第145回国会 法務委員会 第19号 1999年07月06日       (1999年08月17日 08:00 登録) 平成十一年七月六日(火曜日)    午後一時二分開会     ─────────────    委員の異動  七月一日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     有馬 朗人君  七月五日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     日出 英輔君      海野  徹君     櫻井  充君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 日出 英輔君                 小川 敏夫君                 櫻井  充君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    委員以外の議員        議 員      水野 誠一君    衆議院議員        修正案提出者   笹川  堯君        修正案提出者   山本 有二君        修正案提出者   上田  勇君        修正案提出者   漆原 良夫君        修正案提出者   達増 拓也君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   浜野  惺君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付)     ───────────── <0001>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る一日、阿南一成君が委員を辞任され、その補欠として有馬朗人君が選任されました。  また、昨五日、有馬朗人君及び海野徹君が委員を辞任され、その補欠として日出英輔君及び櫻井充君が選任されました。     ───────────── <0002>=委員長(荒木清寛君)= 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0003>=服部三男雄君= 前回に引き続いて尋ねますが、まず警察庁の方に尋ねます。  今度の通信傍受法案の対象犯罪の関係で尋ねるわけですが、最近の銃器使用犯罪の発生増加の状況、特に銃器使用犯罪の発生件数を平成六年以後過去五年間、それとそれに対する検挙等、その状況についてお尋ねします。 <0004>=政府委員(林則清君)= 最近における銃器使用犯罪の発生状況でありますが、平成十年を見ますと約三百五十件足らずでありますが、うち、殺人が五十三件、強盗が百十七件、そして百六十九件がその他もろもろ、こういうことになっております。以上でございます。 <0005>=服部三男雄君= 平成六年から十年までの過去五年間の発生件数と、それに対する検挙実績を挙げなさいと言ったんです。 <0006>=政府委員(林則清君)= 失礼しました。  平成十年中の銃器使用犯罪の発生は、今申し上げましたように三百三十九件を把握しておりまして、平成六年の数字と比較してみますと、平成六年中の発生が二百三十四件でありましたので、百五件、約四五%の増加となっております。  内容を見ますと、最近は一般市民を対象とする銃器使用犯罪が多発しており、具体的な事例としましては、平成六年十一月に発生しました、千葉県松戸市のファミリーレストランでアルバイトをしていた女子短大生が強盗にけん銃で撃たれて死亡した事件、それから平成七年七月に発生した、都内八王子市のスーパーマーケットでアルバイト中の女子高校生二名とパートをしていた主婦の三名が押し入ってきた強盗に縛られた上けん銃で射殺された事件や、平成十年六月に都内の路上で発生いたしました、会社役員が暴力団幹部にけん銃で胸部等を撃たれ死亡した事件が挙げられるわけであります。  また、暴力団による銃器発砲事件も多発しております。最近では、今月の上旬に東京、神奈川など六都県において、暴力団山口組と国粋会の間の対立抗争に伴う銃器発砲事件が十五件発生いたしました。中でも、六月三日には東京の銀座において白昼、山口組幹部が国粋会系の暴力団事務所に向けてけん銃五発を発砲した事件が発生したところでございます。  このように銃器使用犯罪の件数が増加傾向にあるとともに、その内容も、一般市民が犠牲となる事件や暴力団の対立抗争事件が多発するなど、銃器情勢は大変厳しい情勢にあるというのが現状でございます。 <0007>=服部三男雄君= 前回、私は通信傍受法案関係を主として尋ねました。そしてその後、同法案に賛成する立場の質問、あるいは反対する、廃案を目指す立場の方等からの質問がありました。大体、論点は出尽くしているように思うわけです。  そのうちで本通信傍受法案の問題点として指摘されたところの二、三点があるわけですが、いずれも警察不信の立場に立って、警察官が当初から違法傍受を企てていた場合について、そういう乱用に対して制度的に担保できていないんじゃないかという非常に偏った、端的に申し上げて警察不信の立場からの意見、所見が見られたわけでございます。それに関連して、裁判官による職権審査が必要であろうという立論につながっていっているように思いますが、一つの制度ですから、偏った見方で、当初から乱用というものを考えて正常な制度をつくるわけにはいかないわけであります。私はそのように思います。  警察庁に尋ねますけれども、この通信傍受の作業を実際やろうとしますと、例えば最大限三十日傍受するとなった場合、どのぐらいの担当職員が関与するかということをひとつ尋ねたいと思います。 <0008>=政府委員(林則清君)= まだ法案が成立していない段階で、実際の実施にどういう形になるものかというのは詳細に検討しておるところではございませんけれども、今先生から御指摘がありましたように、毎回交代制をとらなければならないことと、もう一つは、要件の中に補充性の条件がありまして、十分の捜査を尽くして捜査をわかっておる者でありませんとスポットモニタリングも適切に行うことができないわけでありますから、恐らく何十人かの体制で捜査しておる者を交代で充てるということになろうかと思います。そうすると、一回何人、それで三十日ということになりますと、数十人というところが従事する形になるのではないかと一般的には予想されます。 <0009>=服部三男雄君= まだこの法案が通っていないから、実施部隊の編成とか、それから原テープの保管、警察署へ持って帰った後の保管をどういうふうにするかとかいう規則のようなものはまだできていないかもしれないけれども、例えば押収・捜索をやった場合の持ってきた押収品は、検察庁であれば証拠品係、警察署でもそういうところがあります。そういうふうに、捜査とそういう押収品とは分離するようなシステムになっています。今回も、傍受記録の方も同じような扱いをする予定ですか。 <0010>=政府委員(林則清君)= 御指摘のように、通信傍受法案の二十二条第四項の前段は、   検察官又は司法警察員は、傍受記録を作成した場合において、他に第二十条第三項の規定により裁判官に提出した記録媒体(以下「傍受の原記録」という。)以外の傍受をした通信の記録をした記録媒体又はその複製等があるときは、その記録の全部を消去しなければならない。 という規定があるのは御指摘のとおりであります。  このため、警察といたしましては、傍受記録以外の記録の完全な消去を担保するために、傍受した通信を記録した記録媒体、傍受の原記録以外を指定した捜査幹部の厳重な管理下に置かなければならないということを決めたいと思っておりますし、傍受した通信を記録した後における傍受記録以外の記録の消去等、この一連の手順を規則等で明確にした上、この手順を行うべき者を最小限に限定して、それ以外の者には犯罪関連通信以外の通信というものは知り得ないように、そっちの方の配慮も規則等で定めておきたい、かように思っております。 <0011>=服部三男雄君= そうしますと、当然セクションが分かれます。今の役割、いろんなセクションが分かれます。そうすると、それぞれのところで手続書類が要ります、役所ですから。保管記録、確認記録、手続記録が要ります。それは各課にまたがっていきます。一人の捜査官、例えば刑事課の中でそれがなされるということはちょっと考えられません。今の局長の説明だと、どうやらセクションが分かれていくような印象を受けますが、規則でそういうふうに定められる予定ですか。 <0012>=政府委員(林則清君)= まだ成立後の具体的な規則をどうするのかということは定かにしておりませんけれども、捜査主体が幾つかにまたがっても、捜査の単位として行った単位の中で厳重に保管責任者というものを置くという形で定めようと。したがいまして、セクションという意味がいわゆる部や課の単位をおっしゃるのであれば、それが別の特別のものを設けるというようなところは、まだ今のところ考えてはおりません。 <0013>=服部三男雄君= そうでなくても、管理のための受付原簿とか、例えば貸し出しする場合の貸出名簿とか、そういうものをつくることは当然考えますね。 <0014>=政府委員(林則清君)= そういったものはきちっと管理、運用されるように、今御指摘のようなことは規則で定めたいと思っております。 <0015>=服部三男雄君= そうしますと、先日の対政府質疑の中で、違法傍受をやろうとする不心得な警察官がいた場合は通知がないんだから、消去した部分だから通知しないんだから、不服申し立ての機会がないではないかと。だから、違法傍受されたことは全部やみになってしまうではないかという立論がございました。  そういう万々が一にも不心得な捜査官がいたとしても、今、局長が答弁したように数十名の捜査官がこの傍受作戦に当たり、しかもそれは、各セクションというんでしょうか、管理簿があり受け払い簿がありいろんな書類のチェックがかかっているから、一、二名の不心得な者がいても、そういう違法なことをすることは実際上、現場では全部チェックがかかっていてできない。もし、数十名全部が傍受しようという共通の意識を持てばできます。できますけれども、数十名の現に傍受作戦にかかわった者のうちの一、二名の不心得者がいても、実際は組織がきちっと管理しているから、質問者がしたような違法傍受はできないということは言えると思うんですが、局長、その点の管理は大丈夫ですか。 <0016>=政府委員(林則清君)= おっしゃるとおりでありまして、事案によって数十名ということはありますけれども、低いうちの数十名かもわかりません。  いずれにいたしましても、実際に傍受に当たった者のほかに、今申し上げましたように、きちっとそれぞれの手順において責任を持って管理する者を置くわけでありますので、先生が御指摘のように、不心得者はいないと思いますけれども、そういう不心得者があった場合には、外部からの指摘はもとよりでありますけれども、それ以前の問題として、内部においてきちっとそのようなものは、法に従わない、規則に従わない者についてはそのような措置あるいはサンクションを加えるということになろうかと思いますので、いろいろと御質問中ありました乱用に対する懸念は、そういう意味でも絶無を期すように内部規則等あるいは内部の仕組み等を組み立ててまいりたい、かように思っております。 <0017>=服部三男雄君= 前回、林刑事局長が、令状関係、押収、捜索、逮捕、鑑定、検証、全部入れて十数万のうち、最もまれに年に一件ぐらい、いわゆる虚偽の供述調書をつくったりして捜索令状を裁判官からだまし取ったような例があったと。本当に遺憾な事態ですけれども、十数万のうちのわずか一件あったことは間違いない。だけれども、それについては警察の内部で、後で発覚した場合に、まず刑事処分に付しているし、そして懲戒処分、身分上の処分もきちっとやっていると。  私も経験がありますが、押収・捜索令状は、一捜査官がごまかそうと思ったらできぬことはない。令状をとりやすい。しかし、前回質問のあったように、最初から違法盗聴しようとしても、あるいは消去しないで隠すとかというような論説がありましたが、これは今言いましたように、数十名の中でやらなきゃいかぬ、チームの中でやらなきゃいかぬとなりますと、押収の場合のような非違、十数万件のうちたった一件の非違があったのと同じような例で傍受のときにもできるというふうには、私は今の局長の答弁からできないと思うんですけれども、局長はどのように思いますか。 <0018>=政府委員(林則清君)= まさに御指摘のとおりでありまして、特に御注目いただきたいのは、たびたび御答弁させていただいておりますけれども、このたびもし成立した場合には、国家公安委員会規則で、これの令状請求に当たっては警察本部長の決裁を得るというところまでしておりますので、これにかかわるそういった乱用あるいは不適法な行為が行われた場合には、当該行為を行った捜査員に対して行政上、刑事上その他の責任が問われるだけではなくて、組織として本部長以下の責任をも問われるという仕組みになっておりますので、先ほど御指摘がありましたように、捜索・押収令状の請求に当たって、例外中の例外として非常に残念なケースがあったわけでありますけれども、それに比しても大変強い縛りが、縛りといいますか、そういうことのないための保障措置といいますか、担保措置がとられておるだけに、まさに御指摘のように、今回の法案が成立しても、その実施に当たって不適正な行為が行われるということは万考えられないことでございます。 <0019>=服部三男雄君= 法務省に尋ねますが、同じ質問なんですけれども、検察庁の検事が生の事件で傍受をやるということはちょっと考えにくい。主として実施するのは警察庁でしょうが、まれにあるかもしれない、捜査のことですから。法務省も同じように、組織の中の権限、分掌に関する処理の決裁等々の手続で、数十名の傍受作戦担当者の中の万が一にも一、二名でも、過剰な正義感、過剰な捜査意欲によって違法傍受をしようとする者が万が一にも出ても、それは制度として、犯罪捜査機関の中における権限、分掌、管理によって完全に防止できるというふうに法務省刑事局長も思いますか。 <0020>=政府委員(松尾邦弘君)= 御指摘のとおりだと思います。  今、非常に具体的な状況をほうふつさせるような設定でいろいろ御質問をいただきました。確かに、この傍受自体、検察庁で仮にやるにしましても、検事も含めて少なくとも数十人というスケールの者が傍受に従事するということになりますし、またその従事後の管理体制も、警察の刑事局長からお答えしたとおり、検察庁もきちっと定めるつもりでおります。  また、傍受自体は、警察では県警本部長の責任のもとに、決裁のもとに請求する話でございますし、検察庁でいえば検事正決裁ということですから、一つの県の一番トップの検察官がこれに責任を持つ体制で行います。したがって、そういうような状況下で行います傍受でございますので、二重三重にも制度的に乱用がなされないような工夫というのは、そういうところにもあらわれておると思います。  それからもう一点だけつけ加えさせていただきますと、仮に捜査官が例えばスポットモニタリングを行わずにずっと聞いてしまう、しかしそれを傍受記録にあえて残さないというようなやり方をしたら、チェックする方法がないのではないかというのが前回の質問にあったわけでございますが、そのような行為自体は、立会人から見ましても違法であることは明らかでございますので、立会人の外形的なチェックでも十分チェックできる事項でございます。その場合には、立会人としては通信事業者の立場で裁判所に準抗告できる、つまり法律案では二十六条第二項でございますが、こういう制度もつくられております。  あるいは、最初からどうも適正手続で行う意図がないような傍受であれば、まさに通信の秘密を侵す罪でございますので、三年以下の懲役に当たります。事業者として、立会人としてはこれを告発できるということも考えられるわけでございまして、そういう意味での担保もまたつけ加わっているという点を御理解いただきたいと思っております。 <0021>=服部三男雄君= それでは、本日はマネーロンダリングの方に移りたいと思います。犯罪収益規制でございます。  私たち法務委員会にいる者は、犯罪収益規制とかマネーロンダリングというのはわかるんですけれども、日本ではまだマネーロンダリングという言葉は熟した言葉ではありません。  法務省刑事局長から具体的に、金融機関を使うとか証券会社を使うとかいろいろ言いますけれども、どういうことをマネーロンダリングと言うのか、それの説明から入りたいと思います。 <0022>=政府委員(松尾邦弘君)= マネーロンダリングの細かい行為そのものはこの法律案の条文にいろいろな形で記載されているわけでございますが、抽象的にまず申し上げますと、組織犯罪が中心になりますが、犯罪によって得た収益がございます。これがいろいろな形をとりまして、姿形を変えていくということでございます。  例えば、単純な行為といたしましては、犯罪収益を隠すという行為がございます。これ自体も今回のマネーロンダリングの一つの形態でございます。そのほか、犯罪収益を他人間で転々とさせる行為、収受ということがこれに入ってきますが、違法な収益を収受する行為というのが次に当然考えられます。そのほかに、違法収益を、例えば土地を買うとか、ほかの不動産、動産を買うとかいう形でほかの財産に転化させる行為もございます。  そういった行為があるわけでございますが、これは犯罪収益を把握させにくくする行為ということでございまして、今三つの例を挙げましたが、それに限定されるわけではございません。  抽象的に言いますと、犯罪によって得た収益をほかの姿に変える、そういう行為をつかまえまして、これを新たな犯罪行為とすることによりまして不法収益を、あるいはその犯罪者に対する追跡ということでございますが、犯罪の検挙ということを財産的な側面から追及することを可能にするような実体法の整備ということでございまして、そういった行為を含めましてマネーロンダリング行為ということを言っておるわけでございます。 <0023>=服部三男雄君= 法務大臣にお尋ねしたいと思います。  当委員会で審議しております組織的な犯罪というのは、先日も言いましたように、薬物、そして先ほど警察庁から報告がありました五年間で五割アップの銃器使用犯罪等々、あるいは集団密航等、問題は極めて深刻でございます。これにいかに対処するかというのが重要かつ緊急の課題でありまして、そのために今、当委員会で審議をしているわけであります。  その一つとして、国民の平穏な生活を守るための新しい捜査手法としての通信傍受でありますが、さらにもう一つの側面として、悪いやつを太らせない、すなわち犯罪収益を規制することも絶対必要な条件だろうと思います。  捜査手続と、犯罪に再投資されないように収益を収奪する、この二つの側面が必要だと私は思うわけですが、この趣旨及びこれが組織的犯罪対策になることの根拠について、法務大臣からまず基本的な所見を伺いたいと思います。 <0024>=国務大臣(陣内孝雄君)= 犯罪収益の規制は、組織的な犯罪においては、不正の利益を得ることを目的として種々の犯罪行為が行われ、これによりまして得られた犯罪収益が犯罪組織の維持拡大に利用されたり、あるいは将来の犯罪活動に再投資され、あるいは正常な経済活動に悪影響を及ぼすことにかんがみまして、これらを防止するために犯罪収益の保持、運用等を規制するというものでございます。これは、経済的な側面から組織的な犯罪に対処する措置として必要不可欠であると考えております。  組織的犯罪処罰法案は、このような観点から犯罪収益規制のための法整備を図るものでありまして、これが実現した場合には、犯罪収益の保持、運用等の規制を通じて組織的犯罪を抑制することが可能になり、大きな効果が上がるものと考えております。そして、このためには通信傍受という手段が極めて有効であり、必要である、このように認識しております。 <0025>=服部三男雄君= 法務省の刑事局長にお尋ねします。  今、大臣がおっしゃったことはもっともなことなんですが、私は別の見方をしますと、特に組織犯罪集団が、ある犯罪行為によって収益を得たと。それを、ロンダリングを兼ねて、いわゆる一般私人がやるような営業活動の方面に、例えば会社をつくろうと乗り出すとしますね。これと正常活動をしている、いわゆる組織犯罪集団と関係ない正常な企業とを比較しますと、大変なハンディキャップがあると思うんです。  どういうことかといいますと、組織犯罪集団が企業を仮装して営業活動をやる場合は、ノータックスの、税金のかからない資金でやるわけです。一方は、正常な活動をやっている以上は、税申告をやって税金がかかった、コストのかかった営業資金で動くわけです。  こういうふうに大変なハンディキャップがあると思うんですが、こういう観点も今度の立法趣旨に入っているんでしょうか。 <0026>=政府委員(松尾邦弘君)= 先ほどマネーロンダリングのところで申し上げました、不法収益を転々とさせる行為を全体として捕まえて、要するに不法収益を動かさなくするというのがその一つでございます。  もう一つの立法の趣旨として、まさに先生今御指摘のとおりでございまして、最近における国際会議等で強く指摘されていることでございますが、そういう不法収益が、例えば株を買うことによって、あるいはある企業を乗っ取るという形で通常の経済活動の中に参入してくるということについては、通常の正常な経済活動を大きく阻害する要因である、そういう観点からこれを規制していくということも立法の目的の大きな柱の一つでございます。その理由は、まさに先生のおっしゃったこと、つまりいろんな意味での負担を免れているイリーガルな金でございますから、大変有利な立場に立つということが一つ。  それともう一つは、あえてつけ加えさせていただきますと、そういう組織犯罪、あるいはそれを背景としたような組織がそういう企業活動をすることは、その裏に裸の暴力というものがあるわけでございますので、通常の営業活動が仮に何かトラブルを起こしますと、それはその暴力が潜在的にあるいは現実的に出てくる話にもなりまして、なかなか通常の経済活動の範囲内の弁解あるいは対抗では対抗し切れないという点でも、そうした違法な集団が経営権を持っているような企業の活動というのは、いろんな意味で抑止をしにくくなるということだろうと思います。 <0027>=服部三男雄君= 同じく法務省刑事局長に尋ねますが、前回の私の質問で、アメリカのある刑法学者の、二十一世紀は自由民主主義と健全な資本主義、グローバル資本主義対アングラ集団との闘争になるだろう、犯罪と健全な社会との闘争になるだろうという論説があるということを私は紹介しました。  今の刑事局長の話を敷衍していくと当然、健全な自由民主主義体制における資本主義を守ろうというところにつながってくると思うんです。なぜなら、コストのかかっていない、税負担のかかっていない有利な条件で企業を乗っ取ってくるのと、税金コストからすべての社会生活の負担を負っている企業は最初からハンディキャップがあるわけです。  だから、ハンディキャップのないのをハンディキャップのあるように犯罪収益を収奪しようということは、要するに健全な資本主義体制を守ろうというところに法の価値を置いているのかというお尋ねをしたいわけです。 <0028>=政府委員(松尾邦弘君)= 今、委員の御指摘は全くそのとおりだと思います。その御指摘の状況が、まさに国内だけにとどまらず、国境の壁を越えまして、非常に世界的な問題になっているというところが現代の一つの特徴であろうかと思っております。 <0029>=服部三男雄君= 日本は、戦後一貫して自由民主主義、資本主義体制をとってきて世界史上まれなる経済繁栄をし、ちょっとここ十年ぐらいはバブル崩壊でがたがたしましたが、世界の資本主義の優等生であるくせに、このマネーロンダリングについては余り議論にもならなかった。事実、弱い規制はありますけれどもおくれてきた。世界的な資本主義を守るためにもこれはぜひともやらなきゃいかぬということで、FATFとか国連サミット等で日本に対して非常に要望があった。  そこでまず、日本における現行のマネーロンダリング規制とはどんなものがあって、その実例はどうであって、それだけではだめなのかどうか、制度的欠陥があるのかどうか。今回、一般的にマネーロンダリング規制を拡大する理由について法務省から説明を求めたいと思います。 <0030>=政府委員(松尾邦弘君)= 現行法のもとでどうかということでございますが、いわゆる麻薬特例法というのがございます。マネーロンダリングの罪が限定された形でここにあります。第九条は、薬物犯罪の収益等に係る隠匿罪があります。第十条には、薬物犯罪収益等に係る収受罪が認められているところで、マネーロンダリング罪が現に現行法でも一部存在しているということは委員御指摘のとおりでございます。  法務当局において把握している薬物犯罪収益等隠匿罪の受理人員を見ますと、同法が施行された平成四年七月一日以来、平成十年までに合計五人でございます。そのうち、平成七年の一人を除いて公判請求され、公判係属中の二名を除いて有罪判決が確定しているということでございます。また、第十条違反の事件の受理人員でございますが、平成十年までに合計七人、平成六年の一人を除いて公判請求されまして、公判係属中の一名を除いて有罪判決が確定しているということでございます。このように検挙件数が非常に少ないということでございます。  こういった現状を踏まえまして、今回の法案では、犯罪収益の前提犯罪を薬物に限らず一定の重大な犯罪に拡大する、それから先ほどから問題になっております犯罪収益等による法人の事業支配、法人を乗っ取るような罪を新設しまして、一定の事業活動への関与行為も処罰の対象とするということで、我々としてはやはり、マネーロンダリングの対象犯罪を広げ、かつ新しい処罰を設けてこれの有効性をもっと高める必要があるということでございます。  また、疑わしい取引に関する情報も、これまでの制度ではこれを金融機関から届け出ることになっているのでありますが、問題が二つございまして、一つは、その情報自体が最終的には一元的な集約がされない、ばらばらに保管されているということでございます。  それからもう一つは、今回の法案ではこの情報を整理分析して検察官等に回付するということにしておりますが、現在はその規定がございません。なかなか捜査、調査に有効に活用できないというようなネック、これは大きなネックだと思いますが、そんなこともございまして、ここらあたりはやはり改正すべきである、それによって実効性をさらに高め、的確な組織犯罪対策にしたいということでございます。 <0031>=服部三男雄君= 今度は警察庁の方に尋ねたいと思うんですが、だれが考えても犯罪収益の規制というのは必要だと、悪いことをしてぬくぬくとその利益を保持しているというのはだれが考えても、正義感から考えて許せないことだから、これは皆さん納得されると思うんです。  具体的に日本の現状から考えて、よく新聞なんかに出ているのは暴力団、そして暴力団を取り巻く企業舎弟という新しい言葉がありますね、などが経済活動に出ていっているんじゃないか。暴力団の金が犯罪行為のための再生産に使われると同時に、暴力団も、いつまでも暴力団を続けるといつお縄になるかわからない、嫌だから、一般市民生活に仮装していって経済社会に進出するんじゃないか。バブルのときに確かにそういう現象はよく見られました。  具体的にどういう形になって暴力団が仮装して経済行為に出ていくのか、その実情について例を挙げて説明していただいて、市民にわかりやすい言葉で説明していただきたいと思います。 <0032>=政府委員(林則清君)= 御指摘のように、暴力団というのは、かつてはどちらかというとある限られた分野で、覚せい剤などを扱うとか、ある分野における恒常的な恐喝行為を行うとか、あるいはばくちをやるというようなことが主に資金源活動の中心だったわけでありますが、先ほど法務省の刑事局長からも答弁がありましたし、先生からも御指摘がありますように、近来著しく見られるのが、彼らが経済社会の中に、あるいは経済取引の中に暴力を背景に介入してきておるということであります。  今一番わかりやすいのは、いわゆる株主権に名をかりたり、政治活動を仮装標榜して企業を対象として不当な利益を得るという企業対象暴力が増加しておることはもちろんでありますけれども、御指摘のようにバブル期が一番大きな曲がり角だったと思いますが、この時期に、あるいは地上げに、あるいは一見観光産業を装ったような、開発会社を装ったような形で、彼らが不法に得た資金をもとに一般経済社会の中へ出てくる。そしてまた、バブルが崩壊すれば、債権回収の妨害であるとかあるいは倒産整理であるとかといった形で、いろいろ報道等もされておりますような形で経済の世界へ介入してくる。  そしてまた、先生がまさに御指摘なさいましたように、これらの大変困ったことには、暴力団というものを背景にしておりながら、一見、何もないときにはそれは隠しておる。しかし、一朝事あれば結局は、正常な法律に訴えるのではなくて、暴力団の恐怖といいますか威嚇力というものを背景にちらつかせながらみずからの経済活動、不法な経済活動を貫徹していくという意味で、不当に莫大な利益を得ておるというような状況が現在恒常化しておるということでございます。  もう言うまでもありませんけれども、こういったある限られた分野で活動しておった暴力団がこの経済社会全般の中に入り込んでくるということになりますと、我が国の健全な経済秩序を守るためにも、これはすべて金が目的で出てくるわけでありますし、金が目的で活動しておるわけでありますから、先ほど来話がありますように、この金を押さえる犯罪収益対策というものが一番必要であるというふうに感じておるところであります。 <0033>=服部三男雄君= 捜査ですから、犯罪との戦いですから、被害者がはっきりして被害届が出れば、暴力団を検挙することは何もそんなに難しくないわけですよ。  ところが、商法の例を見てもわかるとおり、総会屋に資金供与してはいかぬ、それは犯罪ですよと言っても相変わらず後を絶たなかった。警察庁も経団連等に働きかけて、総会屋対策、取り締まりをちゃんとやってくれと再三にわたってやったけれども、なかなか実効が上がらなかった。要するに、被害の申告を待って、あるいは申告を出せと説得しても財界の体質でなかなか出してこなかった。  であるならば、捜査の入り口の方の被害申告よりも、現に持っている金を押さえ込むのが一番早いというのがこの法案の趣旨じゃないかなと思うんですが、両刑事局長、どちらでも結構ですが、どうですか。 <0034>=政府委員(松尾邦弘君)= 先生御指摘のとおりだと思います。現在の社会はいわゆるバブル崩壊後の経済ということが言われていますが、捜査機関、調査機関として大変切実に思っておりますのは、バブル中にこういうイリーガルないろんな組織がかなり膨大な利益を蓄えたということでございます。  それがどこへ行ったかということでございますが、その中のかなりの部分が、先ほど警察庁の刑事局長から御説明ありましたように、経済活動の分野に投下されているということでございます。そうしたことのいろいろな影響は犯罪という形でもあらわれておりますし、また、そういう形までも行っていないいろいろな中にかなりの温床として現に存在しておりまして、そこをどうするかということが現在でも非常に重要な課題であるということだろうと思っております。 <0035>=服部三男雄君= 確かに、難しい言葉を言っていけば説明はいろいろあります。  一番端的に言って、例えばテレビに暴力団抗争の場面が映りますね。暴力団の組長が住んでいる大豪邸が映るわけですよ。何千坪というところに要塞のような家を建てる。しかもそれは、決していわゆる低価格ではなくて高級住宅地に。そして、襲名披露とか刑務所出所祝いとかいうときに彼らは徒党を組んで迎えに行ったりしますね。そのときに累々と、一千万、二千万もするベンツだとかロールスロイスだとかずらっと並んで行く。これを庶民が見たら、検察庁や警察庁は何をやっておるんだ、なぜあいつらにあんな金があるんだ、そんな金があるなら何で税金で取らないんだ、これが普通の市民の素朴な感情だと思うんです。  ところが、どうして今まで脱税で検挙できなかったんだろう。目に見えてわかるわけでしょう、大豪邸に住んで、一千万、二千万する高級車に乗っていると。ところが税務署の申告には、暴力団の親分が何億も申告したというのは聞いたことがありませんよね、それは新聞の全国高額納税者欄にも発表が出るんですから。なぜ今までそれができなかったんだろうか、それをちょっと尋ねたいと思います。 <0036>=政府委員(林則清君)= おっしゃるとおりでありまして、つけ加えますならば、豪邸だけではなくて、それぞれが持っておる事務所も、それぞれ一等地に事務所を構えておると。素朴に、何で働きもしない遊侠の徒がこのようなところにこのような豪邸をと思うわけでありますが、根っこのところは、やはり不法な活動から上がってくる収益がそこへ集積していったということであります。  アルカポネを脱税でやったようにやれないのかということで、検察ともよく相談をしますし、国税庁ともよく相談をして、税金をかける、あるいは脱税でやるということの努力も長年にわたって行ってきたところでありますけれども、日本の税法の仕組みからして、現実問題としては課税要件をなかなか立証できないということで、税金についてもなかなか無理である。  一方、それじゃ没収や追徴というようなことはできないのか。これも盛んに研究したところでありますが、現実にはなかなか働かない。やはりここはいわゆるマネーロンダリングということで、犯罪から得られたものそのものに着目して取り上げるという方法しか現在有効な方法はないのではないかというのが実感でございます。 <0037>=服部三男雄君= さて、諸外国ではもうマネーロンダリング規制というのは法制化も進み、きっちりやっているというふうに聞いております。  では、アメリカ等の現にマネーロンダリング規制をやっている国はどういうふうな具体的方法をとっているのかという点について、法務省の方から説明を求めます。 <0038>=政府委員(松尾邦弘君)= 我が国がこのマネーロンダリング規制を中心にしまして組織犯罪対策の法制の整備がおくれているということは、これまでにもいろいろな国際会議で指摘され続けてきたところでございます。先進国ではほぼこういう組織犯罪対策の法整備、先生御質問のマネーロンダリング対策ということにつきましては大体の法整備が進んでおりまして、さらにそれを今どう強化するかという段階でございます。  我が国は、そうした国際的な不法収益の移動という大きな流れの中で、世界にかけた網の破れ穴だということ、これは現実でございます。FATFの会合がくしくも先月の三十日から今月の二日まで日本で総会が行われました。そこでも、組織犯罪対策三法というのはそういう意味でその参加国から大変注目をされてきたところでございます。  先生お尋ねの諸外国の制度はどうなっているのかということでございますが、簡単に申し上げると、今我が国が法制化しようとしている制度は既に整えられている、この法案に盛り込まれている制度は既に整えられているということでございまして、それ以上にいろいろ強化する仕組みがある国もございます。全体としてそういう状況の中で、我が国だけが質的にその法整備ができていないという強い指摘を受けるような状況であるということでございます。 <0039>=服部三男雄君= 先ほどの松尾刑事局長の答弁で、犯罪収益を、まず収受する、持っているのを姿を変えていく、これを規制するんだということでした。プラス、事業支配という言葉も出てきたわけです。転々と形を変えていく一つのパターン、枝分かれとして事業支配、金の持って行き方だろうとは思うんですけれども、先進諸外国においても法人等の事業支配の罪というのはあるんですか。 <0040>=政府委員(松尾邦弘君)= 例えばアメリカ合衆国を見ますと、犯罪収益をエンタープライズ、企業というふうに言ってもいいと思いますが、に関する利益の取得、もしくはその設立もしくは運営に利用しまたは投資することということで、これを違法行為として処罰するということになっております。  イギリスにおきましても、財産が他人の犯罪行為の収益であり、またはその全部もしくは一部が直接もしくは間接に他人の犯罪行為の収益に当たることを知りながら、これを取得し、使用し、または所持すること、それぞれ犯罪の構成要件として定められております。  フランスにおきましても、重罪または軽罪から直接または間接に生じたもの、不正な利益ですが、これを投資、その前にもちろん隠匿、あるいはいろんな取引の代金等で支払う等の姿を転換させる行為がありますが、そういったことを犯罪構成要件として定めているということで、我が国の、事業支配のための犯罪収益を使用している行為そのものは、先進諸国ではほぼ加罰対象にしているということでございます。 <0041>=服部三男雄君= 今の局長のお答えではRICO法のことを言っているんだろうと思うんですが、エンタープライズの設立、運営というところは何となく事業支配という感じがありますけれども、いわゆるヨーロッパ大陸諸国の方の構成要件を見ていると、投資という言葉がありますね。投資とかあるいは客体の取得とかいう言葉を使っているところを見ると、ちょっと事業支配と異質のような感じがするんです。  僕も余りヨーロッパの司法は詳しくないんですけれども、ヨーロッパでも事業支配という犯罪類型になっていますか。 <0042>=政府委員(松尾邦弘君)= 先ほどヨーロッパの中のフランスについて申し上げました。フランスでは刑法に規定がございまして、違法、不法収益を投資、隠匿または転換する取引に協力する行為も資金洗浄行為、マネーロンダリング罪になるという規定ですので、投資自体が犯罪行為になるということです。  若干この点は、今回の法案は、不法収益を株式にまず姿を変える、これだけでは可罰性がまだ十分でございませんで、事業支配を目的としてという目的罪にしております。