第145回国会 法務委員会公聴会 第1号 1999年08月04日       (1999年08月20日 08:00 登録) 平成十一年八月四日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  八月三日     辞任         補欠選任      内藤 正光君     角田 義一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 佐々木知子君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    公述人        評論家      鈴木りえこ君        評論家      佐高  信君        弁護士      村橋 泰志君        弁護士      小口 克巳君        中央大学総合政        策学部教授    宮澤 浩一君        富山大学経済学        部教授      小倉 利丸君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付)     ───────────── <0001>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会公聴会を開会いたします。  本日は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、お手元に配付の名簿のとおり、六名の公述人の方々から御意見を伺います。  まず、午前中御出席をいただいております公述人の方々は、評論家鈴木りえこ君、評論家佐高信君及び弁護士村橋泰志君でございます。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  忌憚のない御意見をいただきまして、審査の参考にしたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、鈴木公述人、佐高公述人及び村橋公述人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  なお、公述人の意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、鈴木公述人からお願いいたします。鈴木公述人。 <0002>=公述人(鈴木りえこ君)= ただいま御紹介にあずかりました鈴木りえこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。  まず初めに、このような席で私の意見を述べさせていただくことを大変光栄と存じます。それから、このような機会をいただきましたことを心から感謝しております。  最初にお断り申し上げますが、私は法律の専門家ではございませんので、この通信傍受法という重要な法案について完璧に理解しているとは言いかねるのでございますが、その辺をどうぞ御容赦いただきたいと思います。  それで、なぜ私がきょうこの席で意見を述べさせていただくかと申しますと、一昨年の秋あたりから新聞などで覚せい剤の乱用が中高生に拡大しているという記事を随分目にしまして、これは一体どういうことなのだろうと思いました。私は、ふだんから価値観調査ということを行っておりまして、日本人の価値観のあり方について研究をしております。  それで覚せい剤と申しますと、私にとっては怖い、恐ろしい、もうとても手をつけてはいけないものという意識が強いのでございますが、それがなぜ中高生の間に広がっているんだろう、日本人に一体何が起こっているんだろうというような疑問点からこの研究を個人的にではございますが、少し重ねております。  本日、私が十五分で意見をなるべく効率よくまとめて述べさせていただこうと思いまして、多少コンピューターの中にメモとしてまとめたんですけれども、紙の節減のためにプリントアウトしてまいりませんでしたら、ここではコンピューターは使ってはいけないという規則になっているということですので、メモが全く手元にございませんので、私の方の記憶力が余りよいとは言えないものですから、話が飛んでしまったりちょっとまとまりがなくなってしまうかもしれませんが、その辺もどうぞお許しください。  まずは国際情勢なんですけれども、薬物乱用者というのは国連のまとめでは全世界で一億九千万人から二億人に達すると言われております。それから、根拠がないと言う方もいらっしゃるんですけれども、国連のある筋では、薬物の取引されている総額というのは世界のオイルマネーにも匹敵するという話もございます。  日本の場合は、暴力団がこの取引にかかわっていることが多いんですけれども、数千億円の利益を上げているのではないかと言われています。それから、ことしの六月末までに覚せい剤の押収量というのが既に一トンを超えておりますので、去年が六百トンぐらいだったと思うんですけれども、ことしの六月までに既に去年の押収量を超えておりまして、史上最高の数字になっております。  それから、覚せい剤事犯での検挙人数なんですけれども、薬物乱用の検挙人数が二万人前後で推移しておりまして、昨年は多少その前の年に比べて減っておりますけれども、これは押収量を見てわかりますように、たまたま隠し方がうまくなったというか、捕まらなくなったということで、乱用者の数、それから密売人の数もふえているのではないかと思っております。  第三次覚せい剤乱用期ということで、去年警察庁が宣言したわけでございますが、この第三次覚せい剤乱用期の特徴についてお話し申し上げますと、日本の場合、薬物乱用で検挙される人員の九割以上が覚せい剤なんですけれども、その覚せい剤というのは日本では密造されておりません。今押収されている覚せい剤のほとんどが中国から来ていると言われております。それから、先ほど暴力団関係の人がかかわっていると申し上げましたが、ここのところイラン人が暗躍しておりまして、イラン人による密売人がふえております。  それから、末端価格が非常に低下しておりまして、一回の使用分が三十ミリグラム、耳かき一杯分と言われているんですけれども、それがほぼ二千円から三千円という価格になっております。  ですから、押収量が六月までに一トンを超えるということで、非常に大量に押収されているにもかかわらず、そうしますと需要と供給の関係で値段は上がるはずなんですけれども、価格の低下傾向が続いておりますので、これはやはり押収されるよりも物すごい量の覚せい剤がこの国に入っているのではないかと思います。  私が取材した方で、今はダルクという薬物のリハビリセンターの支部の所長さんになっておられまして、文部省が推薦されている高校生用の薬物乱用防止ビデオにも出ている方からお話を聞きましたところ、今、国が押収している覚せい剤の総量なんて自分が数日間でかつて取り扱っていた量だというようなことも聞いておりますので、やはりちょっと想像もつかないような大量な覚せい剤が流れ込んでいるのではないかと思っております。  先ほどイラン人が暗躍していると申しましたけれども、これによりまして薬物乱用者の年齢が非常に低下しているんですね。これが私が一番心を痛めていることでございます。やはり日本の国を担っていく若者がなぜこのようなことにかかわっていくのか、これをやはり考えていかなくてはいけないと思うんです。  イラン人とこの若い人たちのかかわり合いというのを御説明申し上げますと、数年前にポケベルがはやりまして、高校生がポケベルで友達と交流するんですけれども、そのポケベルというのは私は使ったことがないのでよくわからなかったんですけれども、こちらの普通の電話から友達のポケベルにメッセージを送るということらしいんですけれども、それで公衆電話を使う子供たちがふえたんですね。改造テレカというものが随分出回りまして、それをイラン人が改造テレカ、安いテレカを子供たちに売っていたと。ところが、そこで成績がいいという言い方にはちょっと問題があるんですけれども、売り方のうまい、その改造テレカというのもイラン人の人たちでつくっていたり、それからその筋の人から譲り受けたりしているわけですが、その筋の人たちが、君、これも売ってみないかということで薬物を渡したのではないかと言われています。  そもそも、イランの方たちは私たちとは薬物に対する考え方や環境が違いますので、薬物のコンビニとも言われていて各種の薬物を扱っていたりするわけですね。若い人にテレカを売っていたイラン人が、それを子供たちに今度はいいものがあるよということで渡していく。渡し方も、普通は暴力団の人たちは、女、子供という言い方はよくないんですけれども、女性や子供たちは口が軽いということで余り売るようにしていなかったんですが、イラン人は無差別に町でキャッチセールスをするようになってしまいました。その売り方というのも、カードに自分の名前を、ボブとかロバートとか何かそんな愛称を書いて、裏に自分の携帯電話の番号を書いて渡す、これが必要になったらまた電話をしなさいと。そんなわけで携帯電話というのが非常に重要な役割を果たしておりまして、例えば三十人の顧客がついた携帯電話というものは二百万から一千万円の価格がついて売買されているようでございます。  それで、その携帯電話も次々に番号を変えて、機械を変えていったり、それから売人の方もなかなか顔を見分けることが難しいということもあるんです。偽造パスポートで入っていますし、さらに人が次々に変わっていくということ、それから車で移動するんです。拠点というものがほとんどなくなってきていまして、例えば今はモーテルとかそんなところを使っているらしいんですけれども、携帯電話に連絡が入りますと、今度は電話でまた別の人に連絡して、その人が街頭の例えば冷房機の陰に隠していたり、室外機に隠してあったり、それから植え込みの陰に隠してあるものを取り出してまた次の人に渡して、例えば何々公園とかどこの街角のどこという指定で渡すということで、非常に携帯電話、情報化が覚せい剤汚染のツールとして重要なかぎになっておりますから、警察の方としてはこれを何とかしていかなければならないと思っております。  それから、覚せい剤乱用者、薬物乱用者が二万人近く捕まっているんですけれども、ほとんどが末端の密売人それから所持している使用者ということです。国際的な犯罪組織を捕まえなければこの問題というのは解決していかないので、国連でも需要の遮断とか、それから供給も遮断、削減しなければいけないということで、やはり供給源を切っていかなければいけないということなんですけれども、それには通信傍受法の役割が非常に重要になるのではないかと考えております。  私は、国際関係ということを勉強いたしまして、グローバル化についてよいことだと思っているんです。しかし、このような時代で、情報化には光と影がございまして、携帯電話の使用とかそれから国境なき犯罪が横行するということはグローバル化の影の部分だと思っております。日本が国際貢献をしていくに当たって、日本は覚せい剤汚染を世界的に防止するということで指導的な役割を得ているんですけれども、そういう意味でも、日本の方でもこのような法律を整備して覚せい剤の汚染を根本から絶つ。それから若い人たちに汚染が拡大しているということで、日本の将来を担う子供たちを安全に守らなければいけないという点で、通信傍受法についてはいろんな御意見がございますけれども、私自身の考えといたしましては、やはり公の利益ということを考えまして、この法律は非常に重要だと思います。  多少短いですけれども、また後で質問を受けさせていただきたいと思います。 <0003>=委員長(荒木清寛君)= ありがとうございました。  次に、佐高公述人にお願いいたします。佐高公述人。 <0004>=公述人(佐高信君)= かつて法務省の検察庁の看板にペンキがぶちまけられるという、検察庁にとっては大変に屈辱的な事件がありました。御承知のように、金丸信さんの脱税疑惑発覚のときであります。あのときに、検察庁は弱腰になりまして疑惑を本格的に追及しようとしなかった。そのときに、たしか当時札幌高検の検事長であった佐藤道夫さんは、これはおかしいというふうなことを言って、断固徹底的にやるべきなんだということで、検察庁は改めて何か出しおくれの証文みたいにしてその後追及し、ようやく面目を保ったということがあったわけです。お忘れではないと思います。ということは、皆さん方、法務省、検察の先輩である佐藤道夫という人の意見あるいはその佐藤さんの背後にある民意をきっちりと受けとめなければ、法務・検察は再び大変な屈辱的な過ちを犯すことだろうと思います。  その佐藤道夫さんは、検事三十八年間の経験をもとに、盗聴というのは卑劣な汚いやり方であって、こんな卑怯な方法に頼らずしても日本の警察は捜査能力がちゃんと高いんだということを言っている。だから、この盗聴法には断固反対だということを、金丸事件でわずかな少数意見として検察を救った皆さん方の先輩が言っているわけです。その先輩の意見にどうして耳を傾けないのか。ということは、耳を傾けなければ再びまた過ちを犯すということは目に見えているということだろうと思います。  私は、佐藤さんとはちょっと意見が違いますけれども、警察の捜査能力というのは非常に高いんだ、それを簡単に先進国が今大変だから日本も取り入れようというのは全く現実を知らない意見であるというふうに佐藤さんは言っているわけであります。私もそこについては同感であります。ただ、警察の捜査能力が刑事事件というふうな方向に向かわないで、公安の方に向かっているということの問題点が払拭されないままこの盗聴法というのが導入された場合には、さらに公安的色彩を増すだろうというふうに思います。  言うまでもなく、ここで何回も論議されたと思いますけれども、共産党の国際部長の緒方靖夫という人のところを神奈川県警が完全に盗聴していたわけです。裁判にもなり、それをいまだもってどうして警察ははっきりと認めないのか。それを認めないまま、この間の参考人の意見ではあの緒方事件を考えるななんという、そんなばかな話はないと思います。  もう一つ言えば、あの緒方事件を担当していた横浜法律事務所にオウム事件の坂本弁護士は所属していたわけです。だから、警察にとっては坂本さんの方がむしろ遠かった、あるいは敵対的な立場だったというふうにさえ言えると思うんです。だから、本格的に捜査しなかったわけですね。坂本弁護士の拉致疑惑は失踪事件としてしか捜査していない、拉致というふうにはしていなかったわけです。それで、あのときにオウムのプルシャが落ちていたわけですけれども、あれを発見したのは警察ではなくて坂本さちよさんなんですね、お母さんが発見した。そのお母さんが発見したプルシャに対して、警察の方は事もあろうにあなた方が置いたんじゃないかというふうなことまで言ったわけです。  そういう体質を全然認めていない。自分たちがあずかり知らないことだみたいな話。現場の警察官は処分したけれども、上の方は全然認めていないわけです。まずこれをきちっと認めて謝ること、そこからしかこの盗聴法の審議というのはやれないんじゃないか。それをうやむやにしたまま、あれは除いて審議してください、そんなばかな話はないだろうというふうに私は思います。  それからもう一つ、この法案について積極的に推進したいという人たちに、特に若い人なんかが言うのは、自分は悪いことをしていないから盗聴されても構わないというふうなおめでたい意見を述べるわけですけれども、その人たちに私は強く聞きたいわけです。では、松本サリン事件の河野義行さんという人は悪いことをやっていたのか。松本サリン事件の河野義行さんというのは、警察が勝手に犯人と決め込んで、そして河野さんをあそこまで追い込んでいった。その事件についても警察はきっちりとした謝罪なりなんなりをやったというふうには聞いていない。  この盗聴法がスタートした場合には、全国民が河野さんのような状況に追い込まれることだろうというふうに私は思います。組織犯罪とか何とか犯罪のおそれがあるというふうにして、例えば河野さんの家を盗聴すると。それで、最初から決めてかかっていますから、いろんな形の盗聴も、あるいは犯罪に結びつけられるかもしれない。幸い、何%かの少ない確率で河野さんが無罪となった場合、盗聴で犯罪のおそれはないといった場合に、では河野さんに通報は行くのかというと、通報は行かないわけですね。その状況をどういうふうに考えるのか。  緒方事件と河野事件というものをきちっと警察なり政府なりが釈明、答弁しなければ、こんな法律を出してくる厚かましさというのは、私には信じられない感じがするというふうに思います。  それと、公明党が急にひっくり返ってこの衆議院の通過ということがあったわけですけれども、ちょっと際どい例えでいえば、公明党は操縦桿を握りたくてハイジャックしたどこかの犯人と似たような感じがします。その公明党の浜四津敏子代表代行が、私もたまたま去年の十一月、一緒の集会に参加していたわけですけれども、その席で極めて有益な意見を言っているわけです。  それは、盗聴法というのは通信の自由という憲法上の人権を侵害する可能性が大きいだけではなく、盗聴という手段には歯どめがきかないんだ、国家権力の都合で政治的に利用されてしまう危険性が大きい、歴史的な教訓があるからでありますと。私は隣で聞いておりましたけれども、非常に明快に述べた。歯どめがきかないということは、修正ではどうにもならないということではないですか。それがどうしてくるっとひっくり返って賛成に回れるのか。  さらに、盗聴法というのは次第に当初の目的から対象が拡大されまして、過激派、テロリストに限らず、学生運動あるいは反核・平和運動、また環境保護運動など、市民運動まで関心の対象になり、大きな議論となりました。このように、一たん盗聴や秘密的な情報手段を導入いたしますと、その本来の目的を逸脱し、歯どめがきかなくなるというのは古今東西の歴史が証明をしていると思いますというふうに見事に述べているわけですね。ナチスドイツにおいて秘密警察が次第に取り締まりの対象を広げたということの教訓まで引き出して言っているわけでありますけれども、これがどうして賛成に回れるのか、私には全く理解不能と。  政治家の発言あるいは政党の発言というのはくるくるひっくり返るというのが多いわけですけれども、去年の十一月のこの時点でそういう反対をしていて、半年足らずというか、それで賛成に回れるというのは、何か賞味期限をつけてほしいと私は思うわけですね。ここまで賞味期限六カ月ですよとか一年ですよ、それを過ぎたらだめなんですよと、そういう賞味期限というものを発言に、特に公明党の場合はつけてほしいという感じがいたします。  もう一つ言えば、これは社民党の保坂展人議員が六月一日の衆議院の本会議で話をしたときに引いた例でありますけれども、かつて自民党が野党であった一九九三年十月六日、予算委員会で、盗聴問題を現在の野中広務官房長官が追及しているわけです。当時、郵政大臣は現在の公明党代表の神崎武法さんだった。