午前十時開議      ――――◇――――― <0001>=杉浦委員長= これより会議を開きます。  参議院提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川堯君。 <0002>=笹川委員= まず、昨年、私が法務常任委員長のときに、オウムの問題で特別立法で参議院で大変お世話になりまして、無事に可決をしていただきましたことをお礼申し上げます。  きょうは、そのお返しという意味ではありませんが、私が何か反対をしているように思っている人もおられるかもしれませんが、私は、少なくとも人を罰するという法律をつくる以上は、やはり厳しく中を精査しながらよりよいものをつくっていただきたい、こういう希望のもとに幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  この法案そのものの趣旨は、罰するということよりは、これから次代を担う小さいお子さんのために健全な精神と肉体をやはり守ってやりたい、こういう趣旨でこの法案をつくられたと思うんですが、その点は間違いございませんか。発議者、どなたでも結構です。 <0003>=林(芳)参議院議員= お答えいたします。  笹川先生おっしゃるとおりでございまして、いろいろな条約等ございましたし、先生御指摘のとおり、次代の日本を担っていただく、児童というのはここでは十八歳未満ということになっておりますけれども、健全な育成をしていただきたいという趣旨を込めましてこの法律をつくらせていただいた次第でございます。 <0004>=笹川委員= 趣旨は私も同感であります。  さて、個別にお聞きしたいと思いますが、例えば児童だとか幼児だとか、いろいろな言葉がありますが、これは、いずれにしても各国とも、あるいはアメリカでも各州でそれぞれ定義が違っておりますので、そういう内容について議論をするつもりはありません。十八歳未満ということで御了解をさせていただきます。こういう法案をつくること自体は、大変我々人間の恥でありますし、特に大人としては寂しい限りでありますが、そういうものをつくらざるを得なかったという背景はよく理解ができます。  さて、皆さんの方に御通知申し上げたと思いますが、実は第二条の中に、性交もしくは類似行為ということがございます。先般同僚議員の質問の中で相当部分は理解できたんですが、実はアメリカでは幼児ポルノが法律によって禁止されております。それから、アニマルセックス、獣姦と言っておりますが、実はこれもアメリカで法律において禁止をされました。それまでは、そういうポルノ映画、雑誌等が販売されまして、供給元は中南米の非常に所得の低い国の方々でありまして、それを買う方はアメリカでありました。そういうことで、アメリカの世論も喚起いたしまして、実はそういう法律ができまして、禁止されました。  ところが、今回のこの法律の中には、類似行為というものの中にアニマルセックスは入っているのかどうか。私は、これは入っていないというふうに理解をいたしております。と申しますのは、アメリカではその項目を一項目ぴしっと立てまして、これはだめですよということをうたっておりますので、できたら私はこの法律の中に、今回間に合わなければ次回でも結構ですから、もう少し明確にわかるように、俗に言う動物を相手にしたアニマルセックスの禁止というものをぴしっと入れていただければありがたい。  これは長い人間の歴史の中で、戦争のときに、まあ国会の場でありますので、言葉を選ばなきゃなりませんのでこれ以上申し上げませんが、それは皆さんがよく御存じのとおりの歴史の中でございましたので、ひとつその点についてお尋ねをします。御案内のように、大人のおもちゃといいますか、バイブレーターその他は性交の類似行為の中に入るという判例も実はもう既に出ているということを見ておりますので、その点につきましては了解いたしますが、動物との性交までがこの類似行為の中に入るのかどうかをちょっとお尋ねをさせていただきたい。入るのなら入る、入らないのなら入らない、それで結構です。 <0005>=大森参議院議員= 性交という言葉は、刑罰法で用いられる場合、通常の理解として、その性交というのは人対人とのものとなっておりますので、そういうアニマルセックスですか、動物と人間との間の行為は性交とは言わないと理解しております。 <0006>=笹川委員= 昨日の御答弁でもそういうふうにお答えになっておりますので、そうなりますと、当然、やはり私が申し上げている項目については明らかに欠如している。私は、この点を指摘を申し上げたいと思いますので、ぜひひとつ、近い将来にそういうことを入れていただく意思があるかということだけを確認させていただきます。どなたでも結構です。 <0007>=大森参議院議員= 今回の勉強会で、さまざまな論点が出てまいりました。ただ、一方で、早くいい法案を成立させようということで急ぎました。それで、もっと時間をかければそういう結論も出たかもしれませんが、これからの、三年後の課題ということで考えております。児童の性的虐待、搾取の形態、ほかにもいろいろあると思いますので、これもこれからの課題で、必要なものは三年後の見直しのときに何らかの形にしていきたいというふうに思っております。 <0008>=笹川委員= 今お答えいただきまして、三年後の見直しということもございますが、将来ともにそういうことをでき得る限り早急に整備をしていただけるように私の方からお願いをいたしておきますので、よろしくお願い申し上げます。  さて、質問の順番が多少ずれるかもわかりませんが、実はこの法律、捜査あるいはまた公判の維持とかいろいろなことがございますが、職務上関係のあった者は、児童の人権及び特性に配慮するというふうに第五の捜査と公判のところに書いてある。これは、今までいろいろなお子さんを相手にするときの裁判は同じであります。  実は、私は国会議員として初めてエイズ問題を国会で取り上げて質問いたしました。御案内のように、当時、新聞でもラジオでもテレビでもHIVの感染者を犯罪人のように追跡されまして、実は物すごく人権が無視されたわけであります。御主人が実はHIVの患者でありましたが、奥さんが看護婦さん。ところが、そのことが知れて、追及するものですから、病院の患者さんが、だんなさんがHIVの感染者なんだから当然奥さんもそうだ、そんな人が看護婦では我々は困るということで、結局、最終的には看護婦さんはその病院から追放されました。  こういうことを、一つの犯罪を摘発するために別な犯罪、特に私は人権にかかわる問題をないがしろにされては困る。特に今回は、お子さんの人権を配慮したいというのがこの法律の趣旨でありますので。  たまたま今回は議員立法であります、閣法ではありませんので、その辺を、国に対して啓蒙運動をするとかということは結構なんですが、実は今から数年前、ちょうど十月の国民体育大会の時期に、皇后陛下が宝島という雑誌にあることないこと書かれまして、心因性の、言葉が出なくなった病気になったことは、皆さん御存じのとおりであります。実は私、当時法務委員会でこれを取り上げまして、数百人の方が天皇、皇后にお仕えしているのにこういう問題一つ解決できないようでは、皇室の安泰は難しいのではないかと。しかも、本来ならば、奥さんがたたかれればだんなさんはあだ討ちをすべきである。ところが、天皇陛下にはそういうことをすることが許されていないし、また法律を使って訴訟の対象にもなり得ない。こういうことで、実は宮内庁に広報官が新たにあれ以後新設をされました。  そのときに私は、大変こういう問題を、今後起きないようにということを思っておりますが、今度の問題が、法律ができて、摘発されないことが望ましいのだけれども、仮に摘発をされたときに、今の放送あるいはまた新聞、雑誌といいましてもピンからキリまでありますから、私は、興味本位で猛烈に書くだろうと。そうすると、とてもお子さんの、仮名でしようが何でしようが、人権の擁護という面について、私は非常に実は不安があります。  そこで、「記事等の掲載等の禁止」というふうにここに書いてあるのですけれども、これは禁止といいましても罰則規定がありませんので、私は、守られるなんて到底思っていない。発議者の皆さん方は、この禁止規定をつくることによって、そういう人権が守られるような雑誌、報道等になるかということをひとつお聞きをしたいと思います。 <0009>=清水(澄)参議院議員= せんだっての本委員会でも御説明いたしました。  まず、今おっしゃいますような、確かに、被害を受けた子供の記事について、その名前とか住所とか学校名とか、被害者がだれであるかという対象がわかる記事が非常に多うございますので、それを今回は禁止行為の中に含めたいということでこの法案の中に入れましたけれども、おっしゃるように、処罰規定はないわけでございます。  ですから、これも先回のときも御指摘ございましたので、今回はそれをまだ入れておりませんけれども、三年後の見直しの中で、必要であればまた御論議いただきたいと思いますが、今回はそれでまずやってみるということと、それから、非常にいろいろな記事を取り締まるということの方のおそれといいますか、そちらの方の意見が非常に多うございましたので、今回はとりあえず罰則規定は入れていない、こういう状況でございます。 <0010>=笹川委員= 今の御答弁で、そういう議論も出たけれども、三年後にやるというお答えじゃないですね。三年後までに議論をしようというお答えだと思うのですが、私は、それでは困るので入れてほしい。  ただし、憲法上、やはり発言の自由だとか、いや出版の自由だとか、いろいろそれはわかります。だけれども、幼児のポルノのこの件にというふうにして限定されているわけですから、何でもかんでも書いてはいかぬと言っているわけじゃありませんので、そのことは仮に処罰規定を入れても、ポルノ、この事件に関して禁止するんですよということだから、私は差し支えないと思うのですが、いかがですか。もう一度。 <0011>=円参議院議員= 先生おっしゃるとおり、例えば表現の自由の価値を極めて重視しておりますアメリカにおいても、子供ポルノの規制は憲法上の審査をパスしてきております。  そういった意味で、私どもも、こういったことに罰則を設けるかどうか、随分勉強会で議論をいたしましたけれども、今回は、報道の自由との関係もございまして、直ちに罰則を設けることには慎重であるべきだということに結論が出ましたので、三年後、先生のおっしゃるように、見直しの時期にまた必ず入れるということは、ちょっと今申し上げられないと思います。 <0012>=笹川委員= 私は、三年以内にこういうことが起きないと心から期待をしております。もしそうであれば入れなくていいんだけれども、おくれるとなかなか入れにくい。最初に火がついて、皆さん方が、こういうのをやるんだと意気込んだときには割とできるんだけれども、時間がたってしまうとなかなかできにくいのじゃないかと私は思うので、報道の自由というのはよく理解できますが、ぜひそういう趣旨をきょうの議事録に私も発言としてとどめておきたいと思いますので、ひとつその精神が生きるように、お子様を守るという人権上の配慮の上に立って、そのことだけは報道してはいけません、書いてはいけませんよという、ごくごく限定された自衛権の発動だという意味に御理解いただいて、これからもしそういう議論があったときには、ぜひひとつお子さんを守るという意味において掲載しないようにしていただきたい。そうじゃないと、興味本位に書いて書いて書きなぐるということになるおそれがあると思います。  さて、次に、国外犯のことをちょっとお尋ねしますが、飛んでしまってごめんなさい、国外犯といったって、そんなに難しいことを御質問するわけではありませんので。  御案内のように、今、日本は非常に経済的にも恵まれておりますし、教育の水準も高うございますから、私は、日本国内でこういうことが起きるということは、可能性としては非常に少ないと思っています。  だけれども、フィリピンだとか、国名を言うことは大変申しわけないのですけれども、あるいはタイや何かも、後進国といいますか、経済的に非常に貧困のところではそういうことがあったということも事実でございますし、そういうことが国連で指摘をされたということで、御婦人の方々がそういう会合に出たときに厳しく詰問をされたということも聞いております。そのことも今回の法案の中に当然くみ入れられたと思っております。  そこで、実は一番困るのは、日本の警察とか検察庁と同等のレベルのときには非常に摘発そのものも容易なんですが、私もフィリピンはもう数え切れないぐらいスポーツ交流で行きましたが、非常にいいかげんな国でありますので、こういうものが日本にできることによって、逆にマフィアだとかやくざが、善良な人が行くわけですから、当然脅迫だとか恐喝のたぐいになるということはアメリカでも過去ずっとありましたから、私は、このことは皆無じゃない、それが起きたときに困るなというような心配をいたしております。  その点について、私はたまたま国外犯というのは難しいかなと言ったのですが、逆に言うと、国外犯を外してしまうと、外国のこの法案に対する評価がなくなってしまうのだということもよく聞いております。  そこで、国外犯というのは、明らかにこれは、法律ができますと、後は我々の仕事から離れまして検察庁、警察の仕事になるのですが、これは運用のときにやはり厳しく、そしてまた公平にやっていただかないと、一つの犯罪を摘発することによって一つの犯罪がまた発生してくる、こういうことの議論もございましたか。ちょっとお尋ねいたします。 <0013>=堂本参議院議員= お答え申し上げます。  そもそもこの法律を立案するときに、日本に児童買春、児童ポルノを禁止する法律がないために、日本のそういった国外犯が野放し状態にあるということが最初の動機でございました。ですから、国内であろうと国外であろうと、今回の法律では罰するということになっているわけです。それでよろしいのでしょうか。  先生の御質問、マフィアとの関係で、善良な人が行ったときにということの意味がよくわかりませんでした。 <0014>=笹川委員= 御婦人の皆様でそこまでおわかりにならないのが当然でありまして、知っている方がおかしいのかもわかりませんが、これは現実としてそういうことがあるのですよ。例えば年齢の問題がありますのでね。  例えば十八歳未満で当然これはひっかかるわけですから。例えば外国に行って、年を聞いた、幾つ、十八だと言った。安心してしまった。ところが、実際は十五だった。そうすると今度、向こうの家族とか悪い人が、十五だったからあなたは法律に触れますよということになり得ないのかなということの心配をちょっとお尋ねしただけであります。 <0015>=大森参議院議員= まず、先生、マフィアと、それから、善良な人が行くので被害に遭うというところ、今お尋ねしましたら、御婦人であるからわからないとおっしゃったんですけれども、御婦人であるからわからないのかどうか、ちょっと確かめたいので、もう一度そこのところを教えていただけませんでしょうか。 <0016>=笹川委員= 今の発議者の答弁の中で、マフィアその他がわかりにくいというお話があったので、私は、そういうことが起こり得るんですということを申し上げただけの話であります。  例えば、「過失がないときは、この限りでない。」九条にありますね。いかなることがあっても処罰を免れないんだけれども、過失がないときというのをお尋ねしようと思ったんだけれども、時間の関係でなるたけ早くやめたいと思ったから。では、IDカードを見せなさい、ドライバーライセンスを見せなさいと言って年齢が確認できたらいいですよ。こんなことをしてはいけないんだけれども、仮にそうしたときに、できないでしょうから、幾つと聞いたときに、いや、十八と言った、だからおれは「この限りでない。」に入ると思うけれども、相手は、そんなこと言わなかった、私は正真正銘十四歳でしたと言われたときに、私は、申し上げたようなことがアメリカでもあったし、日本でも起こり得ますと。  だから、国外犯の処罰というのはやはり難しい面がありますよということは、皆さんの勉強会の中でそういう話が出ましたかということをお聞きしただけであります。 <0017>=林(芳)参議院議員= お答えを申し上げます。  私も先生がおっしゃることは、男性でございますのでというわけでもありませんが、よくわかるつもりでございまして、その意味で、この九条を置いておりまして、児童を使用する者以外は、この反対解釈として、過失の場合は認められないということ、除かれるということに一応して、これは国外犯にも適用がございますので、御懸念のところは、その辺のラインで、あとは運用のところできちっとやってもらわなければいけないというふうに考えておるところでございます。 <0018>=笹川委員= あとは運用という御発言がありましたが、運用というのは、あくまでも警察と検察庁の限りでありますので、それは期待ができるだろうというふうには思いますが、そういう心配もあるんだということだけ、ぜひ頭の中に置いておいていただきたいと思うんです。  では、きょうは運輸省の観光部に来ていただいたんですが、日本人が団体で買春ツアーをすると随分新聞に書かれました。ところが、日本人というのはもともと私を初めとして語学に達者な人は少ないものですから、どうしても団体で外国へ行くわけですね。そうすると、団体というのは、個人のそういう気持ちをばらばらにしてしまう。一人だと横断歩道を渡らないけれども、みんなだから行ってしまうということが実は往々にしてございます。  そこで、観光会社というのは運輸省が免許を与えているわけですね。ところが現実に、例えばフィリピンのような外国に行ったときには、そこでもうその案内は終わってしまって、切れてしまって、あとは地元の業者に引き渡してしまうということになりますと、何か起きたときに、日本の旅行会社は責任ありません、知りませんでした、現地がやったんですから現地の人の処罰ですということになると、日本人がやったものは処罰できるけれども、提供した向こうの人まで日本の法律で罰することはできません、向こうの法律で罰していただくよりしようがないのであるから。  そういうことになりますと、運輸省が、そういうライセンスを持っている業者に、観光で下請に渡すときにそういうことのないように、例えば成田だとか羽田で外国へ行くときに、けん銃の密輸だとかあるいは麻薬はいけませんというカードをいっぱい渡していますね。ああいうことの啓蒙運動をどんどんやってもらわないと、この法律をつくっただけではなかなか実行が難しいから。  そういう意味で、きょうは運輸省に来てもらったので、そういうことのないように、現地の会社だから我々の手が及ばないということでなくして、そういう責任を、やったところにはもうライセンスは国内で取り上げますよというぐらいの行政指導をぜひひとつやってもらいたい。そうじゃないと、この法案をつくっても実行が非常に難しいと思うので、この点については運輸省の答弁を求めます。 <0019>=大黒説明員= お答えいたします。  運輸省といたしましては、従来より、旅行業者が日本人海外旅行者の不健全な行動に関与しないよう指導してきたところでございますけれども、この法案が成立した際には、この法律の趣旨を踏まえ、旅行業者及び現地子会社その他代理人を含め、この法律に違反する行為に関与しないよう旅行業協会等を通じて旅行業者を指導してまいりたいというふうに思っております。  