯に応じてとりながら配慮をされているものと承知しているところでございます。  以上でございます。 <0143>=坂上委員= なかなか苦しい答弁なんだろうと思うのでございますが、「注釈少年法」、これをちょっと勉強させてもらいました。また、お話によりますと、少年法の国会審議の中でこの問題については全く議論にならなかったそうでございます。  そこで、学者の解説を読んでみますと、こう言っているのですね。「成人の刑事事件」ですが、「本章は、少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講じるという法の目的」少年法の目的ですが、「を受けて設けられたものである。」  でありますから、やはり少年の福祉を害する犯罪行為に対しまして、法の目的を達成するために家庭裁判所を専属管轄にする、こういうものだ、こう言っているのですね。確かに、今、刑事局長が言ったように、  非行の背後には成人の無理解や不当な取扱が多く、そのような成人の行為が犯罪となる場合の刑事事件は、少年事件を専門に扱い少年に理解のある家庭裁判所が取扱うのが適当であること、このような事件は、少年事件の捜査・調査等の過程で発覚することが多く、証拠関係も共通する場合が多いことから、この種の事件は家庭裁判所が取扱うのが便宜と考えられ、少年の福祉を害する成人の刑事裁判は家庭裁判所の管轄とされた。 こう書いてあるのですね。まあ、大体答弁。  しかし、話を聞いている限りにおいては、では一体、地方裁判所の刑事裁判とどれだけ違いがあるかというと、何も違いないのじゃないでしょうか。率直に言って、私はそう思っています。  そこで、提案者にお聞きをしますが、この法案が家庭裁判所を専属管轄にしなかったのはどういう意味でございますか。 <0144>=大森参議院議員= しなかった理由というか、お答えになりますかどうか、裁判所法で、地方裁判所の裁判権を規定したものがございます。そして、原則として、「罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審」とありまして、例外として、家庭裁判所の裁判権というものも、裁判所法三十一条の三というふうにしております。  それで、いずれに管轄を持つか、もちろんこの法律の中で管轄を規定することもできるわけでございますけれども、特に、原則地方裁判所とすることに例外を認める積極的な理由は見つけなかったというのが理由になると思います。 <0145>=坂上委員= 私は、提案者に申し上げたいのですが、やはりこういうのは、児童保護がこの法律の目的、児童福祉法もやはり児童の福祉、保護のため、それから学校教育法もそうなんですね。だから、これを専属管轄として家庭裁判所、しかし、家庭裁判所になぜしたのか。実務上の扱いがどれだけ違うのかというと、大した違いがないのですよ。  だけれども、立法の趣旨としては、やはり児童の福祉を害するような行為については専門は家庭裁判所であるから、それからまた、この少年法の趣旨からいって家庭裁判所の管轄がベターである、こういう判断のもとでなったんだ。これは、さっきの裁判所あるいは法務省の答弁でございます。せっかく先生方がそれだけ御配慮いただいてこれだけの法案ができたのでございますから、何で家庭裁判所の方を専属管轄になさらなかったのだろうか。  ただし、こういうことがあるのです。先生方の気持ちの中に、ここにも書いてあるのですが、  少年を放任し又は原因を与えて少年を非行に陥れた成人を罰するアメリカの原因供与罪にならったものといわれているが、それを中途半端に採用したために、実効性の乏しいものになったうえ、職権主義的・非要式的な審問主義の家庭裁判所の手続の中に、当事者主義的・対審的手続の成人刑事事件を取入れたこと、少年一般の福祉を守るという理念から、少年保護事件と直接の結びつきのない成人の刑事事件を、少年保護事件を取扱う家庭裁判所で処理することにしたこと、保護者を対象とする処分が認められていないこと、などの制度的な問題点があるうえ、併合罪の併合の利益が害される場合があるなど立法的に解決すべき問題点が多いと指摘されている。 こういうことでございます。こういうような解説があるのですね。  だから、端的に言いますと、今は地方裁判所でやろうと家庭裁判所でやろうと、いわゆる公開主義によるところの、刑事訴訟法によるところの裁判でございますから、何らの少年法の趣旨というものがこの裁判の中に生かされていない、全く中途半端だということがここの中に書かれているわけであります。  したがいまして、ちょっときのう、おとといあたりの質問取りの中にも若干そんな感じを私は抱いていたのですが、先生方の中ではどういうふうな、いわゆる児童福祉というような観点から、これは、児童は被害者であり、相手は加害者であるという概念であるわけでございますのが、できるならば、私は、どうも立法の趣旨から見るならば、家庭裁判所が専属管轄にしてもいいんじゃなかろうか。  ただ、実際は余り区別がないようでございまして、率直な話、先生方は、区別がないから、どうしようもないから地裁にしたのだ、こうなるのか、あるいは、家庭裁判所に出しても家庭裁判所はそれだけの効果を余り発揮していないのだ、こうなるのか、率直な御答弁をいただきたいのです。 <0146>=堂本参議院議員= 今先生がおっしゃいましたこと、ごもっともでございまして、最初に自社さ案でつくっておりましたときに、児童福祉法の三十四条、これは淫行について決めたところですが、これは今先生がおっしゃったように、福祉の視点から淫行に関しての処罰ということで、その段階で、児童福祉法から三十四条を削除した場合には家庭裁判所を管轄にするということの議論を随分といたしました。  しかし、三十四条を削除して、なおかつ刑法だけでやるということになりますと、今度、児童の福祉の点やなんかに関して、刑法では十分にできない、リハビリその他の点はできないということで、削除をやめた段階から、福祉が前提ではなくて、今回の場合はあくまでも刑法の領域にとどめる、そして、もっと児童福祉については、再度児童福祉法の改正をしなければならないという判断から、こういうような形になったわけでございます。 <0147>=坂上委員= お聞きをいたしておきます。御検討を私は求めておきたいと思います。  その次に、第八条は未遂罪を罰しておりますが、その他のものについて未遂罪を罰しないのはどういう理由ですか。 <0148>=大森参議院議員= 児童買春罪につきましては、この構成要件に規定します行為が、性交、性交類似行為だけでなく、性器等への接触等も含み、非常にその行為の範囲が広くなっております。これに未遂規定を設けますとかえって構成要件が不明確になるということで、未遂規定を置いておりません。  それから、周旋、勧誘等につきましては、周旋目的の勧誘というものは、言ってみれば周旋の未遂的な形態である。この点をとらえまして、あえて未遂を処罰するというのではなく、独立に犯罪として構成いたしました。  それから、児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。 <0149>=坂上委員= 刑法のわいせつ関係のところについては未遂は処罰をしておりますが、本件の場合の、特に児童買春の場合などは、例えば、児童に金をやった、児童がその金を親に見つけられた、どうしたんだ、あした相手の人に会うことになっている、とんでもない、行っちゃならぬ、こういうことになって、この行為が未遂に終わる場合があるんです。  私は、こういうようなことは、やはり未遂罪を処罰することによって防止ができるんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございまして、何か、あいまいになるとかなんとかおっしゃいますが、ちょっと私は、御見解が違うんじゃなかろうか、こう思っております。私はこれも、児童買春などは少なくとも未遂の対象にすべきものなんじゃなかろうか、こう思っておりますが、どうでしょうか。 <0150>=大森参議院議員= 確かに、先生のおっしゃるようなお考えは理解できます。  例えば、対償とか物を出したときに既に実行の着手を認めるということがありますけれども、ただ刑法上も、未遂罪というものはすべてについて認められておりませんで、重大な法益侵害の場合に未遂罪が設けられております。  それで、ここの場合でも、要するに、未遂罪を処罰するかどうかということは一つの私たちの判断ということでございまして、お答えになるかどうかわかりませんが、私どもの勉強会の結果、未遂罪はまだ処罰するに及ばない、こういうふうに判断したということでございます。 <0151>=坂上委員= どうでしょうか、こういう被害者を未然に防ぐというのが目的なんじゃないでしょうか。そうだとすれば、私は、やはり未遂罪というものは大変重要な条文になるんじゃなかろうか、こう思っております。刑法における強制わいせつ罪等は、わいせつ文書頒布は別ですが、全部未遂の処罰をしているのですね。  そんなような観点からいって、この未遂罪を黙っておるというのは、どうもちょっと片手落ちという感じが私はしているのですが、いかがでしょうか。簡単でいいですよ。 <0152>=大森参議院議員= 簡単と言われても、繰り返しお尋ねになるからきちっとお答えしなければいけないかなと思うのですが、ここは結局、未遂罪という修正された構成要件というものを設けるかどうか、これは、一つの政策判断と言っていいのか、価値判断の問題であると思います。  それで、未遂罪の構成要件、実行の着手、このところから犯罪の成立を認める未遂罪、構成要件的結果を惹起する現実的危険性をはらんだ行為をもって実行に着手して、そしてまた法益侵害がすべてに至らない場合までも、これは処罰すべきであるというのが未遂罪でございますけれども、今回の児童買春につきましては、さまざまな態様があるということ、そしてまた、十三歳以下の児童に対しまして行った場合には刑法の方の適用がございます。それで、この児童買春の罪につきましては、さまざまな態様があるということから、刑罰の方も三年以下の懲役それから罰金がありますけれども、このような評価をさせていただいております。  だから、未遂罪を処罰するかどうか、そうした場合に、実行着手行為を特に設けるかどうかということを検討した結果、この罪については、私たち発議者については未遂罪を設けなかったという、こういう答弁になります。 <0153>=坂上委員= お聞きをいたしておきます。これもぜひひとつ御検討賜りたいと思っております。  それから、場所提供罪、この規定を設けなかったのはどういうわけでしょうか。これは、やはり場所の提供がなければ、なかなかこういう犯罪というのは起こらないことも多いと思うんですが、この点、いかがですか。 <0154>=円参議院議員= 今回は、現在の社会実態に着目いたしまして、児童買春を処罰することを基本とし、さらに児童買春を助長する典型的な行為類型である児童買春周旋及び児童買春周旋目的勧誘をとりあえず処罰することとしたものでございます。  本法に、先生のおっしゃるように、場所提供罪を設ける必要があるか否かは、この法律の施行状況を見て決せられるものと考えております。 <0155>=坂上委員= ぜひひとつ御検討を賜りたいと思っております。  それから、もう一遍、私、確認させてもらいますが、芸術、学術、医学、こういう目的のために児童ポルノがつくられた場合、これはもう、こういう芸術、学術、医学という目的によって違法性は阻却しない、こういうふうに聞いていいんでしょうか。 <0156>=大森参議院議員= 今の御質問につきましては、午前中にもそのような質問がございまして、お答えしておりますので、結論だけ申しますれば、そのようにお考えいただいて結構ですということです。 <0157>=坂上委員= ちょっとまた後でそれに関連して質問させてもらいます。  総務庁、おられますか。  地方公共団体の条例は、ほとんどその自治体青少年健全育成条例などという名称で、児童との性交等の処罰規定をつくっておられるようでございますが、全国的にこういう問題は今まで条例上どんなになっておったのか。それから、児童ポルノ的な問題についてどんな対応になっておったのか。簡単でいいんですが、概括的に御答弁ください。 <0158>=久山説明員= お答え申し上げます。  都道府県の青少年健全育成条例におきますいわゆる淫行処罰規定につきましては、各都道府県によりましてその規制の内容や罰則の軽重に多少の差違はありますけれども、長野県を除きます四十六都道府県で規定されておるというところでございます。 <0159>=坂上委員= その条例に基づいて児童との性交禁止処罰を受けた件数というのは、統計上どんなになっていますか。何か統計があったらちょっと。 <0160>=小林(奉)政府委員= 平成十年中の、いわゆる青少年保護育成条例違反の行為であります青少年に対するみだらな性行為等、こういった行為を行った事件で検挙した人員は二千五百八十三人でございます。 <0161>=坂上委員= 私も、二千以上もあるというのに大変びっくりいたしております。  そこで、この条例は大体有償でなくて、みだらという条件がついて性交の処罰をしておるようでございます。そういたしますと、この法案の中の附則の第二条で、条例と抵触する場合は、この法律施行と同時に、条例の部分が効力を失う、こういうふうにありますが、私は新潟県の出身でございまして、新潟県青少年健全育成条例、私はときどきこの事件の弁護もしたことがあるんでございますが、今の法律が成立されますと、この条例の中で効力を失う条文、何条の目的とか、何条の責務とか、何条の自主活動とか、その条文と項目だけざっと挙げていただけますか、新潟県条例の場合。 <0162>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  今先生が御指摘のございました新潟県の青少年健全育成条例でございますが、先生の御指摘のように、附則第二条第一項にその関係が規定されておりまして、その育成条例については、第二十条第一項で、「青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」ということが書いております。第二十一条で、「みだらな性行為又はわいせつな行為」が青少年に対してなされることを知って周旋してはならないと規定しておるところでございまして、我々といたしましては、これらの規定により、児童買春や児童買春周旋をこの条例によっては処罰できなくなる、そのかわりに、我々の今度のこの法案が成立いたしましたら、この法律によって処罰をされることになるということでございます。 <0163>=坂上委員= ちょっと私が勘違いしているのでしょうか。