第145回国会 本会議 第44号 1999年08月11日       (1999年08月23日 15:00 登録) 平成十一年八月十一日(水曜日)    午後五時六分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第四十五号   平成十一年八月十一日    午前十時開議  第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制   等に関する法律案(第百四十二回国会内閣提   出、第百四十五回国会衆議院送付)  第二 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律   案(第百四十二回国会内閣提出、第百四十五   回国会衆議院送付)  第三 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第   百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会   衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一より第三まで  一、法務委員長荒木清寛君解任決議案(円より   子君外五名発議)(委員会審査省略要求事件   ) 平成十一年八月十一日(水曜日)    午後五時六分開議 <0001>=議長(斎藤十朗君)= これより会議を開きます。  日程第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案  日程第二 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案  日程第三 刑事訴訟法の一部を改正する法律案   (いずれも第百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付)  以上三案を一括して議題といたします。      ─────・───── <0002>=議長(斎藤十朗君)= これより法務委員長の報告を求めるのでありますが、円より子君外五名から、委員会審査省略要求書を付して、法務委員長荒木清寛君解任決議案が提出されておりますので、まず、本決議案についてお諮りいたします。(拍手)  法務委員長荒木清寛君解任決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0003>=議長(斎藤十朗君)= 御異議ないと認めます。  よって、本決議案を議題といたします。  まず、発議者の趣旨説明を求めます。円より子君。     ─────────────    〔議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔円より子君登壇、拍手〕 <0004>=円より子君= ただいま私ども民主党・新緑風会は、日本共産党、社会民主党・護憲連合とともに、荒木法務委員長の解任決議案を提出いたしましたので、代表して、その趣旨を御説明いたします。(拍手)  先週の金曜日、自民党参議院国対委員長は、議員総会で、八月九日月曜日、つまり一昨日の法務委員会で組織犯罪対策三法案の採決をすると明言され、それがテレビのニュース等でも流れました。  私たちは、法務委員会の理事懇談会で今週の日程協議の真っ最中でございました。  そこで、自民党、自由党、公明党が主張するような採決を前提とした委員会開催に応ずることは国民に対する裏切りとなりますので、私は、民主党の理事として強硬に反対し、平行線のまま理事懇は深夜に及びました。  ところが、突然、荒木……(「あなた、いなかったじゃないか」と呼ぶ者あり)おりました。  一々こんなことに、不規則発言に応じることはございませんね。不規則発言はおやめいただけますでしょうか。  ところが、突然、荒木委員長は、自民党、自由党、公明党の理事だけの賛成のもと、職権を乱用し、委員会開催の定例日でもない一昨日月曜日に、通信傍受、いわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案の委員会を決定いたしました。  私、民主党の理事は、共産党、社会民主党・護憲連合のオブザーバーとともに反対を表明し、怒りを持ってその理事懇の席から退席いたしました。(発言する者多し)  不規則発言はおやめいただけませんか。議長、少しお願いいたします。 <0005>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0006>=円より子君(続)= ありがとうございます。(拍手)  そして一昨日、定例日でもない午後八時という異常な時間帯に、荒木法務委員長は職権を乱用し、法務委員会を強硬に開催いたしました。そして、あろうことか、採決を強行しようと企てたのです。  その後、慌ただしく、まるで逃げるように委員会室を抜け出て、参議院議長に採決をしたと報告した後、九時半から記者会見をなさったその席で、委員長はこのようにおっしゃったそうです。  質疑を終了し、直ちに採決すべしとの自民党鈴木理事の動議を採決し、その後、組織犯罪対策三法案について採決し、可決したと説明したそうです。それがテレビのニュースにも流れました。  しかしながら、私どもはその席におりましたが、自民党理事の緊急動議は聞こえませんでしたし、委員長が……(「聞く耳持たないからじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)聞いていらっしゃれば聞こえます。本会議場ではお静かにしていただきたいと思います。  しかしながら、私どもは、自民党理事の緊急動議も聞こえませんでしたし、委員長がそれに従って採決をしたとは全く見えませんでした。  ましてや、可決などしなかったし、自自公がもくろんだ一昨日の強行採決は全く不発に終わったのです。つまり、採決はなかった、そして可決もなかったのです。(拍手)  テレビや新聞では、このいわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法案が参議院の法務委員会で可決されたと報じられ、国民はそれを信じてしまうかもしれません。委員長が、荒木法務委員長が偽りの報告をした罪は重いと言わねばなりません。  私どもは、国民すべての方に、強行採決という暴挙はあったがそれは不発に終わったこと、この採決は無効であることを報告する義務があります。そこで、一昨日の夜八時五十分前後のことを、国会内の院内テレビからとりましたビデオと、そして速記部から受け取りました未定稿で再現するとこのようになりますので、国民の皆様にしっかりとお聞きいただきたいと思います。  ちょうど八時五十分ごろのことでございます。もちろんこれは私の決められた質問時間のまだ途中でございました。そこで、私はまず法務大臣にこのようにお尋ねしたんですね。よろしいですか。皆さん聞いていてくださいね。今……(発言する者多し) <0007>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0008>=円より子君(続)= もう一度申し上げます。  速記部から受け取った未定稿で再現いたしますので、皆さん聞いていてください。法務大臣にお尋ねしたところでございます。  法務大臣、よろしいですか、と私は尋ねました。今、私がいろいろ議了できない理由を話しましたけれども、法務大臣の御答弁ももちろん欲しいんですけれども、私は総理にも先ほどからぜひ質問をしたいと申し上げておりましたが、大臣はこの総括質疑をすることに反対でいらっしゃいますか、賛成でいらっしゃいますかと。国務大臣陣内孝雄君が答えております、その点については委員会でお決めいただくことだと思います。で、円より子君、私です。申しわけありません、今全く聞こえませんでしたので、もう一度お願いできますでしょうか。このように言いましたのは、ふだんは四十三委員会室というのは大変広いところでございます。自民党の委員の方々はよく席を立っていらっしゃいまして、全く閑散としているような委員会なんですが、この日は大勢の傍聴人がいらっしゃいまして、異常な雰囲気の中で全く御答弁が聞こえませんでした。(発言する者多し) <0009>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0010>=円より子君(続)= すると、国務大臣陣内孝雄君はこのように答えられました。委員会でお決めいただくことだと思います。で、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)。で、円より子君、では、これは多分理事懇か理事会での協議になると思いますので、委員長、ぜひ総理への質問ができるように総括質疑を開いていただきたいんですが、明確なお答えをいただけませんでしょうか。このように私が言いましたら、委員長荒木清寛君、彼はこのように答えました。理事会で協議をいたします。理事会で協議をいたします、そのようにお答えになった。速記録にきちんと残っております。そして、ただし、そのようなことであれば、どうして金曜日の八月六日の理事懇の際にそういう御主張がなかったんでありましょうか。大変私は不思議に思うわけでございます。少なくとも……(発言する者多し)になっております。それで私、円より子君、私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうか。これは速記録を読んでおりますので。私どもはまず、皆さんちょっとお静かにしていただけませんでしょうかと速記録に書いてあります。(「理事会、理事会」と呼ぶ者あり)で、私がまた申し上げます。私どもは、六月一日に衆議院からこの法案が送付されたときに、まず質疑の日程について全体にこういう形で質疑をしていこうという提案をいたしました。そのときに、しっかりと総理を招いての総括質疑をお願いしたいと申しております。先週の金曜日は、そういったことの話し合いもできないうちに、荒木委員長が御自分の裁定できょうの組織三法の委員会を開くと、それこそ強行なさったわけで、今ごろ、金曜日になぜ言わなかったのか、そんなことをおっしゃるとは思いませんでした。今ぜひ、もしあれでしたら今から理事懇を開いていただきたいと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)。それで、委員長荒木清寛君、円理事に申し上げます。質疑を続けてください。質疑を続けてくださいと委員長は申されたんですね。そして、円より子君、私は、理事会を開いていただくということの確約がありましたら、私、これから質問したいと思います。(発言する者多し)で、また、委員長荒木清寛君、円理事に申し上げます。質疑をお続けください。(「答えは」と呼ぶ者あり)。それで委員長が、先ほど申し上げましたように、理事会で協議をしますということは申し上げましたが、それは今やるべきことではございませんから、質疑を続けてください。質疑をお続けください。こうおっしゃったんですね。そして私が、今、理事会を開くとおっしゃいましたよね。協議をするとおっしゃいましたね。いつそれはなさいますか。  私が翌日速記録を要求いたしましたら、一応私の質問のところだけ、もちろん長い質疑の最後のところだけ今申し上げたんですが、ここまでいただきました。その後、委員長の許可をいただきまして、その後のところがどうなっているか、いただいたところ、この後は鈴木正孝君となっていて委員長と書いてあります。私はこれは聞こえませんでしたが、こう書いてあります。その次に、委員長荒木清寛君が、後刻、後刻……(議場騒然、聴取不能)、鈴木君提出の動議に賛成の方の挙手を願います。(議場騒然、聴取不能)、委員長退席、このようになっているわけです。ここで速記は終わっております。  委員長は、挙手を願いますとおっしゃったけれども、鈴木理事は委員長としかおっしゃっていないわけで、この中身が何だったのかだれにもわかっておりません。一体何の動議だったのか。委員長は中身を聞かずともわかっていて挙手を求められたのか。それなら緊急動議の出る以前に強行採決を決めていらしたことになるわけです。  このとき……(発言する者多し)お静かにしていただけませんでしょうか。このとき委員会室は騒然となりまして、速記録にある鈴木理事の「委員長」という言葉も聞こえなければ、私たちは、委員長が鈴木君と指名なさった声も聞こえませんでした。指名はありませんでした。ということは、委員長の了解なしの自民党理事の発言は不規則発言でしかないわけです。つまり、月曜日、私の質疑時間中に行われた緊急動議は無効でしかありません。  その上、私たちは、委員長が挙手の確認をなさっていないこともしっかりと確認しております。もちろん、記者会見でおっしゃったような二度目の採決も見ておりません。  委員長は、記者会見で二度採決をしたとおっしゃっているんですよね。私たちは二度の採決を全く見ておりません。これはビデオでも議事録でもしっかり確認できることです。委員長は、記者会見で、何人の人が手を挙げたんですかという記者からの質問にもお答えにはなれませんでした。それは当然のことです。数えていない、確認などできる状況ではなかったからです。  つまり、緊急動議の中身を聞かず挙手をさせ、そして確認をせず、可決しましたともおっしゃらず、まるでこそこそと逃げるように退場なさったわけです。速記の方々は、かわいそうに、委員長が休憩とも散会ともおっしゃらなかったので、ずっと座り続けておられました。  まず、私どもは、この採決が無効であることを怒りを持って表明いたします。また、それを可決されたと議長に報告され、記者会見までされた委員長の良識を疑わざるを得ません。  私は、昨日すぐに委員長に、法務委員会の理事懇談会を開いていただきたい旨の連絡をし、委員長としては多分、一昨日の委員会を休憩としたかったのであろう、多分、その次の日一晩寝て反省、再考なさって、委員会を再考なさろうと思われているのではないかと思い、理事懇談会を開くことを要請いたしましたが、委員長からは、必要なしとの代理の返事しかいただけませんでした。  私どもは、まず、委員長が良識をぜひお取り戻しいただき、委員会を再開なさり、一昨日の前代未聞の強行採決の企ては間違いだったと謝罪なさることを切に願っておりましたが、態度をお変えにならないということであれば、前代未聞の、そして参議院として恥ずべき一昨夜の暴挙に対し、国民を代表し委員長の解任決議を出さざるを得ないとの結論に達しました。  荒木法務委員長、私はしかし、こうした解任決議を出さざるを得ないことを大変残念に思っております。もう一度委員長に再考をお願いしたいと思います。  あなたが、荒木委員長が法務委員長になられてからのまじめで誠実なお人柄と委員会運営を私はよく知っております。(発言する者多し)不規則発言はおやめいただけませんでしょうか、せっかく委員長のことをお話ししておりますのに。  外国人登録法改正では、私どもは衆議院に先立って審議を重ね、指紋押捺を拒否し協定永住資格を失った、そして人権救済の最後のとりでと思っていた最高裁で争って敗訴し、失意の日々を送っていたピアニスト崔善愛さんの原状回復に委員長が御尽力いただいたことを私は忘れてはおりません。  それだけに、自民党の誘いで与党の仲間入りをすることになり、委員長としては、本心を裏切ってのこのいわゆる盗聴法への賛成と、今回の採決を強行せざるを得ない立場になったことについては日夜悩まれたに違いなく、同情を禁じ得ないのでありますが、ともに人権と正義と平和のために闘ってきた荒木法務委員長にこそ一昨日のような強行採決を企てていただきたくはありませんでした。  委員長としての解任の理由の第一は、以上のように、私、民主党の質疑を途中で打ち切る、つまり質疑の妨害をした自民党理事の動議を採用し、組織犯罪対策三法案の採決を強行したことであり、それが全く無効であるにもかかわらず、議長にまで採決、可決したと報告し、なかんずく、記者会見をして、この採決は有効であり組織犯罪対策三法案は可決されたと伝えたことであります。  こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる斎藤十朗議長も、このような暴挙を……(「ストップ、ストップ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し) <0011>=議長(斎藤十朗君)= どうぞ発言をお続けください。 <0012>=円より子君(続)= こうしたいわゆる盗聴法の採決は議会制民主主義に対する冒涜であり、よもや、参議院と二院制の意義を高く評価し参議院の改革に熱心に取り組んでおられる斎藤十朗議長も、このような暴挙をお認めにはならないと信じます。  さて、くしくも委員長が職権を乱用して一昨日の委員会を設定した先週の金曜、八月六日は、五十四年前、広島に原爆が落とされた日であり、そして良識の府の参議院として恥ずかしい強行採決を企てた、もちろんこの採決は無効でございますが、その採決を企てた一昨日は長崎に原爆が投下された日でありました。  情報を操作し、国家の管理を強め、戦争へと突入した結果、多くの人命が失われたあの戦争の後、私たちは二度と国民のプライバシーを侵し、国民を監視するような国にしてはならないと誓い合ったはずです。(拍手)  それなのに、今、小渕内閣は、国家の管理を強めるこの危険性のある、そして国民の生活を再び不安に陥らせるようなこのいわゆる盗聴法を、一昨日、強行採決の挙に出ました。  私どもは、当初からこの法案には問題が多いと訴えてきましたが、審議を進めるにつれ、この法案の問題点がますます顕著になってきました。なぜ廃案にすべきなのか、継続にすべきなのか、今ここで議了してはならないのか、いわゆる盗聴法の問題点を指摘しなければなりません。(拍手)  委員長にも与党の方々にもぜひもう一度理解していただきたいと思います。  この三法案は、六月一日に衆議院から参議院に送付されてきました。大変残念なことに、衆議院では審議は全く尽くされず、また公聴会などで国民の意見を聞くこともなく、問題を積み残したまま、自民党の委員長によって強行採決されるという異常な状態で衆議院を通過したわけです。  参議院では、このような状態を非常に憂い、三法案の問題点をしっかりと究明する必要があるとの観点から、国民の立場に立った審議を行ってきました。しかしながら、十分な審議を尽くしたという与党の言い分は決して認められるものではありません。  確かに、参議院では良識の府として、議員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、また参考人質疑や……(「休憩休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然) <0013>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。御静粛に願います。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)  発言を続けてください。 <0014>=円より子君(続)= 参議院ではこのような状態を非常に憂え……(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然) <0015>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。御静粛に願います。  円君、発言を続けてください。どうぞ。どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静粛に願います。 <0016>=円より子君(続)= しかしながら、十分な審議をし尽くしたという与党の言い分は、決して認められるものではありません。  確かに、参議院では良識の府として、委員らによる対政府質疑だけでなく、参議院の会の委員外発言を認めたり、ただ二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただいたのに委員長の審議強行打ち切りで実現しませんでしたが、とてもこれは残念なことです。  ただ、参考人質疑や中央公聴会……(発言する者多く、議場騒然) <0017>=議長(斎藤十朗君)= 議員は議席に御着席ください。  どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)議席に御着席ください。御静粛に願います。御静粛に願います。不規則発言はお慎みください。  