また、旅行業者、その代理人等含め、そうした行為に万が一関与した場合については、旅行業者に対し、運輸省といたしましても適切に対応してまいりたいと思っておるところでございます。 <0020>=笹川委員= 運輸省、適切というのは、なかなか役人の答弁で適切というのはあいまいなので、厳しく対処するというふうにひとつもう一遍答弁してくれませんか。 <0021>=大黒説明員= いろいろなケースが想定されるといいますか、どういうケースが生じるかということは非常に想定しがたいところがございますけれども、旅行業法におきましても、旅行業者または代理人、使用人その他従業者が、その取り扱う旅行業務に関連して、旅行者に、旅行地の法令に違反する行為をあっせんし、またはその行為を行うことに関し便宜供与を行うこと等を禁止しておるという条項もございます。  ケースによっては旅行業法に違反している場合も想定されるところでございまして、旅行業法に基づく処分、それから、そうした場合以外であっても、旅行業者に対して指導その他厳しい対応を行う必要があると考えております。 <0022>=笹川委員= 発議者の皆さんに大変御苦労をおかけしました。今運輸省にお尋ねしたのは、この法案がうまく機能し、海外から非難を受けないように協力をしてもらうという意味でこの席で発言をしていただきましたので、ぜひ、そのこともひとつ頭の中に入れていただいて御留意をいただければありがたい。時間が早いんですが、どうもありがとうございました。 <0023>=杉浦委員長= 次に、池坊保子君。 <0024>=池坊委員= 公明党の池坊保子でございます。  昨年の十一月、ストラスブルグのEUの会議に出席いたしました折に、イギリスの議員より、今東南アジアは大変な貧困にあり、生活のために子供たちが売春を強いられている、そしてそれを買う外国人もいる、これは憂慮すべきことなのではないか、東南アジアのリーダーにある日本人としてそのことについて何らかの手だてをしてほしいという要望を私はいただきました。  私も、速やかにそれは善処できるよう努力いたしますと答えました。と同時に、そういうことが行われている、そして、買う外国人がいるんだということは日本人を指しているのかなと思って大変に恥ずかしい思いがいたしました。そういう面から考えますと、むしろ遅きに失したのではないかというぐらい、私は、この法案ができますことを強く望むとともに、発議者の御努力に心から敬意を表するものでございます。  日本は、世界で最も富裕な国、経済大国と言われ、日本が風邪を引いたら東南アジアすべてが風邪を引くのだと言われるほど非常な影響力を持っております。ですから、経済のみならず、本来、東南アジアにおいて日本はすべての国の見本にならなければならない。にもかかわらず、日本は先進国の中で唯一、児童ポルノを製造、売買、保有することが違法でない国でございます。その結果、今まで世界じゅうに日本製のものが出回るという結果になったんだと思います。  カナダの税関当局の調査によると、カナダに入る児童ポルノの八〇%が日本製であるとの報告をしており、それを裏づけるかのように、アメリカの税関当局が、アメリカに入ってくる児童ポルノの出版物などのほとんどが日本のものであるという確認をしております。本当にこれは、私恥ずべきことなのではないかというふうに思っておりますので、今回の法案は、そういう意味で、児童買春、ポルノは犯罪だという、極めて当たり前のことですけれども、日本人の認識は大変希薄である、これを規定しているということを私は高く評価したいというふうに思っております。  他方、公序良俗の維持、子供の健全育成だけでなく、子供の人権を第一の目的としているのが、現行の刑法や児童福祉法などと大きく異なる点ではないかと思っております。  現在の青少年保護育成条例の取り締まりでは、買った大人だけでなく、児童も非行少女として扱われることがございます。本法案では、児童を犯罪者扱いしたり、傷を深くしたりしないよう警察官や検察官などに配慮を求めているとともに、身体的、精神的ケアやリハビリの必要性も織り込まれている点は、やはり女性でなければわからない細やかな配慮、それからいたわりがなされているのだと私は思っております。この提案理由説明の第五、第六、第七にもそのようなことが書かれておりますけれども、他方、私はこんなことも考えております。  私は文教委員をいたしておりまして、この中には当然援助交際ということも入ってくると思うんです。今、子供たちは、援助交際がふえておりますとともに、それに対しての罪の意識というのが全然ございません。私は、学校現場の中で、援助交際というのは犯罪であるんだという認識を強く持たせるよう努力しております。大阪でも、援助交際は売春ですときちんと教えております。今の子供たちは、物を盗むのは悪い、でも自分の体をどう使おうとそれは自分の勝手じゃないかと考えているような子供たちもいるわけでございます。  十八歳未満と申しますと、十六、十七はある意味でもう大人に近いのではないかと思いますときに、自己責任ということもあるのではないかというふうに考えております。本法案ではその辺のことはどのようにお考えなのかを、ちょっと発議者にお伺いしたいと思っております。 <0025>=清水(澄)参議院議員= 大変すばらしいお考えで、私たちがこの法案をつくることになりましたその趣旨を全く御理解いただいていて、私は非常に感謝をいたします。  そして、今おっしゃいましたところは、実はこの法案には啓発、教育というのが第十四条にございます。これは、刑法の特別法に教育まで入るというのはどうなんだろうというのがあったんですが、しかし、先ほどおっしゃいましたように、これまでの性風俗の問題ではなくて、本来、子供をそういう大人の性的な対象物として扱ってはいけないという、子供の人権の保障という視点から出発をしております。  そのためには、特に児童買春、児童ポルノをなくすためには、ただ取り締まるというだけではこの問題はなかなか解決できない。ですから、こういうことは今おっしゃったように、人間としての犯罪なのだ、そういう意識が、親も含めて社会全体の多くの人々の意識を変えていく必要があるという形で、教育の果たす役割という点でこの十四条に規定をしているわけでございます。  しかし、これらをもっとさらに未然に防止していくときに、もちろん親や社会的な教育はあるんですが、やはり子供自身に、自分の性的自己決定権というのはこれは人権ですから、その性的自己決定権が、今日のような非常に性情報がはんらんしている中で、本当に自分の性というものを、意思なきそういう性を強要されるということとか、また、そこに深い自分の権利としての性という問題を自覚できるような性教育、そういうものをもっと徹底していかなきゃいけない、これが非常に日本では欠けているのではないか。  そういうことで、ここではやはり、十分な論議をしてまいりましたけれども、この法律が通った後これらがどういうふうに具体化されるか、そこで今後私たちはフォローアップしていかなきゃいけないんじゃないか。特に、自分がそういうものを要求されたときにはノーと言える権利、子供自身に子供にはこういう人権があるんだという子供の権利の教育を徹底しよう、そういう意思がここに込められております。  以上です。 <0026>=池坊委員= 十八歳未満と申しますと、私なんかが考えますと、十六、十七はもう大人なんじゃないか。十六歳で結婚することができるわけですから、十七歳だったら子持ちのお母さんもいるということで、私は、むしろもうちょっと低く下げた方がいいんじゃないかと思ったぐらいなんですけれども、児童福祉法も、それから子どもの権利条約も十八歳未満までを児童とみなしますから、それに準じておつくりになったというふうに認識しております。  例えば、小さな、十四、十五ぐらいの子供で、今、児童虐待ということが盛んにございます。それで、その中には性の虐待というのがございます。お母さんがあっせんしたり、あるいは義理のお父さんに犯されたりということがございます。その辺のことはこの中には含まれないんでございましょうか。 <0027>=堂本参議院議員= 優越的地位ということで、例えば施設の施設長とか学校の先生、あるいは親というのを本当に議論してまいりました。しかし、今回の法律の中にはそれが規定されていないという状況です。  それから、先ほどおっしゃいました、援助交際は悪いということで大阪でそういうふうにしていらっしゃると。私も文教委員をしていたものですから、援助交際についてはさんざん議論してまいりましたけれども、十八歳未満でもこの法律の場合にはあくまでも買春で、対価を得た場合のみ罰則の対象になっておりまして、十八歳以下の子供たちの性的な自己決定権という領域ですべてが悪いというように規定していないということをちょっとつけ加えさせていただきます。 <0028>=池坊委員= これは施行後三年に見直すというふうに書かれてございますけれども、この点においては見直さないでこのままにするのでしょうか、あるいは、買春だけでなくて援助交際なども含め、それから親たちのそういう指導とかあるいは教育の面までも拡大していらっしゃるおつもりか、ちょっと将来的なことを一言伺いたいと思います。 <0029>=円参議院議員= 今の御質問に即答えになるかどうかわかりませんけれども、先ほどの援助交際のことでちょっとあいまいだったので補足させていただきますと、まず、いわゆる援助交際は、対償、すなわち児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を児童に供与し、またはその供与の約束をして当該児童に対して性交等をするものであると認められる限り、いわゆる援助交際において、児童と性交した者の方が、十八歳未満の児童ではなくて、いわゆる買うというかその買った人の方が児童買春罪に該当するわけです。ですから、大阪府などで子供の側が取り締まられるというようなことは、今回の児童買春の法律とは全く逆になるわけです。  それから、今先生がおっしゃった優越的な地位のことは、先ほど堂本議員からもお話がありましたように、さまざま議論されましたけれども、入れませんでしたのは、もともと性的搾取と申しますのは、性的に大人が子供を物として使用するということが含まれております。その使用する性的搾取や性的虐待ということは、いわゆる年少者で力のない子供たちを大人が利用するわけですから、そこに既に優越的地位等が入っているのではないかと私は考えております。 <0030>=池坊委員= 次に、児童ポルノの単純所持についてお伺いしたいと思います。  先進国、イギリス、オランダ、ドイツ、カナダなどでは、これを処罰するところが多くなっております。スウェーデンもことしから単純所持を処罰対象にするといたしております。つまり、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方なんだと思います。日本では、プライバシーの介入といった意見が強く、この法案では外されていると思います。そのことについて、いろいろな議論がなされた結果だと思いますので、どのような経過を経たかを簡潔にお答えいただきたいと思います。 <0031>=大森参議院議員= まず、この法律は、児童ポルノの頒布や頒布等目的での所持等の行為が、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときは、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり、また、児童ポルノに係る行為については国際的な対応が強く求められていることから、かかる行為を処罰するものであります。  この趣旨から考えて、いわゆる単純所持というものを処罰するかどうか、非常に大きな問題となりました。自社さ案の方には出ておりました。  それで、ほかの諸外国の例がございますけれども、ただ諸外国で、みんな同じ形で処罰しているところもあるし、処罰していないところもある。また、処罰しているところも、特に違法性の強いものに限って処罰するもの、あるいはその所持する主体が親とか監護者でないものとか、こういう違いがございます。それから、スウェーデンの場合も、たしか既にこの児童ポルノ禁止法案というのがありまして、その議論から続いて単純所持に至ったというふうに聞いております。  今回、自社さ案では明文がございました。「何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。」という規定がございました。刑罰法令でございますから、禁止行為というもの、特に違法性を問題として処罰するのであるならば、罰則を設けるだろう。そして、罰則を設けないのであれば、いたずらにこういう規定、特に「自己の性的好奇心を満たす目的」という、その所持している者の内心にまで入り込む文言がございますので、処罰しないのであれば規定を設けるべきではないだろう、こういうことになりました。  それで、いろいろ議論しまして、まだこの段階では、例えば、それがいいか悪いかは別としまして、銃器とか薬物とか、こういうのは所持自体禁じておりますけれども、これと同じような禁制品、極めて違法性の強いものという社会通念が今の日本社会に出ているかどうかということが問題になりまして、やはり刑罰を科すということは重大な問題ですので、もう少し様子を見て、三年後の見直しのときに検討しよう。  私たちが望むことは、この法案の成立、施行によりまして、児童ポルノは非常に違法なものなのだということを広く啓発して、また皆さんにこういう意識を持っていただいて、そして国民一般の皆様が、こういうものは個人であっても所持させるべきではないという社会的合意といいますか、これができましたときには処罰すべきであろう。その場合には、目的を余り記入しないで、何人も所持してはならない、こういう形になるのではないかというふうに考えております。 <0032>=池坊委員= 私も、そういう意味では、まず意識変革というのが必要と思います。  先ほど申し上げたように、児童ポルノの存在自体が子供の人権侵害だという考え方は、日本人の中には全然ないと言ってもいいと思うのですね。ですから、まずそれを浸透させることが必要なのではないか。法律というのは、いろいろな段階を経なければ日常生活の中で機能をしてまいりませんから、今大森発議者がおっしゃったように、三年後に見直すことの一つに入れていただけたらなというふうにも思っております。  それから、国際的には、コンピューター合成の疑似ポルノというのも規制の対象になりつつございます。日本では、コミックは、実在の児童が被害者でなければ対象外になっていると思うのです。  インターネットなどで、頭部は実在の児童で、裸の体の部分をコンピューターグラフィックスでつくり、合成したものなどが流れておりますけれども、このような行為は、この法案ではどのように処理されていくのでしょうか。 <0033>=大森参議院議員= ちょっと整理させていただきます。  まず、コンピューターグラフィックスなどの合成写真ということですね。これは、児童の姿態そのものは存在するという前提でございましょうか。 <0034>=池坊委員= つまり、顔はその少女である。つまり、全体が写された場合には、これは当然に対象になりますよね。ただ、それが合成されていて、顔は少女の顔だけれども、体がちょっとグラフィックになっている、だからそのものではないということ。あるいはその逆で、顔はちょっとぼけていて、体が全部その少女の体。いろいろな合成がこれからできると思うのですけれども、そういう場合には、この処罰の対象というのになるのでしょうか。これから巧妙にいろいろな策を弄してくると思いますので、それについてちょっと御説明いただきたい。 <0035>=大森参議院議員= 児童ポルノとは、実在の児童の姿態を描写したものであります。したがって、絵の場合にもなり得る場合もあるというのは、それが実在する児童の姿態を描写したものであり、性欲を刺激もしくは興奮せしむ、これに当たる場合に、「その他の物」に入り得ると理解しております。  それから、今おっしゃったように合成写真等とかですが、実在の児童の姿態が頭部のみである場合には、その頭部の部分のみでは、第二条第三項各号の児童の姿態に当たると認められない限り、児童ポルノには当たらないというふうに考えております。  それから、この問題につきまして、前回、実は木島委員の方から質問をいただきまして、合成写真を利用したいわゆる疑似ポルノについては児童ポルノには当たらないというふうなお答えをいたしました。それで、一部正確でありませんでしたので、改めて述べさせていただきます。  この法案では、児童ポルノとは児童の一定の「姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」をいうとされておりまして、ここに言う児童とは、十八歳に満たない者、すなわち実在する児童を意味します。  今回の法案の中では、外国の立法例にあるような、疑似ポルノについて明文の規定は置いておりません。したがって、写真等が実在する児童の姿態を描写したものであると認められない限り、児童ポルノには該当しないことになります。  ただ、合成写真等を利用しました疑似ポルノの中には、実在する児童の姿態を描写したものであると認定できるものもあると考えられ、このようなものについては、今回の法案の児童ポルノに当たり得ると考えます。  ですから、先ほどの御質問ですと、顔が少女で、体が何か全然違うもの、これは各号に当たりにくいと思います。  それから、体がまさに実在する児童の姿態でありまして、多少手が加えられている部分があるかもしれませんが、その描写物が実在する児童の姿態と認められる場合には、このポルノに当たり得る場合もあるというふうに考えます。  それから、どういう場合がというのは、具体的な事案における証拠に基づく事実認定の問題となりますが、実在する児童について、その身体の大部分が描写されている写真等を想定いたしますと、そこに描写された児童の姿態は実在する児童の姿態に該当いたします。その写真に描写されていない部分に他人の姿態をつけ加えて合成したとしても、ある児童の身体の大部分を描写した部分が実在する児童の姿態でなくなるわけではない。当たる場合もあり得る。  非常に複雑な説明になりましたが、こういうことです。 <0036>=池坊委員= 何で細かいことを伺ったかと申しますと、これから業者はいろいろな法の目をくぐって巧妙なことをつくり出していくと思います。このような場合、例えば、顔の部分だけかわいらしい少女が使われた、その少女の心身に大変に深い傷を負わせるのではないかと思いますので、こういうことも含めましてインターネットの規制というのはこれからも必要になってくると思いますので、三年後の見直しの中に私は入れていただきたいというふうに望んでおります。  次に、警察の方にちょっとお伺いしたいのですが、この法案をつくるきっかけの一つとして、スウェーデンのECPATというNGOがあると思います。これはユニセフからも大変な信頼を得ているNGOでございますが、これに協力するインターポールを通じて警察とも交流があったかのように聞いておりますけれども、これまでにどのような協力をしていらしたかを伺いたいと存じます。 <0037>=小林(奉)政府委員= ECPATとの交流についての御質問でございますが、警察庁におきましては、本年四月にインターポールが主催いたしました未成年者に対する犯罪に関する会合に、ECPATを初めとしますNGOとともに、その会議に参加させていただいているという状況でございます。  また、一九九六年八月に、ECPATを含むNGOとユニセフ、スウェーデン政府との共催によりストックホルムで開催されました児童の商業的性的搾取に関する会合に警察庁の職員を派遣しております。また、その会議のフォローアップの会議が東京等でも開催されておりますが、その会議はユニセフ、ECPATが主催しておるということで、私どももそういう会議に積極的に参加しておる、こういう状況でございます。 <0038>=池坊委員= ECPATの書類を詳しく読みまして、NGOが果たす役割というのは大きいのだなということに感慨深い思いをいたしました。  では、ついでにと言ってはなんですが、もう一つ警察の方にお伺いしたいと思うのですが、これから、国際的な協力ということなくしてこの児童買春の法を施行することはできないと思います。アジアにおいて日本人が児童買春などを行ったり、児童ポルノを製造した場合に、日本においてこの者たちを処罰するためには、現地の警察と密接な協力というのが必要である、つまり、証拠を集めなければだめであるというふうに思っておりますので、これはどのような計画をしていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。 <0039>=小林(奉)政府委員= 御指摘のように、児童買春等は国際的な問題となっております。そういった意味で、国外犯についても我々として積極的に対応しなきゃいけないと考えておるわけでございます。そういった観点で、私どもといたしましては、都道府県警察とともに、外国捜査機関等との連携強化を図りつつ、情報の収集、捜査の推進等、積極的な対応に努めてまいりたいと考えております。  具体的に申し上げますと、私どもといたしましては、都道府県警察を指導いたしまして、国内におきまして、そういった国外犯が行われたんじゃないかという、そういう情報を積極的に入手するようにいたしたいと考えております。また、警察庁の職員を随時海外に派遣いたしまして、外国捜査機関等に対しまして、この法律案の、できますれば法律になりますが、その内容を周知徹底しますとともに、外国捜査機関やICPOルートを通じてその情報を収集して、積極的な事件化に努めてまいりたいと思います。  そういった観点で、私どもにおきましては、この種事犯の国外犯捜査の体制強化を図るため、今春、生活安全局の少年課に少年保護対策室を設置したところでございます。この保護対策室を中心にいたしまして、こういった事案に対して対応してまいりたい、このように考えております。 <0040>=池坊委員= 現実の問題として、東南アジアで児童ポルノを製造し、これをヨーロッパで販売した者は、もちろんこの本法案では処罰されるのですけれども、そういう人を摘発することができるというふうにお考えですか。可能ですか。 <0041>=小林(奉)政府委員= この法案によりまして国外犯の処罰規定ができるわけでございます。したがいまして、そういった国外犯について、我々としては全力を挙げて摘発するように努めてまいりたい、こう考えております。 <0042>=池坊委員= 処罰はできる、だけれども摘発はなかなか現実にはできないということになりますと、この法案があっても生かされないということになりますので、あとはもう警察の方のお力にかかる部分が大であると思います。こんなにいい法律ができましても、ざる法と言われないために、細かいことをやはり私は詰めていきたいなと思いますので、法務省の方にもちょっと伺いたいと思います。  この児童買春についての刑は、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」というふうに書かれて定められております。百万円以下と申しましても、何千円から九十九万円までありますので、安いお金だったら罰金ぐらい払ってもいいよという人も私はいるのではないかと思います。具体的な事件でどのようにしてその刑は決められるのか。刑罰の決め方とかいうことも頭の中におありかどうかをちょっと伺いたいと思うのです。 <0043>=松尾政府委員= 一般に刑の決定、これは具体的事件では裁判所が最後に決するわけでございますが、その決定に当たって、通常どういうことが考慮されるかということですが、例えばその犯罪の性質それから軽重、動機、方法あるいはその結果、それから社会的影響及び犯罪後の被告人の態度並びに被告人の年齢、性格、経歴、環境その他の事情が総合的に考慮される、これがいろいろな判決の中で触れられている事項ということができると思います。  今回の、児童買春をした者あるいは児童ポルノを製造した者等についてでございますが、例えば犯罪の性質でいいますと、これらの罪が、児童の心身に有害な影響を与える、あるいは児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するということになりかねない性質を有するというような、今回の法案の立法の目的といいますか、趣旨、こういったことも、この犯罪の性質を考え、処断刑を決定する上では重要な事項というふうに考えております。 <0044>=池坊委員= 私は、処罰は厳しくしないと、そういうことにかかわります当事者も、多少の罪、多少の罰金ぐらいはいいとかいうことで、いろいろな法の網の目をくぐり抜けることを考えてくると思っておりますので、細かいことを言い過ぎだとお思いかもしれませんけれども、現実には法を施行するには、細かいことの周辺整備ということがなされてこそ初めて法は生きていくというふうに私は思っております。  これは、世界の中で、日本が経済のみならず、良識ある国民だということを認知されるためにもぜひ必要な法律というふうに私は認識しております。そして、それがただ成立されるということだけでなくて、細やかに実行されるということを願って、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。 <0045>=杉浦委員長= 次に、福岡宗也君。 <0046>=福岡委員= 民主党の福岡宗也でございます。  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。  この法案の問題は、一九九六年にストックホルムにおいて開催をされました国際会議において、我が国が児童ポルノ製造販売の輸出国であるとして、また子供買春ツアーをアジアに多数送り出している加害国として指摘をされました。そして、これらの行為が子どもの権利条約に違反をする行為で、これを是認しているんではないかという国際的な大きな非難をこうむることになったわけであり、我が国としましては、国際的な信用を回復するためにも、我が国の児童の権利を守るという立場からも、早急にその対応が迫られていた問題であるというふうに理解をしておるわけでございます。  その意味におきまして、このたび、発議者の皆様方が中心となりまして、研究調査をされまして、本法案が提案をされ、参議院で可決をされましたること、心より敬意を表するものでございます。  ただ、問題は、この法案を子細に検討しますと、若干いろいろな問題があるわけでございます。そして、その問題につきましては、いろいろな角度からもう既に同僚議員の方から御質問がございました。しかし、私といたしましては、本法案が、刑罰法規の新設という、国家が国民に対する最も重大な人権制限、また侵害ともいうべき刑罰を適用する、こういうような内容を含んでおりますので、罪刑法定主義の要請を十分に充足をしておるか、その他、人権上の配慮は十分かという点、さらに、被害者である児童というものは当然捜査の対象にされてくる、また公判などでも証人等に呼ばれる、それが大きく報道されるという第二次的な被害というものが当然に予想されるわけであります。したがって、この問題については万全であるかどうかということであります。  さらに、これらの問題については、処罰するための法益、目的こそ違いますけれども、他の法律によっていろいろと規制があるわけであります。例えば売春防止法、刑法の強姦、わいせつ罪というような刑罰法規というのが既に存在をしているわけでございます。これらの法規との間の整合性、それから構成要件の相違点、刑の均衡というようなものについて、その違法性の程度に均衡しておるかどうかなどについて十分に討議がなされなければならないなというふうに考えているわけであります。したがって、この点について、ちょっと私が気がつきました点だけ、二、三御質問を申し上げたい、かように存ずる次第でございます。  そこで、まず第一番に、いずれの法規も、法律の目的というのは、その法律の理念というもの、さらには運用を決定づける最も重要な基本的なものであるというふうに考えております。そこで、本法案におきましても、第一条において目的が明記をされておりますので、この目的の内容、ちょっとわかりにくい点もありますので、まず簡単に御説明をいただきたい、こういうふうに思います。 <0047>=円参議院議員= お答えいたします。  この法律の目的は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみまして、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることによって、児童の権利の擁護に資することでございます。  ただ、児童買春や児童ポルノに係る行為を放置しますことは、児童買春の相手方となり、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、まだそのような対象となっていない児童につきましても、健全な性的観念を持てなくなるなど、その人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながりますので、そこから児童一般を守ることもこの法案では目的としております。そこで、この趣旨を、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えると表現させていただいたものでございます。  したがいまして、児童の性的自由を保護するというのがこの法案の第一次的目的でございますが、同時に、以上述べたようなことも目的とすべきであると私どもは考えました。 <0048>=福岡委員= ありがとうございました。  今の御答弁をお聞きしておりますと、一言で言いますと、本法案の目的は、あくまでも児童の権利を守る、虐待、搾取から守るというところがまず第一義的なものであって、あとそれにプラスするところは、その被害に遭った児童を救済するためのケアという問題を含んでいる、こういうことで、それ以外の一切の目的は、これはないということでお伺いしていいかということであります。  といいますのは、売春防止法の目的は健全な性風俗の維持であるとか、刑法のわいせつ罪の目的は善良な風俗の維持確保というようなこと、さらに児童福祉法においては健全育成というように、法益というのがそれぞれ目的の中にもあるわけですけれども、そういった目的というのはこの法案の中にはないので、児童を指導しようとか補導しようとか、それから相手になる者も十分な取り締まりをしようとかというような趣旨は一切含まれていない、かように理解をしてよろしいでしょうか。 <0049>=円参議院議員= あくまで児童を性的搾取、性的虐待から守り、その児童の人権を保護するものと考えております。 <0050>=福岡委員= ありがとうございました。  私もそうありたいということで、そういうような理解だということならば、私も安心をいたしたわけであります。  そこで、今のことに関連をいたしまして質問をしたいのでありますけれども、それは、児童買春の被害者となった児童、それから児童ポルノのモデルになった児童などについて、少年法のいわゆる虞犯少年、これは少年法第三条の一項三号というのがありますけれども、いわゆる少年審判に付することのできる少年としてこういう虞犯少年というのがあります。それからまた、不良少年という概念もあります。こういうものに該当するとして捜査の対象にされて被疑者的な扱いを受ける、ひいては少年審判に付される、こういうようなことはあり得るのかどうなのか。  一見しますと、児童買春の相手方となる行為は、いわば売春防止法に言うところの売春行為にも該当する可能性があるわけでありますし、それからまた、十四歳以上の児童については刑事責任能力もあるということですから、取り締まりをしようと思えば当然にできるような感じもするわけであります。そうなれば、これは、本件でもって買春した人は処罰はされますけれども、同時に、児童の方についても、そういう法的な不利益というものは当然降りかかってくる対象になりますし、捜査のやり方いかんによっては、相手方の大部分がこれにひっかかってくるような取り締まり方法というものもあるのではないか。この点が、私、本法案について一番懸念をしていたところでございますので、この点につきましては、発議者とそれから法務省、それぞれ簡単に御答弁をお願いしたいと思います。 <0051>=大森参議院議員= 今先生おっしゃられたように、少年法の審判に付すべき少年の中に、犯罪少年、触法少年、そして虞犯少年というものが類型化されております。  それで、犯罪少年が、罪を犯した少年、これは刑法の規定によりまして十四歳以上になります。それから、触法少年、十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年であります。いずれにしても、刑罰法令の構成要件に該当するような行為をした者が対象となります。  それで、このような買春の相手方となった児童の場合ですけれども、こういう行為が、先ほど福岡先生、売春行為に該当し得るというようにおっしゃったわけですが……(福岡委員「いや、私が問題にしているのは虞犯少年だけです」と呼ぶ)虞犯少年だけですか。わかりました。  虞犯少年の要件につきましては、少年法の各号に当たるその要件を満たすかどうか、これは個々に買春の相手方となった児童、それから、例えば児童ポルノの対象になった児童につきましても、日ごろの素行がどうであるかとか、そのさまざまな行為態様というものをこの虞犯少年に当たるかどうかという基準に従って判断するわけでありまして、虞犯少年等、少年法の適用によってするということについてはこれまでと変わらないだろうと思います。 <0052>=福岡委員= ちょっと答弁の最終的な結論の部分がよく了解できなかったんですが、要するに、児童買春行為の相手方となったという場合に、この虞犯少年の要件であるところのイからニまでの事項というのがあります。例えば、保護者の正当な監督に服しない性癖があるとか、正当な理由なく家庭に寄りつかないとか、犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りする、自己または他人の徳性を害する行為をする性癖がある。  そうすると、これは、ニの徳性を害するということにも該当しますし、犯罪性のある人と交際をするというような問題、それから、両親の言いつけを聞かないというような問題もやはり虞犯少年の要件ということですから、いわば当然に、児童買春の相手方となって対償をもらったような場合には該当しそうな行為が列記されているので、こういった場合に、児童買春をした大人を処罰するのはいいんですけれども、同時に、捜査官の捜査の対象という形に取り上げられるということについては、私は取り上げてもらっては困ると思っているんですね。  そうしないと、両方とも被疑者扱いということの取り調べになってきて、児童の人権が守られないという取り扱い。単純被害者の場合ですらもいろいろな形の二重被害が起こっておるわけであります。先ほど言いましたように、証人に出る、取り調べの段階で厳しくまた道徳的な問題でも追及されるとか、先ほども御質問がありましたように、援助交際はけしからぬ、道徳観念がいかぬのだという観点は確かにあります。いわゆる純風な性道徳に反する行為をおまえしておるんじゃないかという取り調べを受けるということになると、児童を守るどころか、児童弾劾法となりかねないというところを恐れているわけですから。  その辺について明確に、ならないんならならない、なってもそういう取り扱いをしない、それはどういうことで取り扱いをせずに済むのかという点を明確にしてもらわないと、ちょっと安心できないということであります。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0053>=大森参議院議員= 虞犯少年の要件については、今先生の方から述べていただきました。  要するに、これは認定の問題でございまして、児童買春の相手方となった児童、それから、児童ポルノの対象の児童、この行為等、振る舞い等、これが虞犯少年に当たるかどうかという判断でありますので、ある場合には当たる場合もあるでしょうし、ある場合には当たらない場合もある。したがって、言えますことは、児童買春の相手方となった児童が直ちに審判の対象とはならない、こういう言い方ができると思います。  それから、今、被疑者扱いと言いましたが、これは虞犯少年についてもということでしょうか。そこのところにつきましては、そういう懸念がありますので、捜査、公判上の注意ということで特に規定を設けております。 <0054>=福岡委員= 今の御答弁をお聞きしても、やはり虞犯少年という対象になって、場合によっては捜査ということがあり得るという可能性を残しておるというふうに私は理解をいたしたわけでありますけれども、やはりその点については、運用上において十分な配慮をなされて、いきなり買春行為をした人と同レベル的な扱いは絶対に避けるというようなことをここで確認をしておいていただきたいと思っております。  それから次に、本法案につきましては、児童買春、児童ポルノの対象とされておる児童の年齢を十八歳未満の児童と定めております。  我が国の刑事責任能力年齢というものは、刑法において十四歳と規定をされておりますし、それから、民法におきまして結婚可能年齢は満十六歳とされておる。したがって、我が国の法規としては、遅くとも十六歳においては責任能力もあるし、性的行為についての決定能力というものもあると考えているわけであります。また、外国の立法例も、いわゆる児童を買春行為から守るということについては、ドイツは十四歳、フランス十五歳、ベルギー十六歳というふうにされております。  これらの問題を勘案しますと、本案の十八歳というのは高きに失しているんではないかという感じがするわけであります。そして、それは同時に、半面的に、十分に成熟をし判断能力のある児童についての性的意思決定権というものも制約をする結果にもなっているわけであります。そういう点からしますと、やはり、一部の人が言っているような義務教育年齢までに下げる必要があるという主張ももっとものような気がいたします。  そういうような観点で、この対象の児童年齢を満十八歳と定めたその理由について発議者と法務当局、これで他の法令との整合性がいいかどうかは法務省の方で御答弁をお願いいたします。 <0055>=円参議院議員= 先生が今おっしゃったようなさまざまな国内の法律や、また諸外国の法律について、この年齢については随分議論が交わされました。