創価学会が日本共産党委員長の宮本顕治という人のところを盗聴していたんじゃないかと、それについて質問している議事録によって保坂さんは質問したわけですけれども、そのときに野中さんはこう質問しているわけですね。  「盗聴事件に関与したとマスコミに報道されておる方が電話、電波を所管される大臣である。この報道につきまして、恐らくみずから否定をされますならば、神崎大臣は抗議をするなり名誉回復の手だてをされましたか、これをお伺いいたします。」と。それに対して神崎さんは、「この件についてはいろいろな対応があったと思いますけれども、告訴をするあるいは無視をする、いろいろあったと思いますけれども、私は明確に当時から事実を否定し、無視をする、こういう対応をとっております。」。それに対して野中さんが、「非常に私は疑惑の残る事件だと思います。この事件は、もちろん法律的には既に時効であります。しかし、報道のとおり、現職の所管大臣として、たとえ時効でもそのような盗聴事件に関与があったとすれば、大臣の適格性において非常に問題であります。」というふうに言っているわけです。  野中さんも立場を変えたのか、あるいは神崎さんの疑惑はきちっと晴らされたのか、そういう一つ一つについて、かつて言ったことと余りに話が違うということでは、審議の大前提としての発言の信用性というものにかかわるのではないか。その辺のところが論議のいわば大前提として私は疑惑が残るし、こういう状況のままでこの法案を通していった場合には大変なことになるというふうに思います。  それから、チェックという問題ですけれども、チェックについても何か立会人を置くと。それで、その立会人をNTTの職員にするんだというふうな話ですけれども、きのう日比谷の野外音楽堂で五千人の反対集会を行いましたけれども、その席でNTTの労働組合の人が、自分たちは迷惑であるというふうなことを言っているわけです。  そういうNTTの人間に立ち会いをさせるというふうなことについて、法務省はどういうふうなものですかという相談ぐらいはしたんですかね。何にもしていないんじゃないですか、そういうことは。勝手にこちらとしてそれをやらせるんだというふうなことなんだろうと思いますが、あるいは上の方の社長あたりには少し話をしたのかもしれないけれども、そういうふうなことをやっていいのかどうかと。その辺のところについても、法務省の横暴というか、ある種の思い上がりというふうなものがあるのではないかという感じがいたします。  冒頭申し上げましたけれども、佐藤道夫さんが検事三十八年の体験から、盗聴法、こんなものは不要である、有害無益であるということをはっきり申し上げておきたいというふうに言っている、その意見にぜひ法務省の現役の方は学んでいただきたい。金丸信の事件を思い出しながら学んでいただきたいということを申し上げて私の発言を終わります。 <0005>=委員長(荒木清寛君)= 次に、村橋公述人にお願いいたします。村橋公述人。 <0006>=公述人(村橋泰志君)= 村橋でございます。  私は、弁護士として民事介入暴力対策につきまして微力でございますけれども、長年取り組んでまいりました。平成三年には日弁連の民事介入暴力対策委員会の委員長を務めたこともございます。その経験からいたしまして、新たな組織犯罪対策が緊急の課題として必要となっていると思います。そして、今回の三法案はその対策のための有力な手段の一つとなることができると評価いたします。こういう観点から、この三法案には基本的に賛成でございます。  以下、理由を申し上げます。  まず、日本の暴力団及びその周辺に存在する者は約八万人いると言われております。組員数は若干減っておりまして微減の傾向にございますけれども、その反対にその周囲にいる準構成員というのはふえているわけでございまして、結局組員と準構成員の比率が変わるだけのことでありまして、全体の数は余り変わっていないわけであります。さらにその周辺には、いわゆるフロント企業だとか、えせ右翼、えせ同和、あるいは総会屋などというたぐいのグループがたくさんいるわけでございます。このような不法な手段によって収益を得ているグループが一般社会の中にばっこしている国というのは、世界的にも珍しいと言えると思います。  組織犯罪が悪化していないではないかという主張をされる向きもございますけれども、これは、これまで暴力団を任侠の徒として容認してきた我が国の風潮に対しまして批判精神が乏しいのではないかと考えます。  また、暴力団による被害というのは実際に非常に大きいと考えております。かつては暴力団は一般市民に対していろいろ嫌がらせやおどしをする、こういうレベルの問題でございました。しかし、今やこういうレベルを超えまして、大企業と癒着して株を買い占めたり、土地を買収しあるいは転売する、そして巨額の利益を得る、こういうような社会的な問題はバブルの最中に頻繁に発生したことでございます。さらに、巨額の企業恐喝をいたしまして新聞紙上をにぎわせていることも多々あるわけでございますけれども、表にあらわれたのは氷山の一角だろうと思っております。  以前は、暴力団がアンダーグラウンドから飛び出して社会の表に出てくる、そして合法的な活動を装って政治家や企業と癒着し日本がイタリアのようにマフィア化する、正常な社会がブラックな社会に汚染されていく、こういうような危機感が強く叫ばれておりました。現在でも、合法的な会社を装うフロント企業というのは大量に生まれておりまして、その正確な実態も実は把握できないくらいでございます。このことは、暴力団が社会に深く食い込む傾向が現在でも強まっているということを物語っていると思います。こういう状態に対してどれだけ危機感を持つかということがスタートになるかと思います。  銃器の問題も深刻でございます。けん銃は組員一人につき一丁ある、少なくとも一丁あると言われております。そうしますと、少なくとも我が国には八万丁以上のけん銃がどこかに隠されているわけであります。実際に私どもが暴力団の組に行きますと、最近は、先生、随分安くなりました、そしていつでも手に入れることができます、何だったら、先生、上げましょうかというようなことさえ冗談まじりに言います。その上、けん銃はだぶついているのでございまして、一般市民のところにも出回るようになっております。  このようなけん銃による身体に対する殺傷行為というのは、おどかされる立場からしますと大きな恐怖でございます。現に私どもがおります名古屋では、住友銀行の支店長さんがけん銃で射殺されましたが、迷宮入りでございます。総会屋さんや事件屋さんなどが企業に対しまして、住友さんの例がありましたねと一言ささやくだけで企業の幹部というのは震え上がってしまうのが実情でございます。  私どもは、企業に対しまして、暴力団に対しては毅然と闘うべきである、毅然と立ち向かってくださいと叱咤激励するわけでございます。企業の方でも最近では企業モラルを確立したい、コーポレントガバナンスを徹底したい、こうおっしゃいます。大いに結構でございます。しかし、お金より命の方が大事なのは人情でございます。精神論だけではなかなか闘ってもらうことは困難である。そして、多くの企業恐喝事件がやみからやみへと実現されていっているということは争えない事実だろうと思います。  けん銃が八万丁以上あると推定されるのに年間の押収件数というのはせいぜい一千数百丁でございます。銃器というのは外国から入ってくるわけでございますが、国内に入ってしまってから摘発するというのは実際になかなか難しいことだろうと思います。そうしますと、国内に持ち込まれるまでに水際でどれだけ大量流入を阻止するかということが非常に大切なポイントだろうと思います。  覚せい剤の被害も深刻でございます。先ほど鈴木さんが詳細に御報告されたとおりだと思います。その対策につきましても、銃器の場合と同様に水際でこれを阻止するということが非常に大切だと思います。  私ども日弁連民暴委員会では、かつて暴力団の特色をいろいろ研究いたしました。そして、これを「暴力団の不法行為責任」という本にまとめて出版したことがございます。そこで指摘いたしましたことは、暴力団の組織原理というのは一般の社会と違ったところが多々ある。  例えば、暴力団は組長をトップに置きまして、その下に順次、下部、そして末端組員と支配従属という関係を繰り返していくわけであります。そういう階層的な構造をつくっております。そして、そのような一くくりの組が幾つも第一次団体から数次団体までピラミッド型に積み上げられてまいります。したがいまして、上部団体または個々の組の中で上にいる者は指揮命令を下の方に下すだけでございまして、実際に実行犯として手を汚すのは末端組員でございます。そうしますと、末端の実行犯を捕まえまして、そこから順次捜査を積み上げていくという捜査方法では実際には末端の組員しか検挙できないわけであります。そこで壁にぶち当たりまして、指揮命令を下した者への刑事責任を追及することはなかなか困難でございます。  私どもは、損害賠償というレベルで、組長に対しまして民法上の使用者責任という訴訟を幾つか起こしております。そして、幾つかの成功もおさめておりますけれども、実際には刑事事件の方で、幹部の実態がわからないためにその立証に苦労しているというのが本当のところでございます。  平成三年にいわゆる暴対法が生まれました。この法律は大きな成果がございまして、以前のように暴力団の組事務所が町のど真ん中に金看板を出して威張っている、威勢を誇る、あるいは暴力団員が直接に組の名称を出しまして、おれは暴力団だぞ、言うことを聞かないとどうなるかわかるかと言っておどすというような行為は余りなくなりました。また、仮に暴力団員が一般市民をおどしたりいたしましても、直ちに中止命令が発付されておりまして、この嫌がらせは実際に中止されることが多いわけでございます。  しかし、この法律の効果には限界がございまして、実際には末端の組員の行為が対象となっていることが多いのでございます。そうは言いましても、この法律は暴力団に対しましてじんわりと、ボディーブローのようなパンチ力がございました。  そこで、暴力団の方は暴対法逃れということを考え出すようになりました。その一つは秘密化ということでしょうか。情報を流しません、そして警察に協力をいたしませんという方針が徹底されるようになりました。個々の組員を検挙いたしましても、その組員は自分の犯行については自白するかもしれません。しかし、共犯者や、ましてや組の内情についてはかたく口を閉ざすのが常でございます。それを漏らせば、後日、組からの報復が待っているわけでございまして、それが怖いのであります。いわゆる沈黙のおきてというものでございます。そのため、最近では警察が暴力団に対して持っている情報がとみに希薄になりました。警察の暴力団に対する情報の量が少なくなっているというのが実感でございます。  また、暴対法逃れの二つ目の方法といたしましては、いわゆる合法化を装うことでございます。フロント企業と呼ばれるように、暴力団の籍のない者を前面に出しまして仕事をいたします。こういう例がどんどんふえているわけであります。このフロント企業についての警察情報というのは暴力団情報の乏しさの比ではございませんので、非常に情報量が少ないというのは偽らざる事実でございます。  このような現状に対しまして、従来のような末端の者の捜査から徐々にこれを積み上げていくという手法ではもはや対応できなくなっております。警察は現行の法のもとで十分な対応ができるのではないかという批判がございます。確かに、初動捜査をさらに的確に行うべきだというような個々の事例の反省はすべき場合はあるかもしれません。しかし、そのような個別的な対応の問題、あるいは警察頑張れという精神論だけではもはや的確な、そして効果的な捜査が望めなくなっているという現実は直視すべきだろう、こう思います。  組織犯罪対策は、政界、官界そして経済界の癒着、こういうもののゆがみをなくすことが先決ではないか、つまり社会の健全化が大事である、こういう議論がございます。組織犯罪は社会の病理現象でございますから、社会の体質を改善することが必要であることは当然でございます。こういう議論に私は反対するわけではございません。しかし、だからといって組織犯罪対策を放置する理由とはならないと思います。社会の体質を改善すべきだ、だから組織犯罪対策は先延ばしにするということは百年河清を待つ議論になりかねないという心配がございます。  組織犯罪対策法に対する反対の最大の根拠は、警察に対する不信だろうと思います。弁護士としてうなずけるところは多々ございます。しかし、警察に対する見方をひとつ考えるべきではなかろうかと思います。健全な社会の発展のために、組織犯罪が大きな障害となっています。これに対して立ち向かう最大にして最強の部隊は警察以外にはございません。我々弁護士もそれなりに頑張っておりますけれども、限界がございます。警察にかわることはできません。  そこで、我々が警察に対してとるべき態度というのは、乱用の制約を図りながらも、警察がどのようにして市民と社会の安全のために汗を流してくれるか、実効を上げるように頑張ってくれるかということではないでしょうか。  今回の三法案は、犯罪対策として確かに強力な武器になると思います。特に通信傍受は有効だと思います。私どもが暴力団の組事務所へ談判に行ったり、仮処分の執行に出かけたりいたします。すると、組事務所の電話というのは鳴りっ放しでございます。そして、当番の組員というのはひっきりなしにどこかへ電話をしております。また、個々の組員と私どもが交渉しているときも、何回も彼らのところへ携帯電話がかかってきます。そうすると、急いで廊下に出て電話をかけたりしております。絶えず命令を出す。これによって暴力団というのは組の統制が図られるわけであります。  また、情報の交換をすることよって収入の種を見つける、いわゆる情報産業でもあるわけです。そのための手段が電話なのであって、これがなかったら暴力団というのは本当に困ってしまうだろうと思います。組織的な殺人だとか、銃器や覚せい剤の密輸、販売、あるいは集団密航など、これらのことはすべてたくさんの情報のやりとりが必要でございまして、実際に犯罪が実現されるまでには何度も、そしてたくさんの組員による情報の交換がされます。そのための最大の手段が電話だと思います。  そして、通信傍受法ができれば彼らは電話を使わなくなるのだから法律の効果がなくなるだろう、こういう御心配をされる向きがあります。確かに彼らも電話を使うとやばいという場合は使わないかもしれません。しかし、むしろそれは例外的な場合であって、対応的に見るならば、通信傍受によって彼らに対する有効な証拠が収集できる場合が決して少なくないだろう、こう思います。  通信の傍受だけでは不十分だというならば、それは捜査という観点だけからの発想法でございます。現に、アメリカでは口頭会話や室内会話の傍受も行われているそうでございまして、うわさによりますと、マフィアのボスの寝室やその乗用車にまでも盗聴器が取りつけられているそうでございます。しかし、こういう方法は劇薬でございまして、副作用も大きいわけでございます。今の日本の現状からそこまでやる必要があるとは国民のだれしも考えないところだと思います。  通信傍受法案は衆議院で政府案が修正され、対象犯罪が限定をされました。また、令状請求権者が検事、令状発付裁判官が地方裁判所の裁判官に限定されました。立会人も常時立ち会うことになりました。三条一項三号の準備としての犯罪要件も厳しくなりました。十四条のいわゆる別件傍受につきましても、短期一年以上の懲役、禁錮に引き上げられているわけであります。これらの修正というのは組織犯罪対策によりターゲットを絞ったものだと思いまして、賛成でございます。  日弁連の意見書が出ておりまして、組織犯罪対策法の必要性は認めるものの、政府原案に対しましては乱用のおそれがあるとして多くの注文をつけております。この修正は日弁連の提言のすべてを取り入れたものではございませんですけれども、このうちのかなりの重要な部分を取り上げていると思います。同法案の三条一項三号だとか十四条の傍受については、日弁連の意見をそのまま取り入れておられるわけでございませんし、大いに議論のあるところでございます。しかし、これについては法案では厳しい要件が付されているわけでございまして、後日運用が厳正に行われるかどうかということだろうと思います。該当性判断の傍受についても議論があるところでございますけれども、日弁連の意見書ではマニュアル化を図ることが望ましいと指摘しております。私もこれには賛成でございます。そのほか、立会人の切断権や弁護士の立ち会いなどいろいろな点についても議論のあるところでございますが、後でまた必要があれば私の意見を申し上げたいと思います。  最後に、これは私の希望でございますけれども、不法収益により没収された財産というのは、被害者の救済だとか暴力団員の社会復帰、あるいは麻薬対策等のために利用されるのが望ましいと思います。今の刑事学では、犯罪被害者への対策、支援が大きな要請でございます。そのような財源をどのように確保するかということが最大課題の一つと言っても過言ではないと思っております。  私の意見は以上でございます。 <0007>=委員長(荒木清寛君)= 以上で公述人の意見陳述は終わりました。ありがとうございました。  これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0008>=佐々木知子君= 自民党の佐々木知子でございます。  三人の公述人の方々には、非常に御多忙なところ当委員会まで御足労いただき、貴重な御意見をお述べくださいましてどうもありがとうございました。  まず、薬物関係についての御発言がございましたので、検事十五年の経験があります私といたしましては、鈴木公述人がたまたまパソコンが使えないので統計資料などを出せないということでございましたので、犯罪白書から幾つか引きまして、ちょっと私から述べさせていただきたいと思います。  犯罪白書は最新版が平成十年版ということで、十一年版はこの十月に出る予定になっております。十年版の中で最新の統計数値というのは平成九年のものでございます。裁判所のものに関してはもう一年前になりまして平成八年のものですからちょっと古いんですけれども、それが最新の数値ということでお聞き願いたいと思います。  まず、交通関係を除きまして、これは道交法違反という意味ですが、特別法犯の検察庁新規受理人員の構成比を見ますと、覚せい剤取締法違反に代表される薬物関係が実に四二%を占めております。続きますのは出入国管理などの外事関係の一三%ということになっております。また、覚せい剤事犯検挙人員の年齢層別構成比を見ますと、十九歳以下が八%、それから二十代の前半が二一%、そしてやはり二十代の後半が二一%と、全部足しまして三十歳未満が五〇%を占めているという検挙人員になっております。  対しまして、昭和四十八年の覚せい剤取締法の改正以前は、覚せい剤を使用することというのは罰金程度で済んでおりましたが、以後非常に厳しい処罰を設けるようになりまして、検察庁でも起訴猶予率が非常に低いというのが覚せい剤取締法違反の特徴でございます。  