大変重大なことでございまして、条例では、みだらな行為、わいせつの行為をしてはならない、このことによって処罰をしているんですね。これは有償無償を問わないんです。でありますから、先生方が提案しているのは有償なんですね。有償なんですから、今度はこのためにこれが抵触して効力がなくなったということは、これは大変なことなんです。どうでしょうか。 <0164>=林(芳)参議院議員= 失礼いたしました。  こちらの規定には、附則二条一項には、児童買春、児童ポルノに係る行為等、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めている条例の規定の当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うということでございますから、この法律には有償の部分を規定しておりますので、有償の部分についてのみこちらの法律が規定されまして、無償の部分については条例の効力が残るということでございます。 <0165>=坂上委員= 当然なことだと思います。  そこで、これは当たり前のことなんですが、私はここだけでなくして、新潟県条例が、この法律が適用になることによってどこが効力を失うようになるのか、具体的に条文だけ御指摘いただきたい、こう、きのうから要請をして、これは一々答弁するとなかなか大変だから文書でいただきたいといって質問事項の中にも書いて出してあるんでございますが、どうでしょうかね。先生方、今わかりませんか。ここは無効だよ、ここは無効だよというようなのをお聞きをいたしたい。これは重要な問題でございますから、私はあらかじめ文書でいただきたい、こういって出してあるんでございますが、どうですか。 <0166>=林(芳)参議院議員= お答えを申し上げさせていただきたいと思います。  地方自治の方でそれぞれ条例を決めておられますので、具体的にここの条例のここがこれとやるというのは、我々の方で一義的にここが全部なくなると言うのはなかなか難しいところでございまして、それは、この法律の解釈に従って、それぞれのことにおきましてなされるというふうに解釈をしておるところでございます。 <0167>=坂上委員= 強くは言いませんが、この抵触する部分が、こういう場合、どこが無効になるんだろうということを私は捜査当局から実はお聞きをしようと思ったら、立法者が判断すべき問題だ、こういう御指摘があったものですから、私はわざわざ、私の質問事項の中に、活字が打てなくて、書いてお届けをしたわけでございますが、ぜひひとつ整合していただきたい、こう実は思っておるわけであります。これは本当に、きのう午前中だか、おとといだか出したわけでございますので、ぜひこの点も御検討をいただかないと、やはり県の実施の機関の中であいまいになって、いや、これは抵触して無効だとか無効でないんだとか何だかということになって、結果的にまた県民に影響を及ぼすことが大きゅうございますから、きちっと整理をしておいていただきたい、こう思っておるわけでございます。  さて、ちょっとまたお聞きをしますが、「日本女性の外性器」、これは医学大学の先生が書かれた書物であります。これは先生方、ちょっと先生方が見て、提案者に見てもらって……。 <0168>=杉浦委員長= どうぞ。 <0169>=坂上委員= 見ていますね。ひどいんですがね、これは。  そこで、先生方も見ていただいているんですが、これはわいせつ物に当たるとして告発された事件です。それから、地検はこれを不起訴にしました、わいせつに当たらぬという。法務省の中でも、人権擁護局、人権侵害であるとして著者に警告を発しました。  まず、人権擁護局はどういう点で警告、どういう警告を出したんですか。 <0170>=横山政府委員= お答えいたします。  委員御指摘の書物につきましては、担当の法務局におきまして調査しました結果、産婦人科医師であります当該書物の著者が、診療行為中に、患者の同意を得ずにその外性器を写真撮影していたことが認められました。その写真が当該書物に掲載されているかどうかまでは確認できませんでしたが、このような無断写真撮影という行為そのものが患者の人権に対する配慮を著しく欠くものでありますので、平成九年七月に、担当の法務局長から著者に対し、行為の不当性を強く認識し自戒するとともに、人権について正しい理解を深めるよう説示したところでございます。 <0171>=坂上委員= 法務省の方、第一次の不起訴理由を、ちょっと簡単でいいです。 <0172>=松尾政府委員= お尋ねの書籍につきましては、平成九年九月三十日に嫌疑不十分ということで不起訴にしていますが、その内容は、本件書物がわいせつ文書図画に当たると認めるに足る証拠がなかったという記載でございます。 <0173>=坂上委員= 今度は裁判所にお聞きします。  私のところに検察審査会の議決書が来ております。大変検察審査会、御努力をいただきまして、理由をきちっと書かれております。ちょっと問題点を指摘しますが、間違いないかも確認してください。  これは不起訴にした検察の理由だそうですが、「医師が著した専門書、医学書と評価できる体裁を有しており、ことさら、読者の情緒感覚等に訴える手法は認められない。」それから、「支配的効果が読者の好色的興味に訴えるものとの評価はできない。」「本件書籍には、女性器の露骨な写真が掲載されているとはいえ、記述内容は、医学的解説、説明文や統計学的解析結果であり、性的刺激が相当減少、緩和克服されて」いるというようなことが書かれている「目的から、それなりの思想的、学問的な社会的価値も認めざるを得ない。」こう言っているんですね。まだもっといろいろ理屈を書いてありますが、結果的にわいせつ文書図画に当たらない、こういうようなことで嫌疑不十分とした、こう言っているんですね。  そして、検察審査会は、これまた的確に指摘しています。「本件書籍の発行に当たって産科婦人科学会や、性科学会で発表したかどうかは不明である。」そして、「かつ、興味本位の部分もあって専門書としての評価は相当低い」ものと言わなければならない。あるいは、まだいっぱいあるんですが、「露骨な女性器写真が多数掲載され、学術的に優れているとも思われず、セックスカウンセラーなどの専門家は別として、一般の者が見た場合、普通人の性的羞恥心を著しく害し、」わいせつであることは明らかである、こう言っているんですね。そこでさらに、「パソコン通信ネットの売買欄に、本件書籍の掲載写真を売る広告を掲載し、電子メールで注文を受けて販売した者が逮捕されるという事態も発生している。」  以上のようなことから、いろいろ書いてあって、結局当「審査会は、市民感覚として本件書籍についてわいせつ性を認めたが、わいせつの判断基準である社会通念については司法によって判断されるべきであると考える。」「よって、検察官の再考を求めるため前記趣旨のとおり議決する。」  これは、今言ったようなこと、間違いございませんか、まだ大変省略していますが。 <0174>=白木最高裁判所長官代理者= 検察審査会の議決の要旨は委員仰せのとおりでございます。 <0175>=坂上委員= それにもかかわらず、検察庁は再度また不起訴処分にしたそうですが、理由は何でございますか。 <0176>=松尾政府委員= 本年の四月一日に、検察審査会の不起訴処分が不当であるという決議を受けた後、再捜査を経まして、再度不起訴処分にしておりますが、理由は第一次の不起訴処分と同様でございます。 <0177>=坂上委員= 大変私はこういうものを本当に見るに当たって、このうち何ページかわかりませんが、物すごいページ数の、三分の二がこういう写真でございます。まさに、本当に女性、私らもそうですが、激しい私は怒りを覚えているのでございます。  こういうようなものが、例えば児童の性器がこんなような形の中で書かれたような場合は一体これはポルノに当たるということになるのでございましょうか。お答えいただければお答えいただきたい、強要はいたしません。 <0178>=大森参議院議員= 当該描写物が児童ポルノに当たるかどうかにつきましては、繰り返し述べておりますけれども、この二条三項一、二、三号、性器だけの部分でしたら三号になるのでしょうか、これが実在する児童の姿態であるということが要件となります。それから、それが「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるかどうか、こういう総合的判断によって当たるか当たらないかということが決まる、こういうお答えしかできません。 <0179>=坂上委員= さっき、学問、学術、医学的な理由は違法性阻却理由にならないという御答弁でございますから、私は当然だと思いますし、私は、本来、そこから追及していっても、こういう成人の性器の掲載というのはまさにわいせつ物そのものなのではなかろうか、こう思っておるわけでございますが、こんなものが平気に社会に頒布されたら大変なことになって、せっかくの目的が達せられないんじゃなかろうか、こう実は思っておるわけでございますもので、不起訴処分になった以上どうしようもありませんけれども、今後の児童ポルノにもこういうようなものが生きてくるようだったら大変だなと私は実は直感をし、私は、この問題、長い間対応してきたものでございまするから、いまだもって怒りがおさまらないという感じではあるので、ちょうどこういう機会に問題点を提起させていただいて、御意見も賜ったわけでございます。  さて、最後でございます。  大臣、本犯罪を国外犯に指定をいただきました。一部、わいせつ物に関しては、刑法上は国外犯に指定のないのもあるわけでございます。しかし、大変な決意を持って国外犯の指定をしたわけでございます。これは大変なことでございまして、検察、捜査当局は本当に本腰を入れてやっていただきませんと、私は、国外犯の実効がないんじゃなかろうか。でありまするから、今までも皆様方が切歯扼腕しておられたのでございますが、相手は外国である、単なる共助だけでは、これはとてもじゃないが間に合わぬというのがどうも実情でございます。  例えば、外国にいる人に訴状を提出いたしますと、大体どれぐらいかかるかといいますと、今変わったかどうか知りませんが、私の経験でございますが、送達まで約三年間かかったんです。そんなようなことでございまして、外国との共助問題というのは、これはもうなかなか容易じゃないんですね。  確かに、今の答弁を聞いておりますと、外務省も運輸省も、外国共助をよくやります、こうはおっしゃっておりますが、果たしてどれだけ実効性があるか、また、相手方の主権にもかかわることでもございますものですから、私はなかなか容易じゃないと思うのでございます。  そこで、本当にこの法律が成立し、国外犯の指定をするならば、これは非常に画期的なことでもあるわけでございます。でありまして、予算の上からも、人員の上からも、大変な力を入れていただかなければ、この法律は死んでしまうだろうと思うのであります。特に私は、立法者は、外国における日本人がいわゆるこういう国外犯犯行行為をやった場合に対するものが一つの大きな目的にもなっているのだ、こう思っておるわけであります。  そこで大臣、いわゆる国外犯の適用についての大臣の御決意を私は特に伺いたいとも思いますし、また、この中に「国際協力の推進」という言葉も入っておるわけでございますので、一体、どの程度の見通しが立てられるのか、これからどうするつもりなのか、大臣から全体的な御決意をいただきたい、こう思っております。 <0180>=陣内国務大臣= 本法案に国外犯処罰規定が設けられた趣旨は、児童買春、児童ポルノにかかわる行為等については、国の内外を問わず、日本国民によるこれらの行為を禁止し、処罰する必要性が認められ、かつこの法案が目的とする児童の権利の擁護についても、国内にいる児童に限定する必要はないと考えられたためであると承知いたしております。  したがって、法務省といたしましても、このような立法趣旨や児童買春、児童ポルノについては、国際的な対応が強く求められている現状を踏まえまして、緊密な国際的連携の確保に努め、諸外国との間に必要な情報交換や捜査共助を実施してまいり、この趣旨がしっかりと生かされるように努めてまいる覚悟でございます。 <0181>=坂上委員= ひとつ大臣以下皆様方の御協力もお願いをいたしますが、しばらくの間、まだ私の首もつながっているだろうと思うものでございますから、成果をお聞かせをいただきますので、どうぞ御努力のほどを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上でございます。 <0182>=杉浦委員長= 次に、森山眞弓君。 <0183>=森山委員= きょうは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案の審議の最終段階を迎えつつあるわけでございまして、そのようなこの委員会に私も質問の機会をいただきまして、まことにありがたく、うれしく、また感無量の思いでございます。  ここに至りますまでのいろいろな経過は既に審議の中で出ているかと存じますけれども、ちょっと私の立場から復習をさせていただきますと、一九八九年の児童の権利条約の採択、そして、特にその第三十四条で、あらゆる形態の性的搾取、性的虐待から児童を守ることを約束するということが示されておりまして、その三十四条を具体化する選択議定書を採択しようという動きが起こってまいりまして、児童の権利条約の十周年、それがちょうどことしでございますが、一九九九年のその十周年を目指しまして、世界的に作業が進められてまいったわけでございます。  そのことを頭に置きまして、欧米諸国では、一九七〇年代以降、児童買春、児童ポルノ等を厳しく取り締まる法の改正や、新しい法律の制定などが次々に行われまして、今では、ほとんどの国でそれなりの法律、制度が整っているという状況でございます。また、いわゆる買春ツアーと言われるものを受け入れる国々におきましても、フィリピンとかタイとかにおきまして、このようなものを規制する法律が既に整っているわけでございます。  このような買春とか児童ポルノのような、商業的な性的な搾取を受けている子供たち、被害児童というのは、全世界に百万人から百五十万人いると言われておりまして、その地域も各地に広がっているわけでございますが、最大の被害地はアジアだと言われております。その加害者の方は、日本、ヨーロッパ諸国、オーストラリアの男性というふうなことが言われておりまして、特に日本は、タイ、フィリピンなどの児童買春のアジア最大の加害国であるというふうに言われておりまして、欧米諸国が児童ポルノの規制を強めております中で、世界の児童ポルノの製造、流通基地であるとさえ言われて、非難が集中しているのが現状でございます。  