どうぞ。(発言する者多く、議場騒然)御静粛に願います。不規則発言はお慎みください。  どうぞ御発言ください。 <0018>=円より子君(続)= 先ほども申しましたように、残念ながら、二院クラブの委員外発言は、一昨日、せっかく来ていただきましたのに委員長の審議強行打ち切りで実現いたしませんでしたが、参考人質疑や中央公聴会を開いて専門家や一般国民から広く意見を聞いてまいりました。しっかり私どもは参議院として審議を尽くしてきたと思っております。  しかしながら、私たちが要求していた総理が出席する総括質疑は開催されませんでした。  総理は、本会議で、こういった法案が通ると警察が権力を乱用するのではないかと言う人がいるが、私は警察を信用しているし、違法捜査などということは決してあり得ないという趣旨のことをおっしゃいましたが、そういった総理の楽観主義と、ただ総理のお言葉だけでは国民の心配は決して消えないのではないでしょうか。だからこそ、委員会での総括質疑に応じることできちんと国民の疑問に私どもは答えてほしかったのです。  また、衆議院で自民党の委員長が強行採決をした後、総理は、衆議院の自民党の法務委員長に電話をなさり、よくやったとねぎらわれたそうですが、幾ら電話魔と言われていらっしゃる総理であっても、立法府の手順と民主主義を無視した委員長の態度を褒めたたえるとは総理にあるまじき行為としか思えず、それも確認させていただきたかったのです。しかし、総理出席の総括質疑はついに実現しませんでした。(発言する者多く、議場騒然) <0019>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。議席に着いてください。議員の皆さんは議席に着いてください。御静粛に願います。議員の皆さんは議席に着いてください。(「休憩してください。抗議したいんです」と呼ぶ者あり)  今、各党の理事が協議をしておりますから、それにお任せください。皆さんはお着きください。各会派の代表が協議をしておりますので、皆さんの御意向はその代表者が協議されておりますから、どうぞ議席にお着きください。議長の整理に従ってください。  円君、どうぞ発言を続けてください。どうぞ御静粛にしてください。 <0020>=円より子君(続)= また……(発言する者多く、議場騒然) <0021>=議長(斎藤十朗君)= 議席にお着きください。聞こえますか。議長の指示に従ってください。──どうぞ発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──議員の皆さんは御着席ください。議席にお座りください。今、各会派の代表理事が相談をしておりますので、どうぞ御着席ください。そして、円君、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──発言中も理事の協議は続けておりますから、どうぞ議席に御着席ください。御発言願います。(発言する者多く、議場騒然)──円君、発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──どうぞ議席に着いてください。議席に着いてください。(発言する者多く、議場騒然)──皆さんの代表理事が協議をしておりますので、どうぞ議席にお戻りください。(発言する者多く、議場騒然)──どうぞ発言を続けてください。発言を続けてください。(発言する者多く、議場騒然)──円君、どうぞ発言を続けてください。 <0022>=円より子君(続)= はい。私は発言を続行したいと思いますが、何やらよほどのことが起きたようで、議場が騒然となりました。  その理由は、私に対する個人的な中傷とセクハラ発言のように今聞こえました。それをしっかりと私にお話しいただいて、解決できない限り私はここを立てません。そして、発言はできません。教えてください、どういうことがあったのか。  個人的中傷やセクハラは、私はこんなところで許せるはずがありません。(拍手)  議長、お願いいたします。私は、どんなことが言われて、こんなに議場が騒然となったのか、ぜひ私に聞かせていただきたい。それがわかってからしか発言を続行できないと思います。(「休憩、休憩」「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し) <0023>=議長(斎藤十朗君)= これにて十分間休憩いたします。    午後六時九分休憩      ─────・─────    午後六時五十一分開議 <0024>=議長(斎藤十朗君)= 休憩前に引き続き、会議を開きます。  休憩前の議事において、不規則発言の中で不穏当な発言があったとの指摘につきましては、後刻、議院運営委員会理事会において速記録等を調査の上、議長において適切に措置いたします。     ───────────── <0025>=議長(斎藤十朗君)= 法務委員長荒木清寛君解任決議案を引き続き議題といたします。円より子君。    〔円より子君登壇、拍手〕 <0026>=円より子君(続)= 一昨日、私の法務委員会での質疑中に緊急動議が出まして、私の質問は打ち切られました。それと同じことが、今また自民党からの不規則発言によって打ち切られたことは大変残念でございますが、私は粛々と趣旨説明をいたしておりましたのに、大変私を侮辱するような発言があったとのことでございました。  全くこの壇上においてはわかりませんでしたけれども、民主党の方々や他の野党の方々もお立ちになって騒然といたしましたとき、多分、傍聴席の方々やテレビでこれを見ていた方々は、私ども野党が審議を妨害しているかのようなイメージを受けられたかもしれません。しかしながら、その種をまきましたのは自民党の方と聞いております。  それも、ちょうど荒木委員長に対して、私が長い間法務委員を務め、荒木委員長の誠実なお人柄とそのまじめな委員会運営について申し上げておりましたそのときに、なぜこのような強行採決をなさるのか随分悩まれたのではないか、そのように話しているときに、大変下品な言葉で私をあんたとかおまえとか、そんな言葉で人様から呼ばれたことはございません。それを、あんたも離婚したんだろ、そのようにおっしゃったそうでございます。  私は、そんなことは何度も今まで言われてまいりましたから、普通のところでございましたら軽く聞き流してもよかったのでございますけれども、ここは参議院、良識の府の参議院でございます。そこでそのような人権を無視するような発言をなさったことは大変遺憾でございます。  なおかつ、私はこれを個人的な中傷とか差別とは思っておりません。多くの人たちが、特に与党の方たちは離婚に対して大変ひどい差別感と偏見をお持ちでございます。今までの政策を見ましても、今、離婚件数は明治以来統計をとり出してから最高の件数の二十四万件を超えておりますが、そして離婚率もこれまでの史上最高でございますが、それに対して、自民党が長年政権をとってきた中でどれだけ、なぜ離婚せざるを得ないのか、そうした家庭の人たち、住宅政策や経済政策、雇用政策、そして福祉、それらについて本当の意味で人々が生きやすい政策をつくってきたか。  それは決してそうではありません。そこには常に女が勝手に離婚したという形で、女の人たち、その子供を引き取った女性たちを制裁する政策しかとってはきませんでした。離婚したことを制裁するだけで、人々が生きやすい政策などつくれるわけがありません。離婚しないで済むような雇用政策、経済政策、そして離婚しても子供たちと母親と、そして離婚した男性も生きやすい社会をつくることこそが政治家としての使命ではないでしょうか。(拍手)  日本では未成年の子供たちの七割が母親に引き取られております。その母親は、ほとんどの女性が結婚をして姓を夫の姓に変えざるを得ず、九七・七%が男性の姓になっております。そうした中で名前を変え、そして夫の転勤や、子供が生まれ、育てる、そういう中で仕事をやめざるを得ず、離婚をしても年齢制限があって再就職もできないようなそういった状況の中で、なぜ離婚に対してそのような差別や偏見をなさるのか。私は多くの離婚を考えている人たち、そして離婚した人たちを代表して、怒りと、その発言の撤回を求めます。(拍手)  さらにつけ加えるならば、離婚に対する偏見と差別は、結婚をしない女性や結婚をしない男性、そして子供を産む産まないは本来はそのカップルの選択であるのに、産めないこと、産まないこと、そうしたことに対して差別をする社会をも助長するものであります。  私たち民主党は、どういう生き方をしても差別されない、偏見を持たれない、公正な社会であるよう政策をつくってまいりたいと思っておりますが、どうも先ほどの不規則発言を聞きますと、自民党の方々にはそのようなお気持ちはないようで大変残念でございます。  それでは、先ほどの発言の続きをさせていただきたいと思います。  先ほど私は、委員会で総理が総括質疑に応じてくださるよう法務委員会でその場を設けたい、そのように六月一日に衆議院から回ってまいりましてからずっと要請をしてきたと申し上げました。その理由は、るるこの法案には問題点が多いことを説明いたしましたが、そこでぜひ総理に国民の疑問に答えていただくように、理事会を開いてでも今やってほしいと申し上げたわけですが、法務委員長は、一昨日月曜日の午後八時から始まりました法務委員会で、私の質問の途中、では理事会を開催してくださるんですねと申し上げましたら、理事会で協議しますとおっしゃり、そして、今ではやっていただけませんかと申し上げますと、今は無理ですが後刻、後刻とおっしゃったわけです。  ところが、そこで自民党の理事から緊急動議が出て、出たことを私たちは知りませんでしたが、何やら委員会室が騒然として、そして何も聞こえないうちに委員長は退席なさり、参議院議長のお部屋にいらっしゃって、この組織犯罪対策三法、いわゆる盗聴法を含むこの三法の採決がなされ、そして可決したことを報告なさったわけです。  しかし、私たちは、議事録を見てもビデオを見ても、委員会での採決は全く存在しなかったことをしっかりと確認しております。そしてもちろん可決もされませんでした。それを採決があったかのように参議院議長に報告し、可決もされたとそのように報告し、そして記者会見まで開いた。そのことは参議院議長に対する侮辱でもあり、国民に対してうそ偽りの報告をしたことは決して許されることではないのではないでしょうか。  さて、この法案の問題点の途中で私の質疑が休憩となって終わりましたので、途中から話させていただきたいと思います。多分、議場が騒然としておりましたので、ほとんどの方が私が申し上げたことをお聞きになっていなかったかもしれません。そこで、ほんの少し前からですが、お話ししたいと思いますが、委員会での総括質疑に応じることできちんと総理には国民の疑問に答えてほしかったのです。  また、衆議院で自民党の委員長が強行採決をした後、総理は、電話魔と言われているそうですが、電話をなさり、杉浦委員長によくやったとねぎらわれたそうです。立法府の手順と民主主義を無視したこの衆議院法務委員長の態度を褒めたたえるということは、皆さん、総理にあるまじき行為だとは思いませんか。それも本当に、総理がよくやったと思われ、民主主義を無視したやり方をいいことだと思っていらっしゃるのかどうか、私は確認させていただきたかったのです。しかし、総理出席の総括質疑はついに実現しませんでした。  また、携帯電話やインターネットも傍受対象とするということで、今後の日本経済を牽引していくはずの情報通信産業の発展を阻害する危険性もあるため、私たちは通産大臣、郵政大臣、自治大臣が出席しての連合審査を求めてまいりました。連合審査は、担当の経済・産業委員会、交通・情報通信委員会、地方行政・警察委員会からの要求によって開かれるわけで、民主党はそれらの委員会で連合審査を要求してまいりました。もちろん民主党だけでなく、共産党も社民党も、そして無所属のオブザーバーもこれらを要求してまいりました。  しかし、それらの委員会の理事懇で与党はかたくなにこの連合審査を拒否し、私たち法務委員会の方に連合審査の要請をいたしませんでした。これは大変国民にとってもこの法案にとっても残念なことと言わねばなりません。  また、良識の府である参議院は、衆議院よりも確かに長時間の審議を行ってまいりました。しかし、長時間審議をすればそれで十分審議をし尽くしたというものでは決してありません。物事は時間の問題だけではないのです。これまでの審議によって法案のさまざまな問題点が浮かび上がってきたわけですが、審議の中でそれらの問題点は決して究明されたり、解決されてはおりません。  六月一日に参議院に法案が付託されてから、七月三十日で六十日が経過しました。その前後から、理事懇では、憲法五十九条第四項の条文が頻繁に話題に上がるようになりました。憲法五十九条第四項は次のように言っています。「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」。そして、衆議院で出席議員の三分の二以上で再び可決した場合は、法律となるわけです。  これまで、百以上の法案が六十日を経過しましたが、五十九条四項によってみなし否決をされたのはたった三例にしかすぎません。ほとんどの法案が六十日を過ぎても審議を続けてまいりましたのは、国民の立場から慎重で徹底した審議を行っていたからであり、みなし否決された三例は、海上保安庁職員の給与等、国民生活を左右するような重要法案ではありませんでした。  今回の通信傍受法は、これからの二十一世紀の日本がどうなるかを決するほどの重要法案であります。それを、憲法の規定を盾にとって、私、民主党の理事に対し、脅迫材料のように採決しろ、採決しろと理事懇で自民党、自由党、公明党が言い続けましたのは、むしろ国民軽視として非難されるべきことではないでしょうか。(拍手)  衆議院では明らかにされなかった問題点を、この法律の、特にいわゆる盗聴法の問題点を参議院で明らかにし、慎重かつ熱心に審議している最中に、衆議院がみなし否決をするのであれば、それは参議院を侮辱するものであります。もしそうした衆議院のみなし否決をするような態度が見えれば、与野党そろって抗議する姿勢こそ、参議院の存在意義であると私は思っております。(拍手)  そう思っておりましたから、自自公のそのような脅迫にも動ずることはありませんでした。そして、法律案のさまざまな欠陥を国民の前に明らかにしてきましたし、今後もさらなる審議を尽くしていくことが国民の利益であると考えます。それなのに、審議を突然打ち切って強行採決を企てるとは、国民が政治への不信をますます強めることになるでしょう。荒木法務委員長の責任は大変大きいと言わねばなりません。  そもそもこの法案は本当に必要なのでしょうか。審議をしていく中で、その必要性の希薄さは明らかになりました。  法務省では、二、三十年前から通信傍受を可能にする法律の制定を検討されてきたということです。若い検事をアメリカへ毎年留学させ、彼らはアメリカで、もちろん捜査に熱心で日本の組織犯罪を何とか食いとめたいという思いからだとは思いますけれども、盗聴が捜査に大変有効だと聞き、そして日本でぜひともこの盗聴法を成立させたいと皆さんに諮られたと聞いております。  自白というものが年々得られにくくなってきている状況の中で、何とか日本でもこの盗聴法の捜査方法を取り入れたいというのは、その若い検事の方々だけではなく、法務省全体の長年の悲願であったと聞いております。 <0027>=議長(斎藤十朗君)= 円君、時間が相当過ぎておりますので、そろそろまとめてください。 <0028>=円より子君(続)= はい、申しわけありません。なるべく早く話したいと思います。  しかし、本当になぜこの法律が必要なのでしょうか。なぜ強行採決を企ててまで急がねばならなかったのでしょうか。  陣内法務大臣は、趣旨説明の中でその理由を、急増する組織犯罪に対処するためということを言い、その最大の具体例として、一連のオウム事件を挙げてまいりました。大臣は、某テレビ番組の中で、通信傍受法、つまりこれは盗聴法のことですね、これがあればオウム事件は防げたという趣旨の発言をなさいました。しかし、この法律があってもオウム事件は未然には全く防げなかったということは審議の中で明らかとなりました。大臣は後になってテレビ番組での発言を撤回なさいましたが、テレビ番組であのような発言をしたということで国民に大きな影響を及ぼしたことは間違いありません。  また、与党の委員は審議の中で、暴力団、オウムなど昔とは犯罪の形態が変わってきており、通信傍受法があればいかにもサリン事件は起きなかった、つまりこれも盗聴法のことですが、これがあればいかにもサリン事件は起きなかったというような言い回しで質問をしております。  盗聴法があってもオウム事件は未然には防げないのに防げるかのような言い回しをすることは、これは明らかに国民を惑わすものではないですか。そして、国民の不安をあおることによって盗聴法の必要性を印象づけようとする卑劣なやり方ではないかと私は思います。  さらに、組織犯罪の大ボスを捕まえるには携帯電話の傍受が必要だ、だから盗聴法がどうしても必要なのだということもたくさん言われてまいりました。ところが、携帯電話の傍受は現在の技術では非常に困難であることが、ほとんど不可能に近いということが審議の中で明らかになりました。そうすると、今度は、法案が成立すれば補助金を出して技術開発をするからいいんだと、そういう答弁をなさったわけです。  不可能なことをできると言い、できないことがわかれば今度はこれからやります、そうおっしゃる。これでは全く詐欺と同じではないでしょうか。  これと同じような答弁が傍受対象に報道機関を含めるかどうかという点についてもありました。  政府は当初、報道機関は基本的に通信傍受の対象になるという答弁をしておりました。ところが、つい先週になりまして、基本的に傍受対象にはしないというふうに答弁内容を百八十度変えられたわけです。しかも、それは法律に書くのではなくて運用で対応するとおっしゃる。つまり、法案に書かない限り後でいかようにも対応を変えられる、抜け道はあるというわけです。  このように、政府がころころと答弁の内容を変え、妥協してくるというのは、この法案が理にかなっていなくても、何が何でもこの法案を通したいという傲慢な態度のあらわれかと私は思います。  また、ある与党の委員は、覚せい剤があたかも一般市民へ蔓延しているかのように印象づけるため、細かな数字を使って次のような説明をしました。ことし半年で押収された覚せい剤の量は千百三十二・八キロであり、これは約三千七百七十六万回分の使用量に当たる。そして、これがもしも十トンであれば約三億三千万回分となり、全国民が一年に一回以上使う計算になるとおっしゃったわけです。どうも私にはこうした数字の使い方はわかりません。  このような仮定に基づいた説明をして、いかにもすべての国民が覚せい剤汚染に関係するかもしれないような、そういう言い回しは、私は扇動のような気がいたします。国民はそんな扇動に乗りはしないとは思いますけれども、組織犯罪が広がり、日本が覚せい剤によって支配されてしまうかのような宣伝をするなど、国会議員としては余りおやりにならない方がいい議論ではないかなと思えてなりません。  日本国内の凶悪犯罪の発生状況は、欧米諸国と比較して極めて低い水準で推移していることは政府も認めています。人口十万人当たりの発生率では、日本は殺人ではアメリカの約九分の一、強盗では約百十三分の一にしかすぎません。銃器を使用した犯罪も増加してはおりません。オウム事件に対する捜査が盗聴法やマネーロンダリングの規制がなかったため十分でなかったという主張は、全く論外です。  つまり、このような与党側の質疑と政府の答弁からもわかりますように、必要性のための根拠が全く明確ではありません。このような説明で幾ら法律の必要性を説かれても、良識ある国民ならとても納得がいくはずがありません。これは、この法律がまともな法律ではないことを示しています。本当に必要な法律なら、偏った数字を出して脅迫めいたことをせず、普通に事例を出して、普通に審議をすれば必要性が自然に理解できるというものではないでしょうか。携帯電話の傍受があたかもできるようなことを言うなどということは、本当にやってはならなかったことではないでしょうか。  このいわゆる盗聴法の成立を急ぐ理由として、国際的な要請があるということも言われてきました。しかし、いわゆる国際組織犯罪条約はまだFATF、つまりこれは金融活動作業部会のことですが、ここで審議中であります。採択はされていないのです。条約の内容がまだ確定しておりませんのに国内法を整備する、そういうことは今まではなかったことです。