ちなみに、平成九年の起訴猶予率は五・五%、これは殺人の四・九%、強盗の五・〇%に並ぶものでございます。傷害とかになりますと二四%の起訴猶予がございます。非常に厳しい処罰をもって検察庁は取り組んでいる。ということは、現実問題として非常に薬物が蔓延して社会問題になっている背景があるということでございます。第一審の地裁段階におきましての終局処理人員は、先ほど申しました平成八年のものになりますが、五万四千五百九十二人中覚せい剤取締法違反は一万四千二百十九人ということで、非常な割合を占めております。  ちなみに、そのうちほとんどが有期懲役になるわけですけれども、執行猶予率は五一・二%、半分の人は執行猶予になります。全体で見ますと執行猶予率は六二%ですから、これを見ましても覚せい剤取締法違反につきましては厳しい取り締まりをもって、厳しい処罰をもって裁判所でも臨んでいるということが言えるかと思います。  そして、新受刑者の罪名別構成比というのがございますが、特筆したいことは、平成九年には女子の千百五十人中何と五〇・三%を占める五百七十八人が覚せい剤取締法で入所しております。これに続きます窃盗は二百三十八人でわずか二〇・七%でございます。ちなみに、さかのぼりまして、平成八年では覚せい剤取締法違反は二九・四%、窃盗の二七・四%とほとんど拮抗しておりました。非常にふえております。特に女子の覚せい剤使用というのが非常にふえている。今、鈴木公述人は年少者にふえていると言われましたが、年少者の中でも女子がふえているというのが非常に問題になっております。  ちなみに男子につきましては、平成九年の新受刑者二万一千五百十七人中覚せい剤取締法違反の罪名による入所者は六千百四十七人、二八・六%、これは続く窃盗の二七・九%とほぼ同じということでございます。  こういうような数値がございまして、薬物事犯、殊に日本では頭すっきり体しゃっきりというんですか、頭を抑制させるわけではなくて興奮させて、真夜中じゅうマージャンをしたいとか、真夜中ずっとトラックを運転しないといけないとか、非常に勤勉な国民性によく合っている薬物だというふうにも言われておりますが、覚せい剤が専ら蔓延しているということは世界各国から見ましても非常に特徴かと思います。  それで鈴木公述人にお伺いしたいのですが、こういうふうな薬物の蔓延、すそ野、特に年少者、女子にふえているということの社会的背景というのですか、今後、どういう問題点があるだろうかということにつきまして御意見をお伺いしたいと思います。 <0009>=公述人(鈴木りえこ君)= 意見を述べさせていただきます。  ただいま佐々木議員から詳細な数字をいただきまして、私の言うべきところを補足していただきありがとうございました。  年少者がふえているんですけれども、その中でも女子がとりわけふえておりまして、昨年、例えば平成十年ですと、中学生は三十九名つかまっているんですが、そのうち三十一名が女子なんです。それから、高校生は九十八名のうち六十五名になっております。  この社会的背景なんですけれども、例えば総務庁が九七年に中高生を対象にアンケート調査を行いましたところ、覚せい剤を使っても他人の迷惑になるわけではないということで、自分の体なんだから、ぼろぼろになってもこれは自分の責任なんだというようなことを言う人がふえていて、覚せい剤を使うことを悪いことだと思うかどうかということでは、高校生男子の場合、特に高学年になりましたら二五%ぐらいが使っても構わないというふうに言っております。  この社会的な規範の薄れというものが非常に私は問題だと思っております。これはぜひ私たちが自分たち大人の問題として考えていかなければいけないと思うんです。私は、やはりプライバシーの問題等いろいろあるんですけれども、日本人の中に自分の行う行為というのが社会にどれだけ影響を与えるかということを余りにも考えなくなってしまっているんじゃないかと。これは自分の責任だ、プライバシーだ、自分が自分で責任をとると、他人に迷惑をかけていないというようなことでございます。福沢諭吉先生が、自分が稼いだお金だからといって昼間から公衆の真ん前でお酒を飲んで酔っぱらっている、自分の稼いだお金だから自分の自由に使っていいのかと言われるとそうではないだろう、やはりそういう行為一つ一つが社会的な影響を与えていると。私はまさにそうだと思っているんです。若い子供たちがそのように覚せい剤を使う背景には、やはり家庭の問題もございますしコミュニケーションがとれなくなっているということもございます。寂しいということをおっしゃる人もいるんです。  これは社会的な病理として、私たちはなぜこのような覚せい剤が子供たちの間に蔓延しているかということに真剣に取り組まなければいけないし、やはりパブリックマインドを育てていかなければいけない。パブリックの利益になることと自分一人の利益というふうなものをどういうふうにバランスをとっていかなければいけないか、それをやはり一人一人で考えていかなければ解決できない問題ではないかと考えております。  お答えになっておりますでしょうか。 <0010>=佐々木知子君= ありがとうございました。  時間がありましたらまた質問させていただくということで、佐高公述人にお伺いいたします。  公述人の御意見によりますと、通信傍受という対応がそもそも捜査手法としていけないのか、それとも日本の警察あるいは法務・検察が信用できないからこの捜査手法を与えてはいけないのか、どちらの御意見なんでしょうか。 <0011>=公述人(佐高信君)= 通信傍受という手法が卑劣な後ろめたいやり方であると言ったのは佐々木さんの先輩の佐藤道夫さんでございまして、佐々木さんが十五年で佐藤さんが三十八年ということですけれども、そして、私はその現場の経験に照らしてその意見に賛成したということでございます。  それから、警察を全面的に信用しないのかというふうな御質問でございますけれども、そうではありませんで、警察も河野事件とか緒方事件をきっちりと認めて反省するんだということであれば、そこから問題はスタートするだろうと。何もそれはやったこともありませんみたいな話をしていたのでは、信用せよという方が無理ではないかというふうに思います。 <0012>=佐々木知子君= 佐高公述人に二つ目の質問なんですが、暴力団に代表される組織犯罪とか、今鈴木公述人などもお述べになりました薬物犯罪の蔓延とか、こういうような社会的状況に対する認識と申しますか、それに対する捜査手法は今のままでいいのかどうか。それについての御意見はいかがでしょうか。 <0013>=公述人(佐高信君)= 先ほど申し上げましたように、私は警察が刑事の方を一生懸命やるんじゃなくて公安の方に偏った力を入れているという認識を持っておりまして、その公安の方をむしろ刑事主動に直せば大丈夫だろうと。  それともう一つ、私も総会屋の問題というのは一応専門的にあれしておりますからわかっておりますけれども、総会屋を経営者が使っている側面があるわけです。総会屋はもちろん悪ですけれども、その総会屋を利用している経営者がたくさんいるんだ、そこにメスを入れなければ問題は解決しないわけで、ちゃんと総会屋と絶縁している経営者もゼロではなく、いるわけです。そちらの方向で解決を図るのが常道だろうというふうに思います。 <0014>=佐々木知子君= 村橋公述人にお伺いいたします。  私は、今、弁護士登録をしておる者でございますけれども、常々、実は弁護士会が言われていることが本当に弁護士のマジョリティーというか大部分の方の意見を反映しているものかどうかというのは非常に疑わしいというふうに思っている者の一人でございますけれども、今回の通信傍受法案に対する日弁連の意見というのは実際はどのようなものなんでしょうか。この修正案でもやはりだめというような、では、どこをどうすれば賛成していただけるものなんでしょうか。  もし御存じであれば教えていただきたいと思います。 <0015>=公述人(村橋泰志君)= 私は日弁連の代表者でございませんので、お答えする立場ではございません。  私が承知しておりますのは、日弁連の意見書というのがいろいろな協議を経た上でまとめられた、その中にはいろんな提言が書いてあります。その提言のかなり重要な部分がこの修正で取り上げられたということだと思います。ただ、提言の中の重要な部分については取り入れられておりませんので、その点についての意見書の内容は生きているというふうに思います。  いろんな弁護士会で、会の意見が発表されております。それにはいろいろなニュアンスがございますけれども、基本的には、組織犯罪対策あるいはその法案については必要性は認める、しかしその乱用を恐れる、慎重審議を求めるというのが大方の意見だろうというふうに思っております。 <0016>=佐々木知子君= このレジュメの中で、弁護士の立ち会いは現実的でないと考えるとおっしゃいました。これについて補足していただけますか。 <0017>=公述人(村橋泰志君)= お答えいたします。  弁護士は法的な素養がございますので、切断の是非についての判断能力は一般的には高いだろうと思います。しかし、実際に弁護士がその任に当たるかどうかにつきましてはいろいろ議論があろうかと思います。  まず一つは、弁護士が立ち会って情報を聞くということがそもそもいいのかどうかという点があろうかと思います。もう一つは、弁護士会として責任を持ってこれを引き受けるだけの体制ができるだろうかということがあろうかと思います。この点については日弁連の中でも、もし議論をいたしますといろいろ議論の出るところであろうと思います。直ちに日弁連全体として弁護士が立ち会いをする、そして切断について判断するというようなことになるかどうかについては問題があろうというふうに思います。 <0018>=佐々木知子君= 時間が参りましたので、これで終わらさせていただきます。 <0019>=海野徹君= おはようございます。民主党の海野であります。  公述人のお三人の先生方には大変ありがとうございます。  私は、鈴木公述人に若干質問させていただきたいなと思いますが、価値観を調査されている、一度お話を聞かせていただきたいなと思う人間の一人であります。  中央公論の「中高生に広がる覚せい剤汚染」、あるいは「サイレント・レヴォリューションを越えて」ということを読ませていただきました。非常に私も共鳴するところが多いということを前提にお聞かせいただきたいわけなんです。  先ほど、若者に覚せい剤汚染が広がっている、それは社会的規範の薄れだ、大人の責任じゃないかというお話がありました。まさにそのとおりだと思います。それはなぜかというと、やはり、もう人の金で酒を飲んで、四回だったらいいじゃないかということで天下りをしている高級官僚がいるんです、現実に。そういうリーダー層あるいはサブリーダー層の精神の衰弱現象が日本に蔓延していると私は思っています。その辺が子供たちのやる気を失わせたり、心の闇、それを共有できない大人たちがいるということがこの汚染の背景にあると私は思うんです。そういうことが非常にあるものですから、また卑劣な手段を使うことが、これでいいのかな、ますます衰弱現象を広げていくんではないかというおそれを私は感じております。  ところで、質問なんですが、公述人はパソコンを持っていらっしゃいますか。 <0020>=公述人(鈴木りえこ君)= はい。 <0021>=海野徹君= パソコンが暗号化されているというのは御存じですね。 <0022>=公述人(鈴木りえこ君)= はい。 <0023>=海野徹君= 今、皆さん方が持っているパソコン、普通のユーザーのパソコンですら、PGPとかSSHとかSSL、いろんな暗号機能が付与されている。きのうもテレビ番組でやっておりましたが、それはほとんど暗号が解読できないという状況なんです。その辺は御存じでしょうか。 <0024>=公述人(鈴木りえこ君)= はい、聞いてはおります。 <0025>=海野徹君= 携帯電話も傍受が非常に不可能に近い、現実的には、今。そういうことも御存じでしょうか。 <0026>=公述人(鈴木りえこ君)= 後でまとめて返事してもよろしいでしょうか。一応、知っております。 <0027>=海野徹君= この「中高生に広がる覚せい剤汚染」という中で、「三〇人の顧客がついた携帯電話は二〇〇万から一〇〇〇万円で売買される」というような話が書かれています。実際、携帯電話が売買されたとしても、携帯電話は傍受できないとしたら、この捜査手法というのは有効なんでしょうか。  それともう一つは、全体の押収量というのは確かにふえている。しかしながら、よく平野先生からお話があるんですが、海上投棄されたものを押収したりというのが非常に多いんです。末端の中高生とかそういう人たちから押収した量というのはふえていないんです。その辺は御存じですか。 <0028>=公述人(鈴木りえこ君)= 存じております。 <0029>=海野徹君= そういう観点からお話しさせていただきます。  この中央公論のレポートにも、どこから来ているかというと中国ですというような記述がありますね。一九七〇年代、韓国、台湾から来て覚せい剤汚染の第二次ブームが起こったんですが、それがどうやって鎮静化したと思っていますか。 <0030>=公述人(鈴木りえこ君)= それは、警察で強力な形で検挙体制を固めていったからだと思っております。 <0031>=海野徹君= 最近、中国にたくさんの我々の仲間というか国会議員が行っているんです。向こうの要人と会って対日観を聞いて帰ってきているという記事が新聞にも報道されたんです。  先ほど鈴木公述人の覚せい剤汚染が広がるもとは中国じゃないかということになると、第二次ブームのときに韓国、台湾から入ってきたものが鎮静化したというのは、国際協調があったんです。日本も取り締まりを強化する、韓国そして台湾も強化するという国際協調、外交努力があったんです。そうしたら、中国というのをもし特定されるとしたら、それに対する外交努力をまずすべきじゃないかと思うんですが、その辺はどうでしょうか。 <0032>=公述人(鈴木りえこ君)= そう思っておりますし、政府はそのような努力をしていると思っております。 <0033>=海野徹君= 政府は努力しているということなんですが、こういう中にいてもその努力されている姿というのはなかなか我々に伝わってこないんです。やはりもっと目に見える形で我々の方へそういう情報が伝わってくるような努力をすべきだと思うんですが、その辺はどういう努力をされていると鈴木公述人は御理解しておりますか。 <0034>=公述人(鈴木りえこ君)= ちょっと質問が拡散しているというか、一つ一つどのように答えていいかわからないんですけれども。  まず、先ほどパソコンの暗号化や携帯電話の傍受が不可能であるとおっしゃっておりますけれども、私が聞いておりますのは、携帯電話を傍受することは全く不可能ではなくて、実際に傍受している事例もあると聞いております。  それから、この法律が実施されるまでに一年余りの期間がありまして、その間にNTTとかパソコン会社等が協力し合って、何とか暗号を解読していく手段をつくっていこうとみんなが協力して努力をしていくというふうに私は理解しております。  それから、外交努力が伝わってこないというふうにおっしゃっておりましたけれども、もしこれが不足だというなら、さらに皆さんには努力していただきたいと私は思います。  昨年のバーミンガム・サミットとか、それから国連麻薬特別会議などでも宣言されていますように、薬物問題というのは二十一世紀の世界が取り組まなければいけない最重要課題の一つであるということになっております。ですから、日本の方でも外務大臣や小渕さんが中国に行きましたときにそのように常に話し合われているということを私は新聞記事などで読んでおります。  ただし、発展途上国はそういった薬物の収益というものが自分の国のGDPを押し上げることにもつながっていくものですから、その点は非常に難しい。口では、そうですね、これはいけないことですから我が国も努力して押さえていきましょうともしおっしゃっても、内心そのお金が国を潤すことになるという難しい問題がありますから、これはまさに麻薬外交とか薬物外交とも言われているゆえんだと思うんです。  日本は、ODAとかその他さまざまな手段をもってリーダーシップをとって世界に貢献するという方針で、この問題にさらに努力していただきたいと思っております。 <0035>=海野徹君= 政府の責任でありますし、政治の責任でありますから、鈴木公述人からそういうお話が出るのは当然だと思うんです。やはり我々がそれは努力しなくちゃいけない。また、この通信傍受法案を成立させる前にそういう努力というのはもっともっとすべきだ、そんなふうに思っております。  もう一つお聞きしたいんですが、ダルクの近藤さんの活動をこの中でお話ししております。私も、こういうような方々の努力というのはもっともっと注目すべきだと思うし、サポートすべきだと思うんです。通信傍受するための携帯電話の開発に何億、何十億かかるかわかりませんが、そのお金の何%か何割かを割いてもこういう人たちをサポートして汚染の拡大を防止する、そういう施策が私はまずあるべきだと思うんです。  その辺について御意見、御見解をお伺いしたいんですが。 <0036>=公述人(鈴木りえこ君)= 中央公論に書きましたときは、そのような自主的にリハビリ活動をしている人たちに対しての政府の努力がほとんどないというふうに書きましたけれども、その後、昨年は薬物対策五カ年戦略というのを、ちょっと名称は不確実なんですけれども、出しました。その柱の一つがそのような方々に対するリハビリということになっておりまして、近藤さんも厚生省がつくっていらっしゃる研究会の委員になられて、いろいろとレポートにもお書きになっておりますので、これが十分だとは言えませんけれども、そのような努力は通信傍受法の前に昨年からなされていると私は理解しております。 <0037>=海野徹君= 私は、国の予算をできるだけ使ってこういう部分で汚染の拡大防止をやってほしい、それがまずあるべきだなと思っております。  時間がありませんから村橋公述人にお伺いしたいんですが、先ほど暗号のお話をさせていただきました。先日来、私は暗号の問題をずっと取り上げているんですけれども、暗号技術がどんどん進んでいます。ほとんど解読できないというぐらい技術進歩が早いわけです。  一方では、Eコマース、電子商取引がどんどん市場規模を拡大しております。ほとんどBツーBコマースですから、企業間の電子商取引になっています。企業間の電子商取引になっていますと、それはもう相手は膨大であります。フロント企業がその中へ割り込んでくる、あるいは偶発的に間接的にもBツーBコマースの中で大企業とそういうフロント企業との何らかの商取引が生じてしまう。そのフロント企業が通信傍受されているとなったら、大企業に対するメールなんかも当然傍受の対象になっちゃうんです。  そういうことを考えますと、この通信傍受法案の持つ危険性に産業界そのものが最近気がつき出したんです。