このようなことは、もちろん日本の私どもも非常に心を痛めていたわけでございまして、特に国際的なNGOでありますECPATという団体が大変このことを心配されて、児童買春の実態を知らせたり、児童買春のツアーの送り出し国や受け入れ国双方での法改正を促すというような国際的な運動を先導しておられまして、日本にもそのグループがございまして、いろいろな形で運動を展開してこられました。  このECPATが九六年の八月にスウェーデンで、児童の商業的性的搾取に反対する世界会議というものを開催され、そこに百二十二カ国の政府、二十の国際機関、多数のNGOの関係者など、約千人が参加されまして、宣言と行動のための課題を採択されました。その段階では、まだこれという目立った動きをしておりませんでした無策の日本ということで、大変な批判と早急な対応を求める声が厳しく出されたところでございました。そこに出席されました日本からの参加者は、顔を上げることもできないほど非常に恥ずかしい思いをしてこられたというお話を後ほど聞きまして、私も大変心を痛めていたわけでございます。  日本の場合は、国際的な条約であります児童の権利条約、これをたしか五、六年前に批准をいたしたと思います。そして、そのときに、日本の法律制度がこの条約を批准するのに適当であるかどうかということも検討されたはずでございましたが、その時点では、批准しても差し支えない状態であるという判断をなさったようでございますが、その後、国際的な情勢が急速に変化してまいりまして、日本の対応がおくれにおくれてしまったというのが現状でございまして、何とかしなければならないという状況に差し迫られておりました。  日本でも、そのことに多大の関心と憂慮を持ちましたNGO、さらに、そのような方々と大変深い関係を持ち、連携しながら活動しておられました各党の女性議員を中心とする皆さんが、何とかしなければいけないということで、それぞれ独自の活動、研究をしておられたわけでございます。  私の属します自由民主党におきましても、野田聖子代議士などがその一人でございまして、その呼びかけによりまして、党の女性問題特別委員会という場で勉強会が何回か開かれましたのが、もう二、三年前になるかと思います。  党の幹部もその話を聞き知られまして、事の重大性を大変憂慮され、何とかしなければいけないという気持ちになっていただきまして、今から思い起こしますと、一昨年の夏でございましたが、当時の山崎政調会長から私が命令をいただきまして、当時の与党三党のプロジェクトチームを始めてほしいという御指示をいただき、記録を見ますと、一昨年の六月十八日に最初の会を始めたのでございました。これが、政治の公的な舞台で取りかかった最初の第一歩であったと思うのでございます。  そのプロジェクトチームには、今ここにもおいでになる社民党の清水澄子先生、同じく社民党の辻元清美先生、やはり今ここにいらっしゃる、さきがけの堂本先生、そして、自民党からは谷垣禎一さん、小野清子さんなどが参加していただき、私がまとめ役ということでお預かりをしたわけでございますが、皆様の御経験を伺い、知識を披瀝していただきまして、また、法律的な勉強も少しやっておりますうちに、これは大変なことをお預かりした、難しいことだなというふうに思ったのが率直なところでございました。  しかし、皆さんが大変御熱心に協力をしていただき、大変激しいやりとりもあったのでございますが、三十回に及ぶ勉強会の結果、ようやく何とかまとまりまして、それが平成十年、昨年の三月三十日でございました。大変苦労をいたしましたけれども、それが一つの大きな山を越えたときであったかなと思います。  これを各党の御了解を得まして、関係三党の提案によりまして、五月の二十日に衆議院に提案させていただきました。これがこの法務委員会でお預かりいただきまして、そして折々、私、杉浦委員長によろしくお願いしますと申し上げたのを記憶しておりますけれども、お預かり願って間もなく参議院選挙があり、そしてその後政変があり、また、緊急金融対策などに国会が忙殺されたということもございまして、そのままに推移してまいったのでございます。  しかし、これはいつまでもそのまま置いておくわけにもいかない、何とかしなければいけないという焦る気持ちもございましたが、片や、政局の方は与党の組み合わせも変わるというようなこともございましたので、思い切ってこれは全党の皆様にお呼びかけをして、そして皆さんで相談に乗っていただいて、そして、みんなが賛成できるようなものができればそれが一番いいのではないかということに思い至りまして、昨年の末に、たしか十二月の十一日に、第一回の全党による勉強会をお呼びかけしてやらせていただきました。もう年末も近いところでありましたが、お正月もほとんど休まないぐらい熱心に皆様が御協力いただきまして、結局、七回の勉強会をさせていただきました。  民主党は、既に、前の私どもの提案した案についての御意見をまとめて別案をおつくりいただいているというような進展もございましたので、最初のプロジェクトチームの勉強会よりは、ある程度具体的な議論にいきなり取りかかるということができたせいもありまして、このたびは七回ほどやらせていただいた結果、去る三月の十二日に、ようやく全党何とか一致できるというラインをまとめることができたわけでございます。  そして、三月三十日でしたか、今度は参議院の方に提案をさせていただくということにいたしたのでございます。  と申しますのは、私どもは、一刻も早い成立が望ましい、ぜひそうしたいということが何よりも私どもの強い願いでございましたので、いろいろ国会関係の方々の御意見を伺いますと、参議院先議の方が早く成立する可能性が高いから、その方がよろしいんではないかというアドバイスをいただきましたので、参議院の先生方に大変御苦労いただきまして、参議院の方から先に取りかかっていただいたわけでございます。  そして、参議院では四月の二十八日に本会議でこれを通過させていただきまして、今衆議院の方でこのように皆様が御熱心に議論をしていただいている。この場に私も先ほど来おりまして、御熱心な質疑の様子を拝見し、大変心強く、またうれしく、最終段階を迎えているということについて感無量の思いがするというのは、そのような立場からでございます。  ぜひ、この衆議院の法務委員会におきましてもできるだけ早い通過、そして、衆議院における成立を一刻も早くあってほしいと願っている一人でございます。  ここまで来ましたこの法案は、実は、かかわってまいりましたすべての人がみんな一〇〇%満足しているわけではございません。今までの審議の経過をお聞きいただいてもおわかりのように、せっかく法律をつくるんだから、あれも入れたらいいのに、これも欲しいのにというような議論が、勉強会の途中もさんざん出たわけでございます。  しかし、そういって、ある一つのことについて甲論乙駁、延々とやっておりますと、一番大事な願いの一つである早く成立させるということができなくなってしまう。とにかく、みんなが今一致できる最小限度必要で可能なものをまとめていこうということで、それを条文化したというのがこの法案でございます。  そうすることによって、少なくとも、世界的に大変悪名の高い日本の現状、例えば、これもその一つですけれども、タイムという世界的に流通しているこの雑誌、四月十九日号ですが、ここに「ジャパンズシェイム」と書いて、こういうのが載っております。これはタイムですから、世界じゅうの人が見て、ああ、日本はこういう状況なんだときっと見ているに違いないと思いますと、私どもは本当に身が縮む思いなのですが、こればかりではありません、ほかのところにもいろいろと書かれております。  また、私自身も外国のメディアの取材を大変たくさん受けました。私は、日本がただ放置しているわけではない、しっかりやっておりますよということをPRしたいと思いまして、どんな取材にも応じましたので、随分いろいろなところに書かれましたが、それはすなわち、日本が努力しているということを知らせるだけではなくて、その前に今まで野方図であったということが知らされるというわけでございます。  そのようなことを考えますと、ともかく早くこの法案を成立させなければいけないというふうに思いましたので、決して一〇〇%満足しているわけではございませんけれども、何とか正していくという方向への第一歩ということで、評価したいというふうに思うのでございます。  そこで、これが最小限度必要で可能なことを条文化したものだというふうに私申しましたが、ですから、それであればあるだけ、これが成立しました暁にはきちんと施行されなければ困るわけでございます。そのために、私は、一つ二つ気になる点を確認の意味で、特に政府に御質問したいと思うのでございます。  ただいま坂上先生の御質問にもございましたけれども、私からも念のためお聞きしたいのですが、第十七条の「国際協力の推進」というところでございます。これには「国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。」というふうにございますが、これを具体的にどのような手順でどのような内容の協力をなさる、あるいは求めるというのか。この立法の目的の大きな一つは、世界的に悪名の高い、非難の的となっている我が国の国際的名誉の回復ということでございますので、大変重要な点だと思います。警察及び法務省から伺わせていただきたい。お願いします。 <0184>=小林(奉)政府委員= 児童買春等の事案につきましては、今後、国際的な協力が極めて重要だ、このように考えております。  そういった観点で、私どもといたしましては、職員を随時海外に派遣させまして、当該外国の捜査機関との情報交換、こういったものをしたいと思います。また、その前提といたしまして、この法律の内容を外国の政府の方に理解していただかなければいけませんので、そういった連絡、こういうものも緊密化してまいりたいと思います。  また、事件化に当たりましては、従来から、刑法で定める罪の国外犯捜査について、外交ルートあるいはICPOルート等、こういったものがございますので、そういった捜査共助要請等により外国の捜査機関と連携して行ってまいりたい、このように考えております。  また、児童買春、児童ポルノ等の犯罪防止のための国際的な連携や調査研究の推進につきましても、外国政府との協力関係を構築してまいりたいと思います。  また、国内的に見ましても、私どもにおきましても、生活安全局にその専属の体制をこの四月から発足しておりますので、その効果が上がるように運用してまいりたいと考えております。 <0185>=森山委員= ありがとうございます。どうぞ、もう一人、お願いします。 <0186>=松尾政府委員= 基本的には、今警察庁から御答弁いただいたとおりでございます。  さらに一言つけ加えますと、こうした国際協力というのは、今、捜査共助法あるいは逃亡犯罪人引渡法というのがございますが、そのほかに、例えば、今、韓国との間で逃亡犯罪人引き渡し条約も結ぼうということで協議を始めています。こうした二国間の条約で、捜査内容を相互情報交換を含めまして高度化していくということも、この法案の実施に当たっては有効なことになろうかと思っております。 <0187>=森山委員= ありがとうございました。  第十二条に、捜査及び公判における配慮というのがございます。「児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。」云々というふうに書いてございますが、これは具体的にはどのようなことを考えていらっしゃるのでございましょうか。  また、児童の人権、特性に関する理解を深めるための訓練、啓発ということもございますが、これは具体的にはどういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。 <0188>=松尾政府委員= 確かにセカンドレイプの問題というのは大変重要な問題だろうと思います。  検察官におきましても、被害児童から事情聴取を実施するに当たりましては、児童の受けた心身への有害な影響あるいはその精神状態等に十分配慮するとともに、個々の事件の当該児童の特性に応じまして、例えば、その児童の保護者を立ち会わせたり、あるいは調べる場所についても、児童の自宅でこれを実施するなどしてきております。  また公判におきましても、刑事訴訟法三百四条の二の規定に基づきまして、裁判所に対し、被害児童が証言しやすいように被告人を退廷させて証人尋問を行うよう意見を述べる、あるいは不適切な尋問に対し異議を申し立てるなど、個々の事案に応じて適切に対応してきております。  さらに、検察官に対しては、研修を初めとする教養訓練の機会を通じまして、その人権意識を高めているところでございます。本法案が成立後は速やかに、このような機会を通じまして、本法案の立法趣旨及び内容はもとより、本法案十二条の趣旨も踏まえまして、児童の人権及び特性に配慮すべきことなどについて、周知徹底を図ってまいるつもりでございます。  なお、本年三月に、犯罪被害者の保護に関する法整備に向けての検討を早急に行えという法務大臣の指示がございました。これを受けまして、性犯罪の被害者や年少者等の、公開の法廷で尋問を受け、証言することに大きな心理的な負担を余儀なくされるわけでございますが、その心情、名誉等を著しく害される結果となることがあることにかんがみまして、例えばビデオ証言制度など、その負担をできる限り軽減するための方策について、現在検討を進めております。  以上でございます。 <0189>=森山委員= 私どもが昨年提案いたしましたいわゆる自社さ案には、児童ポルノの単純所持というのが、罰則はないのですけれども禁止されておりました。しかし、今回はこれを削除したわけでございます。いろいろな配慮からいろいろな問題を考えまして、とりあえずこの案からは削ろうということになりまして、私もそれを納得しているわけでございますけれども、ただ、私個人といたしましては、結局、最終的に、所持をするということがいけないとされなければ根絶はできないのではないかという思いが残るわけでございます。発議者のお気持ちはどのようなものでございましょうか。お聞きしたいと思います。 <0190>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  森山先生御指摘のとおり、また森山先生御自身が一番よくおわかりだと思いますけれども、いろいろな議論の結果、こういう結果になったわけでございますが、午前中の質疑でもありましたように、この処罰規定を設けないでおくことに対してのいろいろな議論があったことは、御承知のとおりでございます。  