第145回国会 法務委員会 第24号 1999年08月03日       (1999年08月23日 15:00 登録) 平成十一年八月三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  七月二十九日     辞任         補欠選任      岸  宏一君     有馬 朗人君      佐々木知子君     竹山  裕君      佐藤 昭郎君     井上  裕君      内藤 正光君     角田 義一君  七月三十日     辞任         補欠選任      森下 博之君     阿部 正俊君  八月二日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     佐々木知子君      井上  裕君     吉川 芳男君      角田 義一君     内藤 正光君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 佐々木知子君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 内藤 正光君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        警察庁刑事局長  林  則清君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付)     ───────────── <0001>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る七月二十九日、岸宏一君、佐藤昭郎君及び佐々木知子君が委員を辞任され、その補欠として、有馬朗人君、井上裕君及び竹山裕君が選任されました。  また、去る七月三十日、森下博之君が委員を辞任され、その補欠として阿部正俊君が選任されました。  また、昨二日、有馬朗人君及び井上裕君が委員を辞任され、その補欠として佐々木知子君及び吉川芳男君が選任されました。     ───────────── <0002>=委員長(荒木清寛君)= 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0003>=佐々木知子君= 自民党の佐々木知子でございます。  まず、通信傍受法案につきまして、警察庁に一点お伺いしたいと思います。  本法案では、傍受令状に記載された通信に該当するかどうかが明らかでない場合、その該当性を判断するため、必要最小限度の範囲に限って傍受ができることとされております。この実施方法としてスポットモニタリングという方法がとられるとこれまで説明されてまいりましたが、具体的にはどのように行われるのでしょうか。この点の運用基準やマニュアル等を定める御予定なのかどうか、その点についてお伺いいたします。 <0004>=政府委員(林則清君)= 御指摘のように、必要な最小限度の範囲に限って該当性判断のための傍受を行うためにスポットモニタリングという方法、これが一番いいのではないかというふうに考えております。  その具体的な方法いかんということでございますが、若干御説明させていただきますと、例えば対象とする特定の電話番号あてに電話がかかってまいりました。あるいはその対象とする当該電話から電話がかけられました。そういうときには、その通話がこの法に言う傍受すべき通信、つまり犯罪実行関連等の通信に該当するかどうか明らかでなければ、当該通話の最初の部分だけを傍受して、犯罪実行関連等の通信に該当するかどうかを冒頭だけを聞いて判断するということになるわけであります。  非常に短ければ短いほどいいわけですが、一定の時間傍受した結果、それが犯罪実行関連等の通信に該当するものと思料されない、違うというときには直ちに傍受を中断する。それが法で言う犯罪実行関連等の通信であるということであれば、これは傍受を継続するということになるわけでありますが、これは違うということで一たん傍受を中断しましたが、その間ずっと通話が行われておるという場合には、場合によったら話題なり通話の当事者が変わっておる可能性もないとは言えないわけでありまして、その中では犯罪実行関連通信等に該当するに至っている可能性も生じておる。そうなりますと、該当性の有無というものが不明になりますので、そのときにはまた再度、それこそスポットで聞いてみる、こういうことになるわけであります。  犯罪実行関連通信等に該当することから傍受を実は継続しておった場合でも、そこからその話が変わって犯罪実行関連通信等に該当しなくなった場合には、これは当然傍受をやめるということになるわけであります。当該通話が継続する限り、犯罪実行関連通信等に該当するか否かを判断するためにこのような傍受をちょっと聞いてみる。該当するかどうかを判断して、すれば聞く、していないとなったらすぐ切るということを繰り返すということになると考えます。  警察といたしましては、この法案の本来の規定の趣旨でありますとか国会でいろいろと御議論がなされたところを十分踏まえまして、このようなスポットモニタリングの具体的な方法などにつきましても、国家公安委員会規則あるいは通達等によって厳格に規定しまして、都道府県警察に対して周知徹底し、そしてまた指導もしてまいりたい、そういうふうに考えております。 <0005>=佐々木知子君= スポットモニタリングに関連いたしまして、先ほども警察庁から御回答があったようでございますけれども、ある通話の中で傍受すべき通信があった場合、その通話についてはその後も継続的に傍受するのか、それともまたスポットモニタリングに戻るのか、今度は法務省の方にお伺いしたいと存じます。 <0006>=政府委員(松尾邦弘君)= 今、林局長の答弁にもありましたけれども、傍受すべき通信については、それが内容的に継続している限りは傍受をするということになります。  ただ、今も話がありましたが、その中で話題が変わることがあります。それで、傍受すべき通信に当たらない会話になりました場合にはこれを一時中断することになります。ただ、一つの通話の中で犯罪に関連する通話が行われたということになりますと、その後中断いたしましても犯罪に関連する通話が再び行われる蓋然性は非常に高いということが言えると思いますので、スポットの時間といいますか、それも比較的短い時間にしてもう一度聞いてみるということで、これは関連があればそのまま今度はまた継続するというような形で傍受が行われていくものと考えております。 <0007>=佐々木知子君= 消去義務に関してでございますけれども、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」に及びますけれども、内容を要約したメモには及ばないことになっております。ただ、このメモにつきましてはその内容を伝達、使用することは禁止されておりますが、使用禁止規定を実効あるものとするために、メモについても消去するような運用を検討すべきではないでしょうか。 <0008>=政府委員(松尾邦弘君)= 御指摘のとおり、法案の第二十二条第四項の消去義務は、「複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」を対象としております。内容を要約したようなメモにはこれは及ばないということになります。  このようなメモを含めまして、傍受記録に記録された通信以外の通信については、その内容を他人に知らせ、または使用することが禁止されております。これは法案の二十二条第五項でございます。これを怠った場合は監督者を含め懲戒処分の対象となり、内容の漏えいに及んだような場合は通信の秘密を侵害する罪が成立するということになります。運用上、原則としてこのようなメモは作成しないにこしたことはありませんので、まず作成しないように指導する。仮に何らかの事情で作成した場合にも、捜査機関の組織としての適切な監督によりまして、これを速やかに廃棄するよう運用を徹底していきたいと考えております。 <0009>=佐々木知子君= 次に、公衆電話でございますけれども、公衆電話についてはだれが利用するかわからず、不特定多数の者が利用する可能性があることから、これを傍受の対象とするのであれば、犯罪に無関係の者の通信が傍受されてしまう危険性がより多いといった主張もなされておるようでございます。ですが、見方を変えますと、公衆電話はだれが使ったかわからないというわけでございますから、まさに犯罪に関係する通信に利用されやすいという面も否定できないと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。 <0010>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案によりまして通信傍受が認められますのは、犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りる通信手段でございます。単に被疑者が公衆電話を使用しているというだけでは公衆電話が傍受の対象になることはありません。  しかしながら、特定の公衆電話を使用して犯罪関連通信を行っていると認められるような場合でございます。何らかの事情で捜査結果、ある特定の時間に被疑者がこの公衆電話を使って犯罪関連通信を行うというようなことが証拠上その他で認められるような場合を言うわけでございますが、当該公衆電話による通信を傍受の対象としなければならないケースもまた考えられるところでございます。  このような場合でございますが、捜査官において被疑者がその公衆電話を利用することを確認した上で、通信事業者の施設で待機する捜査官がその連絡を受けましてその通話のみを傍受するという措置をとることになろうと考えております。この場合には、傍受令状におきまして特定の利用者が利用することを確認した上で傍受を実施することが条件として付されることになるものと考えております。当然、その傍受令状を請求する場合には公衆電話であること等、いろいろな諸状況を説明いたしますが、裁判官がそのような条件を付するということが考えられるわけでございます。  このような方法によりまして、一般市民の通信が広く傍受されるということがないように運用上もすべきものと考えている次第でございます。 <0011>=佐々木知子君= 組織犯罪対策三法といいながら、当委員会におきましては専ら通信傍受法にターゲットが置かれて審議されてきた感がございますので、以後、私は他の二法につきまして審議をお願いしたいというふうに考えております。  まず、組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法案でございますけれども、組織的な犯罪に有効に対処するためには、組織的に行われた犯罪に厳罰をもって臨むことというのが一つの柱であり、もう一つの柱といたしましては、組織的犯罪のインセンティブであります経済的利益の追及、つまり犯罪によって得られた利益を剥奪することが肝要であります。  国際通貨基金、IMFの推定、これは昨春でございますけれども、マネーロンダリングの取引額は世界の国内総生産、GDPの二ないし五%に達し約八十兆円、日本の当初予算にも匹敵するといわれております。南米のコカインカルテルがこの手法をよく使ったことから国際的に大きな問題になったといわれるマネーロンダリングでございますが、犯罪収益を規制の緩い国に流入させ、その国の金融システムなどを利用してクリーンな外観を有するものに変えるという手法でございます。  このマネーロンダリング取り締まりにつきましては、一九八八年、国連で採択されましたいわゆる麻薬新条約を批准するに当たって、日本では国内法を整備し、平成四年からいわゆる麻薬特例法を施行しておりますが、これによって薬物犯罪に関してのみがマネーロンダリング罪、つまり犯罪収益等隠匿罪が定められたところではございますが、これまでこの罪名でどれだけの捜査実績があるのかお伺いしたいと思います。 <0012>=政府委員(松尾邦弘君)= 麻薬特例法におきまして、第九条で薬物犯罪収益等にかかわる隠匿罪が定められております。  法務当局において把握している薬物犯罪収益等隠匿罪の検挙受理人員でございますが、同法が施行されました平成四年七月以降、平成十年までに合計五人でございます。そのうち一人を除いて公判請求がされておりまして、公判係属中の二名を除いて有罪が確定しております。  公判請求されました事件の一つを紹介いたしますと、平成十年に摘発された事例は、覚せい剤等の譲渡代金三千百万円余りを仮名名義等を用いて外国の銀行口座に送金した事案でございます。このようなことをして薬物犯罪収益の取得につきまして事実を仮装するとともに、その収益を隠匿したという事案がございました。 <0013>=佐々木知子君= この法案が通ることになりますと、前提犯罪を薬物犯罪から飛躍的に増大させるものとなります。これまではスイスが犯罪組織によるマネーロンダリングの抜け穴になっていると国際的批判を受けておりましたが、スイスも昨年の春にマネーロンダリング法を発効させまして、検察庁が三年もの捜査の末、メキシコ大統領の実の兄が捜査の情報を提供する見返りに麻薬組織から受け取ったという金をスイスの銀行口座などに隠匿していたとして、一億ドルを差し押さえるといった動きもありまして、国際的な抜け穴になっているという批判は専ら日本に向けられるようになったわけでございます。  我が国がそういった国際的なマネーロンダリング対策において果たすべき役割やその責任の重さについてどのように考えておられるか、これは法務大臣にお伺いいたします。 <0014>=国務大臣(陣内孝雄君)= 御指摘のように、マネーロンダリング対策につきましては、国際的に協調した対応をすることが求められておるわけでございます。我が国は、世界の金融市場の中心の一つであるということですので、ここが抜け穴になったら大変なことでございますし、また国連やサミット等の会議に参加する国際社会の一員として、これらの会議におきましても支持されておるFATF活動を十分に尊重しなければならない。アジア太平洋地域におけるマネーロンダリング対策グループにおいて、むしろリーダーシップを発揮すべき大きな責任を与えられている、このように考えるわけでございます。  先般、東京で開かれたFATFの全体会議におきましても、多くの国から我が国の組織的犯罪対策三法が強く支持されました。FATFの総意として、早期成立について大きな期待が寄せられたことは報道等でもよく御存じのことと思います。我が国の組織的な犯罪対策に対する諸外国の大きな期待にこたえていく重い責任を背負っておると思うわけでございます。  我が国が国際社会の一員として責任ある役割を果たすとともに、組織的な犯罪から国民の平穏な生活を守り、真に国民が安心して暮らせる健全な社会を築くために、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたい、このようにお願いする次第でございます。 <0015>=佐々木知子君= 本法案九条に、犯罪収益等による法人等の事業支配罪というものがございます。これは麻薬特例法には設けられていない規定でございます。  これにつきまして、例えば日本の暴力団が株式を出資するなり、そういった方法で会社を支配するというようなことが日本で行われている事例があるのかどうか、またそれを当局が把握しているのかどうか。恐らく多分難しいのだろうと思います。豊田商事の事件だとか、ある意味ではそういう悪徳商法、経済犯罪、会社犯罪につきましては、恐らく何件かあるのだろうというふうに思うわけでございます。  私は、二、三年ほど前になりますが、国連のそういう国際犯罪の専門家と話をする機会がございまして、その方が言われるには、麻薬組織という国際的な犯罪組織が、ある国の銀行とかそういう大きな会社の株式を買い占めることによって、その国を乗っ取るような事例があるのだというようなことを言っておられました。私は、それを聞いて、そういうこともあるのかというふうに思っていたのですが、どうもそういうことは現実に本当に起こっているようでございます。  ですから、こういう規定が設けられたのは当然だろうというふうにも考えているわけですけれども、一部にはこういう規定を設けますと株主の権利行使を侵害するものだとか、正常な法人の活動を阻害するものであるといった批判もあるようなのですが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。 <0016>=政府委員(松尾邦弘君)= 犯罪収益等による法人等の事業支配の罪でございますが、犯罪収益等を用いて法人等の事業経営を支配する行為によりまして、その事業活動が犯罪その他の不正な行為に利用されたり、あるいはその事業経営に際して犯罪収益等が不法な競争手段に用いられるなどの不正な活動が行われるおそれがあるということなどから、法人等の事業経営に対する犯罪収益等による不当な干渉を防止することを目的として設けたものでございます。  法人等の事業支配の目的で犯罪収益等により株式等を取得して、その権限を行使し、あるいは犯罪収益等により取得した株主への債権の取得、または行使に関して、その株主の権限等を行使させるなどして役員を変更させる行為等でございますが、いわば株主の権利を悪用しまして、あるいは他の株主の権利の正当な行使を妨げて会社を不当に支配するものでありますから、かかる行為を処罰することは正当な株主権をも保護するものでありまして、これに不当に干渉するというものではございません。  また、この処罰規定でございますが、法人等の事業活動それ自体を犯罪としてとらえるものではありません。この罪による処罰によって、その法人等や善意の第三者に不測の損害を与えることなく法人の合法的経済活動を制限するおそれはないと考えております。 <0017>=佐々木知子君= 麻薬特例法にも同じ規定がございましたけれども、本法案にも犯罪収益等の収受罪というのが設けられております。  この点でございますが、犯罪収益等と言いましても、外見上は一般の財産と変わらないから、犯罪収益等を受け取っただけで犯罪が成立するとなると、正常な経済活動を阻害することになるとか、弁護人が被疑者または被告人から報酬を受け取ることをちゅうちょさせるものだとか、あるいはビラを読みますと、賃貸人は賃借人がその手の人であればその賃貸料を受け取ることができないとか、そういうビラまであったようでございますが、弁護人の選任権を侵害するものであるといったような批判がなされているわけですが、これについての見解をお伺いいたします。 <0018>=政府委員(松尾邦弘君)= 確かに、この点につきましては、今委員の御質問の中にありましたように、いろいろな誤解があるところでございます。  この法律案の十一条に定めます犯罪収益等収受罪というものが成立するための要件を考えてみますと、まず収受した財産が客観的に犯罪収益等に当たるということは大前提でございます。ただ、それだけではなくて、さらにその財産が犯罪収益等であることの情を知った上で、それを十分わきまえた上でということですが、その収受を行うということが次の要件になります。  