その結果でございます。  ですから、今先生がおっしゃったようなことは繰り返しませんけれども、御懸念のように、子供の定義というものは必ずしも一義的に定まっているわけではございませんので、先生も御存じだと思いますが、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というのがございまして、その条約の中で、その対象となる児童を十八歳に満たない者とすることを原則としております。そして、この条約は世界的に普及しておりまして、この十八歳という年齢は、子供と大人を分ける緩やかなメルクマールになりつつあると私は思っております。  また、我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者となっております。  これらの条約や法律の目的と今回つくります法律の目的から考えまして、対象とする者の範囲も同一ですべきであるという結論に私ども達しまして、十八歳未満の者をこの法律に言う児童としたものでございます。  ちょっと今、林議員からも指摘がありましたが、先ほど先生がおっしゃった、婚姻年齢が女性の場合我が国は十六歳でございますけれども、この十六歳ということに関しましても、児童福祉法では同法の対象となる児童は十八歳に満たない者でございますが、かつ、それは女性の婚姻による例外を認めておりませんことは先生も御承知のとおりと思いますので、そういう結論に達しました。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0056>=福岡委員= どうもありがとうございました。  この問題は確かに難しい問題でありますけれども、児童福祉法の関係のは姦淫をさせる行為というのが処罰の対象になっているという制約がありますので、同一ではないとは思いますけれども、問題は、諸外国について、保護すべき年齢は高く、しかしながら処罰するときは意思決定年齢にという考え方もあるものですから、運用の上でまた今後御検討をいただきたいというふうに思っております。  それから次に、本法案の第二条の三におきましては、児童ポルノを定義いたしております。  これは、ちょっと長いもので省略をしますけれども、要するにどういうことかといえば、これを見ますと三つの分類になっているわけです。まず第一は、性交とか、また類似行為というものについての姿態、それから次は、性器に接触をするというものの姿態、それからさらに、第三番目は、裸体または一部露出みたいなものの姿態、この三つの姿態ということがこれに当たるんだ、こういう考え方であります。後半の二つの問題については、それにさらに歯どめをかけまして、性欲を興奮させまたは刺激することをいう、こういう要件にしておるわけであります。  そして、これと対比する意味で、刑法の百七十五条におきましては、わいせつな文書、図画その他のものを頒布等の行為をした者、これは二年以下の懲役という形になっております。  わいせつなものというものについては、やはりいたずらに性的興奮を刺激する、善良な性的道徳観念に反するようなものとか、羞恥嫌悪の情を抱くようなものというようなことが今までの判例の積み重ねではっきりしておるわけでありますけれども、これはどう見ても、先ほど言った性的興奮をさせるような姿態だということや、それから当然性交行為自体を見ている。それで、単なる裸や一部露出であってもそういう刺激をさせないものはいいのだということだとすると、結局わいせつの概念と同じではないかという感じがするわけですよ、はっきり言いまして。したがって、わいせつ物とほとんどの場合は重複するようなものが児童ポルノであるのだ。  そこで、ほとんど違わないか、違うとすれば、両方に該当する行為はどんなものであって、例えばわいせつ罪には該当はしないけれども児童ポルノには該当するというようなものは典型的なものとして何があるか、こういうようなところをはっきりさせておきたいというふうに思うわけであります。そこで、その辺についての、両構成要件の相違点について御説明をちょっといただきたいわけであります。 <0057>=大森参議院議員= まず、刑法第百七十五条の「わいせつ物頒布等」の中に出てきますわいせつの意義につきましては、今委員もおっしゃいましたが、最高裁の判例がありまして、正確に申し上げますと、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」というふうに判断されております。ですから、刑法のわいせつ物頒布等につきましては、「わいせつな文書、図画その他の物」ですが、すべてに「わいせつ」がかかるという意味で、この概念において判断されることになります。  児童ポルノの方は、まず一号ポルノと言われるものにつきましては、性交または性交類似行為に係る児童の姿態に関するものでありまして、このときには、こういうものであれば、それだけで違法性が強いものとして処罰の対象としております。そして、二号、三号につきまして、一定の児童の姿態を記載してございますけれども、これにつきましては、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こういう文言を入れてございます。  そこで、最高裁判例のわいせつ概念とどこが違うかといいますと、まず、「徒らに」ということはこちらは要求しておりません。つまり、過度にという意味ですけれども、過度であることを要しないということです。それから、「普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であるか否かについて、論ずるまでもなく規制すべきものとした趣旨でございます。  このために、児童ポルノの方につきましては、刑法のわいせつに該当しないものも含み得ることになります。 <0058>=福岡委員= そうしますと、わいせつという抽象的概念といいますか、先ほど言いましたように、善良な性的道徳観念に反するとか「徒らに」というような要件というのはなくて、形式的にこれに該当すればいいというような感じの御答弁だったというふうに思うのです。  そこで、ついでにもう一点だけお聞きしておきます。  わいせつ行為の場合に、芸術作品かわいせつかというような問題が非常に問題になりまして、いろいろな判例がありますけれども、最高裁は、最終的な判例としては、芸術作品であってもわいせつ行為であるということを免れることはできないというような結論であるというふうに思っておりますけれども、その点については、本件の場合は多少そういった問題が論議されましたでしょうかどうか、ちょっとお答えをいただきたいというふうに思います。 <0059>=大森参議院議員= まず、たしか前回の衆議院法務委員会の質疑でもそのような質問をいただいたかと思います。いずれにしましても、ここで言う児童ポルノにつきましては、この第二条第三項各号に該当すれば児童ポルノに当たるというふうに考えております。  それから、芸術作品の場合はとよくおっしゃるのですが、例えば、芸術作品というのは客観的な基準があるわけではございませんで、確定したものはございません。よく、これは芸術作品だと本人が思っているだけのような場合もございます。したがって、言えますことは、芸術作品であるかどうかはこれとは関係なく、児童ポルノの判断につきましては、あくまで今申し上げました一号、二号、三号ポルノ、この構成要件に該当するかどうか、これで判断することになります。 <0060>=福岡委員= ということは、端的に言うと、芸術性の有無というような問題は判断基準にはならない、そういうことで理解してよろしいですね。 <0061>=大森参議院議員= 芸術性の有無云々ということは、表現の自由との関係で、刑法のわいせつ物かどうかでは問題になるところでございます。芸術性の有無が問題にならないとおっしゃる場合に、先生がどういうことを頭の中に描いておられるかちょっとわからないので申し上げますが、例えば、本来、芸術というものは時代を超えて多くの人がその価値を認めるものというふうに言うことができるかと思うのですが、そういう真の価値が付与された場合には、この「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という、これは一般通常人を基準にいたしますから、この認定のところで多少の違いが出てくるのかという気がいたします。 <0062>=福岡委員= 私が質問しました趣旨は、先ほどの御答弁の中に、「徒らに」ということがないということだから、目的的に、芸術作品をつくるということで、客観的に多くの人が芸術作品として認めるような絵画とか写真とか、そういうものについては、やはり芸術性があるからこれらに該当しないというのではなくて、そういうものであっても、ここの要件でありますところの「性欲を興奮させ又は刺激するもの」を視覚によって認定することができるというものに該当するとすれば、芸術性があろうがなかろうが、「徒らに」という目的的な概念は判断基準にならぬということですから、判例もちょっとそれに近いですけれども、だから当然、これはもう処罰の対象のポルノというふうになるのではないかなと僕は理解したのですよ。「徒らに」というのが判断基準にないとおっしゃるから。 <0063>=大森参議院議員= わかりました。先生のおっしゃるとおりであるとこちらも理解しております。  要するに、この構成要件に該当するか否か、この判断によって、児童ポルノであるかどうかが決まります。 <0064>=福岡委員= はっきりしました。  客観的なそういう基準に合致するかどうかで、主観的な要素というのは加味の対象にはちょっと難しい、こういうような御主張だというふうに思いますので、理解をしておきます。  それから次に、刑法百七十五条わいせつ物の頒布等の罪の具体的な行為というのは、頒布と販売と公然陳列、この三つなんですね、行為が。ところが、今回の児童ポルノの罪は、そのほかに賃貸、製造、所持、運搬、輸入、輸出と、極めて多岐にわたっているのでありますけれども、こういった行為まで処罰するというのは、それぞれの持っておる法規のいわゆる保護法益という観点からこういう相違が出るのかどうか、また、その他の理由があるのか、ちょっとお聞かせを願いたいわけであります。 <0065>=大森参議院議員= 処罰範囲の違いというものは、今先生触れられたとおりに、それぞれの法律の目的によって影響してくると思います。  刑法のわいせつ物頒布等の罪につきましては、これは性風俗に対する罪ということです。ところが、こちらの児童ポルノ頒布等の罪は、多分時間をお気になさっているでしょうから繰り返しませんが、先ほど円委員等がその目的として述べたところでございます。このような法の目的から、今おっしゃったところでどこまで処罰の対象とすべきかということで、刑法とこの法案との差ができたものでございます。 <0066>=福岡委員= どうもありがとうございました。  そこで、次に、本法案においては、自由刑だけで申し上げますと懲役三年以下。それから刑法では、百七十五条でやはり懲役二年以下ということで、法定刑に一年の差があるわけですけれども、これはどうしてこういう差が出てくるのか、その合理的な理由があるのかどうかということです。 <0067>=大森参議院議員= 刑法のわいせつ物頒布等の罪が二年以下の懲役なのに、児童ポルノの頒布罪というのが要するに刑罰が非常に重くなっていること、これはそれだけ違法性が重大だと考えるからでありまして、性風俗に対する罪と、それから、もう繰り返しませんけれども、円発議者として説明しました本法案の目的から考えまして、このような児童ポルノに該当するものはより違法性が高い、強いものである、こういう判断が働いております。  それから、例えばわいせつ物は、刑法の方ですと文書も入りますが、図画も入ります。その場合には漫画とか絵とかそういうものも入りますが、法律の目的の違いから、写真、ビデオテープその他の物ですけれども、これは実在する児童の姿態を描写したもの、こういう制約がありますので、児童ポルノに当たる場合にはより違法性が強いことは容易に御理解いただけると思います。 <0068>=福岡委員= そうしますと、結局、保護法益の面が、一般的な性風俗というような抽象的なものよりも、具体的な、モデルになった児童というものの人権保障、人権侵害的な要素というものを強く取り上げて違法性が高いという判断をした、こういう趣旨でいいわけですね。  それから次に、児童買春の規定と相対応するものといたしまして、刑法においては強姦罪と強制わいせつ罪という規定がございます。そして、それぞれの規定につきまして比較検討をちょっとしなければならないかというふうに思うわけでございます。  本法案におけるところの買春行為は二条の二で規定をされておりまして、要約いたしますと、対償を供与するということがまずこの要件になっておって、性交と性交類似行為、性器等の接触または接触させる行為ということになっていると思います、一言で言いますと。そして、その行為をした者は三年以下の懲役ということに処罰される、こうなっているわけでございます。  一方で、刑法の方は、百七十七条において、十三歳以上の女子に対しては暴行、脅迫を要件として強姦罪が成立するけれども、十三歳未満の女子に対しては、暴行、脅迫をしなくても、姦淫行為をしたということだけで懲役刑に処せられるということであります。そして、その刑も重くて、二年以上の有期懲役ということで、かなり最高刑は高いということであります。  それからまた、百七十六条の強制わいせつの罪としましては、十三歳以上の婦女子に、暴行、脅迫してわいせつな行為をした場合。十三歳以下の場合には暴行、脅迫がなくてもわいせつ行為が成立する、こういう二本立てになっているわけでございます。  そこで、言うところのわいせつ行為というのをよく考えてみますと、結局、ポルノの先ほどの要件でありますところの行為、それとやはり概念的にほとんど同じような感じ。具体的に考えてまいりますと、対償を供与しというのはございませんけれども、性交は強姦の方でありますし、それからあとは性交類似行為、性器接触とか、それから性器をさわらせるというような行為も、結局強制わいせつ罪の従来の判例上で認められているような行為だと思うのですね、ほとんどすべてが。  これはどういうような相違点があるのか、重なり合うところと、それからはみ出すといいますか。それから、どちらの方がむしろ広いというふうに考えるのか。私ども検討をしましたけれども、なかなかわかりにくいので、簡単に説明をいただきたいというふうに思います。 <0069>=円参議院議員= 先生のおっしゃった本法案の児童買春罪の構成要件と、それから刑法第百七十六条、第百七十七条との違い、先生今一応刑罰の違い等はお話しなさいましたけれども、とりあえずこの児童買春罪の構成要件は、児童等に、「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすること」でございます。  これに対し、強制わいせつ罪の構成要件は、十三歳以上の男女に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること、及び十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をすることでありまして、おっしゃるとおり。また、強姦罪の構成要件は、暴行または脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫すること、及び十三歳未満の女子を姦淫することでありまして、これらの罪の構成要件は、十三歳以上の者に対する場合については、暴行または脅迫が要件とされております。また、十三歳未満の者に対する場合については、対償の要件がないこと等の点において、児童買春罪とは異なるものでございます。  この児童買春罪と強姦罪、強制わいせつ罪の性質の相違についてでございますけれども、児童買春罪は、児童買春がその相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものでありますことから、かかる行為を処罰しようとするものであるのに対し、刑法の強姦罪、強制わいせつ罪は、個人の性的自由を保護法益とするものでございます。 <0070>=福岡委員= そうしますと、やはり保護法益の相違点ですね。そういうような点、片方は個人の性的自由というものを保障するというのが刑罰の保護法益と私も理解しておりますけれども、そういうことよりももっと広いところがあるということだということです。それからもう一つ、今のお話を聞いておって思ったのは、やはり十三歳以上の人たちが、暴行、脅迫がない場合は野放しになってしまう、これをやはりきちっとしないといけないのだという御趣旨もあると。そこのところが違うところの主なものですね。  そうしますと、あとの、中身である性交というものについては、これは姦淫という言葉を刑法では使っておりますけれども、これは同意語でいいわけですよね。そうすると、従来の強姦罪だけでいけば、十三歳以上の婦女子に姦淫をした場合には暴行、脅迫がなければ逃げられてしまうということ、特に十八歳未満の人が逃げられるわけですね、十八歳以上の人はフリーになっちゃいますから、本法案でも。だから、十三歳以上十八歳未満の人を、いわゆる対償という構成要件を付加することによって処罰するのが目的だ、こうお伺いしていいですね。 <0071>=円参議院議員= これまでは暴行や脅迫がなければ十三歳以上十八歳未満の児童にわいせつや姦淫をした場合に取り締まるのは難しかったということがございますが、今回はそれを対償の供与というようなことで取り締まることができるとしたものでございます。 <0072>=福岡委員= よくわかりました。  そこで次に、児童買春については行為が列挙してありますけれども、いわゆる性交から性器接触まで、これはすべての行為というものを一括して同じ刑、三年以下としているわけです。ところが、強姦罪と強制わいせつ罪は、強姦罪の方は二年以上ということですから、上は十五年まで行く可能性があるわけでありますし、それからさらには、強制わいせつの方は六月から七年以下ということで、もう法定刑としては格段の差がある。これはどういうことかといいますと、姦淫行為そのものの自由権の侵害というようなものは極めて大きい。その他の類似行為であるとか、接触行為とかというわいせつ的な行為とは比較にならないという考え方が基本的に刑法にはあると思うのですね。  その点について、やはり児童買春の場合でも、姦淫行為にまで及んだ場合と、性器にちょっと接触をしたという場合とでは違法性において大きな違いがあるとどうしても思わざるを得ないのですけれども、この点、二つの刑に分けて規定するということは考えなかったのかどうか。また、考えなかったとすれば、その理由だけちょっと聞かせていただきたいと思います。 <0073>=大森参議院議員= この二条二項の中には、児童買春の構成要件が規定されております。そして、これを受けての法定刑が三年以下の懲役または百万円以下の罰金でございます。要するに、いろいろな行為態様によりまして、性交した場合あるいは性交類似行為にとどまった場合、あるいは性器等にさわったような場合と、その行為態様によりましてその法定刑の範囲内で適当な刑の言い渡しがされるのであろうというふうに思っております。  