その上になおかつ、役員の変更、あるいは新たに自分の息のかかった者を役員に選任させる行為とか、あるいは、恐らく組織集団から言うことを聞かない役員をやめさせる行為、そういうような行為に出たときにこれを犯罪としているというので、切り方が少し違うのでございますが、委員お尋ねのように、経済活動に対してそういう不法収益をもって介入していく行為をどうとらえるかという問題でございまして、その点においては各国共通ということで御理解いただければと思います。 <0043>=服部三男雄君= 今局長の答えたことを聞きたかったわけですけれども、アメリカのRICO法がいいからとか、ヨーロッパがいいからと日本はそのまねをする必要は何もないわけで、日本は日本のロンダリング規制のやり方、必要性がある部分にやればいいことで、おっしゃるとおりなんですが、アメリカの場合はもう明らかにエンタープライズと書いていますから、それはもう、暴力団が仮装のための何らかの事業をやろうとすることというのですぐぴんとくるんです。  さてそこで、今おっしゃったように目的犯にして、事業支配目的とわざわざ明記して、株を買う、債権を取得する、もう一つ何か、三つのパターンだったと思うんですが、こういうことをわざわざ規制せにゃならぬというのは、過去十年間、二十年間に、暴力団あるいはそれらに類する者たちによって具体的に何かの事件があって、株を買って総会屋と同じように揺さぶる、あるいは債権譲渡を受けて揺さぶるという生の何か事件があって、これはもう何とか行為類型として事業支配目的犯罪というのをつくらにゃいかぬという、そういう必要性の強い例があったんですか。 <0044>=政府委員(松尾邦弘君)= 具体的に著名な事件で幾つか例を挙げさせていただきます。  例えば豊田商事の事件、記憶に新しいところでございますが、これは、純金の売買代金名下に騙取しました合計一千四百八十九億円という巨額な金ですが、この犯罪収益を用いまして多数の関連会社を設立あるいは買収したことがございます。  それから、投資ジャーナル事件ということも新聞で大きく取り上げられました。これは、株式買い付け資金名下に騙取した五百八十四億円の犯罪収益を用いまして、外国の銀行の買収資金として支出したり、あるいは会社を買収する意図でその会社の社長に貸し付けをしたり、あるいは共犯者が会社を経営するための資金として貸し付けるなどした事案でございます。この事案は、外国の経済活動にも影響を与えた事案であるということが言えようかと思います。  それからさらに、ちょっと形は変わりますが、茨城カントリー事件というのがございました。これは、ゴルフ会員権名下に騙取した一千二百億円近い現金等でございますが、これを国内外のゴルフ場経営等の会社の買収資金に充てたということでございます。  それからもう一つ例を挙げさせていただきますと、イトマン事件というのがございました。これは、ある会社の役員と共謀いたしまして、その会社の任務に背いてほかの会社に貸し付けを実行させる、それによって得た資金、二百億円、これも犯罪収益ということになりますが、その一部を、別の会社の経営権を支配するために株式の取得代金に充てた事案などがございます。  こうした事案は、まさに今回の法案の中で問擬されておりますいろいろな形態の不法行為、違法行為に当たるという例でございます。 <0045>=服部三男雄君= 今の答弁の最終部分でちょっと私と刑事局長は意見を異にしています。  今四例出されたうちの特に茨城カントリー事件とイトマン事件、確かに暴力団の関与はありましたよ、この二種の事件は。豊田商事は暴力団は関与していないんじゃないかと思うし、投資ジャーナル、まあ後では何か出てきたような記憶がありますけれども、茨城カントリーもイトマンも、確かに暴力団の関与はありますが、暴力団組織そのものがやった事件ではありません。  そうすると、先ほどおっしゃったように、組織犯罪集団による不法利得が他の正常な経済活動に対する侵害につながっていく考えから規制するのだというところの例としては、必ずしも適当でないように思うんです。  ほかに、組織暴力団そのものが仮装して犯罪収益をほかで使っていたというティピカルな例はないんですか。 <0046>=政府委員(松尾邦弘君)= 今私が申し上げた四つの例というのは、いろんな意味での不法収益が、企業活動といいますか、そういったものに投下された例あるいは投下され得る例として申し上げたわけでございます。  そのほかに、暴力団関係事犯といたしましては、先ほど警察庁の刑事局長からの説明にもちょっとありました、企業舎弟という言葉もございます。これは、直接資金が一〇〇%暴力団から流れるというケースもありますし、相当の影響力がある部分について暴力団資金が投入されているというケースは個々具体的に調べれば多数名前が挙がってくると思いますが、そういったケースはむしろ日常の中でよく見られるということで御理解いただきたいと思っています。 <0047>=服部三男雄君= 別に私は刑事局長の答弁の揚げ足をとっているんじゃなくて、日本の検察庁もそして警察も、こういう部面、いわゆる民刑、民事事件と刑事事件の中間部分で特に組織暴力団が絡むようなところに関してどうも今まで検挙実績が弱いんですね。もっとそういう部面に突っ込んでいかないと日本の健全な資本主義を守れない。バブル崩壊後は金融犯罪というもので検察庁も警察庁もよくやって健闘していることはわかりますけれども、それらの金が違法収益として暴力団へ環流していっているということは事実。  今言ったように企業舎弟、こんなもの普通の町社会を歩けば、バブルというのは十年ぐらい前、特に地上げ屋が横行したころは企業舎弟を自慢するようなばかがいっぱいいたんですよ。恐らく皆さんの耳には入っていないんだろうけれども、普通の市民社会にいる者には、ばかなことを言っているなというような例はそう珍しくない例だった。ところが、どうも日本の捜査機関がそういう部面にもっと突っ込むべき体制をとってこなかったという不満があるから今言っているんです。  だから、この法案に反対しているんじゃないんですよ、誤解しないでくださいね。この法案は非常に大事なんだ。アメリカでRICO法がどれだけ効き目があったか。特に、アメリカのバブルの土地問題に関してRICO法を適用して二千人ぐらいを刑務所にほうり込んだんですから、極めていい法律であって、日本が諸外国から非難されながら、ようよう今になって重い腰を上げたということは、やや遅いとは思いますけれども、何とかこの法案を通して先進国ともども国際的な犯罪集団と戦わなきゃいかぬ有力な武器ですから、必要だと思っているんです。  ただ、法務省にちょっとこれ確認したいんですが、この組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案の読み方なんですが、まず、第一条の「目的」のところから行きます。  ちょっと長くなりますが読みます。「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し、」、ここで一たん切れていますね。次の「犯罪による収益がこの種の犯罪を助長する」、ずっと行って、「重大な悪影響を与えることにかんがみ、」と、これは並列ですか、二つの例を書いてあるんですか。「組織的な犯罪」と、次の「犯罪による収益」のところは、組織的な犯罪による収益とは書いていないですね。この組織的な犯罪が社会生活を害するという一項目と、犯罪による収益が健全な経済活動に重大な悪影響を与えるという、これは二つをパラレルに並列して置いてあるんですか。 <0048>=政府委員(松尾邦弘君)= まず、最初の段落までの「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し、」と、これは現在の状況を端的にあらわしたものでございまして、その後は並列でございます。  「犯罪による収益が」と。「犯罪による収益」というのは、これは組織犯罪としていないわけでございます。それは後ほど各条文のところで触れるわけですが、「この種の犯罪」というのは組織犯罪でございまして、その組織犯罪を助長するということが一つと、それから「経済活動に重大な悪影響を与える」ということ、これを並列の規定として書かれているわけでございます。 <0049>=服部三男雄君= そうすると、組織的犯罪関係というこの条文全体の構成は、組織的犯罪というのは、要するに法定刑を上げた、重罰化した部分の対象であって、収益関係の、マネロンの部分は必ずしも組織性を前提としていない、こういうふうに確認して大丈夫ですか。 <0050>=政府委員(松尾邦弘君)= マネーロンダリング罪の前提犯罪をどうとらえるかというのはいろいろ議論がございます。中には組織的な犯罪に限るべきだということもございます。ただ、こういう組織集団が不法収益を得るいろいろな方法がございまして、種々の犯罪行為がございます。その中には、現象としては単独犯というような形をとることもございますので、この第一条の「目的」のところに、「犯罪による収益が」というところで組織犯罪による収益がと書いていない趣旨は、そういった組織的に行った犯罪にとどまらず、単独犯として犯されてその利益が組織に帰属することが多々見られるわけでございますので、そういったような理解でございます。  ただ、この種の犯罪を助長する、つまり組織犯罪を助長することに結果的にはなるわけでございますので、そこにつながっていくということになります。全体としてはやっぱり組織犯罪対策ということでございます。 <0051>=服部三男雄君= 先ほど警察庁の林刑事局長が、暴力団がぬくぬくしているのはけしからぬ、だから検察も警察も追及しようとしたと。そこで、まず没収・追徴の関係で何とかならないかと。なかなか難しかった、刑事訴訟の規定上難しかった。脱税で何とかならぬかと。これも要するに国税犯則の関係で難しかった、要件の問題で難しかった、こういうことですね。  そこで、そういう組織犯罪に対しての効果的な方法としては、いわゆる刑法の没収・追徴の有体物の制限を外すことによって、転々移転するところを全部芋づる式に追っかけるようにすればいいというのがこの法案の趣旨でしょう。  それならば、組織暴力団対策、組織犯罪対策としてやるならば、組織的な犯罪による収益をこの法律で規制して、一般単独犯的な、例えば殺人の請負をやって金をもらうというような場合、単独犯としますね。こういうので、経済活動に入っていくところを、例えば不当な事業支配目的とかいうところだったら、その単発の犯罪で規制していけば事足ることであって、要するに、巨額の金額が退蔵されてそれが転々変わっていくのがいかぬという観点でいけばちょっと違和感を感じるんですが、その点はどういうふうに考えてこういう立法をしたんですか。 <0052>=政府委員(松尾邦弘君)= 一般的な形で申し上げますと、この犯罪収益の規制というものは、組織的な犯罪において不正な利益を得ることを目的として種々の犯罪行為が行われますが、それに着目したものでございます。  この犯罪行為というその現象形態を見ますと、暴力団等の組織との関連で行われるということはそのとおりだろうと思いますが、実行形態としてはやはり単独犯であるものも少なくないわけでございます。いろいろな形態のものがあり得るところでありまして、必ずしも犯罪行為自体が組織的に行われるとは限らないというのが一つの現象という理解でございます。  したがって、もし犯罪収益の前提犯罪を組織的な形態で行われた犯罪に限定しますと、組織的犯罪対策としての実効性を大きく欠くことになって適当ではないということになります。諸外国の例を見ましても、犯罪収益規制の法整備で、前提犯罪が組織的な形態で行われた場合に限定している例はございません。また、国際的協調の観点からも、我が国だけそのような前提犯罪を限定するということになるのは適当ではないということで、組織的な犯罪というような表記にしなかったというのはそういう理由でございます。 <0053>=服部三男雄君= それでは、刑事局長、ちょっとくどくなりますが、第九条の一番最初の部分ですが、事業支配目的と。株を持っての事業支配目的という、実質的支配でなきゃ意味ありませんね。株式による実質的支配といいますと、かなりの量の株を買わなきゃいかぬわけです。いわゆる総会屋が株づけと言っている一株や二株買ってではとてもこの条文には当たらないと思うんですよ。  そうすると、かなりの量の株式を買うということはかなりの資金が要るということでしょう。だから、単独犯行、個々人の犯行でそんな大きな資金を、まあ稼げるといえば稼げぬこともないでしょうけれども、身代金目的で誘拐をやればそれは一億、二億稼げるかもしれぬし、恐喝をやれば稼げるかもしれぬが、それよりもやっぱり組織としての犯罪集団ならば簡単に稼げるわけです。みかじめ料、恐喝、用心棒、麻薬、十億単位のお金が簡単に稼げるわけですね、組織体としてやれば。  そういう実態を考えますと、事業の実質的支配という観点から考えると、どうも今の局長の答弁は何となくまだ違和感が残るのですが、もうちょっと納得できるような説明はできませんか。 <0054>=政府委員(松尾邦弘君)= 事業経営を支配する目的という表現になっております。先生御指摘のように、事業経営を支配するということですから、あるいは場合によりますと株主として五〇%以上持っているとか、極端に言えばそこまでの支配力ということが考えられるケースもあると思います。したがって、この事業経営主体自体として大中小いろいろあるかと思います。資本金何億というところから、何百万単位で資本金が終わってしまうような企業、大中小あると思いますが、それの規模に応じて事業経営を支配するための必要な資金というのがまたいろいろあるのだろうと思います。  ここの考え方でございますけれども、例えば総会屋が株づけをいたします。これは一株ということもありますし、千株とか、非常に微少な株を持ってその株式の行使に藉口していろいろと金員を要求する。これはここに言う事業経営を支配する目的でないことは明らかでございます。  ここで言う事業経営を支配するというのは、形態として三つございまして、ここの一項、二項、三項でそれぞれあるんですが、それによって多少変わってきます。一項は、株式を取得している場合。二項は、債権を取得している場合。三項は、法人等の株主に対する債権を取得するという間接の形。この三つの類型を考えておりまして、それぞれに多少、要する資金量というのは具体的ケースでは違ってこようかと思います。  例えば債権を取得するケースですと、ある一定の貸し付けをする、それを引き揚げるというふうにおどかすことによりまして、企業の経営状態のある一局面では、それは経営が成り立たないということも場合によったらあり得るかもしれません。しかしその貸付金は、当該資本金の例えば半分にも満たない金額であることも場合によったらあり得ることだと思います。  そんなようなことで、個々具体的なケースでは、どの程度の資金を投入すればその事業を支配できるのかというのはもう千差万別にはなろうかと思いますが、それなりの資金量というもの、それなりの金額というものが必要だということはまさに先生御指摘のとおりでございまして、こういったところに、組織犯罪の持っている資金の動かし方によっては相当な影響力を与えるケースもあるということで考えているところでございます。  ここは不法収益の入り口のところの話ではございませんで、出る方の話でございます。先ほど私が申し上げたのは、そういう一つの一定のイリーガルな集団的に入る入り口の入り方は、組織としてがばっと持ってくるケースもあるし、個人的な違法行為を組織に流入させる行為もあって、そこは組織的な犯罪に縛るとおかしくなる。しかし、出口のところになっていきますと、これは組織そのもので動いている。それをどう規制するかということでこの法律は統一されているということで御理解をいただきたいなと思います。 <0055>=服部三男雄君= この法案については、先ほど言いましたように与野党そんなに異論はないだろうと思います。何しろ、日本の憲法前文にあるとおり国際協調、これは日本のスタンスであります。  そういう意味で、今度、私ども自由民主党の総裁である小渕総理がケルン・サミットに行ったわけですね。マネーロンダリングを初め、通信傍受等のことについて実際、数年前からいろいろ注意というのか勧告というんでしょうか、受けておった我が日本でございますから、ケルン・サミットでも当然議題になったんだろうと思うんですが、その状況について報告を求めます。 <0056>=政府委員(松尾邦弘君)= ことしの六月十八日から二十日まで、ドイツのケルンで主要国首脳会議、いわゆるサミットが行われました。それで、G7の首脳声明におきましてこのマネーロンダリング対策の問題が取り上げられております。その表現を読ませていただきますと、「我々は、資金洗浄及びその他の金融犯罪に対する闘いにおいて、」「規制が不十分で非協力的な国・地域によってもたらされる問題に関して、我々の懸念を再確認する。」とした上で、「我々は、資金洗浄に関する金融活動作業部会(FATF)が行っている、資金洗浄に対する国際的な闘いにおいて実効的な協力を行わず、結果として汚職や組織犯罪からの収益の洗浄を助長している国・地域を特定するための作業を歓迎し、支持する。」としてこのFATFの全体の活動が支持されているということでございます。 <0057>=服部三男雄君= 今、委員会で審議していることはこのごろ新聞等でよく取り上げられます。そういう影響もあってFATFというような字がこれまた新聞に出るようになったんですが、一般市民に非常になじみのない言葉ですから聞かずもがなのことかもしれませんけれども、法務省からFATFについてちょっと説明してもらいたいと思います。 <0058>=政府委員(松尾邦弘君)= これは、フィナンシャル・アクション・タスク・フォースという頭文字をとりましてFATFというふうに言っております。日本語の訳では、通常、金融活動作業部会というふうに言っているわけでございます。これは、一九八九年のアルシュ・サミットの経済宣言において、こういうものを設けようということでこれが設置されました。事務局はOECDの内部に置かれておりまして、現在、主要国を網羅しておりますが、二十六の国と地域及び二つの国際機関がこれに参加している政府間機関でございます。  平成元年、一九八九年にフランスのパリで行われたアルシュ・サミットにおいて、薬物の不正取引対策の問題が取り上げられたわけでございます。その中で、麻薬新条約の早期批准あるいは薬物犯罪収益の没収等に関する国際協力について合意するとともに、資金洗浄に関する包括的な検討を行う部会としましてこのFATFの設置が決議され、それが置かれたということでございます。  このFATFでは、これを構成している人は金融あるいは法律あるいは法執行の専門家です。ここでマネーロンダリングに関する包括的な対策の検討をそれ以来ずっと行っておりまして、一九九〇年、設置された二年後には四十の勧告を採択し、これを一九九六年、その六年後には改定しまして新たな四十の勧告を採択し、加盟国に対してその実施状況等の審査を行っております。  昨年六月のFATFの全体会合でございますが、我が国のマネーロンダリング法制に関する審査が行われております。