そこで、せっかくの御質問でございますから、午前中の質疑でもありましたように、これは所持自体がいけないことであるという認識がもっと広範に広まることによりまして、将来的にはこういうことも検討に上がっていかなければならないのであろうというふうに我々も考えておりますし、またそういうことに対する教育啓発を行っていくことが必要であろう、こういうふうに思いますし、また、一部では、指摘されておりますように、民間の団体等が自発的にこういうものを回収していっていただける、こういうようなことも大変に有意義であるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、この法律案が成立し、実際に運用され、児童ポルノに係る犯罪の摘発が進んでいくことによりまして、国民の意識を高める有効な方途になっていくのではないかというふうに期待をしておるところでございます。 <0191>=森山委員= 発議者のお気持ちを伺いまして少し安心いたしましたが、やはりこういうものを持つこと自体がいいことではないのだ、好ましくはないのだということを徹底したいものだと思います。ですから、この法律は、法律が成立しさえすればそれでいいというわけではございませんで、むしろ今まではいわば当たり前と思われていたものをいけないということで厳しく罰するということになるわけですので、一つの大きな意識革命の手段だというふうにさえ思うわけでございます。ですから、この機会に社会のその問題に対する認識を深めて理解を進めるという、幅広い、強力な啓発活動が一層重要であろうと思います。  そして、さらに考えますと、既につくられて多く出回っております児童ポルノを持つことによりまして、それを放置しますと、その被写体となって、法のできる前に被害者となっていた子供の人権はずっとこれからも侵害され続けるということになるのではないか。そこまで考えますと、やはりこれは相当ゆゆしい問題である。この法律の趣旨からいいましても、そのようなものが一刻も早く皆様の、国民全体の意識として、好ましくないというふうにみんなが思うような、そういう社会にしていかなければいけない、そういうことを強く申し上げたいと思うのです。  このようなことについて、発議者の皆さんも御賛成いただけるかと存じますが、念のためもう一度伺いたいと思います。 <0192>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  委員御指摘のとおりでございまして、先ほども御答弁申し上げましたけれども、この法律が成立していくことによりまして、委員御指摘のような、国民全体に認識が浸透してまいって、国民全体の御理解の中でそういう規定を検討できる状況が来ることを我々も望んでいることを改めて申し上げたいと思います。 <0193>=森山委員= 発議者の皆さんに大変心強い御答弁をいただき、またお役所の方からも新たな事態に対処する決意を伺いまして一安心いたしましたが、大臣からも一言ちょうだいしたいと思いますので、御決意のほどを伺わせてください。 <0194>=陣内国務大臣= この大事な法案については、時間をかけて、大変な御努力の結果、こういうふうな立派な法律案の提出となったということをただいま伺わせていただきました。その御努力に心から敬意を表し、一日も早く、一刻も早く成立させていただいて、私どもとしてもこの趣旨がしっかりと生かせるように努めてまいりたい、このように思っております。 <0195>=森山委員= ありがとうございました。  では最後に、発議者の先生方、そしてプロジェクトチームで御協力いただきましたたくさんの議員各位、また激励し、支持してくださいました各党の幹部の皆さん、また裏方で苦労してくださいました各党事務方の皆さん、情報を提供し、専門的な知識を持ってお助けくださった衆参両院の法制局及び関係各省の皆さんに心から感謝申し上げます。ここまでの活動の原動力となられましたNGOの皆さんにも心から敬意を表しまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。 <0196>=杉浦委員長= 次に、木島日出夫君。 <0197>=木島委員= 日本共産党の木島日出夫でございます。一昨日に続いて質問をしたいと思います。  最初は、児童ポルノ頒布等の、児童ポルノに係る罪についての質問でございます。  日本が児童ポルノの世界最大の供給国、この不名誉から脱したい、そのために、脱法行為を許さないという観点からお聞きをしたいと思うのです。先日の私の質問も途中で時間切れとなってしまいましたし、きょう午前中以来、同僚委員からの質問もこの点について続きましたが、重複はあろうかと思いますが、整理して手短に幾つか聞きますので、簡潔にお答えいただけたらと思います。  まず第一に、児童ポルノ頒布等の犯罪と刑罰を新設する基本目的は何か、整理してお答えいただきたい。 <0198>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  頒布等の罪を新設する目的というお尋ねでございましたが、この法案は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害するということの重大性にかんがみ、児童の権利の擁護に資するため、児童ポルノに係る行為を処罰することにしたものでございますことは質疑の中で明らかになったところでございますが、そういう意味で、刑法のわいせつ図画の規制は、性的な秩序、道徳、風俗の維持をその目的としておりまして、児童の権利の擁護に資することを目的としておりませんことから、一般に言われますわいせつ図画に当たらない児童ポルノもあるというふうに考えられるところでございまして、頒布等の罪を新設することによりまして、この当たらない児童ポルノについても処罰の対象とするということにした次第でございます。 <0199>=木島委員= 続く質問でありますが、今の答弁の中にももう既に半分くらい出ているのですが、児童ポルノ頒布等の罪の基本的な保護法益は何か、健全な性秩序の維持なのか個人の性的自由の保護なのか、これもひとつ簡潔に整理してお答えいただきたい。 <0200>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  性交または性交類似行為に係る児童の姿態等を描写した児童ポルノを製造、頒布等する行為は、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるということのみならず、これはもうたびたび御答弁申し上げてきたところでございますが、このような行為が社会に広がることによりまして、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるということにかんがみ、また、数々の御指摘をいただいたように、児童ポルノに係る行為については国際的な対応も強く求められておるところでございまして、かかる行為を規制、処罰することにしたところでございます。そして、かつ日本国民については、国内外を問わず、罰則の適用を求めるところにしたというところでございます。 <0201>=木島委員= 私、答弁がちょっとずれているように聞くのですが。  基本的に、児童ポルノ関連罪の保護法益は、当該被害児童の権利である、被害児童の名誉である、性的自由である、これが基本である。付随的に、身体的、精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるから、そういうものを守るためにもこの法律は意味があるのだ、そう聞いてよろしいわけでしょう。  それで、先ほど福岡先生ですか、要するに、基本は被害児童を守るのだ、当該個人を守るのだ、それが基本だ、そして付随して、身体的、精神的に未熟な児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるからそれをも防止するのだ、そういうふうに聞いてよろしいわけでしょう。 <0202>=林(芳)参議院議員= 改めて答弁させていただきます。  先ほどるる申し上げましたが、一言で言えば、児童の権利の擁護に資することがこの法律の目的でございます。失礼いたしました。 <0203>=木島委員= そこで、どういうポルノ写真等が罪に当たるのか、具体的に聞きたいのです。  今答弁されたような目的や、この犯罪の保護法益からいたしますと、児童ポルノの被害児童、要するに写真等に被写体となって写し出された児童、この被害児童の特定、これはどこまで必要なのかという質問であります。  十八歳未満の児童だけで特定が許されるのか、それでもう捜査し処罰できるのか。被害児童の、十八歳未満というだけでなくて、住所、氏名の特定までこの法律は犯罪の立件、起訴、有罪判決を下すために必要なのか、御答弁願いたい。 <0204>=大森参議院議員= ここで言います児童の姿態というのは、十八歳に満たない児童の姿態ということになります。構成要件としてはこれを要求しているのみであります。それで、描写されているものが実在する児童、すなわち十八歳未満の者であればこれは足りるのでありまして、これを公判において立証する必要があります。被害児童の特定というのはその立証手段の一つであると考えております。  したがいまして、その描写物から写されているものが児童の姿態であるということが立証できるのであれば、それ以上、氏名、住所の特定までは必要ないと考えております。 <0205>=木島委員= どこのだれそれという、住所、氏名までは要らないと。しかし、児童ポルノ被写体が実在する児童であることは必要なんですね、再三のこれまでの答弁から。その実在する児童が十八歳未満の児童であるということが立証されればこの罪は成立するというお答えでありました。  さてそこで、私が一番聞きたい点について質問するのですが、せんだっての質問もそうだったのですが、合成写真の問題であります。私は、この児童ポルノ関連犯罪の最大の脱法行為は、合成写真が広範に流布されるのじゃないか。それを取り締まれなければほとんどこの法律は動かすことができない、ざる法になると思うわけであります。こういうことをやろうとする犯罪者、犯罪集団は罪にならぬように考えて動くわけでありますから、そこがポイントだと思うのです。  私は、合成写真等も、その写真自体から、今御答弁の、被写体の少女があるいは少年が十八歳未満の児童であるという特定さえできれば、それはもうそれ自体で児童ポルノに当たるのではないかと思っているのです、解釈として。児童の特定というのは、基本的には私は顔で特定できる。基本的には顔でのみ、のみと言うと語弊がありますが、基本的には顔で特定するというのが児童ポルノの特定に当たって必要であり、かつ十分ではないかと思うのです。  それで質問なんです。  では、ある少女の顔、首から上が写され、首から下が全部全く別の少女の裸体がくっつけられた、そういう場合です。しかし、写真技術は、前回も言いましたが、非常に高度に発達していますから、これは一体として、その顔が写された被害少女に対するポルノとして私は有罪にしてもいいのじゃないかと思うのです。  そういう観点から、先日来、またきょうの午前中の大森発議者の答弁の中に、前回の私に対する質問から基本的な点で変わっているのでいいかと思うのですが、具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題です。例えば、実在する児童について、その大部分が描写されている写真を想定すると、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当しますという御答弁なんですが、私は、大部分ということになるとちょっと問題なので、もう顔でいいのじゃないかと。  顔だけが実在する少女が写し出されて、首から下は別の少女の写真が、あらわな姿態が、わいせつはその部分かもしれませんが、合成されたときにも、やはり侵害されているのは、その顔から見出される具体的な十八歳未満の少女の権利が侵害されている、それが流布されるわけですから。そういう解釈でいいんではないかというふうに思うので、これは、これから警察がこの法律を使うときには根本的に大事なところなので、ひとつイエスであるという答弁をいただきたいのですが、いかがでしょうか。 <0206>=大森参議院議員= 前回、木島委員の方から、合成写真のことで質問を受けました。言いわけをするつもりはありませんが、実は通告をいただいていなかったので、少し思考の整理ができておりませんで、一部不正確なところがありましたので、改めて正確に答弁させていただきたいと思います。  まず、この法案では、児童ポルノとは、児童の一定の姿態を「視覚により認識することができる方法により描写したもの」をいうとされており、ここにいう児童とは十八歳に満たない者、つまり実在する児童を意味します。そして、今回の法案の中では、外国の立法例にあるような疑似ポルノについて明文の規定は置いておりません。  したがって、写真等が実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限り児童ポルノには該当いたしません。ただ、合成写真等を利用した疑似ポルノの中には、実在する児童の姿態を描写したものであると認定できるものもあると考えられ、このようなものについては、今回の法案の児童ポルノに当たり得ると考えます。  具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題でありますが、例えば、実在する児童についてその身体の大部分が描写されている写真を想定すると、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当いたします。そこで、その写真に描写されていない部分に他人の姿態をつけて合成したとしても、ある児童の身体の大部分を描写した部分が実在する児童の姿態でなくなるわけではありません。  以上により、合成写真についても、児童ポルノに当たり得る場合があるということになります。  一応、ここまでお答えいたしまして、先ほど先生が児童の特定は顔ではないかということですが、顔だけで十八歳未満のものか特定できるかどうかということも問題があると思います。  それから今、首から上が別で、首から下が別の児童ということでしょうか、姿態であると。そうしますと、これはだれの姿態かと、どちらの姿態と考えるかということですけれども、ポルノに該当するかどうかにつきましては、先生は首から上が特定していればいいのではないかとおっしゃるのですが、例えば、この二条三項一号のポルノを例にとりますと、性交に係る児童の姿態とありますので、首から上のその人をもって、そして首から下が別の姿態である、そして、性交の場面というのを想定しますと、果たしてそれをもって、首から下が違うのに、それで性交に係る部分はまさにあそこであるのに、顔をもってそれで特定して、その人を特定するということが言えるかどうかは疑問であると考えております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0207>=木島委員= だけれども、そういう解釈をやりますと、これはざる法にならざるを得ないし、首から下で特定しようなんという解釈をとったらこれは大変なことになる。