それから、強制わいせつの場合で、例えば十三歳未満の児童に対しましては暴行、脅迫等が要らないわけでありまして、十三歳未満の者に対する強制わいせつ等の行為につきましてはそちらの構成要件にも該当するし、こちらに該当する場合もあり得ると思います。その場合は観念的競合になりまして、重い強制わいせつの方で処罰されることになりまして、個々具体的な事例につきましては、そんなにおかしな結論にはならないというふうに考えております。 <0074>=福岡委員= 両罪に該当して観念的競合になる場合の選択はそれでいいと思うのですけれども、一罪だけが成立をした場合の、例えば対償性の要件とかいろいろなことがありますので、そういう場合ですとそれではできないので、強姦罪が二年以上の有期懲役だということになれば、これに類するような姦淫行為だけはある程度引き上げるとか、何かそういうような配慮がないと刑法とのバランス上ちょっと据わりが悪いんじゃないだろうかなということを考えます。これ以上質問しませんので、運用上、また将来の検討事項として検討はしていただきたいなというふうに思っております。これだけ申し上げておきます。  それから、第八条の買春目的の人身売買の規定がございますけれども、「当該児童を売買した者」、こういうことで対象者が規定されているわけでございます。ここで言う売買をしたというのが、どうも概念が私としてははっきりわからないわけであります。  我々、売買といいますと、民法の規定の売買概念として、一方が財産権を相手方に移転をすることを約して、相手方がこれに対して対価を支払うということによって成立するんだ、こういうふうになっております。そうしたら、児童は財産権の対象ではありませんので、ずばりは来ないし、それからまた、さらにこの場合に、児童を引き渡しをして、それによって対償を受領したときに成立するのか、それともそういうようなことを抽象的に約束すればそれでもいいのかとか、その約束の内容はどうすべきかということについて、具体的に適用として非常に難しい問題が出てくる可能性があるなというふうにちょっと今私ども思っているわけであります。  その点についての要件の内容、非常に認定が難しくて、これによって逃げられるようなことはないのかという、そこの懸念がちょっとありますので、御説明をお願いします。 <0075>=大森参議院議員= 買春目的の人身売買の規定でございますけれども、売買とは、対価を得て人身を授受することをいうとされております。これは、刑法第二百二十六条第二項それから第二百二十七条第一項に規定する売買と同義に理解しております。  それでは売買というのはどういうものかということにつきましては、刑事局長の方から答弁させていただきます。 <0076>=松尾政府委員= 今発議者の方から答弁がありましたが、刑法にやはり売買という規定が出ております。  先生のお尋ねの中に、例えば売買の約束だとか、あるいは対価を払う約束をしたけれども現実にそれが実現していないとか人が動いていないとか、この規定の仕方からいたしますと、売買したということでございますので、予備罪とか未遂罪についてはこれは触れていないわけです。特別にそういう規定がありますれば、そこらあたりも処罰の対象に行為としては包含されるわけでございますが、この規定ぶりからいたしますと、売買した、いわば現実にそういうことが行われたということが前提になろうかと思います。 <0077>=福岡委員= そうしますと、民法の売買みたいに意思表示主義というわけにいかないと。したがって、現実の引き渡しとかそういう具体的行為がないとなかなか難しいということでございますので、取り締まりがちょっと難しいのじゃないかななんというふうに私思うわけであります。それも一遍また御検討はいただきたいというふうに思っております。  それから、次に、第九条の児童の年齢の知情の点についての規定でありますけれども、これについて、使用した者という表現があるんですよね。この使用した者というのはどういうことをいうのかちょっと明確じゃないものですから、どういうような行為をしたときか、どういうような立場の人間を使用した者というのかということをちょっと御説明お願いします。 <0078>=林(芳)参議院議員= 御答弁申し上げます。  「児童を使用する者」というのは九条の規定にございますが、これは児童福祉法の六十条の三項に同様の規定がございまして、本法案はこれに倣って作成をいたしたところでございます。  同規定におきます「児童を使用する者」というのは、判例がございまして、「児童と雇用契約関係にある者に限らず、児童との身分的若しくは組織的関連において児童の行為を利用し得る地位にある者」、こういうふうな判例になっております。あるいは、「特にその年齢の確認を義務づけることが社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者」というふうなことが判例になっておりまして、本法案における「児童を使用する者」の意義もこのとおりでございます。 <0079>=福岡委員= そうしますと、今その判例に従うということですから、実際的には、法的な意味で従属制があるとか親権に服するとかということよりもっと広い概念だということですね。事実上支配をしているというような関係に立つ者がそういうことをしたということですね。わかりました。  それで、次にそれに関連しまして、第九条の規定全体を見てみますと、私は、本来、第五条ないし八条の罪というものは故意犯だと思うんですよ。故意犯を前提として、その年齢を知らなかった、十八歳未満であるということを知らなかったということに過失がある場合は処罰をするという、いわゆる過失犯を設定した規定だというふうに全体として認識するわけですけれども、それで間違いないでしょうか。 <0080>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、委員の御指摘のとおりでございますが、五条から八条までに規定する犯罪は故意犯でありますから、児童である、この場合は十八歳未満でございますが、その認識がなければ処罰ができないというのがこの原則でございますけれども、児童を使用する者については年齢に関する調査確認義務があるというふうに考えられますので、このような者については、児童の年齢を知らないということを理由にしてのみ処罰を免れさせるのは妥当でないという判断をいたしまして、これらの者については、認識がないことについて過失があれば処罰するということにいたしたところでございます。 <0081>=福岡委員= そうしますと、この規定の仕方を見ると、何か、裁かれる被告人側の者が過失がないことについて立証責任を負うというようにも読めるんですよ。要するに、原則として、知らないことは処罰される、ただし、知らないことについて過失がない場合には免れるというような感じになりますから。ところが、実際は刑事訴訟法の大原則は、すべて構成要件的なもの、過失もいわゆる構成要件ですから、それについては検察側の立証の義務があるということははっきりした事実ですね。したがって、その点をやはり変更しているというわけじゃないでしょうか。そこのところだけ明確にしていただきたいんです。 <0082>=林(芳)参議院議員= お答え申し上げます。  これも委員のおっしゃるとおりでございまして、このような規定には児童福祉法六十条三項というのもございますが、本条はこれに倣ったものでございます。これは解釈上、学説等いろいろあるようでございますが、我々といたしましては、憲法の三十一条に規定されております検察官の立証ということの原則にのっとりまして、検察官が過失を立証すべきであるというふうに考えております。 <0083>=福岡委員= もう大体時間になりましたので、あとちょっと省略いたしますけれども、一点だけ確認をいたしたいわけであります。  先ほど、冒頭に私の方では、買春行為の相手方になる児童がまた虞犯少年だというような取り扱いでもって審判を受ける、厳しい捜査にさらされるということは非常に問題であるということを申し上げました。私は、それとプラス、やはり我々弁護士として、被害者の場合の損害賠償その他の、その後のケアとかなんかの相談を受けたことがたくさんあるわけでありますけれども、そういう場合に、やはりそういう性的な行為というものに対する被害者といたしましては、それを公表されるということ、さらには、それが問題とされ、その場に証人に出ていく、参考人として出るということ自体が本当に、家族を含めて苦痛であるということになるわけであります。そういう意味で強姦罪の方は親告罪としたわけであります。要するに、角を矯めて牛を殺すことになりかねない、守るつもりであったのが逆に被害拡大になるということが親告罪の歯どめであるわけです。  今回は親告罪ではないという形になっております。その理由はいろいろあったでしょう。それは何かというと、犯罪の親告すること自体が自由な意思において行われたかどうかということは、問題になりやすいんですね。ところが、そういう被害というものは、成人の場合以上に二重被害というものを起こしやすいということも実態であるわけですね。  だから、そういう点についての配慮が十分なされた上で、これでいいのか、家族も子供も、取り調べを受けるのは絶対に嫌だと言って拒絶をして泣き叫んでおるときにも、あえて官憲の方で押し込んでいって捜査するというようなことがいいのかどうなのか、これが本法案についての私どもの一番心配するところではあったわけでありますけれども、この点についての御見解をちょっとお伺いいたしたいわけであります。 <0084>=円参議院議員= 先生がおっしゃるとおり、親告罪にすべきか非親告罪にすべきかという議論は随分私どももいたしましたし、また、捜査の過程においてセカンドレイプ等の人権侵害がないようにしなければいけないということも随分考慮した上でこの法案をつくったつもりでございます。  御存じのように、強姦罪や強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、これを訴追し、処罰することによって、被害者の精神的苦痛等の不利益がより増すことが考えられますことから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されております。  しかし、今回の児童買春罪につきましては、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保護者への金銭の支払いで示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられますので、これを親告罪といたしますと、児童買春の相手方となった児童の保護や、児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図ることが困難になりますので、このような観点から非親告罪としたものでございます。  また、児童ポルノ頒布等の罪につきましても同様であると考えております。  捜査、公判の過程におきましては、児童買春の相手方となったり児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えないように、本法律案は、第十二条第一項で、この法律に規定する罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないことを定めました。もう先生のおっしゃるとおり、そのあたりは十分配慮していきたいと考えております。 <0085>=福岡委員= どうもありがとうございました。  時間が参りましたので、質問としては終わらせていただきますけれども、今最後の点でありますけれども、了解はいたしましたが、ただ、現実の捜査の開始については、法的にできるという場合でありましても、実際に、その買春行為の悪質性、それから、被害者である児童の置かれている環境、家庭環境その他を含めて、その人の意思も十分確認をして、実際に着手するかどうかというのは、相当な程度、その意思決定権というものを児童に置くというような姿勢というもの、これは関係当局の方の実際の取り締まりのときの姿勢でありますけれども、十分それへ配慮をして運営をいただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。 <0086>=杉浦委員長= 次に、佐々木秀典君。 <0087>=佐々木(秀)委員= 民主党の佐々木です。お昼の時間までおつき合いをいただきたいと思います。  子供たちを性的な被害から守ろうという国際運動として、ECPATキャンペーンという運動があると聞いております。日本でも、この趣旨に賛同する方々が少なからずいて、そして、この方々の運動などがこの法案をつくるきっかけにもなっているというように聞いておりますけれども、この国際運動の概要、それから、この種の世界各国の取り組みの代表的な事例などについて御説明をいただけるとありがたいと思います。 <0088>=清水(澄)参議院議員= ECPATキャンペーンといいますのは、特に一九九一年、タイで、アジア観光における子供買春根絶キャンペーンという運動が始まりました。そして、特にアジアにおけるセックスツーリズムの実態を、ツーリズムで入ってくるのはほとんど先進国のヨーロッパなりオーストラリアなりアメリカなり日本なんですね、そういう国々に対してその実態を訴えるという中で、各国の政府に対してそれぞれの国の法改正などを具体的に働きかけていくという大きな運動を起こしてきております。  そして、子供買春、子供ポルノ、性的目的での子供の取引根絶キャンペーン運動というのを国際的なNGO運動として取り組んでおりまして、三十カ国以上にそういう団体が広がって、そこが主としてそれぞれの国の政府に対してその実態を知らせ、そして、今私どもがやっているように、その国のこれまでの性風俗維持とかそういう概念ではない、子供の人権をどう保護していくのか、子供の人権を守るという大きな運動を展開しておるわけです。  そして、現在、そのECPATが取り組んでいますテーマの一つとしては、インターネット上の児童ポルノの問題に力を入れておりますし、特に、大人だけじゃなくて若者の参加を重視した取り組みをしております。  このECPATというのは非常に大きな力を持っておりまして、これが実は、一九九六年にストックホルムで開かれました児童の商業的性的搾取に反対する世界会議、これを、ユニセフとか国連機関、国連子どもの権利委員会、それからスウェーデン政府がそれを受けまして、そしてその国際会議が開かれ、そこに国連の各機関が来ましたし、日本からも何人か参加いたしました、私もその一人でした。そして、多数のNGOと対等な形でその会議が開かれて、これは本当に国際的に、千二百人もの国連の会議のような大きな会議でございました。  そして、このストックホルム会議で、今日問題になっている児童買春、児童ポルノ、性的目的での児童の売買を根絶する、そういう宣言を行いまして、そのために、国際協力、それから被害児童の権利保護、ケア、リハビリとか、子供自身をそこに参加させていく、そういう具体的な取り組みを、行動計画を各国でつくろう、二〇〇〇年までに国内行動計画をつくろうということを決定をして、そしてそれが、各国取り組んでおって、今二十カ国以上国内行動計画ができております。  そのことが各国の中で、例えばEUなども早速、閣僚会議、ヨーロッパ審議会が開かれまして、さらにEUでは、人身売買、子供の性的搾取を撲滅する共同行動計画というものを採択しております。各地でそういう行動が広がっている中で、日本が行動計画もないではないかという、またここでそういう問題提起がされているわけです。  ですから、ヨーロッパ等では、イタリアでも昨年ですし、スウェーデンでも昨年、子供の人権の立場に立ったポルノの禁止の問題とか、そういう新しい法律制定への大きな流れをつくり出している。  そして、さらに国際機関では、そこだけではございませんで、これはもともと八九年に国連で採択された子どもの権利条約、これに基づくものですから、この条約の三十四条にはきちんと、児童買春、児童ポルノを根絶しようということを各国で、国内の法律改正とか国際連帯でやろうということを決めていまして、国連では人権委員会がこの問題に対する特別報告者を任命してずっと作業が続いており、そして、ことしがちょうど子どもの権利条約採択十年目に当たりますので、ことしまでにそのことをみんなで努力している。そして、ユニセフとかILO、ユネスコなど国連機関もECPATのNGOと一緒になって各地においてこの運動に取り組んでいる、これが実態でございます。 <0089>=佐々木(秀)委員= お昼になりましたので、これで一応中断をいたします。  午後からまたお願いいたします。 <0090>=杉浦委員長= 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十一分開議 <0091>=杉浦委員長= 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所白木刑事局長、安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0092>=杉浦委員長= 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ――――――――――――― <0093>=杉浦委員長= 質疑を続行いたします。佐々木秀典君。 <0094>=佐々木(秀)委員= それでは、引き続き質問させていただきます。  先ほど提案者からECPATキャンペーンの国際的な運動の概要、それから、各国のこの種問題に対する取り組みの状況を伺わせていただきまして、ありがとうございました。  お聞きをするところによりますと、このECPATキャンペーンでは、子供の売買、先ほども福岡委員の御質問の中で子供の人身売買のことが問題になっておった。この子供の人身売買の禁止ということが独立の目的に掲げられているように伺っておりますが、今度のこの法律案では、第八条でこの人身売買の禁止をされている。しかし、これは買春目的の人身売買に限定しているように思われるわけですね。もっとも、ポルノ製造の目的ということもあるわけですけれども、しかし、あのECPATキャンペーンでは、こういう目的だけではなしに、いわゆる労働に従事させる目的、あるいは里子の目的とか、それから、日本でも臓器移植法案が通ったわけですけれども、子供の臓器の売買目的なんというのも、これは東南アジアでは実際にあるようですね。悲惨な話をたくさん私どもとしても聞くわけですけれども、これを、今度のこの法案では、いわゆる性的な問題に絡めた売買だけに限っているんだけれども、これは広げる必要がないのか。  もちろん、この法律案は、児童買春、児童ポルノに係る行為、いわゆる性的な虐待の禁止ということに主眼があるのはわかるんだけれども、要するに、それは一つの典型であって、児童そのものの人権を大事にするという精神がもっと徹底されなければならないということを考えると、この児童の人身売買ということについては、さらに目的を広げてもいいのではないかなというような思いもしているんですけれども、この辺についてのお考えはいかがでしょうか。 <0095>=大森参議院議員= 労働目的、里子目的とか臓器売買目的なども入れるべきではないかという御質問でございますが、それぞれの法律をつくります場合にはその目的というものがございます。