ここで我が国が大変法整備が立ちおくれているということが指摘されまして、我が国からは、現在、組織犯罪対策三法でおくればせながらその手当てを急いでいるというような釈明をしてきたということでございます。近時の国際的な金融経済活動の大規模化に伴いまして、犯罪収益の運用等もボーダーレスになって国際化しております。規制が弱い国があると、そこが全世界の犯罪収益の運用の温床となるということでございます。各国が国際的に協調した対応をとる必要性が極めて高いということでございまして、そのためのFATFの資金洗浄対策、マネーロンダリング対策への取り組みが国際的にも大変重視されておりまして、この活動もサミットあるいは国連の会議等で強く支持されているという状況でございます。 <0059>=服部三男雄君= 今の答弁で、FATFというのはマネーロンダリングのための作業部会のような印象を与えかねないわけですけれども、FATF全体会合で我が国の組織犯罪対策三法案の国会審議状況を報告しましたね。それについて、特にアメリカとかオーストラリア等から特に我が国の犯罪捜査のための通信傍受の関係についても付言があったと聞いておりますので、どのような意見が出されたのか、報告を求めます。 <0060>=政府委員(松尾邦弘君)= こういったマネーロンダリング対策ということでFATFが置かれたわけでございますが、このマネーロンダリング対策ということで、いろいろ資金洗浄に関する実体法の整備、つまり処罰規定がいろんな角度から置かれるようになっております。  当初は薬物に限られていたものでございますが、それが重要犯罪に拡大をしている。これが一九九六年あたりには新たな勧告で重要犯罪に拡大すべきであるということが入っていますが、そうした実体法の整備の問題と、もう一つは、こういった会議の席上で論議されていることでございますが、どうやったらそういう違法な資金洗浄を検挙できるのかということが当然議論になります。  私も何度か表現しましたが、これらの会議の構成員のメンバーも同じようなことを言っております。つまり、そうした実体法の整備が絵にかいたもちに終わらないためには、それを的確に摘発できる捜査手法が開拓されなきゃならないということもいろいろな宣言の中でまた触れられているところでございます。  昨年六月に我が国の対日審査が行われたわけでございますが、その中で、マネーロンダリング犯罪の拡充、つまり薬物犯罪だけでなくて重要犯罪に拡充すべきであるという指摘と同時に、それを有効に摘発するために、通信傍受も含めました、電気的監視装置と言われていますが、監視を含めまして、捜査手法についての改善も図るべきであるということもその中に盛り込まれているということでございまして、単にマネーロンダリングだけではないということでございます。 <0061>=服部三男雄君= 法務大臣、出席いただいておりますので、法務大臣に同じような質問なんですが、ある刑法学者、ある特定の政党、ある識者の一部に、そのぐらい国際協調が必要ならば、特にFATFの活動を尊重すると勧告まで受けているということであれば、国会において、組織的犯罪対策三法すべてでなくて、マネーロンダリング規制に関する部分だけ成立させたらいいじゃないか、それで十分じゃないのかというような特定の一部の意見がある。これ事実あるんですけれども、また後ほどそういうことを主張される委員も出られることと思いますが、それに対して法務大臣はどのようなお考えをお持ちでございますか。 <0062>=国務大臣(陣内孝雄君)= 金融活動作業部会が取り組む資金洗浄対策は、組織的な犯罪に経済的な側面から適正に対処しようとするものでありますが、組織的な犯罪と戦うためにはこの対策だけでは十分ではないというふうに考えます。  組織性、計画性が高く、違法性が大きい犯罪については、それに関与した者の責任に応じた科刑を可能とするために、一定の組織的な犯罪について加重類型を設け、厳罰をもって臨む必要もございます。  また、組織的、密行的に行われる組織的な殺人、薬物関連事犯、銃器関連事犯及び集団密航の罪に関しましては、その実行のための手段として電話等の電気通信がしばしば用いられております。それを傍受しなければ、首謀者を含めた犯行関与者を検挙し、あるいは真相を解明することが著しく困難である、こういう現状にございます。犯罪捜査のための通信傍受の制度を導入する必要がその点からあるわけでございまして、刑事実体法及び手続法の両面からの法整備が重要かつ緊急な課題ということはしばしば申し上げているところでございます。  したがいまして、組織犯罪対策三法は、いずれも組織的な犯罪に適切に対処するために必要不可欠な一体的な法整備でございますので、できる限り早い機会にこの法整備を一体として実現させていただきたいと、このようにお願いしたいところでございます。 <0063>=服部三男雄君= それでは、ちょっと理屈っぽい話になりますけれども、重要な論点になるかもしれませんのでお尋ねします。  マネーロンダリング行為を処罰する、今まではそういう処罰規定がなかったことも間違いないんですが、今度の新処罰法で規制しようとするマネーロンダリング行為に当たる行為というのは、いわゆる刑法理論でいう不可罰的事後行為のようなものが多いんですね。確かにそうだと思うんです。  ということで、今まで犯罪ではないということになっていたんですが、今回これを前提犯罪とは別に処罰しようというわけですから、刑法の基本的な枠組みを外れるんじゃないかというような、やや古い刑法理論でしょうけれども、そういう立場に立った論説も見られぬことはないんですね。私はそれにくみしませんよ。全然くみしないんですけれども、その点について法務省の刑事局長から答弁願います。 <0064>=政府委員(松尾邦弘君)= まず、現在の刑法におきましても、例えば、窃取した他人の預金通帳、印鑑があるとします。これを捨ててしまう、あるいは燃やしてしまう行為は、これは先生の今申された不可罰的事後行為そのものでございます。ただ、それを用いて銀行に行って銀行員をだまして預金を引き出す行為、これは新たな法益を侵害するということで不可罰的事後行為の範囲を超えておりますので、詐欺罪が成立するという考え方でございます。  今回の法案でそれを引き比べてみますと、本法案に定める犯罪収益等による法人等の事業支配を目的とする行為、あるいはその犯罪収益を転々させる隠匿とか収受等の処罰規定でございますが、犯罪収益等を保持、運用する行為によりまして、その犯罪収益等が将来の犯罪活動に再投資されたり、あるいは犯罪組織の維持拡大に利用されるという問題があるだけではなくて、事業活動に投資されることによりまして合法的な経済活動に、先ほどからいろいろ論議されておりますような重大な影響を及ぼすということにかんがみますと、その行為自体の反社会性あるいは法益侵害性に着目して、その行為を処罰するということでございます。  マネーロンダリング行為は、財産犯によって得た財物を使う行為のような、いわば不可罰的事後行為とは異なるものでございまして、その処罰は何ら刑法の基本的枠組みを変えるものではございません。 <0065>=服部三男雄君= 今の刑事局長の答弁は非常に重要なところでありまして、一見不可罰的事後行為に見えるようなことであっても、その行為自体に、時代が変わって国民の多くがそれは反社会性が非常に強い、違法行為の類型として非常に強い、新たな法益侵害を起こしているんだと、こういうふうな社会の要請が強まってくれば、法全般を統括する法務省としては、当然こういったことを罰するような法制をつくっていくというのは、これは法務省の本来持っている役割だと私は確信していますので、法務省の方も自信を持っていってもらいたいと思います。  そうしますと、今度こういう問題がある。特殊な例ですけれども、あるいは野党の方々はそんなのを事前に先食いしているのかもしれないんだけれども、ロンダリングの前提犯罪につき公訴時効が完成している、余り考えられない例ですけれども、それは公訴時効が完成しているんだからいいわけです。処罰されることはないんです。  しかし、犯罪収益に係るマネーロンダリング行為自体は処罰しなきゃいかぬ、私はそう思うんです。それは新しい違法類型であるから当然なんですが、これはおかしいのじゃないかと。要するにさっきの不可罰的事後行為と同じ理論だろうと思うんですが、前提犯罪が時効を完成しているんだからいいじゃないかという論説もないことはないんです。これも刑法理論としてはおかしいなと私は思うんですけれども、その点を法務当局はどのように考えますか。 <0066>=政府委員(松尾邦弘君)= 先ほどの不可罰的事後行為をもさらに処罰するのではないかというお答えの中で申し上げましたが、犯罪収益等の隠匿罪等の行為でございますが、これは財産犯、前提犯罪とは別個の犯罪として可罰性を認めているということでございますので、前提犯罪につきまして公訴時効が完成したか否かというものは、直接マネーロンダリングに関する犯罪に消長をもたらすものではないということになります。  これは、先ほど申し上げた不可罰的事後行為のところと同じ考え方を敷衍していただきますと、そのような結論に当然なるということでございます。 <0067>=服部三男雄君= 先ほど私はちょっと苦言を呈しました。検察庁、警察庁は、暴力団の資金源の民事と刑事の接点部分に関して必ずしもうまくいっていない、積極的だったとも私は思わないと苦言を呈しました。  その例は、先ほど松尾刑事局長が答弁したとおり、麻薬特例法でせっかくロンダリングの法律を部分的な法律とはいえつくったにもかかわらず、七年間でたった五人なんです。この例にも一つ出てくる。一部の識者の間に、過去の例を見てみろ、麻薬特例法で六例か七例しかないのに、わざわざこんな大げさな法律をつくったって大した検挙はできないのじゃないかというやや冷ややかな、一種の警察不信の言葉もないことはないんですけれども、私はそうは思いません。  せっかく今度この法律をつくるんですから、検察庁特捜部もそうですし、警察庁ももっとこの点に重点を置いてやってもらいたい。大騒ぎして大法案をつくったけれども、大山鳴動ネズミ数匹の検挙例というようなことになると、私は今後法務委員を続ける限りは厳しく両君を呼びつけてしかりますから、頑張ってもらうように、もう一遍決意を確認したいと思います。 <0068>=政府委員(松尾邦弘君)= 決意を申し上げる前に三点だけ申し上げたいと思いますが、以下申し上げる三つの点をお考えいただいても、今回の法案が成立しますと、こういう組織犯罪対策として大変有効だというふうに私は思う次第でございます。  第一点は、犯罪収益等の前提犯罪を重大犯罪に拡大いたしました。それから、新たに事業支配罪を新設したということもございます。  こういう罪の面におきましても、いろいろな犯罪行為による犯罪収益等に関するマネーロンダリング行為をいろいろな形でとらえることができるという点で、従来の麻薬特例法の極めて狭い切り口に比べますと、多様な切り口が今回成立するというのが第一点でございます。  第二点は、疑わしい取引に関する情報の問題でございます。捜査をやっておりますと、やはり金の動きが大変重要でございます。しかし、中のどこの部分を捜査の端緒として把握できるのかというのは大変難しい問題でございます。  いろいろな金融機関の犯罪の中でその端緒が得られる、それが暴力団等の資金に流れているというようなことでそれを追いかけていく、現在でも鋭意そういうことはやっておるわけでございますが、今回は、疑わしい取引に関する情報が金融機関等から金融監督庁に一元的に集約されるという点も非常に重要でございます。それに加えまして、これを整理分析して捜査機関に回付するということを、疑わしい取引の場合は義務づけているわけでございます。  こういった疑わしい取引の届け出制度がいわば抜本的な充実が図られるということで、こういった組織犯罪についての貴重な端緒となる金の動きについての情報が多角的、有効にいろんな機関の間で共有されるということでございます。その中には国際的な協力関係も当然前提とされているわけでございます。  もう一点は、先ほど言った実体法と手続法が相まって効果を上げるということでございまして、捜査手法という意味で通信傍受という特別な捜査手段をとることが可能になるわけでございますので、今申し上げた主にこの三点だけお考えいただいても、組織犯罪対策としての実効性は十分に期待できると考えておりまして、捜査機関の一員として、こうした手法を有効に活用して、近い将来、国民からの期待に十分沿うような成果を上げたいというふうに考えております。 <0069>=政府委員(林則清君)= 長年にわたって組織犯罪と戦ってきた警察といたしましては、切望してやまなかったこういった新しい武器が今回の法案の成立によって与えられるならば、これを適正に活用して組織犯罪との戦いにおいて勝利をおさめ、国民の期待に沿っていきたい、全力を挙げて適正な運用に努めてまいりたい、かように思っております。 <0070>=服部三男雄君= またちょっと法律論に戻りますけれども、要するに今までの刑法の没収・追徴制度を今度の法案で拡充するのですけれども、どのように変えるのか。今まではどういう限度があった、だから今度、こういう必要性があってこの法案をつくったんだというのを平易に、国民のみんなにわかりやすいように法務省刑事局長に答弁願います。 <0071>=政府委員(松尾邦弘君)= 対比をしながら御説明したいと思いますが、まず没収の対象でございます。  現在の刑法では動産、不動産ということでございますが、今回は債権、金銭債権も没収することができると決めております。現在の社会で現金が動くというのも、それは少なからずあるかと思いますが、大きな取引等はいわば口座間の移動というような形で行われまして、現金が右から左に動いていくというようなことよりも、むしろそちらの方を把握しなければいけないという現在の情勢に即応した形になるということでございます。  それから、刑法では、没収対象財産が、犯罪行為により得られるなどした時点で有体物、つまり現金等であることが必要です。犯罪行為の報酬の支払いが例えば暴力団の特定人の口座へ入る、直接口座へ振り込まれるというようなときには、それを得た時点、つまり振り込みを得た時点で現実に現金等でございませんので、これは没収できません。現在の刑法の仕組みでは没収できない、したがって追徴もできないということになるわけでございます。  この法律案ではそのような限定はなくなります。金銭債権もその没収の対象となるし、また、犯罪収益が犯罪行為によって得られるなどした時点で、動産、不動産あるいは金銭債権以外のものであっても広く追徴の対象にすることはできるということでございます。  また、刑法では、犯罪行為によって得た財産の対価でございますが、これは没収できるものの、そのさらなる対価といいますか、ある恐喝等の行為によりまして例えば一千万円を得ました、それでもってある動産、例えば宝石等を買いましたと。つまり、ここまでは現在の刑法では没収の対象になりますが、それをさらに売りまして今度は千五百万円の対価を得ましたということになりますと、そのさらなる対価、その三番目のやつですが、これは没収の対象とはならないわけでございます。  この法律案では、「犯罪収益の果実として得た財産」、今で言うと百万円なり一千万円の現金を恐喝で得た、これが得た財産ですが、例えば口座にその一千万円が振り込まれました、その上で利息等が百万円ありましたと、そうなると果実ということになりますが、それで得た財産あるいは「犯罪収益の対価として得た財産」のほか、「これらの財産の対価として得た財産」、つまり転々として行く先ですね、追跡可能な財産も没収の対象となるということでございます。現行法では、一転しまして、二転以上するともう追跡できない、簡単に言うとそういうことですが、追跡可能な限り、今回の法律案が成立しますと追跡していくということができることになります。  さらに、刑法では、没収対象財産と他の財産が混和した場合は没収することはできないということになっています。混和というのは大変わかりにくいんですが、私はここに現金一千万円を持っております、そこに不法収益の百万円をこの袋の中に入れてしまいますと、どの百万円が最初の百万円、一千万円の中のものかわからなくなります。これが混和した状態、一千百万円の状態が混和した状態と言います。現在の刑法では、これは没収対象財産にはならないということになります。  この法律案では、混和財産のうち、没収すべき財産の額または数量に相当する部分を没収することができるということです。ですから、一千百万の中のどの百万円かわからなくなっても、金額で区分できるものについては百万円そこから没収できますよということにしてあります。つまり、現在の刑法ではできないことも今回では可能になるということです。  さらに申し上げますと、刑法の没収・追徴については保全手続がありませんでした。裁判を起こします、あるいは審理が始まります。そうすると、犯人の方はいち早くその財産を転々とさせて隠してしまうということで、いざ民事訴訟なりなんなりで勝っても財産はないということになりまして、財産的な被害はなかなか回復しがたいという状況もあります。そういった場合には、今回の法律が通りますと保全手続というものがありまして、民事事件で言うと仮処分みたいなことを考えていただくといいと思うんですが、とりあえず押さえてしまうということができるようになります。  そういった保全手続も今回の法案の中には入っておりまして、全体として没収・追徴の実効性を確保するためのいろいろな手段が講じられているということでございます。 <0072>=服部三男雄君= 時間の制限がありますので、あと二点だけ取り上げます。  よく一般市民の人から刑事裁判の矛盾で聞くのが、ある被告人が有罪になって罰金三億、五億と出ます。この今言うような保全手続がないものだから、あるときはその犯罪行為によって金もうけしたんですが、それがいつの間にか消えてしまっている。となると、本人は罰金を払えない。罰金を払えないとどうするかというと、労役場留置の一日の換算を一人百万円とかいうふうな例が過去にあった。一方の方は一日二万円とかになっているわけです。一人の同じ労役場留置の価値が百万円と二万円で五十倍も変わるわけがないのに、そういう非常に苦肉の策を行ってきた、刑事判決で。非常に矛盾点だということを一般市民はだれもが感じている。  今度のこの保全手続さえ活用できればそういった矛盾は解決できるわけですね。 <0073>=政府委員(松尾邦弘君)= 先ほどの答弁中でもちょっと触れましたが、有罪判決が確定する以前に現状ではほとんどの場合がその被告人の資産は散逸してしまう、いざ被害者なりなんなりがそれを押さえよう、あるいは没収しようというときにはもうないという現実がまたあるわけでございます。  没収・追徴を確実に行うためには、どうしても有罪判決が確定する前にその対象となる財産を保全する必要があります。現行法上、没収すべき有体物を差し押さえることはできますが、その効果は裁判所または捜査機関がその物の占有を取得するにとどまりまして、その処分を法律上禁止することはできないという壁がございます。