採択された条約を批准するために、必要があれば国内法を整備するというのがこれまで我が国の通常の順序であったと聞いております。  我が国はこれまで、特に私ども野党が要求してきた人権関係条約の批准には大変消極的でありました。長い時間をかけて、私どもが要求してからしぶしぶ国内法を整えるという、それが今までの状態でした。それなのに、なぜこの盗聴法の成立だけはこんなに急ぐのでしょうか。不思議でなりません。  そもそも、国際組織犯罪条約の原案では、各国の状況に応じた組織犯罪対処策を広く認めております。各国に通信傍受法の制定を、つまり盗聴法の制定を義務づけているわけでは決してないのです。そのような捜査手法の国際化などより、日本においては、刑事手続の改革の方が先決ではないでしょうか。例えば、捜査段階における弁護士の立ち会いや証拠の全面開示など、捜査の可視化、つまり捜査内容がよく見える、どういうふうに捜査をしているかということが国民の目に明らかになるようにすることが、まず私どもがしなければならないことなんです。それをしないで、なぜこのいわゆる盗聴法を含む組織犯罪対策三法の成立をこのように執拗にこだわって成立を急ぐのか、全く理解できません。  盗聴捜査は、サミット参加国からの要請だと言われております。でも、それを言うならば、一九九八年十月、国連規約人権委員会から出されました警察での取り調べの改善、また、死刑廃止等の勧告をなぜ我が国は無視しているのでしょうか。権力を拡大するときだけ、国家の権力を拡大するときにだけ国際社会の要請を持ち出しても、決して国民は納得しないと思います。(拍手)  この盗聴法は、憲法二十一条に定める通信の秘密を侵すものであり、国民のプライバシーの権利を脅かすものであることも広く指摘されてまいりました。政府は、公共の福祉のためには必要やむを得ず市民の基本的権利を制約する、そのための法律であると言いますが、とても通信傍受、盗聴が公共の福祉に当たるとは、また必要やむを得ずのものであるとは思えないわけです。  法務省は、報道関係者に盗聴法とは呼ばないでくれと指示なさった、それはお願いしただけだとおっしゃっておりますが、指示したそうですが、人々はこの通信傍受を盗聴法としか考えられないという不安を持っています。そして、この盗聴は、個人の内心の秘密に対する著しい侵害性を持つにもかかわらず、既に存在している犯罪の、今ある犯罪の証拠物件を対象とするのではなくて、これから話されようとしている会話を対象とするために、強制処分の範囲が全く特定されないという性質が、そういう特質がこの盗聴捜査にはあるわけです。  こういった本質的な危惧を、これまで参考人質疑においても、また刑法の学者たちによってもるる訴えられてまいりましたが、それは専門家だけではなくて、そうした法律の細かなことは余りわからない、私も法律の専門家ではありませんが、国民の多くもまたそうした不安を本能的に察知しており、その危惧は私ども参議院での慎重な審議過程の中でるる明らかになってはきても、不安は全く払拭されてはおりません。  このいわゆる盗聴法は、このように憲法に違反する疑義があるだけではなく、刑事訴訟法の根本概念をも変えてしまうものであることを、多くの弁護士や刑法学者、そういった方々が指摘なさっております。  このいわゆる盗聴法案は、従来の刑事訴訟法の概念、その概念といいますのは、犯罪から犯人を求める、それが今までの刑事訴訟法の概念であったわけですが、それを、犯人があってその犯人から犯罪を求めるという全く違うものに変えてしまうものだからです。  また、このいわゆる盗聴法案は、固定電話を想定してつくられたものです。国民の多くの方々が盗聴法と聞いたとき──まず、通信傍受法なんて言われても、だれも自分の電話などが盗聴されるかもしれない、そんな法案だとは思わないと思います。盗聴法だと聞いたときに多分ほとんどの人が固定電話が盗聴される、そういうふうにしか思わないのではないでしょうか。  確かにこの法案は、国民の皆さんが思われるように、固定電話を想定してつくられております。しかし、今この世界は通信の技術はどんどん発達し、インターネット通信が本当にこれから隆起してまいると思います。そうしたインターネット通信の傍受、つまり盗聴についてはほとんど想定されていないのがこの法案です。このことが、多くのインターネットを使ってさまざまな通信をしていらっしゃる方々や、またそのインターネットのプロバイダーの方々や、そして通信業者、そのすべてにかかわっている方々から問題提起され、不安が訴えられてまいりました。  このインターネット通信の盗聴については、さらなる審議をお願いしたい、そうした切なる訴えも私ども野党にはたくさん寄せられておりますし、また、与党がお呼びになった参考人からもこの問題点はるる指摘されました。  この法案のままでは、不特定多数のメールが警察に捕捉され、これから日本の未来を担うであろう通信産業に悪影響を与えることも指摘されました。インターネットを初めとする情報通信産業は、本当にこれからの日本の経済にとって大変重要であり、今後ますますこの通信産業分野によって不況を打開できるかもしれないという、こういう今、瀬戸際に来ております。  ところが、このいわゆる盗聴法案はこれに逆行するものでしかありません。情報通信産業を萎縮させるものでしかないのです。失業率が五%にならんとする雇用不安を抱え、貸し渋りも決して解消していない今、多くの人々がボーナスももらえず、またボーナスも払えない人たちが大変苦しんでおります。そして中高年の男性の自殺もふえておりますし、そうした多くの国民が、早くこの雇用不安を何とかしてほしい、景気を回復してほしいと切に願っているこのときに、逆に日本の経済を牽引していくに違いない通信産業界を萎縮させ、何十年かこの発展を妨げるようなこの盗聴法案を通していいものでしょうか。  政府は、従来どおりの経済政策しかできず、それでいて景気は回復しているなどと、ただひとりぬか喜びをしておりますが、将来の産業であるこのインターネットをつぶすようなこの盗聴法を数の力で押し通しては将来に禍根を残すことになると思います。そしてこの法案を通すことは、私たち今国会議員として本当に恥ずかしいことだと思います。  さて、さらに、インターネットを使っている市民やその業者の方々から出ている懸念として…… <0029>=議長(斎藤十朗君)= 円君、そろそろおまとめいただけませんか。 <0030>=円より子君(続)= 申しわけございません。あと少しでございますので、お待ちいただけたら幸いでございます。  さらに、インターネットを使っている市民やその業者から出ている懸念として、今回の盗聴法案では通信事業者内部の情報の漏えいが発生しないようにする技術的な歯どめが規定されておりません。そのことへの憂慮や盗聴への協力にかかるコストのこと、顧客からの法的な損害賠償などのトラブルへの対処等も解決していないという訴えが来ております。  さて、国民の警察に対する不信感も、審議の中では大変残念なことに払拭することができませんでした。小渕総理は、警察を信用する、通信傍受の乱用はあり得ないとおっしゃいましたが、国民は、これまでの政府側の答弁では決して警察を信頼することはできません。  ことし三月二日の参議院予算委員会で野党議員が、共産党の緒方元国際部長宅、今参議院議員でいらっしゃいますが、この緒方さんの家の電話を現職警察官が盗聴していた事件について、これは警察の違法捜査ではないかと何度も何度も追及いたしました。しかし、それに対し警察庁長官は、ついにイエスと言いませんでしたし、この法務委員会でも、このと申しますのは参議院の法務委員会でございますが、そこでも警察組織の犯行とは全く認めませんでした。  現職警察官が盗聴行為を行ったんです。東京地裁も、上司の命令なしに警察官が実行したとは到底認められないと指摘しているんです。それにもかかわらず、このように非を認めない警察が、この盗聴法が成立した段階で本当に乱用しないという保証が、たった小渕総理の信用しているという言葉だけで担保できるものかどうか、国民が信じられるわけがありません。  制度として、法律として歯どめをかけてそのようなことが起きないようにするというのが人間の知恵というものであり、リーダーとして、総理として、そして法務大臣としての責任ではないかと私は思います。法務大臣の答弁はございましたけれども、総括質疑が開かれず、小渕総理にこの点をしっかりと御答弁いただけなかったことは本当に残念でなりません。  令状できちんとチェックするとの御説明がもちろん政府側からなされましたが、これまでも裁判所が検察からの令状請求を却下しましたのは〇・一%にしかすぎません。ほとんどの令状がそのまま通ってしまうということです。これはチェックになりません。そのことも、審議の中で令状では歯どめにならないことが明らかになりました。  立会人のことについてもさまざまな問題点が挙げられました。立会人に切断権、これは、この盗聴はおかしい、やめなさいということですけれども、この立会人に切断権を認めるべきであるということや、通信事業者ではなく裁判所職員を立ち会わせることも私たち民主党は主張してまいりました。そうすれば、立ち会いが裁判所職員であれば裁判官も令状審査に慎重にならざるを得ないわけです。  傍受した通信のうち捜査に関係のない通信の当事者には、当該通信、つまり今受けている通信、話している通信を傍受した旨の通知が行かないことも、捜査に関係がなければ幾ら聞かれていても通知がされませんから、通信傍受されていたこと、つまり盗聴されていたことがわからないわけです。そうした傍受した旨の通知が行かないこともプライバシーの保護の観点からは非常に問題だということが審議の中で明らかになりました。  政府は通知すると逆にプライバシーの侵害になるなどという説明をいたしましたが、これは全くおかしな論理です。何がプライバシーなのかということを全くおわかりじゃないんじゃないか。傍受された、つまり盗聴されたということは、まずもってそれだけで重大なプライバシーの侵害であります。それさえしかしわからないということは、さらなるプライバシーの侵害ではないですか。このような事態がまかり通れば、日本は間違いなく互いが互いを監視する監視社会となってしまうでしょう。  通信傍受つまり盗聴にかかるコストが膨大であることも指摘されました。特に、携帯電話の傍受を可能にするためのコスト、開発費は巨額になることが参考人等の質疑で明らかになりました。  このように、まだまだ挙げれば切りがないほどさまざまな問題点が出てまいりますが、まとめますと、このいわゆる盗聴法案には、その必要性、実効性、有効性、そして妥当性が全くありません。この法案の国民への影響を考えた場合、百害あって一利なしということが言えるのではないでしょうか。確かに犯罪を取り締まることは大変重要です。しかし、犯罪を取り締まるためには、もっと根本的な解決策が必要です。例えば、オウムの問題を解決するためには、脱会者の社会復帰を進める政策を打ち出すなど、さまざまな社会改革が必要ではないでしょうか。また、国際的犯罪については、日本がターゲットとなるような根本的原因を解決し、縦割りではなく横のネットワークを重視した総合的な解決策、そうした政策が必要だと私ども民主党、日本共産党、社会民主党は思っております。もちろん無所属の方々もそうだと思います。  つまり、結局のところ、犯罪をなくすためには、捜査方法を強化するのではなく、国民が安心して暮らせる公正な社会をあらゆる側面から構築していくことこそが必要なのです。それこそが根本的な解決策なのです。そのためには、通信傍受法の制定などという拙速な対応ではなく、省庁横断的、そしてそこにさまざまな専門家や一般の市民の方々を交え、プロジェクトチームをしっかりと設置し、国民的議論を巻き起こしていくことが重要だと思います。  以上、法務委員会の委員だけではなく、参考人や公述人、そして広く国民の方々から出てきた多くの疑問、不安に全く答えないまま、一昨日、法案審議を突然打ち切り、それも、先ほども申しましたけれども、二院クラブの方に、法務委員会のメンバーでもありませんのに、委員外発言を要請しておりました。その発言も全く無効になるような形で、私の質問の最中に、この後にはまだ公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、そして自由党、また無所属の中村敦夫さん、そして今言った二院クラブの佐藤道夫さん、その方々の質疑が予定されていたわけです。その予定の審議を突然私の質問の最中に、委員長がまだ答弁をしておられるときに緊急動議が出て打ち切られたという、とても参議院としてあるまじき行為が一昨日の月曜日に行われたわけです。  その委員会も、残念ながら、私どもが関与しない委員長の裁定によって開かれました。それも、本来は、法務委員会の法案審議は火曜日と木曜日というのが定例日となっております。それを月曜日の定例の時刻でもない夜の八時から開いて、それでいて私の質問の最中に審議を打ち切ったわけです。  先ほどビデオからも、また速記録からも明らかになりましたように、この盗聴法は、多くの国民の方々の不安に、また、疑問に全くこたえないまま一昨日法案審議を突然打ち切られ、強行採決が企てられ、存在しなかった採決と、そうです、皆さん、一昨日の採決は決して存在してはいないんです。(拍手)  この存在しなかった採決と存在していない可決の報告をした荒木法務委員長に対し、私は、野党の皆さんだけでなく国民を代表し、解任決議案を提出するものであります。(拍手)  与野党のすべての皆様にお願いしたいと思います。  二十一世紀はもう本当に目の前に来ております。この二十一世紀を担う子供たちが、本当に安心してこの国で暮らせるように、この社会、明るい社会、平和な社会をつくっていくために、この二十一世紀の日本を、人々が互いに監視し合うような、お互いを疑心暗鬼で見て、そういう中で暮らさなきゃいけないような、プライバシーが尊重されないような、そんな監視社会にしないために、与党の皆様と公明党の皆様が再度考えを改め、本当に良識ある対応をしてくださることを切に望むものであります。(拍手)  委員長が、お役目といいながら、本当に自民党、そして自由党、公明党の御指示があったのかどうかわかりませんけれども、動議の中身がわかりませんから、なぜその動議に応じられたのか私は知るところではございませんけれども、何カ月も強行採決をしないように何とか頑張ってこられ、もしそういうようなことになるならばどうしようときっと本当にお悩みになったことは大変同情いたしますけれども、荒木委員長のことですから、今もなおこの存在しなかった採決、存在しなかった可決を報告したことを、記者会見したことをぜひ撤回し、法務委員会に差し戻してくださるのではないか。荒木委員長ならばきっとそれをしてくださるのではないか。  また、公明党の皆様も、政府の法案は全くむちゃな法案だったとおっしゃいました。それをすっかり修正し、これは全く別の法案だと何度もおっしゃいましたけれども、私たちから見れば余り変わったとは思えないんですね。五十歩百歩。どこが全く違う法案なのか、そう思えてなりませんので、ぜひともこの法案をもう一度法務委員会に差し戻し、審議を続行してくださることを、荒木委員長のためにも御決断いただくことを私どもは切に願うものであります。(拍手)  どうか、どうかお願いしたいのですが……(発言する者あり) <0031>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0032>=円より子君(続)= どうかお願いしたいのですが、良識の府である参議院の名を汚さないようにしていただきたい。良識の府とは名ばかりかと国民は今笑っております。なぜ、存在しなかった採決があったと言えるのか、国民はそんなことで言いくるめられたりはしないと私は思います。  もし、おかしいとお思いならば、何でしたら、私、もう一度その速記録をお読みいたしましょうか。残念ながら、原稿は手元にはございません、その部分は。しかし、全部覚えております。  私が質問の最中、るるこの法案の問題点は全く究明されていないことを、また解決していないことを訴え、この法案を議了すべきではないと言い、そしてまた、総理を呼んでの総括質疑をして、連合審査もして、この法案を継続すべしと訴えてまいりました。そのとき、総括質疑について、委員長は理事会で協議しますとおっしゃったんです。そのとき、荒木法務委員長は、法案をあの時点で議了する気はなかったんだと私は思います。ですから、理事会で協議をして、総理を呼んでの総括質疑をするとお約束なさったわけです。  ですから、では、今してくださいますかと私が言ったのに対し、委員長は後刻、後刻とおっしゃった。それは…… <0033>=議長(斎藤十朗君)= 円君、そろそろ終えてください。 <0034>=円より子君(続)= はい。もう終わります。  委員長が後刻、後刻とおっしゃったそのときに、自民党の理事から緊急動議が出たようであります。しかしながら、速記録には委員長としか出ておりません。中身は全く聞こえず、速記録には書かれていないんです。それなのに、挙手のお願いをしますと委員長はおっしゃり、そして全く挙手の数を数えず、可決したとも申されず、そのまま席を立たれてしまいました。速記の方々は、休憩とも散会とも委員長がおっしゃいませんでしたので、ずっと座り続けておられた。それが速記録、そして今週月曜日、一昨日の、一九九九年八月九日八時五十五分の出来事でありました。(拍手)  このように、この盗聴法案の採決は全く存在しなかったのであり、可決もされてはおりません。それを採決したと言い、可決もあったと言い、あろうことか、斎藤十朗参議院議長にまで偽りの報告をし、記者会見までして国民を欺き愚弄したこの荒木法務委員長の責任はとても許せるものではありません。 <0035>=議長(斎藤十朗君)= 円君、円君、どうぞ終えてください。 <0036>=円より子君(続)= あと一言です。  どうぞ、良識の府である参議院の名を汚さず、一昨日の法務委員会の採決は全く無効であったことを全員で確認し、そして法務委員会を再開し、いわゆる盗聴法の審議を続行するか、潔く廃案になさることを切望し、私の荒木法務委員長解任決議案の代表趣旨説明を終わりたいと思います。(拍手)     ───────────── <0037>=議長(斎藤十朗君)= 本決議案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。鈴木正孝君。    〔鈴木正孝君登壇、拍手〕 <0038>=鈴木正孝君= 私は、自由民主党及び公明党、自由党を代表して、ただいま議題となりました荒木清寛法務委員長に対する解任決議案に対し、断固、断固反対の討論を行うものであります。  改めて申すまでもなく、委員長の職責とは、公正中立の立場から委員会の円満かつ正常な運営を図り、立法府としての機能を十全に発揮して、国民の負託にこたえていくことであります。  荒木委員長は、御就任以来、委員会の運営に対して強い責任感を持って臨まれ、決して一党派に偏することなく、常に公正、公平、中立の立場からその職務を全うされてきたところであり、そのことは野党の皆さんも十分御存じのことと思います。  特に、今国会、法務委員会において重要法案を粛々と処理していくことができたのも、荒木委員長の手腕によるところが大きかったと高く評価されております。  しかるに、今回、解任決議案の理由として委員会の採決を強行したとありますが、これをもって理由とするのは、採決に至った経緯を無視した全く理不尽きわまりないものであります。  もとより、その案件である組織犯罪対策三法案は、組織犯罪が今や平穏な市民生活を脅かし、健全な社会経済の発展に悪影響を及ぼす状況にあり、また、その対策が最近の国連やサミット等の最重要議題の一つとなるなどの国際的要請にこたえるためにも急がれているものであります。  このように急務となっている案件であっても、荒木委員長は、去る六月九日の委員会付託以来、衆議院における審議時間を大幅に上回る約五十時間に及ぶ法務委員会の審議、約四十時間にわたる理事懇談会にあらわれているように、野党の皆さんの慎重審議を望む声にも配慮して、与野党の合意形成に向けて十分の審査を行ってまいりました。  技術的、専門的に突っ込んだ参考人質疑や公聴会の開催、さらに現場視察、委員外発言を認めるなど、参議院らしい委員会運営に荒木委員長は最大限の努力をしてまいられました。  また、本法案は六月一日に衆議院で可決され本院に送付されており、送付後六十日以内に本院で採決しない場合、憲法第五十九条にあるいわゆるみなし否決規定の適用が可能となりますが、既に委員会で採決を行った九日で送付後七十日目を迎えるという状況にあったのであります。  