それについて規定するのはその目的の範囲内という限定がございまして、保護の必要性がないという意味ではございませんけれども、今回のこの法案につきましては、この目的、第一条に書いておりますように、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。」こういう法案となっております。  児童の売買につきましては、さまざまな態様が確かにあり得るわけでございますが、本法では、このような目的から、当該児童を児童買春の相手方とさせ、または当該児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的での売買を処罰することとしたものであります。 <0096>=佐々木(秀)委員= つまり、私がお尋ねをしたような事柄については、別の法律ないしは別の措置によって保護の措置を考えるべきである、こういうお考えだということでよろしいですね。  それから、私が予定した質問は大分先ほど同僚委員からの御質問があり、それと重複している部分もありますので、もうお答えいただいたところについては割愛をさせていただきたいと思いますが、ただ、先ほども年齢についてのお話がありました。例えば、本法では児童については十八歳未満にしているわけですけれども、しかし、先ほども御指摘がありましたけれども、もう十五歳、十六歳などというと、例えば身体的には大人と変わりない、大人よりも立派な体をしている女性もたくさんいるわけです。諸外国の例で言うと、ドイツでは十四歳、フランスでは十五歳、ベルギーでは十六歳となっていると聞いております。それからまた、先ほども御指摘がありましたけれども、我が国では女性の婚姻適齢が十六歳になっているなどということもある。  それで、これは先ほど福岡委員からも御指摘があったところですけれども、いわゆる第九条の、児童の年齢についての情を知っているかどうかということについてです。児童を使用する者が、児童の年齢を知らないことを理由にして、第五条から第八条までの規定による処罰を免れることはできない、ただし、過失がないときはこの限りではない、こうなっているわけです。今のような子供たちの身体の発育状況などからいうと、これは情を知るという、九条関係でいうと、使う場合に、一々戸籍抄本あるいは戸籍謄本などを出せというところまでは、恐らくどんな企業でも余りやってないんだろうと思うんです。まともな企業でもですよ。  そうすると、そうでなくて、特に風俗だとか何かで使うような場合に、それを聞かない、それで本人の年齢を聞いて、本人の年齢についての偽りの申告、それを受けたという場合に、それをさらに突っ込んで確かめないままにというようなことが過失に当たるのかどうか、これは先ほどの御指摘にもあったけれども、なかなか難しいんじゃないかと思うんですね。  それと、その外国の事例での年齢の問題などと比べると、これは経過の中でもいろいろ私どもも議論に参加したところだったんですが、十八歳という年齢はちょっと高過ぎるんじゃないかという意見がかなりあったんです。しかし、これで、十八歳で決めたということについて、簡単で結構ですから、そこを決断されたという事情について。 <0097>=円参議院議員= 先ほど福岡委員にもお答えしたんですけれども、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というものがございます。その対象となる児童は十八歳に満たない者とすることをこの条約では原則としておりまして、また我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等、児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者でございます。そして、これは女性の婚姻による例外を認めておりません。これらの条約や法律の目的とこの法律の目的から考えて、対象とするものの範囲も同一にすべきものと私どもは考えまして、十八歳未満の者をこの法律による児童としたわけでございます。先生がおっしゃるような議論はさまざまございましたけれども、そういうわけでございます。 <0098>=佐々木(秀)委員= 一応そのように伺っておきます。  それから、先ほど来他の委員からも御指摘がありましたように、これが刑法との関係で、特に児童に対する性的な犯罪、処罰も重くなっているというようなこと、あるいは犯罪類型としても構成要件的にぴたっといくのかどうかなというようなことから、これが濫用されるおそれはないんだろうかというようなことがありますね。  例えば、児童ポルノの販売目的の所持だとか製造だとか運搬、これが禁止をされ、違反をすると処罰をされるということになるわけですが、そういうことが、例えば憲法二十一条二項の検閲の禁止に触れないか。つまり、原稿の作成だとか印刷段階だとかあるいは映画だとかビデオの撮影段階がこの販売目的の所持、製造、運搬禁止ということに触れないとは限らないのではないか。そうすると、今言ったような後者の段階でも強制捜査の機会が生じるのではないかというようなおそれが指摘をされたりするわけですね。そういうことから、第三条では「国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」こう書いてあるわけですね。  そこで、これはむしろ法務省にお聞きをした方がいいのかと思いますけれども、私が今挙げたような例のほかに、ここで心配されている国民の権利の不当な侵害のおそれというのはどんなような事例が考えられるのか、そして、それに対する歯どめとして、この法律で賄えるのかどうか。先ほど、第九条関係では、過失の立証責任は捜査官の方にあるだろう、検察側にあるだろうというお話もあったんだけれども、私が述べたようなことからして、果たして立証可能なのかどうか、そんなことも含めて刑事局長にお尋ねをしたいと思います。 <0099>=松尾政府委員= まず、憲法の問題といいますか、重要な問題である検閲になるのかどうかという、ここのところからお答えしたいと思います。  最高裁の判例で、昭和五十九年十二月十二日に、検閲についての判例がございます。その判決での文言でございますが、検閲というのは何かということでございます。これは「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」、これが検閲だ、こう判示しているわけでございます。  この法案の第七条では、確かに頒布等の目的で児童ポルノの製造、所持、運搬等をした者について処罰するという規定になっております。これは「対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査」するというものでないことは、この法案の文言からも明らかでございます。判決に言う検閲の概念には該当しないということがまず言えるかと思います。  それから二番目に、この法案が成立した際の運用等で、例えばその濫用のおそれとか、あるいは概念の混同等が生じて混乱することがないのかという御趣旨かと思いますが、例えば、本法案では、既存の刑法あるいは児童福祉法その他の用いている文言と同じ文言がございます。同じ文言は、当然のことでございますが、従来の解釈あるいは判例によってその内容が逐次明らかにされてきている部分につきましては、その判例の流れといいますかそういうことが実務に定着しておりますので、その趣旨を体して、あるいはその趣旨を尊重しながら運用するということに当然なろうかと思います。  ただ、この法案では、若干のところにつきまして従来よりも処罰範囲を広げたことがございます。この法文上の文言あるいはその趣旨につきましては発議者の方から何回かにわたっていろいろな観点からの御説明がございました。我々捜査当局といたしましては、国会におけるそうした法文についての御論議、あるいは参議院も通じてでございますが、委員会でいろいろ交わされましたことについて、その趣旨にのっとりまして慎重に適用してまいりたいと思っているところでございます。 <0100>=佐々木(秀)委員= 確かに、ほかの法律などで概念がもう確定しているものについてはそういう問題はないんだろうと思うんですけれども、例えば買春という言葉も、恐らく法律用語としては今度初めて使われることになるんだろうと思うんですね。そうすると、例えば、刑法百七十四条のわいせつ行為それから刑法百七十七条で言う姦淫行為、これと、本法の四条で言う、これは対償の相手は児童に限るわけですけれども、買春という行為、これとは、概念として全く違う概念なのか。共通する部分もあると思うんだけれども、こういう言葉が初めて法律上用いられることによる取り締まり側の不安感とかそういうことはないのか、この辺はどうですか。 <0101>=松尾政府委員= 結論といたしましては、そうした不安感は全くございません。  念のため申し上げますと、刑法第百七十七条には姦淫という言葉が出てまいります。これは性交と同意義でございます。それから、同じ刑法の百七十六条にはわいせつな行為という概念が出てまいります。これは本法案の児童買春の定義における性交等よりも広い概念でございます。  一つ例を挙げますと、東京高裁の昭和三十二年一月二十二日の判例でございますが、例えば無理やりキスをする行為もわいせつに当たる場合があるというふうになっております。今回の法案ではそれはもう対象外ということになっておりますので、こういった例から見ても、刑法のわいせつな行為というのは今回の買春の意義からはかなり広いというふうに理解されます。  また、その具体的内容については、個々の事例ごとに判断をしていくことで、運用上のおそれ、あるいはその心配等は全くございません。 <0102>=佐々木(秀)委員= 時間が参りましたので一応これで他の委員に引き継ぎたいと思いますけれども、私も、児童の権利は保護されなければならない、性的な虐待などという忌まわしい犠牲になることを何とかして抑えたいものだと思います。  この法律がそのために大きな力を発揮することを期待はするのですけれども、しかし同時に、各委員からもさまざまな御指摘があるように、やはり新しい概念を用いてこれを法律にするというようなこともあって、これが濫用されるおそれがなきにしもあらず。かえって目的と違ったような使われ方をするということになると、これは提案者としても大変残念なことになるわけですから、これは運用に全きを期していただかなければならないわけですね、慎重でなければならないと思うのですね。  特に、表現の自由などに深くかかわってくる問題がありますから、これは警察にはきょうはお尋ねしませんでしたけれども、十分にその点は運用の上で留意していかなければならないし、場合によったら、やはりこれを見直していくということも必要になってくるのじゃないだろうかと思います。  そのことを希望として申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。 <0103>=杉浦委員長= 次に、日野市朗君。 <0104>=日野委員= 日野市朗でございます。よろしくお願いします。  本当に皆さん御苦労さまだと思います。それに、きのう、きょうの委員会でもいろいろ勉強会の話なんかも出ておりまして、随分長い間いろいろ御研さん賜ったというふうに仄聞をしているところでございまして、このようにおまとめをいただいたということ、本当に御苦労さまだったと思います。  ただ、私は勉強会にも参加いたしませんで、非常に客観的にこの法案を拝見させていただきまして、やはり問題点というものはあるなというのが率直な私の思いでございます。  それで、私の方から、幾つか非常に主観的に私が感じております問題点について、きょうはそれを提起して、御解明をいただければ、そう思っております。  まず第一番目に、買春という言葉をお使いになった、そして売春という概念がございます。私は、この買春という言葉が日本語としていいかどうかは別として、そこのところは細かく言いますまい、私は余り好意を持っていないのですがね。この買春と売春という概念との間に、これは、売春といい買春といっても、やはり売春という一つの概念の中でいろいろ論じられている事柄であろうというふうに思うわけでございます。  売春というのは、これはもう昔から世の中の一つの恥ずかしい部分、恥部でありましたと同時に、それをなくすことはできないという非常に重苦しい一つの文化現象であったわけであります。  それで、私、現在の日本における売春というものについての一つの法的な規制といいますか、それから、売春という行為が行われる、それに対する一つの形づけ、枠組みづくりといいますか、そういったものを与えているのはやはり売春防止法だと思うのでございますよ。それで、この売春防止法というのは、私はこれは基本法と考えてもいいのではないか。今度の児童買春法、今問題になっているこの法案、これは一つの新しい別個のものを売春という一つの法律のシステムといいますか、その規制の態様の中に持ち込んだということであって、これは、私の感じとしては、今までの売春防止法が決めていた世界の枠をまた一つ拡大したのかなというような感じがするわけであります。  それで、そこらの関係を、売春防止法というのは基本法と考えて、そして本法案は特別法をつくろうとしているのかどうかということについて一つお伺いをしたいと思います。  なぜこんなことを聞くかといいますと、売春防止法というものの中にいろいろある概念と同じような概念でこの買春というものをとらえていいのかどうか、そこらに私は疑問を感ずるものですから、一つその点をお伺いします。 <0105>=円参議院議員= 今の先生の御質問に直接お答えする前に、買春についてちょっとお話しさせていただきたいと思っております。  先生が今、買春という言葉は余りなじみがないのではないか、また、御自身は余り賛成できない言葉であるというふうにおっしゃったように承りましたけれども、私ども、これは今まで、バイシュンといいますときは、漢字では売る春と書きます。今回、買う春という書き方をしておりまして、これもまたバイシュンとも読めるわけで、どう読むかということもあるかと思いますが、私どもは児童カイシュンと読むこととしております。  なぜあえてカイシュンと読むことにしたかと申しますと、児童の売買春は、仲介する者が弱い児童を強制的に売買することが組織的に行われているなど、大人の優位な立場を利用して行われている点で、性を売る側の是非を問われがちな売春とは違い、買う側の是非を問う問題だと考えたからでございます。そのため、バイシュンと読みますと弱い児童自身を犯罪者あるいは逸脱者として扱う懸念があります。むしろ、子供が性的な対象物として売られ、買われることの問題性が現在問われているのだと思いまして、そこで、買う側の大人の責任を明確にするために買春と表現したものでございます。  ぜひとも、今回、参議院、衆議院でこうしてこの児童買春罪についての議論を進めておりますことが人々に広く知られ、カイシュンということの意義、そういう読み方をするその意味合い等をわかってもらい、性的搾取、性的虐待は本当に子供たちの権利を侵害するものであるということが広く伝われば本当にうれしいと思っております。  さて、それで、先生が直接お尋ねの売春防止法と本法との関係でございます。これは基本法と特別法との関係かというお尋ねでございますけれども、売春防止法は、その第一条におきまして、その規定は、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。」というふうに書かれております。もう先生御承知のことでございます。  これに対し、この法案は、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資すること」を目的としております。  そして、この法案では、金銭等の対償を供与し、また、その供与の約束をして児童に対し性交等をする児童買春は、児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであり、また、児童買春については国際的な対応が強く求められるところから、かかる行為を規制、処罰することとし、かつ、日本国民においては国内外を問わず罰則の適用を認めることとしたものでございます。  このように、売春防止法とこの法案とは、基本的な趣旨、目的を異にするものでありまして、一般法と特別法との関係にはございません。 <0106>=日野委員= よくそこのところは理解をしているのですが、やはり同じ売春という一つの性的な出来事、そういったものを対象にしていることは、これは間違いないだろうと私は思っております。  そこで、売春防止法と児童買春法、そこに規定されている犯罪同士の関係というのはどういうふうになるかということを、私、確認をしておく必要があると思う。  つまり、売春防止法が処罰している犯罪、これは売春防止法に幾つかございます。その売春防止法が規制をしている、処罰をすることとしている犯罪と児童買春法の犯罪というのは違います。明らかに違っているわけです。それでは、児童買春法ができたからといって、売春防止法の適用関係、それからその運用、これは全く変わらないというふうに見てもよろしいのでしょうか。もっと具体的に言いましょう。つまり、十八歳未満の女性たちが売春防止法に該当するような行為をとった場合、それは売春防止法の適用がありますか。 <0107>=吉川(春)参議院議員= この売防法の適用問題について、私個人としては売防法を適用しない選択を考えておりまして、勉強会の中でもその意見を申しましたけれども、結局、売防法の適用をしないということにはなりませんでした。今先生がおっしゃいますように、基本的には売防法の適用がされる、形の上ではそういうふうになっていると思います。同時に、売春してもされても、児童はやはり被害者であるという立場を考えるときに、この売防法の適用にあっては非常に慎重な運用が望まれるのではないか、そのように私は考えておりますが、形の上では先生のおっしゃるとおりでございます。 <0108>=大森参議院議員= このことは勉強会でも議論がございました。十八歳未満の女の子といたしましょう、それが売春の相手方となった場合、両方の法律に該当するような事態があるのではないかということでございますね。  売春防止法の場合には、第一条の目的というものがございまして、「この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。」こうございます。要するに、性道徳に反する罪とか性風俗に対する罪と考えられておりまして、この中に規定してありますように、「売春を助長する行為等を処罰する」、このように規定がございます。  これは、よく誤解されることなのですけれども、売春の方で、男性の方が処罰されない、女性だけと言われるのですが、対償を得てですけれども、性行為そのものの場面については、男性も処罰されませんし、女性も処罰されません。反面、ここでは助長する行為として挙げられております勧誘等ですけれども、この構成要件に該当しましたならば、女性であれ男性であれ、この構成要件に該当するということで、処罰の対象となっております。  それから、児童買春につきましては、その目的、保護法益等、既に述べてありますので繰り返しませんけれども、まず、法の目的というのが違っているということでございます。