また、金銭債権についてはその処分を禁止することはできない。つまり、その人が何億円も預金を持っていることをわかっていながら、それを押さえることができないということになります。  また、追徴という面で考えてみましても、刑事訴訟法上仮納付の制度がございますけれども、これは裁判所が追徴を言い渡す場合のものでありまして、それ以前に追徴の裁判の執行を確保するための一般財産の処分を禁止することはできないわけです。  そこで、この法律案では、犯罪による収益の剥奪を確実に行うことを目的としまして、その対象となる財産を保全するための制度として、没収保全あるいは追徴保全の制度を設けることとしております。これは、単に我が国だけではなくて、先ほど申し上げたFATFの四十の勧告がございますが、その中でも、各国がとるべき没収することを可能とするための措置の中に、この保全の手続と、凍結とか差し押さえというようなことを暫定措置と言っておりますが、そういったことをとるべきであるということを勧告していることもございます。 <0074>=服部三男雄君= 最後に質問しますが、そのFATFの勧告にあるとおり、疑わしき取引についての金融機関への届け出義務、確かに私は効果があると思う。事実、ヨーロッパでやっている。私自身は成功していると聞いております。ところが日本では、先日の新聞でことしになってからやや届け出がふえてきたということが書いてありましたが、必ずしも積極的でもなかったと思う。  やっぱり検察庁、警察庁がもっと金融監督庁その他とよく詰めて、金融機関にいたずらに不安や負担をかけない、しかし、この制度の意義等をよく説明して、いやしくも民間の金融機関の取引を混乱させることのないようにしていかなきゃいかぬと思いますので、その点もあわせてこの法案の早期成立をした場合に実施してもらいたいということを要望して、私の質問を終わります。 <0075>=千葉景子君= 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。  私は、この法案についてきょうが最初の質問ということになりますので、冒頭、この三法案を審議するに当たりまして三点、まず基本的な問題点を申し上げておきたいというふうに思います。  まず第一点ですけれども、これは今、服部議員からも御質問がありまして、その中で私も感ずるところですが、この三法案、組織的犯罪対策法案という名のもとに、もうすべてのものがごった煮になっている、こういう非常に緻密さに欠けた立法ではないかというふうに思います。  犯罪というのは、その現象、形態がどうであるか、あるいは発生原因というのはどういうところにあるのか、こういうことをきちっとつぶさに検討し、そしてそれに対して合理的な対策を講じていくということが必要であろうというふうに思います。  今回も、組織的犯罪対策ということで、例えば暴力団、そして海外から蛇頭というような形でのグループの日本への侵入、こういうことも挙げられ、もう一方ではオウム対策というような側面も加えられている。しかし、考えてみれば、それぞれ形態も、発生原因も、それに対する適切な対応、対策というのも必ずしもすべて共通になろうとは私は思えない。  それぞれを緻密に検討した立法と思えない。そういう結果、先ほどもありました、実体法と捜査手続、捜査手法、それを組み合わせて実効を上げようということですけれども、それは、できるだけ処罰規定が多い方が捜査機関にとっては捜査しやすい、あるいはできるだけ捜査手法をたくさん持っている方が逮捕しやすい、こういうことはあるでしょう。  しかし、先ほど言ったような、そういう犯罪の実態、そういうものもきちっと検証したかどうか疑問のままに実体法、捜査手法をさまざま取り入れてしまっている。結果的には、本当にそういう組織犯罪に効果的な実が上がるのか否か、それが十分にわからない反面、たくさんの処罰規定や捜査手法を盛り込んだために、一人一人の人権とか市民生活を抑圧したり規制する、こういう法律に結果的にはなってしまった、これが一点、この法案の非常に問題点ではないかというふうに私は思います。  それから第二点、これは組織犯罪対策ばかりではなくて、捜査を国民の信頼を得てあるいは協力を得て本当にきちっと進めようとするのであれば、やはり捜査機関自体の、あるいはこれに対応していこうという政府自体の信頼性、こういうものが不可欠であろうというふうに思います。  しかしながら、この法案の審議の冒頭からも指摘をされましたように、従前起こった神奈川県警による緒方邸の盗聴事件、これに対する明確な警察庁からのお答えもいただけていない、こういう状況です。あるいは私は、組織犯罪対策というふうに言われましたから、ひょっとしたら省庁ぐるみで行われているそれこそ組織犯罪対策、こっちの方をまずきちっとすべきではないのか、こうも思ったりいたします。こういうことがきちっとされないままにこういう法案が提起をされている。いろいろな疑問が呈せられているのは当然であろうというふうに思います。  それから三点目、これはこれまでの審議の中でも多少触れられてまいりましたけれども、今回、とりわけ通信傍受という部門で、これからの高度情報化社会あるいは情報通信が本当に日に日に発達をしていく、こういう状況の中で、本当にこれらを見通して、あるいはそれをきちっと技術的にも検証し、そしてそれにも問題ない法案として出されているのかどうか、こういうところもまだ非常に疑問が残るし、この委員会でも十分に検証がなされていない部分であろうというふうに私は思います。  これについては、今後またそれぞれからいろいろな審議あるいは問題の指摘などがなされていくだろうというふうに思いますけれども、まず私は、審議に当たりまして冒頭この三点をぜひ頭に置いていただきたいし、この審議に当たっても私どもの共通の問題点として持っていきたいというふうに考えております。  そこで、とりあえず今申し上げました第二点目ですが、やはり捜査機関の信頼性、こういう問題がございます。冒頭、私どもの角田委員からも警察庁の態度について、あるいは対応について大変厳しい指摘がなされました。私もこれは、どこかできちっとした警察庁としての御見解、そういうものを承らなければいけないというふうに思っております。これは警察庁の方に私も厳しくお尋ねをしたところでもございます。しかしながら、私がこの間問いただしたところ、前回の質疑に際しての答弁と全く変わることはない、そういう姿勢でいらっしゃいました。  そういう意味では、それをここで繰り返してお聞きしても余り意味のないことですから、きょうは質問はいたしませんけれども、きょう警察庁には来ていただいております。この審議の間、みずからこの問題について姿勢を明らかにしようということがございましたら、いつでも結構です、警察庁の方からこの委員会に対してきちっとした意見を申し述べていただく、こういうことを私は要請しておきたいというふうに思います。きょうは答弁は要りません。よくその点を認識しておいていただきたいというふうに思います。  さて、こういう前提を置いた上でですが、三点目、私は情報化の進展という問題を指摘させていただきました。前回の質疑などでも、インターネットなどにかかわる問題点というのが多少出始めているところでもございます。これは、大変詳しい皆さんもおいででいらっしゃいましょうから、私の方から、きょうはたくさんのことを質問はいたしませんけれども、一つこの点をただしておきたいというふうに思います。  それは、前回の質疑で、インターネットの通信傍受というのは、メールボックスの情報を傍受するのだというお話でございました。私は素人のようなものですから素朴に感ずるところですが、メールボックスの情報というのは、この法律で言われるように、「現に行われている他人間の通信」というふうに本当に言えるのかどうか。ここがやっぱり、これまでの通信の仕組みと、これからのインターネットなどを中心とした情報通信の仕組みと大きく違ってくるところではないかというふうに思うんです。これを傍受するということは、平たく言いますと、郵便局に集まっているはがき、これをコピーする、これとほぼ似た形態になるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。  もし、これをコピーすることが通信傍受であるということであれば、郵便局でせっせと手紙のコピーをとるということも通信傍受だということにもなりかねませんが、これを比較いたしまして、仕組み上、いわゆる電話などの傍受、それから電子メールなどをメールボックスから傍受するということの、どうもシステム上違いがあるのではないか。こういうことをきちっと区別し、検証してこの法案というのはできているものかどうか、ちょっとそこを確認させていただきたいんですが、いかがですか。 <0076>=政府委員(松尾邦弘君)= まず、配達される前の郵便というのは確かに、場所によりますと、特定個人別にボックスがあってそこに仕分けされるということになると思うんですが、それを捜査機関が見たいという場合には、現在の刑事訴訟法の手続で、捜索令状をとりまして押収すればいいということになります。  インターネットの通信にこれを引き比べてみますと、これもやはり二人の人間間の通信でございますので、メールボックスにたまっているものがございます。例えば、受け手がずぼらで一週間メールをあけていない、その間に十通も二十通も入っているということは、今私が出した例でいいますと、郵便局で十通の郵便がたまっているという状況と同じでございます。したがって、これは通信傍受令状ではなくて捜索差し押さえ令状で押収するということになります。押収自体は、サーバーのところでたまっていますから、電子的に処理されていますので、それをフロッピーの中に出してもらって押収するという形になるか、それは技術的にはいろいろあろうかと思いますが、要するに郵便物を持ってくるのと同じ理屈でございます。  ところが、インターネットによる通信というのは非常に厄介でございまして、全部たまっているものばかりでなくて、受け手の方もパソコンを立ち上げておりまして、見張っておりまして、メールが入りましたよと光ると、読んで即消してしまうことができるわけです。  では、それをどうやって傍受するのかといいますと、プロバイダーのところのサーバーまで行きまして、特定の個人に行く通信経路を特定しまして、向こうに送るのと同じものがここの機械に落ちるような形だろうと思いますが、それで同時にそれを電子的に受けるよりしようがないわけです。それはもう通信傍受令状でいきます。これはたまっているのとはわけが違うわけです。  しかし、傍受令状の実施段階以降に監視しておりまして、入ったらそれを電子的に処理をして、通常の場合ですと、その現場で画面に表示をしまして該当性の判断をするというふうになります。つまり、先生のおっしゃった郵便局ではがきをコピーするのと同じ場面もありますし、そうでない場面もある。つまり、そうでない場面の方は現行法では手当てができませんので、通信傍受法案では、傍受令状でそれの内容を承知する、あるいはそれを証拠化するということになるわけでございます。 <0077>=千葉景子君= そうすると、それを区別して行うということになりますね。事前に、捜索・押収の令状にするかあるいは通信傍受の令状にするか、請求をするか、そしてそれによって実際の傍受あるいは捜索が行われる、それを区別して行うということですね。 <0078>=政府委員(松尾邦弘君)= 捜査機関として何を承知したいのかによる区別になります。現に来ている手紙を押さえる、あるいは現にプロバイダーのサーバーのところへたまっているものを見たいということでありますと、郵便局の手紙と同じことでございます。現行法の手続に沿って行うということ。そうではなくて、現に流れてくるものをリアルタイムで捕まえたいということになりますと、まさにそれは傍受でございますので、今は手だてがございませんので、この通信傍受法案ができますとまさに通信傍受令状で行うということになります。 <0079>=千葉景子君= 実際にどうなるかというのは私も非常に難しいものだと思うんです。結局は、通信傍受の令状と、そして捜索の令状と両方とって、どっちでもできそうだという方で実際の現場では行うという、これも先ほど言いましたけれども、こっちの手法もできる、こっちの手法もやる、何でもやるということに結果的になるんじゃないかという大変疑問を持つんですけれども、それを明確に事前に区別したりして適正な手続が本当にとれるんでしょうか。 <0080>=政府委員(松尾邦弘君)= 委員のお尋ねですと大変誤解を生むと思いますが、捜索差し押さえ令状と通信傍受令状を持っていって、どっちにしようかなという問題ではないんです。何を押さえるかによってそれはぴしり決まってしまいます。  つまり、サーバーに既に蓄積されている電子情報を押さえたいということであれば、これは捜索差し押さえ令状なんです。その場に行きまして、通信傍受令状でちょっとこれも押さえさせてくださいというわけにはいかないわけです。やはりそれは別個の令状を持って押さえる必要があります。通信傍受令状は、現に入ってくるものをリアルタイムで捕まえるという作業でございますので、これは捜索差し押さえ令状ではできない、まさに通信の傍受そのものですから。ということで、捜査官が恣意的にどっちにしようかと現場で引っ込めたり出したりするような話ではないということです。 <0081>=千葉景子君= この点についてはまた再度お聞きする機会があろうかというふうに思います。  ただ、私が指摘をさせていただきたいのは、その場に行ってどっちにしようかという意味ではなくて、事前に令状をきちっといずれかに確定してとることが本当にできるのかどうか。メールボックスにたまっているもの、あるいはリアルタイムに行くもの、それは事前になかなかはっきりわかるものではないですね。そうなると、そこの区分けというのが非常にあいまいになってくるのではないかという私はちょっと危惧を感じます。また改めてこれもお尋ねしたいというふうに思います。  それから、情報化の進展という問題で、私は非常に危惧をするというか、改めて勉強させていただいたところでもあるのは暗号という問題です。十三条の二項に「暗号」という言葉が出てまいります。暗号などが使われている場合には、直ちに解読できませんので、一たんそれを取得した上で解読をする義務といいますか、それによって必要な情報か否かを区分けするということになろうかというふうに思います。これまで実際に暗号という問題は余り表立って論じられてきた経過がないように私は思うんです、我が国にとって。  そこでお聞きをいたしますけれども、暗号の場合には、取得をしたらそれを直ちに解読して、本当にこれが令状に沿った情報なのかどうかというのをきちっとやっぱり決めなければいけない。実際に、検察あるいは現場に向かう司法警察員ということになると思いますけれども、この暗号については、能力とか、あるいは、こういう規定ができているわけですから、今後対応をどうするのか、これまでこういう論議はなされてきたのでしょうか。 <0082>=政府委員(松尾邦弘君)= あるいは後ほど警察庁の林局長からも補充してお答えがあるかもしれませんが、この暗号の問題というのは確かに非常に重要な問題でございます。これは、今回の法案が対象としております分野に限らず、例えば諸国間、あるいは国内でも無線通信、これは今回の法案の対象外ではございますが、暗号が使われるケースが多々ございます。その場合には、それは当事者間で暗号解読の約束事があって、相互に暗号で通信されたものを解読、翻訳するという作業がございます。あるいはそれを必要性があって傍受する場合でも、暗号の解読というものができないと傍受してもほとんど意味をなさないということになりますので、法案に限らず、暗号をどう解読していくのかというのは、いろいろな形で技術が発達し、また問題にされてきているということでございます。  今回の法案でも、先生御指摘の十三条の二項では、暗号が使われまして即時に復元することができない場合には、スポットモニタリングがしにくいものですから、全部録音して、つまり全部を傍受することができるということにしておいて、その場合には「速やかに、傍受すべき通信に該当するかどうかの判断を行わなければならない。」とありますので、この条文の当然の前提として、捜査機関としては、暗号を解読するための要員でありますとか、あるいは装備、機材等の体制の整備が今まで以上に必要だろうと思います。  また、そういう暗号の解読ということの専門的知識を有する者の技術を利用する、具体的には嘱託をして平文に直してもらうとかということも考えられると思いますが、その解読方法につきまして、捜査を尽くして速やかに暗号の解読を行うよう努めるということになります。  人間のつくり出す暗号でございますので必ず解読できるということは言われておりますが、それにしましても、解読に千年かかるというような特殊な暗号も開発されているとかいろいろなことが報道されているところでございますので、ここは、捜査機関とこういう暗号を通じて違法な通信を行おうとしている者との知恵比べの問題ということになろうかと思っております。 <0083>=政府委員(林則清君)= 法務省の刑事局長の方からほとんどお答えがあったわけでありますけれども、御指摘のとおり、インターネット等においては、これからは暗号化された内容が伝達されるということが見込まれるところであります。こういった暗号化された内容を解析するためには、御指摘をまつまでもなく、非常に高度な専門知識であるとかあるいは解析のための設備が必要となります。  そこで警察といたしましては、こういった業務を的確に行うことができるようにするため、高度な知識を有した専従の要員の確保、警察には通信局といいまして非常に高度な技術を有する集団も警察部内にはあるわけでありますけれども、それは別として、こういった高度な知識を有する専従員の確保、あるいは必要な装備、資機材の整備に努め、そして情報通信、暗号等に関する高度かつ最先端の技術力を確保していくということに努めてまいりたいと思っております。  具体的には、警察庁において、先ほど言いました通信職員等も含めた技術力により都道府県警察を的確にリードできるようにするため、各種の最先端の研究を行うことにより、情報通信、暗号等に関する高度の技術力というものを蓄積していくということが一つ。  それから、都道府県警察において、警察学校や職場の各機会を通じて捜査官自身に、それからまた、先ほど法務省の刑事局長からも話がありました、そういう技術を既に持つ者を採用するということも含めて、高度な知識、技術、経験、こういったものを身につけさせるための教育訓練というものを行ってまいりたい、さように考えております。 <0084>=千葉景子君= 警察庁には、既にそういう何か特別な部署、あるいは要員を配置したそういう組織的なところが設置をされているんですか。もしされているのだとすれば、それはどういうところでしょうか。 <0085>=政府委員(林則清君)= 本件にかかわるということに限ったわけではありませんけれども、こういったハイテク時代を迎えまして、大変技術の高いあれでありますので、俗にサイバーポリスという形で警察庁の中にそういった部門を発足させております。 <0086>=千葉景子君= それは現在、どのぐらいの体制といいますか、人員などはどんな体制で組織されているんですか。 <0087>=政府委員(林則清君)= 何人のどういう体制でというようなことは、具体的にはまだはっきりしておりません。 <0088>=千葉景子君= この問題は多分また同僚議員からも質問などがあろうかというふうに思うんですけれども、私は非常に重要な問題だというふうに思います。  暗号といわゆる通信傍受、そして現在の高度な情報化、あるいは経済のグローバル化、こういう中でこの問題は非常にいろんな側面が絡み合っているだろうというふうに思うんです。  ナショナルセキュリティーという側面、それからいわゆる経済の公平公正な取引の保持、そして個人にとってはプライバシーや個人の情報をいかに保護するか、こういう非常に重要な課題が絡み合っている。こういう問題を議論せずして、単に犯罪捜査というところで突然暗号や暗号の解読という問題が出てくるというのは、大変私は危険な感じがいたします。  それで、お聞きをしたいんですけれども、これは私もよくわかりませんけれども、アメリカあるいは各国でも次第に議論が進められているところとも聞いているところです。アメリカなども、私の聞き及ぶところでは、ある意味では国そのものが情報の管理をするという、一つの大きな目的のためにこの暗号問題に対するさまざまな規制あるいは法的な措置がとられようとしてきた、こういうことがあろうかというふうに思います。  その際に常に使われてきたのが、犯罪捜査あるいは組織的なテロ、こういうものに対して捜査の実を上げるためには暗号の解読が必要である、あるいは逆に言えば暗号を規制する、あるいは暗号を解くかぎは国が独占をする、こういうような動きがこの暗号問題そして通信傍受という背景にはこの間流れてきた、こういうことが私は指摘できようかというふうに思うんです。  そこで、通信傍受と暗号にかかわる国際的な動向、とりわけアメリカなどを中心にしたさまざまな法制度の提起、あるいはそれに対応する反対の対策案、こういうものがずっと継続して出されてきた。既にこれはOECDなどでも大きな議論になってきておるということも聞いております。  これらの議論がどのように展開されているのか、そしてそれに対して日本はどうかかわり、あるいはかかわらず、あるいは対応しているのか、こういうことをきちっと資料も踏まえてこの委員会に出していただきたい。そして、私たちもそれをきちっと検証した上でこの問題の最終的な考え方をまとめていく必要があるのではないかというふうに思います。その意味でぜひ、通信傍受と暗号規制などにかかわる各国の状況、国際機関の状況、こういうものをおまとめいただき、そして資料としてこの委員会に提出をいただきたいというふうに私は要請したいと思いますが、いかがでしょうか。 <0089>=政府委員(松尾邦弘君)= その暗号の問題でございますが、これは、暗号技術が通信の秘密やあるいは個人のプライバシーの保護といった面で有益であるという側面がございます。それと同時に、その反面といいますか、これが犯罪等の社会的活動に悪用されるということもあり得るということを考慮していろいろな対応策を講じる必要があろうかと思います。  御指摘のように、OECDの暗号政策のためのガイドラインというものが一昨年の三月二十七日のOECD閣僚理事会において採択されております。先生御指摘のとおりでございます。いろいろな諸原則をここで言っております。また、それとは別に、リヨン・グループというものがございます。これはG8構成国の国際組織犯罪上級専門家によるグループということで、リヨン・グループと別名呼んでおりますが、ここのグループにおいても、ハイテク犯罪サブグループにおきまして、近時、ハイテク犯罪対策という観点から、犯罪における暗号の使用に関する論議が提起されていることも承知しております。また、先生御指摘のとおり、アメリカ合衆国におきましても犯罪捜査と暗号の問題というものがいろいろな形で論議されているということもございます。  私どもといたしましても、そうした国際的な論議の推移も踏まえながら慎重にこの問題は検討する必要があると考えております。  また、今まで収集した資料等につきましても、この委員会で必要があれば御提出して御検討いただきたいと思っております。 <0090>=千葉景子君= 委員長におかれましても、今申し上げました各国の状況や、とりわけアメリカなどの法制化の推移、こういうものをきちっとまとめて、この委員会に資料として提出をいただくように委員長からもぜひお取り計らいをいただきたいと思います。 <0091>=委員長(荒木清寛君)= 後刻理事会で議論したいと思います。 <0092>=千葉景子君= まだ議論すべきところは多々ございますけれども、時間でもございますので、同僚の議員の方からまた引き続き共通の議論もあろうかと思いますので、私の方からはこの程度で終わりにさせていただきます。 <0093>=櫻井充君= 民主党の櫻井充です。  インターネット通信だけお伺いいたしたいと思いますけれども、この法律をつくった時点におきまして、インターネットといってもいろいろございます、具体的にどのような通信方法に関して想定されてつくられたんでしょうか。 <0094>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案におきまして通信といいますのは、電話その他の電気通信であって、その伝送経路の全部または一部が有線であるもの、またはその伝送経路に交換施設があるものをいうわけでございます。これに当たる通信は傍受令状による傍受の対象となり得る、あるいは逆に言いますと、傍受令状によらない傍受は許されないという規定になっております。  インターネットを利用した通信はすべてこれに当たりますが、例えば電子メール、今までの議論でも出てまいりました。そのほか、インターネット電話、あるいは特定の会員に限定された電子会議室、これはいわゆるチャットと言われているものがこれに当たります。それから電子掲示板というものもこれには含まれるということになります。 <0095>=櫻井充君= まず最初に電子メールについてお伺いいたしますけれども、傍受の場所はどこを想定されておりますか。 <0096>=政府委員(松尾邦弘君)= このインターネットを使いました通信でございますが、犯罪関連通信に用いられるほか、他の傍受の要件を満たしていることを前提としまして、電子メールや特定の会員に限定された電子会議室、さっきのチャット、チャットルームというんでしょうか、あるいは電子掲示板のように一たんプロバイダーのサーバーに蓄積される通信の場合には、受信者のメールボックス等において傍受すべき通信が行われたか否かを見張りまして、メール等が受信された場合にはこれをコピーするということになります。他方、プロバイダーのサーバーに蓄積されない送出型の電子メールのように通信当事者がリアルタイムでメッセージを交換する場合には、そのプロバイダーから通信事業者の端末までの間の通信回線を特定しまして傍受をすることなどが考えられるところでございます。  それから、インターネット電話でございますが、インターネット電話についてもプロバイダーから通信当事者の端末までの間の通信回線を特定して傍受する方法などが考えられるところでございます。 <0097>=櫻井充君= 繰り返しますが、そうすると、サーバーのところかもしくは端末とサーバーの間だけで、プロバイダーから次のプロバイダーに移る部分のところでは傍受は行わないということでよろしいんでしょうか。 <0098>=政府委員(松尾邦弘君)= これも若干の前提を置いてお答えする必要があるようでございます。  お尋ねのインターネットとサーバーとの間を接続している線、これが専用線ということを指すといたしますと、不特定多数の通信が行き来している専用線上で特定のメールアドレスにかかわる通信のみを捕捉することは、技術的な困難もありまして、そのような傍受を行うことは想定していないということになります。 <0099>=櫻井充君= それは技術的にできないということであって、技術的に可能になればこの法律ではできるということですか。 <0100>=政府委員(松尾邦弘君)= 結論はおっしゃるとおりでございまして、今申し上げたのは、特定のメールアドレスにかかわる通信のみを捕捉できる技術が開発されますとそれは特定が可能になりますので、技術的には可能になってくるということになろうかと思います。 <0101>=櫻井充君= 要するに、技術的に可能になればこの法律上はできるということですね。そこだけお答えください。 <0102>=政府委員(松尾邦弘君)= 現在は技術的に不可能でできないというお答えですが、何らかの将来のことがありまして技術的に可能になれば、特定ができないがゆえにこの法律の適用はできないということを申し上げましたが、特定できればそれはできるということでございます。 <0103>=櫻井充君= 先ほどメールボックスのところについてのまず話がございましたけれども、メールボックスのところに蓄えられているものに関しては差し押さえだということでございました。その場合には押収目録が提示されるんでしょうか。 <0104>=政府委員(松尾邦弘君)= これは通常の押収・捜索の差し押さえの過程でございます。必要な書類としてそういったものは当然作成されます。 <0105>=櫻井充君= その押収目録の中身というのは、メールボックスにためられていた電子メールということで目録は作成されるんですか。 <0106>=政府委員(松尾邦弘君)= 目録の趣旨でございますが、これは、その押さえられた人、あるいはその場で立ち会った人に、何が押さえられたのか、押収されたのかということが明らかになる必要がございますので、押さえ方によっていろいろだと思いますが、それは内容が明らかになるような記載になるということでございます。 <0107>=櫻井充君= そうしますと、今度はメールボックスにたまっていなかったものに関して、まあ次々新しい手紙が参ります、今度はそれに関して言えば、その後は通信傍受法案ということになります。この場合には目録は提示されないんですよね。 <0108>=政府委員(松尾邦弘君)= これはこの法案のシステムそのものでございまして、裁判所に保管される原記録と、それから傍受した段階で、多くの場合はその場で画面に立ち上げまして、そのメールそれぞれが該当するかどうかの判断があります。それで該当するということになりますと、それをフロッピーなりのそういう電磁的な処理をしたものに落としまして、これを傍受記録として捜査に活用するということになります。 <0109>=櫻井充君= 目録は提示されないんですよね。 <0110>=政府委員(松尾邦弘君)= これは、この制度そのものは捜索差し押さえとは違いますので、目録というものはございません。傍受の経過を記載した書面が裁判所に提出されるとか、いろいろなシステムはこの中に組み込まれてございますが、捜索差し押さえ令状の目録というふうな形にはならないということです。 <0111>=櫻井充君= そうしますと、同じものをとって、片側はたまっていたと。たまっていたものに関しては、ある個人なり立会人の方にきちんとした形で、こういうものを差し押さえましたということを示す。しかしながら、同じメールでありながら、飛び込んできたものに関しては、立会人、特に本人にもですけれども、立会人にもこういうものを差し押さえたということを提示しないということもあるわけですね。とったということ、傍受したということを全く提示しなくていいと。  そうしますと、刑事訴訟法全体を見渡したときの整合性に欠けるんじゃないでしょうか。 <0112>=政府委員(松尾邦弘君)= 今の御質問は、刑事手続を適正に執行するということが前提でございますので、押収する場合に、それが何を押収したのかわかるような押収目録を交付するということは当然のことでございまして、それに記載するとかしないとかという判断は、捜査官には、そこの段階で右にする、左にするという判断が任されているわけではございません。 <0113>=櫻井充君= 同じEメールでも、たまっていたものに関しては立会人の方々にきちんとした形で提示しているわけです。こういうものを持っていくんですよということをきちんと提示しているわけですよ。ですが、今回の傍受法案の場合にはそういうものをきちんと提示しないじゃないですか。同じEメールでありながらなぜそういう差が出てくるのですか。 <0114>=政府委員(松尾邦弘君)= 刑事訴訟法をよくお読みいただくと、百二十条に押収目録の交付というのがございまして、「押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代るべき者に、これを交付しなければならない。」。これは、この傍受法案の場合は、傍受をしてそれが該当するということになりますと通信の両当事者に通知をするということになりますが、それはこの法案が、通信の当事者の、例えば防御の問題だとかをいろいろ配慮した上で通知するという規定をあえて設けたわけでございまして、押収の場合は、例えばたまっている手紙を押収する場合と同じで、手紙を押収したら、差出人にあなたの手紙は押収されましたよということは通知しないんですね。同じようにお考えいただければおわかりかと思います。 <0115>=櫻井充君= でも、先ほど立会人の方には押収目録は交付するというふうにお話しになりましたね。そうしますと、今回も立会人の方にこういうものを傍受しましたよという形で交付しなければ整合性はないんじゃないですか。 <0116>=政府委員(松尾邦弘君)= それは押収の場合と通信傍受の場合の違いでございまして、押収の場合は、立会人がその場合の被疑者である場合もあるかもしれません。あるいは部屋の管理者である場合もあるかもしれません。あるいはその被疑者の関係者がいなければ、例えばホテル等であればそのホテルの管理者であるかもしれません。そういう人に何を持っていったかということを明らかにしておかないといかぬというのでこの目録の交付をするわけでございまして、そういう趣旨でこれを設けているわけでございます。  ところが、電話の通信の場合には通信の両当事者に、つまり傍受記録として残す場合にはかけた両当事者に通知をしますよという制度にしているわけでございまして、これはそういう意味での通知を設けておりますので、その場で押収目録を傍受の場合に出すというのとはまた別の問題でございます。 <0117>=櫻井充君= 差し押さえの場合には、持っていったものを全部きちんと目録として交付するわけじゃないですか。今回のものに関して言ったら全部は交付しないじゃないですか。今回こういうものを持ってきましたというのは、刑事訴訟の場合の証拠になったものだけであって、それ以外のものに関しては全く交付するとかそういうことをしなくていいわけですよね。  つまり、相手に対して、受け手に対して考えていただいたときには、こういうものを押収しましたよ、差し押さえましたよということを明らかに提示されるけれども、それは証拠に関係あろうがなかろうがきちんと提示されるわけです、交付されるわけです。今回はそういうことが一切ないわけです。同じ刑事訴訟法の中で、しかも同じ電子メールでありながらこういう差が生じることは、この法律上の整合性がとれないでしょうというふうに言っているんです。 <0118>=政府委員(松尾邦弘君)= おっしゃっている趣旨が必ずしものみ込めないわけでございますが、押収・捜索の場合には、捜索令状で現場へ行って何を持ってきたのかをはっきりすることが最低必要でしょうということで、百二十条で規定しております。  通信傍受の場合は、通信の両当事者には通知が行くわけです。傍受記録に載せたものについては連絡が行くということで全体の規定を組み立てているわけでございますので、その場合に、さらに目録その他の入る余地はないと思います。 <0119>=櫻井充君= ちょっと委員長にお伺いしたいんですけれども、私の言っていることが伝わらないことでしょうか。もし伝わらないのだとすれば、あえて法務大臣にお伺いしたいんです。  同じEメールでありながら、ある時点を境にして、立会人にこういうものを押収したのだということをすべて交付しなければいけない。ある時点を境にして証拠の品として挙がらないものは一切提示しなくていい、交付しなくていいと。同じEメールでありながらこういうことが起こっていいんでしょうか、同じ法律の中で。 <0120>=国務大臣(陣内孝雄君)= その点について今まで刑事局長がるる御説明しておるわけでございますが、私は刑事局長の説明でもって理解できるというふうに考えております。  今、Eメールの問題、既にストックになっているものとこれから流れていこうというそのことについての細部をきわめようということで質疑されておるわけでございますけれども、既に蓄えられたEメールについては手紙とか文書の通信の場合と同じでございますが、それが今流れておる、電話で聞いているのと同じような状態にあるEメールにつきましては、それを傍受したものを立会人が封印して裁判所に届けるわけでございますし、そのことはまた、裁判所に対して不服申請等ができるように捜査の方から本人に通知するわけでございますので、そういう意味では均衡のとれた措置であると私は考えております。 <0121>=櫻井充君= どうも私の言っていることが理解されていないような感じのところがあるんです。  要するに届いてきたメールに関して言っているんです。発信するメールじゃありません、届いたメールです。メールボックスにどんどんこれから送られてくるわけです。そのメールボックスにためられているものに関しては、今まであったものに関していえば押収だ、差し押さえだと。だから押収目録が必要なんだ、立会人に交付しますよと。しかしながら、その先、そこから通信傍受になったら、その時点からメールボックスが空になってどんどん送られてくるわけです。その人のメールボックスに入るべきものはそこにためられて、送られたら困るから、先ほど答弁のときにおっしゃいましたよね、もう一本線を引くかどうかわからないけれども、こちらの方に引き込んで調べるんですよということをおっしゃいましたよね。そこまではいいわけです。  そうしますと、同じメールであって、それは、あるところまでは差し押さえでいいですよ。あるところから通信傍受でいいです。ですが、同じ刑事訴訟法の中で、片側は立会人の方々にきちんとした形で、こういうものを押収しましたということを交付するわけです。その後送られてきているものに関しては全く交付しなくていいわけです、ここの法律の中では。証拠として使ったもの以外は提示しなくていいんです。整合性がないじゃないですか。 <0122>=政府委員(松尾邦弘君)= 形にこだわりますとそういうような発想も出てくるかもしれませんが、問題は、押収・捜索なりの適正確保、通信傍受の適正確保に何が一番いいのかという点から何を規定するのかということに帰着するわけでございまして、先ほどの郵便の例と同じで、逆に言いますと、では郵便物の場合はどうなのか、これは差出人には何の通知もしないんです。