この場合でございますけれども、犯罪収益等であることの情を知っているというためには、具体的な当該財産が現実の犯罪行為による犯罪収益等であるということの個別具体的な認識というものが必要になります。単に犯罪収益であるかもしれないといったような一般的、抽象的な危惧とかあるいは懸念というだけではこの要件を満たすことにはならないということになります。  しかも、その財産の受領が契約に係る債務の履行としてなされる場合には、契約のときにそのような認識が必要とされております。契約のときにそのような認識がなければ、その財産を受領するときに犯罪収益等であることを万が一知ったということであった場合でもこの罪は成立しないということになります。  したがいまして、この罪の成立範囲が不当に広がることにはなりませんし、正常な経済活動を営んでいる者や弁護人となろうとする者が犯罪収益等収受罪によって処罰されるということにはならないと考えております。 <0019>=佐々木知子君= 次に、金融監督庁にお伺いしたいのですけれども、本法案に疑わしい取引の届け出制度が設けられております。もちろんこれは麻薬特例法にもございます。マネーロンダリング行為が金融機関等を利用して行われることが多いことから、金融機関等から疑わしい取引に関する情報を集約して犯罪収益等の隠匿の罪及びその前提犯罪の捜査に役立てることを主目的とするとともに、副次的に犯罪者によって金融機関等が提供する預金の受け入れサービスや決済システムが利用されることを防止し、金融機関等及び金融システムに対する信頼を確保しようとするものであって、マネーロンダリング対策として重要な機能を果たすべきものと期待されているわけでございます。  現行でも、先ほど申しましたように、麻薬特例法にこの制度があるわけでございますが、届け出件数は非常に少なく、自発的なものは年間五件ペースと。九六年に米国で七万五千件、英国で一万六千件余りの届け出があったというのとまさに対照的でございます。また、届け出を端緒とする摘発事例も残念ながらまだないというふうに聞いております。  届け出が極めて少ない理由の一つといたしましては、現行の届け出制度が薬物犯罪に特定されているためにその見きわめが金融機関ではできないということもあるようでございますが、本法案によって前提犯罪が飛躍的に広がるために実効性が上がると私は考えておるものでございます。  米国、英国、フランス、イタリアなど、既に二十カ国以上でFIU、ファイナンシャル・インテリジェンス・ユニットという政府機関が設けられておりますが、その意味で、金融監督庁内に設置された特定金融情報室、現在はまだ準備室かもわかりませんが、日本版FIUと言えるのではないかと思うのですが、本法案によってその機能を準備室から脱してやっと発揮できるようになるのではないかということで、今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。 <0020>=政府委員(乾文男君)= 前半のその届け出の件数等が少ないということは、今先生が御指摘になったとおりでございまして、少なかった等の理由でございますけれども、まさにおっしゃいましたように、犯罪収益の前提犯罪が薬物犯罪に限られておりましたこと等があるのかと思います。それからさらに、法制度上、金融機関等からの届け出のあった疑わしい取引に関する情報につきまして、金融監督庁におきましてこれの整理、分析を行うことというふうに制度上されておらなかったということから、全体といたしまして今御指摘のありましたような実情にあったことは確かでございます。  最近の届け出件数を見ますと、平成十年度以降増加しておりまして、また、ことしに入りまして急増しております。その背景といたしましては、この制度につきまして金融機関等の理解が深まりつつあることが要因であるというふうに考えております。  今回の法案におきましては、犯罪収益の前提犯罪がこれまでの薬物から殺人、強盗、未成年者略取誘拐等、重大な犯罪にまで拡大をされることになっております。また、疑わしい取引に関する情報を当庁に一元的に集約しまして、これを整理、分析し、その情報を捜査機関に回付する、また国際的な協力にもこたえることができる制度というふうにされておるところでございまして、先ほど申しました金融機関からの理解が深まりつつありますこととあわせまして、制度の実効性は十分に期待できるものというふうに考えておるところでございます。 <0021>=佐々木知子君= この制度の運用におきまして、金融機関等に過大な負担をかけることにはならないか、あるいは顧客のプライバシーを侵害することにならないか危惧する声も一部であるようでございますが、それにつきまして金融監督庁に御見解を問いたいと思います。 <0022>=政府委員(乾文男君)= この制度におきましては、金融機関の日常の業務におきまして、収受した財産が犯罪収益等である疑い等がある場合にのみ届け出ることとされておりますことから、一般市民の正当な金融取引までが届け出の対象になるものではないと考えております。  それで、取引が疑わしいかどうかの判断でございますけれども、金融機関が各取引ごとに顧客の日ごろの取引状況、送金方法等の態様、個々の具体的な事情を考慮いたしまして判断するものでございますけれども、監督庁といたしましては、金融機関がこの届け出義務を適切に履行できますよう、届け出の方法でございますとか内容及び疑わしい取引の参考事例等につきまして、当庁から金融機関に対しまして具体的に示すことを予定しております。  したがいまして、この制度の運用におきまして、金融機関に過大な負担を負わせることにはならないと考えておりますし、また顧客のプライバシーを不当に侵害することにはならないと考えているところでございます。 <0023>=佐々木知子君= 特定金融情報室がこれからスタッフを充実させて、予算も充実させて、それから日本全国に、多分財務局あたりに設置することになるかもわかりませんけれども、ぜひ実効を上げられて捜査の実を上げられますよう心から願っております。  次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案でございますけれども、これは専ら証人の保護ということでございます。  組織的な犯罪を摘発して、刑事裁判において刑事責任を追及するためには、その立証に協力する者の保護という面を忘れることはできません。本法案により刑事訴訟法を改正して、証人の安全を確保するため、住居等に関する尋問制限等の措置を盛り込むこととされておりますが、これは非常に重要な意義を持つものと考えております。  ただ、一部におきまして、これは被告人の防御や弁護人の弁護活動を不当に制約するものであるといった批判もあるようですが、この点について法務省はどのようにお考えでしょうか。 <0024>=政府委員(松尾邦弘君)= 暴力団の構成員等が被告人になっている事件に検察側の証人として出るということは、非常に心理的な負担が大きいわけでございます。まして、居所、住所、あるいは例えば毎日学校に通っている場合でありますと、どういう学校にどういう経路で通っているのかということについても、それを被告人側に知られることについて、証人が非常に心理的な負担を受けるということは当然考えられるわけでございます。  今回の法案は、そういう場合に住所等に対する尋問制限等の措置を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案としているわけでございますが、今回の法案による尋問の制限でございますけれども、被告人もしくは弁護人のする尋問を制限することによりまして、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときはできないとされております。こうした住居等に対する尋問制限の配慮の要請は、被告人の防御に関し必要がある場合を除くものでありますから、これらによりまして被告人の防御権を不当に制約することにはならないということでございます。  また、検察官が弁護人に対し配慮の要請をする場合に、被告人の防御に関する必要の有無及び具体的な配慮の内容や方法につきましてはその弁護人自身が判断するものでございます。警察官が弁護活動に不当に介入するおそれもないと考えております。  なお、この改正は、刑事手続の中で証人等が自己の住居等を知られることに不安を感じることがあることから法律上このような配慮がなされることを明定するものでございまして、弁護人に対する不信を前提とするものではございません。 <0025>=佐々木知子君= ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。 <0026>=海野徹君= おはようございます。民主党の海野徹です。  それでは、通告に基づきまして質問させていただきます。過日、参考人質疑で暗号の解読の技術的可能性について私は質問させていただきました。これは数字、数学ですから、理論的には可能な部分もあるかもしれない、しかし、現実的には全く困難だろうというのが専門家の意見であります。  松尾局長は、技術的に可能だからできますよという話を委員会で答弁しております。規制も今は考えていない、暗号を規制するということも考えていないということだったんです。それはまさに考えてほしくないわけなんですが、欧州だって今実態としては暗号の規制をどんどん緩和しているわけですから、アメリカでもそういう方向ですから、日本だけが規制を強化するなんということはあってはならないわけなんです。  そこで、警察庁にお伺いしたいんですけれども、暗号を解読する場合、どのくらいの予算をかけて、松尾局長はできると言ったわけですから、可能性はありますよ、それをやりますよと言ったわけですから、じゃ警察庁としては、どのぐらいの予算でどんな設備を整えれば一つの暗号を解読できるのか。それがしかも十三条二項の「速やかに」ということですから、その辺について御答弁をお伺いしたいと思います。 <0027>=政府委員(林則清君)= 今御指摘の暗号というものにも種類が複数ありまして、その強度にも違いがあるということで、一概にどの程度の予算、設備、時間が解読に必要かということについて述べるというのは困難でありますが、一般的には暗号を解読するために必要な時間等は暗号のかぎの長さに依存するということのようであります。  例えば、現在インターネット上で用いられる標準的な暗号としてDESというのがあるそうでありますが、このDESで標準的なかぎ長とされる五十六ビットのものを解読しようとした場合、高性能の専用スーパーコンピューターを利用すれば数日で解けたという例もあると聞いております。  しかしながら、暗号かぎの長さを含め暗号解読の難度というのは今後数年で急速に上がっていくということが予想されており、一方では解読するためのコンピューターの能力も急速に向上しておることから、まことに残念でありますけれども、御質問に正確にお答えするというのは困難でございます。 <0028>=海野徹君= 正確に答えるのが困難だということなんですが、暗号を解読することがもう非常に困難なんです。五十六ビットという話だったんですけれども、この間通産省もそういう話だった。今はもう百二十八ビットが最低なんです。百二十八ビットなんというのはもう解けないんです、これは。その五十六ビットをやったのもすべて前提条件を整えて、さあどうですかとやっての話なんです。だから、暗号を解くというのは私はもう解けないと思った方がいいんじゃないか。  ネットワーク時代というか、インターネットの時代ですから、もうセキュリティーというのは一番の基本なんです。そのために暗号システムというのはいろんなところで使われているんです。普通のパソコンのユーザーですら、この間私が質問させていただきましたPGPとかSSH、SSL、こういうような程度の暗号を複数使っているんです。我々聞いてみましたら普通のパソコンユーザーですらこれを使っているんですね。じゃもっといろんな意味で安全性を確保しようとしたら暗号化ファイルシステムあるいはIPv6というような次世代型IPなどを使っているという専門家からの話でありました。それ以外にも個々のアプリケーションにファイルを暗号化する機能がもう入っていますよという話だった。そういうことを考えると、とてもじゃないけれども暗号なんて読めないなと思うんですが、再度御見解をお聞かせください。 <0029>=政府委員(林則清君)= 今、委員御指摘のように、大変技術が進んで暗号等についても解読するのが非常に困難化する。一方、過去解けない暗号はないという言葉もあるわけでありまして、やはり解読するのが必要ということであれば、警察も全技術力を挙げて解読することができるよう努力してまいりたいと考えております。 <0030>=海野徹君= 努力するといって、じゃ一体どのぐらいのスーパーコンピューターを並べて、どのぐらいの人員で、幾らの予算でやるんですか。もう概算要求の時期が来ているでしょう。年間に数十件対象にしますよという話もありましたから、もうすぐの話なんですよ。その点どうなんですか。 <0031>=政府委員(林則清君)= 具体的に法案がまだ成立していないわけでありますし、法案が成立して、それを法案の趣旨に沿って実施をしてまいりたいという場合に、具体的な問題を検討しながらそういった今おっしゃる予算なり設備なり人員、技術なりというものを考えていくわけでありまして、現時点においてどうするんだということについてお答えするのは、これもいささか困難である、こう考えております。 <0032>=海野徹君= 答弁によりますと、要するにもうできないということなんですね。もし、今それが少しでもできるという可能性があるとすれば、もう既にその人員はある、技術はある、マニュアルはある、そういうことですか。 <0033>=政府委員(林則清君)= 現在の技術でできる部分についてはやってまいりますし、さらに技術を進めなければいけないところについては、先ほど御答弁申し上げましたように、それが可能になるよう最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。 <0034>=海野徹君= 大変いろいろ答弁をして努力しますという話なんですが、私はもうできないと思います。先ほど言ったように、普通のパソコンのユーザーですらやっておるんです。PGPはもう解けないと言われているんですよ。それはSSHとかSSLとかそういうのを複数にやっていますから、まず解けない。ということを改めて専門家の意見をお聞きになった方がいいと思いますよ。  それでは、次の質問に入りますけれども、松尾局長にお伺いしますが、法案の二条三項で、「それ以外の者であって自己の業務のために不特定又は多数の者の通信を媒介することのできる電気通信設備を設置している者」には、これは一般企業が含まれますね。 <0035>=政府委員(松尾邦弘君)= これは、「通信事業者等」というのは、通常NTT等の他人の通信を媒介することを業とする者ということでございますが、以前の答弁で申し上げましたように、大きな企業等によりますと、その中に交換設備等を自己が保有するというような企業も当然ございますので、そういった場合にはこの「等」の中で、事業者ではございませんが、「通信事業者等」ということでこの中に読み込むということになります。 <0036>=海野徹君= 一般企業も含まれるということですから、それを前提にして、通産の方来ていらっしゃいますね。お伺いしたいんですけれども、Eコマース、電子商取引、非常に規模が拡大しております。日経新聞なんかにはIT技術との融合とか、あるいはEコマースの話、電子商取引の話がもう連日載っていますよ。少なくとも三面、四面に載っているんですよ。非常に市場の規模が拡大する、そういう技術がどんどん進展していくという話が載っておりますが、昨年で八兆七千億円、これは日本ですけれども、二〇〇三年には七十一兆六千億円ぐらいになるだろうというような数字をこの間聞きました。これは企業間のものと企業対消費者のと二種類あると思うんですね。一体どっちの方がどのくらい多いのですか。企業対消費者と企業間のとをお答えください。 <0037>=政府委員(広瀬勝貞君)= 電子商取引の中では、お話にありましたように企業と企業、それから企業と消費者というものがありますけれども、現在やっぱり圧倒的に企業と企業の間の電子商取引というのが多うございます。九八年で八兆七千億というふうに申し上げましたけれども、このうち企業と消費者の間は六百五十億ぐらいでございます。  それから、二〇〇三年になりますと、電子商取引の規模が七十一・六兆円と申し上げましたけれども、このうち企業と消費者の間が三兆二千億円ぐらいでございます。圧倒的にやっぱり企業と企業の間の電子商取引が多うございます。 <0038>=海野徹君= インターネットの父と呼ばれるビント・サーフ、彼も二〇〇三年にはEコマースというのは経済活動全体の一〇%、世界全体で三千二百億ドル、これぐらいに膨らむというふうにスピーチでしゃべっているのですね。だから日本も、前回私お話ししたのですが、ものづくりとIT技術をどう融合化させるかというのが二十一世紀の産業だと思うんです。そういった意味で非常に多くなってきますので、Eコマースというのは企業間取引に非常に重要だ。  そうなると、企業も知らず知らずのうちに被害者にも加害者にもなってしまうケースというのはあるのですね、これだけ多いと。可能性があるのですよ。そうすると、それは傍受の対象にも当然なってきちゃうんです。その可能性がありますね。 <0039>=政府委員(松尾邦弘君)= ちょっと趣旨がもう少しわからないところもあるのですけれども、企業自体が傍受の対象になるということはなかなか考えられません。今回の傍受の対象は、対象犯罪が四種類、薬物、銃器、蛇頭、それから組織的な殺人ということになっておりますので、正常な取引等の活動をしている企業自体がこういった犯罪に手を染めるということは通常考えられないことでございますので、大規模な通信が企業間で行われるといいましても、にわかにそれが通信傍受の対象になるということはなかなか想定しにくいところでございます。 <0040>=海野徹君= 松尾局長、そうおっしゃっていますけれども、これは今度の通信傍受法案の対象じゃないかもしれませんけれども、クレディ・スイスが電子メールで証拠隠しを指示したというようなこともありましたよね。やっぱり何らかの形で巻き込まれるという可能性はあるわけです。  私もNECとか富士通とか全銀協とかいろんな企業に聞きました。要するに、この法案があなた方の経済活動にどう影響ありますか、その辺を検討したことがありますかと聞いてみました。後でその辺はお話ししますが、通産省の方はその辺を聞きましたか、各企業あるいは業界団体に。 <0041>=政府委員(広瀬勝貞君)= この法律の策定の段階で、一般論としていろいろ関係の業界とも議論をいたしました。ただ、これも先日来申し上げておりますけれども、やはり健全な高度情報通信社会の発展ということを考えていくと、暗号技術とかそういうことも含めていろいろ開発をしなきゃならぬ技術もたくさんありますし、そういうことを開発しながら、経済の発展とかあるいは国民生活の多様化といったようなことに対応していくということは大事でありますけれども、その反面、いろいろこの情報化に伴う陰の部分というのは出てくるわけでございまして、その部分についてはやはり情報化社会の健全な発展のために必要最小限の対応をしていくということもまた大事だろうということで我々は理解をしておりますし、また関係業界にも理解をいただいているというふうに考えております。 <0042>=海野徹君= いや、松尾局長はそういうことはないということなんですが、現実に電子メールで指示したということもありますし、これは交通事故的にトラブルに巻き込まれるということもあるんです。従業員だっていますし、取引先だってあるし、その取引先の関係者ということもあり得るんですね、大変な情報量が行き来していますから。  それで、産業界の人に聞きますと、やっぱり対象になりますから、NECとかソニーとか富士通とかそういうところに聞きましたら、自分たちがPOPサーバーを持っているんですね。それで聞きましたら、やっぱり非常に不安を感じているんです。自分のところで起こすということはあり得ないんです。何らかの形で侵入されたり、何らかの形で犯罪に巻き込まれて改ざんされたり、あるいは情報が持っていかれたりという危険性を非常に感じているんですね。全然別なことで傍受の対象になったときに、ならないことを当然期待しますし、あってはならないわけですけれども、その可能性はやっぱり彼らは企業活動を進める中で全然否定はできないというんですよ。  そうすると、貴重な企業秘密が漏れるという可能性が出てきますから、非常にEコマースに対してよっぽど暗号をかけない限り、とても破られないという暗号をかけない限り、消極的にならざるを得ないというような話がありましたけれども、通産省はやっぱりそう思いますでしょう。 <0043>=政府委員(広瀬勝貞君)= 先ほどから申し上げておりますけれども、この法律案は重大犯罪を対象として、その犯罪捜査のための手続等を定めたものというふうに理解をしておりまして、その趣旨に照らしますと、高度情報通信社会の構築をしていく上で懸念されるような問題はないのではないかというふうに考えております。  なお、これが成立した暁に実際の法の運用に当たりましては、いろいろ通信事業者の協力の範囲等について定められておりますけれども、その範囲等についてはいろいろ議論をいたしまして、またこれからも法案の施行に当たりまして、関係当局と通信事業者の間ですり合わせが行われるというようなことも聞いておりますので、御懸念のようなことはないのではないかというふうに考えているところでございます。 <0044>=海野徹君= 可能性として一%もない、要するにゼロだということじゃないものですから、皆さん気になるんですよ。  これは非常に、この法案というんですかこの問題はアメリカの商務省が頑張っているんですよ。ヨーロッパとアメリカというのはお互いに市場として非常に尊重し合い、意識し合っているんです。日本の市場というのはそんな大して評価していないんです。ジャパン・マネーがアメリカへ来ればいいじゃないかという程度にしか評価していないんですね。EUができて、ユーロが共通通貨として使われ出した。それと暗号規制を緩和するのがヨーロッパでは一致しているんですよ。これは今まであったのを、いや、その暗号を組み込んだ商品を開発することも、販売することも、輸出することも規制をかけませんと、ほとんどのEUは言い出した。あのフランスでさえ緩和し出した。その時期と、アメリカはもちろんもう暗号なんて規制はかけられない、それはもう情報通信産業の人たちが大反対していますから、お互いにそれはヨーロッパやアメリカというのは連動しているんですね。何で日本だけ今ごろこんなおくれた法案が出てきたのかなと、非常に産業界は疑問に思うんですよ。  こんな声がありました。私のところは極めて強度な暗号をかけてありますから大丈夫です、それさえ解かれなければ大丈夫ですよ、まさか暗号規制の規制法なんてつくりませんでしょうねというような話。これから企業の行動なり消費者の行動がこの法案によってどう変化するか、それを判断しかねているんですと。影響は軽微だと思いますが、全くないとは思えませんと。それだったら、あなた方がこの委員会に出てきて、企業として企業活動で懸念があるんだったらその辺を表明してくださいよと話をしたんですが、それは個々の企業として、いやNECからこういう発言があったとか、ソニーからこういう発言があったとか、さくら銀行からこういう発言があったなんというと困りますから、それは全銀協とか経団連とかそういうところへ言ってくれませんかというような話だったんです。何しろアメリカの通商政策とか産業政策にかかわっていますから、個々にはお答えできませんという話だったんです。  こういう産業界の懸念というのを通産省としてはどうお考えですか。 <0045>=政府委員(広瀬勝貞君)= 今、御議論は二つあったと思うんですが、一つはただいま御審議をいただいている法案の御議論、もう一つは暗号に対する規制の問題、この二つであったと思います。  暗号に対する規制につきましては、諸外国の例を見ますと、一つは輸出の規制、一つは輸入の規制、一つは国内での利用の規制といったような面があると思います。我が国では、輸出につきましては国際的な紳士協定、ワッセナー・アレンジメントに基づいて規制をやっておりますけれども、輸入規制あるいは利用規制のところはそういうことがございません。また、これから将来のことを考えましても、暗号というのは高度情報通信社会の中で非常に大事なインフラでございますから、やはり自由に使っていくということが大事なのではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、今御審議いただいておりますこの法案につきましては、これは重大犯罪への対応ということで考えていただいておるわけでございまして、暗号を自由に使うということの反面として、やはり先生からも御議論がありましたように、これを今度は当局として解読するという苦労もまた逆に出てくる。しかし、そこのところはその苦労をあえてしながら、暗号が自由に使えるという世の中を守っていこうというお考えではないかと我々は感じているところでございます。 <0046>=海野徹君= それでは、ちょっと視点を変えますけれども、一日の日経新聞に「日米暗号戦争」と載っていました。日本のNTTの暗号技術が採用されるか、それともアメリカのものなのか。ワッセナー・アレンジメントと言いましたけれども、六月に通産省が輸出の規制緩和をしたという記事が若干小さく載りました。この法案と関係があるのかなと思ってちょっと調べてみたんです。一面で経済新聞が取り上げて、日米の暗号戦争というぐらいにやっていますし、暗号技術を握ったところが経済戦争に勝つんじゃないかというぐらいどんどん進んでいます。松尾刑事局長も、解けますよ、警察庁の方はそれは努力しますと言っていますが、現実問題としては暗号技術というのはどんどん進んでいると思うんですよ。  今、通産省としてはその点どの程度把握していらっしゃいますか。 <0047>=政府委員(広瀬勝貞君)= 先生御指摘のとおり、暗号技術というのは、電子商取引を初めとして高度情報通信社会の推進にとって大変重要な技術でございます。この技術も日進月歩で進んでおります。  お話のありましたワッセナー・アレンジメントにおける規制緩和の方も、実はこれまではすべての暗号について規制をしていたわけでございますけれども、今度ようやく暗号技術の発展に合わせましてビット数で下限を設けたわけでございます。先ほどからお話のありますDESについて言いますと、五十六ビットを超えるものについて規制をするというようなことで、これはまさに先生御指摘のように暗号技術の発展を物語るものだというふうに考えております。  私どもといたしましては、暗号技術の開発におくれをとらないようにやっていくということは非常に大事だと思っておりまして、情報処理振興事業協会等を通じまして、暗号アルゴリズムの開発とか、あるいは暗号強度の評価方法の開発といったようなことについて力を注いでいるところでございます。 <0048>=海野徹君= ヨーロッパとかアメリカは、どんどん規制緩和してEコマースを発展させようとしています。その中で、日本がそれに若干懸念のある法案でもつくってくれば、Eコマースの相手として日本というのはちゅうちょされる相手になっていくんではないかと、私は非常に懸念するんですよ。  それでは、通産省の方に聞きたいんですけれども、Eコマースを非常に高度にしたものでエージェントシステムというのがありますけれども、御存じですか。エージェントシステム、Eコマースを高度化したものです。──じゃ、いいです。  エージェントシステムというのは、企業が何か物を生産するときに必要な部品について、自動的に自社の部品の在庫を調べながら、あるいは生産業者を調べながら、コンピューター間で見積もりを出し合って最も有利な業者に自発的に発注する、それが全部情報が飛び交っているんですよ、今現在。  だから、例えば仮にNECが何か製品をつくるのでLSIをどこかに発注したと。もし何かの形で傍受しているところへその情報が行ってしまったら、もう開発競争におくれる、商売に影響が出てくるという可能性というのはあるわけです。というのは、このLSIを使ったら何をつくるんだというのはライバル会社はすぐにわかるわけですよ。  だから、さっき言ったように、交通事故的に、いろんな人と多数間で情報のやりとりがありますからわからないんです。重大な犯罪の連中であればあるほどいろんなところへ潜って行動しますから、割り込まれることだってあるわけです。それを非常に産業界は気にしつつあるということが、私はいろんなところで聞いてみましたら話がだんだんわかってきたんです。  そこで、法務大臣にお伺いしたいんです。  今まで技術的な問題あるいは文理解釈の問題等でずっと議論をしてまいりました。だけど、一つの法案ができることによって社会を大きく変えてしまう、経済活動を変える、人間の行動を変えるということはあるわけなんです。ましてや、自由な行動に規制をかけてはいけないと思います。  そういった意味では、産業界の生々しい意見、Eコマースを初めとしたこれからの二十一世紀の産業のあり方と通信傍受のかかわりについて、懸念がなければ懸念がないでいいですよ、私どもはこんな法案は全然関係なくてやれますから、国際的にもどんどんやっていきますからということが出てくれば、またそれはそれでいいんです。あるいは、インターネットバンキングが毎日のように報じられています。きょうもNTT―MEがネットで資産運用情報ということとか、あるいはフランスのパリバというのが世界の株式のネット取引をやるというようなことが新聞報道されています。  私は、そういった意味で産業界の方々から意見を聞く機会があってもいいんじゃないか、連合審査も当然すべきだと思いますし、いま一度慎重に議論をすべきじゃないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。 <0049>=国務大臣(陣内孝雄君)= これからの産業の活力を高めていく上で、情報技術、情報通信、情報を中心にしたそういった取り組みというのが大事なことは議員と同感でございます。  今回御提案申し上げているこの通信傍受というのは、先ほど来申し上げましたように、四種類の重大凶悪犯罪に限ってその傍受をしようということでございまして、それが産業界の情報通信化に影響があるというふうには、ちょっと私には理解ができない面がございます。  しかし、今御懸念のような向きもあるとすれば、これからこの施行に当たりましては十分そういう点についておこたえをしていって、我が国がやっぱり情報通信の先進国として今後とも大いに飛躍、発展していただけるようなことに私たちとしても十分意を用いるべきである、このように思ったところでございます。 <0050>=海野徹君= 最後に。  私も最初は産業界のことなんて考えなかったんです。だけれども、ずっとイメージしていくとそういったことになっちゃうんですね。麻薬取引にしてもお金が動くんですよ。実効性を担保すると暗号を規制することになる。要するに、暗号規制の方向へ向かわないように、自由にしてもらわなくちゃインターネットバンキングなんてできないんです。インターネットバンキングでお金が動くんですよね。だから、たまたま見つかっちゃったという場合があるんですよ。  だから、そういった意味がありますから、これから銀行業界も非常に慎重に検討したい、どうやってこれに対して対抗していくか考えているという話だったんですが、そこまで産業界に考えさせるということ自体、私はいろんな意味で問題を含んでいる法案じゃないかと思いますが、再度、大臣の御見解を聞かせてください。 <0051>=国務大臣(陣内孝雄君)= ただいま申し上げましたように、この通信傍受というのが、今委員の御懸念のあるようなものとはかかわりがないというふうに思っておりますが、なおこれを円滑に施行していく上にはいろいろな配慮が必要であるということを重く考えておるところでございます。 <0052>=内藤正光君= 民主党・新緑風会の内藤正光でございます。  まず、運用上の問題点について何点かお尋ねさせていただきます。  この種の法律というのは、でき上がってしまった後ひとり歩きするおそれが十分考えられるわけでございます。したがって、運用上の事前のきめ細かな取り決めがやっぱり大切になってくるんだろうと思います。ところが、今までの衆参の審議を見てみますと、運用上のそういった取り決め等が全くと言っていいほど審議されていない。これは本当にゆゆしき問題であろうかと考えます。  そこで、私、まず通信傍受捜査に関するマニュアルというものについてお尋ねをさせていただきたいと思います。  この法案だけですと、捜査を行うに際してあるいはまた協力をするに際して、どんなことをやっていくのか、どんなことをやっていけばいいのかという具体的な形が全く見えてこないんです。  そこで、私は、詳細な捜査マニュアル、もうこの時点でつくっていて当然だと思うんですが、いかがでしょうか、法務省。 <0053>=政府委員(松尾邦弘君)= 捜査マニュアルといいましても非常に広範囲にわたります。例えば通信傍受の場合の、その傍受の現場においてどういうような段取りで傍受を行うのかということにつきましては、いろいろなレベルでマニュアルあるいは一般的な準則のようなものをつくっていく必要があるということはもう間違いございません。  まず、一般的な準則をつくり、あるいはその運用要領のようなものをつくりまして、それから具体的な傍受に当たっては、個別的に、傍受案件というのは千差万別でございまして、なかなか一律なそういう基準になじまないこともあります。  例えばスポットモニタリングの時間にいたしましても、場合によりますと、その聞く時間を三十秒間とすれば十分な場合もありますし、場合によりますともう少し長目に設定しておくことが必要だということもあります。そんなことも、それは個別の事案ごとに定めるべき場合もまたあるわけでございます。  そうしたことは、この法案が成立いたしましたら、その運用に当たります機関とも十分な話をしまして、また通信傍受の協力をいただく通信事業者等とも話し合いを十分に重ねながら適正なものをつくっていきたいと考えているところでございます。現在、明確なものがあるということではございません。 <0054>=内藤正光君= これから早急につくるという理解でよろしいわけですね。  先ほど局長は、個別事例ごとにつくることはできても画一的なものはできないとおっしゃいましたが、しかし、やっぱり基本的なことはマニュアルとして私はちゃんと押さえておくべきものだと思います。  私の手元に第六十五回の法制審の中で配られたというアメリカの通信傍受マニュアルがございます。ここで大事なことが何点か含まれております。個別ごとにちょっと確認をさせていただきたいと思います。  まず、九章「進展状況報告」という項目がございます。この中でこんなくだりがございます。「この報告は、一般的には、五日ごと、七日ごと又は十日ごとに行われる。」、つまり捜査官から裁判所へ行われる報告のことを言っているんですが、それが五日、七日あるいは十日ごとに行われると。報告には、相当な理由がまだ継続していることを示すに足るだけの傍受した会話の要約を記載して報告すべきであると。  私は、これは大変大事なことだと思いますが、こういった文言あるいはその精神はマニュアルには組み込む予定ですか、どうですか。 <0055>=政府委員(松尾邦弘君)= アメリカの通信傍受のシステムとは大分違いますのは、今お触れになったところだけについて申し上げますと、アメリカは、まず原則として通信傍受は当初の令状は三十日でございます。日本の場合は一番長くて十日でございますので、その十日の期間内で何日間必要ですからお願いしますということで令状を請求します。  それで、仮に例えば七日ということで令状がおりたとしますと、事案によってはさらに延長してもらう必要が出てくる場合もあります。その場合には再度、延長を裁判所にお願いするんですが、その場合には、今まさに委員がお読みになったような、当初の令状の期間にどんなことをやったのか、あるいはそれがなぜそれだけでは足りないのか、延長する必要があるのかということを当然、内容に盛り込まなければいけません。  ですから、そういった場合の、どういう事項についてどういう書類をつくるかといったような準則的なことは、当然、法案が成立いたしましたら、具体的な書式等も含めまして関係機関と協議した上できちっと定める予定でございます。 <0056>=内藤正光君= じゃ、それに関しての議論はちょっととりあえずわきへ置いておきまして、次の項目へ移りたいと思います。  同じく、このマニュアルの中に「最小化に関する指示書」というのがございます。この中でこんな文言、三点ぐらい読ませていただきます。「捜査官は、対象者が現在し会話に参加しているか否かを確認するために、二分間を超えない範囲の合理的な時間、スポットモニターをすることができる。スポットモニターの間隔は、合理的な範囲内のものであればよいが、少なくとも一分間は間隔を空けなければならない。」、これが一つでございます。  二つ目、「対象者が会話に加わっている場合には、その会話が犯罪に関係のあるものか否かを確認するために、合理的な時間、通常は二分を超えない範囲で、傍受を継続することができる。」。  そして、三つ目としまして、「当該会話が、明確ではないものの、他の犯罪行為に関係あるかもしれないときは、およそ二分後には傍受を止めなければならない。ただし、その時間内に、当該会話が実際に他の犯罪行為に関係あることが確認されたときは、傍受を継続することができる。」というようなくだりがございます。  いずれの文言にも共通していることは、具体的な数値がそこには書き込まれている、つまり拡大解釈のしようがないということでございます。  私は、現場の捜査官のそれぞれの拡大解釈を許さないためにも、だれが捜査官としてその捜査についたとしても、やはり明確な基準を設けるべきだと思います。そういった意味で、具体的な数値をマニュアルの中に書き込むべきであると考えますが、そういったものを書き込む予定があるのかどうか。 <0057>=政府委員(松尾邦弘君)= 今、委員御指摘の点、全く同感でございます。  