その点について、公述人はどういう御見解を持っていますでしょうか。 <0038>=公述人(村橋泰志君)= 私は昔人間でございましてワープロも打てないわけでございまして、御質問の趣旨については答弁する資格はございません。  ただ、単純な電話の傍受の問題では片づかない世界のようでございまして、そういう点につきましては産業界もどのようにしたらいいのか、取り組んでいくという協力の姿勢が必要ではないだろうかと思います。 <0039>=海野徹君= 村橋公述人に最後に質問させていただきますが、「濫用の制約を図り」というコメントがレジュメの中にあります。具体的にはその乱用の制約というのをどの程度考えていらっしゃいますか。 <0040>=公述人(村橋泰志君)= どの問題についてですか。 <0041>=海野徹君= この公述人の意見のレジュメの中の七番「組織犯罪対策法案に対する反対の最大の根拠は、」云々の中で、「我々が警察に対してとるべき態度としては、「濫用の制約を図りながら、どうしたら市民と社会の安全のために、警察にどのようにして、実効をあげさせることができるか。」というスタンスが、現在、必要ではないか。」ということなんですが、乱用の制約というのを具体的にどの程度のイメージをされていらっしゃるのか。 <0042>=公述人(村橋泰志君)= 通信傍受法につきましてはいろいろな論点があると思います。その論点ごとに規制が十分であるかどうかというふうに議論していったらどうでしょうか。 <0043>=海野徹君= 時間がありませんから、終わります。 <0044>=大森礼子君= 公明党の大森礼子です。  最初に、鈴木公述人にお尋ねいたします。  きょう鈴木公述人にお尋ねしたいことは、こちらが尋問するような立場にはございませんで、いわゆる青少年への覚せい剤汚染の実態というのをお話ししていただくということが私の聞きたいことでございます。  「中高生に広がる覚せい剤汚染」というこの論文を私も読ませていただきました。非常に内容がすばらしいと思っております。それで、中高生に広まったことについて大人たちは気づかなかったという御指摘もございます。それから、この吸引方法が広まっているということで、実は私も昔検察庁でストローによる煙の吸引というやり方を初めて知ったときに、ああこれは絶対青少年に広がるなと思ったら、翌年ほかの検察庁に行ったらもうそれが既に広がっていたという、数年前のことですが、こういうことがございます。  こういう青少年にまで薬物が汚染されている実態に対して何か大人は対策をとらなくてはいけない。それで、そういう薬物犯罪捜査については通信傍受は有効であり、他に有効な手段がないということで、私ども公明党についてはまず薬物犯罪対策のところからこの通信傍受との接点を持ったわけでございます。  ところが、人権人権といろいろ言われても、いちゃいちゃ話しているのも聞かれるというこの人権は強調されるんですけれども、青少年の方に薬物が広がっているという実態がなかなか理解されにくいわけです。  この原因は一体どこにあるのかと。例えば、まだ組織犯罪状況は、これは覚せい剤なんかも含めてですけれども、それほど深刻ではない。だからこんなもの要らない、通信傍受法は要らないと言う方もいらっしゃるんですね。どうも日本人は、もしかしたら犯罪実態というものについて余り関心がないのか、あるいは持ちにくい、そういう価値観を持っているのか。この点について鈴木公述人はいかがお考えでしょうか。 <0045>=公述人(鈴木りえこ君)= この覚せい剤汚染の実態なんですけれども、なぜ大人が理解できないかということは、まず子供がそういうものに手を出しているときにやはり家の恥だということでまず他人には言いません。例えば、家庭内暴力などでも夫に殴られているというのは今までタブーで、ほとんど外では言えなかったと思うんです。やはり、もし自分の子供が覚せい剤を乱用している、私には子供はおりませんけれども、兄弟がそういうことになったといったら、それを人に話したり相談に行くということはかなり勇気が要ることだと思うんですよ。  ですから、先ほど海野先生からのお話がありましたけれども、ダルクというところの近藤さんは五千人の相談を受けたと言っているんですが、相談に来れる人はまだ救われると。それから、相談に来る人はもうどうしようもなくなって最後の最後になって相談に来るというような実態があると思います。  それから、私が直接会った女子高生などでも、警察に捕まってだれが使っているのか言いなさいと言われましたら、首都圏の有名女子校なんですけれども、名前が芋づる式に百名以上出てきたということなんです。例えば、ドラッグを専門で研究していらっしゃる高校の先生に伺いましても、中央公論にも書きましたけれども、僕の感覚では高校生の一割は使っているだろうとおっしゃっていました。彼は、恐ろしいことだろうけれども、ルーズソックスというのが中高生の三割に広がった実態から考えると、この先三割まで行く可能性はないとは言えないとおっしゃっています。  先ほど、子供たちがコミュニケーションがとれなくなったと話をしたんですけれども、コミュニケーションがとれないから子供の友達の数が少ないんです。これをしなさいと言われたら、だれかがやっていると断れなくなってしまっています。それから、数少ない友達を失いたくないということで、子供たちの間でどんどん広がっていく。  それから、女性が多いということなんですけれども、これもまた一つ問題で、援助交際をする女の子たちが、例えばホテルに入って突然覚せい剤を出されて、これを打ってみなさいと言われたときに、もう怖いけれども断れない状態になっています。ですから、女の人はそういう状態で覚せい剤を覚えるケースが結構多いです。また、それで依存になってしまっても、男性と違って体を売るという言い方はよくはないんですけれども、そういうことでお金を稼げるので、女の人は非常にやめるのが難しくなっています。  男の子の場合はそういうわけにはいきませんから、やっぱり仲間に売っていくんですね。イラン人が無差別に街頭でキャッチセールスを始めたことが中高生に汚染が始まったそもそもの始まりなんですけれども、今ではイラン人に頼らなくても中高生の間で売買されているという実態があるそうです。 <0046>=大森礼子君= ありがとうございました。  次に、佐高公述人にお尋ねいたします。  佐藤道夫元検事長に倣えということなんですけれども、その先輩の意見にどうして耳を傾けないのかと。いい意見だったら耳を傾けます。それで、三十八年の経験、では四十年やった元検事長が必要だと言ったらそうなっちゃうのかなと。佐々木委員も元検事、先輩の佐々木さんは十五年、佐藤さんは三十八年、私は七年しかやっていないからもうお話にならないのかなと。こういう考え方というのは何か権威主義じゃないかなという気がいたしました。  それから、金丸さんの脱税事件の前の段階で、政治資金規正法違反のことについて当時の佐藤検事長が、「検察の威信に告ぐ」でしたか、それが朝日新聞に出されて反響を呼びました。これは、実は内部でも評価は二つに分かれております。若い新任検事はそのとおりだと言っていましたけれども、三、四年経験した検事は、ではどうすりゃいいのという意見が多かったんです。ちょっと詳細を覚えていないんですが、政治資金規正法違反はたしか罰金しかなかったと。罰金だけで検察、逮捕して、逮捕はできるけれども勾留がつくのかどうかという非常に難しい事案であったと思うんです。四十八時間、ずっと調べるわけじゃありませんから。高齢ということもあると。それでそのときに、この佐藤検事長は検察だったら逮捕せいと言うんですかねと、こういう議論も実はしたこともあるのです。中ではそういう意見もありましたということです。  それから、三十八年間の経験をもとに、この盗聴は卑劣なやり方だと。確かに卑劣なやり方で、やらなくて済むんだったらやらない方がいいと思いますけれども、では方法はあるのかということで、我々修正案を出しております。  それで、警察の捜査能力が高いと非常に褒めてくださっているんですね、佐藤議員も。盗聴するということは警察の捜査能力が低いということをみずから認めるということは、これはちょっと決めつけで、能力が高くても、相手が武器を持っている場合素手で戦えという、これで果たしてやれるのかと。捜査能力が高いと私は思いますよ、優秀だと思います。しかし、そのことと捜査に対して万能であるかということは、私は違うと思うわけです。  そこでお尋ねするのですが、薬物犯罪捜査を取り上げますけれども、先ほど村橋公述人の方もいろいろ末端から積み上げるのは困難だとの御意見をおっしゃいました。この薬物犯罪捜査の上部の摘発は困難だということは、佐高公述人はお認めになるのか。それとも佐藤元検事長が能力高いから、今のやり方、自供をとって上をしゃべらせてというこのやり方ですけれども、できるはずだと。この点はいかがでしょうか。 <0047>=公述人(佐高信君)= 大森元検事には調べられたくないものだなという感じがいたしました。要するに、私が三十八年と十五年を単に比較しているわけではなくて、ペンキが塗られたあの屈辱的な事件にかんがみてという前段を申し上げているわけで、部分的に権威主義だというふうな決めつけは非常に迷惑でございます。  それで、盗聴が有効かどうか、私はこれは疑問を持っております、佐藤さんとはそこでは同じですけれども。これ、さっきからずっと話を聞いていますと、何か薬物汚染で、結局中高生を盗聴することになるんじゃないかというふうな話ですね。  それで、きのう、反対集会で日本青年団協議会の社会女性部長の方が、もちろん若い女性ですけれども、非常にしっかりとした反対意見を述べました。だから、大森さんとか検事というのはやっぱり何か悪い方の中高生だけを見ているんじゃないか。そうではなくて、しっかりした人もいて、そういう人たちは、自分たちにとっては電話というのはもうほとんど欠かせないコミュニケーション手段なので、それを盗聴されるのはとんでもないということを五千人の前ではっきりと申し上げたので、ぜひ聞いていただきたかったなというふうに思います。 <0048>=大森礼子君= 時間の関係もあるかもしれませんが、佐高さんが佐藤さんの例を引きまして、三十八年の経験をもとにと、どうして耳を傾けないのかということなのですが。  それで、私は検事を七年しかやっておりませんが、覚せい剤、当時は携帯電話はそんなに発達していませんでしたけれども、それでも供述をとって上へ突き上げる、限界があるなと思いました。そして、携帯電話が発達して対面の譲渡でなくなったら余計下を捕まえて供述をとるということはできなくなりますので、そこのところが私はよくわからないのです。  そして、ある雑誌で佐藤さんが書かれているのを見ましたら、要するに正攻法でいけと。それは自供をとって上を突き上げろということですから、そこのところではもう見解が違いますということを申し上げたいわけでございます。  それから、権威主義と言ったら迷惑と。これは決めつけはお互いさまかなと思って、失礼なことを言ったらおわびいたします。  それで、中高生を盗聴するのかということはわかったと。これもちょっと決めつけなんですね。中高生にまで薬物が広がっている。そうしたら、中高生に使っちゃいけませんよいけませんよと防止キャンペーンするだけでは無理でしょう、やはりもとを絶たなくてはいけないでしょうということでありまして、これは条文なんか読んでいただければ御理解いただけるというふうに思います。  それからもう一つは、これも時間がないんですけれども、公明党のことでちょっと浜四津さんのことが言われましたので、私も触れたくないけれども触れなきゃいけないのかなと。  去年反対したのにくるっと回って賛成に回るのか、理解不能だとおっしゃるわけですが、半年足らずで賛成に回ると言ったんですね。これはことし一月からずっと検討してきたんです、党独自の見解で。そうしたらこれだけの修正案はできます。ですから、ほかの党で勉強されたりこれから練り直そうなんて考えなくても、そのころから勉強していたらそれなりの案が出たと思うんです。  それはさておき、佐高さんが、そういうふうにくるっと回って賛成に回ると。政府原案に対して反対していたのにくるっと賛成するのだったらこの表現は当てはまるわけですが、これは政府原案と修正案とを対照吟味された上での御意見でしょうか。この点、簡単に確認させてください。 <0049>=公述人(佐高信君)= 本当は私の方も大森さんに確認したいんですけれども、今の御意見はあした変わるということはありませんね。 <0050>=大森礼子君= 何ですか。 <0051>=公述人(佐高信君)= つまり、意見が、今この時点で、六カ月で変わるのは、あした変わる場合もあるわけですからね。  それはともかくとして…… <0052>=大森礼子君= どの部分を変えないかということですか。 <0053>=公述人(佐高信君)= 今いろいろお聞きしていることが、私が答えた場合にまたくるっと変わる場合もあるわけでしょう。 <0054>=大森礼子君= いえいえ、私は変わりませんと思いますけれども。 <0055>=公述人(佐高信君)= それは主観的な意見ですからね。  だから、いろいろおっしゃる中で、私が言ったのは、これには歯どめがきかないんだということ、歯どめがきかないということは修正がきかないということなんじゃないかというふうに申し上げたわけです。 <0056>=大森礼子君= わかりました。歯どめがきかないと言った発言をとらえて、歯どめがきかないと言った以上は修正してもきかないだろう、だから、修正がきかないと言ったはずなのに修正したのはおかしいと、こういう御意見だとわかりました。  そこで、最後に村橋公述人、時間がなくなって済みません。  政府原案とそれから修正案が出ました。実はなかなか我々も苦労して、弁護士会の御意見とか伺ったんですけれども、この修正案について、自画自賛しちゃいけませんけれども、かなり厳格にして、一生懸命考えたと我々思っているんですけれども、一定の御評価はしていただけますでしょうか、簡単で結構ですので。 <0057>=公述人(村橋泰志君)= 先ほども申し上げましたけれども、かなりの重要な点についての修正がされている、それは評価したいと思っております。 <0058>=大森礼子君= 時間がありますのでもう一問、佐高公述人にお尋ねします。  さっき立会人のことが出たのですけれども、これはNTTの職員に意見を聞いたのかというあれでしたが、これは条文で言いますと十二条の「立会い」、「傍受の実施をするときは、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者又はこれに代わるべき者を立ち会わせなければならない。」、こういう文言なんですが、この文言を変えるべきだという御意見ですか。それとも、この文言はこれでいいけれども、具体的にNTTの場合はだめだということなのか。いずれでしょうか。 <0059>=公述人(佐高信君)= 私は、やっぱり弁護士立ち会いというふうな方向を、もし修正するなら考えるべきだというふうに思います。 <0060>=大森礼子君= 時間ですので、終わります。 <0061>=橋本敦君= 最初に、佐高公述人にお伺いしたいと思うんですが、政府側の意見としても、また一部の意見としても、先進国、G8等の関係を見ても、盗聴法というこういう捜査手段、通信傍受という捜査手段を持っていないのは日本だけだ、国際的なそういった世論もあって、こういった通信傍受法をつくるということは、これは国際的にやっぱり一つの流れになっている、こういう意見があるんですね。  しかし、私どもとしては、憲法二十一条に言うような重要な基本的人権条項、しかも、一定の法律の留保なしに通信の秘密をかたく守るということを確定している今の新しい憲法のもとで、そう簡単に国際的動向がそうだからというわけにいかない。やっぱり憲法を大事に守るということを基本的に考えて国際的にも対処していくべきだ、そんなふうに思っておりますが、そういう諸外国の動向との関係でこの法案についてどうお考えでしょうか。 <0062>=公述人(佐高信君)= 諸外国の例に見習ってという人たちが言うときは、何かやっぱりつまみ食い的感じがするんですね。では、ほかの問題ではちゃんと諸外国に見習っているのかというと、そういうところでは見習っていないところもあるわけです、例えば人権規約の問題でも代用監獄の話とか。こっちはおいておいて、ここだけ諸外国並みというのは話として通らないというふうに思います。  ましてそれを、日本のアイデンティティーみたいなものを強調される方々が諸外国に見習ってというのは、本当に本末ひっくり返っているんじゃないかという感じがします。 <0063>=橋本敦君= 次の問題に移ります。  この通信傍受法、私どもは盗聴法と呼んでいますが、きのうも議論をしたんですけれども、裁判所が一たん傍受令状を出しますと、その執行は全面的に捜査官憲にもうゆだねられるわけですね。だから、十日なら十日と期限を切って令状が出ますと、その間裁判所のチェックというのは実際にないわけです。それじゃ、該当性判断とかあるいは別件盗聴とか、いろんな要件がありますが、本当に聞いてはならない通信を聞かないようにチェックするというのは、これはもう客観的に法的規制がなくて、専ら捜査官の判断に任されている。  だから、そういう意味で、該当性判断のために最小化法則、原則ということが言われますが、これは法律には何もなくて、関連があるかどうかの該当性判断は最小の措置の範囲でやるべきだ、こう書いてあるだけですね。ですから、そのマニュアルを警察がつくり、検察庁がつくるとしても、国民からはわからないわけです。そういう意味では、まさにこの傍受法案というのは、捜査体制、捜査官憲が本当に乱用しないのかどうかということが厳しく問われるそういう構造になっていると思うんですね。  だから、そういう点で、警察の捜査に対する国民の信頼が本当にあるのかないのか、このことがこの法案の根本問題として、法案の構造自体からも厳しく問われている問題だと私は思っておるんですが、その点のお考えはいかがでしょうか。 <0064>=公述人(佐高信君)= 私は、警察を信用しないんじゃなくて警察を信用したいわけです。先ほど来申し上げているように、緒方事件とか河野事件の対応を見れば、したいけれどもできないじゃないかと。だから、その問題をクリアしてからスタートさせたらどうですかと。なぜそこにこだわるのか。こだわるのかというのは、謝らないということに、あるいは認めないということにこだわるのかというふうに主張しているわけです。 <0065>=橋本敦君= その点で、当参議院の法務委員会で、警察庁長官に対して私も緒方事件について質問をいたしました。警察が、過去も将来も一切盗聴行為はやっていないということをおっしゃるわけですね。  緒方事件はどうなのか、こういうことが問題になるんですが、組織的に警察が盗聴行為をした事実はないということで一貫しておっしゃっている。