捜査官は特定するために被害児童を裸にしなきゃ犯罪立証できないでしょう。そんなことはやるべきではないし、やれないことですよ。  一般的に、写真がだれの写真かというのは顔で特定できるじゃないですか。普通の写真はみんな衣服をつけていますよ。これはだれの写真かといったら、顔を見て、これは何のたれべえ、これは木島日出夫だと、これは大森礼子だと、大体写真は顔で特定するわけでしょう。(発言する者あり)だからそれでいいんじゃないかという私の質問なのですが、なかなかお認めいただけないので。  それで、ちょっとポルノとは関係ない判例を一つだけ私披露して、それでいいんじゃないか、顔だけが証明できればいいんじゃないかということで指摘したいのです。最高裁判所の昭和三十六年三月三十日の公文書偽造の判決であります。要するに、実在しない公務所の名義が使用された公文書ですが、これが実在しなくても公文書偽造罪だという、これも解釈としては非常に画期的な解釈なのです。これも、実在する児童のポルノか否かが争点になっているところですから、解釈の基本が非常に似ているというので私御披露しますと、その最高裁判決の要旨を読みます。  実在しない公務所名義の証明書を作成した場合でも、その形式、外観において、一般人をしてそのような公務所が実在し、その職務権限内において作成した公文書であると誤認させるに足りるものと認められるときは、本罪に当たると。  だから、実際には実在しないお役所でも、形式、外観で実在するお役所と一般人が誤認するような文書がつくられた場合には公文書偽造罪として、刑法犯有罪であるという最高裁の判例があるんですよ。公文書偽造と児童ポルノとは全然罪種が違いますけれども、これは法益です、被害者が実在するか実在しないかという根本的観点からいったら同じなんですね。実在する役所じゃなくても有罪になるという。  そうしますと、私は、少なくとも顔が実在していれば、下半身は実在しなくて、しかも、その部分でわいせつな分野だというのはおっしゃるとおりです。確かにおっしゃるとおりなんですが、しかし、一体として写真というのは見られるわけですから、一般人がその写真を見たら、ああ、これはあの少女の卑わいな写真、映像だというふうに誤認するような写真であればこの新しい法律の児童ポルノの概念に当たると判断してよろしいんではないかなと私は思うんで、ぜひお認めいただけませんか。 <0208>=大森参議院議員= 結論を言いますと、認めることはできないと考えます。  それから、先ほどの首から上と下が違う場合ですが、首から下のところが実在する児童の姿態であることが立証できれば、これは児童ポルノに当たり得る場合があるわけです。ではそれが実在するかどうか裸にしてみないとわからないと先生今おっしゃったのでしょうか、それは一つの立証の目的でございまして、場合によったら、合成の顔の部分を除きまして、この下の部分が十八歳未満の実在する児童の姿態であると判断できる場合は十分あると考えております。例えば八歳ぐらいの女の子の姿態で、下が性交等に係る場面としていけば、それだけで実在する十八歳の児童ということになるんじゃないでしょうか。 <0209>=木島委員= では、もうこれで質問はとめます。  この法律、私どもは賛成なんです。これが成立しますと、基本的には、解釈は、第一義的には捜査官であり、最終的には裁判官なんですが、やはり常識的に……(発言する者あり)まあ、外観主義という言葉は使っていいのかどうかわかりませんが、余り厳密過ぎてしまわないで、顔が特定されて、一体としてその写真がその顔写真の女の子の写真であると認定されれば、名誉が傷つけられるのはやはりその顔写真の女の子なんですよ。下半身の女の子なんて、どこのだれそれかわからないわけですから、そんな者の名誉を守る必要はないんです、わからないんですから。顔写真の女の子の名誉は絶対に守り抜かなきゃいかぬわけですから、私はそれでいいんじゃないかと思うんですが、これは解釈論争ですから、もうやめましょうか。 <0210>=松尾政府委員= 済みません、御指名がないのに登場いたしまして。  法案が成立後この運用をする立場から、今警察庁の刑事局長ともいろいろお話をしたんですが、実務家としてお聞きしていると、発議者の答弁とそれから今の御質問とで実質的にそんなに違いがあるのかなという感じがいたします。発議者の方は、顔はある有名な少女にいたしましょうか、その写真である、下がその少女のものとは違う写真がつけられている、あるいはこれに、写真に非常に酷似した、写真と見まがうような模写でもいいかと思いますが、そういったものであれば、体の方もやはりその児童の姿態というふうに大部分が見られるならば、発議者の方もこれは当たると言っているわけでございます。  ですから、顔がありまして、下が全く児童の姿態と見られないような、そういうものがくっついているような場合にはそれは難しいかと思いますが、全体として発議者のおっしゃっているのは、下半身についても児童の姿態というふうに見られるのであれば、それは当たり得るというふうに先ほどお答えになったように思いますので、木島先生のお尋ねと、結論の部分においては、余り差がないものというふうに私は理解しています。 <0211>=木島委員= そういう立場で運用されることには全く私は御異議ありませんし、そういう立場で運用していただきたいと思います。  次の質問に移ります。日本人の国外犯を罰するというのは非常に大事な勘どころだということで、一点だけ確認のための質問であります。  法案第七条第二項、第三項、児童ポルノ頒布等の罪でありますが、第二項は、前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノの製造、所持、運搬、本邦輸入、本邦輸出罪であります。第三項は、第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、また外国から輸出した日本国民も同罪だという規定であります。前項あるいは第一項という規定は基本条文でありますが、児童ポルノを頒布、販売、業として貸与または公然陳列罪でございます。  そこで、確認ですが、七条二項、三項で言う「前項に掲げる行為の目的」あるいは「第一項に掲げる行為の目的」というものの解釈ですが、第一項だけ読んでいると、これは国内犯で、国内での行為なんですが、国外犯の適用もこの法の中に書いてありますので、外国での児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、公然陳列の目的も入る、七条二項、三項の目的の中には外国でのこれらの行為も入ると解釈してよろしいでしょうか。確認です。 <0212>=大森参議院議員= 第七条第二項、第三項は、国内で頒布等の行為をする目的のみならず、国外で頒布等の行為をする目的の場合も含むと解しております。第七条一項は、頒布等の行為について、それが国内で行われた場合に限定するものではありません。それから、第七条第二項の「前項に掲げる行為の目的」、または第七条第三項の「第一項に掲げる行為の目的」には、国外で頒布等の行為をする場合も含まれると解しております。 <0213>=木島委員= ありがとうございます。  次に、二つ目の大きな質問になります。  児童買春罪等、児童ポルノ頒布罪等これらの犯罪の成立要件の一つに、児童の年齢の認識の問題がございます。この犯罪の成立の基本要件として、行為者は、被害児童の年齢が十八歳未満であるという認識が必要だ、故意犯であるというこの法律の基本的な立場であります。そういう御答弁もありました。  実は私は、一番この法律の実効性が失われてくるんじゃないかという一つの心配は、年齢の認識の問題なんですね。児童買春を犯した加害者、被告人、犯罪者は恐らく、自分はこの子が十七歳以下だとは思わなかった、十八歳以上であると思ったという弁解を必ずしてくるのは間違いありません。ましてや児童ポルノであります。製造した者はともかくとして、製造者以外、販売、頒布、輸入、輸出、そういうことに携わった人間は、写真しか見ていないわけです。その被写体の人物と面接していないわけですから、写された少女が十八歳以上であるか未満であるか、十七歳か十六歳か認識しようがない。  ましてや、さっき確認しましたが、国外犯が処罰されます。外国の女性が果たして十七歳なのか十八歳なのか、直接接する機会のない人物にとって、たまたま性行為をしたことやら、そういうポルノの販売等に関与したというだけで、その年齢の故意、年齢の認識、十八歳未満であるという認識がなければ処罰できない、そういう法律の立て方というのは、私は、微妙な場合はほとんど立件できないと。  十三歳とか十四歳の少女に対する加害ならそんな弁解は許されないのでしょうけれども、今、子供たちの成長は早いですから、十五、十六、十七ぐらいになりますと、被疑者は必ずそういう弁解を立ててくるということで、それはやはり脱法行為で、許さないという立場に立ちたいと私は思っているのですよ。  そんな立場から質問いたします。  第四条から第八条までの犯罪の成立要件として、児童の年齢が十八歳未満であるということの認識もやはり必要とせざるを得ないのでしょうか。 <0214>=吉川(春)参議院議員= お答えいたします。  これは故意犯ですので、やはり年齢が十八歳未満であるということの認識も必要といたします。  同時に、ただ、五条から八条については、児童を使用する者については、児童の年齢に関する調査確認の義務があると考えられますので、これらの者が五条から八条までに規定する行為をした場合については、十八歳未満の者であるとの認識がなくても、認識がないことについて過失があれば処罰する、こういう法律の組み立てになっておりまして、したがって、原則として年齢について知らなくてはならない、これがこの法律の原則です。 <0215>=木島委員= そう読まざるを得ないのですね、これは。これは検察・法務といえども、この条文を読んだらそう読まざるを得ない、故意犯ですからね。しかし、そうなると、ほとんど脱法で捕まえることができなくなるのじゃないかという私の心配なんですね。まあ、そう聞いておきます。  ではその次に、それではこの法律の組み立て方で、第四条の児童買春罪、これだけは、児童を使用する者は年齢を知らないことを理由として罪を免れることができないという、要するに、年齢の不知は許さずという立場から除外したのですね。何で第四条だけを除外してしまったのでしょうか。 <0216>=吉川(春)参議院議員= 第四条を除外したというより、第四条が原則なんですね。  それで、第五条から八条については、児童を使用する者ということになっておりまして、児童を使用するという者は、雇用関係にあるだけではなくて、もう少し広く解釈いたしますけれども、こういう性的な犠牲にならないように、児童に対して注意義務を持たなくてはならない、こういうような人について特に厳しく処罰することにしたということでありまして、原則は第四条です。  そして、今は非常に子供たちの成長も早いから、十五、六歳なのか十九歳なのかという認識がなかなかつきにくいというのはお説のとおりでございますけれども、同時に、こういう場合には、例えば未必の故意が認められる場合もあるでありましょうし、しかし、年齢のことについて認識が不可能という場合にはやはり処罰をしない。これが立法政策といいますか、私たちはそういうことを選択をいたしました。  今後、この法律が初めて日本で施行されることになるわけでございまして、これによって大半の処罰が免れるような実態になるというようなことがあれば、またその次の段階として考えなくてはならないと思いますけれども、私たちは、あくまで年齢の認識が必要だということを基本に置いて故意犯として組み立ててきた、こういうことです。 <0217>=木島委員= 確かに、この法体系は第四条が基本、児童買春については基本条文なんですね。第四条は児童買春罪です。  第五条は周旋です。それから、二項は業とした者です。第六条も周旋です。そして、二項は勧誘を業とした者ですから、確かに、使用するということを想定される場合が非常に高いことは事実です。ですから、そういう場合は、知らないことは許さないというのは非常にいいと思うのですね。七条以降もそうですが。だからといって、四条の児童買春罪の基本法について、私は、知らないことを許すというのは理屈が通らないと思うのですね。  というのは、最近、高校生のアルバイトもふえているのですよ。高校生、どんどんアルバイトに入るわけです。そうすると、使用関係に入っていく高校生は非常に多いのですよ。そういう、たまたまある会社なり業にアルバイトとして入った高校生、高校生は大体十八歳未満ですからね。そうすると、使用関係が生まれるその使用者なり支店長が、地位を利用しなくたっていいですね、お金を渡して性行為に入ったら四条が適用なんですが、その支店長なり使用人が、その子の年齢、おれは知らぬ、十八歳以上だと思ったという弁解を許さなくたっていいんじゃないかな。想定できる。  四条の場合でも、使用関係に入った女の子が被害者になることは大いに今の日本の社会状況の中で想定されるから、四条は外さなくてもいいんではないかなと思うので、要するに重くするという意味ですよ。年齢の不知は許さないという基本のところでいいんじゃないかなと思うのですが、これ、私、頑張り過ぎますと修正問題になってしまうので、この辺でやめますが、何か御答弁あったら……。 <0218>=大森参議院議員= 被害者の年齢等が規定されている条文というのはほかにもございます。そのときにその年齢だと思わなかったという否認の弁解というのはよく出てくることでありまして、これをとめることはできません。その場合に、どういう立証ができるかということであると思います。  それで、やはり原則は故意犯でありまして、児童を使用する者については、別の過失推定のような規定を置いたわけです。これは児童福祉法の規定と同じような内容と理解しておりますけれども、使用する者と言い得るためには、児童の年齢確認義務を課すことが相当と認められる関係のある者、その確認義務を尽くさなかったために児童の年齢を知らなくとも処罰されるのもやむを得ないと見られる者という、この基準から判断されるとしておりますけれども、例えば児童福祉法でも、こういう場合には児童保護のために、特に原則故意犯の一部例外的なものを認めたわけでありまして、これを広く広げるべきではないと思います。  今回の、どこにこの使用する者の部分を当てはめるかにつきまして、買春者というのは、通常一回性の行為というものが予定されますので、ここからは除外いたしました。