そして、十八歳未満の女子に対しましても、その行為が売春防止法に規定する構成要件に該当する場合、勧誘等の行為をあえてしたような場合ですけれども、これを処罰しないという積極的な理由づけがまだ十分ではない、こういう結論ですので、特に売春防止法について、このような行為をした場合まで処罰しないという理由はないと思います。  確認して申し上げますけれども、性行為そのものの場面では、売春防止法でも、女性の方が処罰されるようなことにはなっておりません。 <0109>=日野委員= 私も、本法、つまり児童買春法ができたからといって、売春防止法の適用を手控えるということにはならないのだろうと思わざるを得ないわけですね。そしてまた、一方では、買春をする男の側、これは逆の場合もありますが、大部分は男が女をということでしょうからそういうことでお話をしますが、これは確かに買う方も悪い。しかし、買われる方に対する道徳的非難というもの、これを全くしないというわけにもいかないというふうに実は私は思っております。そこで、やはり売春防止法の適用ということはきちんとやって、売春防止法の守るべき法益というものはきちんと守らなければならないのではあるまいか、こう思っております。  この点に関して、法務省と警察庁、どういうふうにお考えになりますか。児童買春法ができて売春防止法の適用というものがどういうふうに、変わるのか変わらないのか、いかがでしょうか。 <0110>=松尾政府委員= 両者の関係については、ただいま発議者から答弁したとおりだろうと思います。  売春防止法の適用の問題で、たまたま売春の勧誘行為をした者が児童に当たるあるいは少年に当たるという場合には、従来の運用でありましても、少年法自体が十九歳、二十歳未満の者については健全育成を旨としてということをうたってありますので、そうした趣旨も十分に配慮しながら、捜査あるいは運用に当たってきたところでございます。そのことは、この法案が仮に成立いたしました後の運用においてもやはり尊重すべきでありますし、またそうした趣旨も十分考慮しながら運用すべきものと考えております。 <0111>=小林(奉)政府委員= 運用方針につきましては、ただいま発議者の説明がございました。また、法務省の刑事局長からの説明がございましたが、そのとおりでございます。さらに、加えて申し上げるならば、本法律案におきましては保護のための措置という概念が入っておりますので、そういった面も視野に入れながら、この法律の適用を図っていくことが必要じゃないか、こういうように考えておる次第でございます。 <0112>=日野委員= わかりました。ただ、売春防止法と児童買春法の間で、ちょっと嫌みなところが残るのですよ。つまり、児童買春法は、十八歳未満の子供に対して買春行為を行えばこれは罪になる。しかし、売春防止法ではこれは罪にならないのですね。つまり、十八歳未満の者に対する買春行為をした、これは犯罪です。ところが、その相手方、これはその相手方をしたということで、犯罪行為の相手方になっているわけですから、当然捜査の対象になるわけですね。当然捜査の対象になってきます。裁判でも、証人として出ていくというようなことも必要になってくるわけです。  そうすると、少年法上、先ほど実は福岡先生の方からも質問がありましたが、虞犯少年というようなレッテルを張られる可能性が出てくる。これは嫌みなところですね、この両方の間で。ここについて、先ほど大森先生の方からちょっと説明がありましたけれども、私はここのところで、十八歳未満の子供たちに対してこれは虞犯少年というレッテルを張ってしまうようなことが起こりやしないか。少なくとも、そういう児童買春罪、四条の罪において相手方になっているわけですから、必ずこれは捜査機関、特に警察、検察のリストには載るわけですね。こういうのは非行であるとか虞犯少年ということで、不利益な取り扱いになるようなことがあるのかないのか、私はここを非常に危惧するところなのですが、いかがでございましょうか。 <0113>=大森参議院議員= 十八歳未満の児童が買春の相手方となった場合、捜査の対象となるということでございますけれども、これは、この法案上は被害者という立場になりますので、被害者として事情を伺うことになります。仮に証人とかになる場合でも、被害者としての証言ということになります。  それから、虞犯少年というレッテルを張るおそれがあるのではないかということでございますけれども、この法案というものは、児童の性的搾取、性的虐待、これから守ることを目的としておりますので、この法案によりまして虞犯少年としてのレッテルを張るおそれがあるということは我々が予定していないことであります。もし虞犯少年あるとするならば、この法案の問題ではなくて、あくまでその相手方となった児童の日常の行為等によって個別的に判断されることでありまして、この法律ができたからといって、虞犯少年というレッテルを張るおそれがあるということにはならないと思います。  ただ、もちろん児童というのは非常に可塑性に富むといいますか、デリケートな存在でございますから、事情聴取等につきましては、捜査、公判の職務担当者は十分な注意をするということで、注意喚起は明文の規定でしております。 <0114>=日野委員= 私は、捜査の対象となる、これは、被害者として捜査の対象になるんだからということは余り理由にならないと実は思うのです。捜査の対象であることはこれは間違いないわけで、そこのところはよろしいでしょう。  では、警察の方に特に伺いますが、被害者であろうと何であろうと構いません、十八歳未満の子供がこういう事件で、児童買春をやった被疑者の相手になったという事実、これはやはり警察としては記録に残るのでしょうな。いかがですか。 <0115>=小林(奉)政府委員= 記録に残るかどうかということでございますが、どういった意味で記録に残るかなというのがちょっとわかりにくいのですけれども、いずれにいたしましても、私どもは、こういった事件につきましては、少年の特性ということとこういった児童買春の被害者となったという面と、いろいろな面がございますので、その部面を具体的なケースごとに応じて適切にやってまいりたい、こういうふうに考えております。 <0116>=日野委員= 余りよくわからなかったですが、ここのところは非常に気を使った取り扱いをやっていただかなければならない部分だろう、このように私は思っております。  それでは、今度は、問題をいわゆる援助交際というものに絞って少し論議をしてみたいと思います。  いわゆる援助交際というのは、結局は、十八歳未満の子供に対して対価ですか、対償を支払って、そして性的な行動をすること、性交等をすることということでありますから、これは本法案の第四条に該当することは明らかでございますね。いかがですか。一応確認のために伺います。 <0117>=円参議院議員= お答えいたします。  いわゆる援助交際が、対償すなわち児童に対して性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を児童に供与し、またはその供与の約束をして当該児童に対し性交等をするものであると認められる限り、いわゆる援助交際において児童と性交等をした者は児童買春罪に該当すると考えております。 <0118>=日野委員= この議論をするのに、誤解をされると困りますからお話ししておきますが、私は、特にこの法律が問題としている児童に対する性交等、特に東南アジアにおける日本人の買春行為などというものは、本当にああいうものは断固として禁圧すべきもの、こう思っています。それと同時に、それと同列で、援助交際というものを同一の法文で禁圧するということが適当かどうかということについては、実は疑問を持っているわけなんです。  そこで幾つか伺いますが、いわゆる売春行為であるとか性交等の行為、こういうことをする場合というのはこれはいろいろ考えられるわけですね。何が一体その動機づけになっているか。一番多いのはやはり貧困でございましょう。特にアジアにおける貧困。そして、それに乗じてそのような行為をするということはまことに人間として恥ずべきことだというふうに私は思います。それを厳重に禁圧すべきこと、これは私は全く同感なんです。  ただ、日本のいわゆる援助交際と言われるものとは同列に論ずることはできないのではないかというふうに私は一方で思うのですが、率直な感想、いかがでございましょう。 <0119>=円参議院議員= 先生にちょっとお尋ねしたいのですが、先生は、貧困による売春ならばいい、または援助交際はいけないとか、そういうふうな価値観でお考えの御質問なのでしょうか。 <0120>=日野委員= 私が誤解ないようにと言ったのは、貧困等によって売春をしている人がいるわけだ。そういう人を金で買うなどということはまことに恥ずべきことだ、これは禁圧すべきだ、こう言っているわけです。私はそれを肯定しているわけではありません。  しかし一方で、いわゆる援助交際と言われるものはまた別でしょうということを私申し上げているわけで、なぜなら、そこには貧困という動機は余りない。むしろ、よりぜいたくをしようとか、そういう動機づけの方が多いというふうに、日本のような豊かな社会では、そう考えた方がいいのではないかと思うから、同じ条文でこれを処罰しようというのは少し違和感があるということを申し上げたい。 <0121>=円参議院議員= やはり今の先生のお話から推測させていただきますと、貧困というような事情がある場合と貧困がない場合とでは同じ行為でも随分違うので処罰を考えた方がいいのではないかというふうに解釈ができたのですけれども、確かに、法律をつくって処罰するということだけでは、東南アジア等で行われております貧困からくる売春というようなものを撲滅することはとても難しい問題で、法律だけでは力が足りないところもあるかと思います。  しかしながら、今回の法律は、買う側、買春のところに重点を置いておりまして、子供たちの性的搾取、性的虐待をすることが子供たちの人権を侵害するというところに重点が置かれておりまして、その子供たちの保護を考えておりますので、たとえどういう動機や原因がありましても、買う側の人、これは別に男だけではありません、女性だってそうです、男女全く差別ございません。買う側の大人の方を処罰するということでございますので、私は先生のおっしゃるような貧困からくる売春と援助交際と違うのではないかという意見には賛成しかねますし、そういうような論点から、今回の法案ができたものと思っております。 <0122>=日野委員= ではもう一度、さらに伺いますが、いわゆる援助交際の場合、買われる側は常に被害者であるという発想に立っているわけですね。いかがですか。 <0123>=円参議院議員= 今回の法律は十八歳未満の児童を対象としております。十八歳未満の児童を対償をもって性交等をするという行為は、私は、大人はすべきことではない、そういう発想がこの法案の前提にあると思います。 <0124>=日野委員= よくわからないのですが、そうすると、性行為そのもの、これは悪なんですかな。いや、金を払えば悪になる、こういうわけでしょう。ただし、児童全体が、十八歳以下であれば、当然それは被害者であるという前提に立っているわけですね、この法律は。  ただ、私、考えてみまして、現在いわゆる援助交際と言われるもの、これは、買われる側も結構豊かな人たちが多いと思うのですよ。これは日本における場合を言っています。それからかなり成熟化しています。それから動機も多種多様であると私は思う。決して貧困であるとか特別の、一般的に考えてそうせざるを得ないような理由、これが必ずしも存在していない場合が多い、こういうことだと私は日本における援助交際の態様を見ているわけですが、これは間違っているでしょうか。 <0125>=円参議院議員= 援助交際についてはさまざまな意見があることは承知しております。ただ、いわゆる援助交際について悪とか善とかの発想に立っているわけではなくて、性的な虐待や性的搾取が子供たちの人権侵害になるということを、その子供たち自身も今の世の中でわかっていない部分もあると思います。  今の社会は、私は今まで、国会議員になる前に二万人ほどの家庭の相談を受けてまいりましたが、そうしたケースの中には、本当に日本のカップルは性的な話し合いもできなければ、豊かな性的関係を持てない方々が多くて、その中から、自分よりも劣った、おとなしい、何も自己主張をしない子供たちをお金で買うというようなケースが多々ございました。そうした、今回の児童に対する性的搾取や性的虐待、それを対償をもってするという中には、どうも性差別的な発想や、また人種差別的な発想、そして性欲を誇示することが男らしいというような社会通念等まであるような感じもいたします。  そういった社会の中では、何をもって豊かというふうに言うか、ちょっと私は、お金があり、物が買えることが豊かだというふうには、そこだけでは言えないかと思いますけれども、子供たちの人権というものを考えるときに、性的な人権、自己主張、そういったものがしっかりできるようになるには、ただ体の肉体的な発達があってもできない子供たちも大変多いところから、今回の法案はそうした大人の側こそ範を示すべきであるということもありまして、十八歳未満の子供たちに対してはこういった法案をつくったわけでございまして、いわゆる援助交際もその中に、法に関する限りは入るものと考えております。 <0126>=日野委員= 売春という一つの性文化現象といいますか、こういったものはだれも褒めたことはないのですね。しかし、これを全くなくすこともできない。  そして、これは私もちょっと前に読んだ本をもう一回引っ張り出して見てみたのですが、これはまじめな本でございますが、一橋大学の阿部謹也さんという教授をなさっている方がお書きになった本で、その中で、これはフランスのその分野のかなりの権威でありますが、ジャック・ロシオという方の引用をしている。いわゆる中世のキリスト教の戒律が非常に厳しく維持された当時における「西洋中世の男と女」という本を書いておられて、その中で言っておられるのです。  これはもちろん大人の売春の例ですが、売春婦の全体の大体一五%というのは自己の意思に基づいて売春婦になっている。しかも、売春婦のうち約二〇%というのは裕福な家庭の女性だというふうな、こういうことも言っているわけですね。そして、ヨーロッパでは十五世紀にペストが大流行いたしまして、人口が三分の一に減ります。ここで、人口をふやさなくちゃいかぬということで、非生殖的なといいますか、非生産的な性行為というのは禁ずるわけですね。  それで、そういうことになると、当然売春という方向に、男性たち、主として男性でしょう、ずっと女性を買うというような形で自分たちの性欲の処理をするということで、各都市には売春宿が置かれ、その伝統は今でも飾り窓の女などという形でずっと残るわけですが、そういう形でキリスト教の非常に強い伝統で、戒律でおさめようとしても売春というのはなくならなかった。  私は、今度は十八歳未満の相手方、子供と性行為をするということを罰するわけですが、それを罰するのは、子供たちは性的に未熟である、それから考え方も未熟であるということはわかりますけれども、しかしこれほど重い、三年以下、そして百万円以下の罰金かな、こういう重い刑で処罰をするだけの規範的な妥当性があるのだろうかということを考えざるを得ないんですね。いかがでしょう。 <0127>=大森参議院議員= 元郵政大臣の御質問ですので緊張してお答えしたいと思うのですが、実はちょっと正直に申しまして、私の理解力がないためか、よくわからないのですが、要するに、児童買春をした法定刑が軽過ぎるのではないかということではないですか。  先ほど規範的なとおっしゃいましたけれども、この法案につきましては、要するに、十八歳未満の児童を、対償を供与することによって、あるいはその約束をして、性交とか性交類似行為とかをする行為は違法性が非常に強い、刑罰をもって処罰に値するという考え方を私は持っております。  そして、児童の権利というときに、それはさまざまいろいろな児童がいると思います。貧困な児童もいればあるいは裕福な児童もいれば、まじめな児童もいれば遊びほうけているような児童もいると思いますが、ただ、私が見まして、児童の権利ということを考えたときに、私たちは個々の児童によってその権利を差別するつもりはございません。そして、貧困な児童に対する行為と、そして、裕福なのほほんと暮らしている児童に対する行為と、あるいは何というんですか、大人を手玉にとるような児童、もしかしたらいるかもしれません、それに対しての評価というものはこの法定刑の範囲内で、その違法性の程度とかあるいは情状とか、この中で考慮されることであると考えております。  こんなものでよろしいですか。 <0128>=日野委員= まあ結構でございましょう。  では、ちょっと今度は役所の方に伺います。  これは、この法案の主なねらいと言ったら語弊がありますか、大きなねらいはやはり、日本の男性が外国に出ていって買春をする、これを抑えたいというところにあるのでありますね。私も全くそれについては同感するところでありまして、あんなものは国辱物ですよね。外国に行って子供の春を買う、これは国辱物だ。ですから、これは、この法律ができたら機能的にそういった行為は取り締まられなければならないと思う。  それをやるために、外務省は一体どういう準備をなさいますか。それから、警察庁はどのような準備をなさいますか。法務省はどのような準備をなさいますか。これはいいという方法をちゃんと見つけていただきたいものだと思っているんですが、今のところどんなふうにお考えになっておられるか、ひとつお願いします。 <0129>=内藤説明員= 海外において邦人が違法行為を行うことを取り締まるということは、外務省が出先に持っております大使館、総領事館といった在外公館はできないわけでございます。それは、海外においてはその国の法律をその国の治安当局が実施するということでございます。  したがいまして、私どもとしては、このような行為は個人の行為ですから、その個人がみずからを律していただくように持っていくといいますか、結局は御本人の意識の持ち方が変わっていただきたいということですから、そのための啓発活動というのがまず考えられます。  現に、実は平成八年に国際会議がございまして、児童の商業的性的搾取に関する世界会議というのがございまして、そのフォローアップの一環として、海外での旅行者、さらには国内でもそうでございますが、意識を高めるということで広報用ポスターをつくっております。それを海外では領事の窓口に張って、一人一人の日本人の啓発に資するということを行っております。 <0130>=小林(奉)政府委員= この法案の背景としまして、いわゆる外国での児童買春が大変批判を招いている、こういう実態が一つあると考えております。そういった観点から、私どもといたしましては、国外犯というものがこの法律で規定されたということで、その実効ある取り締まりをすることが必要だと思っています。そのためには、まずもって必要なのが外国の取り締まり機関との連携でございます。主権の問題がございますので、この連携をその範囲内において最大限効果があるようにやっていくことが重要だと考えております。  