たまっているものはそれで通知をしなきゃいかぬのかどうか、これは必要ないんだろうというふうに委員もお考えだろうと思います。  問題は今度は、監視をしていて入ってくるメール、これは傍受の問題になりますから、傍受法に決めている手続に従っていろいろな適正のための担保があります。通知もその中の一つでございます。そういう形で適正を担保すれば、この法案はそれでいいというような判断になっておりまして、その場合に一々、その場にいる立会人、この立会人は性質が違うんです。捜索差し押さえの際の立会人と通信傍受の際の立会人というのは規定している法律が違うわけでございますから、それぞれの役割、あるいはそこに捜査機関としてなすべき手続も当然違ってくるのは当たり前の話でございまして、そこのところは整合性の問題等は出てこないというふうに思います。 <0123>=櫻井充君= 情報を持っていくという点では同じです。情報を持って帰るという点では全く同じです。  先ほど適正という言葉を使われました。私たちはこの法律は適正じゃないと思っているからこういうことを聞いているわけです。なぜならば、個々人のプライバシーというふうなものを守っていくためには、少なくとも傍受が終わった段階で、何月何日から何月何日まであなたのEメールは通信傍受しました、そういうことを終わってからでも構わないから伝えるべきじゃないか。そうじゃなければ知らないうちに全部終わっているわけです。だから、それではプライバシーが保護されないでしょうと。そういう観点に立って考えているんです、こちら側は。  だったらば、同じようなといいますか、何回もくどいんですけれども、差し押さえしたものに関しては、こういうものを押収しましたという押収目録をきちんと交付するわけですから、それに合わせれば、今までどおり考えてくれば、刑事訴訟に関係あろうがなかろうが、自分たちが得た情報に関しては、それを提示なり交付するのが当然のことなんじゃないかというふうなことで何回もお尋ねしているんです。 <0124>=政府委員(松尾邦弘君)= 今の問題を捜索差し押さえの際の通知の方法の改正をすべきだという論議としてお聞きするのであれば、一つの議論だろうと思います。  例えば、手紙を押収した場合は差出人に必ず通知をしなさいとか、あるいはある会社に行って現にある通信に使用したフロッピー、これも押収する場合にはそれを送ってきた相手方にも全部通知しなさいとか、そういうような規定を設けるべきだという立法論であればさまざまな議論があるところだと思いますが、例えば電気通信を利用した差し押さえが、集積されたものの押収・捜索ということを全体として問題にしているわけではございませんで、まさに通信傍受の際にどういった手続をとりますか、どういった手続が適当でしょうかという観点からの整理でございますので、局面がむしろ違うんじゃないかと私は思っております。 <0125>=櫻井充君= 全く同じことなんですが、それは違うとただおっしゃっているだけだと私は思います。ほかにお聞きの方はどういうふうに考えているかちょっとわかりませんけれども。  それでは、差し押さえた場合になぜ今まで押収目録を交付しなきゃいけなかったんですか。 <0126>=政府委員(松尾邦弘君)= それは、立ち会いをしていただく立会人として、捜索場所というのは限定されておりますので、そこでちゃんとやっているかなということと、何を持っていっているんだろうかということをそこの場で立ち会いをしながら見ていただくための立会人制度でございますので、何を持っていったかということを立会人に交付する。あるいは百二十条自体は、「押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代るべき者に、これを交付しなければならない。」、必ずしも一義的にだれに交付しなきゃいかぬというような規定ではございませんが、いずれにしても目録をつくって明らかにしなさいというのが適正担保であるということなんです。それはそういうことだというふうに御理解いただきたいと思います。 <0127>=櫻井充君= ですから、今おっしゃったとおり、別に立会人じゃなくてもいいんです。そして、適正担保とおっしゃいました。つまり、どういうものを持っていったかわからないんじゃ困るから、その人たちのプライバシーを守るためにきちんとした形で提示するという意味での目録の交付です。  と考えれば、目録と同じものは、目録といいますか、そういうものは全く交付されないわけです。立会人にも交付されませんし、それからもちろんその傍受された関係者にも全く提示されないわけです。交付されません。そういうふうな意味合いでいったら刑事訴訟法の中で整合性がないでしょうと、そう言っているわけです。 <0128>=政府委員(松尾邦弘君)= 今のはインターネットの場合を議論の対象にしておりますが、そうしますと電話でも同じことだろうと思うんです。  電話の通信をする、つまり証拠にする通話としない通話がある、ばらばらです。立会人は、今回の法律はいろいろ議論があるかもしれませんが、内容を聞くわけではございません。外形的にチェックしていただくということですので、立会人に一々、こういう内容の通話を聞いて傍受記録にしましたよとかというようなことも説明はしません。  それと同じようなことでお考えいただいて、インターネットの場合でも、何を関係の通話として傍受記録に落とすかというのは捜査官が判断をするということでございますので、それは同じように一々通知の対象には、あるいは立会人に通知をするとか、あるいは何か適正担保の手続で通知等の、あるいは目録等をつくって渡すというようなところまでの必要性は認めないということです。 <0129>=櫻井充君= 済みません、電話は差し押さえなんかないんです。電話は差し押さえないんです。電話とそんなものを一緒にされるからこの法律もおかしいんです。本当はインターネットと別にしなきゃいけないんです。それをごっちゃにしているからです、答弁もそうなんです。電話は差し押さえないんです。  今言っているとおり、Eメールが、あるときから差し押さえ、あるときから通信傍受、これはいいですよ。同じ扱いにならなきゃいけないじゃないですか、ある部分に関しては。基本的なところは同じじゃなきゃいけないじゃないですか。あるEメールは差し押さえた、そして目録が交付される、あるメールは目録は交付されない、だれも知らない、こういうことがありますか。同じことです。同じEメールでなぜそういうことが起こるんですか。法の欠陥じゃないですか。 <0130>=政府委員(松尾邦弘君)= 先ほどもちょっと触れたと思うんですが、外形的に同じだから同じような手続をとるべきじゃないかということに帰着するんだろうと思いますが、押収・捜索による物を押さえてくるやり方と、現にリアルタイムで入ってくる通話を傍受する、インターネットでいえばメールを受信するということを可能にして、それをどういうシステムで行うかということとは全然違う話です。  それは、メールをどうするかというような観点からは同じかもしれませんけれども、現在の刑事訴訟法の働く局面は全然違うんです。そこのところをまずごちゃごちゃにしますと、よくわからなくなってくるんじゃないかと思います。 <0131>=櫻井充君= 今の答弁を聞いている分には、ちょっと理解していると思えないし、もうあと時間がちょっとしかないので、インターネットを理解しているのかどうかちょっとお伺いしたいんです。  例えば、こういう場合が起こったらどうするかです。プロバイダーも端末を持っている人も同じ組織の中で犯罪を犯していたらどこで傍受しますか。 <0132>=政府委員(松尾邦弘君)= その設定自体が希有な事例だろうと思いますが、ただ、その犯罪組織全体が、ある特定の通信傍受の対象となる犯罪の実際に予備をやっている、あるいは実行しているということになって、その犯罪組織自体が、ある意味では幹線道路に当たるサーバーを持っているというような全く例外的な場合も想定されるわけですが、その場合には特定性の問題はカバーできることになります。つまり、そこに入ってくるメール全部が犯罪の対象である、あるいは傍受の対象であるということが疎明できれば、それは技術的には、個々のところでそのメールを受信する場合に限らず、根っこのところで全部受信するようにしておくということも、それは理屈の上では考えられるのじゃないかと思います。  ただ、そういった大がかりなといいますか、ネットワーク自体の一つのサーバー以下を単一の組織が持っているという場合を想定して、かつそれがこの通信傍受の対象となる四つの類型の犯罪を現に実行しているといったような場面を設定しますと、それは特定の問題としては、サーバーに入る根っこの太いところを対象にする、あるいはそこにある端末を全部挙げまして個々に傍受するやり方もあるでしょうし、技術的にはそこの根っこをつかまえて一遍に全部傍受してしまうということもあり得るだろうと思います。 <0133>=櫻井充君= その根っこのところを傍受した際に、全く関係ない人たちのものも入っていく可能性があるわけです。それも傍受されますか。 <0134>=政府委員(松尾邦弘君)= 全く関係ない人の当事者間の通信が可能な状態であれば、それはその根っこはやらないということです。  要するに、全部令状の対象になると。つまり、そこもサーバーに入ってくる、それから先がある、例えば百本のメールボックスがあるとします。それが全部犯罪の対象になるんだ、あるいは犯罪に使われるんだという疎明をして裁判所がそれを了解すれば、その根っこのところで押さえようが、百本全部個別にメールの受信装置をつけようが、それは捜査官側の技術上の問題です。それには確かに関係ない通話も入るじゃないかと言いますが、それは個々にやっている場合と同じです。それも関係ない通話も入ってきますから、それは立ち上げて、該当性判断をしまして、関係ないということになると傍受記録はつくらないというだけの話でございます。 <0135>=櫻井充君= では、済みませんけれども、ログは記録しない、ログはとらないということですね。 <0136>=政府委員(松尾邦弘君)= 技術上の問題で、突然のお尋ねなのであれなんですが、いわゆるログという記録の場合、記録それ自体は、どこでとるかは別にして、例えば根っこのところで傍受したのであれば、そこに入ってくるものは全部、ログに残るものはとるということになると思います。 <0137>=櫻井充君= ということは、ログをとるんですね。ログをとるということでいいんですね。 <0138>=政府委員(松尾邦弘君)= よろしいかと思います。 <0139>=櫻井充君= ログをとるということは、ここに書いてある、被疑者と思われる番号、符号だけを特定してとるということに違反するんじゃないですか。今の行為は全く違法しているじゃないですか。番号、符号なんという、そういういいかげんなことを書いているからだけれども、今おっしゃっているのは明らかにこの法律から外れているじゃないですか。 <0140>=政府委員(松尾邦弘君)= 今、委員お尋ねの想定のもとでということで、例えばある大きな組織が丸ごと集団殺人計画を行っている、そこのサーバーまで引き込んであって、それでそこの中にいる者はみんな共犯者でと、とにかく、設定としてかなり限られたといいますか、そこらあたりを前提にしていただかないとまず話が変わってきますので、それはひとつ御理解いただきたいと思います。今までのお答えはそういう想定のもとでの話です。  それから、ログというのは、先ほど申し上げました一つの記録ですから、これは傍受の対象の問題ではなくて、ログが欲しければ令状を持ってきて押さえればいいんです。そういう意味では、記録として残っているものは令状で押さえる、これは傍受の対象ではない、こういうことなんです。 <0141>=櫻井充君= では、例えばオウム真理教にしましょう。あのぐらいの巨大組織であれだけコンピューターをつくっているところは、実はサーバーなんというのは持っているわけであって、そういうところに加担したい信者と加担したくない信者といるわけです。そういう場合はどうなりますか。 <0142>=政府委員(松尾邦弘君)= また設定がちょっと変わる話になります。私が先ほど申し上げたのは、そのサーバーから出ている端末といいますか、それぞれの受信設備が全部この犯罪に関係しておって傍受の対象になるという想定ですから、サーバーから出た先が、この人は全然関係ありませんと、ここに行く通信はこれは聞いちゃいけないんです。そうなりますと、ここの根っこでは傍受できないことになるんです。  それは個々に全部特定して、百本あろうが二百本あろうが、この範囲はこの犯行に加担していますと。例えばある組織があって、その中の何とか省と名づけてある組織が犯罪を計画し実行している、ほかの省は関係ない、一つのサーバーからメールは来ますけれども、関係ないということになると、それは根っこではやれない。当初の原則どおり、個々のメールボックスでやらざるを得ないということになります。 <0143>=櫻井充君= それはこの法律でどこに書かれているんですか。 <0144>=政府委員(松尾邦弘君)= 令状は、傍受すべき通信の対象を特定しないとできないということです。そこから当然にそういうことになります。 <0145>=櫻井充君= そうしますと、もう一つ聞いておきたいんですが、プロバイダーのところのサーバーならサーバーでもいいんですけれども、そういう一次のプロバイダーで通信傍受をするとか、そういうことはもうやらないということですね。 <0146>=政府委員(松尾邦弘君)= プロバイダーといっても大中小いろいろあるようでございまして、我々が想定しているのは、その傍受すべき通信が対象としているプロバイダーということです。それが一次の場合は、一次のプロバイダーのところに行ってお願いして、特定の通信、メールボックスを傍受するということになります。ですから、一次、二次というよりも、その対象とするメールボックスの接続先ということでお考えいただければと思います。 <0147>=櫻井充君= もう時間になりましたので、先ほどのメール自体の差し押さえと傍受の件から、同じメールでありながら全く違う扱いを受けるというか、受け取るべき本人にとって全く違う扱いを受けてくる。非常におかしなシステムだというふうに私は思っています。ほかの委員の方がどういうふうに思われているかわかりませんが、私自身としてはもう少し審議をさせていただきたいと思います。  それから、インターネットに関して、先ほど電話の例を挙げられたりしましたけれども、インターネットと電話とをごっちゃにされるのはとても困るので、やはりもう少し時間をきちんとかけて審議していただきたい。そのことをお願いして、質問を終わりたいと思います。 <0148>=大森礼子君= 公明党の大森礼子です。  きょうは通信傍受法案について質問をさせていただきます。  今、Eメール等についていろいろ質疑がありましたけれども、非常に参考になりました。その質疑、答弁等を聞きながら、座っている方から、わからない人がつくっているのだからという声が上がりました。この法案についていろんな意見があると思いますが、私は決して犯罪捜査のわからない人が反対しているんだからなんということを言うつもりは全くございませんし、そうあるべきではないと思うんです。いろんな立場からいろんな問題点を指摘すればいいと私は思っております。  それにしましても、前回冒頭にも申し上げたことでございますが、この通信傍受法、これは組織犯罪対策、公明党の場合は特に薬物犯罪ということを重視しております。薬物犯罪対策を目的とする一つの手段でございます。そして、この法案の審議につきましては、もしこの手段を与えないならこの目的をどうするのかと、ここまでこたえるのがやはり私は国会議員の責任であろうと考えます。  通信傍受という捜査方法を認めるのか、一切認めないのか。例外的に認めるとして、それは検証許可令状の運用にゆだねて立法措置を認めないのか。立法措置は必要だけれども、政府原案同様、修正案には反対というのか。そして、反対であるというならばどうするのか。別の修正案を出すというのか、それとも廃案にするということなのか。廃案にするというのであれば、ずっと廃案のままなのか。  あるいは、NHKの六月十三日の「日曜討論」で民主党の角田幹事長が発言されておりましたけれども、撤回して、一遍仕切り直しして、それからまた場合によったら議員立法でやりましょうと、こういうことをおっしゃっておられました。一たん廃案にして改めて議員立法を出すということなのか。ここら辺の立場を明らかにすべきではないでしょうか。  それから、つけ加えておきますが、議員立法とおっしゃいますが、この修正案の部分は実質的には議員立法でございますので、各党はこれまでもう既に検討しておられると思いますから、先送りするのでなく、見解をこの審議中に明らかにしていただきたいと、こういう希望を述べておきます。  この修正案に対しましても反対があるというのは、大体の論点というのは、大きなところは定まってきたのかなという気がいたします。新聞等の意見欄に書かれてある読者の方の意見を読みましても、例えば別件傍受、これは緊急傍受と言った方が正確かもしれませんが、要するに令状に記載していない事実についての会話が入った場合どうするかという傍受の問題とか、それから切断権、それから通知をどうするか、こういうことではないかなと思います。  それから、法案十四条の別件傍受。緊急傍受と言った方がいいという気もするんですけれども、一応広く知られている別件傍受という言葉を使います、これは別に違法を含んだ意味ではございませんので。これにしましても、別件傍受があるからだめなんだとかと言われるんですが、砕いて考えてみますと、例えば覚せい剤取締法違反の被疑事実で傍受令状をとって傍受していた、たまたま殺人を実行しようという会話が入ってきた、このときに捜査官はどうすべきか、こういう問題でございます。  この具体的場面において、修正案の提案者は、傍受して殺人の実行を未然に防ぐとともに、それが仮に不幸にして実行された場合には殺人罪の証拠として通話記録を用いるべきだから、こういう限定された場合、短期一年以上ですから、非常に限定された犯罪については傍受すべきだという考え方です。  そして、別件傍受反対論者はどういうことを言っているかといいますと、令状に記載がない事実だから会話を聞いてはいけない。現実にその会話内容が実現し、人が殺されてから、あるいは殺されかかってから捜査を開始すべきである。その殺人事件の証拠収集も、人が殺されてから、あるいは人が現実に殺されかかってから開始すれば足りる、それが正しい人権感覚だと、こう言っているのに等しいと思います。あるいは、既に実行された殺人事件についての会話がたまたまですけれども入りました場合に、あの事件の会話だと思ってもそこで切れということを、別件傍受を認めない立場は実は主張していることになります。どちらがよろしいかという問題でございます。  同じようにして、切断権のことにつきましても少し詳しく具体的場面を考えてみる必要があるのではないかと思いますので、きょうはその点について質問させていただきます。  