確かに、年齢が十八歳未満、十七歳ぐらいになると、故意の内容というものが、十七歳だから、例えば二十歳と思ったと見る場合もあると思います。要するに、その弁解が信用できるかどうかということで、あくまで立証の問題だと思います。 <0219>=木島委員= もう論争をこれで私は打ち切りますが、一つだけ披露したいのがあるのです。神奈川県青少年保護育成条例であります。  この条例は、第十九条で、みだらな性行為、わいせつな性行為の禁止規定があります。「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」「「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、」本件で言う性交のようなものです。「同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為」。わいせつな行為でしょうね。  これが処罰されるのですが、神奈川県条例の大変ユニークな、画期的な条文は、第三十七条七項で、この十九条一項もしくは二項、今言った青少年に対するみだらな性行為罪、わいせつ行為罪を、その「行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。 ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」といって、使用関係がなくても、神奈川県条例の場合は年齢の不知は許さない、そういう弁解を許さないという条文を置いているので、これは神奈川県、なかなか大したものだなというふうに思っておりますので、ひとつ三年後の見直しのときにはこんな条文もこの法に盛り込めればいいなと私は思います。  では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。 <0220>=吉川(春)参議院議員= 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。  同時に、先ほど来、木島議員の御意見ですけれども、児童の虐待、そういうことを許さないという強い意思を示すためということであれば、例えばポルノグラフィーの所持そのものを処罰した方がいいんじゃないかとか、そういうのもあったのですけれども、それも自社さ案からは削ったという議論がありましたけれども、ともかくこの法案をスタートしてみて、そして不都合があれば見直すということで、第一歩という形でそういう立場をとったということを御理解いただきたいと思います。 <0221>=木島委員= では、もう一点だけちょっと聞かせてください。  本法の附則二条、先ほど同僚委員も指摘しておりましたが、「地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。」と。そこで一点聞きます。この法律が成立して発効すると、せっかくのすばらしい神奈川県条例の三十七条七項、年齢の不知は許さないというこの規定の効力はどうなってしまうのでしょうか。これはつぶされてしまうのでしょうか、生き残るのでしょうか。それだけはちょっと発議者、答弁してください。 <0222>=吉川(春)参議院議員= ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます。 <0223>=木島委員= そういう法解釈を発議者がとられたということは非常に重大ですから、是として、質問を移ります。  これも、三年後の見直しに有益かどうか知りませんが、法定刑の軽重、重さについて一点だけ聞きます。  児童買春罪基本法は三年以下の懲役であります。刑法の強制わいせつ罪は六月以上七年以下の懲役であります。強姦罪は二年以上の有期懲役であります。有期というと、十五年以下ということです。児童福祉法三十四条、六十条の児童に淫行させる罪、確かにこれは本人が性交をやったわけじゃなくて第三者をして淫行させた罪でありますが……(発言する者あり)本人がしたのも入るという判例もあるのですか。十年以下の懲役なんですよ。これと比較すると、本法の法定刑は軽きに失しやしないかというのが私の気持ちなんですが、御意見だけ簡潔に聞かせてください。 <0224>=堂本参議院議員= 先生も御存じのとおり、ここの部分も勉強会で大変議論のあったところでございます。  確かに、児童買春罪の法定刑については、御指摘の強姦、強制わいせつ罪の法定刑、それから児童福祉法違反の法定刑だけではなくて、私たちは、青少年保護育成条例の法定刑、そういったものを全部考慮してこの三年という刑を選び、そして決めました。選択して決めたということでございます。  刑法の強制わいせつ罪及び強姦罪は、基本的に暴行とか脅迫を要件としているということ、それから、児童福祉法の児童に淫行させる罪は、淫行させるに至る原因に、脅迫、強要などの、対償が供与されて悪質なものがあると考えることから、この罪はより重く処罰すべきであるということで、法定刑の上で上限が重いというふうに解釈しております。  確かに、私どもの議論の中で、自社さ案のときには十年というような書かれ方もございましたし、するのですけれども、やはりこれが初めて施行される法律である以上、この段階ではこういうスタートを切って、また実態を見てということかと私は思っております。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0225>=木島委員= 次に移ります。  いわゆる被害児童、被害女子に対するセカンドレイプは絶対に許してはならぬと私は思います。この法案にはそういう配慮もあります。捜査、公判、あらゆる段階における配慮であります。  既にこれまでの審議を通じまして、捜査に当たっては子供の信頼するカウンセラー等を同席させること、事情聴取は女性捜査官が行うこと、そういう方向で警察が捜査を進められるよう希望したいという発議者からの答弁もございました。大変重要なことだと思いますので、その発議者の意思を捜査当局はきちっと法律成立後は胸に置いて捜査を進められんことを期待します。  私、時間も関係ありますから、一点だけ、公判段階における被害女子の人権尊重の問題に絞って、最近、イタリアで同種の法律ができて、その部分で大変すばらしい法律がイタリアで制定されたので、御披露して、きょう残念ながら最高裁をお呼びしておきませんでしたが、発議者の御意見等を賜って、この問題を閉じたいと思うのです。  イタリアでは昨年八月三日に、新しい形の奴隷的関係としての売春行為及びわいせつ行為、並びに未成年者に対する性的行為を目的とした旅行を取り締まる法律を制定いたしました。大変御苦労いただきまして、衆議院の法務調査室の皆さんにイタリアの原文を全部日本文に翻訳していただきまして、私もいただきました。  その中に第十三条というのがありまして、「訴訟に関する規定」、その第六項にこういうものがあります。刑事訴訟法の改正があわせ行われました。読みますが、「訴訟が行われる場合には、犯罪の犠牲者となった未成年者に対する尋問は、未成年者自身またはその弁護人の要求があれば、マイクロフォン装置を備えたマジックミラーを使用して行われる。」意味はわかろうかと思うのです。  基本は、少女が証人として喚問されて、そういうわいせつな性行為があったかどうか、対償の供与があったかどうか、お金を渡したか否か、それが否認事件の場合は徹底的に尋問を受けるわけであります。当然、被告人の人権という立場からいくと、それを避けるわけにいかない。それで、現行法でも裁判所はいろいろ工夫して、いたいけな被害女子が、児童が被告人の面前で震え上がることがないように配慮はあるのですが、このイタリアの配慮というのはすばらしいですね。「マイクロフォン装置を備えたマジックミラーを使用して行われる。」要するに、別室に入れるということです。加害者である男性の面前にはさらさないという非常にすばらしい配慮だと思うので、日本の裁判もこうありたいものだと私は思うのですが、発議者の御感想、御意見を承っておきたいと思うのです。 <0226>=吉川(春)参議院議員= 九八年の三月に制定されたこのイタリアの法律の翻訳について、当委員会に提出されたものを私も拝見いたしまして、この規定に限らず、随所にいろいろな工夫があって、今後の私たちの参考になるという印象を持ちました。  そして、先ほど来、公判廷でどうするのか、セカンドレイプというようなことを防ぐためにどうするのかという御議論もありまして、法務当局からも御発言がありましたけれども、まさにこういう方向をイタリアが示されたということは本当にすばらしいことですし、私たちの研究の材料としても多くの示唆を与えてくれるものと思いますので、やはりそういうことも含めて、今後、日本の捜査段階において、あるいは公判廷においてセカンドレイプにならないような工夫がいろいろな方法で行われるように期待をしております。 <0227>=木島委員= 以上で、私は、発議者に対する質疑は一応終結したいと思います。本当に長い間この法案作成のために苦労された皆さんに、心から感謝を申し上げたい。  残った時間で、私は、政府当局に質問したいと思うのです。  国外での日本人による児童買春、児童ポルノの現状と摘発の問題であります。国内で摘発よりも国外でのこの摘発が成功するかどうかが決定的に重要だという認識を私は持っているからであります。本法律の目的である児童に対する性的搾取、性的虐待を根絶するために本法律の実効性が高まるかどうかは、一に日本人の国外での児童買春、児童ポルノの製造、販売等を摘発できるかどうかにかかっているからだと私は思うからであります。  それで、第一点。現在、外国、特に東南アジア等における日本人による、児童買春やら児童ポルノやら、性犯罪の実態について、外務省ですか、数字、どの程度、どのように把握しておられるか、簡潔に御答弁願いたい。 <0228>=内藤説明員= 外務省では、毎年、現地の司法当局の協力を得まして、海外における犯罪により拘禁されている未決及び既決の邦人数について調査を行っております。この調査によりますと、九九年一月一日現在の統計では、アジア地域において、性犯罪による被拘禁者は、フィリピンで二名、タイと香港がそれぞれ一名でございます。 <0229>=木島委員= ではついでに、性犯罪以外の、全体の犯罪で拘禁された数は本年一月一日現在でアジア地域で何人か、それだけ答えていただきましょうか。 <0230>=内藤説明員= 本年一月一日現在、アジア地域ですと六十二名になります。 <0231>=木島委員= はい、ありがとうございました。  今答弁にあったように、日本がポルノや買春ツアーの最大の発信地だ、その被害地がアジア諸国だと言われているんですが、ことし一月一日現在、アジア地域において、外務当局がつかんでいる性犯罪による拘禁者、被拘禁者はわずかに四名、四名しか身柄拘束の強制捜査を受けていないという実態であります。  現行刑法三条一項五号、十一号で、現行でも強制わいせつ罪、強姦罪、未成年者等略取誘拐罪は、日本人の国外犯は科罰であります、罰せられます。ですから、日本人が外国、東南アジアへ行って強制わいせつしたり強姦したら、それは有罪なんですね。当然、逮捕され、捜査され、起訴されなきゃいかぬわけですが、その現状はどうなっているでしょうか。これは警察、法務でしょうか。 <0232>=林(則)政府委員= 御質問の強制わいせつ、強姦、未成年者略取誘拐に関する日本人の国外犯の検挙状況につきましては、最近五年間で見てみますと、検挙件数にして、強制わいせつ二件、それから強姦三件を検挙いたしております。その詳細につきましては、被害者の名誉にかかわることであるので、申し上げることはできないわけでありますが、いずれも被害者は日本人でありまして、国外で被害に遭って、帰国後、告訴がなされておるというものでございます。  これらの事件は、被害者の事情聴取を関係国に依頼するなどの必要はなかったわけでありますが、犯行現場等の実況見分等につきましてはICPO等を通じて外国機関の協力を賜って、検挙をいたしております。 <0233>=木島委員= お聞きのとおりであります。買春ツアー等が大問題なんですが、日本人が東南アジアで犯した現地の少女に対する強姦、わいせつが一件も立件されていない。日本人が被害者であるそういう強制わいせつ、強姦の立件も過去五年で五件だけ。これは、現行強制わいせつや強姦が親告罪であるという、非常に決定的に捜査が手が出せない制約があるのも原因であり、また、外国での捜査能力の問題もあろうかと思うのです。しかし、こういう実態である。  私は、この法律が成立しますと、今度は親告罪じゃないわけですから、日本人が外国で行った児童買春、児童ポルノ、全部日本の捜査当局は捜査権限があり、起訴する権限があるわけですから、それが適正に行われるかどうかが非常に重要になってくる、それが司法と捜査の共助の問題だと思うのです。  そこで、お聞きします。外国政府当局との捜査及び司法におけるこの種性犯罪の捜査の、あるいは司法の共助の現状はどうなっているか教えてください。 <0234>=林(則)政府委員= 最近における犯罪の国際化の状況は、申すまでもなく、大変顕著でありまして、これらの国際犯罪に的確に対応していくというためには、委員御指摘のとおり、外国捜査機関との協力というのが一層重要になってきております。  警察におきましては、先ほども申しましたICPO等を通じまして外国捜査機関への協力要請を積極的に行っているところでありまして、例えば、最近におきましても、インドネシアにおける日本人による保険金目的殺人事件の捜査に際しましてICPOインドネシアに対しまして協力要請を行い、去る四月三十日に被疑者四名を検挙した、そういった事案も見られるところであります。  他方、外国捜査機関から我が国に対する捜査の協力要請につきましても誠実に対応しておるところでございまして、平成十年中における諸外国からの要請に基づく捜査共助を実施した件数は、外交ルートによるものが十件、ICPOルートによるものが九百四十四件となっております。このICPOルートの捜査共助件数だけを見ましても、平成元年の三百五十件に比較して二・七倍となっておるということで、おっしゃいますように、やはり国際共助というのはますます重要になってまいるというふうに思います。 <0235>=木島委員= わかりました。  わかったら教えてほしいんですが、今御答弁の最後の、平成十年、ICPOルートでの捜査共助が、日本の警察が受けたのは九百四十四件、外交ルート十件、そのうち性犯罪は何件ぐらいかの統計数字、とれますか。とれたら教えてください。 <0236>=林(則)政府委員= まことに恐縮でございますが、手元にその資料を有しておりません。あればしっかり調べてみたいと思います。 <0237>=木島委員= はい。  