今、委員のお読みになったものは、アメリカにおける通信傍受の際の一つのサンプルとしてつけてあるという資料でございます。法案が成立後、我々が通信傍受を行うに当たりましては、アメリカのそのやり方というのも大変重要な参考資料でございます。  今、委員の御指摘のように、現場の通信傍受に当たる捜査官にいたしますと、抽象的なことを言われてもなかなか判断に苦しむ場合があります。むしろ、まさに委員御指摘のように、例えば三十秒聞いたらその二倍の期間聞かないでそのまま置いておきなさい、一分たってからもう一度三十秒聞くというようなやり方をとりなさいとか、個別事案ごとに指揮官から時間の具体的な指示を受けないと、捜査官が個々の判断で、自分はでは四十五秒聞こうとか一分聞こうというようなこと、ばらばらということはあり得ないわけでございます。また、そのような明確な個別事案ごとの基準を設ける必要がもちろんあるわけでございます。それと同時に、事案ごとに大幅に違うということになるのもまた安定性あるいは信用性の面で問題がございます。  ですから、今のお読みになったものにあるように、最初に聞く期間を例えば一分ないし二分を超えてはいけないとか、そういうような一般的な基準みたいなものもまたつくる必要があろうかと思います。一般的な大きな基準をつくりまして、個別事案ごとにその中で指揮官が裁量によりまして、この事案はこれを選択しよう、この事案では三十秒だということで捜査官に指揮をする、あるいはもし明確にするのであればそれをメモにして捜査官に個々に配るとか、そういう徹底させる方法も、あるいはそういうふうにしろ、そういうふうにしなさいということも、一般的な準則の中に、判断の誤りがあるといけないのでそれはメモで示しなさいとかということを書くかもしれません。  そのように、実際の運用に当たって捜査官が個々の判断でばらばらにならないように全体的な準則あるいは個別事案ごとのマニュアルといったものは当然つくるべきものであると思います。その際には、今お読みになったアメリカにおける事例なども重要な参考になろうかと思っております。 <0058>=内藤正光君= では三つ目、これまた具体的な一つの事例ではございますが、こんなくだりがございます。「法に従って最小化することを怠れば、傍受の結果得られた証拠に基づく訴追が危うくなるし、あなた方又はその所属機関が民事上の金銭賠償責任を負うこともあり得るし、あなた方が刑事責任を問われることも考えられる。」。あるいはまたこんなくだりもあります。「微妙なとき「インクローズケーシズ」は、慎重を期する方に誤ることとし、傍受を中断すること。」、つまり、どちらかわからないときは慎重な方を採用するということを言っているわけですね。「特定の会話を傍受した理由を、法廷において宣誓の上で、説明することを求められるかもしれないことを常に念頭に置いておくこと。」というくだりがございます。  一つの具体的な事例にすぎないとはいえ、私はこれは大切な精神だと思います。こういった精神、現に六十五回の法制審の刑事法部会でこれを参考にしながら通信傍受法案をつくるとか運用するというふうにおっしゃっているわけですから、当然こういった精神も盛り込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。 <0059>=政府委員(松尾邦弘君)= 今お読みいただいたところに含まれている精神というのは、大変私どもとしても重要なものと考えております。特に委員のお読みになった中で、どちらかわからないという微妙なケースについては抑制的にということでございますが、それは我々としても同じような文言で、一般的な基準を設ける際にはそうした表現を盛り込みたいと思っております。  今お読みになったところの部分に関していえば、ほとんどそのまま我々が考えております一般的な運用要領なり運用基準なりという中に再現されることになろうというふうに考えております。 <0060>=内藤正光君= 続きまして、マニュアルもすごく大事なんですが、やはり捜査官の事前トレーニングも大切なものなんだろう。聞くところによれば、アメリカでは、マニュアルも用意するけれども、その一方で捜査官への事前のトレーニングもかなりの時間をかけて行っているというふうに聞いております。  そこで、警察庁にお伺いしますが、そのようなトレーニングを考えているのかどうか、考えているとしたならばどんなメニューを考えているのか、お答えいただけますか。 <0061>=政府委員(林則清君)= 言うまでもなく、通信傍受法案は通信の秘密にかかわる極めて重要なものでありますから、その適正な運用を徹底していくということは言われるまでもないところであります。  このために、今お話がありましたように、この法案が成立した暁には、個々の捜査員の法の趣旨に沿った適正な法執行を確保するために、捜査員に対する指導、教育というものは徹底して行いたいというふうに考えておりますし、そしてこの点については、そういった指導を行うことによって警察組織としての責任をも全うしていきたいと考えております。  具体的には、通信傍受の具体的な方法等につきまして、国家公安委員会規則あるいは通達等によって、今もお話が出ておりましたようないろんな実施方法、関連のいろんなことを規定いたしますとともに、捜査員のための本当に実務的なマニュアルの作成、配付と実施のための専門教養、それから警察もいろんな教育機関がございますけれども、ここの捜査を教養する課程でありますとか、あるいは各種の会議の機会における指導、教育の実施といったものを徹底しまして、個々の捜査員をそういうふうな形で適正な執行を行うべく教育してまいりたいと思っております。  また、個々の事件の捜査において通信傍受を現に行おうとする場合には、これに従事する捜査員が対象となる通信手段により行われる可能性ある犯罪に関連する通信の内容、他の捜査により判明している当該事件の組織的背景等に関する情報を十分に把握して、法第十三条に規定する該当性判断、これを最小化の方法で適正に、的確に行えるよう十分教育をしてまいりたい、さように考えております。 <0062>=内藤正光君= 運用上の問題で最後に一点お伺いしたいと思います。  この通信傍受法案の持つ一つの大きな問題点はやはり報道の自由との関係だろうと思います。今もいろいろな報道機関の方々が来ていらっしゃいます。これはかなり興味、関心を持っていることだろうと思います。  そこで、一点お伺いします。たまたま私きのう既に質問通告していたんですが、きょうの東京新聞に出ていたんですが、再度確認をさせていただきたいと思います。報道機関並びに報道関係者の持つ電話に対する傍受は全くあり得ないと断言できるのでしょうか。これは法務省ですね。 <0063>=政府委員(松尾邦弘君)= 結論はおっしゃるとおりということでございます。  通信傍受法案でございますが、傍受するためには高度の嫌疑が認められる特定の犯罪の実行、準備等の謀議とかあるいは指示などの犯罪関連通信に用いられると疑うに足りる通信手段を電話番号等で特定して行うものでございます。  報道機関には犯罪に関する情報も含めまして種々の情報が集約されるということが考えられるわけでございますが、たとえ報道機関が設置、使用している電話等に犯罪に関する情報が寄せられることが判明したとしましても、そのような報道機関の特質に照らしまして、また報道の自由を尊重するという観点からも、報道機関の電話等を傍受の対象とすることは許されないと考えております。  したがって、本法案による通信傍受が報道機関の取材源の秘匿等を侵害し、報道の自由の制限につながるものではございません。 <0064>=内藤正光君= その気持ちはわかります。そうはおっしゃいましても、しかし実際に法律の中に書き込まないことには、処罰の対象にもならなければ、あるいは違法収集証拠ともなり得ないわけです。私は、明確に修正をしてこの文言を法律の中に書き込むべきであると考えます。でなければ、これは単なるリップサービスであったり、あるいはまたマスコミの懐柔策に終わってしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 <0065>=政府委員(松尾邦弘君)= 本法案を立案する過程におきまして、諸外国の通信傍受につきましての報道機関、どう対応しているかということも調べたわけでございますが、少なくとも報道機関を法制面で通信傍受の対象から除外しているという国はございませんでした。  ただ、最近ドイツにおきまして、室内会話ということの傍受でありますと、報道機関がこの対象外とされたというケースはございましたが、通信傍受ということにつきましては、その傍受の対象として制度的にそれを明定しているという国はなかったわけでございます。  では、我が国はどうかということで検討したわけでございますが、従来からの答弁でも申し上げております。本法案では弁護士等他人の秘密を打ち明けられまして、それに基づいてその依頼者のために活動するということがその職業に内在されている、あるいは本質的にそういう職業ということになりますと、現在の刑事訴訟法におきましても証言が拒否できます。また、押収の拒絶権もあります。そういった刑事訴訟法の大きな仕組みの中で現在でも保障されている職業につきましては、これはその職業がその業務に関して通信をする場合には傍受の対象外にすべきであろうということは当然の結論として導き出されるわけでございます。こうした対象外にするということは、一面におきますと、刑事訴訟法の目的としている捜査によって真実を究明していくという非常に高い目標をその部分については例外を設けるということで調整を図っているということでございます。  報道機関の場合には、その報道機関に寄せられる情報が確かにあるわけでございますが、これはつまるところは報道することに資する情報ということでございまして、弁護士等他人の秘密を守る中でその業務を行っていくというような職業とは本質的には異なるものという理解でございます。そのような理解に立ちますと、現在の刑事訴訟法の枠を大きく変えて、報道機関についてこういった弁護士さんと同じような形で通信傍受の対象外にするということまでの法制化というのは難しいであろうという判断でございます。  ただ、今申し上げましたように、報道機関が報道の自由あるいは取材源の秘匿ということで社会的に非常に有用な活動をされているということ、その特質等をいろいろ考えますと、報道機関が取材として行う通信につきましては、これは原則として通信傍受の対象外にするというような運用は当然考えられるところでございます。  ただ、例外的には、これはもうあってほしくないことでございますが、報道機関の一員が当該傍受の対象となっている犯罪の共犯者になっているというような極めて希有な例が理屈の上では考えられる、あるいは現実にも残念ながら過去になかったことはないわけでございますが、そういった者がする通信につきましてはまた別途の考慮が働くということでございますが、原則として報道機関の通信はこの傍受の対象外として運用としては考えていきたいということでございます。  それから、その例外としてもう一つ触れますと、我々捜査機関がたまたま傍受の対象としている特定の電話がございますという例を考えてみますと、そこに記者の方が取材でかけてくるというケースが考えられます。このケースでも、今申し上げましたとおり、それは取材であるということが判明した段階ではスポットモニタリングを直ちに中断するということで、運用マニュアル等には、あるいは通達等ではそれは明確に盛り込みたいと考えております。  ただ、その際にも、例えば当該通話でその対象者たる被疑者等が犯行を自供する、あるいはこういうような内容だということで犯罪内容を打ち明けるような希有な例が考えられますが、この場合はまた別途考えざるを得ないかなというところでございます。 <0066>=内藤正光君= 立会人のことについて聞きたいので、ちょっとそれはまた後から時間があれば御質問させていただきます。  次に、立会人の協力内容についてお伺いをさせていただきます。  協力すべきこととして四点ぐらいがあるのかなと。傍受のための機器の接続が適正かどうか、あるいはまた令状に記載された傍受の期間、時間等が遵守されているかどうか、あるいはまた該当性判断のための傍受が適正な方法で行われているかどうか、あるいはまた傍受した通信のすべてが記録されているかどうか、これらの外形的なチェック、これが立会人の果たすべき協力事項だと言われております。  そこで、一番、二番はいいとしても三番目ですね、つまり該当性判断のための傍受が適正に行われているかどうか、これを立会人にチェックしろといってもなかなか負担は大きいものだと思います。  そこで、極力立会人の負担を軽減するために私は提案をさせていただきたいんですが、例えば以下の機能を備えた機器を開発すべきだと。例えば、捜査官による傍受という行為と録音がシンクロをする。二つとして、該当性判断のための時間、例えば事前に二分間設定したもの、それが過ぎたら自動的に切れてしまう。あるいはまた、一定のインターバルを経なければ通話モニターを再開できない。そしてまた、犯罪通信の本格的な傍受を行うためにはやはりそれなりのボタンを押す、そういうことをしないとだめだというような機械を私は開発して使用すべきだと考えます。それによって立会人の負担を軽減すべきではないかと思いますが、ちょっと時間もないので短目にお願いします。 <0067>=政府委員(松尾邦弘君)= 大変貴重な御提案をいただきました。我々としても、機材の開発ということは考えておりまして、その機材の機能に今御提案になった中でできる限りのものを取り入れていきたいというように考えております。 <0068>=内藤正光君= ちょっと改めてお伺いしたいんですが、しかし、そういう機械ができたとしても、適正に傍受が行われているかどうか外形的チェックをせよということなんですが、内容も聞けないのに具体的にどうやってやるんですか。手短にお願いします。 <0069>=政府委員(松尾邦弘君)= これは相当人数が予定されると思うんですが、立会人の皆さんにもどういう形でこの傍受を行うのかについては具体的な方法をその場において説明します。この場合は三十秒聞きます、その後で一分間はあけます、あるいは機械的に、今委員のおっしゃったような一分間はあけざるを得ないような機械を開発するのが一番早いわけですが、そういった仕組みでやりますというふうなことを説明しますので、外形的にはそういう間隔でやっているかどうかは容易にわかることでございます。  そういったことも含めまして、それほどの負担ということにはならないのではないかなと我々は思っております。 <0070>=内藤正光君= 次は、常時立ち会いについてお伺いします。  原案では常時立ち会いを要しないとしていたかと思います。ところが、いつの間にか常時立ち会いという修正案ができ上がってしまった。私はなぜなんだろうと。これだけの重要法案の重要項目がなぜこんなに簡単に翻ってしまったんだろう。本来なら法制審の意見を聞くなりすべきだったと思いますし、そもそも衆議院の法務委員会の方でこの辺の質疑はほとんどなかったというふうに私は思います。何で変わってしまったんですか。 <0071>=政府委員(松尾邦弘君)= 原案では常時立ち会いは原則ということでございましたが、例外を認めておりました。それは、例えばどうしても人的都合が突然つかなくなる、例えばNTTのある局で傍受していたところ大規模な事故が起こって総員がその復旧にかからなきゃいかぬということになりますと立ち会い要員を十分に確保できないというような場合も考えられましたので、極めて例外的には立会人がいないこともそれはやむを得ない場合もあるかというのが原案の作成の判断でございました。  ただ、その場合でも重要な時点、例えばカセットをかえるときとか、あるいは中断するときというようなときには必ず立会人が必要ですよということでございましたが、それ以外の場合ですとやむを得ない場合も例外的にはあるのかなということで、立会人の負担軽減ということもありまして、そう原案ではなっておりました。  しかし、立会人の重要性を修正案で指摘されまして、修正案としては、やはり常時立ち会いということがこの法案としてはあるべき姿だというふうにお考えになって、その旨修正されたということでございます。 <0072>=内藤正光君= 私は、原案で常時立ち会いを必要としないというふうな結論に至ったというのは、やはりいろんな通信事業者の諸事情を聞いた上でのことだと思います。実際に通信事業者というのはさまざまな問題、事情を抱えているわけでございます。  言うまでもなく、インターネットプロバイダー、その多くは数人で運営するような、それこそ一人で運営するような弱小零細企業でございます。また、例えばNTTだとかそういった大きな通信事業者だったら大丈夫だろうとお思いになるかもしれませんが、例えば全国三千ぐらいある電話局のうち実際に人がいて保守をしているのは二百にすぎない。つまり、大半が無人局だと。何かあったらそこに行かなきゃいけないわけですね。アナログの通信が今九三%ですから、実際にその電話局のMDFまで行ってクリップを挟んで聞かなきゃいけない。つまり、どんな通信事業者も大小を問わずやはり常時立会人を出せるほどの余裕はないわけなんです。  そこで、お伺いします。  原案のあの精神を私はもう一回思い返していただきたいんですが、それぞれの通信事業者が人的な問題で業務上支障があると判断した場合、常時立ち会いを拒否できるんですか。そして、拒否した場合、それは処罰の対象になるんですか。 <0073>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案の通信事業者等の協力というのは、非常に過度なあるいは過分なことまで要求しているわけではございません。どうしても難しい場合には例えば地方公共団体の職員を立会人に加えるとか、あるいは最初からそういう需要が見込まれる場合にはそういう通信事業者とそれから地方公共団体の職員とでチームを組んでもらって立会人をするとかということでそれぞれの負担を軽減させる、合理的な範囲内の協力をいただくということでおさまるようにそれは事前に十分な協議があるということでございます。 <0074>=内藤正光君= つまり、人的な理由は通信事業者の相当な理由というふうに認められるというふうに理解してよろしいんですね。 <0075>=政府委員(松尾邦弘君)= そのとおりでございます。 <0076>=内藤正光君= それを埋めるべく通信事業者以外が立会人、言ってみれば公共団体の人たちが立会人になり得るということでいいんですね。 <0077>=政府委員(松尾邦弘君)= おっしゃるとおりでございます。 <0078>=内藤正光君= もう時間もなくなってしまいましたので、最後に一点お伺いをさせていただきます。  今後、この通信傍受法案が通ったとしたら定期的に国会報告が行われていくわけなんですが、そしてその際通信傍受法のいろいろな問題点が審議されるだろうと思います。そのとき、そういう機会をつかまえて通信事業者からもいろいろな事情なり意見を聞いて、もし必要とあらばこの通信傍受法はどんどん見直していくというふうに考えてよろしいんですね。 <0079>=政府委員(松尾邦弘君)= 国会に御報告するということの意味の一つは、今おっしゃったような、何せ日本で採用する新しい制度でございますので、これをまた国会に御報告していろいろ論議をいただいて、また国民からのいろいろな改善点等についての御意見もちょうだいして、改善すべきものがあれば今後改善していくということでございます。 <0080>=内藤正光君= 私がこの法務委員会で質問に立たせていただいたのは先週からでございます。きょうで三回目でございます。たった三回の審議においてでも、例えば実は携帯電話は技術的には現行システムでは傍受できなかったり、あるいはまたそれに対してどうするのかとお伺いしたら、国家予算で開発を進めていくとかいろいろ重要なことがぽろぽろ出てきたんです。  私はまだこの通信傍受法に関して審議が十分になされたとは決して思っておりません。ですから私は、早急に拙速にこれを通過させるということは断じてあってはならない、もっと慎重な審議を行っていくべきだということを申し上げて、関連質疑をお許しいただきたいと思います。 <0081>=小川敏夫君= 郵政省の方に最初にお尋ねします。  現行の交換機システムでは携帯電話の傍受が不可能もしくは著しく困難であるということで、これについて法務省の方はそれが可能となるようなシステム変更を要請する、こういうふうに言っておられますが、この点、郵政省の方は同じように携帯電話を行う電気通信事業者に対してそのような技術開発あるいはシステム変更の要請、行政指導、こういったことを行う考えはあるんでしょうか。 <0082>=政府委員(天野定功君)= お答え申し上げます。  傍受を実施するために必要なシステム等を新たに開発することは、ただいま御審議いただいております法案第十一条により通信事業者が負う協力義務の範囲外というふうに考えております。新たに必要となるシステム等の開発につきましては、法案成立後、捜査機関等が通信事業者に対しまして協力要請が行われ、そして両者間で話し合われるべき事項であるというふうに認識しております。  したがいまして、郵政省としましては、通信事業者に対しましてただいま御指摘のようなシステム等の開発を指示ないし要請するようなこと、あるいは協力を拒んだ場合に不利益な扱いをするというようなことは考えておりません。 <0083>=小川敏夫君= 先に回答いただきましたけれども、仮に事業者が法務省の要請に応じないとしても、郵政省としてはその業者に対して何ら不利益な取り扱いは一切しないということでございますね。確認の返事だけで結構です。 <0084>=政府委員(天野定功君)= そのとおりでございます。 <0085>=小川敏夫君= 郵政省に対する質疑はこれで終わりでございます。  法務省にお尋ねしますが、これまでの答弁の中で、携帯電話に関しては一年以内に国の予算を使って通信事業者にシステム変更していただくという回答をいただいております。  まず一つは、技術面の問題でありますが、先般参考人で出席されましたデジタルホンでは発信では不可能、受信では探索に相当な時間を要するということでしたが、他の通信事業者の現行システムではどのような状況になっておるか把握しておられるでしょうか。把握しておられたら、それを教えてください。 <0086>=政府委員(松尾邦弘君)= 携帯電話の傍受に関しては、技術的に現行のシステムを前提といたしますといろいろな困難があるということはこれまでの参考人の御発言等でもありまして、そのとおりでございます。  ただ、これは通信の傍受という今まで法制面でのシステムがございませんでした。また、そういったことについての必要性という観点からそれぞれの通信事業者がそれに応じたシステムを考える、あるいは採用するというようなことでもございませんのでそうした技術的な困難が存在するということでございますが、そのような技術的な問題については我々は解決が可能であるというふうに考えております。  ほかの携帯電話について、確かに複数の業者等があるわけでございますが、基本的なシステムとしてはそれほど大きな違いはございませんので、技術的に例えば越えられない壁があるというようなシステムをとっているというような通信事業者はいないというふうに理解しております。 <0087>=小川敏夫君= 素人考えなんですが、技術的問題は時間とお金をかければ幾らでもできると思うんです。ただ、時間的な問題、私は一年じゃできなくてもっと時間がかかると思うんです。  あと費用の問題、これはやはり相当な高度の交換機システムを、さらに傍受を行うためには非常に瞬時もしくは瞬時に近い状態で傍受ができるような状態にしなくてはならないとなると相当大幅なシステム変更が伴い、相当膨大な費用がかかるんじゃないかと思うんです。これは例えば国が、国というか警察がこの法律ができたときにどういう体制をつくるんだということでどれだけの予算を使うんだという話ではなくて、これは通信事業者がシステム変更しなければ有効性を確保できないということであるから、いずれ予算をどうするこうするではなくて、必ずこれだけの費用がかかるという性質のものだと思うんです。  ですから、どれだけの費用がかかるという見込みなのか、そこのところをもっと具体的に教えていただきたいんです。 <0088>=政府委員(松尾邦弘君)= 通信傍受システムの構築ということが必要なわけでございますけれども、現在利用されております携帯電話のシステムの技術の応用の問題でございます。したがいまして、膨大なコストがかかるということはないということでございます。現に諸外国では既に携帯電話も通信傍受の対象として実施されているわけでございまして、膨大なコストがかかったという例はなかったというふうに我々は承知しています。 <0089>=小川敏夫君= 例えばデジタルホンですと、発信については全くその回線を探索するシステムになっていない。これを回線を瞬時に把握するシステム、あるいは非常に速い時間に回線を探索するシステムというものを備えつけるとしましても、仮に今の交換機システムあるいはコンピューターシステムではもともとそこまではできないというのであれば、これは交換機システムそのものを新規に交換しなければならないというような問題になってくるわけです。そうしますと、これは数億円とかあるいは数十億円という単位じゃない、もっと巨額な費用を要するんではないかと思うんですが、そこら辺はいかがですか。 <0090>=政府委員(松尾邦弘君)= 各国で用いられている携帯電話のシステムというのはさまざまでございますが、原理的にはそれほど変わってはございません。そうした中で今御質問のあったようなケースを考えましても、それに莫大な費用がかかるということは考えられないわけでございます。  現に、例えば携帯電話の通信回線というのは最適なものを選んで自動的にその回線が設定されるというシステムを今とっておりまして、参考人の質疑のときにもありましたが、通話中でもその最適な状態が変わりますと同一通話内で使われている回線も変わるということでございます。そうなりますと、回線をまた特定してさらに傍受を続けるという作業が必要だということになりますが、これは現在の傍受ということを想定していないとそういうことになるわけでございます。  ただ、現在でも、例えば十回線のうちの適宜の回線が最適状態によって瞬時に変わっていくというシステムを考えてみましても、では十回線の中のどの回線に変わったのかということを瞬時につかまえる装置自体を開発することについてはそれほどの技術的な問題はない、つまり現在の技術の応用の問題の範囲内で比較的容易に技術的な開発ができるということでございました。  また、そのほかの似たような技術上の問題が確かに幾つかあるということでございますが、いずれも技術的にそれほど難しいことではないし、また膨大な金がかかるというような技術的な問題は存在しないと我々は考えております。 <0091>=小川敏夫君= 技術論争はここで私と刑事局長が繰り広げても余り意味がないかもしれませんが、ぜひそこのところをもっとわかるような技術的な専門家の意見も聞くような機会をまた持っていただくよう、委員長に要請いたします。  それから、費用の面で膨大か膨大じゃないかというのは余りにも抽象論過ぎるんですが、ただこの法案の実効性がそこにかかっている以上、ある程度の目安的な費用の数字を説明していただかないと、これはやはり審議するに当たっては不十分ではないかと思うんですが、そういう目安的な数字そのものも今示していただけないんでしょうか。 <0092>=政府委員(松尾邦弘君)= 今いろいろな技術上の問題を検討している最中でございまして、今算定している、始めているということはそのとおりでございますが、今ここで幾らぐらいというのはなかなか積算が難しいわけでございます。  ただ、通常の予算といいますか、その範囲内である程度賄えるぐらいの金額ということでございまして、何十億もかかるような話として我々は考えておるわけではない、また技術的にも金額的にもそのような膨大なものではないということでぜひ御理解をいただきたいと思っております。 <0093>=小川敏夫君= ある雑誌の資料、具体的な明細がわからないものだから直ちにそれがそのままというわけではないんですが、ドイツの政府が通信傍受のために要する費用の見積書を出したところ、四十億マルク、邦貨にして約二千五百億円というような報告がなされているというようなこともあります。これは明細がわからないから直ちに言えないんですが、ただ、やはり刑事局長から具体的な数字あるいは単位が全然出てこないんですが、私は数億円とか数十億円ではないと思うんですが、そこら辺はいかがでしょうか、その見込みは。 <0094>=政府委員(松尾邦弘君)= そのドイツの例の積算の根拠というのはよくわかりませんが、人件費等いろいろ含んだものであるのかどうかという点、我々としてはその詳細は把握しておりませんので、何とも申し上げられません。  それから、一年ですべての技術上の問題を解決するということになりますと、これはなかなか期間の問題としては難しい問題もあろうかと思います。我々としては、まず携帯電話等で言いましても非常に汎用率の高い業種というものを優先的に技術開発していく必要がございます。  最終的にはイリジウム通信という、これは技術的には確かに現在の技術ですと非常に難しいということでございますので、将来はそれをどうするかということはいずれその先の段階で検討するということでございますが、とりあえずは通常の携帯電話からイリジウム通信までの間のいろいろな携帯電話通信、これをターゲットにしまして順次技術を開発していく、できる限り汎用性の高いものについては実施までの期間にその技術を開発したいということで考えております。 <0095>=小川敏夫君= 終始一貫して、携帯電話を傍受できるシステムにシステム変更をお願いするに当たってのかかる費用の目安となる数字も出てこないのでありますが、国民の税金をそのために投入するわけですから、それが全く白紙のままでいいのか、やはりそういった金銭的な目安、この法律の実効性を担保するために税金を幾ら使うのかということは明らかにしていただかないと十分な審議ができないと思いますので、そこら辺のところはまたこの質疑が終了する前に改めて提示していただいて、質疑を行いたいと思います。  それから、この携帯電話の傍受の問題は技術的な問題以外にもう一つ大きな問題がございます。  通信事業者間で今激しいシェア争いといいますか、競争を行っている。そういった場合に、通信事業者の中でばらつきが出て、法務省の要請に応じて傍受ができるというふうにシステム変更に応じる業者と、それから憲法の通信の秘密を厳格に守って法務省の要請に応じない業者というものが出た場合、これはやはり一般に対する販売競争としましては、警察による傍受ができない、著しく困難ということを口コミかあるいは大々的に宣伝するかは別にして、今後の通信事業者間の競争に与える影響が非常に大きいと思うんです。  ですから、その点に関して、通信事業者に対して単なる要請だけでそうした通信事業者間の競争に誤ったというか不適当な競争関係を生じさせる結果になってしまわないかということを心配しているんですが、そこの点、法務省の要請に対する通信事業者の対応の見込み、どの程度の今交渉をしているのか、あるいは確信を得ているのか、そこら辺を具体的に教えてください。 <0096>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案の立案の段階で、通信事業者とはかなりの回数にわたりましていろいろな協議を行いました。  その際には、今話題になっております技術上の問題についての御意見もちょうだいしたりしたこともございますが、前提といたしましては、この通信傍受というのはやはり犯罪捜査のために必要不可欠な捜査手法としてお認めいただきたいということで出しておりまして、これは現在の組織犯罪の状況を考えますと、国民の平穏な生活を維持し、現在の良好な治安状態を維持していくということについては捜査手法としてぜひ必要な手法であるということでお願いしているわけでございますので、今の点については、私どもとしては通信事業者に十分な御理解をいただいているというふうに考えております。  その上で、通信事業者等と今後の実際に傍受できるようなシステム等を開発するに当たりましてお話し合いをさせていただきますが、そうした理解を前提にいたしまして、通信事業者等に過度な負担をかけないという基本的な姿勢、またそれは財政面でもまたは人的な協力という面でも同じでございますが、そうした姿勢を我々としては貫いていきたいと思っておりますし、そうした話の中で国としてのそういう姿勢も御理解いただきますれば、こうしたシステムの開発がもし必要な場合にはいずれの事業者からも御協力をいただけるものというふうに今理解しているところでございます。 <0097>=小川敏夫君= 御協力はいただけると御理解していらっしゃるんならいいけれども、ただ、いただけるものという思いだけではやはり足らないんで、具体的に約束をもらっているのかどうか、そこの点はどうですか。 <0098>=政府委員(松尾邦弘君)= このいろいろな話し合いの過程で、確かに先生御指摘のように、通信事業者側からはどれほどの負担が通信事業者等にかかるのだろうかという懸念が表明されていることはまた事実でございます。  その点につきましては、我々は今申し上げましたように、過度の負担を課することはないというようなことで、今申し上げたような基本的な通信傍受の必要性を御理解いただいた上で御納得いただける範囲内の協力をいただくというふうに御説明をしております。そうしたことに対しましては絶対反対であるというような事業者は、これまでの間おらなかったように理解しております。 <0099>=小川敏夫君= どうもわかりにくい話なんですが、ただ、そうするとまだ確約はいただいていないということでよろしいわけですね。 <0100>=政府委員(松尾邦弘君)= 具体的なシステム開発についての個々の事業者との話し合いはまだ始めておりません。 <0101>=小川敏夫君= やはり仮に一社でもシステム変更を行わない、憲法の通信の秘密を守るという姿勢を貫くということであれば、その電話を集中的に犯罪者が使うことになるでしょうからこの法案の実効性が確保されないわけでございます。  ですから、そこら辺は単に大丈夫であろうという刑事局長の見通しだけではなくて、通信事業者に再度委員会にお越しいただいてその点の意見をすべて聞くとか、そういったことをきちんと示していただかないと、この法案、しり抜けになるばかりか通信事業者の競争にあってはならない不必要な要素を加えて市場を乱してしまうということにもなりますので、そこら辺のところをきちんと詰めていただきたいというふうに考えております。  次に、ほかの質問に行きますが、通信傍受法案の第三条の点でございます。特定の問題ですけれども、これまでの質疑の中で、家庭で一つの電話を複数の人間が使っているという場合、その中の一人が他の要件を満たせばその電話が傍受されることになる。その結果、犯罪に関係しない他の家族も該当性判断という範囲で傍受されるということになるということは御答弁いただきました。  さらに、そうしますと、例えば家庭ではなくて私のような法律事務所でも同じように、事務所の中に五人、六人いて、一つの電話あるいは二つの電話をみんなで共用しているわけです。これもやはり同じようにその中に犯罪者がいれば他の人間は該当性判断という範囲で聞かれるという理屈になると思います。  それで確認するんですが、私が聞いた例では回線が一本でしたが、例えば回線が二本、三本あって、そのうちの代表電話ということで、二本、三本の複数の電話回線を複数の人間が使っているという場合は、やはり同じようにその複数の電話について傍受されるということになるんでしょうか。 <0102>=政府委員(松尾邦弘君)= ある通信手段がその犯罪関連通信に用いられる通信手段として特定されるかどうかというのが一つの要件でございます。仮に特定された場合に、今委員のお挙げになった例ですと、複数の者が例えば事務所等でそれを使うということになりますと、その複数が特定されているかどうかというのも一つのまた判断材料になります。  例えば、複数の電話あるいは複数の回線が特定されたとして、その利用者が特定されている場合には比較的傍受ということについては障害がないように思いますが、その通信手段が特定されましても利用者が不特定多数であるというようなケースもまたあり得ると思います。そういった場合には、通信手段を実際に傍受の対象とした場合の弊害、つまり不特定多数の通話も聞かざるを得なくなってくるということも当然考慮する必要がありまして、通信手段が特定できたからといって直ちに傍受の対象とすることは適当でないケースも考えられるところでございます。 <0103>=小川敏夫君= どうも特定の話とそれ以外のあるべき運用の話とを一緒にごちゃまぜに説明されているのでわかりにくいんですが、要するに回線が二本、三本の複数であっても、それが犯人が使用する電話であるということが特定されれば、その複数の回線全部について傍受ができることになるわけですね。 <0104>=政府委員(松尾邦弘君)= 傍受の対象となり得るものかどうかという点から見ますと、委員のおっしゃったとおりでございます。 <0105>=小川敏夫君= そうすると、その複数の回線が先ほど言ったように家族でも事務所でもいい、複数人が使っている場合に、複数人の中の一人が犯罪者である場合に、その犯罪者以外の人間も該当性判断という範囲で聞かれるということになるわけですね。  そうすると、その人間がかけた電話、それからその人間にかかってきた電話も該当性判断の範囲で聞かれることになるわけですね。 <0106>=政府委員(松尾邦弘君)= それは御指摘のとおりということになります。 <0107>=小川敏夫君= それから、該当性判断の範囲を超えて捜査官が仮に乱用に及んで、あるいは違法に及んで傍受してしまったといっても立会人はそれまでチェックできない。それから、裁判所による事後的なチェックもないということもそれでよろしいわけですね。 <0108>=政府委員(松尾邦弘君)= 今の点は直ちにそうですというふうになかなか申し上げられません。  本来、傍受すべき区間を超えて不必要に傍受しておりますと、それはもちろんこの法律としては違法なことでございますので、懲戒処分等の対象になります。