まず、その前提ですが、法務省にお尋ねします。  前回、アメリカの例を挙げていただきましたけれども、アメリカの場合にも実は立会人制度というのはないわけでございます。ほかの諸外国でこの通信傍受制度を認めている場合、外国の場合に口頭傍受を認めているところもございますが、含めて立会人制度というのがあるのかどうか、お尋ねいたします。 <0149>=政府委員(松尾邦弘君)= 諸外国にはこういう立会人制度をとっているところはございません。 <0150>=大森礼子君= 立会人制度、切断権の問題が人権との問題で今この委員会でも論議されているわけですが、諸外国にないというのは少し不思議な気もいたします。いずれにしましても、諸外国では立会人制度そのものがないのですから切断権の問題も起こらない。日本特有の問題ということになります。  実は私も、正直に告白いたしますと、最初は切断権は規定すべきであろうと考えたわけです。当時の与党がつくりまして提出しました政府原案、これは本当に安易な発想に基づくひどい法案だと思いました。そのころからいろんな検討をしているわけですけれども、当初、私は切断権を規定すべきであろうと考えたわけです。それは、検証許可令状について書かれている判例の中で認められた理論といいますか、この内容を明文化すること、これが必要であろうというふうに考えたからでございます。それが法案の核になるべきだと考えました。今から考えると非常に安易な発想だったと思っております。  それから常時立ち会い。実は、原案ですと原則立ち会いだけれども、場合によっては立ち会わなくてもいいという内容でした。これを我々は検討しまして、やっぱり常時立ち会いを認めるべきだと意見が一致しました。私は、その上で切断権もやっぱり認めるべきじゃないか、こういう主張をしたんです。それはなぜかといいますと、中身を立会人に聞かせないで外側だけのチェックだったら、私が立会人だったら退屈するというふうに考えたわけです。それで何のための立会人かというふうに考えたわけです。多分ここまでは反対論者の方と考え方は同じだろうと思います。大体人間が考えることはまず一定のところまでは同じなものですから、ここまでは同じなのだろうと思います。  しかし、さらに切断権を認めるとしたらどういう状況になるか。これは具体的にいろんな場面を想定しながら検討いたしました。そうしたところ、実は簡単な問題でないことに気がついたわけです。  まず、判例法をそのまま法案に載せることについては前提が違います。判例に出ている部分については検証許可令状によるものでございまして、捜査側がやった検証結果はそのまま警察の方に持ち帰ってしまいます。これは捜査機関による普通の押収と同じですね。令状を発しましたらもう既にその裁判官の手を放れてしまう、その後の状況再現は裁判官のところではできないような形になるわけです。そこで私は、通信の秘密にかかわりますから、裁判所は最小限の担保として立会人に切断権を与えたのではないか、こういうふうに考えているわけです。反論があればまた伺います。  しかし、法案には原記録を裁判所に出すという規定がありまして、ここで既に状況が違うなということに気がついたわけであります。  それから、修正によって常時立ち会いとしたわけですが、これでも無意味と批判される方がいらっしゃいます。批判というのは本当に簡単にされるものだなと思うのですが。  しかし、政府原案のようにもし常時立ち会いでないとしたならどうなるかというと、客観的に六十分の傍受をした、ところがもしかしたら原記録に録音されているのは四十分かもしれない、こういうおそれがあるわけですね。ですから我々は常時立ち会いが必要であると考えた。  これはどういうことかといいますと、六十分傍受したならば六十分の原記録がそのままできる、そして、確かに事後的ではありますけれども完全な傍受状況というのが再現される、それが担保されることになるということです。これはよく考えてみますと、捜査官にとりまして、全部が記録されているということは、ごまかしても後でわかるということで、これは大変な抑止力になるだろうと我々は考えております。そんなことから、違法チェックについては法案の方がよい、原記録を裁判所に出すというこの方法の方がよいだろうと考えました。  しかし、それでも切断権を認めるべきだとの主張がございます。これは、原記録にかえて切断権を認めた立ち会いを認めるべきだという考えと、それから両方認めるべきだという考え方があると思うんですが、いずれの場合にしましても、切断権を認めていないからこの修正案はだめなんだという御主張は、多分事後チェックじゃだめなんだということだと思うんですね。リアルタイムでチェックしなきゃいけないんだ、犯罪関連通信でないものはリアルタイムで排除すべきなんだと、どうもこういう御主張のように私には思えるわけです。つまり、原記録の中にも犯罪関連通信でないものは残してはいけない、こういうことなのだろうと思います。  そして、犯罪関連通信でないものが少しでも現実に捜査官に聞かれること自体、これが人権侵害だ、プライバシーの侵害だとの主張ではないかなと思うんですね、事後チェックではだめだとおっしゃるわけですから。これは非常に鋭い人権感覚だなと私はある意味で思います。  通知との絡みについては、また後日質問いたします。  今、事務官研修というのを法務総合研究所でやっておりまして、先日、私のかつての立会事務官が来てそういう話をしたんです、鋭い人権感覚でしょうと。事務官が言っていました。それでもね、検事、まだ検事と言うんですけれども、それでも暴力団がどんどんシャブ売って、金をもうけて税金払わぬでやっておるわけでしょう。そんなのをほっておいていいんですかねと、こういうふうに言っておりました。  つまり、一方でその鋭い人権感覚を、そういうふうにぼんぼん覚せい剤を売って犯罪収益を上げて、それで税金払わぬでという話もありますけれども、こういう暴力団に対する怒りにも向けるべきではないかと考えるわけであります。  それはさておきまして、こういうプライバシー侵害をさせない、この役割を立会人に切断権を与えることによって果たさせる。これが果たしてできるかどうか、適当かどうか、このことを少し考えていきたい。  そうしますと、立会人は、犯罪関連通信かどうかをリアルタイムで的確に判断する責任を負うことになります。その内容を具体的に言いますと、犯罪関連通信でないものを排除する判断力、これはだめだと切断権を行使するその判断力、と同時に、この裏表の関係になりますが、犯罪関連通信を排除しない判断力というものも必要になると思います。犯罪関連通信であるのにそうじゃないといって切断されましたら、これは、その立会人には悪意はないと思いますけれども、言ってみれば善意の捜査妨害にもなりかねない、こういう問題があると思います。  そこで質問しますが、反対論者の方が期待する立会人の切断権というものは多分私はこういうものだと思って質問しておりますので、もし違っていたらまた後でほかの方から訂正してください。このような性質の切断権を適切に行使していただくには、どれだけの情報をその立会人に与えておく必要があるかということでございます。  この規定では、令状を提示する相手は管理者です。その方には被疑事実の要旨は教えませんね。それで、立会人にも何かその事実は教えるのでしょうけれども、やはり被疑事実の要旨まで説明しないと犯罪関連通信か否かを的確に判断することはできないのではないかと考えるのですが、法務省も同様に考えてのことなのでしょうか。 <0151>=政府委員(松尾邦弘君)= 委員御質問のとおりだと思います。傍受すべき通信に該当するかどうかの判断でございますが、これはある意味では大変高度な知識を要するということです。  具体的に申し上げますと、それまでの捜査によって捜査機関が把握した、犯罪組織はどういう形態か、あるいは指揮命令系統はどうなっているのか、組織内の人間関係はどうだと。例えば、ここの暴力団の場合に、親分はこういう名前だと。それで、覚せい剤の密売系統は、形式的にはこうなっているけれども実質的にはこれが仕切っているから、ここからかかっていく可能性が強いよとか、あるいは系統のすぐ下にいてもこれは事実上もう力がなくて排除されているとか、その組織内の人間関係も全部話しておかないと、だれからかかってきた電話が関係するのかしないのか、あるいは可能性があるのかないのかも聞いている本人はわからないことになります。  そのほかに、その電話をかけてくるであろう人、あるいはその電話の当の所有者等、暴力団関係者の家族関係です。例えば、Aという組員には本来の奥さん以外に二人女がいますよ、その名前は何とかと何とかだ。今そちらの方に実際は泊まり込んでいるので、そっちからかかってくる可能性が強いとか、そういう個々の家族関係とか交友関係、こんなことも全部頭の中に入れておかないとなかなかその内容がわからない。家族関係、交友関係になりますと、非常に問題を抱えたり複雑な関係だったり、他人に知られたくないようなことももちろんいろいろ入ってくるわけでございます。  それから、事件の具体的な証拠関係、そのためには委員御指摘のように被疑事実の概要ぐらいやはり言っておかないと、何が何だかわからないという話になります。そんなような諸状況を的確に頭の中に入れた上で、切るか切らないか、関係するかしないかを判断しなければならないということになります。  こういったことは、捜査に責任を負わない第三者に、しかも立会人は、これまでの議論にも出ておりますが、場合によりますと十人、二十人のスケールにも上ります。そうした人に全部捜査の手の内を明かしてしまうと、あるいはそういう情報が拡散してしまうことにもなりかねない。プライバシーの問題もありますし、あるいは捜査の密行性の問題もあります。そういった問題にもひいてはかかわってきます。捜査官の権限と責任で行うべき該当性の判断を立会人に求めることは、過大な負担を負わせることになります。  先日もNTTの幹部の方が、NTTの職員の果たすべき役割としてこういう切断権等にもっと深くかかわるべきだというような議論もあるけれども大変困るということを言っていたことは、二つの意味があります。一つは、大変迷惑だということと同時に、そんなことはできないと、今私が申し上げたような諸状況が当然頭に入りますから、そんな過大な負担を負わせられても現実問題は不可能ですということを、ある意味では端的に迷惑であるということで言ったんだろうと思います。 <0152>=大森礼子君= だから、犯罪関連通信でないものを切断権で排除すると同時に、本来犯罪関連通信であるものを切断してもらっては困るわけですね。そういったことから、果たして立会人にそれだけの能力を要求することが妥当なのかどうか、またできるのかどうかという観点から検討する必要もあると私は思います。  例えば、先ほども捜査には専門的知識を要するとおっしゃいましたけれども、捜査官というのは捜査が仕事で今までお給料をいただいていたわけでありまして、その中で培われたものもいろいろございます。その判断、犯罪関連通信かどうかの判断を一般人に、通常は一般人が立会人ですけれども、これに合わせることが妥当なのかどうかという問題も私はあると思います。  それから、今刑事局長がお答えになりましたけれども、捜査情報を事前にレクチャーする必要があるということでいろんなプライバシーが暴かれてしまう。そして、被疑者といってもまだその判決が確定していないわけですから、プライバシーの権利が全くなくなるわけではないと思っております。  それから、刑事局長がおっしゃったように、立会人がかわるたびにレクといいますか説明を繰り返さなくてはいけないということで、実際考えてみますと非常に大きな問題があると思います。そして、そのレクを全部頭に入れていただかないといけない。そうしませんと、少しもプライバシー侵害をさせないために立会人がいて切断権を与えられている、こういう責任を負っているわけですから、素人でわからないからいいだろうと、これでは済まされないことになると思います。  このように申しますと、反対論者の方は、いや、そこまで厳格なものでなくてもいいとおっしゃるかもしれません。もし厳格なものでなくていいとおっしゃるのであれば、リアルタイムのチェックが不完全でも仕方がないと認めることになります。そうであるならば、その程度の目的のために被疑者、関係者のプライバシーが暴かれるというこのプライバシーの問題、それから捜査情報が流出し過ぎるという問題、余りにもマイナス部分が大きいと考えます。  それから、ある新聞に、立会人に中身を聞かせておけば将来証人として出頭して証言することもできるではないか、こういう文がございました。この方は多分証人になられた経験がないのだと思いますけれども、このことは立会人に非常に大きな負担を課すことになります。証言する内容は自己の経験した事実ですから、そのときに聞いた内容とかいろんな状況を再現しなくてはいけないわけですけれども、実は人間の記憶の問題もございまして、これは大変な作業でございます。私は、立会人をやはりなるべく証人として呼ばないような法制度の方がすぐれていると考えております。  こういうことを言いますと、だから弁護人を立会人にすればいいじゃないかという議論が出るんですが、これについては前回刑事局長が答えられているので、今回はあえて聞かないことにいたします。  次に、青少年の薬物汚染について質問させていただきます。  前回、これについては出ております。法務省、警察庁にお尋ねするのですが、児童の権利条約第三十三条では麻薬及び向精神薬からの保護というものが明文で規定してございます。平成十年六月の児童の権利に関する委員会の最終見解では、児童の間における薬物乱用を防止し、これと戦うための努力を強化し、広報活動を含めてすべての適切な措置をとるように勧告すると、こういう勧告が出ております。  このとき、時を同じくして勧告されました児童ポルノの規制につきましては、今回の国会で議員立法という形で成立いたしました。特に女性の議員の方たちが、児童の権利条約、この勧告を非常に重く受けとめまして、何とかやりましょうということで、頑張って議員立法という形で法案を成立させていただきました。きっとそういう方はこの薬物問題についても心を痛めていることだろうと私は思います。  この勧告についてどのように受けとめているか、法務省、警察庁にそれぞれお尋ねいたします。 <0153>=政府委員(松尾邦弘君)= 中高生を中心とした青少年の覚せい剤を初めとする薬物乱用、これが浸透しつつあるという現状は極めて憂慮すべき事態であります。法務省としましても、御指摘の児童の権利に関する委員会の最終意見を重く受けとめているところでございます。  この機会でございますので、あえて殊に覚せい剤事件等を含みます薬物事犯の特徴を申し上げておきたいと思いますが、三点よく言われます。  第一点は、精神的、肉体的に薬物に依存するようになりまして、これは、その本人がそうしたことをやめたいという意思を持ったといたしましても、なかなか抜け切ることが難しいという状況でございます。  それから二点目は、この薬物の常用が深まりますと、時に精神的に錯乱することがございます。凶悪犯罪につながっていくこともあることは、新聞等の報道でも委員各位も御存じだろうと思います。  三番目は、常用が仮にとまりましても、かなり後にフラッシュバックという現象がございます。突然錯乱する。これは後遺症の一つとして考えられておりますが、このときに全く関係のない者に加害行為を加えたりする大変恐ろしい状況もまた時に出ることがございます。  青少年の犯罪といいますと、ほかには例えば暴走行為に関連する犯罪だとか、あるいは万引き等の窃盗事犯なども結構件数的には多いわけでございますが、今申し上げました三つの特徴からいいまして、この薬物事犯に関係しますと青少年の一生を左右しかねないということでございます。そういう意味で、大変深刻な影響を青少年自体にも与えると同時に、社会にも与えるということをまず申し上げておきたいと思います。  そういう意味で、法務省はあらゆる機会をとらえまして薬物乱用防止の広報活動を行っています。また、少年院においても、薬物非行などのいろんな問題を抱えている青少年に対してグルーピング、あるいはその指導のカリキュラムに基づく継続的な指導等を行っているところでございます。  また、薬物犯罪が青少年等にも急速に拡大している背後には、暴力団等を含む内外の組織、あるいは密輸や供給にかかわる組織が考えられますが、こういった青少年等による覚せい剤事犯を防止するためにもそういった組織を壊滅させることが肝要であるということで、今回の法案は大変大事なものとして考えている次第でございます。 <0154>=大森礼子君= ちょっと時間がありませんので、法務省だけで結構です。  青少年薬物防止の一つのキャンペーンとして「ダメ。ゼッタイ。」運動がございます。ちょっとポスターを示させていただきます。(資料を示す)こういうポスターで、実は六月二十日から七月十九日までの一カ月間、全国一斉に「ダメ。ゼッタイ。」運動が実施されております。毎回かわいいタレントさんのポスターで、ことしは安達祐実さんがポスターに出ておりますけれども、この「ダメ。ゼッタイ。」運動について、時間の関係もありますので簡単に、法務省の方にどういう運動であるのか御説明いただきたいと思います。 <0155>=政府委員(松尾邦弘君)= この「ダメ。ゼッタイ。」普及運動というのは、国民一人一人に薬物乱用問題に対する認識を深めていただきたいということから、厚生省、都道府県、財団法人の麻薬・覚せい剤乱用防止センターが主催者となりまして、関係省庁の協賛等で実施している運動でございます。  この運動は、実は昭和六十二年六月にウィーンで開催された国連の国際麻薬会議において、会議の終了の六月二十六日が国際麻薬乱用撲滅デーということで定められております。国内においては、平成二年の国連麻薬特別総会で決議されました国連麻薬乱用撲滅の十年支援事業の一環として、六・二六国際麻薬乱用撲滅デーの周知とその設置趣旨を官民一体となって国民に普及するということで始められたものでございます。  今年度は、今、議員の御指摘のように、六月二十日から七月十九日までの一カ月間をその実施期間としまして、街頭のキャンペーンとかさまざまな運動を繰り広げているということでございます。 <0156>=大森礼子君= この国連麻薬乱用撲滅の十年支援事業の一環としての「ダメ。ゼッタイ。」普及運動、この期間中に薬物犯罪を中心とする組織犯罪対策の手段としての通信傍受法案が審議されていることは、非常に興味深いことであると私は思います。  青少年に対しまして薬物を使っちゃ「ダメ。ゼッタイ。」、こう言うわけですから、その薬物の供給をどのようにして食いとめるかということを、大人は、国会は真剣に考えなくてはいけないだろうと私は思います。子供にだけ要求しましてその環境づくりをしないというのは、大人の怠慢であろうと私は思うわけでございます。この法案につきましても十分な審議をしたいと私たちは思っております。  ここに「Yes To Life,No To Drugs.」、命を大切に、薬を使っちゃだめという標語なんでし