国際捜査共助というのは、非常に決定的にこの法の実効性を高めるためには重要な課題だと思います。  そこで、私、国際捜査共助の基本的な仕組みがどうなっているのか、改めて勉強してみました。日本ではどうするか。外国から今言われたような捜査のお願いがあったときに日本の警察、検察がどう協力するかについての法律が、いわゆる国内法であります国際捜査共助法、昭和五十五年五月二十九日成立でありますが、日本がよその国から捜査してくれと頼まれたときの共助の原則があるのですね。この法律の第二条「共助の制限」「次の各号のいずれかに該当する場合には、共助をすることはできない。」  大原則が四つある。第一、「共助犯罪が政治犯罪であるとき、」外国での政治犯罪人を捜査するわけにいきません。  第二は、双罰性の原則と警察の皆さんおっしゃられているようでありますが、「共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、」仮定ですよ、そういう場合において「その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。」はだめだ。要するに、外国政府から日本の警察に捜査協力してくれとお願いされても、その行為が仮に日本国内で行われたときに日本の刑事罰法規には該当しないときには捜査協力できませんよ。双罰性の原則。  それから第三項、これは双務性の原則と言っているようですが、「日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。」日本の国が捜査をやってくれと頼んだときに、相手の国が応じてくれないような国からの捜査依頼には応じません、双務性が必要だ。そしてもう一項、第四項、これははしょりますが、そういう四つの原則がある。日本ではそうだ。  必ずしもこういう原則を東南アジア各国が立てているとは限りません。しかし、もしこういう同じような原則を東南アジアの各国が立てているとすれば、やはりこういう双務性の原則、双罰性の原則がないと、幾ら日本の警察が東南アジアの国の警察に捜査をお願いしてもやってくれないということになるわけですね。  そこで、もう時間が迫っていますからやめますが、大変大事ことは、東南アジアそれぞれの国の刑事法制がどうなっているのか、児童ポルノ、児童買春が犯罪となっているのかどうなのかということと、その国の捜査共助法がどういう事態になっているのかということがやはりきちんと確立していないと、日本と共通条項がないと、口では捜査共助と言っても、ICPO、インターポールの皆さん、非常に努力して奮闘されておりますが、現実にはこういう壁があってなかなか捜査共助が実らないということになる、そういう仕組みでないかと理解したのですが、もう時間ですから、私のそういう理解は間違っていないと、基本的にはそういう理解でいいと聞いていいですか。もう結論だけ。 <0238>=松尾政府委員= おっしゃるとおりでございます。  一言だけつけ加えますと、今の、双罰性等の要件を緩和することが可能なのは二国間で捜査共助条約を結んでいくこと、その中で要件を緩和していくということでございますが、現在、日本はアメリカとの間で条約の交渉に着手しているということでございます。 <0239>=木島委員= 法務大臣、そういう状況なんですね。  私は、まだ勉強不足で、東南アジア各国が本当に児童ポルノや児童買春について罰則規定をつくっているかどうかつまびらかにしてはおりません。  一つだけ御披露しますと、アエラの一九九九年一月二十五日号に、タイの大学教授のビティット・ムンターボーンさんが、「子ども買春」という論文を書いていまして、「これまで風当たりの強かったタイ、フィリピン、台湾などでは、法改正で取り締まりが可能になりましたが、こんどは近隣のミャンマー、中国南部、ラオス、カンボジアなどから女の子たちが調達されるようになってしまいました。国内の子どもの犠牲者が減っても、それを補うように、近隣国からの「人身取引」が増えているという皮肉な現象です。」こういう状況がある。  だから、この法律が成立したら、ぜひ法務大臣なり日本の警察庁が音頭をとって、アジアの皆さんを集めて、あるいは一堂に会して、ひとつアジア全体から児童買春や児童ポルノを撲滅しようじゃないかという会合を開いていただきたい。そして、捜査共助法もこれらの国々にぜひともつくってもらいたい。あるいは、日本の国と、アメリカとの関係でしか今のところ計画がないようですが、二国間条約、多国間条約もつくろうじゃないか。そして本当に捜査共助の実が上がるような状況をつくろうじゃないか。ぜひその音頭を法務大臣にとっていただきたい。それが私は、この法律の第十七条の国際協力推進の責務だと思うのですが、ひとつこれは法務大臣の決意を伺って質問を終わりたいと思うのです。 <0240>=陣内国務大臣= 国際的な捜査共助や逃亡犯罪人の引き渡しの実施及びこれらに関連する情報の交換について、緊密な国際的連携を確保しながら、この法律の趣旨を十分に生かすように努めなければならないと思います。ようやくこの分野について今の双務性とかあるいは双罰性が確立できたわけでございます。  ただ、今御指摘のような、これを国際的にもっと広めていく、高めていくということが必要であるという御意見については、私も大変大事なことだと思って拝聴させていただきました。 <0241>=木島委員= 発議者の努力を多とし、この努力を法務省初め日本の政府各省庁が真に受けとめて、実りある法律になるように心から期待をして、質問を終わらせていただきます。 <0242>=杉浦委員長= 次に、保坂展人君。 <0243>=保坂委員= 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、主に政府に、本法案成立後に何から始めるべきなのかという点について質問を用意しております。  一昨日のやりとりの中で、一点だけなんですけれども、買春を規定していく質疑の中で、これは清水議員に伺いたいのですけれども、実は私、長いことジャーナリストとして、特に学校の中で起きている、なかなか大人に言えない子供の声を聞いてまいりました。もちろん、これは日本じゅうどこの学校でもある問題ではないのですが、しかし、思い返すだけでも十以上のケースを知り得ているのです。  要するに、学校の先生が生徒に対して、例えば試験の合格あるいは単位の取得あるいは入学なり卒業なりの、いわば資格付与などを条件にして性交ないし性交類似行為をする、あるいはそれを強要する。これは、子供に優越的地位を利用して、いわば断りにくい、要するに金銭や物品を対償として出してどうするんだと誘うのとかなり違う、断りにくいという状態の中で、非常に重たい問題であると思います。  この点について、今回の法案では経済的利益ということに限定をしているので除外されているというように聞こえる御答弁もあったのですけれども、やはり子供の権利、まして子供買春ということを突き詰めて考えていくと、もう少しここの点について、御議論もあったようでございますから、お考えをお聞かせいただければと思います。 <0244>=清水(澄)参議院議員= 先ほど、優越的地位を利用した性的虐待の問題につきましては、自社さのときにはいろいろ議論をしていたという経過は堂本議員の方からも説明したと思います。しかし、今回は、そこに対償を払ったという行為を取り締まっているわけです。  児童の性的搾取、性的虐待にはさまざまな形のものがありまして、御指摘の優越的地位を利用した性的虐待というのは、一昨日も枝野議員も提起されておられました。ですから、これはさらに緊急に取り組みを必要とする課題であると考えております。  この法案の作成過程でも、そういう意味では、これは議論をしたわけですけれども、今回は、まず早く皆さんで一致する点から法律を通そうということで、こういう児童買春、児童ポルノ及びこれらの目的で児童の人身売買を対象とすることになったわけでございます。  私は、この法案が、第一条において、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することを明確にして、そして、児童の権利の擁護を目的とすることにしたということはとても大きな意味を持っていると思います。ですから、今後、優越的地位を利用したそういう性的虐待の問題も含めて、児童虐待問題全般にわたる議論と合わせた具体的な取り組みにつながることを期待しておきたいと思います。 <0245>=保坂委員= その優越的地位を利用すると言うと、少し言葉上はソフトな表現に聞こえるのですけれども、子供にとってみれば、何万円かの金銭や物品の供与ということよりもはるかにこれは、推薦入学の枠に入れてやるからということで迫られる、こういうケースは実際に過去あるいは今後も起き得ることなので、これはもっと悪質だということを指摘しておきたいと思います。  それで、続いて政府の方にいろいろ聞いていきたいと思います。  先ほど木島委員からの質問にもありましたけれども、まず警察庁に伺いたいと思うのですが、子供買春、子供だけに限りませんけれども、子供をも買うという日本人男性の、私も、タイのホテルで隣り合わせたグループの皆さんのしている会話を聞いて、本当に驚いたという経験があります。目に余る振る舞いが国際的な非難を受けた。事実でございます。これは本法案成立に向けた原動力になって、関係の皆さんの努力があったわけですけれども、現状はどうなのか。つまり、大型バスでどんとホテルに来て、衆人環視のもとに、目に余るわけです、よく見えるわけですね。そうならなくて、例えば個別化、分散化、あるいは巧妙になっているというふうな指摘もあるのですが、こういった現状把握はどうされていらっしゃいますか。 <0246>=小林(奉)政府委員= 警察におきましては、現在、児童買春、児童ポルノが法で禁止されていないために、こういったものにつきまして件数的に把握するということは大変困難でございますけれども、そういった中におきましても、私どもといたしましては、先生御指摘のような問題意識に基づきまして、いろいろと関係の国の捜査機関等から情報を得ているところでございます。  そういった中で、若干先ほど説明させていただこうと思ったので、今説明したいと思うのですけれども、例えば、ICPOのドイツの中央国家事務局から情報提供を受けまして、日本人が海外で撮影した児童のわいせつ写真、わいせつ画像、これをインターネットのホームページに掲載していたという事件がございまして、こういったものを検挙しているわけでございますが、そういった意味で、私どもは、そういうふうな外国政府との連携の中でやっていくということでございます。  ただ、私どもは特に感じますのは、最近私どももそういう観点で諸外国の、あるいは国際機関の会議に出席しておるわけでございますが、そういった中で、いろいろと我が国からの発信の情報あるいは国外での買春の状況について指摘を受けて、大変つらい思いをしているということでございます。先ほど発議者の方からもそういう話がございましたが、そういったふうな実態であるということだと私は認識しております。  ただ、それが具体的に件数でどうかと言われますと、大変難しい面があるので、御了承願いたいと思います。 <0247>=保坂委員= 必ずしもその件数ではなくて、目に余る振る舞いが目に入らない振る舞いになったところで本質は変わらないということで、いよいよ本法案成立後に、施行後の話になるのですけれども、外務省に伺いたいのです。  この法案成立後、効力を持ってからの話なんですが、例えば、在外公館で購読している雑誌あるいは新聞等に、日本人男性が今言った巧妙な手口で子供買春をしていますよという記事が、本人を特定し得る写真なり何か情報によってそうした記事を在外公館で確認したという場合には、具体的にどうされますか。 <0248>=内藤説明員= 今のようなケースは、これは捜査活動の一環として行われるということになりますので、在外公館の任務としては認められないというのが国際ルールでございます。 <0249>=保坂委員= ではもう一点、外務省に伺いますが、東南アジアにもたくさんの日本人が住んでいるわけですね。その日本人から、例えばあの町のあの店に行くと明らかな子供買春を目的にした日本人観光旅行者やあるいは定住者が出入りをしている、この店である、あるいはこういう人を介してそういうことが行われているという情報が在外公館に寄せられたときにはどうするのですか。 <0250>=小林(奉)政府委員= 我が国におきましてこの法律が成立しますれば、私どもといたしまして、外国政府にこういう法律があるということを周知徹底いたしまして、そういった情報が我が国の捜査機関に入るようになろうか、このように思っております。 <0251>=保坂委員= 外務省の方は特段の対応はしないというふうに聞こえるのですけれども、やはりもう少しそういうことが、これは日本人の、海外で、特に経済的な格差があるアジアで子供買春についての批判が強いわけですから、それについてもうちょっときちんと対応すべきではないかと思うのですが、いかがですか。 <0252>=内藤説明員= 一般的な注意といったことについては先ほども、ポスターを大使館に張ったりして、やります。ただ、犯罪を捜査するという段階に入りますと、これは日本の国内の捜査当局が捜査案件として取り上げて、それを相手国の捜査当局に捜査共助を依頼するということになります。外務省の仕事は、その際の取り次ぎをするということになります。 <0253>=保坂委員= ちょっと答弁が不親切なので、つまり、取り次ぎはするというわけですか。先ほどの答弁だとはっきりしなかったので……。 <0254>=内藤説明員= 犯罪事件は、海外で起きた場合は海外の当局が権限を持って行うわけですから、そこに日本の当局は介入できないわけでございます、それは大使館も含めて。したがいまして、海外の捜査当局の協力を依頼するという立場に立つわけでございますから、その依頼する発議は日本の捜査当局が行う。それを外務省は受けて、取り次ぎを相手国政府にする。その相手国政府の返事をまた外務省が日本の捜査当局に取り次ぐ。これが捜査共助の手続でございます。 <0255>=保坂委員= そうすると、では、そういう情報が寄せられても特に具体的な行動は起こさないわけですか。  要するに、今言いましたね、例を挙げましたね。この店で日本人のツーリストや定住者が子供買春をしている、在留邦人として恥ずかしいということがもし寄せられた場合にはどうするのですか。それは行動はできないということですか。 <0256>=小林(奉)政府委員= 外国の捜査機関がそのような情報を入手した場合には、日本の国外犯に該当するということを認識しているならば、我が国の警察機関に対して連絡してくれるものと考えております。そういったものを踏まえまして、私どもはやると。  