また、傍受したことはすべて原記録には残されているわけでございますので、不服申し立てあるいはその他必要な裁判所がチェックする機会にはそうした行為についての裁判所の判断が入るということでございます。 <0109>=小川敏夫君= ただいまの刑事局長の答弁を、はい、そうですかと私も認めるわけにはいかないのですが、そこの点の議論はもう既にしてありますので、ほかの点に行きます。  十六条の逆探知の問題ですが、特に十六条の三項の問題、場所も離れているし対象の通信事業者も異なるという場合、これなどは刑事局長のお考えですと刑事処分に伴う付随処分、こういうことで行うことなのでしょうか。 <0110>=政府委員(松尾邦弘君)= そのとおりでございます。 <0111>=小川敏夫君= どうもこれまでの強制処分の付随処分といいますと、やはり場所も同一、対象者も同一というのが一つの原則なんですが、この場合ですと場所も違うし通信事業者の人も違う。果たしてこれで付随処分と言えるのか。付随処分でできる範囲を超えているんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。 <0112>=政府委員(松尾邦弘君)= 令状による傍受の実施場所とは別の場所において逆探知を要請する場合がこの十六条三項の規定です。その場合には、通信の当事者との関係では新たな法益侵害が生ずるということはないということはまず言えるわけでございまして、要請を受けた通信事業者との関係では直ちに令状の効力がそのまま及ぶものではないということですので、この三項で協力義務を課して、逆探知の要請を受けた通信事業者が通信の秘密を守る義務から解除されるということを明らかにしたということでございます。 <0113>=小川敏夫君= ただ、そうはいっても捜査官の行う一つの処分ですから、仮にこれが強制処分であれば本来令状がなくてはいけない。しかし、実際には口頭の告知で足りるわけですね。では、任意処分であるなら任意処分で本来法律上の協力義務はないはずでございます。ですから、強制処分としてもおかしいし任意処分としてもおかしいし、全く新たな類型に属するものをこの法案はつくってしまったというので、どうもこれは、ただ付随処分とも考えられませんから、やはり刑事手続を定めた憲法上相当問題がある規定ではないかというふうに思います。その点は回答も先に聞きましたから、次の質問に移ります。  先ほど二十二条のメモの問題が出てきました。これは、メモに関しては使用してはいけないという規定があるということですが、この使用の概念ですね、例えば証拠として使用してはいけないとかそういう法律的な意味を指すのか。捜査官が何か捜査をしているときに自分の記憶喚起のために自分が手帳を開いて思い出す、これも日本語の広い意味では使用に当たるんですけれども、この使用の概念について手短に説明していただきたいのです。 <0114>=政府委員(松尾邦弘君)= 二十二条の四項は、傍受記録を作成した場合において、複製等があるときはその記録を全部消去するということになっております。これは、傍受記録と原記録というものの存在をこの法律の柱にしておりますので、そのほかにメモ等がある場合にはそれが乱用されることのないようにここに消去義務を課したものでございます。  したがいまして、傍受記録の内容以外のものについては一切の使用を許さないというふうに御理解いただきたいと思っております。 <0115>=小川敏夫君= 先ほどの質疑ですと、メモについても消去するように努めたいということですが、そういうことであれば、法案を修正してメモをとることを禁止するなり消去の中に含めればいいというふうに思っております。  最後ですが、警察庁の方にお尋ねします。  これまでの法務省の刑事局長の答弁で、この法案上、警察施設から技術を駆使して傍受を行うことは禁止されているんだという説明をいただきました。あるいは、インターネット通信の場合に、該当性判断ですべての情報を受信した後、即時その場において傍受記録を作成するんだ、それが速やかに傍受記録を作成するという法律の意味だという答弁をいただいております。これは警察庁の御見解もそれと同じでよろしいんでしょうか。すなわち、今説明した範囲で違うことをやることは違法だという認識でよろしいんでしょうか。 <0116>=政府委員(林則清君)= まず、最初のお尋ねの傍受の実施の場所につきましては、もう言うまでもないことでありますけれども、個別の事案ごとに裁判官がその実施が可能な最適な場所を決定するということになるものと承知しております。  したがいまして、傍受の実施は、通信傍受法のもとでの裁判官の法的判断として、電話交換局等通信事業者等の監視する場所において通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者等の立ち会いのもとに行うということになるわけでありまして、捜査機関の施設内で傍受を行うというようなことは、この法律をしっかり読めばそういうことは許されるものではないというふうに理解をいたしております。警察としましては、そういう意味では松尾刑事局長の答弁と全く同じでございます。  それから、後半のお尋ねは、該当性の判断の速やかな実施の点のお尋ねだと思いますけれども、電子メールのように傍受のときにその内容を知ることのできないものにつきましては、法案の第十三条二項の規定により、通信に係る信号全体を一たん傍受、つまりコピーをして、これを文字等に変換した上で該当性の判断を行うというのはもう先生御指摘のとおりであります。  この場合、法案十三条第二項後段の規定によって、該当性の判断は速やかに行わなければならないというふうにされておりまして、したがいまして、直ちに復元することが可能なものについては立会人がいる傍受の実施の場所において復元する、そして必要最小限度の判読を行って該当性を判断すべきであると考えております。  すなわち、直ちに復元することが可能であるにもかかわらず、傍受した記録をその場において該当性判断をせずにそのまま警察署へ持ち帰るといったことは、同項の規定に違反するものというふうに考えております。  警察といたしましては、蛇足ではありますけれども、今申し上げましたことにつきましても、国家公安委員会規則、通達等によって厳格に規定して、都道府県警察に周知徹底させていきたい、かように考えております。 <0117>=小川敏夫君= まだ質問事項たくさん残っているんですが、時間が来ましたので、終わります。 <0118>=千葉景子君= きょうは質問通告を既にさせていただいておりますけれども、その前に、今、同僚議員の方からるる質問をさせていただきました。それにかかわって、私も大変疑問に思い、あるいは改めてお尋ねをしておかなければいけないと思われる点がございますので、まずそこからお願いをしたいというふうに思います。  率直に言いまして、この法案、審議をすればするだけ非常に問題点が明らかになってきた。これはそれぞれ技術的、専門的な皆さんの質疑もあり、私も大変参考にさせていただきました。考えてみますと、本当にこれは、法案をまず法務省が出されるときに、どれだけ緻密な、あるいはいろいろな分野との調整も図り、日本のこれからの行く末、こういうことにもきちっとした理念を持ちながら法案を出されたのかどうか、大変疑問に思います。  通信傍受というその捜査手法を何が何でもまず取り入れるんだ、何かそれが先行して、本当に問題点が置き去りにしてこられたという感が私は率直に言っていたしております。本来であれば、もう一度練り直して法案をつくり直す、出し直す、それくらいの問題ではないかと私は今率直に思っております。それをまずよくよく理解をいただきたいというふうに思います。  先ほど海野議員の方から暗号の問題について質問がございました。私は、これは大変矛盾に満ちた議論だと思うんです。  というのは、警察庁、それから法務省もそうですけれども、やはりこれからのインターネットなどについては、これはオープンな通信手段ですから、当然、暗号、あるいはプライバシーを守るという手法がとられるわけです。しかし、それについては、何とか解読をして捜査に生かしたいというふうに言われます。解読できないと困るわけですね、一方では。ところが、電子商取引などを含めて、これからの新しい情報通信の大きな発展ということを考えてみるときには、商取引の安全とかあるいはプライバシーなどを守るためには、今度は暗号などを使ったときにやたら簡単に解読されては困るわけです。  要するに、矛盾したこの二つの問題を一体どういうふうに解決していこうとされているのか。それについて、本当に日本の政府としてもきちっとした物の考え方というのを持っておられたのかどうか。その辺が私は大変今疑問に思うところです。  今申し上げましたように、片方では解読をせにゃいかぬ、片方では解読されちゃいかぬ、この矛盾というのをどういうふうに考えられますか。 <0119>=政府委員(松尾邦弘君)= 問題としては、委員御指摘のように大変大きな問題だろうと思います。  OECDの閣僚理事会による暗号政策ガイドラインというものがございますが、この中で、一方で、暗号技法というのは情報技術の安全な利用を確保するための一つの有効な道具となり得る。安全な情報・通信ネットワーク及びシステムの重要な構成要素であることを認識するという一つの項目が明確に入っております。  それと同時に、別のところでは、暗号は個人または団体による非合法な活動のためにもまた利用される可能性がある。それにより、公共の安全、国家の安全、法の執行、ビジネスの利益、顧客の利益またはプライバシーに悪影響が及びかねず、したがって、政府は、産業界及び一般国民とともに、均衡のとれた政策を発展させることを要求されているということを認識している。こういう文言もまたあります。  先進国の中で、この暗号の問題というのは今さまざまな角度から論議されているという点で、まさに重要な問題であるというのは委員御指摘のとおりでございます。  ただ、三点だけ申し上げておきたいんですが、一点は、暗号の問題というのは通信傍受法案特有な問題ではございません。これまでもいろいろな企業を捜索、押収した場合に、暗号を解読する必要があるそういう電子的な情報というものがあったこともございます。オウムの例で言いましても、暗号解読に相当な日時を要したということもまたございました。したがって、捜査手法として、暗号の解読というのは、やはりこれまでにも一つの大きな重要課題であったわけでございます。  それから、通信傍受法案の十三条二項をごらんいただきますと、直ちに内容が判読不能の場合には、これを一たん全部傍受記録として、暗号の場合は解読する必要があるということがございます。確かに解読には、比較的容易に解読できるもの、相当な日時をかけて解読しなきゃいけないもの、あるいは場合によりますと全然解読できないものということもそれはあり得ることでございます。  ただ、これは暗号解読の技術開発の問題でございまして、捜査機関としては、そうした問題につきましても徹底して努力していくということは従来からもやっておりますし、これからも、特に通信傍受では暗号の使われる機会というのが多いことも想像されますので、そうした点についてもまた十分な努力をしていくということでございます。  こうしたことで、その暗号の問題というのは、確かにこれからの情報通信が高度に発達していく中でますます重要性を増すと同時に、通信傍受でもある意味では永遠の課題ということで、新しい技術の暗号が開発されればそれをまた捜査機関は一生懸命解読に努める。それを技術として蓄積していくということがまた重要かなというふうに考えているところでございます。 <0120>=千葉景子君= それはそれとしてお聞きしておきますが、もう一つ、小川委員の質疑の中で携帯電話の問題に触れられました。  これも現在では技術的になかなか傍受が困難という問題があり、これについてはこれからのシステム開発ということを国の費用でされるということです。先ほども、費用の点についてははっきりしたお答えはございませんでした。ただ、やはり予算を使って行うことです。それから、費用とそして効果、一体これがどういうバランスで行われるのか、こういう問題があります。  それから、例えば携帯電話というのも、これからさらに技術開発がされて新しいシステムに数年したら変わっていくというふうに言われています。そういう際に、現在のシステムを前提にしてこの傍受のための開発をする、費用をかける、かけた途端にもう次の新しいまたシステムに変わっていく。こういうときに、どの程度そこに金をかけ、そして費用をかけて、その反面の効果がどの程度だ、こういうことを全く抜きにしてこの議論というのは進まないだろうというふうに思うんですね。これもようやくこの審議で徐々に明らかになってきたことです。  だとすれば、携帯電話について一般的にこの法律に盛り込むのではなくて、もう少し議論を詰めて、じゃ今回はこの中から一たん削除をして、少しその議論を煮詰めた上で、その通信傍受が可能であるか、あるいはどういう形態で行うのかということを国会で議論してはっきり定めていくというようなことだって必要ではないかと思います。  私たちも、無責任に、できないもの、これから開発しよう、どれぐらい費用がかかるかもわからない、そんなものにそうですかと言うわけにはいかないわけですよ。  そういう点について考えたときには、改めて、例えば費用とかあるいはこれから将来の新しいシステム開発が行われる際の対応の仕方とか、そういうことをどう考えていますか。 <0121>=政府委員(松尾邦弘君)= まず、携帯電話等の傍受の必要性につきましては、これはそういう通信事業者等の参考人質疑のときにも、現在非常に重要な部分が携帯電話等で行われている、それから最近におきますとメールが使用されることもだんだんシェアも大きくなってきているということでございまして、事業者の方も、通信傍受を行うのであればこの部分を除外してしまうということは適当でないことは我々もわかっていますということを明確におっしゃっておりました。  まさにそのとおりで、捜査手法として、電話だけではなくてこうした新しい分野の、発展しつつある分野の通信手段も通信傍受の対象として取り込むということがどうしても必要だということで、まずその点は御理解いただきたいと思います。  費用の点は、先ほどからいろいろお尋ねいただくんですが、今の法律が通りますと、それぞれの事業者ごとに、あるいは事業者団体ごとにといいますか、さらに詳細な打ち合わせとお願いをする機会を当然設けるつもりでおります。その中で、どの程度の協力をいただけるのか。あるいは、基本的には既存の技術の応用の問題でございますので、既存の技術についてのある程度の技術的な提供ということも場合によるとお願いすることもあると思います。そうしたことを総合して費用というのは積算されるということになります。  我々が従来検討しております範囲内では、それほど問題にするほどの多額な費用はかからないということでございます。現に、これまで携帯電話等で傍受を実施している国におきましても、実施する過程の中でシステムのグレードアップがあり、あるいは技術開発があったわけでございますが、それについて莫大な費用がかかって国民に迷惑をかけたとか国民の税金を相当費やしたなんという話はこれまで聞いておりませんので、そうした問題は生じないものというふうに我々は考えております。 <0122>=千葉景子君= さっぱりわからないんですね。こういう状況を見ても、例えばこれからの国の将来、そういうことにも大きくかかわってくる、あるいは財政にどういう影響があるかということにもかかわる、あるいはこれからの情報通信の発展とのかかわり合い、こういう問題もある。  当然のことながら、この委員会でも、交通・情報通信委員会などとの連合審査とか、そういうことで本当にそれぞれの分野で誤りなきよう、あるいはそこに意思のそごがないような形で議論をしませんと、これはとんだことになるのではないかというふうに思います。  そういう意味では、私も強く連合審査の必要性というものを改めて指摘しておきたいというふうに思いますので、委員長、ぜひその点については早急に御議論をいただきたいというふうに思います。 <0123>=委員長(荒木清寛君)= はい。よく理事会で協議いたします。 <0124>=千葉景子君= さて、もう一点。  先ほど報道機関の問題がございました。これについての適用を、取材として行うもの等については適用しないという方向なんですけれども、改めてお伺いをしますが、それを明確に法に定めるということはなぜできないんでしょうか。確かに、医師、弁護士等の職務とは性格が異なるということはわかります。だから、必ずしもここで言う十五条に一緒くたにして加える必要があるかどうかは別としましても、やっぱりそれは法的にきちっと記載することというのは別段不可能なことではなかろうというふうに思うんですが、その点についていかがですか。 <0125>=政府委員(松尾邦弘君)= その点につきましては、先ほども申し上げましたが、この通信傍受の対象外にするかどうかという問題で、この法律では医師とかあるいは弁護士をその業務に関する通信はこの傍受の対象外にするということを申し上げて、そのように規定がなっているということを申し上げているわけでございます。  この刑事訴訟法の規定自体も、真実の発見という一つの大きな要請とそうした特殊な職業、つまり、他人の秘密を打ち明けられましてそれによって業務を遂行する、あるいは業務の端緒がそこにあるというような、内在的にそういったものを含む職業に証言拒絶権、押収拒絶権を認める。いわば真実の発見を、その部分では義務という面からいいますと例外をつくっていくという一つの決断を刑事訴訟法の体系はしているわけでございまして、かなりぎりぎりのところの選択によって現在の法制度はでき上がっているということでございます。  では、一方、報道機関を医師、弁護士並みに扱うかどうかという問題に帰着するわけでございますが、この点は、先ほどから申し上げておりますように、報道機関といいましても種々多様なといいますか、規模についても内容についてもさまざまございます。どの範囲をこの報道機関としてくくっていくのかという問題もございます。また、報道機関の業務といいましても、これは先ほど申し上げましたが、報道機関にいろいろな情報が寄せられる。しかし、それは報道するということに向けての情報ということでございまして、医師、弁護士のように他人の秘密を抱え込んで、あるいは秘密のまま行っていくという本質的なそういう職業とはまた違うということもあります。  そういったことで、今回は先ほど言った刑事訴訟法の組み立て方の問題、あるいは今言ったような報道機関自体の性格の問題、それからもう一つは、これは挙げることが適当かどうかわかりませんが、諸外国においても恐らく同じような判断からだと思いますが、報道機関を通信傍受の対象外にはしていないというような世界の趨勢、そういったものを考えますと、法制面で原則的にといいますか、条文としてこの報道機関の取材行為その他にかかわるものについては通信傍受の対象外に明定するということについては、そこまで踏み込むのはいかがなものかという判断でございます。  