しかし、警察の職務の遂行については一体の原則ということがありまして、個々の警察官がばらばらに好き勝手にできるわけはないし、長期にわたってアジトを借りる費用、テープの費用、そういった予算も使わなきゃなりませんから、私は、警察が組織的に関与していないということは、これは裁判所が認定したように認められないことだと思っていますが、警察の方はそれをはっきり認めないわけですね。  特に私がこの問題で重大だなと思ったのは、現に盗聴を実行したとされる警官に対して懲戒処分が行われているわけです。それじゃ、なぜ懲戒処分をしたのかと聞きますと、盗聴行為をしたからじゃなくて、検察庁に取り調べを受けて警察の信用を害した、取り調べを受けたというそのことが信用を害した、それが懲戒処分の理由だ、こう言うんですね。これは、本当に国民的常識で通る話かというように私は思っておるんです。  そういうような状況ですと、仮にこの法案で、通信事業法違反の犯罪関連でない通信を傍受するということに乱用された場合に、修正案で刑を加重して重く罰しますよ、違法盗聴になったら重く罰しますよ、こうしていますけれども、罰しようとする警察、罰せられる警察がそういう体質であれば、この修正案のそういった機能も私は十分に果たすことが期待できないと私は思わざるを得ないんですね。  そこらあたりのお考えはいかがでしょうか。 <0066>=公述人(佐高信君)= そのとおりだと思いますし、私が不思議に思うのは、警察が認めないということは検察や裁判所をある種侮辱しているということですよ。警察庁長官が侮辱しているという。法の信頼というふうなものを自分たちで崩しているということだと思いますけれども、その辺は、私が質問することはできないんですけれども、むしろ逆に聞きたい感じですね。 <0067>=橋本敦君= それから、きのうの夜、JNNのテレビの放映がございまして、たまたま私見ておりましたら、この傍受法案についてJNNでやった世論調査が報道されました。それを見ますと、この傍受法案、いわゆる盗聴法案に賛成が減って三九・六%、ところが逆に反対が七ポイントもふえて過半数を超えて五〇・一%になったというのがきのうのJNNの世論調査として報道されておりました。  私も、この法案が参議院に来ましてから今日まで審議をやっているその間を通じて、この問題について国民の中にいろいろ議論が広まり、意見が出て、国民の中からはこういう通信傍受法案に反対だという声が広がっているように感じておるんです。こういう世論調査の動向から見て、言論界、学界あるいは労働組合関係、その他いろいろ公述人もお知り合いのところが多いと思いますが、そういう反対運動というのはやっぱり高まりつつあるというように御認識でしょうか。 <0068>=公述人(佐高信君)= 最初はこの盗聴法の危険性というものに対して、そんなに多くの人たちが知っているという状況ではなかったと思います。ところが、さっきお話にありましたように、ついには五〇%を超えた、いわゆる公明党等の動向とは全く逆比例しているわけです。  それともう一つ、きのう私も見ておりましてちょっとメモしなかったんですけれども、四つの限定で限定されると思うかというので、全然限定されないと思うというのがたしか六〇%ぐらいになっていたんですね。だから、修正というのは何も修正になっていないということを一般の人たちがよく知っているということだと思いますし、その辺はむしろ法務省なんかも世論を謙虚に受けとめるべきじゃないかというふうに思います。 <0069>=橋本敦君= 佐高公述人は立ち会いの問題にもお触れになって、NTTで働く皆さんの御意見の紹介もあったんですが、きのうの世論調査でその問題にも調査があったようです。その報道によりますと、この法案の立会人の制度に関して、それで適正な運用ができると思いますか、どうですか、こういう質問に対して、この法案の立会人の制度で適正な運用ができるというのが二二・九%にすぎませんで、できないと考えている世論が六六%にもなっていた、こういう報道がございました。  私も、今の立会制度では犯罪関連通信以外の通信傍受の切断権はありませんし、それから立会人はどういう犯罪でこの傍受がなされるのかということについて被疑事実は知らされませんし、外見的に見ているだけだ、こういうことですから、こういう世論が出てくるのも、国民はよく見ておられるのかなというようにも思っておるんですが、公述人としてはこの世論について御感想はいかがでしょうか。 <0070>=公述人(佐高信君)= 私もそうだと思います。  それから、この質疑の中で、何かつけたり的にジャーナリスト、報道機関は除外するんだというふうな話が出て、しかしそれを法制化することはできないと。いかにも馬の前にニンジンをぶら下げてすっと取り上げるみたいな、まさかそれにだまされるようなジャーナリズムもないと思いますけれども、それはもうジャーナリスト失格ですから。だったら、最初からきっちりともっと堂々と出してこないかというふうな感じがします。 <0071>=橋本敦君= その点はきのう私も刑事局長に質問したんですけれども、他の議員からもありました。報道機関の報道の自由、取材の自由という、憲法上の問題からいっても、報道機関に対する傍受をやらないということを刑事局長がおっしゃっても、法律にはそうは書いていないんですから、それがそう行われないということの担保も法律的保障もないわけです。そうおっしゃるならば、法を改正してきちっとやるべきだということで申し上げたんですけれども、その点は法を改正するということになっていないものですから、刑事局長がそう答弁されても実際にどこまでやられるのか担保も保障もないという問題が残るわけですね。  こういう問題について、国民の側から、先ほどちょっとお触れになりましたが、自分は大丈夫だよ、私は何も悪いことはしないんだから私の電話が盗聴されることはないよなという考え方がまだまだあるという御指摘もございました。この問題が国民の中にわかるにつれて、やっぱり国民の通信の秘密を守る上では重大な問題があるんだという世論が今広まっていきつつあると私は見ていますが、そこらあたりの国民感情としてはどうでしょうか。 <0072>=公述人(佐高信君)= 私はこの間、新聞労連の大会に呼ばれて話をしたんですけれども、そのときに、先ほど申し上げた松本サリン事件の河野義行さんの話をしまして、あのときは警察が河野さんを犯人と決めつけ、さらにはそれにマスコミが乗っかったわけですね。だから、それを自分たちが本当の意味で反省するためには、この盗聴法案に死に物狂いで反対するしかないんだというふうに申し上げたんです。その河野義行さんの事件についてもやっぱりもっと徹底した反省というものがなければおかしいんじゃないかというふうに思いますし、自分たちが河野さんのような状況に置かれるんだということが浸透してきた結果が、反対が五〇%を超えたということではないかと思います。 <0073>=橋本敦君= 鈴木公述人それからまた村橋公述人にお聞きしたいこともあったんですが、ちょうど私の持ち時間が終わりましたので、質問ができず失礼いたしましたが、これで終わります。  ありがとうございました。 <0074>=福島瑞穂君= きょうは、お三方、どうもありがとうございます。  まず、法曹の大先輩として村橋公述人にお伺いいたします。  先ほど、犯罪が実現されるためにたくさんの情報が暴力団の組事務所で交換されるというふうにおっしゃいました。私自身は、先ほど佐高公述人もおっしゃいましたが、この盗聴法が捜査のために使われるという部分と情報収集として使われる部分とがどうも不分明になっていくのではないかという気がいたします。  先ほど、公述人は犯罪が実現されるためにたくさんの情報が交換されるとおっしゃったんですが、一つは事前盗聴、弁護士会が提言した中で例えば事前盗聴の削除という点は修正案に盛り込まれておりません。事前盗聴そのものは、もちろん要件はありますけれども、行政警察と司法警察の混同を生むのではないか、要するに犯罪があって捜査がスタートするのではなく犯罪が起きる前に盗聴するわけですから。  そういう意味では、先ほどおっしゃったことで、暴力団の情報収集という形で使われるという面はないのでしょうか。 <0075>=公述人(村橋泰志君)= 今回問題になっておりますのはあくまで司法のための通信傍受でございまして、行政的な捜査のために、あるいは国家の安全のために情報を収集するということではいけないと思います。外国ではそのような行政的な必要のための傍受はされている国もあると思いますけれども、日本はそこまで踏み込んではいけないと思います。  暴力団の情報の収集でございますけれども、何も嫌疑がないときに情報を収集するということは許されないと思います。この法案を見ましても、傍受令状を発付するにつきましてはいろいろ要件が出されております。逮捕状の場合よりも厳しい要件がいろいろ付されております。これが厳正に運用されることが大事だろう、そう思います。 <0076>=福島瑞穂君= ジャーナリストの江川紹子さんが弁護士会の集会でこういうふうにおっしゃっています。  オウムの事件と言えば地下鉄サリン事件、松本サリン事件などが代表的なんでしょうけれども、この事件も通信傍受の法律があれば防げたとは言えません。彼らは自分たちが盗聴されているというふうに思っていましたから、盗聴されていることを前提に動いていました。つまり犯罪に関わることは普通の電話では話さないというのが彼らの原則でした。組織がきちっとした組織であればあるほど、つまり組織の犯罪を取り締まろうとすればするほど、組織の方は人は何人もいるわけですから、例えば暗号を使うとか、例えば伝令役をとばすとか、組織であればあるほどこの法律は役に立たないということになると思います。  メリットが余りない、その一方で、デメリットはどうなんだろうか。 ということで話をしていらっしゃいます。  この法律がよく覚せい剤の取り締まり、あるいは大物を捕まえる、悪いやつを捕まえるのだということで説明があるんですけれども、この参議院の審議の中で、どうも携帯は今の時点で盗聴は非常に困難である、衛星携帯電話は盗聴、傍受しないというふうに刑事局長はおっしゃいました。暗号の問題もあります。つまり、根性を入れてきちっと対策がとれるところは盗聴ができなくて、むしろ丸裸になる一般の方はそういう対策を講じませんから盗聴されやすいんじゃないかというふうに思ったりもします。  ですから、先ほどおっしゃったんですが、盗聴で暴力団のトップに果たして上がれるんだろうかという点が非常に疑問で、仮に盗聴法が実現すれば、それはそこではやらないだろうというふうに思うんですが、その点はいかがですか。どうやったら上に上がっていけるんですか。 <0077>=公述人(村橋泰志君)= お答えいたします。  通信傍受法が制定されましても万能ではないと考えます。それは一定の効果はあるだろうと思います。  そして、暴力団がいろいろ活動していく上に電話が活用されていることは事実でございますし、彼らの活動形態からいたしましてもそれは必須の手段だと思います。したがいまして、電話を傍受することによりましてかなり有益な情報が収集される、情報が収集されると言うのが語弊があったらお許しいただきたいと思いますけれども、犯罪を立件する上で有益な証拠が収集できる場合が多いと思います。しかし、それはすべてではない。  私ども日弁連の民暴委員会では、アメリカあるいはイタリアへ実情を視察に参りました。外国では随分いろいろ厳しい捜査手法が行われております。先生御承知のとおり、アメリカなどでは会話の傍受だとか室内の傍受までも行われているわけでございます。あるいは潜行捜査、おとり捜査等がいろいろございます。そこまでやっていいのかどうかということであります。  だから、この通信傍受法は万全ではない、だからやらなくてもいいということにはならぬのではないか。一つの有効な手段であるならば、それは取り入れるだけの必要性が出ているというのが私の意見でございます。 <0078>=福島瑞穂君= ただ、暴対法ができ、次に盗聴法ができ、暴力団対策のためにこういう法律が必要だとどんどんできていく、その先に、例えば屋内盗聴とか出てくる危険性もあるのではないかというふうにも思ったりしています。  では次に、佐高公述人にお聞きいたします。  すべての人を河野さん状態にするものであるとおっしゃいましたから、別にジャーナリストを特別扱いするつもりは全くありませんけれども、不安をすごく聞くんですね。つまり、内部告発の電話がかかってきたりいろんな情報が入ってくる、特にフリーでやっている人は自宅兼事務所のようなところでやっていると。  ジャーナリストの立場から、この法律をどう見られますか。 <0079>=公述人(佐高信君)= 結局、さまざまなスキャンダルといいますか、官僚とか政治家の悪というのはなかなか摘発されにくくなるだろう。  例えば、法務省のトップの問題とかいろんな、ついこの間も検事総長ですか検事長ですか、何か問題がありましたけれども、ああいう問題はやっぱりある種の内部告発的なところで出てくるわけです。一番権力を持っている者が一番自浄作用というのはないわけですから、そこを内部告発的に崩していくというふうなことは一番やりにくくなるだろう。  つまりは、やっぱり権力を持っている人間はある種安泰で、暴力団と同じ構造でむしろ下っ端の人たちが捕まる、下っ端というか、一般の人たちが捕まるという結果しか招かないだろうというふうに思います。 <0080>=福島瑞穂君= それからもう一つは、国会でこれを議論しているのですが、私は盗聴法の対象はもう与党、野党とか党は関係なく起こり得るのではないかというふうにも思ったりしているんです。ですから、政治家、政治的な問題と盗聴ということについてはいかがですか。 <0081>=公述人(佐高信君)= ついこの間、私は田中眞紀子さんと雑誌で対談したわけですけれども、田中さんは、自民党の人として表立っての反対はできないけれども、退席という形で意思表示をされたわけですね。  田中さんが話しているところによると、自民党の議員の中でも、自分たちも盗聴の対象になるわけだからおかしいというふうに言っているんですけれども、なかなか表立っては反対できないと。昔は自民党はいいかげんなところがいい政党だと思ったんですけれども、何か最近は自民党の公明党化というのが起こってきて一糸乱れずという感じになっていますから、その辺が難しいところなんでしょうけれども。  政治家が自分たちが盗聴されるおそれがないというふうに考えるのは、ほとんど想像力の欠如した人たちだと思います。 <0082>=福島瑞穂君= また、村橋公述人にお願いします。  弁護士として思うのは、この盗聴の制度が他の捜査手法とは決定的に異なるということです。つまり、強制処分を受けて、私が令状の発付を受け、それがもし刑事傍受記録に記載されなければ、私も一生知らされないし、私と話をした何千人という人も知らされない。つまり、これからもしこの法律が実現したら多分国民が不安を感ずるのは、盗聴されているかもしれない、されていないかもしれない、されているかもしれない、でもやっぱりされていないかもしれないという、こういう状態が起きるわけです。  ですから、余りにこれは、村井先生を初めとしたほかのさまざまな参考人もおっしゃったんですが、今までの捜査概念、犯罪概念を変えてしまう。この点についてはいかがですか。 <0083>=公述人(村橋泰志君)= 犯罪概念を変えるというお言葉についてはちょっと私よく理解できないんですけれども、今までの捜査手法とは一つ質の違った踏み込み方をしているということは事実だと思います。どこまで踏み込むかということについては現状認識によっていろいろ違うわけですけれども、私としては、この通信傍受の程度までは必要になっているんじゃないかというふうに思うわけです。 <0084>=福島瑞穂君= では、また佐高公述人にお聞きいたします。せっかくきょうは公述の機会ですから、この盗聴法が社会に与える影響ということについてどうお考えでしょうか。 <0085>=公述人(佐高信君)= 社民党の保坂さんが盗聴されたのかテレビ朝日の方が盗聴されたのか、いろいろ議論はあるみたいです。あのときに保坂盗聴というふうに伝わったら、たしか自分のところの携帯電話に電話が激減したというふうな話がありましたけれども、あの事例が非常に明らかにしているのは、やっぱりコミュニケーションというのをずたずたに引き裂いていくということだと思います。それで、全体がやっぱり疑心暗鬼の社会になるんじゃないかと。  私は、だから万々が一どうしてもこれをやりたいというのだったら、国民が一つだけ、例えば小渕さんの家の盗聴は国民ができますと、それを一つの対抗手段としてなら認めてあげてもいいんだけれども、万歩譲っての話ですけれども、向こうは全然我々に盗聴されるあれがなくて、一方的に来るわけです。小渕さんは、ブッチホンと言って電話魔だからどんな電話をかけているのかいろいろ私たちも興味がありますから、もしそのぐらいやる覚悟なら、それはオープンにしますということならまた考えは違ってくるかもしれない。 <0086>=福島瑞穂君= 盗聴法がもし成立した場合、私が思うのは、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、検察が警察の問題を摘発できなくなるんじゃないか。緒方事件のときは抗争があったというふうに聞いていますけれども、今後何かあったときに、警察の問題を検察が裁けないんじゃないかということをとても思うんです。あるいはメディアの中で警察批判というのをするようなところは非常によっぽど覚悟を決めてやらないとできないとか、フリーライターの人でも、あるいはメディアの中でも敵対するようなところはよっぽどやらないと、どんな形で捜査を受けるかわからないという恐怖心を持つ。  恐怖心を持つ市民運動家も政治家もそうですが、自分自身が例えば万が一選挙事務所の電話を盗聴されていたら、もうだめだみたいに思った途端に腰砕けになる。そういう状況というのはやっぱり起きると思うんです。そういう点についてはいかがですか。 <0087>=公述人(佐高信君)= 私がもう一つ非常に恐れているのは、企業の経営者がこの法律について本当にのうてんきだということです。  私がもう一つ恐れているのは、警察が総会屋化するということなんです。それは実際起こっているわけです。味の素の石神隆夫という人が警察から天下って味の素の総務課長になって、そして警察との癒着の中でさまざまなことが起きた。あれは警察関係の人たちもたくさん出てきたわけです。その問題というふうなこと、それで味の素みたいな問題は各企業全部抱えているわけです。そういうことについて余りにのうてんきというか注意を払っていない。  だから、あくまでもこれは精神論ではなくて、実際に総会屋と絶縁している企業というのは数は少ないけれどもあるわけですから、その方法をきちっととらないと、警察が組織としていろんな企業を盗聴して、おまえのところにはこういう問題があるじゃないか、組織的に天下りさせよということは、それは杞憂でなく必ずもうほとんど進行している話なので、そういうことについてもこの盗聴法の危険性というのはあるというふうに思います。 <0088>=福島瑞穂君= 時間ですから、ありがとうございました。 <0089>=平野貞夫君= 最初に鈴木公述人にお聞きいたします。大変勉強になる話を聞かせていただきましてありがとうございました。特に、お話だけではなくて、中央公論にお書きになりました論文の中、それも含めてちょっとお尋ねしたいと思います。  水谷さんの著書の中で、先ほどお話になっておりました日本の高校生の一割程度が既に覚せい剤を乱用しているんじゃないかと。一割といいますと、先ほど調査室に調べていただきましたら平成十年五月現在で四百二十五万人高校生がいるそうですので、約四十二万人ですか。そして、近い将来は三割まで行くんじゃないか。三割といいますと百三十万人ぐらいになりますか、大変深刻な話だと思います。  私も、この組織犯罪防止三法審議の中で、特に覚せい剤の深刻さということについて本当に骨身にしみてわかったんですが、論文の中にも若干お書きになっておるんですが、中学生、高校生に乱用が広がっている、拡大していると。予防するといいますか、緊急にどういう対策が要るか、これは別に通信傍受に限定することはないんですが、どういうお考えか。私はまだ水谷先生の本を読んでいないものですから、何か御参考になることがあったら。 <0090>=公述人(鈴木りえこ君)= 水谷先生の話を聞きましたときに、私もちょっとこれは本当かなというような数字だと思ったんですが、実際には去年、警察関係の団体が統計を出しましたところ、日本の覚せい剤乱用者は二百二十万人ではないかという数字が出ておりまして、その前の年か、二年前に厚生省の関係の病院が出している数字は、十五歳以上の人口の二%ではないかということなんです。先ほどの中高生が三割で百三十万人ということになりましたら、ちょうど二百二十万人の半分ぐらいになりまして、先ほど佐高先生のお話の中でも、三十歳以下の検挙率というのが五割になっているということでしたので、ちょうど合致するような数字、恐ろしい数字だと思っております。  先ほど、首都圏の女子高校生が一度警察に捕まって、同じ学校で使っている女子高生の名前を挙げたら百人以上になったという話をしましたけれども、これは本当に首都圏だけのことではございません。私、鹿児島に行きまして女性を相手に講演しましたときに、その方はお医者様の奥様で高校生の女の子が二人いるとおっしゃったんですが、鹿児島でもやはり娘のお友達でそういうことをしている人がいるという話を聞いていると聞きました。北海道でもそのような話を聞いたという人の話がありまして、これはもう地域的な問題じゃなくて本当に全国に広がっている問題であります。  何が緊急に対策として必要かといいますと、私は本当に中高生に覚せい剤が広がっているということは大人の責任だと思っております。やはり、いろいろ先ほどから話を聞いておりますと、義務と責任という感覚がどうも日本人には根づいていないんじゃないかと。  個人の自由だとかプライバシーが侵害されるということは非常に大変なことで、私はこれにもちろん反対でございますけれども、それよりもまず私は安全というもの、私はイギリスでも六年ほど住んでおりましたけれども、イギリスだと一歩外に出たら私は生きて帰ってこれるだろうかと毎朝思って外に出ていく。出ていったときは、あとは私の責任なんだ、警察とかの責任ではなくて半分以上は自分が責任を持つということを考えて暮らしていたんですが、日本に来ましたら道を歩いている皆さんの表情を見ても随分気楽そうにしていらして、自分の公に対するかかわり合いというものに対しての感覚がどうも薄いような気がするんです。ですから、そこをただしていくには、教育問題その他含めまして本当に二十一世紀の日本がどうなっていくかという根本的な問題とかかわってくることだと思っております。  プライバシーの問題で、私もプライバシーは非常に大切だと思うんですけれども、きのうの産経新聞で曽野綾子さんが、生活の一部を知られた、それが何だと書いていらっしゃるんですね。世の中は大変便利になりまして、情報化も大変便利になった原因の一つなんですけれども、それによって、彼女は忙しいから通信カタログで洋服などを買うけれども、自分のスリーサイズというのがそこの関連者にはみんな知られている。それから、この世の中で他人のプライバシーを一番知っているのは郵便配達人の方だという話はよく聞くんですけれども、結局そういうプライバシーというのは私たちが生活している上でいろんな形で知られてしまっていることがあるんです。  今回の論争を聞いていましても、今盗写とか盗聴ということが卑劣な状況で国民の間に蔓延しておりまして、これを何とかしていただきたい、これは別にいいように使われるという可能性は全くないわけですから。私なんかは私のプライバシーを知って一体何になるのと思っていますけれども、やっぱりこれだけ雑誌などでひどい写真を見せられたり見聞することによって自分の身は自分で守っていかなきゃと思いますから、ちょっと話がそれるかもしれませんけれども、盗聴されているかどうかを確かめる機械というのをふだんから持ち歩いております。それで全部チェックしております、皆さんの見えないところで。  そういうわけで、これだけプライバシーが侵されているところで今の通信傍受法に反対されている方の議論を聞きますと、ちょっと本末転倒のような気も私は個人的にはしております。村橋先生がおっしゃいましたように完璧なものではないと思うんですね、どの法案にしても。ですから、まずこれをつくって実施していくことが私は大変意義のあることだと思います。問題があったらそれはやっぱり一つずつそのときそのときに応じてまた変えていけばいいんじゃないかというふうに考えております。  何が緊急に必要かということのお答えにはならないかもしれませんけれども、国民一人一人の義務と責任という意識の問題、公の利益のためには少しばかりのプライバシーは侵害されてもそれは仕方がないことではないかと考えるようにしむけていかなければいけないのではないかと思っております。 <0091>=平野貞夫君= 立派な御回答をいただいてありがとうございます。私は全く同感でございます。  その趣旨の主張を私はここで何回も繰り返しておるところですが、率直に言いまして覚せい剤の問題は、もう既に日本民族は平成のアヘン戦争を仕掛けられている、別にどこかの国に仕掛けられているというんじゃなくて、実態はそういう国際的な犯罪組織によって仕掛けられているというふうに見るべきだと私は思います。  私も、通信傍受法に反対する方たちが主張するように基本的人権も大事だと思います。それから、国家社会というのは国民の基本的人権とそれから国民主権を守るためにあると思うんです。しかし、そういう現実の犯罪の凶悪化と組織化の中で国家社会が崩壊するかもしれない危険性があるのに、高校生の三割がその可能性があるというような状況の中で、私はやはり基本的人権というものに対する考え方の見直しが必要じゃないかと思います。  国民の共有財産としての基本的人権をより強くより正確、適切に守るためには、ある程度個人のプライバシーというものをそのコストとして提供していくんだ、それで自由な市民社会をつくるんだという新しい基本的人権の概念をつくっていくしかないということで恐らく意見は一致していると思います。  そこで、佐高公述人にお伺いします。  日ごろ私は佐高さんのテレビのお話とか著述を勉強させていただきまして、三分の一ぐらいは同意見でございますが、三分の二は多少立場が違います。  きょうのJNNの世論調査が上がったというのはひとえに佐高公述人の功績だと思うんですが、きょうの公述の中で佐高さん自身の意見がないんですよ。検事長の佐藤さんがこうだとか、浜四津さんの話がどうだとか、それから謝ってから審議すべきだという話が主体で、残念ながら、日ごろ尊敬している佐高さんに私はちょっとがっかりしているんです。  そこで、公明党を中心にこの通信傍受法というのは相当大幅、画期的な修正をしたんですが、いわゆる対象犯罪を限定したわけですが、その内容は御承知でございましょうね。 <0092>=公述人(佐高信君)= もちろん知っています。 <0093>=平野貞夫君= 実は、私も昨年一年各党交渉の中に入っていまして、村橋公述人がおっしゃったように、我々としてはできるだけの修正要求を貫いたつもりでございます。ただ一つ貫けなかったことがございまして、あれだけの内容修正をやれば法案の性格を変えているわけですから題名の修正をやれということを私は主張したんですが、これは最後にちょっとうやむやになった話でございます。  私自身は、政府原案と全く違う別の法律になったという性格づけをしております。その点、特に乱用の防止とかそういうことについて不満な部分は皆さん方にありましょうが二、三歩前進のものだったという認識をしていますが、それについてはどうお考えでしょうか。 <0094>=公述人(佐高信君)= さっきちょっと答え忘れましたけれども、最初に私の意見にはいろんなことで三割ぐらいは賛成だと。ということは、ちょっと私もまだ毒が足りないのかなという感じがいたします。  さっき義務と権利という話、ごもっともな、よく聞かれる意見なんですけれども、ありふれた意見ですね。だったら、法務省の則定さんは義務と権利をきちっとわきまえておられたのか、その辺の議論がなされていないから、それこそ教育の重要性というのが説かれるんじゃないかと。そこら辺は平野さんと私も一致するんだと思いますけれども、むしろ上がちゃんとせいという意見ですね。  それと、ぐるっと変わったんじゃないか、その変わったことが平野さんの本意だったかどうかは私はわかりませんけれども、これはマイナス八がマイナス六になったにすぎないというふうに認識しております。 <0095>=平野貞夫君= 村橋公述人にお聞きしますが、今の修正を評価する、お話の中には乱用の防止になるという一点も入っておるわけですが、もうちょっと具体的に御意見を伺えれば。 <0096>=公述人(村橋泰志君)= お答えいたします。  一番大きい点は、やはり対象犯罪が絞られた点だというふうに思います。  組織犯罪対策といたしましては、暴力団が関係するような犯罪をできるだけ広く挙げた方がいいと思います。しかし、そうすればやはり乱用の危険性がある。ですから、特に暴力団が関係することが多いと思われる四つの分野に絞られたということは、大いに意義があると評価しております。 <0097>=平野貞夫君= 終わります。 <0098>=中村敦夫君= 中村敦夫です。  鈴木りえこさんにまず御質問します。  青少年層に麻薬が拡大していることに対して一生懸命研究され、そして警告を発しているということに関しては心から敬意を表します。  私もこの問題は非常に関心がございます。私自身も、この問題について情報キャスターなどをやっておりましたからかなりの回数で取材しております。ロス市警に行き、ニューヨーク市警に行き、あるいは犯罪現場、薬物を精製している犯人側のところにまでも行き、あるいはシチリアにも行き、そしてチェンマイにも行くということで、内情については一般の方よりは詳しいかと思っております。  ところが、実をいいますと、我々が今検討しているのは組織的犯罪対策法案という三法があるわけです。その中の一つが盗聴法であって、もう一つはマネーロンダリングに関する法律、もう一つは裁判の手続の問題に関する法律、この三つの性格を異にした法律を一緒にして通そうということに一番大きな問題があるわけです。その中で、今まで審議してきた中心というのは最初の盗聴法なんです。  ですから、麻薬問題というのは、実はこの三法案が提出されてからかなりのキャンペーンということで出てきたんです。賛成派の方々が特にここを強調されている。ですから、麻薬の問題の重要性ということはもちろん認めるんですが、そこだけが大きく膨らみ過ぎて三つの異なる法案を正当化してしまう、あるいは盗聴法を正当化してしまうというところで非常に奇妙な進み方をしているわけです。私は、麻薬がそれだけ大事ならば、これに関するもう少しきちっとした専門的な法案でやらないと、組織的犯罪対策三法案ではほかに問題がたくさんあるものですからくくり切れない、はみ出してしまうというところがあるんです。  例えば、麻薬の問題にしますと、アメリカと日本の事情は全然違うわけです。これは薬が違います、日本はほとんど覚せい剤ですから。アメリカはあらゆる種類のものが南米を中心に入ってくるというところがあります。アメリカ社会の人種構成の複雑さというようなことがあって大変犯罪捜査が難しい状況にあり、そういう大義名分で盗聴法というものをかなり幅広い範囲の中で何十年もやってきたわけです。  ところが、現場では実際問題として、これによって麻薬犯罪が減っているということは実はないんです。むしろ、そうした電話盗聴ぐらいで捕まるようなものは本当の町のチンピラ、あなたが言うイラン人が売っているとか子供たちが買っているというレベルのところで捕まっているわけでして、要するに麻薬の組織を壊滅させる、あるいはその拡大を防ぐということには盗聴法だけで直接効果があるというような例証にはなっていないという現実があるわけです。  この法案自体はもっといろいろな問題を含んでいまして、憲法の問題、あるいは社会のライフスタイルが変わってしまうかもしれない、自由主義社会という根底が崩れてしまうかもしれない、あるいは産業が非常に窮屈になるのじゃないか、特に情報産業、たくさんの問題が審議されてきました。そして、法案にも非常にわかりにくい欠陥というのはたくさん指摘されてきたわけです。  ですから、あなたが心配する青少年の間の麻薬現象の拡大ということでもって盗聴法にも賛成だ、そしてそれを通すことによってほかの二法も通ってしまうということにはかなり矛盾があるのではないかと私は考えておるのですが、いかがですか。 <0099>=公述人(鈴木りえこ君)= マネーロンダリングにつきましては、これはやはり国連の方でも薬物対策として挙げていますけれども、供給と需要を削減すること、それから利益を削減するということで、マネーロンダリングという形で違法、不法な資金が浄化されて蓄積されているということですから、私は今回の問題、通信傍受法とマネーロンダリングということは一体になっても別におかしなことではないと思っております。三つの法案がより効果を上げるためには必要なものではないかと思っております。  それから、アメリカと日本の事情は違うというふうにおっしゃっておりましたが、本当に違うんですけれども、ただし、今まで覚せい剤を使っている国というのは日本がほとんどだったんですけれども、覚せい剤が天候に左右されずに化学的な材料だけで、技術も大した高度な技術が要らなくてつくれるということですから、今アメリカでもかなり覚せい剤が広がってきているというテレビの特集を私は何度か見ました。  これは、覚せい剤はやめられないのでどんどん人数がふえていくんです。これによって麻薬などの犯罪が少なくなっていることはないというふうにおっしゃっておりますけれども、国連薬物統制・犯罪防止室長のピノ・アルラッキさんという方が外交フォーラムという雑誌のことしの一月号に書いております。米国は六〇年代、七〇年代にかけて薬物消費量が増加して、今アメリカの政府筋が出しているのは、アメリカの十二歳以上の国民の三割以上が薬物乱用の経験があるということなんです。実際には薬物消費というのは、六〇年代、七〇年代は十二歳以上の人口の一四・一%だったけれども六・一%に半減しているということになっておりますから、アメリカはいろんな形で、通信傍受法のような、盗聴のような形でかなり犯罪を抑止したり捜査しておりますけれども、やはり私はこういったものの効果が出てきてこの数字になっているのではないかと思っております。  それから、自由主義社会や産業社会にとっての脅威だというようなことをおっしゃいましたけれども、アメリカでは非常な件数の通信傍受がなされておりまして、それに対していろいろな意見もあるんです。アメリカは御存じのように情報化の先端を行っておりまして、自由主義や産業が非常に今この時代に栄えております。今、中村先生がおっしゃったような形で、この法律を通すことによって自由主義社会や産業社会が不自由なことになるとかおかしなことになるということには、ちょっと私は疑問を感じております。  それから、先ほど私は教育の必要性とか権利とか責任について強調させていただきました。それについてありふれた意見だというようなことをおっしゃった方がいらっしゃいましたけれども、世界的に見てありふれたことがなされていないのが日本の実情で、それからしていかなければいけないと私は思っております。 <0100>=中村敦夫君= 日本の場合、覚せい剤が入ってくるというのは、外国から来るわけです。これをつくるときに悪臭が発生するわけです。ですから、狭い日本の中でつくるわけにはいかないということで、そういう経路になっていると思うんです。  ところが、横浜あたりにはコンテナが千個ぐらい着くとしても、検査できるものは一個なんです。ですから、九百九十九個はパスしてしまう。あるいは成田で通過して、時々捕まりますが、あれはほんの一部なんです。  ですから、要するに流入するところを水際で押さえるというような捜査体制とかそうした考え方というものをつくらない限り、電話でもってやるということの限界ですか、これは非常に限られているわけです。その何トンとかという量と、それで電話が役に立つかということとはギャップがあり過ぎる。そして、電話を使うことによってさっき述べたような、つまり一番心配しているのは乱用の問題なんです。というのは、一つの公的機関が絶対的にそれを独占してしまうということによって、どのぐらい歯どめがかかるのかというところが問題になって、ほかの部分が大変ダメージを受ける可能性があるということです。  ですから、それをてんびんにかけた場合、やはり麻薬問題に関しては、基本的に経路、捜査体制、そうしたものの再構築、もう少し行政もそのことに関してリアルな措置をとっていくということをまずやるべきだと私は考えているんですが、いかがですか。 <0101>=公述人(鈴木りえこ君)= 中村先生の御意見に私は全く反対しているわけではないんですけれども、おっしゃるとおりなところもあると思うんです。  通信傍受法がどれだけ効果があるかという御意見ですけれども、今洋上取引が多いので、それはやはり通信でお互いに密売人同士が情報を交換し合っていたりする場合もございますし、どれだけ効果があるのかということよりも、これによってどのぐらい効果を出すことができるのかというふうに考えていくべきだと思います。一〇〇%の効果を上げられるようなものはないと思うんです、どんな手段であっても。  ですけれども、私は、この法案というのはマイナスにはならないと思っております。それどころかやはりかなり効果があると思います。例えば実際に効果がないにしても、今暴力団の方たちがほとんど電話で情報交換しているということでしたが、彼らに不自由さを感じさせることもできると思います。