それにもかかわらず、一部野党の皆さんは、この法案に反対する立場から、法案の継続審議もしくは廃案をねらって、審議自体に極めて非協力的な姿勢を貫いてきたのであります。  十分な審議を尽くした後に採決を行うのは至極当たり前のことであり、委員長が質疑打ち切り動議に応じて採決したのは適切な判断でありました。  衆議院議員までもが加わった大勢の反対の諸君が委員長席になだれ込み、採決を阻止しようとした暴挙こそ非難されるべきであり、委員会採決のルールを無視したものであります。  委員長の大事な職責の一つには委員会の審議促進もあります。円滑な委員会運営に努めるのは当然でありますが、それでも国家国民のために、委員長の責任のもとに与えられた職権を行使するのはやむを得ないことであります。  特に強い反対の見られた通信傍受法案には、それが捜査当局の乱用を招き、プライバシー侵害の危険性があるといった指摘がありますが、傍受に当たってはその対象犯罪が限定された上、立会人の常時立ち会いが義務づけられるなど、諸外国に比しても厳しい条件がつけられており、乱用に対する配慮も十分な内容となっております。  よって、解任決議を提出した野党の皆さんこそ、法案の誤った理解を喧伝しつつ、国際的責務や真の国民の利益を守るための決断からエスケープしようとする無責任体質を国民の前に露呈していると指摘せざるを得ません。  そして、極めて民主的に委員会運営を行ってきた荒木委員長に解任決議を突きつけるなどということは、もはや暴挙以外の何物でもありません。  もとより、我々と政治的立場を異にする以上、またそこに意見の相違もあることは当然であります。しかしながら、以上申し上げてまいりましたように、提出者の真意は全くはかりかねるところであり、憤りを禁じ得ません。  ここに、正義と良心をもって国民の負託にこたえんとする議員各位とともに、一部野党の皆さんの猛省を促すとともに、本決議案に断固反対の意見を表明して、私の反対討論といたします。(拍手) <0039>=議長(斎藤十朗君)= 千葉景子君。    〔千葉景子君登壇、拍手〕 <0040>=千葉景子君= 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました荒木法務委員長解任決議案に賛成の討論をいたします。  まず冒頭、先ほど円より子提案者より発言があった際、不規則発言により、大変この本会議場が侮辱を受けました。極めて遺憾なことでございます。  聞くところによれば、その発言は、女性の人権を侵害するばかりでなく、全会一致で合意をした男女共同参画社会基本法、この精神をも踏みにじり、そしてさらに私が指摘したいことは、御本人がみずからを卑しめたということにほかならないのではないでしょうか。このような大変真摯な議論が行われている中での不規則な発言を私は断固として許すわけにはまいりません。  まず、冒頭、その点について明確に申し上げておきたいと思います。  さて、今、二〇〇〇年を目前にして、いわゆるコンピューター二〇〇〇年問題が議論をされています。私は、これも大変重要な問題ではございますが、それにも増して深刻なのは、今我が国に民主主義の二〇〇〇年問題が起きようとしていることではないでしょうか。  コンピューターの二〇〇〇年問題は、二〇〇〇年を迎える際に、コンピューターの誤作動により二〇〇〇年が一九〇〇年に逆戻りをするという問題でございます。現在、盗聴法を含む組織犯罪対策三法案が強行されようとし、国民総背番号制につながる住民基本台帳法の改正がこれまた強硬に進められ、そして我が国の戦争責任などを棚上げにしたまま国旗・国歌の法制化が突然持ち出され強制される、まさにこれは国民主権から国家管理への動きだと言って過言ではありません。  私たちが、そして多くの人々が、汗をし、血を流し、困難を乗り越えて営々と刻み続けてきた二十世紀の民主主義の足跡を根底から揺るがし、二〇〇〇年をまるで一九〇〇年に逆戻りさせる、歴史の歯車を逆転させる、まさに民主主義の二〇〇〇年問題と言えるのではないでしょうか。私は、このような民主主義を揺るがし、歴史を逆行させる自自公の画策に手をかす結果となった荒木委員長の責任は極めて重大であり、委員長御自身、そのことをまず十分御認識していただかなければならないと思います。  組織犯罪対策関連三法案は、衆議院法務委員会においては、十分な審議を尽くすこともなく、また公聴会を開会して国民の意見を聞くこともないまま、去る五月二十八日、衆議院で強行採決され、六月一日、衆議院本会議の採決を経て参議院に送付をされてまいりました。  参議院では、六月九日、本会議において趣旨説明を聴取した後、質疑を行い、同法案は法務委員会に付託され、六月十日、法務委員会において趣旨説明を聴取いたしましたが、三法案のうち、特に、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案、いわゆる盗聴法案は、憲法で保障された重要な基本的人権である通信の秘密を侵害するものであるとともに、刑事訴訟法の基本理念にかかわる多くの問題を含んでおり、法務委員会では慎重かつ十分な審議を必要とするため、理事懇談会が重ねられ、審議日程について協議が続けられてまいりました。  その結果、六月二十九日から各会派の合意のもとに政府に対する質疑を行い、その後もさまざまな問題点について慎重な審議を尽くすため、各会派の合意により政府に対する質疑をさらに続けるとともに、参考人からの意見聴取、公聴会の開会、NTT施設の視察も行ってまいりました。これは、この盗聴法案に重大な人権侵害の危険性、警察による乱用のおそれ、我が国を監視社会という不気味な社会に陥れていく結果を招くなど、極めて多くの問題が含まれているからであります。  そもそも通信傍受とは憲法で保障されている人間の尊厳に最も深くかかわる基本的人権である内心の自由、プライバシー、そして通信の秘密を制約するものであります。仮に、捜査のためであるとの目的で制約を許すとしても、その制約は目的の正当性が十分認められ、制約を必要最小限度にとどめ、適正な手続のもとに行われなければならないのは当然のことであります。  通信傍受とは、電話などを利用しての会話の特徴をよくつかむということになります。会話というのは、互いに意見を交換することにその本質があるわけですから、人と人との自由な交流をもたらし、社会を形成する基礎ともなる基本的な私たちの持てる権利です。特に、電話等の通信による会話は、自由濶達そしてさまざまな変化を含み、個人の内心、思考の内容までもがもろにそこに出てくるものではないでしょうか。プライバシーの塊と言ってもよいものだと思います。盗聴は、このような特徴のある会話を盗み聞きするものです。盗聴は、プライバシーを甚だしく侵害するものです。こうした電話等による会話の盗聴を直ちに制限なく認めることは、極めて大きい危険性があることをまず認識する必要があるでしょう。  憲法二十一条が通信の秘密を規定しているのは、このような内心の自由そして人間の根源にかかわるからでもございます。  法案の賛成論には、盗聴した通信は加工の加えられていないクリーンな証拠になるという意見があります。逆説的ではありますけれども、まさにそれは本質を示しているものと言えるのではないでしょうか。人間の生の姿がそこにあらわれる、これをまさにこの賛成論は示しているのではないかと思います。  また、憲法三十一条、三十三条、三十六条といった憲法の規定をしっかり守ることも、私たちの基本的人権を守る基本的なルールです。  日本国憲法の刑事人権規定は、刑事手続に関する国民の権利がきちんと守られない限り、それは私たちにまた恐怖と暗黒の社会をもたらす、こういう歴史の苦い経験からもつくられてきた規定でもございます。民主的社会を守る、その基礎を形づくる規定、この規定を尊重しないで盗聴などを認めることは、まさに私たちに暗黒の社会をまたもたらすことにつながる、私はそう確信をいたします。  さて、いわゆる盗聴法を含む組織的犯罪対策三法は、その名のとおり組織的犯罪に対処するためというのがその立法の根拠だと言われています。しかし、それならば、現在日本の組織的犯罪の実情がどのようなものであるのか、そしてその犯罪の発生の原因は一体どういうところに存在するのか、そしてその対処にはどのようなことが必要なのか、これをそれぞれの犯罪類型、結果を緻密に検証して、それに対する対策を立てることが必要です。  日本の犯罪情勢はここ数年落ちついています。決して悪化している傾向にはございません。凶悪犯罪を考えてみても、十万人当たりの発生率が、日本はアメリカの殺人では九分の一、強盗では百十三分の一です。暴力団関係の事件を見ると、対立抗争事件、この発生件数は減っています。また、銃器の使用犯罪あるいは銃器の発砲回数も減少しています。覚せい剤犯罪が増加をしていること、これは多くの人が憂慮をしています。しかし、その他の薬物犯罪が増加をしているわけではない。  薬物が青少年や家庭にいる主婦あるいは多くの市民の中に蔓延をし始めていること、それには多くの人々が胸を痛め、そしてそれに対する対策を講ずるべし、これはだれもが合意するところではないでしょうか。しかし、それが通信傍受、あるいは捜査を強化する、刑罰を強化する、このような対策で本当に減らすことができるのでしょうか。あるいはそれに対応することができるのでしょうか。  まさに教育であり、また若い皆さんが安心して、将来に夢を持ち、公平で公正に生きられる社会なくして、このような薬物の蔓延を私は減らすことは不可能である。決して重罰化や盗聴でそれを防ぐことはできない。これは多くの皆さんにも納得いただけることではないでしょうか。  また、組織犯罪というその目的の中でオウム事件などが取り上げられています。しかし、オウム事件は盗聴があったら防げたと本当に断言できるのでしょうか。坂本弁護士事件。坂本弁護士は私も大変身近に仕事をしていた弁護士でもございました。  松本サリン事件など、これらの捜査について警察は情報をきちっと開示し、そしてその捜査の問題点、これをまずきちっと総括することからこそ、オウム事件などへの対処の道が切り開かれてくるのではないでしょうか。  また、組織的かつ悪質化した組織犯罪を取り締まるためには犯罪捜査手段としての盗聴が必要だ、そう言われてまいりましたけれども、本当でしょうか。  政府は、暴力団による薬物、銃器などの犯罪、オウム真理教事件、今申し上げました、また、詐欺商法などの対策のための法案だとこの立法趣旨で述べています。しかし、今申し上げましたように、オウム真理教事件の捜査の問題点は盗聴できなかったことにあるわけではありません。初動捜査の手落ちなど、捜査活動そのものに問題があったと言われています。  また、暴力団による薬物事犯、これまで検証令状による盗聴が五件行われました。しかし、これで大物が捕まったとは聞いておりません。犯罪捜査のための盗聴が認められれば、暴力団の大物は電話を利用しなくなる、あるいは携帯電話を次々に取りかえていく、あるいはさらに別の抜け道を考えていくでしょう。  後ほど申し上げたいと思いますが、警察は当初、携帯電話を盗聴できることがこの立法の大変大きな効果だと述べておりました。しかし、審議を重ねるうちに、現在の技術では携帯電話の盗聴は不可能である、困難であることが判明したのです。だとすれば、このような暴力団の犯罪などに対して、この法律が、そして通信傍受という手法が効果がないこと、それが明らかになったと言わざるを得ません。仮に、もっと効率のよい捜査手段が必要だということになれば、次第にその盗聴の幅は広がり、場合によっては室内の会話の盗聴や、あるいはその範囲が拡大していく、予想されることでございます。  また、この立法の根拠として挙げられるもう一つのポイントは、国際的な要請だということでございます。国際的な要請とはどういうものであるのか。確かに、アルシュ・サミットやバーミンガム・サミットなどの国際犯罪特別声明などで、国際的犯罪に対し各国で対策をとるようにとの国際的要請がなされていることは私も承知しています。しかし、国際的要請があるからといってすべて盗聴しなければいけない、あるいは通信傍受が求められているのか、決してそうではないことを改めて皆さんにも御承知をいただきたいと思います。  金融活動作業部会が要求しているのはマネーロンダリングだけであること、国際組織犯罪防止条約の起草のための委員会でも現在議論されているのがマネーロンダリングであり、通信傍受などはまだまだ先の議論であると言われています。  また、国際化というのであれば、先ほど提案理由の中でも示されておりましたけれども、犯罪捜査だけではなく、むしろ私たち、そして日本社会の人権の貧しさ、あるいは人権問題のおくれ、こういうところにこそ、国際的な指摘に真摯にまず耳を傾けるべきではないでしょうか。  これまで、たび重ねて国際機関からも日本の人権問題については指摘がなされてまいりました。しかし、法務省はそれには極めて消極的な姿勢しか見せることなく、それに引きかえ、今回の通信傍受、盗聴については、まさに何でものみ込む、何でも捜査の中に取り込む、このような態度でこの法案を提案してきたものでございます。  また、片方で、捜査の手法というのであれば、日本の捜査のありよう、あるいは捜査の体系、これを無視して語るわけにはまいりません。  日本の捜査は、まず長い期間の勾留期間が特徴です。また、世界に悪名高い代用監獄での取り調べ、まさにこの代用監獄問題はこの参議院でもたび重ねて議論になってきたところでもございます。また、冤罪の温床とも言われ、常に国際機関から、あるいは国際人権機関の議論の中でも指摘をされてきたところでございます。さらには、起訴前の保釈の制度がない、あるいは被疑者の国選あるいは公選弁護制度がないこと、また取り調べに対して立ち会うこともできず、またテープなどでの録音も禁じられています。それによって、長い勾留、代用監獄、その間に行われる捜査、その適法性はなかなか外部には見えてこない。そこに我が国の捜査体系の大変重要な問題点があるのではないでしょうか。  これを全く無視したまま、一方で通信傍受、盗聴という手法を捜査権限として与えること、これが私たちの生活あるいは人権にとって危惧でなくて何でありましょうか。ぜひそこをもう一度考え直してみる必要がございます。 <0041>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、千葉君…… <0042>=千葉景子君(続)= また、裁判の中でも問題はございます。  日本の司法の中では違法収集証拠の排除原則が徹底しておりません。また、証拠開示、これも不徹底です。いわば防御する側に極めて不平等なこのような司法のシステム、あるいは構造、それが存在をしている。これも十分認識をした上でこの通信傍受という捜査手法を考えていかなければいけないと、改めて指摘をしておきたいと思います。  そして…… <0043>=議長(斎藤十朗君)= 千葉景子君、千葉君、千葉君、時間が大分経過しておりますので、そろそろまとめに入ってください。 <0044>=千葉景子君(続)= まだ続けます。まだ大分ありますので。  そして、忘れてはならないことは、この法案の運用を担う警察当局に対する国民の信頼が不可欠であること、これを忘れることはできません。しかし、残念ながら、参議院の審議を通じても国民の警察に対する不信感はぬぐい去ることはできませんでした。  捜査手法として通信傍受が不可欠であると言うなら、先ほども指摘があった、まず、神奈川県警による共産党幹部宅盗聴事件、今その緒方さんが議席に座っておられますが、その真相を明らかにして謝罪する、それが法律制定の前提ではないでしょうか。私も、委員会の中でたび重ねてその指摘をさせていただきました。しかし、警察は一切みずからの責任を明らかにしようとはせず、私の問いには何ら明確なお答えはもらうことができませんでした。この、いまだに未解決のまま、通信傍受、この捜査手法を警察に与えるなどということは、到底許されることではございません。  さて、審議を続けるに従って、傍受記録を作成しない場合には本人に対する通知義務がないことによるプライバシーの侵害や人権侵害の危険性、通信内容を聞くこともできず、また切断権もない立会人の無意味さ、インターネットや携帯電話は傍受することは不可能であり、盗聴法案に組織犯罪に対する実効性が極めて少ないこと、マスコミに対する通信傍受は取材の秘密を侵害するのではないかなど、ますます多くの問題点が浮かび上がってまいりました。法務委員会はさらに慎重な審議を継続していく必要性を全員が痛感していたのであります。  ところが、法務委員長荒木清寛さんは、NTT施設の視察を終えた八月六日の法務委員会理事懇談会において、我が党の理事や野党委員の強い反対にもかかわらず、八月九日の委員会を職権でセットしたのであります。そして、八月九日、本会議後、法務委員長は、理事会を我が党の理事や野党委員の出席を待たずして開会し、連合審査の請求や総理大臣に対する質疑の必要性を訴える私たちの訴え、すなわち国民全体の声を無視して委員会の開会を強行することを決定したのであります。  委員長の職務は、委員会の運営を中立を旨として円満かつ公平に行うことです。特に、法務委員長は法秩序の維持と人権を初めとした国民の権利の擁護を所管する委員長であり、規範遵守に対する責務は極めて重いものがあるはずです。その法務委員長が、事もあろうに、円満かつ公平な委員会の運営を求める私たちの声に耳をかすこともないばかりか、今さら何を言っているんですかと一喝されたと私は聞いております。  委員長の職権を乱用して委員会の開会を強行したことに、私はまず強く憤りを感ずるところです。  そして、強行開会された法務委員会における我が党の円理事が質疑を行っているその最中に、突如として荒木委員長は、自民党の鈴木理事が緊急動議を提出したとしてこの三法案の質疑を打ち切り、採決を強行したと称していらっしゃいます。  このとき、私は委員長席のかなり近くにおりました。しかし、自民、自由、公明のそれぞれの議員の怒号などが飛び交い、大混乱が生じている中で、緊急動議が提出されたことも、質疑が終局したことも、まして採決が行われたことも確認することはできませんでした。事実、質疑の終局も、そして採決も行われていないのです。それは先ほどの提案理由でもるる説明があり、皆さんも十分御承知のところではないでしょうか。  にもかかわらず、質疑の終局を求める緊急動議が提出され、これを採決した結果、質疑は終局し、続いて三法案の採決を行い、三法案はいずれも可決されたなどと何の根拠も証拠もなく称していらっしゃる荒木委員長の言動は、どのように理解すればよいのでしょうか。  この夜の荒木法務委員長の行為は、議会人として最も大切にしなければならない議会制民主主義の理念を踏みにじり、良識の府である参議院の歴史に大きな汚点を残すとともに、全国民と全世界の人々に我が国の議会における多数の横暴の実態をさらけ出した行為でもありました。 <0045>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、時間が大分経過しておりますので、そろそろまとめていただけませんか。 <0046>=千葉景子君(続)= この際、委員長の職を解任して、責任の所在を明白にすることは、参議院が良識の府であることのみずからあかしを立てるために当然必要なことでありましょう。  以下、本解任決議案に賛成の理由を具体的に申し上げます。  賛成の理由は多々ございます。私が特に取り上げますのは、法秩序の維持という観点から、去る八月九日の法務委員会における荒木委員長の一連の行為がまさしく暴挙であるということであります。  言うまでもありませんが、現代社会はルールを基本として成り立っており、社会の構成員がそれを遵守することによって社会の安定した発展があるのです。特に、権力を行使する立場にある者は、ルールを守ることにはとりわけ重い責任があることはあえて強調するまでもないでしょう。(拍手)  私は、賛成討論に制限時間をいただいているとは聞いておりません。  ところが、荒木法務委員長は、二つの点でルール違反を犯しております。 <0047>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、千葉君、千葉君、千葉君…… <0048>=千葉景子君(続)= 私は、これをあえて暴挙と呼ぶのであります。 <0049>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君…… <0050>=千葉景子君(続)= 第一は、そのルール違反が憲法という法体系の基本となる秩序を侵害したことです。  