また、具体的にそういう情報があるのであるならば、我が国の捜査機関に対して、外交ルートあるいはICPOルートを通じて積極的に連絡するようにしてもらうように我々としてはやってまいりたい、このように考えております。 <0257>=保坂委員= もう少し政府内できちっと姿勢を正していただきたいと思うんですね。これは、こういうことをなくすために立法しているわけですから、そういうことがまさにあるよという情報があったときに、本当にあるのかどうか、もちろんそれはにせものの情報もあるでしょうけれども、これらにきちっと対応するようにしていただきたいという要望をしておきます。  もう一つ、この十五条、十六条で、心身に有害な影響を受けた児童の保護及び体制の整備という箇所があります。  私も、先ほどタイの話をしましたけれども、タイにCPCR、タイ・子供の権利センターというNGOがあります。このNGOは長いことすさまじい活動をしているんですね。タイの東北部から誘拐、あるいは東部の場合は大体安い金銭で売られた子供たちが売春宿に幽閉をされる。もう一つは、ビルマあるいは中国雲南省、その辺からは、誘拐されて少女たちが売春宿に囲われるのですね。行っても、鉄のおりの中で、中にはすごい話で、クマがいたりとか、ピストルで武装したガードマンがいて、逃げ出さないように監視している。終始もう外に出られないという形で、命からがら逃げ出して通報している。そこにCPCRというNGOはマスコミや国家警察とともに踏み込む、そして命かけながら救出をしていくという活動をしているわけです。  さて、そうやって救出された子供たちの大半は、私が行った当時でも、五年前でしたけれども、HIVに半数以上の子供たちはもう感染をしていました。そしてまた、その余りにも衝撃的な、自分の身の上に起こった激変に、この傷をいやすケア、リハビリのハウスをそのCPCRというNGOではつくっています。そして、三カ月から半年かけて心の傷を治しながら、もとの生活に戻していくという努力をしているわけですが、これは大変な経費と努力がかかっているわけです。  これは関係省庁で、例えばこういう子供買春であり、売春させられるという両面あるわけですけれども、こういった被害者をも命がけで救っている海外のNGOについて、調査やあるいは認識というのはございますでしょうか。政府で御答弁、どうでしょう。 <0258>=上田政府委員= お答えいたします。  今先生がお挙げになりましたように、各地で、特にタイとかあるいはまたコロンビアとか、そういうところでこういうケース、すなわち性的搾取に遭った児童のケアを行う、あるいはリハビリを行うようなNGOが活躍しておられます。そういうNGOの活躍、全貌を必ずしも全部把握しているかどうかということはもちろん言えませんけれども、そういうNGOの活動に対して、日本の経済協力の中の一つのスキームでございますけれども、草の根無償とか、そういうことを使って支援はしているところでございます。 <0259>=保坂委員= それで、厚生省に伺いたいと思うのですが、日本の国内の買春の状況、そしてまた児童ポルノ、こういった被害者となった子供たちのケアやリハビリの活動実績というのは、日本国内の場合はまだまだこれからだと思います。専門家がそう多くいるわけではないし、これから始まるところだと思いますけれども、どのような準備をされておるでしょうか。そしてまた、先ほど指摘したような海外のNGOなどの経験に学んだり、あるいは交流をしたり、調査をしたり、そういうことも含めて始められているでしょうか。厚生省、簡単にお願いします。 <0260>=横田政府委員= 心身に有害な影響を受けました児童の保護についてでございますけれども、私どもといたしましては、基本的には、児童相談所というのが全国に百七十四カ所ございます。そこにおきまして、相談、指導、あるいは一時保護、必要に応じまして心理判定士による判定なり養護施設、あるいは情緒障害児短期治療施設というのがございますが、そういったところへの入所あるいは心理療法やケースワーク等によります在宅指導等を行うことになろうかと思っております。  また、人材の養成につきましても、こういった職員に対しまして各種研修を行っておりますけれども、この法案の成立を機といたしまして、さらにそういった人材養成についても充実をさせていきたいというふうに考えております。  また、国内、さまざまな民間の虐待防止センター等がございますので、そういった団体との連携も強化してまいりたいというふうに考えております。 <0261>=保坂委員= それでは、文部省の方に伺いますけれども、日本の子供たちが、児童買春やポルノの被害者にならないために、嫌なものは嫌だというふうに拒否をする、今、日本の子供たちは、はいと言うことが多いので、そういうふうに言いなさいというふうに育てられているので、余り自分の意思を明快に表明できないという傾向はあります。  既によく紹介されているところですけれども、CAP、子供虐待防止プログラム、これは学校で主にお母さんたちのボランティア活動などによっていろいろなところで始まっていると思いますが、さらに、学校教育にこれをもっと大胆に導入するべきではないかと思いますが、文部省、いかがでしょう。 <0262>=辻村政府委員= 子供が、ただ一緒に行ってはいけないとか、知らない人についていってはいけないとかというような、そういう規制をかけるだけではなくて、みずからの行動をもってこうした問題に対応する、そういう行動を伴った力を培うということは大変重要だと思います。  今先生の紹介されたCAPでございますけれども、これにつきましては、既に我が国におきましても幾つかの学校で取り入れられております。文部省でも、昨年開催いたしました教育委員会関係者の研究協議会等の場におきまして、そうした取り組みをしておる学校から具体的な実践例を紹介していただくというような取り組みをいたしておるところでございます。大変重要なプログラムだと思いますので、私ども、これは最終的には個々の学校の判断によりますけれども、これからもそうした事例紹介等をさらに行って、こうした面の取り組みを充実させていきたい、こんなふうに思っております。 <0263>=保坂委員= それでは、警察庁と法務省に、時間がないので簡潔にお答えいただきたいのですが、大きく振り返ると、これまで、青少年保護育成条例で国内の子供買春は取り締まる、こういう状況がありました。しかし、この法案の目的は、繰り返し提案者の議員の皆さんから言われているように、児童の権利の擁護である、子供の権利をきちっと守り抜いていくんだ、こういう趣旨であるということを何度も繰り返されたと思うので、このために、警察庁あるいは法務省において、子供の権利擁護という点でもう一回きちっと意識転換をする必要があると思うのですが、そういう準備をされているかどうか、簡潔にお願いします。 <0264>=松尾政府委員= 大変重要な法案でございます。  成立いたしましたら、全検察官に早急に周知徹底させるということで準備をしております。 <0265>=小林(奉)政府委員= 警察におきましては、既にこの法律案が国会において審議されているということを全国会議で指示しておりまして、その概要、考え方についても説明しております。  また、この法案が成立すれば、この法案の趣旨、運用の内容等について、その趣旨が徹底するように、あらゆる機会を設けてやってまいりたいと思います。 <0266>=保坂委員= それでは、ちょっと簡単な質問で、運輸省に伺いますが、本日の質問でも出ましたけれども、具体的な努力として、例えばブラジルでは、航空チケットに児童買春撲滅というメッセージを載せて旅行者を啓発しているというような取り組みをしているそうですが、具体的に何かそういう踏み込む努力を考えられておりますか。 <0267>=大黒説明員= 旅行者に対する啓発につきまして、関係の旅行業協会あるいは旅行関係の団体、業界、大変広うございますので、こうしたところと協力してあるいは連携して、既存の広報機能というものも相当持っておりますので、これらを活用し、多様な方法によって旅行者に対する啓発に努めてまいりたいと思っております。 <0268>=保坂委員= この法案では、児童ポルノの単純所持ということについてはこれを削除するということで合意が成立をした。その背景には、やはり単純所持そのものをめぐる、多角的にいろいろ見解を重ねていった結果だと思って、それを十分に受けとめたいと思います。  法務省に一点だけ伺いたいのですけれども、そこを踏まえた上で、児童ポルノが持っている特徴として、例えば製造者を処罰しても、そのポルノが市場に流通をしている、あるいは大量に出てしまっているということ、まあ全面的に回収廃棄というのが理想的なんですけれども、これらに対する対応の知恵といいますか、その辺はどう考えられているでしょうか。 <0269>=松尾政府委員= 確かに、単純所持は今度の法案には盛り込まれておらないわけですが、そのほか、製造、その後の頒布、つまりそういう児童ポルノが流布する過程のいろいろな段階についての処罰規定が設けられているわけでございますから、そうした本法案の趣旨を十分に尊重しながら、積極的に対応していきたいと思っております。 <0270>=保坂委員= もう一度外務省に伺いますが、国内行動計画についてなのですが、ストックホルム会議で、この問題に取り組むための国内行動計画を二〇〇〇年までに策定するという合意がございました。ところが、まだ検討が十分行われていない、これを早く日本政府にやるようにという国連子どもの権利委員会からの勧告もあるのですが、NGOなどと協議してこれを一刻も早く進めるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。 <0271>=上田政府委員= 先ほど来、政府の担当のそれぞれの省庁の方から御答弁ございますように、この問題に関しまして、関係省庁間で緊密な連絡をとりつつ、それぞれの所管のところで対処しているわけでございます。今後とも、この法律の成立もございますれば、それがまた大変な契機となりまして、それぞれのところでさらに検討、対処が進むものと考えております。  それから、NGOの活動はこの分野で大変御活発でございまして、その皆様方と政府のそれぞれの部局が既にいろいろと意見交換をしたりしているところでございます。今後とも、特に児童の権利の分野につきまして、NGOの皆さんとの意見交換等も行ってまいりたいと思っております。 <0272>=保坂委員= 三年前にストックホルムでこの問題の大きな会議があって、日本社会は一体どういう社会なのか、国際的に大変大きな非難を受けたし、また恥ずかしい思いだったということを聞いております。  これで最後の質問になりますけれども、その当時から幾多の経緯があって、本日、振り返って、今どういうお考えかということを最後に清水議員に伺いたいと思います。 <0273>=清水(澄)参議院議員= ストックホルム会議は一九九六年でございましたが、先ほど森山議員からもお話がありましたように、一九九四年に、日本では子どもの権利条約を批准したわけです。そのときに、この権利条約の中の三十四条というのは、まさにきょうこの法律をつくりましたこの問題があったわけです。やはり国内法の立法化をやらなきゃいけないということを大変主張いたしましたけれども、日本では理解をされなかった。そういうことから考えますと、私は、この国会での今回の審議に非常に感無量でございます。  そして、九六年の子供の商業的性的搾取に反対するストックホルムの世界会議には日本の代表として参りました。そのときに、これは外務省の方にも報告してあるはずですが、日本は二十年おくれている、国際的な基準、それからそれぞれの国がどれだけ努力しているか、法改正とか急がなければならないという報告を送ったということなども考えますと、本当に、こうして皆さん方が、今回、子供の人権を保障するという立場から、この児童買春、児童ポルノ、人身売買を犯罪として、そして子供の人権をあくまで守っていくのだ、こういう法律を、これは政府からは出せなかった、それを議員立法として、議会人がこうして法律をつくることができた、それも各政党の皆さんがこれは必要だということで一致をしているということについて、本当に感激をしております。  そして同時に、日本もようやくこれで子供を権利の主体として認める第一歩、スタートに入った。日本はいつでも、アジアの中で子供に対する加害者である、女性に対する加害者である、そして子供を搾取している加害国である、そういう立場にありましたけれども、これでもって、私は、国際社会の中での責任を果たす一端をきょうは開いていけるということを非常に心強く思っております。  しかし、法律だけができてもこの問題は解決しないと思うのですね。ですから、子供買春、子供ポルノというのはまず大人自身の問題であるわけでございます。アジアの子供買春は、チャイルドポルノとか援助交際等の話もありましたけれども、そういう問題を引き起こしている原因というのは、やはり男性の性を中心にして、社会で許容されている、売春を認めている。売春というのは、お金で、人の人格とは切り離した性を買い取るということが当たり前になっている。特に、子供に対しては大人が加害者であるというところをきちんと認識していくという意味で、今後とも、この法の達成のために、そしてより実効性を上げるために、そして国際社会でむしろモデルになるような、そういう役割を私たちは果たしていかなきゃいけないということをつくづく実感しております。  そして、皆さんの真剣な討論に本当に心から感謝申し上げたいと思います。 <0274>=保坂委員= ここまでこぎつけていただいた提案者の皆さんの御努力に感謝をするとともに、また質問する側も、党派を超えて、あらゆる点から努力をして審議ができたことを大変うれしく思います。  これで質問を終わります。ありがとうございました。 <0275>=杉浦委員長= これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ――――――――――――― <0276>=杉浦委員長= これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。  参議院提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕 <0277>=杉浦委員長= 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0278>=杉浦委員長= 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ――――――――――――― <0279>=杉浦委員長= 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会