それによってある程度の抑止になるということは事実だと思っております。  ですから、私は国会の皆様にお願いしたいのは、通信傍受法やマネーロンダリングの法律だけではなくて、この覚せい剤というものを撲滅するためにほかにもいろいろな手段を考えていただきたい、より効果のあるものが出てきたらそれをぜひ実施していただきたい。ただ、この時点でこの法案というのは私はかなり有効だと思っておりますので、通していただきたいと思っております。 <0102>=中村敦夫君= 今度は村橋さんにちょっとお聞きします。  結局、麻薬があるからこれはもう盗聴法だという、そういうキャンペーンが非常に強いんですが、それと同時に、法務省の答弁なんかを聞きますと、やっぱり暴力団を撲滅するというのが大きな目的だという答えが多いわけですね。  しかし、かつていわゆる暴力団新法、それが国会で余り議論されないまま通ってしまいました。それには今いろいろな欠陥があると思いますけれども、一つは、あの法案が通ってしまったために暴力団が非常に潜行するようになった、そしてテロ化していくという現象が実は起こってきたんです。それまでの警察の暴力団の捜査の仕方とどういうふうにそこのところが切れたのかはわかりませんが、情報が少なくなってきて無名化していくという現象が一つあるわけですけれども、この法律があればまたさらにそこが進んでしまうのではないかというふうな見方をするプロがかなりいるんですが、いかがでしょうか。 <0103>=公述人(村橋泰志君)= お答えいたします。  先ほどの中村先生の御指摘については、私は同感することが非常に多いわけです。つまり、この三法案には限界がある、だからこの組織犯罪対策についてもっと広くしかも深い対策が必要であろうということをおっしゃいました。そのとおりだと思います。先生を初め賢明な国会の先生方に、この三法にとどまらずもっと充実した法案を今後も御検討いただきたいというのが私のお願いでございます。  といいますのは、暴力団による表社会の汚染だとか麻薬あるいは覚せい剤の日本への流入、それは国際的なターゲットになっている、あるいは通信傍受法が仮にできましても、通信傍受法逃れの対策をいろいろ講じられる、こういうことは十分考えられるわけです。だからこそ、一つは通信傍受法を初めとする三法案をつくってその有力な手段に役立てる、万全ではないけれども、一つの方策としてとりあえず一歩を踏み出すということが必要だろうと思うわけです。  そして、暴対法に対する評価でございますけれども、暴対法ができたからかえって事態が悪化したというふうには考えません。暴対法効果というのがございまして、これによって暴力団は大きなダメージを受けております。そのためにこそ、あるいは潜行したり、場合によっては追い詰められてテロ化したりしております。だから、一つ対策をつくれば、一歩退いてもそれを守ろうという自己保身的な行動があります。それについて、では次をどうするのかというふうに前向きに考えるべきではないか、そう私は思います。 <0104>=中村敦夫君= まだまだたくさん聞きたかったんですが、時間がないので終わります。  ありがとうございました。 <0105>=委員長(荒木清寛君)= 以上で午前の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      ─────・─────    午後二時二分開会 <0106>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、公述人の方々から御意見を伺います。  午後、御出席をいただいております公述人の方々は、弁護士小口克巳君、中央大学総合政策学部教授宮澤浩一君及び富山大学経済学部教授小倉利丸君でございます。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  公述人の皆様方から忌憚のない御意見を伺いまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、小口公述人、宮澤公述人及び小倉公述人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  なお、公述人の意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、小口公述人からお願いいたします。小口公述人。 <0107>=公述人(小口克巳君)= 弁護士の小口でございます。  本日は意見を述べる機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。  私は、日本共産党の当時の国際部長であった現参議院議員緒方靖夫宅電話盗聴事件の裁判を担当した者としての経験から、今回の通信傍受法いわゆる盗聴法に反対する意見を述べます。私は、同時に日本弁護士連合会の三法案の対策本部のメンバーでもありますが、ここでの意見は個人の立場で述べるものです。  国会での審議で一層明らかになったことのようですが、本法案は適正な運用のためには警察の良識にまたねばならないということのようであります。その観点から、法案の問題をしっかり見据える必要があると考えます。  緒方宅盗聴事件の裁判は、緒方さん本人や家族の私的な会話が根こそぎ奪われたことを世に問い、我が国に法と正義が事実として存在することを正面から問うものでした。しかし、私たちの再三の問いかけに対して警察の対応は期待に添うものではなく、強大な権限と実力を持つ警察自身の中には、自浄作用は今のところ機能していないことが明らかになるにとどまりました。通信傍受法いわゆる盗聴法の審議に当たっては、警察に自浄作用がない中では、この法律の危険性は到底見過ごすことのできないものである、それほど大きなものであることを強調したいと思います。  緒方宅盗聴事件では、警察は盗聴の事実を頑強に認めないということ以上に日本の司法権に服さなかったことをまず強調します。裁判所は、行政の行き過ぎや過誤について審査し、それによって国民の人権を守る機関ですから、裁判所の審査に協力し、これに従うかどうかはとても重要な問題と言わなければなりません。  まず、捜査の段階です。東京地方裁判所八王子支部の裁判官による証拠保全の決定があり、長久保裁判官が現場に赴いて証拠保全の執行を行おうとしました。しかし、警察は、事もあろうにこれを実力で妨害したのです。警視庁町田警察署は、裁判所に一歩先んじて盗聴アジトの捜索差し押さえに着手していたのですけれども、現場立ち会いの管理人を、緒方議員の代理人の声をからした呼びかけを無視して、ワゴン車に閉じ込め、しかも間もなくいずれかに連れ去ってしまったのです。警察では裁判所が来ているとは知らなかったと言っているようですが、とんでもない無法行為です。これは、緒方議員本人、私どもの同僚の弁護士も立ち会って確認していることです。  このほかにも、証拠隠しのための緒方宅盗聴に使用した銀行口座の解約、NTTから出された告訴の受理を頑として拒んだことなど、真相究明の妨害についてあわせて指摘しておかなければなりません。  私自身が現に裁判所で現認していることは、緒方宅電話盗聴事件の民事損害賠償裁判での法廷での出来事です。  まず、主張のやりとりの段階で、原告である緒方側が主張している事実について知らぬ存ぜぬを繰り返したのが国側、つまり警察側の対応でした。具体的な反論は一切しないという態度に終始したのです。これに対して裁判所は、被告らに対し、これは国・警察あるいは警察官個人も含みますが、事件の存在を否認するだけでなく、次回までに反論、主張するように求めたのです。これは裁判としては非常に異例の注意でした。それにもかかわらず具体的な反論は何一つない、こういう状況でした。  次に、証人尋問の段階ですが、実行犯として処分を受けた警察官は一向に裁判に出頭しようとしませんでした。出頭しない理由について、呼び出しに応じない正当の理由については主張も立証もしない、要するに出たくないから出ないというのが警察官の態度だったんです。裁判官の再三の勧告にもかかわらず、事実を明らかにする手続である尋問の呼び出しに応じないというのが警察官の態度でした。これは一個人としての警察官の態度というよりは、組織としての警察の意思表示と見るほかありません。警察が組織として個々の警察官に出頭するように指示すれば、このような不出頭は絶対にあり得ないと言わなければならないのです。  実行犯と目された警察官の中でただ一人出頭したのが林敬二という元警察官でした。しかも、それは警察官退職後ですから、正確に言えば実行犯の警察官は現職警察官としては法廷に出頭しなかったということになります。彼は、裁判の中でありとあらゆる質問に対して証言拒否を繰り返しました。答えたくないから答えないのですというのが彼の言い分でした。裁判官が、民事訴訟法上不利益な扱いを受けることを承知の上で答えないのかという質問をしたのに対しても、そうだとうそぶくありさまでした。  裁判所の質問はどれも強い調子のものでしたけれども、無実であるなら積極的に弁明せよと再三求めました。例えば、一方ではいろいろ戒告処分まで受けたわけだから、それについてどういう陳述をしてそういう結果になったのか、あなたとしてはむしろこの場をかりて自分の潔白を証明すべきじゃないですかといった問いかけが次々に続いたんです。これに対して林敬二は、私がどのように思うかについては申し上げたくありません、お答えしたくありませんなどと繰り返したのです。  裁判所の事実究明に真っ向から反抗したことに筆跡の比較問題もあります。盗聴の資金に関係するものとして銀行口座の手続書類が示されました。裁判所の判断で林敬二に法廷での筆記が命じられたんです。ところが、これに頑として応じません。書きたくない、必要ないと言うのです。裁判長からは次のように述べられました。あなたが言っていることが正しいかどうかを判断するために必要ですから書いてみてください、これに対しても書きませんと言って裁判所の判断に真っ向から反抗したんです。  裁判所が事実究明をしようとしても、どんなに不利になっても、警察側からは一切協力を拒否するというのが一貫した態度だったと言ってよいでしょう。  次に、私は、検察庁の対応についても一言述べなくてはなりません。確かに検察庁は捜査に熱心で、現職警察官関与の動かしがたい証拠をつかみ、犯人を裁判にかけるところまで捜査を尽くしました。しかし、それ以上進まなかったのです。上層部には手をつけず、末端の警察官も結局は裁判にかけなかったのです。しかも、それは二回に及んでいます。国民を納得させるものではありません。  資料としてお配りした新聞があります。これは一九八八年六月十七日付の朝日新聞の連載記事です。この記事は、元検事総長であった伊藤栄樹氏が、本件盗聴事件について、検察庁として警察との関係の悪化を恐れて刑事訴追を断念したことを示すものと言えます。形式はおとぎ話ですけれども、状況から見てそういう記事に相違ないものです。ぜひよくごらんいただきたいものと思います。  国会の審議の中で法務省は、盗聴は未遂であったとの主張をしているようですが、信じがたい答弁と私は思います。東京高等裁判所は、判決でも明確に、継続してこれら、つまり緒方宅の電話の通話ですが、これらが盗聴にさらされ、さらには録音されていたことが推認されるとはっきり述べています。これについてはさまざまな証拠があり、未遂と言うのは非常に理解に苦しみます。大変多くの証拠があるのです。  警察の問題はこれにとどまりません。裁判の過程で、警察庁は以前にも盗聴器を作製、使用していたことがわかりました。リオン株式会社に勤務していた丸竹洋三さんの証言が得られたのです。丸竹洋三さんは、日本共産党の山口県委員会などの事務所から発見された盗聴器を作製したことを話してくれました。これは警察庁の依頼の仕事だったのです。丸竹さんは、日本共産党が保管していた盗聴器を私たちが持参したところ、目を輝かせて、まるで幼なじみに出会ったようですと述べ、みずからが作製に当たったことを認めてくれました。つまり、警察は昭和三十年代から違法な盗聴をして、機材も保有していたわけです。しかも、多くの台数を注文していたのです。  こうした経緯の中で、警察によるあらゆる否定、抵抗にもかかわらず、裁判の過程で警察の組織的な犯行が立証されました。高等裁判所の判決も、警察による組織的職務行為として断罪しています。  判決は、情報収集を末端の警察官が職務と無関係に行うことは通常あり得ないとした上で、神奈川県警察本部警備部公安第一課所属の警察官である第一審被告個人三名が、これは現職警察官の三名ですが、いずれも第一審被告県の職務として行ったものと認定しているのです。司法権が警察による電話盗聴、しかも組織的犯行を明確に認めました。  国会での警察幹部の答弁については、私の意見陳述ではくどくど繰り返しません。要するに、警察としては、警察による電話盗聴は一切ないとの態度をとっているようです。  警察の違法行為が明らかになったときの対処がこの法案の当否を判断する重要な試金石であると考えます。第一に重要なのは違法盗聴に関する全容の解明、第二は違法盗聴に関する責任の明確化、そして第三に違法盗聴の再発の防止策の確立、少なくともこれらは絶対に避けて通れない課題だと思います。  緒方宅盗聴事件では、不祥事の発生の事実さえ警察は認めなかったのです。本件では、被害者緒方靖夫議員の執念と多くの人の必死の努力で警察の違法行為がようやく明るみに出ました。しかし、大変な労力と時間を要しました。また、丸竹さんの証言によって、三十年の年月を隔ててようやく明るみに出た別の事実もありました。それでも否定を続けるのが警察の態度です。  重ねて強調したいのは、警察は検察庁にも裁判所にも協力しなかったこと、しかも裁判所に対して反抗的な態度をとり、司法の裁きに服することはなかったことです。確かに賠償金の支払いはしましたよ。しかし、真相の公表や緒方さんへの謝罪はありませんでした。支払いをしたのは、ただ判決の強制執行を避けるためだけとしか思えないのです。司法権に服さないことをはっきりと拒絶している状態のまま、警察に危険きわまりない盗聴、通信傍受の権限を与えるのは反対しないわけにはいきません。  最後に、日本弁護士連合会あるいはさまざまな法律家団体がこぞって通信傍受法、いわゆる盗聴法に対し強い疑問や反対の見解を表明していることを強調したいと考えます。  日本弁護士連合会でも、本年六月一日には小堀連合会長の声明が重ねて出されました。今回の修正案に対して、問題点についての議論が実質的になされていない、人権侵害の危険はぬぐい切れないとして、刑事法制上の問題点や立法の当否に踏み込んだ議論がなされるよう重ねて強く求めています。  通信傍受の対象犯罪を限定しても、乱用の歯どめがなければ無意味です。また、傍受対象が組織犯罪だけに限定されず、将来の犯罪も対象としていることも重大問題です。令状に記載されていない別件事件の傍受も認めています。  傍受の結果は、犯罪に関係がないとされた通話については傍受された人には通知されません。これでは権利回復の機会がないではないですか。  さらに、立会人が犯罪の被疑事実すら知らされず、通話内容も聞くことができません。切断権もないのです。これでは立ち会いも大した意味を持たないではありませんか。  そして、最大の問題が、適正な運用が、担当した警察官の運用に全面的に依存していることです。作成した録音等の記録が適正に処理されるのでしょうか。警察部内で間違った取り扱いがなされたとき、これがどのように公表され、正され、責任者の処分がなされるのでしょうか。その場には立会人もいないのです。要するに、国民から見えない密室の中でひたすら適正に行われることを祈るというべき構造が厳然としてあります。そして、緒方宅盗聴事件では一人の処罰者も出なかったのです、実際に。  戦後の刑事司法の原則は、刑事手続において、過去発生した犯罪についての捜査と将来起こるかもしれない犯罪についての情報収集は厳然と峻別して、強制捜査は既に発生した犯罪に限り、しかも要件を厳格に定めて、さらには国民のチェックが可能な形態で行うように工夫しています。それが原則でした。これは歴史の教訓であり、人類の知恵というべきものです。  通信傍受法、いわゆる盗聴法は、将来の犯罪について、しかも要件の厳格性についても疑問がある、そういう問題がある。さらに、国民によるチェックが極めて困難という致命的な欠陥を持っていると考えます。特に、将来の犯罪についての情報収集、将来の通話は限定性がないなどという治癒しがたい問題点を持っています。従来の刑事法の原則を踏み外すことが犯罪捜査の名のもとに巨大な人権侵害を生み出すもとになることを恐れます。法律家団体、多くの刑事法学者がこぞって強い疑問や強い反対の意思を表明しているのは当然です。  参議院の良識を示されることを切に求めて、法案反対の立場の意見陳述とします。  ありがとうございました。 <0108>=委員長(荒木清寛君)= 次に、宮澤公述人にお願いいたします。宮澤公述人。 <0109>=公述人(宮澤浩一君)= 私は、一九六〇年に慶應義塾大学に奉職いたしまして、その後、比較的若いときにドイツ留学をいたしました。まず、ドイツ刑事法学、刑事法制の研究に打ち込み、後、オーストリア、ドイツ圏スイスの刑事法制の研究に従事し、今日に至っています。その間、国際犯罪学会の副会長、そのほか、ドイツ語圏刑事法学関連の多くの学会のメンバーとなり、それぞれの国の刑法学、特に刑事立法の動向を正確に把握する努力をしております。これらの個人的な研究努力に基づき、今回問題となっている我が国の組織犯罪対策法について、賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。  欧米先進諸国の刑事立法は、国際的な組織犯罪対策の決め手の一つとされる資金の洗浄とそれに関連する金融関係者に対する法的義務づけ、例えば新たな預金口座を開こうとする者の身元の確認、捜査機関への疑わしい取引の通報、取引関係の書類の保管等の義務づけ、さらに違法に取得した利得の根こそぎの没収、剥奪等を内容とする実体法規定の新設と整備のほか、国内の犯罪組織、国際的な組織犯罪の関係者が電話、インターネット等、その不法行為を効果的に犯すために悪用するコミュニケーション手段を乱用させないための通信傍受に関する手続法の規定を整備し終わっております。  これらの立法動向は、実はアメリカの実務からの強い要請により、まず一九八〇年代の初めに、スイスの銀行のインサイダー取引に関連して、アメリカの証券取引委員会から厳しい批判が提示されました。それによってインサイダー取引の規定が入ったわけであります。  一九八〇年代後半になりますと、ピッツァ・コネクション、レバノン・コネクションと称せられる大がかりな麻薬密売組織が摘発され、不法に獲得された資金がカリブ海諸国の銀行からスイスの銀行口座に送金され、換金されるという事実が明るみに出たために、アメリカの圧力で、スイスの政府・議会関係者は資金洗浄の処罰規定と関連諸法規の整備を行ったのであります。  