我が国の憲法は、国民の基本的人権の尊重を最高の基本理念としています。今回の法務委員会で荒木委員長が可決したと称している組織的犯罪対策関連三法案は、いずれもこの国民の重要な基本的人権を侵害するものであります。特に、三法案の中でも問題となるのは、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案、いわゆる盗聴法案が重大な私どもの基本的人権を侵すおそれがあるからです。  この法案は、憲法で保障されている通信の秘密や令状主義を侵害する内容を含む重大な人権侵害の危険性があるものです。これは、荒木委員長も法曹人として、そして司法に携わってこられた人として、十分御承知のところだったのではないでしょうか。  また、私たち民主党・新緑風会の同僚議員は、この点を含めて、盗聴立法の必要性、妥当性あるいは乱用防止とプライバシーの保障、組織的犯罪に対する実効性等について、政府を待っていたわけではありません。納得のいく答弁は何一つありませんでした。審議を続ければ続けるほど、問題点は増大するばかりです。審議を重ねる中で改めてわかってきたことは、薬物依存者を支援する市民団体や報道機関は原則として傍受対象にしない。しかし、これは当初からはっきりしていたことではございません。審議を重ね、そして参議院らしい深い緻密な議論を重ねたことからこそ判明してきた事実ではないでしょうか。  また、傍受の実施状況に関する国会報告はアメリカなどに倣ってできるだけ詳細に行う。これも、真摯な議論と、そして私どもの質問によって明らかになってきたところでもありました。(拍手) <0051>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、千葉景子君…… <0052>=千葉景子君(続)= また、傍受された人に対する事後の通知の必要性、これは運用実態を踏まえて見直しをする。 <0053>=議長(斎藤十朗君)= 千葉景子君、時間の制限はありませんけれども、常識の範囲内におさめてください。 <0054>=千葉景子君(続)= これも審議の中から明らかになりました。  やはり、参議院らしく、真摯に審議を続けるということは、いかに内容が明らかになり、問題点が判明し、そして危険なところに歯どめを加える、こういう議論ができること。まさに参議院の真骨頂ではなかったかと思います。(拍手) <0055>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君…… <0056>=千葉景子君(続)= しかし、残念ながら、実効性を十分に担保するためにどうするのか。法案に盛り込むのか、あるいは問題点は削除をしてまたしっかりと議論するのか。これらについては、まだこれから詰めなければいけないところがたくさん残されておりました。  また、小規模の電気通信事業者、いわゆるプロバイダーと言われる皆さんなどですが、これらの皆さんとの十分な協議、これもこれからの問題であることがはっきりいたしました。このような協議も詰めぬままに、この審議を打ち切るわけにはいきません。そこからまた新たな問題や、あるいは法案に対するさまざまな見直し、こういうものが出てくるのではないでしょうか。 <0057>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉景子君、千葉君、千葉景子君…… <0058>=千葉景子君(続)= そればかりではなく、携帯電話の傍受に必要な技術開発とそのための予算措置など、不透明な部分が数多く残されているのです。 <0059>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、千葉君…… <0060>=千葉景子君(続)= さらに問題なのは、通信傍受という犯罪手法が…… <0061>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、時間の制限はありませんけれども、常識の範囲内でやってください。 <0062>=千葉景子君(続)= 急速に進展する国際的な高度情報社会にいかなる影響を及ぼすかという点については、これまで全く議論がなされておらず、ようやく問題の指摘が始まったところでもございます。  これからのインターネットなど情報通信、このような分野では、データ通信だけでなくデジタル技術が生かされたサービスが中心に発展をしてまいります。こうなれば、当然その秘密を保持する、あるいは電子商取引などでもその信頼性を確保するなどの手段が必要になってまいります。インターネットなどでは、暗号技術あるいは認証技術などが不可欠な条件です。しかし、参議院法務委員会の審議の中で、政府は、インターネットなど暗号に対しては、設備、器材、専門家を動員して何としても解読をする、このような姿勢を示しました。  アメリカの産業界では、国家規模で暗号を解読、規制しようとする政府の動きに強く反発し、そしてクリッパーチップ制やあるいはキーリカバリーなどという暗号規制、これなどを…… <0063>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0064>=千葉景子君(続)= 法律を強く批判し、そして暗号の解読に国家が取り組もうという姿勢を許さない、このような動きを続けてまいりました。  盗聴法案はデータ通信も対象とし、法務省の現在の見解では…… <0065>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。 <0066>=千葉景子君(続)= 犯罪とは全く無関係な一般企業のメールボックス等も盗聴の対象となる可能性も否定できません。  組織としての警察が緻密な情報管理をしていたとしても、傍受担当の警察官個人から情報が漏れるおそれも否定することはできません。これまでの警察があの神奈川県警の盗聴事件すら明確に肯定をしていない、あるいは謝罪をしていない、こういうことから考えても、いつ何どき情報が警察から遺漏する、こういうおそれを否定することは私は到底できない。  このような捜査機関に漏れる可能性があるとの疑いを例えば外国企業が抱けば、日本企業は世界から相手にされなくなる、こういうことが言えるのではないでしょうか。取引上の信頼関係を損なうことになれば、これからいよいよ発展していくであろう電子商取引などで日本企業はこれからの国際競争力を発揮できないことになる、これを私は大変危惧するものです。  また、法案は、国家の管理、規制を緩和して新たな産業を育成していこうという国際的な流れにも逆行するものです。盗聴法案が成立すれば、極めて情報通信分野に萎縮的効果を生じさせ、産業界にも新たなる負担を強いる結果になることを私は懸念いたします。  この間、産業界からの御意見を十分聞くことはできませんでした。これからの新しい二十一世紀、日本の国の行く末、これを考えれば、この通信傍受法案を単なる捜査手段として審議するのみならず、これからの日本の産業のあり方、そして日本の将来像、これをも十分認識した上で、この通信傍受、これについての結論を出すべきではなかったでしょうか。 <0067>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、千葉景子君、千葉君…… <0068>=千葉景子君(続)= 委員会では、これまでの審議の内容を重く受けとめ、さらに問題を解明し、国民の人権を保障するとともに、その不安を解消するための努力が求められているところでした。私は、その責任の重さを改めて痛感していたところでもございます。  これまでの審議の経過から考えても、まだまだやり残していることはたくさんございます。  例えば、連合審査、薬物犯罪、青少年に対する影響なども議論をされました。あるいは、これからの情報通信産業に与える影響、これも極めて重要な問題です。捜査機関が新たな権限を持つわけですから、警察委員会などとの協議も必要でしょう。あるいは、先ほど申し上げましたように、新たな産業への影響、これも無視することはできません。だとすれば、例えば交通・情報通信委員会、地方行政・警察委員会、経済・産業委員会、あるいは薬物問題については文教・科学委員会などとの連合審査も当然必要なことではなかったでしょうか。これについては全く無視されたままこの盗聴法案の審議は進められました。  また、法務委員会は大変特徴のある委員会でもございます。会派によってはこの法務委員会に委員を有しない、こういう皆さんもいらっしゃいます。だとすれば、委員外発言をさらに保障し、そして多くの議員のコンセンサスを得ること、これが不可欠ではないでしょうか。これも一部しか実現をされませんでした。しかも、採決が強行されようとした当日には、委員外発言を委員長がみずから職権で決定をされ、委員外発言を認めていらっしゃった日でもございます。そのみずからの決定をみずからが破棄される、到底許されることではございません。  また、この法案は、組織犯罪関連三法案と言われます。余りにも問題が多い。人権に関係し、そしてこれからの社会を本当に不安に陥れる、また審議をすればするほど新たな問題点、疑問がわいてくる。こういう中で、三法案のうち、残念ながら盗聴法案の審議でこの間は手いっぱいであったこと、これも指摘をしておかなければなりません。 <0069>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉景子君、千葉景子君、千葉君…… <0070>=千葉景子君(続)= マネーロンダリングにかかわる部分、あるいは組織犯罪に対する処罰の問題、これらはまだ委員会ではほとんど議論がなされておりませんでした。 <0071>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉景子君…… <0072>=千葉景子君(続)= 私も、これらの法案に対してこれからいよいよ問題点を指摘し、そしてその議論を始めさせていただこう、こう考えているやさきでもございました。残念ながら、その道を閉ざされ、そして通信傍受法案以外の二法案についてはほとんど何の議論もなく通過をさせられようとしていることに、これまた私は危惧を覚えるところでもございます。 <0073>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、時間に制限はありませんけれども、常識の範囲内でやってください。 <0074>=千葉景子君(続)= また、それから、NTTの視察はさせていただきました。しかし、審議の中で大変疑問が生じたのは、この法案が成立することによって影響を受け、多大なる負担を負わされ、そしてその事業の運営すらをも危うくされようとしている小規模の通信事業者の皆さんの悲痛な声でもありました。だとすれば、小規模の通信事業者の施設の実情を視察すること、これも当然委員会としての責任であったはずでございます。  これらの問題点、まだまだこれからというときに審議が打ち切られ、そしてこれらの道が閉ざされたことに私は強く抗議をするものであります。  このような問題点が残されているにもかかわらず、なぜこのような暴挙を冒してまで国民の基本的人権を侵害する重要法案の成立を急ぐのでしょうか。そこには憲法の理念を侵してまでも自自公による政権を維持し、権力に寄りすがろうとする姿しか浮かび上がってこないのであります。  そのために、国民の人権に深くかかわる法案の慎重な審議を犠牲にして省みないという荒木委員長の態度を断固糾弾するものであります。 <0075>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、千葉君、常識的にやってください。 <0076>=千葉景子君(続)= 次に、法務委員会における審査の手続に関してルール違反と著しい職権乱用があるということです。  法務委員会は、法秩序の維持と国民の権利の擁護とを所掌する委員会であることは改めて申し上げるまでもありません。私は、法務委員会は大変これまでも地味な委員会です。普通にはなかなか日が当たらない、あるいは法務委員会の論議がどこかで脚光を浴びるなどということはほとんどない委員会でもございました。  しかし、法務委員会は、それぞれの議員が公平で公正な社会とそして国民の人権を守ろうという熱意のもとに、真摯な議論を常に展開をし、そして円満に議論をするよき伝統があったはずでございます。荒木委員長もその法務委員会のよき伝統は十分御承知のはずです。私は法務委員会に所属してそれを大変誇りに感じておりました。  そのような貴重な法務委員会の財産が今回の暴挙によってすべて失われてしまったことは極めて残念です。断腸の思いがいたします。  荒木委員長が委員会運営に関して国会法その他の法規に違反することがあってはならないこと、これは当然であり、荒木委員長には釈迦に説法を説くようなものでもございます。国会法四十八条は、「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。」と規定しています。  慎重審議を約束しながら途中で態度を一変し、直ちに多数の論理を受け入れるために、質疑を終局し、採決を行ったなどと称し、重要な質疑が続けられていた委員会を突如として怒号と罵声、ばり雑言が飛び交う騒然とした修羅場と化させた荒木委員長の行為は、委員会の議事を妨害し秩序を破壊した行為であり、「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。」とする国会法四十八条に真っ向から違反することは明らかであります。(拍手)  また、荒木委員長の行為は、理事との協議に基づくものではなく、国会法第四十八条による委員長の権限を乱用したものにほかなりません。法秩序の維持を使命とする法務委員長にあっては、委員長の職権を乱用するなどということは決してあってはならないことであり、荒木委員長は手続に関しては粛々と行い強行採決ではなかったと称していられますが、どこにそのような根拠と証拠があるのでしょうか。このことは、既にマスコミ各社の報道などによってもその事実は明らかにされておりますので、あえて繰り返すこともなかろうかと思います。  ただ、一言だけもう一度繰り返して申し上げたいことは、八月九日の夜、なぜ採決を急がれたのか、私には今もって理解することはできません。  荒木委員長は、八月六日の夜、九日の委員会をセットするに当たっても、我が党の理事が欠席の状態で理事懇談会を開会し、九日の委員会を職権でセットしています。それでも私たちはこの決定に従い、定例日でない月曜日の審査にも応じました。それは、この法案が大変重要な内容を持っており、審査をしてもしてもし切れることがないほど問題が多かったからです。  そして、我が党の円理事の質疑の最中に三法案を採決したと荒木委員長は宣告をしています。しかし、我が党の後にもこの日は多数の質疑者の質疑が予定されておりました。これは委員長がみずから職権で決められたことでもございます。この質疑は委員会の前の理事会でも承認をされておりました。この理事会で委員長は質疑を行うことだけを発言し、採決のことは一切協議されていないと聞いております。  ところが、委員会において、緊急動議が提出されたとして、理事との協議を経ることもなく、直ちにこれを採決することすら問題があるのに、質疑予定が組まれている中で質疑を打ち切り採決を行うなど、まさに委員長の職責を踏み外したものとしか言いようがありません。議会制民主主義に対する重大な挑戦ではないでしょうか。 <0077>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、一時間を経過しています。良識的にやってください。 <0078>=千葉景子君(続)= 職権乱用というのは与えられた権限に基づきながらその権限の範囲を超える行為であるとすれば、今回の荒木委員長の行為は、職権乱用ではなく、職権乱用をも超越した職権を逸脱した暴挙としか言いようがないものであり、議会人として国民の信頼を裏切る行為であると言えるでしょう。 <0079>=議長(斎藤十朗君)= 千葉君、良識的にやってください。既に一時間を超えています。 <0080>=千葉景子君(続)= 私は、荒木委員長の行為は、良識の府である参議院の人権と法秩序の維持を使命とする法務委員長としては、決してあってはならない行為であり、その責任を明白にするために法務委員長の職を解任することに全面的に賛成をするものであります。(発言する者多し) <0081>=議長(斎藤十朗君)= 御静粛に願います。──御静粛に願います。 <0082>=千葉景子君(続)= 私は、先ほど申し上げましたように、法とルールに従って民主的運営のもとに審議が行われるべき国会において、しかも最もそのことに厳格であるべき法務委員会においてこのよき伝統が踏みにじられたことに、心から憤りと深い悲しみの念を禁じ得ません。(拍手)  また私は、議員であるとともに、同じ使命と職責を持つ弁護士としても、荒木委員長の解任決議案の討論に立つことに断腸の思いを感ずるところでもございます。  迫り来る二十一世紀に向けて、真に公平で、公正で、安心して生きることができる民主的な社会を目指すためにも、もう一度みずからそのルールをきちっと見直し、そしてそのルールに戻すことが必要なのではないでしょうか。  私は、本法案、通信傍受を含む組織犯罪対策三法案、これを法務委員会で再度審議をやり直す、これを求めて皆様の御賛同をいただきたいと思います。(拍手)  最後に、八月九日の委員会において、我が党の円理事の総理大臣に対する質疑を求める質問に対して、荒木委員長は、後刻理事会において協議することを約束されました。荒木委員長、この協議はいつなさるのでしょうか。これを見ても、まだ法務委員会の審議は終わっていない、そして客観的に見ても採決は存在しない、そのことを改めて指摘しておきたいと思います。  三法案に潜む問題点は山積しています。まだまだ審議は尽くされていません。今こそ、良識の府として国民の負託にこたえること、それが参議院の私たちの良心ではないでしょうか。  三法案を法務委員会において継続審議することを最後に改めて強く申し添え、荒木法務委員長解任決議案に対する私の賛成討論とさせていただきます。(拍手) <0083>=議長(斎藤十朗君)= 吉川春子君。    〔吉川春子君登壇、拍手〕 <0084>=吉川春子君= 私は、日本共産党を代表して、円より子君外五名発議による法務委員長荒木清寛君の解任決議案に対する賛成討論を行います。  円より子さんの趣旨説明の最中、許しがたい不規則発言がありました。この発言は、離婚をし、困難な中でも一生懸命生きている女性たち、男性たちへの侮辱にとどまらず、男女平等を目指し、その第一歩として男女共同参画社会基本法を修正成立させた国会の意思にも反するのではないでしょうか。(拍手)  私自身、一九九五年、北京での世界女性会議に参加し、男女平等を求める世界の女性たちの熱い思いに接し、日本でも女性の地位向上に努力してきた一人として到底許すことはできません。大変重要な通信傍受三法案に関し真剣な審議を行い、発言している最中にこのような不まじめな不規則発言を行った問題について、最初に強く抗議をいたします。(拍手)  解任決議案に賛成する最大の理由は、委員長は委員会の公正で民主的な運営を行うのが本来の任務であるにもかかわらず、荒木委員長は、委員会運営を混乱に陥れたばかりか、採決されてもいない法案を採決されたと強弁するなど、二重三重に不正常きわまる委員会運営を行ってきたことであります。(拍手)  もともと事の発端は、荒木委員長がいわゆる盗聴法案を含む組織犯罪対策三法案の審議のため、定例日でもない月曜日に職権で理事会並びに法務委員会の開会を強行したことです。私たちは、定例日を重視し、定例日に審議を行うということでお互い努力をしているわけで、定例日外の開会ということはそれ自体大変許しがたいことではないでしょうか。  六日の法務委員会理事懇談会において、自民党は、九日の質疑、採決を要求しましたが、野党は、論議は尽くされておらず、議院運営委員会委員長が約束した連合審査と総理出席の総括質疑をやるべきであり、採決は時期尚早、慎重審議を行うことを主張し、意見は対立したまま合意に至らなかったのであります。  ところが、荒木委員長は、野党の当然の道理ある主張に耳をかすことなく、午後十時三十分ころになって三法案の審議入りの強権行使を宣言したのであります。野党側が委員長の強権発動に抗議して退席した後、自民党、自由党、公明党三党だけで一方的に質疑時間の割り振りを行うなど、異常な委員会運営を容認したのであります。