そういった観点から、私どもといたしましては、警察庁の職員を外国に派遣いたしまして、それぞれの捜査機関との協議、あるいはこの法律の趣旨をよく徹底して、そういった関連の情報を収集するとともに、正規の手続にのっとった国外犯の取り締まりをする、こういうことをやってまいりたいと思います。  また、国内的にはそういった意味で、警察庁にそういったことを所掌する部署をこの四月に設けたところでございますので、そういった方法でもって私どもはやってまいりたいと考えております。 <0131>=松尾政府委員= 法務省といたしましても、第一に、捜査機関が関係国の捜査機関と緊密な連絡協調体制をとりまして、いろいろな捜査に資することを行っていくことになるかと思いますが、そうした際にも、今捜査共助法というものがございます。国際間の捜査協力がこういう分野でも非常に重要性を増してくると思いますので、担当の検察官等十分な研修を施しまして適切に対応してまいりたいと思っております。 <0132>=日野委員= 午前中、運輸省が、こういった買春ツアーのようなものをやるような会社なんかは旅行業者としての免許を取り消せみたいな質問が出たのに対して、どうもあいまいな答えだったな、そんなふうに私思っているのです。  実は、私も韓国の方々といろいろ話をする機会があるんですが、あのキーセン観光と言われたもの、あれがいかに韓国の民族の誇りを傷つけたか、それから買春ツアーなどというものがいかに日本人の名誉を傷つけ、現地の人たちの心情を傷つけたか、これはまさに大変なものであります。我々が想像しているよりもはるかに、そういったことを行った人たちの罪は重いと私は考えておりますので、この法律ができて、そしてその取り締まりに当たる当局の皆さんも、そこいらのことは十分に考えて、きちんとした対応をしてもらいたいというふうに思います。  そのことを強く希望しまして、終わります。ありがとうございました。 <0133>=杉浦委員長= 次に、坂上富男君。 <0134>=坂上委員= 提案者の先生方、本当に大変な御努力をいただきまして、とにかくここまでこぎつけていただいて、御苦労さまでございました。また、二日間にわたります御答弁、これまた親切丁寧に、かつうんちくのある御答弁をいただいておりまして、大変勉強させてもらっております。  したがいまして、もう相当問題がダブるようにもなりますので、私の質問は簡単明瞭でございますので、御答弁も、説明は要りません、イエスかノーかだけでお答えいただければ結構でございます。  また、大臣、わざわざ私の質問のためにお出かけをいただきました。この問題、極めて私は重要だと思っておりますものですから、担当大臣とされましては、本当に皆様方の声をぜひ聞いていただきまして、この法律が成立をした場合の運用に当たりましては、きちっと運用していただきますこともお願いをしなければならぬ、こう思いまして、来ていただいたわけでございます。  それから、この法律は、やはり刑罰の適用に関することでございまするから、国民の人権にも影響をするところが大きいのでございます。したがいまして、こういう法律の中の解釈なりがあいまいでありますと捜査当局に濫用されるおそれがありますものですから、私たちはきちっとこの解釈を厳格にして、余すところなく、先生方の御答弁をもとにいたしまして、この法律の運用がなされるということにしなければならぬと私は思っておるわけでございます。  そこで、もう一つ、私はこの審議をやっておりまして、私たちの責任の重さを痛感していたわけでございます。と申し上げますのは、福岡先生ちょっといませんが、福岡先生の質問、大変重要な質問をなさいました。そして、この審議の状態がインターネットを通じまして日本じゅうに、聞いておられる方がたくさんあるわけでございます。そこで、もう早速福岡先生の質問に反応が出てまいりまして、まことにまた大事な指摘でございまして、福岡さんからお話がありまして、私は、通告してありませんけれども、先生方からも御理解もいただきたいと思って、これを質問させてもらいます。  インターネットを聞いておられまして、福岡事務所に電話が入ったそうです。そして、文書がまたすぐ来たそうでございます。この方は、こういう法律の推進のために努力をなさった活動家の方でございます。そして、こう書いてあります。「福岡様が御質問の中で非常に重要な点を挙げていらっしゃいました。」私もそう思っていました。さすがだなと思いました。  「それは、買春の相手方となった子供が虞犯少年などとして不利益な扱いを受けることがないのかという点です。私たちは、買春の相手方やポルノの被写体とされた子供が、虞犯少年として、また売春防止法違反などで不利益な扱いを受けることを非常に懸念しています。そのようなことが一般的に広がるのであれば、この法律を何のためにつくったのかが疑われることになるでしょう。」  いろいろ書いてあるんです。そして、最後の方に、「先ほどの審議では、発議者の回答は、虞犯少年として扱われることもあるというものでした。」それはまあ確かにこれだけが条件ではないとおっしゃってはおりますが。「これは別の発議者の、子供は被害者であり、この法律は買春者を処罰するものであるとの答弁とも矛盾しています。この法律が子供の不利益処分を規定していないものである。」ちょっとここが欠落しています。それから、「他の法律ともあわせた全体的な体系として、どのような結果を期待するのか、つまり子供買春、子供ポルノの問題をなくすためにどう取り組むのかという姿勢であります。ぜひこの点について、午後の審議で再度確認し、子供の不利益な扱いをしないような確認をとられるようお願いを申し上げます。」  こういう質問でございまして、本当に、私たちの審議が大変責任のあることを私は痛感をいたしまして、もっともっと勉強しなければならぬなということを私自身が実は思っておるわけでございます。  そこで、率直でございますが、相手方となった子供たちがいわゆる虞犯少年としての扱いを受けることはない、こういうことを僕は捜査当局の方からひとつ御答弁いただきたい、こう思っていますが、どうでしょう。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕 <0135>=松尾政府委員= なかなか難しい御質問だと思います。  先ほど発議者側からも、また警察庁あるいは私からもこれに触れた答弁をさせていただきましたけれども、売春防止法等既存の法律と今回の法案とは、それぞれ目的において重なる部分もありますし、また、違う部分もございます。したがいまして、ただいま先生の御質問にあります、今回の買春の相手となった児童でございますが、これが絶対的に虞犯の対象にならないというふうに言明できるかという御質問だと思います。  それは、端的に申し上げますと、極めて限られたケースあるいは例外的なケースだと思いますが、先ほどの日野先生の御質問の中にもございました。例えば、買春の相手となった少女といたしましょうか、が、それなりに社会的に見ましても問題がある、少年法の観点から見ましても、やはり健全育成という点からそれなりの指導をその周辺なり何らかのそれに関与した者がする必要があるなというようなケースも、それは例外かもしれません、あると思います。そうしますと、やはり少年法に言ういわゆる虞犯ということで考え得る場合も、それは排除し切れないだろうと思います。  ただ、最後にちょっと申し上げておきたいのは、今回の法案の趣旨を体しますと、やはり、そういった児童を買う行為そのものの違法性、これに着目して今回処罰規定を拡充するといいますか、置くわけでございますので、そういった観点からは、買春の相手となる児童についてのさまざまな影響を社会的に減らしていこうということだろうと思います。  この法案のそういった目的に照らしますと、今回いろいろな御議論は、従来の、既存のそういう法令の運用、特に少年法に言う虞犯という概念がございますが、そうしたことを捜査当局として考えるに当たっても、十分に、あるいは十二分にといいましょうか、配慮する必要があるということはおっしゃるとおりだと思いますし、また、そういうものを運用する当局といたしましても、そうした御趣旨を十分に尊重しながら運用していきたい、このように思っております。 <0136>=坂上委員= 立法の趣旨を捜査当局は間違いなく承って、施行するに当たって、運用するに当たってそれを厳守する、こういう答弁でございます。  しかし、この御連絡をいただいた方が御心配なさるように、買春の防止をするために徹底的な摘発が行われた場合、やはりその相手方となった児童たちがばんばんと出てくるわけでございます。そうしますと、こういう虞犯少年になるおそれのある場合もないわけではない。こういうことになってまいりますと、このことによってこれらの児童たちがふえてくるということをやはり御心配なさっているんだろうと私は思っておるわけであります。  でありますから、これのみをもって虞犯少年の取り扱いをしないようにということの意味なんだろうと思いますし、それに対して、捜査当局としてはそれなりの御答弁なんだろうと思います。思いますが、そういうような意味で私はこの文書をいただき、御要請をいただいたんだと思いますので、今後の運用に当たりましては、ひとつ厳重に対応していただきたい、こう思っております。  裁判所、来ていますか。  裁判所はこの場合どうしますか。例えば、第十二条「捜査及び公判における配慮等」。この児童たちが被害者になる、買春した人が起訴される、調書を否認される、証人喚問する、こういうような場合、この子供たちが結局証人として出廷をすることになるわけでございます。私は、多分傍聴禁止の措置はとるだろうとは思うのですが、こういう配慮はどうするのですか。ここにこう書いてありますが、具体的にはどういう配慮をなさいますか。 <0137>=白木最高裁判所長官代理者= お答え申し上げます。  今、委員の方から傍聴禁止という問題もあると仰せになりましたが、むしろそれ以前に、そういう年少者であるとかあるいは性的犯罪の被害者等につきましては、できる限り裁判所外で期日外の尋問という形で、公の目に触れないような形で尋問が行われるのが普通でございます。 <0138>=坂上委員= そうすると、裁判所、今言ったようなことがもう最大限の配慮ということになるのですか。 <0139>=白木最高裁判所長官代理者= 現行法制のもとでは、今申し上げたようなことが普通に行われ、一番有効な手段であるというふうに考えております。 <0140>=坂上委員= なかなかこの法律の運用というのは、児童の保護という観点から見ると、また一面非常に難しい問題もあるのですね。捜査当局は、極秘裏に捜査ということは可能ですからいいのでございますが、公開の席上を原則とする裁判では、やはり今言ったような配慮なんかはもう最大限なされていないと、児童たちが証言すること自体もなかなか容易なことでもございませんで、この辺もひとつ特段の御配慮をしていただかないと、私は、皆様方がせっかくつくっていただいたこの法律の趣旨が変になることも大変恐れているわけでございます。  そこで、裁判所、少年法三十七条で、児童福祉法等のいわゆる成人が犯した事件については家庭裁判所を専属管轄としておりますが、この趣旨は、このことについて少年法の規定があって、少年法の規定の中に専属管轄の規定があるわけでございますが、この立法の趣旨でございますが、立法趣旨の答弁責任者は法務省だそうでございますが、法務省、これは何で少年法の中にあって家庭裁判所にこういう児童福祉法の成人刑事事件などは起訴されるようになっているのか、この辺、ひとつ御答弁をお願いし、裁判所はこれについてどういう留意をしながら裁判をなさっているのか、これもちょっとお聞きをしたいのでございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕 <0141>=松尾政府委員= 少年法三十七条の置かれた趣旨でございますけれども、少年法三十七条は、少年の非行の背景といいますか、その背後には成人の無理解とかあるいは不当な取り扱いが多いという、これは社会実態だろうと思いますが、そうした非行少年の原因となるような一定の成人の犯罪につきましては、やはり少年の非行を専門に扱っている家庭裁判所で同じように審理することが適当であろう、こういうことで、家庭裁判所の専属管轄として成人の刑事事件も入れているということだろうと思います。 <0142>=安倍最高裁判所長官代理者= 家庭裁判所における審理の実情について御説明を申し上げたいと思います。  この少年の福祉を害する成人の刑事事件の手続は、地裁と同様に、刑事訴訟法の手続に従って行われるわけでございます。この審理に当たりましては、今委員から御指摘もありましたように、被害児童の情操やプライバシーを必要以上に害しないように配慮すべきことは当然だと考えられておりまして、地裁における審理と同様に、例えば、今御指摘がございましたような被害児童を証人として尋問する場合には、裁判所外における証人尋問でございますとか、さらには公開停止とか、被告人の退廷でございますとか、あるいは傍聴人の退廷でございますとか、こういった方策を事犯に応じてとりながら配慮をされているものと承知しているところでございます。  以上でございます。 <0143>=坂上委員= なかなか苦しい答弁なんだろうと思うのでございますが、「注釈少年法」、これをちょっと勉強させてもらいました。また、お話によりますと、少年法の国会審議の中でこの問題については全く議論にならなかったそうでございます。  そこで、学者の解説を読んでみますと、こう言っているのですね。「成人の刑事事件」ですが、「本章は、少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講じるという法の目的」少年法の目的ですが、「を受けて設けられたものである。」  でありますから、やはり少年の福祉を害する犯罪行為に対しまして、法の目的を達成するために家庭裁判所を専属管轄にする、こういうものだ、こう言っているのですね。確かに、今、刑事局長が言ったように、  非行の背後には成人の無理解や不当な取扱が多く、そのような成人の行為が犯罪となる場合の刑事事件は、少年事件を専門に扱い少年に理解のある家庭裁判所が取扱うのが適当であること、このような事件は、少年事件の捜査・調査等の過程で発覚することが多く、証拠関係も共通する場合が多いことから、この種の事件は家庭裁判所が取扱うのが便宜と考えられ、少年の福祉を害する成人の刑事裁判は家庭裁判所の管轄とされた。 こう書いてあるのですね。まあ、大体答弁。  しかし、話を聞いている限りにおいては、では一体、地方裁判所の刑事裁判とどれだけ違いがあるかというと、何も違いないのじゃないでしょうか。率直に言って、私はそう思っています。  そこで、提案者にお聞きをしますが、この法案が家庭裁判所を専属管轄にしなかったのはどういう意味でございますか。 <0144>=大森参議院議員= しなかった理由というか、お答えになりますかどうか、裁判所法で、地方裁判所の裁判権を規定したものがございます。そして、原則として、「罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審」とありまして、例外として、家庭裁判所の裁判権というものも、裁判所法三十一条の三というふうにしております。  それで、いずれに管轄を持つか、もちろんこの法律の中で管轄を規定することもできるわけでございますけれども、特に、原則地方裁判所とすることに例外を認める積極的な理由は見つけなかったというのが理由になると思います。 <0145>=坂上委員= 私は、提案者に申し上げたいのですが、やはりこういうのは、児童保護がこの法律の目的、児童福祉法もやはり児童の福祉、保護のため、それから学校教育法もそうなんですね。だから、これを専属管轄として家庭裁判所、しかし、家庭裁判所になぜしたのか。実務上の扱いがどれだけ違うのかというと、大した違いがないのですよ。  だけれども、立法の趣旨としては、やはり児童の福祉を害するような行為については専門は家庭裁判所であるから、それからまた、この少年法の趣旨からいって家庭裁判所の管轄がベターである、こういう判断のもとでなったんだ。これは、さっきの裁判所あるいは法務省の答弁でございます。せっかく先生方がそれだけ御配慮いただいてこれだけの法案ができたのでございますから、何で家庭裁判所の方を専属管轄になさらなかったのだろうか。  ただし、こういうことがあるのです。先生方の気持ちの中に、ここにも書いてあるのですが、  少年を放任し又は原因を与えて少年を非行に陥れた成人を罰するアメリカの原因供与罪にならったものといわれているが、それを中途半端に採用したために、実効性の乏しいものになったうえ、職権主義的・非要式的な審問主義の家庭裁判所の手続の中に、当事者主義的・対審的手続の成人刑事事件を取入れたこと、少年一般の福祉を守るという理念から、少年保護事件と直接の結びつきのない成人の刑事事件を、少年保護事件を取扱う家庭裁判所で処理することにしたこと、保護者を対象とする処分が認められていないこと、などの制度的な問題点があるうえ、併合罪の併合の利益が害される場合があるなど立法的に解決すべき問題点が多いと指摘されている。 こういうことでございます。こういうような解説があるのですね。  だから、端的に言いますと、今は地方裁判所でやろうと家庭裁判所でやろうと、いわゆる公開主義によるところの、刑事訴訟法によるところの裁判でございますから、何らの少年法の趣旨というものがこの裁判の中に生かされていない、全く中途半端だということがここの中に書かれているわけであります。  したがいまして、ちょっときのう、おとといあたりの質問取りの中にも若干そんな感じを私は抱いていたのですが、先生方の中ではどういうふうな、いわゆる児童福祉というような観点から、これは、児童は被害者であり、相手は加害者であるという概念であるわけでございますのが、できるならば、私は、どうも立法の趣旨から見るならば、家庭裁判所が専属管轄にしてもいいんじゃなかろうか。  ただ、実際は余り区別がないようでございまして、率直な話、先生方は、区別がないから、どうしようもないから地裁にしたのだ、こうなるのか、あるいは、家庭裁判所に出しても家庭裁判所はそれだけの効果を余り発揮していないのだ、こうなるのか、率直な御答弁をいただきたいのです。 <0146>=堂本参議院議員= 今先生がおっしゃいましたこと、ごもっともでございまして、最初に自社さ案でつくっておりましたときに、児童福祉法の三十四条、これは淫行について決めたところですが、これは今先生がおっしゃったように、福祉の視点から淫行に関しての処罰ということで、その段階で、児童福祉法から三十四条を削除した場合には家庭裁判所を管轄にするということの議論を随分といたしました。  しかし、三十四条を削除して、なおかつ刑法だけでやるということになりますと、今度、児童の福祉の点やなんかに関して、刑法では十分にできない、リハビリその他の点はできないということで、削除をやめた段階から、福祉が前提ではなくて、今回の場合はあくまでも刑法の領域にとどめる、そして、もっと児童福祉については、再度児童福祉法の改正をしなければならないという判断から、こういうような形になったわけでございます。 <0147>=坂上委員= お聞きをいたしておきます。御検討を私は求めておきたいと思います。  その次に、第八条は未遂罪を罰しておりますが、その他のものについて未遂罪を罰しないのはどういう理由