国際金融の趨勢として、チューリヒの金融市場が刑法上の規制の網で保護されれば、フランクフルト、次いでウィーンの金融市場も刑法上の保護を必要とするのは当然であります。ドイツ語圏諸国の刑事立法が相次いで資金の洗浄と関連法規の整備に努め、実現したのは必然の動きであると思います。  ドイツとオーストリアでは、さらに、麻薬の取引等々重大犯罪を犯している犯罪者が潜伏している疑いのある住居内に、内部告発者や覆面捜査官がひそかに超小型マイクなどの技術的手段を設置し、屋内で交わされている会話を屋外で傍受する方法を刑事訴訟法に導入する法的対応を終えています。  ドイツでは、長年にわたる反対論を徹底して議論し、社会民主党のイニシアチブも得て、ドイツ基本法の住居の不可侵(十三条)を改正し、屋内の会話の傍受の規定を刑事訴訟法百c条、百d条として導入いたしました。  我が国と比べると、組織犯罪集団やそれらの構成員の実数などはるかに少ないこれらの国のいずれにおいても、最近数年間に組織犯罪の実態に関する実証研究が次々と公刊され、社会のあらゆる分野に対して組織犯罪の浸透が著しく、事は経済界のみならず、地方政界、ひいては中央政界にもその影響が見られると指摘されています。組織犯罪関連の本は、一九七〇年代を加えると、現在では八十冊を超えているのであります。これらの国々では、国際的組織犯罪対策の次の目標として、国際的な汚職防止へと向かっております。  これらの動きと比べると、我が国の対応はいかにも遅過ぎると思います。日本のマフィア、暴力団が金融界を利用して莫大な不正利益を上げ、バブル経済崩壊後は不良債権問題の陰に暗躍しているという事実は、欧米各方面で公然の秘密として受け取られております。  我が国と比べて市民の人権意識がはるかに高く、しかも権力国家のナチス、ファシストの統治下にあって現実に人権の抑圧を経験したヨーロッパの多くの国で通信の傍受が法律的に認められている現実を直視すべきであると思います。  我が国では、組織犯罪対策法との関連で、ドイツの立法例が参考に供せられました。ただ、ドイツの場合、電話の傍受に関する規定は、一九七〇年代にドイツ赤軍等の過激派によってテロが続発いたしました。したがって、国家の中枢を脅かすこれらの行為に対抗する手段として導入された経緯があります。当時は、内乱、反逆、民主的法治国家を危険に陥れる罪等、重大な犯罪の正犯または共犯を犯した者がいるとの疑いのある事実の解明に関して、一定の条件のもとで電話の傍受を許したのであります。  一九九二年、組織犯罪対策法の成立に当たり、百a条の規定に手を加えました。このような成立事情が背景にありますので、傍受の許されない事例は特に明示されていません。  ただ、理論的に適用を除外する事例として、国会議員、州議会議員の議会内免責特権、不逮捕等の特権(基本法四十六条、四十七条)、刑事弁護人の被疑者との交通権(ドイツ刑事訴訟法百四十八条)から解釈によって導き出されております。  新設の住居内の会話の傍受については、その話の内容が第三者に対して語られるものではありませんから、それを超小型のマイクで傍受するというのは基本的人権の根幹にかかわりますから、ドイツ刑事訴訟法百d条の三項は、同法五十三条一項に掲げる証言拒否権者に対して、会話の傍受を許さないと規定しております。それらの中に、日刊の印刷物あるいは放送の準備等々に協力する者、つまりマスコミ関係者も列挙されております。  我が国では、電話の傍受に反対する論者の中で、この傍受禁止の対象者にマスコミ関係者を加えるべきであるという主張をし、九八年四月の立法例を挙げている者がおりますけれども、それはおかしいのでありまして、百c条に言う技術的手段には電話は入りません。  もし、他の立法例として参考になるものを探すとすれば、オーストリア刑事訴訟法百四十九a条一項二号b、百五十二条一項四号、五号でありまして、電話の傍受対象者からの除外規定に、弁護人、公証人、経済管財人、精神科の医師、精神療法家、心理学者、保護観察関係者が挙がっております。  我が国の現行刑法は、御存じのとおりフランス刑法の影響でできました旧刑法を改正して、一八七〇年のドイツ帝国刑法の影響を受けたものとして成立しました。刑法理論もドイツ刑法学の影響下にあります。しかし、我が国では、ドイツ刑法と異なり、刑法の改正が戦前、戦後を通じてわずか十三回であります。ドイツの場合、百五十回以上の大小さまざまな改正を経ています。  ドイツを初めとするヨーロッパ刑法では、テレコミュニケーション、コンピューター、インターネット等の発達により、国境を越える犯罪、国境が無意味になる犯罪にいかに対処するかが研究者、実務家の対抗すべき難問になっています。  また、ヨーロッパでは、ヨーロッパ連合の経済的、政治的統合とともに、今や法律の統合が進み、ヨーロッパ刑法典をつくろうという動きも始まっております。  その一例として、一九九七年に欧州共同体の財政的利益の刑法上の保護のためのコルプス・ユリス、略称コルプス・ユリスが公刊され、本年三月と五月に加盟十五カ国の専門家が集まって、この草案を洗練するために検討が始まっております。  このコルプス・ユリスの実体法の部の第七条に資金の洗浄と盗品の罪が規定され、手続法九条に、構成国の法執行機関は電話傍受などの強制捜査に着手したとき、EU検察官、これが新しくできるわけでありますが、この検察官に対して通知する義務を負うとしております。これらの欧州共同体の動きというものを我々はもう少ししっかりと勉強する必要があると思います。  国際的な犯罪組織集団を含む組織犯罪対策として、最低限、電話の傍受を対抗手段として用いなくて、果たして問題はないのか。  欧州諸国でも、電話の傍受は国民の基本的人権とかかわりがあるとする認識は共通しています。それだからこそ、それの使用に慎重を期するための歯どめの規定を置いているわけであります。  我が国の一部では、憲法を手がかりにして一切の傍受を法律上認めない、こういうふうに主張しております。しかし、実際は、傍受は野放しでありまして、国民の通信の秘密はあってなきがごとき状態であります。  電話の傍受に関する絶対的な反対論というのは果たして可能なのかという点を、私の友人で法情報学の分野の世界的な第一人者であるヴュルツブルク大学のウルリッヒ・ジーバー教授にコメントを求めました。  国際的なコミュニケーションを多用している日本の現状から考えて、まことに理解に苦しむ。通信の傍受は、ヨーロッパのすべての国でもアメリカでも、刑事訴追機関の介入手段として自明の措置となっている。この法的対応は、たとえ犯人たちが回避しようとしたりカムフラージュしたりして免れようとしてもむだなほど有効であることが明らかである。国家が犯罪防止のための有効な手段を断念するだけにはとどまらない。この刑事訴訟法上の道具を完全に断念することは、とりもなおさず、国民のための国家の保護義務を怠ることであると思う。通信の秘密を論拠として電話の傍受を完全に否定するという議論には説得力がないという回答がありました。  いずれにしても、こういう欧米の状況、そして我が国の法律にこういう通信の秘密を侵す、つまり権限がないのに平気でそういうようなものを侵す、しかも、御存じと思いますけれども、携帯電話でヨーロッパから日本へ、アメリカから日本へ、日本からアメリカやヨーロッパへ連絡ができる、そういう御時世でありまして、そういうような状況を考えますと、この我が国の規制のない状態というのはまことに危険であります。国民にとってこれは非常に好ましくない事態であるというのが私の基本的な立場であります。  まだいろいろ申し上げたいことがございますけれども、それは質問の時間に回したいと思います。  ありがとうございました。 <0110>=委員長(荒木清寛君)= 次に、小倉公述人にお願いいたします。小倉公述人。 <0111>=公述人(小倉利丸君)= 小倉です。  時間がありませんので、申し上げたいことを端的にお話ししたいと思います。一応、お手元にレジュメをお配りしてあると思います。私は、今までインターネットのプライバシー問題を中心にして市民運動として活動もしてきた者です。  インターネットの極めて重要な社会的、経済的な役割ということから見て、今回の盗聴法の制定は、インターネットに対する非常に深刻なプライバシー侵害を引き起こすものだというふうに判断しております。お手元の資料にありますように、プライバシー侵害を憂慮するインターネットの関係者の人たちから、今回の盗聴法に関してもその制定を再検討すべきであるという声明が出されているわけです。この委員会でもインターネットに関してかなりいろいろ議論がなされているようですし、私も昨日傍聴しまして、インターネットについての議論を伺いました。  昨日の議論をある程度踏まえながら、インターネットに関してこの委員会で議論されていることの中で、私自身は技術の専門家ではありませんので必ずしも正確な議論はできませんが、どう考えてもこれは立法の趣旨に合わない、合わないだけではなくて、そもそもおかしい、矛盾だらけであるという点をまずお話ししたいと思います。  一つは、これは政府側の答弁として繰り返し言われていることですけれども、インターネットの電子メールの盗聴というのはPOPサーバーでやるんだ、それ以外のところではやらないということを繰り返しおっしゃっていました。したがって、それ以外のところでやるかどうかという話はさておくとして、ではPOPサーバーでやるというのは一体どういうことなのか。私は、結論としていえば、POPサーバーでメールの盗聴をやるということは、犯罪と全く関係のない、しかも被疑者それから令状に記載されている符号の関係者とも全く関係のない人たちのメールをすべて読んでしまうものであるというふうに思うわけです。  幾つかの例を昨日も政府側の答弁の中で出されていました。例えば、薬物の密輸のための船の手配というのは盗聴ができるというわけです。そうすると、電子メールのPOPサーバーでの盗聴を前提にした場合には、盗聴対象者というのは、薬物を密輸しようとしている犯罪組織の方ではなくて、船のチャーター会社あるいは船会社の電子メールを待ち受けてその電子メールに対して犯罪組織の側から何らかの問い合わせなり申し込みなりがあったものを捕捉していくというしかないわけです。そうなると、結局その船会社というのは一般の会社ですから、そのターゲットとなる人からだけメールが来るわけではなくて、さまざまな人たちからメールが来ます。問い合わせが来たり、予約が入るでしょう。それらをすべて捕捉しなければならないということになります。同じような例というのは幾らでもあって、それは航空会社の場合だって同じでしょう。  要するに、全く無関係の人たちのメールを読まざるを得ないというわけです。しかも、スポットモニタリングが不可能ですから、今言ったようなことはかなり広範囲に行われざるを得ないですし、犯罪者はもちろん実名なんか使わないでしょうし、薬物輸入のためなどというようなことで船をチャーターしたりもしないでしょう。そうすると、一般の顧客も含めてだれを疑っていいのか、だれが疑いのない人なのかなどということは全くわからないわけです。それを明らかにしていくのが捜査の過程だということになってしまいますので、結局その捜査の中ですべてのものが使われていく、その中で、該当性判断というようなことで、少しずつこれはシロ、これはクロというふうに分けていくという話にならざるを得ないのではないかと思います。  さらに、昨日の政府側の答弁で、例えばその通知を全員に知らせるということは、あの人は警察の捜査を受けているんだという知られなくてもいいようなことを知人とか友人に知られてしまって、むしろ被疑者のプライバシーの侵害になりかねないというような発言があったと思います。  しかし、今申し上げたようなPOPを盗聴するという場合には、要するに船会社の顧客を盗聴するわけですから、犯罪とは全く関係のない人たちを盗聴するということです。これはプライバシーの侵害以外の何物でもないのではないでしょうか。この点をどういうふうにお考えなのかというのが私には全くわからないということです。  もしそういう形で船会社のメールサーバーを待ち受けてそこに入ってくるメールを読むということは、余りにもプライバシーの侵害になるのでやれない、あるいはそれは違法だということであるとすれば、その船の手配を通信傍受して捕捉するというのは一体どうやるのか。もちろん、船の手配をする方の動きというのはわからないわけです。こういうような極めて不十分な、ちゃんと考えたとは余り言えないような形の議論というのが昨日なされたと思います。  それから、もう一つ非常に重要なことですけれども、報道機関はいわゆる盗聴の対象にはしませんというふうにおっしゃいましたが、それは電子メールの場合にはできません。必ず盗聴の対象になります。なぜならば、つまりPOPで受信メールを捕捉するということですので、結局のところ、報道機関からターゲットになった人に来た問い合わせはすべて捕捉されてしまうということです。電話の場合であれば、スポットモニタリングで、これは報道機関だからカットしましょうということをやるんだとおっしゃいましたけれども、電子メールではスポットモニタリングはききませんのですべて捕捉する。しかも、捕捉した段階ではそれは読めない。読めないのは暗号に準ずるのでディスプレーに表示させるということになります。要するに、それは読むということです。読んだ上で傍受記録に載せるか載せないかを決めていくことになっていくという話です。  そうすると、結局、インターネットあるいは電子メールの場合には、捜査機関は報道機関あるいはジャーナリストのメールをすべて読むあるいは読まざるを得ないんだというわけです。これは理屈の上からいえば当たり前のことであって、なぜそのような当たり前のことがありながら、報道機関は盗聴されないんだというような話で済んでしまったのかというのが私にはよくわかりません。  結局のところ、現行の法案では、盗聴というのは、一般に捜査員が聞き込みをしたり、あるいは被疑者ではない、被疑者と接触するであろう不特定の人たちの寝室だとか個室などのプライバシーが守られるべき場所までのぞき見るようなことに近いことを実際に通信の中でやるに等しいような話にならざるを得ないのではないかというふうに思います。こういうふうな前提の中で裁判所の令状も出していいということになれば、裁判所のチェックなどということはそもそもあり得ないという話になります。そのようなことでよろしいのでしょうかというのが最初の電子メールについて私の言いたいことです。  それ以外に、この電子メールに関してはそもそもPOPサーバーでやるという話がありますが、POPサーバーというのは一体何かということの定義がさっぱりわかりません。POPサーバーの定義というのはいろいろあり得て、POPサーバーをプログラムとして見るのか、それともユーザーにプロトコルでメールを提供するもの全体を指すということなのか、それでも違うわけです。その辺のことが全くはっきりしないということがあります。それ以外に、POPサーバーで盗聴してしまうとターゲットにすべて知られてしまうというようなこともあり得るわけで、その辺の議論もきちんとなされていないというふうに思います。  それから、これは電子メールのことではなくて携帯電話に関することですが、携帯電話に関して政府あるいは捜査機関が技術協力をして盗聴できるような対策をとるという話がありました。もしそうだとすれば、日本の政府や日本の警察を信用しているのが地球上にいるすべての人たちであるというのであればそれでいいでしょう。しかし、そういうわけではないわけです。日本の企業あるいは日本の通信事業者と何らかの契約をする、あるいはそこの機材やハードウエアを輸入する、あるいは使う。そうすると、それはもしかしたら日本の警察や日本の政府に盗聴されてしまうような何らかのプログラムが組み込まれているかもしれないというような疑いが持たれるだけで、日本の通信事業の国際的な競争力は明らかに落ちるというふうに言えると思います。  したがって、この間のこの委員会での、警察が民間の通信事業者と協力をしてプログラムの開発をするというような発言自体が、極めて日本の通信事業者の信用を落としたことになるというふうに私は判断しています。そのような民間の事業者に対して、公的な機関がプログラムであるとか設計の仕様であるとかといったようなことに口出しすべきではないというふうに考えます。  それから、論点の三番目ですけれども、何で昨日急に出てきたのかというか、もっと前に議論されているのではないかと私は思ったんですけれども、実際、この法案の趣旨というものがどういうものであるのかということについて、本当にきちんとした合意があるのだろうかということです。  昨日のこの委員会で、自由党党首の小沢さんが、実はこの組織犯罪対策三法案などは国家的な危機管理に使うものであって、いわゆる組織犯罪であるとかといったようなものだけに使うものではないといったような趣旨の発言を公の席でしたというふうに言われました。その点について、政府側は承知していないというような答弁でした。しかしこれは、きのう、おとといの話ではありません。もう既にかなり前の話だと思います。政府あるいは与党の中で、この法案に関して一体どういう合意があるのかさっぱりわからないということじゃないですか。  もし、小沢さんの発言が間違いである、そしてきのうの法務省の発言の方が正しいということであるならば、そのように自由党の委員の方はきちんと確認をとっていただきたい。逆に、小沢さんの発言が正しいのである、それがまさにこの法案の趣旨であるということであるならば、法務省のきのうの答弁は撤回していただきたい。何しろ、どちらにしてもこれは矛盾するわけですから、きちんとしたそこら辺の議論がない限りは、これ以上この法案の個々の条文について議論をしても意味がないというふうに私は思います。  どう議論しても、結局法案ができてしまった後に、実はこれは国家の危機管理のために使うのであるというふうに方針を転換されたとしても、この法案の条文それ自体からいえば、今までさまざまな反対の議論があったように、いろいろな使われ方ができてしまうわけです。いわゆる狭い意味での犯罪捜査だけではなくて、当然監視のための盗聴もできる、そういうような内容を含んでいるということがあるわけです。  与党の中の合意、そして実際にどういう趣旨なのかということについての合意を、少なくとも与党とそれからこの委員会でははっきりと確認をしておくということが必要だというふうに私は思います。  結論の話を少しだけさせてください。  憲法違反の立法の権限というのは、私は国会にはあるとは思っておりません。余りにも欠陥が多過ぎます。審議されていないことも多過ぎると思います。少なくとも、法務委員会の委員全員が電話、インターネットについて審議に必要な知識を持って議論しなければならないというふうに考えます。そういう意味でも、やはり通信事業者での調査であるとか、それから場合によっては海外の盗聴捜査の実態などについても現地調査をするなど、慎重な審議というものが必要