九日の理事会、委員会の開催は、このような荒木委員長の職権乱用による開会強行でありますが、野党側がこれに強く抗議したのは当然のことであります。  その上、荒木委員長は、抗議の中、強行開会された同日の委員会において、夜九時前、円議員の質問の最中に、突如、自民党の鈴木正孝議員が発言をし、審議を混乱に陥れるという重大な事態を招いたのであります。  このように、みずからが決めたタイムテーブルさえ無視して、委員長として指名もしていない自民党の質疑打ち切り動議なるものを採用し、委員会審議を打ち切るという暴挙に打って出た荒木委員長の行動は、まさに委員長の職責を放棄したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  その結果、我が党の橋本議員を初め、社民党・護憲連合、無所属、二院クラブの議員の質問権を奪いました。これは、野党質問中に打ち切り動議なるものを出すという鈴木議員の横暴な姿勢はもとより糾弾されるべきでありますが、この暴挙を容認し、みずから認めていた野党質問を封じるなどという行為は、法案審議打ち切りという暴挙の上にさらに暴挙を重ねるものであり、断じて許すことができません。(拍手)  審議打ち切りの暴挙とともに、採決されたとされる当日の委員会の事態は、あらゆる面から検証してみても、一から十まで瑕疵にまみれたものであり、採決なるものは一切なされておりません。私は、現場を終始見ておりましたが、委員長は動議提出者の指名すら行っておらず、ましてや採決などなされた形跡はありませんでした。  参議院先例録第三節の一二一には、「委員会において発言するには、その都度、委員長の許可を受けることを要する」となっており、委員会において発言するには、その都度委員長の許可を受けることを要するのであります。委員長の許可を受けない発言は、正規の発言とはならないのです。鈴木正孝君の発言は、委員長の許可を受けておらず、先例によれば、正規の発言とはならないものです。これは、現場において私は見ておりました。また、繰り返し放映されるテレビのビデオにおいても、委員長は鈴木君に発言の許可を与えていないことは明らかであります。委員長として指名もしていない自民党の質疑打ち切り動議なるものに手をかしたのです。これは委員長の議事整理権からいっても全く不適切であり、許されないことではないでしょうか。(拍手)  さらに、採決なるものであります。  荒木委員長は、どの法案が採決されたとおっしゃるのでしょうか。採決は本来、法案ごとに一つ一つ採決をしなくてはなりません。委員長に対しては釈迦に説法のようなことを申し上げるかもしれませんが、これは基本ではないでしょうか。参議院委員会先例録第一五七は、「採決は、案件ごとに行うのを例とする」とあります。  組織犯罪対策三法案については、第一に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案及びこれに対する修正案、第二に、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及びこれに対する修正案、第三に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、以上五法案に対する採決がそれぞれ求められているのであります。  このことは速記録を見れば明らかです。速記録では、委員長(荒木清寛君)後刻、後刻……(議場騒然、聴取不能)鈴木君提出の動議に賛成の方の挙手を願います。議場騒然、聴取不能、委員長退席、このようになっています。どこで採決が行われたのでしょうか。議事録を見る限り、そのかけらも影もないではありませんか。(拍手)採決を示す記述は一切見られません。事実は冷厳であります。  私は、当日その時間、たまたまその場に居合わせました。議運の理事会がいつ行われるかわかりませんので委員会に詰めてはおられませんでしたが、たまたまその時間、私はその場におりました。そして、その混乱したありさまを見て、良識の府として、熟慮の府として期待されている参議院においてこのような暴挙が行われたことに対して、深い悲しみと怒りを覚えました。参議院のこのありさまをテレビで繰り返し放映されるものを見て、国民からは強い批判が寄せられていますが、当然のことではないでしょうか。(拍手)  私は、参議院議員であることに誇りを持ち十六年間議員を続けてまいりました。そして、衆議院の足りないところは補い、あるいはチェックをし、充実した審議をするということが参議院の任務であり、私の任務でもあると心得て今日まで議員を務めてまいりました。このような混乱は、本当に参議院議員としても残念で悔しくてなりません。  この混乱は委員長みずからつくり出したものです。それにもかかわらず、参議院斎藤十朗議長のもとにその直後に報告に行き、採決は存在していると強弁し、参議院議長に審査報告書まで提出しているのです。  荒木清寛君は、本来、委員長として議院の充実した審議を保障すべき立場にありながら、事もあろうに、議員の質問権を封殺し、委員会を混乱させました。公正中立の立場で委員会運営を行うべき委員長としてまことに不適格と言うべきであり、このような委員長を解任すべきことは当然であります。(拍手)  このように強行的に委員会を中断させ、委員会の民主的運営のルールを真っ向から踏みにじり、採決なるものにまで手をかした委員長のこの不当きわまる行為に対して、民主党・新緑風会、日本共産党、社会民主党・護憲連合、参議院の会の各会派の国対委員長が連名で、法務委員会は異常な事態での議事進行であり、採決に至っていない、委員会に差し戻して審議をやり直すことを強く要求したのは当然のことです。(拍手)  解任決議案に賛成する理由の第二は、荒木委員長が組織犯罪対策三法の審議に当たって、慎重かつ十分な審議をするために、議院運営委員長から要請を受けていた地方行政・警察委員会、交通・情報通信委員会、財政・金融委員会などとの連合審査を開くべき職責を果たさないままに委員会の審議を強行的に打ち切ったということです。  犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案、いわゆる盗聴法案にはさまざまな重大な問題点があることが当初より指摘されており、幾つかの関連委員会との徹底した連合審査がどうしても必要であったわけです。  例えば、通信傍受を実際に執行するとされる警察の姿勢、体質についても重大な問題があります。我が党の元国際部長の緒方靖夫参議院議員宅への神奈川県警による組織的な盗聴事件について、東京高裁が警察官による電話の盗聴という違法行為と明白に判示したにもかかわらず、今日に至るも警察は組織的盗聴は行ったことはないなどと傲慢不遜な態度をとり続けているのであります。  さらには、電子メール、ファクスなどは、関連する情報のすべてが警察により盗聴される構造になっていることは専門家の指摘するところであります。また、マネーロンダリング罪の拡大に伴い、犯罪と金融機関のあり方についても根本的論議が求められているのです。  このように三法案は、これまでの不十分きわまる審議を通じてでさえ憲法二十一条に違反することが明らかであり、許容できない致命的欠陥を抱えた違憲の法律であることが浮かび上がってきているのです。本院における審議を始めるに当たって、我が党は、本法案を特別委員会を設けてそこで十分な審議を行う体制をつくり、テレビを入れた総理質問などを強く要求したゆえんであります。  その結果、議院運営委員会で、組織犯罪対策三法案をどの委員会に付託すべきか、約十日間にわたる各党理事による真剣で熱のこもった話し合いの結果、我が党の要求した特別委員会ではなく、法務委員会に付託することになりました。  その際、委員外発言を認め、すなわち法務委員会のメンバーでなくても希望する方の、無所属の方の発言を認め、あるいは連合審査を行うことによって充実した審議を行うことの必要性があることが確認されたのであります。岡野議運委員長が法務委員長である荒木君に対してこのことをわざわざ伝えたのも、こうした議院運営委員会理事会での熱心な議論があったからにほかならないのであります。(拍手) <0085>=議長(斎藤十朗君)= 吉川君、時間がかなり経過してきております。そろそろまとめていただけませんか。 <0086>=吉川春子君(続)= はい、聞こえております。  にもかかわらず、どの委員会とも連合審査が行われない状況のもとで、自民党の質疑打ち切りの動議を処理しようとしたことは、法務委員長の責任放棄であり、まさに解任に値すると言うべきではありませんか。(拍手)  国民の基本的人権に重大な侵害を及ぼすおそれのある法案について、審議を尽くさないばかりか、強行採決を企てるなどの暴挙は到底許しがたく、委員長の解任は当然であると言わなくてはなりません。  加えて、立正佼成会、PL教団など六十六団体が加盟する新日本宗教団体連合会からも盗聴法案に反対する意見書が提出されています。その内容は次のとおりです。  私ども新日本宗教団体連合会は、昭和二十六年の結成以来、信教の自由、政教分離、宗教協力、国民皆信仰をスローガンに、人類の福祉と世界平和を目指し、教団の枠を超えた数々の活動を行ってまいりました。  さて、今国会の状況を拝見しますと、国民の福祉と平和に深刻な影響を及ぼす法案が短時間に次々と処理されていくことに危機感を持つものでございます。日米防衛協力に関する新ガイドライン関係法が成立し、組織犯罪対策三法案、住民基本台帳法改正案が衆議院を通過し、今国会中にも成立すると観測されております。こうした法案が、自自公連立というこれまで予想することもできなかった枠組みで、十分な審議を尽くすことなく成立してしまうことに、自由と民主主義が崩壊するのではないかと危惧するところでございます。  国会審議をスムーズにするための連立との説明があるようでございますが、審議される法案が国民から真に望まれるような立派なものであれば、与野党こぞって賛成するものと存じます。議席数合わせにきゅうきゅうとすることなく、よりよい国づくりのために政治のあり方を考え直していただきたいと思う次第でございます。  つきましては、基本的人権に深くかかわり、国民の生活に重大な影響を及ぼす組織犯罪対策三法案や住民基本台帳の改正案の審議をいま一度白紙に戻し、将来に禍根を残すことのないよう、慎重な審議をお願い申し上げます。  以上が自民党と友好関係にある宗教団体からの反対意見書でございます。  このほかにも、盗聴法案の審議が深められるにつれて反対の声が大きくなっているのであります。日弁連を初め多くの民主団体、労働組合が反対意見を表明しております。また、労働組合について、私が目にした盗聴法案に反対しているものだけでも、列挙すれば以下のとおりであります。  日本国家公務員労働組合連合会、全日自労建設一般労働組合、全日本運輸一般労働組合、全国自動車交通労働組合総連合会、日本医療労働組合連合会、日本高等学校教職員組合、全日本教職員組合、日本自治体労働組合総連合、全労連・全国一般労働組合、全国福祉保育労働組合、全日本金属情報機器労働組合、全国印刷出版産業労働組合総連合会、全国地方銀行従業員組合連合会、通信産業労働組合中央本部、郵政産業労働組合、日本映画放送産業労働組合、日本民間放送労働組合連合会、住宅・都市整備公団労働組合、さらに日本出版労働組合連合会、日本新聞労働組合連合、日本マスコミ文化情報労組会議、日本私鉄労働組合総連合会、日本教職員組合などなど、たくさんありますが、以下は省略させていただきますが、四十を超える労働組合も盗聴法に反対の意思を表明しております。  なぜこのように幅広い団体が本法案に反対しているのでしょうか。  大詰めを迎えた盗聴法案をめぐる審議で問題点が次々と明るみに出てまいりました。一般市民の電話を傍受することなどあり得ないなどと繰り返してきた政府、自自公などの主張は根本から覆りました。暴力団の犯罪を取り締まるどころか、憲法の保障する通信の秘密を侵し、市民のプライバシーに踏み込む違憲法案であることは疑う余地がないではありませんか。参議院法務委員会での論点はたくさんあります。  まず、四つの組織的犯罪に絞ったどころか、百四十五の罪名で別件盗聴が可能であるという点です。殺人、薬物、銃器、集団密航の四つの組織的犯罪に絞ったから一般市民が盗聴の対象になることはあり得ない、政府や自自公の各党はしきりにおっしゃいます。弁解をしていらっしゃいます。  しかし、盗聴法案は、他の二法案と異なり、組織的犯罪と限定しておりません。数人の共謀による犯罪通信が行われると疑うに足りると警察が判断すれば盗聴できることになっています。  しかも、対象犯罪は四つどころではありません。我が党の橋本敦参議院議員は、七月二十九日の参議院法務委員会で、法案の十四条で規定する別件盗聴は、裁判所の令状がなくてもできる上、(一)共謀でなくとも死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役または禁錮に当たる犯罪が対象になる、(二)これを罪名に当てはめると百四十五件に上るなどを挙げて政府を追及しました。その中には、例えば通貨偽造・同行使、有印公文書偽造・同行使など幅広いものがあります。警察がこれらの犯罪に関して、公衆電話、飲食店でも容疑者が使う疑いがある電話だとすれば盗聴できます。市民生活の周辺に人権侵害が拡大する危険性があるのであります。  次に、あいまいな最小限の範囲。  Eメールなどは全体を傍受できます。犯罪に関係する通信かどうかを捜査員が判断する盗聴に関して、十三条は最小限の範囲に限ることを規定しています。  その範囲については、政府はスポットモニタリングで行うと答弁しています。具体例として、最初に三十秒間聞いて事件に関係がなければ、倍の一分間は切断する。その後の会話で犯罪に関係があると判断すれば、そのまま盗聴する方式を想定するとしています。法務省の松尾刑事局長の答弁でございます。  しかし、それは法案に規定しているわけではなく、今後、警察などで事件ごとにマニュアルを作成するとしています。最小限の範囲がどういうものかも…… <0087>=議長(斎藤十朗君)= 吉川君、吉川君、そろそろまとめに入ってください。 <0088>=吉川春子君(続)= はい。そろそろまとめに入ります。  スポットモニタリングの方法も事件の性質で異なるというのが政府の答弁です。上司の命令で盗聴する捜査員は、熱心であればあるほど、全部聞いた上で判断することにならざるを得ません。  ファクシミリ、Eメール、インターネットの場合、会話のように盗聴を中断することは不可能です。法務省が提出した資料によっても、信号全体を傍受し復元の上、必要最小限度の判読により該当性判断を行うとなっており、捜査員がすべてを読むことになり、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」と定めた憲法二十一条二項に違反します。国民のプライバシーという基本的人権を侵害することは言うまでもありません。  三つ目は、携帯電話、特定するのは困難、市民の通話、広く盗聴もされることであります。  技術者を招いた参考人質疑、七月二十七日ですが、とんでもないことが明らかになりました。携帯電話の場合、容疑者の通話だけを特定して盗聴するのは困難でも、束になった一般市民の通話の中から容疑者の会話を盗聴することは可能だということが判明したのです。換言すれば、外見は同じ多数のまんじゅうの中から、一個だけあるこしあんを見つけるために全部試食することを盗聴法案は想定し、それが今の技術でできるというのです。  さすがにその方式で盗聴すると言えない法務省刑事局は、容疑者の通話だけを特定できる装置について、法律が施行される一年後までに開発する、法律が効果を発揮する上でも通信事業者に開発の協力はお願いすると言い出しました。その費用はだれが負担するのか、それを質問されて松尾刑事局長は、開発費用は基本的には国が負担するというのが常識だと述べています。盗聴装置の開発費用まで国民の税金で賄うというわけです。しかし、法案のどこにもそれに伴う予算措置を示さず、幾らかかるのですかと詰め寄られて、具体的には試算していないが、検察庁や警察庁の予算がつぶれてしまうほどの費用ではないなど、人を食ったような答弁ではぐらかしました。もともとこうしたことを想定していない法案で、先に盗聴法ありきだったことを暴露した形ではないでしょうか。(拍手)  第四は、盗聴の期間は三十日が限度というが、裁判所が認めれば再延長になるという問題です。  捜査機関が盗聴できる期間は三十日が限度で、他国と比べても長くはないと推進派は主張しています。ところが、裁判所は、最初に発付した令状の被疑事実と同じものが含まれているときは、特別の事情があれば同じ通信手段の令状を出すことができます。その場合の期限を法案は示しておらず、解釈次第で幾らでも延長できる仕組みとなっております。  実際に盗聴が始まると、被疑事実も知らされない立会人にはほとんどチェックできることはありません。その後も、会話を記録した録音テープ二本のうち一本は警察が持ち帰り、犯罪に関係のなかった部分を消去することになっています。しかし法案は、消去したことを確認する手段も、不正に使われないか、だれが調べるかなども何ら規定をしておりません。警察というブラックボックスに一たん入ってしまった国民のプライバシーは、外部からは全く手出しができなくなることは明白です。こんな危険な法案を絶対に許すことはできないのではないでしょうか。(拍手) <0089>=議長(斎藤十朗君)= 吉川君、吉川君、相当時間が経過しております。常識の範囲内でお願いします。 <0090>=吉川春子君(続)= はい、議長、常識の範囲内で行います。  盗聴は、被害者が被害に遭ったことすらわからないのが特徴です。人権侵害の事実は警察の内部におさめられ、彼らが必要なときに取り出して利用されることになります。正義感の強い捜査員からの内部告発でもなければ、明るみに出ることはないでありましょう。それでも警察を信頼してほしいという言葉を信じるのですか。  通信の秘密は狭義の信書の秘密より広い概念であります。信書の秘密は、文字どおりの意義においては、信書すなわち封書やはがきのみの秘密を指し、電信や電話の秘密を含まない。例えばワイマール憲法第百十七条には、これらの区別が明示されております。我が旧憲法二十六条の信書の秘密は、従来一般に通信の秘密の意味に解されてきましたが、本条はこのことを文字の上で明白にしました。通信の秘密は、またワイマール憲法に言う逓信の秘密を含みます。逓信の秘密とは、職員がその職務上知り得た秘密を漏洩することを得ないことを意味しますが、それは本条の言う通信の秘密の一部であります。  通信の秘密の保障は絶対的であり、国家はこれを侵害できません。旧憲法のもとでは、法律の範囲内においては通信の秘密を侵すことが認められ、例えば郵便法十四条及び十六条の二に、郵便官署が郵便物を開披し得る場合が規定されていましたが、これは本条によって許されないところとなりました。  したがって、新しい昭和二十二年の郵便法では、第八条「(検閲の禁止) 郵便物の検閲は、これをしてはならない。」、第九条「(秘密の確保) 逓信官署の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」として通信の秘密の確保を保障しております。これは註解日本国憲法に明確に書かれていることであります。  ただし、通信の秘密の保障は、逓信官署に託された逓信についても、これに私人の所持に属する文書と同様の保護を与えようとするものであるから、犯罪捜査の目的のためには、司法官憲の発する正当な令状によればこれを押収することができます。  イタリア共和国憲法第十五条が、「その(信書の秘密)の制限は、法律に定められた保障に従って、正当な理由を付した司法官憲の令状による場合にのみこれを行うことができる」としておりますのは、同様の趣旨と解されます。  ただ、司法官憲の発する令状によって電話の盗聴を行うことができるかどうかは問題で、対象が不明確であるからこのような令状は認められないというべきであろう、これを侵害する法律は違憲の立法とされることを免れない、このように法律の専門書に明確に書いてあるではありませんか。  日本の刑事訴訟は戦後大きく変わりました。戦前の糾問主義から変わりました。そして、真実の発見は、基本的人権を守りつつ真実を発見する、このように平野先生の教科書にも書いてありますが、国民の基本的人権を侵して、それで捜査ができるということは絶対にありません。憲法三十一条の定める法定手続も、憲法上の権利としてこの捜査上の基本的人権の保護を規定しているではありませんか。  