ただ、先ほどから申し上げましたように、そうはいいましても、報道機関のいろいろな特質から考えますと、取材についてあるいは取材に関する通信については最大限の配慮をする必要があるという点については我々捜査機関としても同じでございまして、運用面においてその点の十分な配慮をするということで、先ほどは個別具体的に何点か申し上げた次第でございます。 <0126>=千葉景子君= いかがなものかということですけれども、それは法律にどういう条文をきちっとつくるか、盛り込むかということにかかわるんだと思うんです。別に私はこの十五条のところに一緒に報道機関というふうに入れろとは必ずしも申しません。しかし、やはりその報道の自由なりを保障する、そういう意味での立法をここに盛り込むということは十分に私は可能だというふうに思うんです。もしもそういうことが立法的に可能だとすれば、別に嫌だと拒否される筋合いはないんじゃないかと思うんですが、改めてもしそういう工夫、知恵があるならばそうしたらいかがでしょうか。私はそうすべきだと思います。 <0127>=政府委員(松尾邦弘君)= 法律に盛り込むことが相当かどうかという点については、立案の段階から、現在もそうですが、消極として考えていると。その理由は先ほども申し上げました。  それから、報道機関の取材にかかわる、あるいは報道機関のかかわる通話は、これを傍受の対象外にするかどうかというのは、基本的な理由は今幾つか申し上げましたが、そのほかにも若干申し上げますと、今度は必要性の問題でございます。  医師、弁護士等でありますと、他人の秘密を聞くことが本質的にその職業に内在するということで、刑事訴訟法もそれを正面から認めているわけでございますが、報道機関の場合、果たしてどういう場合に通信傍受をすることによって報道の自由なりあるいは取材源の秘匿なりの問題がかかわるのだろうかと。今度は具体的に考えていきますと、先ほどから申し上げますとおり、極めてそれは希有な例であろう。全くないとは言いませんが、極めて希有な例であろう。  先ほどは合計するところ、二つ申し上げました。一つは、例えばある暴力団の組長の電話を傍受していたときに取材の電話がかかってきた。この場合は、先ほど言いましたように原則的にはスポットモニタリングをして、取材であればこれは切るというふうに申し上げました。では、切らないケースというのはあるんだろうかというのは、先ほど例として申し上げた、暴力団の組長が何をどう思ったかわかりません、本当に希有な例だと思いますが、実は何月何日の暴力団との抗争の中で、あれをやったのはおれの組だよとか、やったのはこいつだよ、ただおまえ黙っていろよというような犯行の自白のような話が流れた場合には、そのために、つまりそういう犯罪の捜査で、組織的な殺人ということで令状をとっている場合に、まさにそれで傍受しているわけですから、それを切れというのは、極めて例外的なケースでありますが、相当でない場合も考えられる。  そういう極めて例外的なケースで報道機関の取材とその通信傍受というのがバッティングするというのがありますが、そうした希有な例を想定して、じゃ法制面で明確に医師と弁護士と同じように最初から通信傍受の対象外にすべきかどうか、必要性があるかどうかという点になると、それは医師や弁護士の場合と本質的な違いがあるだろうということでございます。 <0128>=千葉景子君= これは、私も別に医師や弁護士と同じだとさっきから言っているわけじゃないんです。ただ、法的にきちっとした位置づけを報道機関、あるいは報道の自由、こういうものについて明確にしておくべきではないか、こういう趣旨ですから。改めて私ももうちょっと知恵を働かせてみたいと思いますが、さらに専門家でもございます法務省においてもぜひそこを明確にできるような知恵を出すべきではないかというふうに思います。  そういう意味で、私はこの法律でもう一つはっきりしておくべきことがあるのではないかというふうに思うんです。  修正が施されまして、確かに違法な通信傍受については罰則がかなり強くされました。ただ私は、この法律はこういう構造で考えるべきだというふうに思っています。それは、そもそも通信の秘密、プライバシー、こういうものは原則として公権力によって基本的には侵されるべきものではない。原則としては通信傍受、盗聴というものは禁ぜられるべきものだ。それをまず原則として、しかし一定の限度で捜査の必要上、適正な手続、令状、こういうものをもって一定の最小限の範囲でそれを解除する。したがって、その条件にも合わないようなものについては厳正に処罰をする。こういうきちっと明確な段階を踏んで本当は法律がつくられておればよりわかりやすい。  ところが、通信の傍受、盗聴というのは原則違法なことだということがこの法律では必ずしも明確にされていないんです。そういう規定をまず冒頭置いたらどうでしょうか。そして、捜査のために一定の限度では盗聴、通信傍受を認めるという構造にして、やはり盗聴というのは原則違法なことだというのをまずはっきりすべきだ。そこから本当は議論はスタートするはずだったんだなと改めてまた思うんです。  それについて、法務大臣にどうお考えになるかお聞きをしたいんですけれども、その前に警察庁、いかがでしょうか。この間もいろいろ警察に対する信頼のなさというものも指摘をされてまいりました。基本的に私は公権力による盗聴というのは違法行為だと。これまでも当然のことだったろうとは思います。警察庁として、それをきちっとこれまでも認識をされていたか、そしてこれまで万が一にも盗聴という事実はなかったんでしょうね。おやりになったようなことはありませんね。明言できますか。 <0129>=政府委員(林則清君)= 言うまでもなく、およそ警察活動というのは法のもとに適法、妥当に行われるべきであるというのは当然のことでありまして、今国会において当庁より累次御答弁申し上げておりますとおり、警察は今まで組織としていわゆる盗聴という違法行為は行っておりませんし、今後もそういうことを行うことはあり得ないということを申し上げておきたいと思います。 <0130>=千葉景子君= 大変今重要なことをおっしゃいました。組織としてはやってこなかったと。そこに所属をする、あるいは公務員として国の政府機関の一員たる者が盗聴という事実行為を行ったかどうかということはわからないという意味ですか。 <0131>=政府委員(林則清君)= いわゆる緒方宅事件についての御指摘だろうと思いますけれども、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において、警察官個人による、おっしゃるところの盗聴行為があったということが認められたということ、その後の民事訴訟においても同様の行為があったということが推認されたことは事実でありまして、警察として非常に厳粛にこれを受けとめており、まことにこれは残念なことであったと考えております。  以来、そのような疑いをいささかも抱かれるような職務執行は絶対に行われないよう徹底しておるところでありまして、そういう意味でも盗聴行為というのは全然行っていないということを明言することができると思います。 <0132>=千葉景子君= 別に緒方事件ということに限らないんですけれども、それはそれとして。  法務大臣、やっぱりそこのところを疑念を持たれたまま、あるいはこれからも盗聴というのは原則違法行為だよということをまずははっきりさせてこの法案というのをつくった方がよろしいのではないかと思いますが、大臣、どうですか。そこだけお聞きして終わります。 <0133>=国務大臣(陣内孝雄君)= 通信の秘密を守るというのは、これはもう基本的な権利として非常に大事なものであるということでございます。そういう中で、先ほど来委員が御心配なさっていた、あるいは御提言なされたように、一般的にこれを禁止するような条文をこの通信傍受法の中に取り込んだらどうかというようなことも付言されたわけでございますが、私どもは、既に電気通信事業法等におきまして一般的に通信の秘密の侵害行為に対する罰則規定が設けられておりますし、その上、衆議院において修正された本法律案によりましてこれらの法定刑を引き上げるということをしたわけでございますし、捜査または調査の権限を有する公務員が、その職務に関し電気通信事業法等に定める通信の秘密を侵す罪を犯した場合の加重罰則規定も設けられたところでございます。  したがって、この法案において令状によらない通信傍受の一般的禁止規定を設けるには及ばないと考えておりますし、今後も通信の秘密の基本的な人権における大事な意味合いを十分拳々服膺しながら、それぞれの立場でこれを執行していくというふうにすべきであると考えております。 <0134>=千葉景子君= 終わります。 <0135>=委員長(荒木清寛君)= 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ─────・─────    午後一時三十三分開会 <0136>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0137>=大森礼子君= 公明党の大森礼子です。  早速質問させていただきます。  まず、午前中の審議の中で、参考人の質疑の中で出てきたことで、現在の時点では携帯電話の傍受は困難という発言があったことをめぐっていろいろ議論がされております。  それで、例えばNTTの場合にはできる。それは傍受をする必要がある場合があるからでありまして、例えば一一三番、故障のところへ電話する場合があります。うちの母親は田舎におりますけれども、ずっと話し中で通じない、こんなにうちのおばあさんが長電話するはずがないから、もしかしたら倒れて受話器でも外れているんじゃないかとか、こんな場合に確認することもありますし、いろんなケースがあると思います。そのときに必要な情報は、話し中か受話器が外れているかという情報なわけでありまして、それに対応してNTTではそういうシステムになっている。  携帯電話の場合には、それはまず必要とされることはないのではないか。そして、必要でないシステムのために金をかけるということは、これは企業のあり方としては余り賢明なやり方ではないわけでありまして、現行システムがそうなっていないからといって先もできないということにはならないと思います。  それから、そういう技術開発ができてから法案を出せばいいじゃないかという意見も、場外といいますか不規則発言の中でちょこっとありましたので、これに触れますと、これについても、もし法案が通っていない段階で警察が何か技術開発をやっていましたらどういうことになるのでしょうか。それ自体批判されるのではないか。何かにスクープで出て、既にここまで進んでいる盗聴の準備とか、やがて訪れる一億総盗聴監視社会みたいな、こういうセンセーショナルな見出しで批判されるのではないかなという気がいたします。  それから、法律の根拠がなければ予算もとれないということも、これも周知の事実でございます。  そこで、刑事局長にもう簡単に聞くんですけれども、アメリカでは携帯電話の傍受は行われているのかどうか、教えてください。 <0138>=政府委員(松尾邦弘君)= アメリカでも当然携帯電話が非常に普及しておりますので、その傍受は通信傍受の中の非常に重要な部分を占めているというふうに聞いておりまして、傍受を始めて以来、アメリカでも携帯電話の傍受が行われているということでございます。  技術上の問題等について困難があるというようなことは我々としては聞いていないということでございます。 <0139>=大森礼子君= アメリカで技術的に可能であれば、客観的に不可能ではないということになると思います。  それから、システムの開発については事業者に協力を要請することになる。その場合に、協力しない事業者が一社でもあれば実効性がないのではないかという質問のやりとりもございました。それで、協力義務ですから、強制ということはできないのはもちろんであります。  ただ、やっぱり通信というのは公共性もございます。それで、もし暴力団一〇〇%出資の事業者であればそういう協力は得られないかもしれませんけれども、もしそうなりますと、そういう犯罪者は、例えばA社は協力する、B社は協力しないとなると、犯罪者はみんなB社の携帯電話に集中するわけでありまして、これがB社にとって果たしてよい結果を生むのかどうか。あそこは犯罪者ばかりが専用で携帯を使っているとなりますと、社会的信用を損なうのではないかという気もいたします。あるいは、我が社はあなたの犯罪通信の秘密を徹底して守りますと、これを宣伝文句にするわけにもいかないわけでありまして、誠意を持って協力を求めれば妥当な結論が得られるのではないかと思いますし、そのように努力していただきたいというふうに思います。  それから、ずっとこの通信傍受法案を含みます組織犯罪対策三法を審議してまいりました。特に、通信傍受法案については多くの議論がございました。それで、先ほど、もう一度練り直すべきではないかという意見もあったわけでございます。  確かに、政府原案につきましては我々公明党も反対しておりました。傍受という捜査手法を一般法化するものであって、乱用の危険も非常に大きいということでございます。この原案提出につきましては、与党間で三十三回ですか何か協議されたと聞いております。そこまで協議したんだったら、今反対される党は提出自体を何とか阻止してほしかったなと。そこから混乱が生じてきたというふうに私は思います。  それで、私どもは独自に党で検討してきて修正案骨子のもとをつくり出したわけであります。ほかの党は知りませんけれども、我が党は原案を練り直して党独自の見解というのを出したわけでございます。もう一度練り直すべき必要性というのは今のところ感じておりません。  それから、もし練り直すというのであれば、参議院に送付されてこの法案は六十日経過いたしました。憲法五十九条四項の規定を見ましても、必要ならば送付のときから六十日以内に練り直すことが予定されているのではないか、要請されているのではないか、こういう気がいたします。  それから、報道の自由との関係ですけれども、午前中の質疑で内藤委員の質問に対して非常に積極的な答弁があったと思います。それで、報道機関というものはやっぱり十五条の中に入れるべきではないか、それ以外であっても明文化すべきではないかということについて、私どもも非常に報道の自由、取材の自由、正当な報道の自由と言った方がいいかもしれませんが、大事だと思いますので、何とかそういうことができないかなというふうに検討したんですが、先ほど刑事局長がお答えになりました、それに加えまして、非常に定義づけといいますか、その範囲を明確にすることが難しいということで、立法技術的に困難である、こういうふうな結論に至ったわけでございます。  それで、結局は運用にゆだねるしかなくなるわけです。一般に運用にゆだねるといいますと、乱用の危険が定型的に大きくなると考えられておりますけれども、しかし正当な報道の自由、正当な取材の自由を尊重する、こういう運用の仕方を法務省当局がここで述べられたということは、これは積極的な意味があると考えます。  この報道の自由との関係で、もう既にこれは質問されましたので重ねて聞きませんけれども、一つだけちょっと触れておきたいのは、刑事局長の最後のところで、例えば傍受の対象となっている電話で被疑者がみずからの犯罪について告白する場合がある、その場合には傍受の対象となり得るとおっしゃいました。それはそれで仕方がないのかもしれませんけれども、この取材、報道の自由との関係で、自分がもし記者の立場であったならばどんな場合に困るかなとちょっと考えてみました。  それは、記者というのは、やっぱり取材源については秘匿するといいますかしゃべらないということが知られておりますから、あんただからしゃべるというケースが多くあるのではないかなという気がするわけです。それで、だれにも知られたくなかったら実際に対面して取材すればいいという言い方もできるかもしれませんが、対面しては嫌だという場合もあるかもしれません。  そこで、あんただから話す、信用ある報道関係者であるから話すといって告白した場合、そしてそれが証拠となるような場合ですと、多分その取材者側としては、自分がそういう供述を誘引した、引っ張ったのではないかという気持ちが残って非常に嫌な気持ちになるだろうというふうに思うんですね。それで、結局、そういうことは取材対象者と取材者との間の信頼関係というものを少しずつじわじわと崩していく危険があるのではないかなという気がいたします。  それで、特にこういう点に、報道関係者側の立場といいますか、これも十分配慮していただいて、先ほど刑事局長が述べたような運用をしていただきたいと思うんですが、簡単に御意見をお伺いいたします。 <0140>=政府委員(松尾邦弘君)= 今の、配慮が必要だということは、まさにおっしゃるとおりだろうと思います。  私が言いました、極めて例外的に傍受するというケースにつきましても、報道関係者、記者が当該、まあ暴力団としますか、暴力団の傍受されている電話にかけたところ、向こうがまずいろいろな犯罪事実に関係することを言ったという想定なんですね。その場合でも、あくまで取材だということで、スポットモニタリングしておりますから、取材の言葉があり、犯罪事実に関係しない言葉があればその段階で本来切っていますから、それはもう傍受はしていないことになります。  ただ、さらに希有な事例として、ああおまえか、実はこういうことがあったということで、スポットモニタリングの中でそういう告白があった場合だけですから、頭の中では考える事例ではございますが、現実にはないんだろうと思います。  そんなことを考えあわせますと、原則として報道機関が関する電話は傍受しないというふうに言っても差し支えないかと思います。 <0141>=大森礼子君= それから、報道機関以外にも少し配慮が必要だと思われるケースがあると思いますのでお尋ねいたします。  条文に規定することはできないかもしれませんけれども、運用上配慮しなくてはいけないのではないか、こういう質問でございます。  ダルクという民間の薬物依存者の更生のためのリハビリセンターがございます。実は、この新聞記事を読みまして、こういうことをしておられる方がいるのだなとわかりました。みずから薬物依存の経験を持つ近藤さんという方が設立されたリハビリセンターです。ドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センター、これの略でダルクと言われております。薬物犯罪から手を切れない薬物依存者からの電話による相談も数多く寄せられていると聞いております。  そうしますと、そのような相談の中には、薬物犯罪に関する会話も含まれるかもしれません。あるいはその中に入っている人に、外から薬物犯罪者、仲間といいますか、ここら辺が電話をかけてくることもあるのかもしれません。これも捜査のために傍受するとした場合、かえってその施設の活動、それから薬物依存者の更生を阻害することになるのではないか、そのリハビリセンターの設立目的自体を逆に否定することになるのではないかという気がするわけです。  ここでも、犯罪摘発の必要性と、それからそういう大事な施設の存在意義といいますか、これとをてんびんにかける場面が生じるのではないかと思うのですが、こういうケースについて法務省はどのようにお考えでしょうか。 <0142>=国務大臣(陣内孝雄君)= 大変大事な御指摘をいただいたわけでございますけれども、薬物依存者の更生に今御指摘のような民間のリハビリ施設が大きく貢献していることは十分承知いたしております。  このような施設に対して電話等で、薬物依存者から薬物犯罪を犯したことの告白等が、そういうことを含めて薬物犯罪に関する相談がなされるということは大いにあり得るわけでございますが、この法案におきましては、通信傍受は組織的な犯罪に対処をするためのものであるということでございます。そもそも薬物の使用の罪というのは対象犯罪とはされていないということでございます。その上、末端の薬物使用者の単純所持や譲り受けの事案について通信傍受という捜査方法がとられるということは、したがってないというふうに考えるわけでございます。  さらに、本法案において、これは医師等との間の通信について、他人の依頼を受けて行うその業務に関するものと認められるときは傍受が禁止されておる、これまで議論されたところでございますが、薬物依存者がその更生のために一定の信頼関係に基づいて相談を行う民間のリハビリ施設についても、同じような観点から、これらの施設に設置された電話に関しましては、犯罪関連通信が行われることがたとえ判明いたしたとしてもこれを傍受の対象にすることはあり得ない、こういうふうに考えております。 <0143>=大森礼子君= あり得ないと言い切れるのかどうか、個々具体的なケースで違ってくるというような気もいたしますが、非常に今の法務大臣の御答弁を重く受けとめたいというふうに思います。  それで、我々、例えば青少年の薬物汚染を防止しよう、そして啓蒙活動もしようと、そうであるならば、流れてくる薬物をとめなければいけない、摘発しなくてはいけない。そこで、その捜査手法として通信傍受が不可欠だという考え方に立つわけですが、一方で、既に薬物に汚染された方、薬物依存者になってしまった方、こういう方の更生という点についても、やはりその救済措置を考える必要があると思います。  例えば、覚せい剤使用者というのは犯罪者となります。しかし一方で、薬というものに対する、あるいはそういうものを売る人間との関係では被害者であるという認識を私は持っております。そうであるからこそ、そのような薬物の害毒をまき散らして莫大な犯罪収益を上げて、そして税金も払わないで勢力を拡大していく、そういう組織犯罪集団に対しての怒りもまた強くなるわけでございます。  この通信傍受法案と直接は関係しないのですが、そういう民間の方がやってくださっているわけですから、やはり国としても薬物に侵された人の更生といいますか、特に青少年なんかも、十分施設に考慮した対策を立てなくてはいけないと思います。  法務大臣、法務省だけの管轄ではないかもしれませんが、こういう点にもやはり何らかの対策を講じていくべきではないかと思うのですが、御見解をお尋ねいたします。 <0144>=国務大臣(陣内孝雄君)= 今御指摘のように、薬物犯罪対策を効果的に進めるためには、薬物依存者の更生を図るということも大変重要なことでございます。民間のリハビリ施設がこれに大きく貢献しているわけでございます。  法務省といたしましても、そういうことを踏まえまして、矯正保護の分野において、薬物依存者の更生のために関係部局において必要な措置をとってはおりますけれども、今の御指摘もございます。今後も一層その努力を続けてまいりたいと思います。 <0145>=大森礼子君= それでは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案について質問いたします。短く、いわゆる組織的犯罪処罰法案と呼ばせていただきます。  まず、この法案の第三条におきまして、団体の活動として、当該犯罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときには一定の犯罪について刑が加重されることとなっております。そして、この中に出てくる団体の定義につきましては第二条に規定されているわけですけれども、犯罪と関係を持ちそうな団体に限定されておりません。つまり、この定義だけですといろんな団体が含まれてしまうわけであります。政治団体、宗教団体、労働団体とかも含まれる。  それで、ここに非常に懸念をいたしまして、例えば挙げられている対象となる犯罪につきましても、信用毀損及び業務妨害、威力業務妨害、それから建造物等損壊とか、こういう罪が挙がっておりますが、これらは過去に労働組合等に対して適用されたようなこともある罪名でございます。こういうところから、何というんでしょうか、団体を犯罪関連団体に限定していないということで非常に不当な結果になるのではないかという批判もあるわけですけれども、この点について法務省はどのように考えておられるでしょうか。 <0146>=政府委員(松尾邦弘君)= 御指摘のように、本法案の第二条第一項では団体の定義が定められております。これは三条の加重類型を定めるに当たりまして団体という概念を明確にするための規定が二条でございます。この定義規定のみでは加重類型に当たる行為の範囲が確定されるものではございません。  本法案の第三条第一項の加重類型に該当するのは、ごらんいただきますと、ある個人の殺人等の犯罪行為が団体の活動、すなわち「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」というのがその三条の括弧書きとしてあるわけですが、そうしたものとして行われ、かつ「当該罪に当たる行為を実行するための組織」、すなわちある罪に当たる行為を実行することを目的として成り立っている組織により行われた場合でございます。  また、本法案の第三条の第二項の加重類型に該当するのは、ある個人の殺人等の犯罪行為が団体の不正権益、これは暴力団の縄張り等のようなものをイメージいただければと思いますが、不正権益、すなわち「団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきもの」と、こういう意味で縄張りというのが一つの例として考えられるわけでございますが、その獲得、維持または拡大の目的で行われた場合でございます。  したがいまして、本法案による加重処罰が行われるためには、その団体が具体的な犯罪行為と明確な結びつきを有していることが必要でございます。労働組合その他の正当な目的を有する団体が通常行っております活動に適用される余地は全くございません。犯罪と関係のある団体に限定されていないという批判はこういう意味で当たらないということでございます。 <0147>=大森礼子君= 三条の「当該罪に当たる行為を実行するための組織により」という、これは平たい表現で言うといわゆる犯罪実行チームみたいな、こういう観念ととらえられるのでしょうか。 <0148>=政府委員(松尾邦弘君)= わかりやすい例で、オウムを持ち出すと場合によると問題があるかもしれませんが、例えばオウムが坂本さん一家を殺害したという事件を考えてみます。これは、松本智津夫という者を教祖としていただくオウムという団体の活動として行われたことも明白でございます。それから、その実行に当たる行為をするための組織、これは数人の者が現場においてそういう殺害行為を行ったということで、先生御指摘のチームと呼んでもいいと思いますが、まさにそういったことをこの第三条ではあらわしているということでございます。 <0149>=大森礼子君= それから、加重処罰の根拠なのですけれども、これは理由としては違法性がより大きいとか、責任がより大きいとか、こういう理由になると思うのですけれども、この加重処罰の根拠についてはどのように説明されるのでしょうか。 <0150>=政府委員(松尾邦弘君)= 法定刑の引き上げがあるわけでございますが、法定刑というのは違法類型のその違法性の評価ということになろうかと思います。こういうような組織的な犯罪は、それ自体として犯罪実現に対する危険性が非常に大きいということ、あるいはその形態を考えてみますと結果発生の危険性も非常に大きい、そういったところに着目いたしまして、通常の個人的な犯罪とは類型的に違法性が違う、違法性が強いというような評価でございます。したがいまして、その点に着目してこれを加重類型としてとらえるというふうに御理解いただきたいと思います。 <0151>=大森礼子君= ただ、この第三条の加重処罰規定につきましては、従来の刑法の法定刑の範囲内で十分対処できるのではないか。いろんな犯罪でも刑法で最高限といいますか、規定されている。それに近いような運用をするならば十分賄えるのではないかという意見がございます。  それから、あるいは引き上げるのであるならば、むしろ刑法の基本刑の方を引き上げたらいいのではないか、そういう犯罪が広まってくるから変えるんだったらむしろその刑法の中で法定刑を引き上げたらいいのではないか、こういう意見もございます。  それから、今おっしゃった結果発生の危険性とか、こういうことにつきましては、一般のこういう法案がない場合でも、論告のところで情状として極めて犯罪態様が悪質でとか、計画的犯行でとか、こういうことを述べるわけですから、従来のやり方でもカバーできるのではないか、この意見にも一理あるのかなという気がいたします。  この点については、法務省はどのように説明されるのでしょうか。 <0152>=政府委員(松尾邦弘君)= 法定刑の考え方でございますが、これは先ほど申し上げましたように、違法性、反社会性の尺度を示しているというふうにお考えいただきたいと思います。  組織犯罪の場合には、その行為、態様また目的あるいは先ほど言いました結果発生の蓋然性といいますか、そういったことももろもろ含めまして特に違法性、反社会性が高いと認められるものを類型的にとらえましてその法定刑を決めるということでございます。既存の刑法の各罪の法定刑はこのような場合の法定刑として十分でない、違法性の評価として十分でないというふうに言いかえてもいいかと思いますが、こう考えられますことから、本法律案においてはその違法性の評価を明示して各行為者の責任に応じ適切な量刑をなし得るようにするということで法定刑を引き上げ、ひいては犯罪の抑止を図ろうということでございます。 <0153>=大森礼子君= 刑法の法定刑だと類型的に十分でないと答えられるわけですが、こちらは十分じゃありませんかと質問しているわけでありまして、何かそこがうまくかみ合わないのかなという気がするわけです。  それで、素朴な疑問ですけれども、例えば犯罪集団というものを想定した場合に、本当に団体の意思に基づいてそういうことを実行する、そうしますといわゆる共犯からの離脱といいますか、そういうことがやりにくくなって、例えば暴力団による犯罪なんかを考えましても一たんその社会に入ってしまうとなかなか離脱ができない、だから刑罰を重くしても余りこういう人たちについては威嚇というのか抑止力にならないのではないかという気もするのですが、ちょっと論理的でない質問で申しわけないんですけれども、この点はいかがでしょうか。 <0154>=政府委員(松尾邦弘君)= 例えば一つの例としてお考えいただくのは、本法案の第三条一項の三号でございますが、殺人の場合です。  これは、通常の刑法ですと「死刑又は無期若しくは三年以上の懲役」ということになっております。これを本法案では五年以上の懲役ということで引き上げているわけでございます。例えば、こういうような例として三年以上の懲役、一番下限でいいますと、三年といいますと執行猶予がつくぎりぎりでございます。ところが五年、一番下は五年ということになりますと、どうしても執行猶予がつかないというような法定刑になります。つまり、組織的な犯罪としてこの第三条第一項三号の罪に該当する行為が行われた場合には、違法性の評価としては今言ったような「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」とすることによりまして、その違法性の評価の高さということを示しているということでございます。そこに刑法での法定刑と本法律案の法定刑との差の意義といいますか、一つの例として御理解いただければと思います。 <0155>=大森礼子君= それでは、犯罪収益の規制についてお尋ねいたします。  ことしの六月三十日からでしょうか、東京の方でいわゆるFATF、これは金融活動部会というふうに言われておりますけれども、この全体会合が開催されました。この会合での報告書も取りまとめられたというふうに聞いております。  この全体会合の中で、我が国は組織的犯罪対策に関する法整備について報告したというふうに伺っておりますけれども、どのような報告がなされ、またそれに対して各国からどのような意見が出されたのか、要旨で結構ですから説明していただきたい。これまで聞こう聞こうと思いながら聞く機会がなかったものですから、お尋ねいたします。 <0156>=政府委員(松尾邦弘君)= 本年の七月二日の東京で開かれましたFATFの全体会合におきまして、組織的な犯罪に適切に対処するための法整備に関してFATFの四十の勧告というのがございますが、我が国は、その遵守のために法制度の改善に努力しておりますということをまず言いまして、組織的犯罪対策三法が本年六月一日にマネーロンダリングの前提犯罪の追加を含む一部修正の上衆議院を通過し、現在、参議院において審議中であるという報告をいたしました。  この三法案には、マネーロンダリングの前提犯罪の拡大、犯罪収益等の没収及び追徴の充実整備、それから金融監督庁にFIUの機能を付与するなど、疑わしい取引の届け出制度の拡充、それから通信傍受法案ということが盛り込まれていることもその際に具体的に報告をしております。  これに対しまして、その会合において多くの国から、アメリカ合衆国、ベルギー、ニュージーランド、フランス等でございますが、この三法案を支持し早期に成立することを期待する旨の発言がなされております。  その中でもアメリカ合衆国からは、特に犯罪捜査のための通信傍受につきまして、組織的犯罪対策として必要不可欠であって、実際にアメリカにおきましてもマフィア対策あるいは薬物密売組織対策に非常に大きな効果を上げているという旨の発言がなされたものと承知しております。  また、このような各国の発言を受けて、議長代行からも、FATFの総意として組織的犯罪対策三法案を支持しその早期成立を望む、法案が成立したという知らせが届くことを楽しみにしているという旨の発言も付加してなされております。  このように、我が国の組織的犯罪対策に対して諸外国から大きな期待が寄せられていることを重く受けとめておりまして、我が国が国際社会の一員として責任ある役割を果たすとともに、組織的な犯罪から国民の平穏な生活を守り、真に国民が安心して暮らせる健全な社会を築くために、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたいと願っている次第でございます。 <0157>=大森礼子君= 外国がどのようなことを言いましたといったお答えになりますと、勢い外圧によってこういうのを決めるのかと言われそうなのですけれども、一つは、やはり国際犯罪情勢というのはどのようになっているのか、その中で日本はどのように位置づけられているのか、これを考慮することも必要なことであると思います。  それから、いわゆるマネーロンダリング、資金洗浄、この行為の処罰規定があるわけです。非常に単純な質問をするわけですけれども、従来の刑法理論によりますと、処罰の対象は収益を生んだところの犯罪行為そのものでございまして、後その得た金をどうしようかというのは、いわゆる不可罰的事後行為というふうに言われていたわけであります。その前提犯罪とは別に処罰するということは、行為を二回処罰することにならないのか、刑法の基本的な枠組みに反することになるのではないか、こういうような意見も伺ったことがあります。これは麻薬特例法の審議のときに既に克服された論点かもしれませんけれども、改めてその理由を簡単にお尋ねいたします。 <0158>=政府委員(松尾邦弘君)= この法律案に定めます犯罪収益等による法人等の事業支配を目的とする行為あるいは犯罪収益等の隠匿、収受の処罰規定でございますが、犯罪収益等を保持、運用する行為によりまして、その犯罪収益等が将来の犯罪活動に再投資されたり犯罪組織の維持拡大に利用されるだけではなく、最近特に注目されている、あるいは力点が置かれていることではございますが、事業活動に投資されることによって合法的な経済活動に重大な悪影響を及ぼすというようなことにかんがみまして、その行為自体の反社会性、法益侵害性に着目して、その行為を処罰するというものでございます。  こうしたマネーロンダリング行為は、財産犯によって得た財物のそれを使う行為、使用行為のような新たな法益侵害を伴わない、今先生御指摘の不可罰的事後行為というようなものとは異なるものでございまして、その処罰は何ら刑法の基本的枠組みを変えるものではございません。 <0159>=大森礼子君= それから、よくこの法案につきまして批判が集中するところですが、この法律案では有罪判決が確定する前の段階で没収または追徴の対象となる財産を保全する制度が設けられております。確定前に没収または追徴の対象となる財産を保全するというこれも一つの処分行為だと思いますが、こういう行為をするということは無罪推定の原則に反するという批判がございます。これにつきまして、法務省はどのように説明するのでしょうか。 <0160>=政府委員(松尾邦弘君)= 犯罪収益をどう規制していくかということにつきましては、マネーロンダリング行為の処罰とともにその犯罪収益等を剥奪するために没収、追徴を徹底することが非常に重要でございます。  犯人等が保有する財産、犯罪収益等については、仮装あるいは隠匿されることによりましてその把握が困難となる場合も少なからずあるわけでございます。また、処分により散逸するというおそれも高いことから、没収、追徴を確実に行うためには有罪判決が確定する以前においてもその対象となる財産を保全する必要があるということでございます。  現行法上、没収すべき有体物を差し押さえることはできますが、その効果は裁判所または捜査機関がその物の占有を取得するということにとどまりまして、その処分を法律上禁止することはできない仕組みになっております。また、その金銭債権について考えてみますと、その処分を禁止することは現在ではできないということになります。  また、追徴につきましても、刑事訴訟法上、仮納付の制度は一部ございますが、これは裁判所が追徴を言い渡す場合につけるものでございまして、それ以前に裁判の執行を確保するために被告人または被疑者の一般財産の処分を禁止することは現在の法制ではできません。  そこで、この法律案では、犯罪による収益の剥奪を確実に行うということが必要だ、そうしたことを目的としまして、その対象となる財産を保全するための制度として、没収保全及び追徴保全の制度を設けることにしたわけでございます。  FATFの四十の勧告というのがございますが、その中におきましても、各国が没収することを可能とするためのとるべき措置の中に、財産の取引、移転、または処分を防止するための凍結