私は、今度のこの盗聴法三法は、まさに憲法の幾つもの条文を侵害するものであり違憲の法律である。その法案を、事もあろうに、採決もせずに混乱のうちに国会で成立させようとした。委員会で審議を打ち切ってしまった。その法務委員長の荒木清寛君の責任はどんなに強調してもし切れないほど重いということを主張せざるを得ません。  私は、そういう意味において法務委員長荒木君の解任を強く主張いたしまして、私の解任決議案に対する賛成討論を終わりたいと思います。(拍手) <0091>=議長(斎藤十朗君)= 福島瑞穂君。    〔福島瑞穂君登壇、拍手〕 <0092>=福島瑞穂君= 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、法務委員長荒木清寛さんの解任決議案について賛成の討論を行いたい、そう思います。  先ほど、同僚議員であります円より子さんの趣旨説明の最中にひどい人権侵害の発言がありました。私は、それはやじであるとか不規則発言であるとか一切思いません。その発言、あんたも離婚しただろうというふうに言われておりますが、あんたも離婚しただろうという発言は明白なセクシュアルハラスメントであり、女性に対する人権侵害です。  なぜ、セクシュアルハラスメントなのでしょうか。今通常国会で男女共同参画社会基本法が成立をしました。そして、ことしの四月一日から改正均等法が施行をされました。改正均等法二十一条は、職場におけるセクシュアルハラスメントは事業主の配慮義務である、そう明白に規定をしております。職場のセクシュアルハラスメントが個人の問題ではなく、雇用の場における性差別の問題であり、事業主に配慮義務があるということを明白に法律上位置づけた、そういうことです。そして、改正均等法二十一条二項は、労働大臣はこれに基づいてガイドラインをつくるように決めております。日経連などがつくったガイドライン、こういうものもありますし、労働省、人事院も職場におけるガイドラインをつくっております。  このことについて、私は、国会において女性へのセクシュアルハラスメントは人権侵害であるということが理解をされていない、国会における人権意識が残念ながら極めて低いということを象徴していると思います。  改正均等法二十一条は、前段で職場における地位利用型のセクシュアルハラスメント、後段において職場環境型のセクシュアルハラスメントはセクシュアルハラスメントであるという旨規定をしております。  私も国会において、例えば法務委員会の理事懇談会に入る前において、与党の男性議員から女の子なんだからおとなしくしていなさいというふうに言われました。女の子なんだからおとなしくしていなさい、瑞穂ちゃんというようなことをよく言われました。女の子なんだからおとなしくしていなさいと。私は女の子ではありません。また、おとなしくしていなさいというのは、対等な立場にある国会議員に言うべきことではないと思います。  そして、これには性差別があります。女の子なんだからおとなしくしろ、女だからこうしろというステレオタイプに基づく発言であります。先ほどの円より子議員に対する発言も同様です。(「本人は聞こえていないと言っているんだよ」と呼ぶ者あり)違います。本人が聞こえていようが聞こえていまいが、私はここで個人的な問題を問題にしているのではありません。  なぜ私が本日ここで発言しているかといいますと、円より子議員に対する発言が私たちすべての女性議員、そして全国民に対する人権侵害であると考えるからです。  あんたも離婚しただろうと言うのがなぜセクシュアルハラスメントなのでしょうか。離婚をする、結婚をする、それは個人の選択の問題です。あんたも離婚しただろう、そんな女なのだ、離婚をする、それはよくない、そしてあんたも離婚しただろうということが相手をおとしめる意味で使われている、女性をおとしめる意味でこの言葉が使われています。これは明白なセクシュアルハラスメントです。  先ほど申し上げました日経連のガイドラインや各企業におけるガイドラインの中で、女の子という発言あるいは女性のライフスタイルに対するステレオタイプの発言はセクシュアルハラスメントに当たるというものが大変あります。  私は、ここで声を大にして言いたいと思います。女性に対する人権侵害は人権侵害であり、国会でこそ、そのことはもっとかみしめられてしかるべきであります。先ほど円より子議員の発言の最中に、セクシュアルハラスメントの発言がありました。私たち多くの女性議員が怒ったのも無理ではありません。私たちに対する侮辱である、そういうふうに思っております。  その発言は、この解任決議の審議の最中に起きました。私は、この審議が終わるまでにこの件の糾明ときちっとした報告、事実の調査は素早くできると思います。この審議が終わるまでにきちっとした調査とそれから謝罪があることを強く要望するものであります。  先ほど申し上げました労働省と人事院のガイドラインは、セクシュアルハラスメントが起きた場合の対応について、的確、迅速に対応をするように、事実調査をするようにということを規定しております。  私たちは、国民にさまざまなことを要求しながら、国会においてセクシュアルハラスメントの発言すら事実調査もできず、あるいは適切な処理ができないのであれば、国民の前で恥ずべきだというふうに考えております。ですから、繰り返し申し上げます。この解任の審議が終わるまでに的確、迅速な調査、そしてそれに基づく適切な解決、救済が求められること、それをここで強く要求したいと思います。  円より子議員に対する発言は、改正均等法二十一条一項後段の職場環境型セクシュアルハラスメントになる可能性があります。言葉によるセクシュアルハラスメントが職場環境を害するのであれば、改正均等法二十一条が禁止する職場におけるセクシュアルハラスメントです。そのことをこの議場で確認し、私は適切、迅速な解決を望みます。(拍手)  では、本題の法務委員長荒木清寛さんの解任決議案について、賛成の立場から述べさせていただきます。  盗聴法、組織的犯罪対策法は四月二十八日、衆議院法務委員会の参考人の前で異例の強行採決がなされました。そして、五月二十八日、野党三党が強引な委員会運営は無効だとして抗議欠席する中で、自自公は強行採決をいたしました。そして、六月一日、衆議院本会議におきまして、社民、民主が欠席、共産などが反対する中で法案を通過させました。  そして、六月上旬、この盗聴法、組織的犯罪対策法は参議院へ送付をされました。そこで問題となったのは、どの委員会に果たして係属をするのか、そういうことでした。特別委員会を開くのか、法務委員会に係属をするのか、大変真剣な議論があったというふうに聞いております。そして、この盗聴法、組織的犯罪対策法が警察の問題、通信の問題、それから産業の問題、財政の問題など幅広いテーマに及ぶために、この法案は特別委員会に係属すべきだというふうに強く主張されたというふうに聞いております。しかし、この法案は最終的には法務委員会に係属をいたしました。  そのときに、議院運営委員会におきまして、交通・情報通信委員会、財政・金融委員会、地方行政・警察委員会などと連合審査をするということで了解がありました。了解があったというふうに聞いております。そのことについては与党の理事の方々も了解され、法務委員長に対し説明があったというふうに聞いております。それで法務委員会に係属をすることになりました。  しかし、残念ながら、私たちのたび重なる要望にもかかわらず、連合審査は実現をしておりません。  参議院の法務委員会の中で、郵政省の問題や警察の問題、大蔵省の問題、通商産業省の問題など、幅広く問題になりました。私は郵政大臣の出席を求めましたけれども、残念ながら法務委員会におきまして郵政大臣の出席は実現することはできませんでした。  私どもは連合審査を待ち望み、それぞれの各委員会で連合審査を求める強い要望があったにもかかわらず、与党の理事の強い反対によって実現していないというふうに聞いております。これは極めて残念なことです。法務委員会に係属するときの一つの条件として連合審査が求められたにもかかわらず、その約束は守られておりません。私は、今でも差し戻してこの連合審査を実現していただきたい、そういうふうに強く思います。  各種世論調査でも、国民の約六割の反対の声があるにもかかわらず、これは東京新聞七月十八日付一面、通信傍受法案反対は五一%、JNN系テレビ八月三日夕方以降のニュース、通信傍受法案反対五〇・一%などです。こういうふうにあるにもかかわらず、公聴会も中央公聴会しか開催されず、地方公聴会はいまだ実現されておりません。  参議院の審議の過程で、通信の傍受、盗聴の方法について数多くの疑問が提起され、とりわけ携帯電話やインターネットの盗聴については、その可否、方法など、技術的な点も含めて多くの点が未解明となっております。  ところが、現地調査は一般の電話の盗聴の方法についてNTTの調査が行われたのみで、携帯電話会社やインターネットプロバイダーの現地調査など実現されておりません。インターネット業界から強く懸念の念が表明され、携帯電話については現状では盗聴が非常に困難であるなど、さまざまな指摘があるにもかかわらず、この点についての現地調査は実現しておりません。  法案についての政府答弁も、法案の明文の内容と反していたり、衆議院と参議院の説明が異なるなど、矛盾に満ちたものとなっており、未解明な点が多々存在をしております。  また、捜査のための通信傍受法案、いわゆる盗聴法案に問題点が多くあり過ぎたため、重大な問題点を含んでいる組織的犯罪対策法案と刑事訴訟法改正案についてはほとんど審議がなされておりません。  そのような状況下で、去る八月六日夕刻から夜にかけて開催された法務委員会理事懇談会において、自民党の鈴木正孝理事が、八月九日には組織的犯罪対策三法案の審査を行い、その後採決することを提案しました。野党理事は質疑終局に強く反対し、その他の私たち野党のオブザーバーももちろん強く反対をしました。審議は十分されていないと反対をしました。また、非定例日の月曜日に採決前提の審議を行うことに強く反対をしたわけです。  このように、同法案の審議をめぐる状況が審議終結とほど遠い状況にあるにもかかわらず、荒木委員長は、委員長裁定と称して一方的に委員会を開催することを宣言しました。民主党円より子理事、共産党橋本敦委員、私、社会民主党福島瑞穂は、このような決定は認められないとして理事懇談会から退席をしました。  このような形で、非定例日である月曜日に法務委員会が職権で入れられたわけです。しかも、御存じのとおり、月曜日八時以降に始まるなど、極めて異常な事態で非定例日、定刻外に法務委員会の審議が始まりました。その細かい内容は他の議員も発言をされていらっしゃいます。  そこで、私が強く申し上げたいのは、盗聴法、組対法の採決など一切存在をしていない、そういうことです。盗聴法、組対法の採決など存在をしておりません。直ちに法務委員会に差し戻すよう強く要求したいと思います。  委員部に確認をいたしました。採決は少なくとも二回行わなければならない。動議の採決と三案一括の採決。三案一括と言っていなければ、三案を別々に三回やる必要がある。合計四回となります。丁寧にやるならば、まず動議の採決を行うことについての承認、動議の採決、そして三案の採決で、計五回となります。三案一括の採決は、三案一括ということが確認できていなければ無効です。三案別々の採決の場合にも、その一つ一つが特定できなければ無効です。  委員長の認定は、動議採決、三案一括採決ということになります。しかし、そういうことは一切ありません。法案についての名称の指摘なども一切ありませんでした。御存じのとおり、三案一括採決ということも一切ありませんでした。  私は、盗聴法、組織的犯罪対策法ときょうここで申し上げております。しかし、私は、理事懇談会、理事会においては、法務委員長荒木委員長より、盗聴法という名称は使わないように、正式の名称を使うように言われました。また、自民党の理事からは、法務委員会においても盗聴法と言えば議事録を削除すべきだというふうに言われました。 <0093>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、福島君、時間が大分経過していますので、そろそろまとめに入ってください。 <0094>=福島瑞穂君(続)= はい。わかりました。  そこで、私は言いたいと思います。  荒木委員長は、法律の名称をきちっと正確に言うべきであるとおっしゃるのであれば、なぜ採決の段階、その前提の動議の段階で法律の名称を正確におっしゃることすらなさらなかったのでしょうか。私は、盗聴法と言っただけで、正式名称を言わないのはおかしいというふうに言われました。三案一括のときでも法案の名称ということは一切言われておりません。  また、採決による可否は必ず宣言をしなければなりません。委員長の主張は、動議採決、三案一括採決というふうに言っておられます。ということは、委員は二回手を挙げなければなりません。しかし、ビデオや現場の確認、もちろん私は法務委員でありますから法務委員会に出席をしておりました。現場では三案一括採決の声も一切聞こえておりません。採決の可否も宣言をしておりません。そもそも、動議の採決か動議承認の確認の採決かすらわかっておりません。  おまけに、私たちは動議の中身も一切知らされておりません。それで私たち委員はなぜ判断ができるのでしょうか。動議と言われ、私どもは中身がわかりません。それで委員に対して挙手しろということはわからないわけです。中身が一切知らされないまま、法務委員会において私たちは態度を決めることはできません。そして、挙手は一度しか行われておりません。つまり、委員長が認定しているような採決は存在をしていないのです。  そして、この日は、委員長の職権で法務委員会を入れ、各委員の質問時間があらかじめ示されておりました。  そして、私たち法務委員会はわざわざ二院クラブの佐藤道夫さんにぜひ二院クラブとして法務委員会で発言をしていただきたいということを頼んでおりました。つまり、佐藤道夫さんは二院クラブとして法務委員会に呼ばれながら一切発言の機会が与えられなかったわけです。  もちろん、橋本委員、私、中村委員、平野委員、大森委員、そして佐藤議員、質疑時間が決められておりましたが、それは突然の打ち切りでなされておりません。私の質疑時間、これも奪われたまま、そのままになっております。私の質疑時間は当然保障されてしかるべきでした。  そして、私は声を大にして言いたいのは、わざわざ法務委員会が佐藤道夫さんを委員外発言でお呼びしながら、それを全く無視した、そういうことです。彼は、ある集まりで、質問のために二日か三日考えたということをおっしゃっていました。私は、これは明白な質疑権の剥奪であり、期待権の侵害とも言える、そう考えております。  こういう中で強行採決が企てられ、しかもその強行採決の企ては失敗をしたのです。強行採決は存在をしません。  荒木法務委員長は、組織犯罪対策三法案の審査に際し、法案が憲法で規定された通信の秘密を侵し、国民の基本的人権、プライバシーを制限する重大な立法であり、かつ与野党間で多くの意見の相違があるにもかかわらず、十分な審査を尽くすための努力を怠り、委員長の職権で委員会を開会し、野党質問中に質問を打ち切り、採決を強行しようとしました。しかも、自民党の苦し紛れの質疑打ち切り動議さえ可決できなかったが法案は可決したと強弁するなど、その委員会進行は明らかに公平さを欠くと言わざるを得ません。  私は、法務委員会に差し戻してほしい、そしてこのような議事運営を行った委員長の解任を強く求めるものであります。  そして、この参議院の法務委員会の質疑の中で、たくさんの問題点、解決できなかった点があることを申し上げたいと思います。  まず第一に、過去に行われた警察の違法盗聴についてのきちっとした事実究明、謝罪など一切行われておりません。これは盗聴法、組対法を成立させる不可欠の大前提で、これがなければ私は決して成立させることはできないというふうに思っております。  御存じ緒方靖夫さんの事件で東京地検特捜部の捜査を受けて五人の実行犯が特定され、民事裁判で緒方靖夫さんの勝訴が確定をしております。  住民監査請求の裁判において、東京高等裁判所は、警察の組織的犯罪であったと明白に認定をしております。神奈川県本部長は知っていたと推認できる旨、判決ですら述べております。  しかしながら、警察はこの事実を認めません。警察庁長官は、警察は過去においても現在においても電話盗聴など行っていないとおっしゃっています。一度もこの事実を認めておりません。  組織的犯罪を問題にしておりますが、東京高裁は、警察の組織的犯罪であったと、一人の警察官がうっかり違法盗聴を行ったのではなく、組織的犯罪であったと明白に言っているわけです。盗聴…… <0095>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、福島君。 <0096>=福島瑞穂君(続)= はい。 <0097>=議長(斎藤十朗君)= 時間が経過していますので、それをまとめてください。 <0098>=福島瑞穂君(続)= 盗聴法、組織的犯罪対策法が実現をしたならば、今まで行われたと思われる数多くの情報収集としての盗聴を警察は一切やめるのでしょうか。私は、そう思えません。  丸竹洋三さんという補聴器メーカーに長年勤務していて警察に盗聴器を納入していたことを証言してくださった方がいます。職場の元同僚も、丸竹さんの証言の信憑性を裏づける発言をしました。緒方さんの事件だけではなく、ほかにも数多くの盗聴があったことを推認させる数多くの証拠はたくさんあります。  私が本当に問題だと思うのは、警察にもし自浄作用がなければ、また違法盗聴が行われる危険性が大変あるということです。反省がなければ、起こる可能性は非常にあるのではないでしょうか。  緒方靖夫さんの住民監査請求において被告となった警察官の多くは、法廷に出頭すらしませんでした。私は、きちっとしたうみを出すことをしない限り、盗聴法、組対法を成立させることは極めて危険である、そう思います。警察に過去のうみを一気に出す能力がないのであれば、違法盗聴のおそれは将来もあり得ますし、また今後は、電話局内部から接続する盗聴は雑音や異音がなく、当事者に発覚しないという点で取り返しがつかないと言わざるを得ません。  そして、緒方靖夫事件の問題点は、警察の違法盗聴を警察自身が裁けなかったということだけにとどまるのではないと私は思います。検察庁も、警察の組織的犯罪を裁けなかったわけです。(拍手)このケースにおいて、問題となった警察官たちは起訴されることはありませんでした。違法盗聴を裁けなかったわけです。私は、今回の盗聴法、組対法の審理の前提として、警察のこの過去の問題のうみをきちっと出すことが不可欠である、そう考えます。  そして、次に申し上げたいことは、技術的な問題です。  参議院の法務委員会において、この盗聴法がインターネットなどを前提につくられていないということが参考人からも数多く指摘をされました。盗聴法は、どのような方法で盗聴をするのか、どういう形で実施をするのか、何も決められておりません。そして、インターネットなどにどのように適用されるのか極めてわからない、そういう状態です。  デジタルデータは短い時間に膨大なデータの送信が可能です。標準的な転送速度で一分間に日本語を二十四万五千字も送ることが可能と言われております。そして、蓄積されたデータから必要な情報を検索することも現在のコンピューター技術からすれば簡単なことです。  コンピューター通信と電話とはアメリカでも法律を分けております。これを一つの法律で取り扱うこと自体間違っているのです。  私は、この点においてもこの盗聴法は明確な欠陥法案である、そう思います。  そして、次に申し上げたいことは、参議院の法務委員会で審議をしていて私が思うには非常に極めておかしな説明がありました。これは組織的犯罪のためである、暴力団対策である、悪い人間を捕まえる必要がある、大物を捕まえる必要があるのだ、そういうふうに説明をされました。  しかし、審議の途中で何と携帯電話は盗聴が極めて困難で現在の技術では盗聴ができないということが明らかになったわけです。  さらに、イリジウム、衛星携帯電話のことも同様です。(「寄っかかってしゃべるんじゃないよ」と呼ぶ者あり)済みません。松尾刑事局長は、イリジウム、衛星携帯電話について、現在では傍受できない、傍受しない、そう答弁をされました。極めて奇妙なことです。  イリジウム、衛星携帯電話は三十万から六十万、かなり高額であると言われております。しかし、本当に悪い人間は、携帯電話であれ、あるいは衛星携帯電話であれ、そういうものを使うのではないでしょうか。  また、暗号の問題もあります。  私がここで申し上げたいのは、この盗聴法、組対法を成立させても、法務省が言っているような悪い人間あるいは大物を捕まえることなどできないということです。  穴がたくさんある、明白に盗聴できない対象がある、部分があるということを何度も法務省は認めておられます。  だとしたら、これは何のための盗聴法なのでしょうか。私は全く理解に苦しみます。  悪い人間を捕まえる、犯罪者が携帯電話を使っているから、だから盗聴法が必要なのだ、そう力説された直後に携帯電話は盗聴が極めて困難である、衛星携帯電話は盗聴ができない、傍受をいたしません、そう言われたら私たちはこの盗聴法の立法目的、立法事実に極めて疑いを持つものであります。(拍手)  この盗聴法にひっかかるのは、あるいは盗聴法の対象となるのは高額の携帯電話を買えない、あるいは暗号など細かいことの対策などできない、あるいは余りお金を持っていないごく普通のまじめに働いている人ではないでしょうか。(拍手)  一方で、松尾刑事局長は、公衆電話などの盗聴は認めると言っております。でも一方で、ビジネスホンは認めないと。  私は非常に奇妙だと思います。あるものは盗聴いたします、あるものは盗聴いたしません、そうしたら、本当に犯罪を犯そうとしている人間は、盗聴をされない、傍受の対象になっていない手段を使うことは明白ではないでしょうか。  私は、このような欠陥法案を強行に採決しようとすること自身、本当に問題だと考えます。対策を講じられない人、そういうことを考えられない人がこの通信傍受の対象になるのです。 <0099>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、相当時間がたっておりますので、常識の範囲でまとめてください。 <0100>=福島瑞穂君(続)= はい。  そして、憲法二十一条、三十五条の話をしたいと思います。  私は、プライバシーの中核を侵す違憲の盗聴捜査になる、そう思います。実質的に見ても、通信傍受、盗聴制度は地引き網的捜査方法で、電気掃除機のように関係あるものもないものも全部吸い込んでしまう、そういう性格を持っております。また、自己増殖していく性質を持っております。  会話は、現在存在をしておりません。これから発生する会話を特定することはできない、そう考えます。会話は個人の内面に直接触れるプライバシーの中核をなすものです。盗聴を一年近くされたのではないかと言われている緒方靖夫さんのパートナーは、新聞記事の中で、家の中に見えないだれかがいるような気がするというふうにおっしゃっています。だからこそ、個人の内心の自由、プライバシー権を著しく侵害するのがこの盗聴制度なのです。  そして、私は、きょうはある党の議員というだけではなく、個人として皆さん方一人一人に実は訴えたいと思います。  というのは、アメリカやフランス、ロシアなどの例を見ても、盗聴の対象となっているのは与野党を問わない政治的反対派、ジャーナリスト、市民運動家などであり、犯罪プロ集団は電話などの通信手段を使わないということが言われております。アメリカで盗聴の対象になったのは、最高裁の裁判官、ジャーナリスト、上院下院の国会議員、公民権の活動家、そういう者です。アメリカの情報公開法に基づいて、マルチン・ルーサー・キング牧師は自宅と事務所を盗聴され続けたということが明らかになっております。アメリカのフーバー長官がなぜ四十年以上にもわたってFBIの長官たり得たかというのは、彼が政治家、大統領の弱みを盗聴という手段によって握っていたからだというふうに言われております。  私たちは、今ここで盗聴法、組対法の議論をしております。でも、私は申し上げたいのです。自分だけは盗聴されない、そういうことはありません。国会議員、そしてあらゆる役所の上に警察が君臨する、警察に対して国会議員はぐうの音も出ない、弱みを握られる、そんな社会がじき実現をしていくでしょう。国会議員にとって言論の自由は活動する上で不可欠のものです。私は、そんな警察国家は国会議員の首すら絞めていく、そういうふうに考えております。  そして、私がこの盗聴法、組対法で一番問題だと思うのは、将来発生するおそれのある事件の捜査を認めていることです。今までの犯罪捜査概念は、初めに犯罪ありきでした。今までの刑事法、刑事訴訟法は、犯罪があって、それから捜査を開始する、犯罪があることが最大の前提でした。しかし、この盗聴法は事前盗聴を認めております。法案は、将来、対象犯罪を犯すおそれがあり、その準備のために軽微な犯罪を犯したとされる段階で盗聴できるという事前盗聴の規定を認めております。  戦前には、犯罪を犯すおそれのある人間を事前に逮捕できる予防検束という手段がありました。治安維持法下で弾圧をされたのは共産党員だけではありません。ジャーナリスト、市民、創価学会、大本教、多くの宗教団体の人々が、思想、良心の自由、内心の自由、信教の自由に基づいて、治安維持法下ですさまじい弾圧を受けたのです。今、この予防検束というような制度はすべて廃止をされました。当然ですが、予防逮捕、そういうことはできません。  しかし、この盗聴法、組対法は、事前盗聴を認めているわけですから、事前捜索を認めていることになります。犯罪は、初めに犯罪ありき。ある人がどんなに嫌らしいことを考えていても、どんなにふらちなことを考えていても、そのことのみによってその人は逮捕をされたり、捜索をされたりしてはいけません。しかし、この盗聴法、組対法は、犯罪を犯していなくても事前に盗聴ができる、それが非常な問題です。参考人として来てくださった学者の方たちは、この盗聴法、組対法をこれまでの犯罪概念、刑事法概念を全く変えてしまうものである、そういうふうに発言をされました。私は、これほど重要な法案であるということを重要視したい、そういうふうに思っております。  そして、立会人、これは歯どめになるでしょうか。立会人は常時立ち会うことになっております。しかし、立会人は事件の内容も知らされませんし、通信の内容を聞くことも認められません。したがって、犯罪と無関係な通信を盗聴対象から除外する切断権は、立会人には認められておりません。立会人は聞くことができない、切断をすることもできません。このような立会人にどのような効果があるのか全く疑問です。したがって、この立会人制度は人権侵害に対する歯どめには一切なりません。  そして、電話だけではありません。関係のない電子メール、インターネットやファクスなどは、これはそのときにリアルタイムで聞いたり見ることはできません。ですから、なおさら立会人は無力なのです。今までに警察が検証令状をとって盗聴をしたケースは五件あります。違憲、違法捜査だと裁判で争われました。九二年十月の判決では、東京高等裁判所はこうした盗聴捜査を合憲としましたが、その条件にはいろんなものがあります。その一つに、犯罪とは無関係の通話について立会人に直ちに関係機械のスイッチを切断させる条件がついていた、そういう点を挙げております。  今回の盗聴法案は、東京高等裁判所の判決が合憲の根拠としたことすら満たしてはいないのです。 <0101>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、常識的に終えてください。 <0102>=福島瑞穂君(続)= はい、ちょっと待ってください。  盗聴法案の立会人の存在は無意味、無力です。  では、盗聴されても通知が来れば大丈夫、そういうことは言えるでしょうか。  盗聴した会話はすべてテープに録音し、立会人が封印した上で裁判所に提出する建前になっております。しかし、テープは複製され、捜査機関が保存をします。捜査機関はその複製の中から無関係の部分を消去して、その消去したことを担保する手段は全くありませんが、傍受記録を作成し、裁判の証拠に利用をします。盗聴をしたという通知がなされるのは、傍受記録から犯罪と無関係な通話を削除して作成する刑事事件用記録の会話だけです。  つまり、捜査や公判廷で証拠とされるもの以外の通話、通信については、令状の発付された当の本人にも、その本人と通話した犯罪とは無関係の人々にも通知はされません。今までの逮捕、捜索であれば、令状の交付がされ、その令状の提示がなされます。そして、そのことについて不当、違法であると考えれば刑事訴訟法上準抗告の手続があり、国家賠償請求訴訟が提起をできます。  しかし、この盗聴法、組対法が問題なのは、強制処分を受けても、令状発付された当の本人にもその話をした人たちにも一切通知が行かない、そういうことです。  例えば、私福島瑞穂に大麻所持のおそれがあるとして令状の発付があったとします。しかし、一カ月たち何も出てこなかった、私と話をしたりインターネットや電子メールで通信をした人等一切犯罪の事実が出てこなかった、そういうときに令状の発付を受けた私本人にも私と通信をした何百人、何千人という人にも一切通知はなされないのです。 <0103>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、良識的に終えてください。 <0104>=福島瑞穂君(続)= はい。  つまり、強制処分の極めて例外的なものだ。強制処分でありながら自分が強制処分を受けたことすらわからない異常な制度なのです。つまり、通知がないからといって安心はできません。盗聴をされているかもしれない、されていないかもしれない、盗聴されていないかもしれないが、でもやっぱり盗聴をされているかもしれない。そのことは一生わからないのです。そのことは一生わからない。これは強制処分の中で極めて異常なことです。令状が発付されても、その人は準抗告もできなければ国家賠償請求訴訟もできません。立会人は全く無力です。ということは、違法盗聴の歯どめが全くない、そういうことです。  違法盗聴がなされても、立会人は無力ですから、会話を聞くことはできませんから、もし違法盗聴がなされていてもそれを知る人はいません。そして、自分が令状の発付を受けても、ほとんどの人は通知がないわけですから、その人間も対抗する手段はありません。これは極めて異常な制度です。強制処分として認めることはできません。人権が侵害…… <0105>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、常識的に終えてください。 <0106>=福島瑞穂君(続)= はい、ちょっと待ってください。  人権が侵害をされながら、それに対する救済手段がないわけです。これは極めて異常なことだと思います。 <0107>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、福島君、福島君、そこのメモも見てください、そのメモを見てください。 <0108>=福島瑞穂君(続)= はい、ちょっと待ってください。  また、先ほども申し上げましたように、関係ない通話は削除をされるのでしょうか。  法案では、犯罪と無関係な通話、通信内容は警察が削除、抹消することとされています。しかし、警察がもし削除しなかったとしても、それを担保する手段は一切ありません。そういう点で大変問題である、そういうふうに思います。  法案は、医師や弁護士の業務上の通話については傍受の対象から除外をしております。しかし、メディア、ジャーナリストに対する盗聴は除外をされておりません。ジャーナリズムにはさまざまな団体からの内部告発の電話があります。犯罪の内幕に対する取材も報道の目的のために必要とされる場合もあり得ます。しかし、メディアに対する盗聴が可能となれば、取材源秘匿の原則が揺らぎ、報道、取材の自由の基盤が揺らぐ可能性があります。  民放労連、出版労連、日放労などの労働組合だけではなく、会社の側、テレビ局の側や雑誌協会などもこの盗聴法に反対しているのは当然のことです。六月十日には民間放送連盟も傍受の対象からメディアを除外するよう求めております。  そして、アメリカでは、アメリカ政府の統計によっても、年間に盗聴された二百万の通知のうち犯罪に関連しないものは八三%に達しております。膨大なコストをかけ膨大な電話を傍受し、そして逮捕は、年間の件数は非常に少ないものです。アメリカ自由人権協会のバリー・スタインハードさんなどはアメリカの轍を踏まないように、そういうふうに言っております。 <0109>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、良識的にやってください。 <0110>=福島瑞穂君(続)= はい。  そして、この三法案、組織的犯罪対策関連三法案が、盗聴を合法化する捜査のための通信傍受法案、組織的犯罪の重罰化とマネーロンダリング規制の飛躍的強化を内容とする組織的犯罪対策法案、盗聴制度の新設の根拠となる規定と匿名証人の新設の規定を含む刑事訴訟法改正案の三つから成っております。  しかし、捜査のための通信傍受法案などは、組織を要件としてなどおりません。条文上、組織的犯罪を対象としているのは、組織的犯罪に関する重罰化だけで、他の部分は条文上も組織的犯罪が要件とはなっておりません。そして、捜査のための通信傍受法案の問題点も大変出ておりますが、ほかの二つの組織的犯罪対策法案の問題点についてはほとんど議論をされておりません。  通信傍受法案以外の組織犯罪の重罰化やマネーロンダリング、証人保護規定などの問題点を解明することも参議院審議の重要な課題です。組織犯罪の重罰化は、刑法の個人責任の原則に例外をつくろう、そういうものです。なぜ、組織、団体になると自動的に犯罪が加重をされるのか、そのことについての明白な説明はありません。  また、マネーロンダリングの規制は、広範な犯罪についてマネーロンダリングの規制が必要なのかという根本的な問題点から明らかにしていく必要があります。 <0111>=議長(斎藤十朗君)= 福島君。 <0112>=福島瑞穂君(続)= ちょっと待ってください。 <0113>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、良識的にやってください。 <0114>=福島瑞穂君(続)= はい。  また、組織的犯罪対策法は、威力業務妨害罪、建造物侵入罪、逮捕監禁罪など、例えば、これまで労働組合や市民団体が適用とされた犯罪を対象にしております。狭義の意味の組織的犯罪対策法は、市民団体、労働組合も対象になると政府は言っております。この点についての議論も大変必要です。  また、金融機関に疑わしい取引の届け出義務を課すことは、金融取引の委縮と無用な混乱の原因となりかねません。完全に合法的な営業活動を不法収益による経営支配の罪などの名目で取り締まることを認めることは、企業の経済活動に不測の打撃を与える可能性があります。  金融機関の届け出義務は、アメリカでは(発言する者多し)ちょっと聞いてください。金融機関の届け出義務は(発言する者多し)聞いてください。アメリカでは、銀行などの経済界の声によってその実施が棚上げされているのです。 <0115>=議長(斎藤十朗君)= 福島君…… <0116>=福島瑞穂君(続)= 今、日本の銀行業界は不良債権処理に関して社会的な批判にさらされ、発言権を失っていますが、犯罪捜査のためにこの銀行に対してどういう影響を与えるのか、そういう点からの検討はまだまだなされておりません。 <0117>=議長(斎藤十朗君)= 福島君。 <0118>=福島瑞穂君(続)= では、もうじきまとめます。  犯罪収益収受の罪が弁護士報酬に適用された場合に、私選刑事弁護を受ける権利に重大な影響があります。マネーロンダリング規制によって導入される犯罪収益収受罪は、弁護士報酬にも適用されるものであることを法務省ははっきりと認めています。被告人や家族から弁護士費用を得て行う私選弁護は、刑事弁護の基本です。しかし、この法案の成立によって、経済的な収益が考えられる犯罪については、犯罪収益収受の罪による逮捕を覚悟しなければ私選弁護を引き受けることはできません。政治家の収賄罪も、弁護士の引受手がなく、国選弁護人が弁護することとなるでしょう。  実は、このような事態がアメリカでも既に現実に発生をしております。アメリカでは、逮捕直後から国選弁護制度が整備されております。そのような…… <0119>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、福島君。 <0120>=福島瑞穂君(続)= もうじきまとめに入ります。 <0121>=議長(斎藤十朗君)= 党の指示に従ってください。 <0122>=福島瑞穂君(続)= もうじきまとめに入ります。 <0123>=議長(斎藤十朗君)= 党の指示に従ってください。 <0124>=福島瑞穂君(続)= アメリカでは、逮捕直後から国選弁護制度が整備されています。そのような米国でも、アメリカ連邦最高裁判所は、一九八九年六月二十二日の判決でこのような規制の合憲性を五対四で肯定しました。しかし、四名は、マネーロンダリング規制が弁護人依頼権と適正手続の保障に反するとしているのです。日本には被疑者に対する国選弁護制度すらありません。このような制度を導入することは、刑事弁護の否定につながると言わなければなりません。  そして、刑事訴訟法改正案では、証人の保護のため、証人の住所などの一定の事項について裁判所が尋問を制限できること、検察官が開示した証拠のうち証人の住所を被告人や関係者に漏らさないよう求めることができるとされています。このような規定は、弁護内容を検察官と裁判所のコントロールのもとに置き、最終的には匿名、覆面証人を認める暗黒裁判へとつながるものです。 <0125>=議長(斎藤十朗君)= 福島君。 <0126>=福島瑞穂君(続)= はい。 <0127>=議長(斎藤十朗君)= 党の指示に従ってください。 <0128>=福島瑞穂君(続)= はい。 <0129>=議長(斎藤十朗君)= 福島君。 <0130>=福島瑞穂君(続)= はい。 <0131>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、わかりましたか。 <0132>=福島瑞穂君(続)= もうすぐやめます。はい。もうすぐやめます。  盗聴制度の採用を日本に、盗聴制度の採用を日本に求める国際的な要請は全くありません。  一九九九年四月末から五月初めまで、国連ウィーン代表部でマネーロンダリングなどの国際組織犯罪防止条約について話し合われましたが、その実施範囲については各国とも慎重です。人権条約の批准や実行化について消極的な日本政府が、こんなときだけ国際圧力を口にするのも全く筋違いではないでしょうか。(拍手) <0133>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、終えてください。福島君。 <0134>=福島瑞穂君(続)= はい、すぐやめます。 <0135>=議長(斎藤十朗君)= どうぞやめてください。 <0136>=福島瑞穂君(続)= この盗聴法、組織的犯罪対策法が、参議院のまだまだ尽くされていない審議の中でもたくさんの問題点が指摘をされました。  私たちは毎日電話を使います。ファクスを使います。電子メールを使います。インターネットを使います。私たちはこういう手段に依存をして日々暮らしております。国民全体がこのような通信手段を使って生活をして…… <0137>=議長(斎藤十朗君)= 福島君、終えてください。 <0138>=福島瑞穂君(続)= もうすぐやめます。 <0139>=議長(斎藤十朗君)= 終えてください。 <0140>=福島瑞穂君(続)= このような通信手段を使って生活をしております。国民にとって、もしかして通知はないけれども盗聴をされているのではないか、そういうふうに思うことは、国民にとって自由なコミュニケーションが侵害されることは、社会の中から自由と民主主義がなくなる、そう思います。自由なコミュニケーションが断ち切られてしまう、そのことは本当に問題です。  このような盗聴法、組対法が成立するに当たって、強行採決ですらない採決で、採決とは言えない、この盗聴法……(発言する者多し)やめますので、最後まで言わせてください。この盗聴法、組織的犯罪対策法が、自由なコミュニケーションを侵害し、私たちの社会を大きく変えていく。だからこそ十分な審議が必要で、法務委員会に差し戻し、採決でもない強行採決を企てようとした法務委員長の解任について、賛成の意見を述べさせていただきます。(拍手) <0141>=議長(斎藤十朗君)= これにて討論は終局いたしました。  本日はこれにて延会することとし、次会は明日午前零時十分より開会いたします。  これにて延会いたします。    午後十一時十六分延会      ─────・─────