145回-参-本会議-31号 1999/06/28 平成十一年六月二十八日(月曜日)    午後零時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ◎議事日程 第三十一号     ─────────────   平成十一年六月二十八日    正午 本会議     ─────────────  第一 住民基本台帳法の一部を改正する法律案   (趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・───── <0001>=議長(斎藤十朗君)= これより会議を開きます。  日程第一 住民基本台帳法の一部を改正する法律案(趣旨説明)  本案について提出者の趣旨説明を求めます。野田自治大臣。    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0002>=国務大臣(野田毅君)= 住民基本台帳法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。  住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきましては、住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資するため、住民票の記載事項として新たに住民票コードを加え、住民票コードをもとに市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の機関等に対する本人確認情報の提供を行うための体制を整備し、あわせて住民の本人確認情報を保護するための措置を講じようとするものであります。  以下、その概要について御説明申し上げます。  第一に、住民票の記載事項として新たに住民票コードを加えることとし、市町村長は、住民票に、転入した住民については転入前の住民票コードを、初めて住民票が作成される住民については全国を通じて重複しない住民票コードを記載することとしております。  また、住民は、住民票コードの記載の変更請求をすることができることとしております。  第二に、住民は、住所地以外の市町村長に対して、自己または自己と同一の世帯に属する者の住民票の写しの交付を請求できるものとしております。  また、住民基本台帳カードの交付を受けている住民については、住所異動をする際に、転出地の市役所や町村役場に出向いて転出証明書の交付を受けることを不要にする手続を設けることとしております。  第三に、市町村長は、住民票の作成などを行ったときは、本人確認情報として、その住民票に記載された氏名、出生の年月日、男女の別、住所、住民票コード及びこれらの変更情報を都道府県知事に電気通信回線を通じて通知するものとしております。  都道府県知事は、別表に掲げる国の機関等から別表に掲げる事務の処理に関し、住民の居住関係の確認のための求めがあったときに限り、本人確認情報を提供するほか、一定の場合に本人確認情報を提供することとし、さらに、みずからの事務の遂行のために本人確認情報を利用することができることとしております。  また、都道府県に、本人確認情報の保護のための審議会を置くこととしております。  第四に、都道府県知事は、自治大臣の指定する指定情報処理機関に本人確認情報処理事務を行わせることができることとし、これを行わせる際には、市町村長から通知された本人確認情報を電気通信回線を通じて指定情報処理機関に通知することとしております。  また、指定情報処理機関に本人確認情報の保護のための委員会を置くこととしております。  第五に、市町村長、都道府県知事、指定情報処理機関及び本人確認情報の受領者である国の機関等について、本人確認情報の適切な管理のために必要な措置を講じることを義務づけ、また、定められた目的以外での本人確認情報の利用または提供を禁止するとともに、本人確認情報の電子計算機処理等に従事するこれらの職員に対し本人確認情報に関する秘密保持義務を課し、これに違反した場合に通常の公務員の秘密保持義務違反よりも重い罰則を科すこととしております。  また、民間において住民票コードが利用されることを制限するため、住民票コードを告知することを求めてはならない旨の規定を設けております。  特に、契約に際して住民票コードの告知を要求することや住民票コードの記録されたデータベースを構成することを禁止し、これらに違反した場合に都道府県知事が勧告、命令を行うことができることとし、命令違反について罰則を科すこととしております。  さらに、自己の本人確認情報の開示と苦情処理についても所要の規定を設けることとしております。  第六に、住民は、市町村長に対し、氏名や住民票コードが記録された住民基本台帳カードの交付を求めることができるものとし、市町村はこの住民基本台帳カードを条例で定める独自の目的のために利用することができることとしております。  最後に、本人確認情報の提供を受けることのできる国の機関等やその事務、都道府県知事が本人確認情報を利用することができる事務などを別表に掲載することとしております。  以上が住民基本台帳法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  なお、住民基本台帳法の一部を改正する法律案は、衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりでございます。  改正附則に、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」旨の規定を加えるものとすること。  以上でございます。(拍手)     ───────────── <0003>=議長(斎藤十朗君)= ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。輿石東君。    〔輿石東君登壇、拍手〕 <0004>=輿石東君= 私は、民主党・新緑風会を代表しまして、ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案について、総理及び関係大臣に質問をいたします。  本法案は、昨年三月の第百四十二国会に提出されて以来、審議に入らないまま継続扱いを繰り返してきました。今回の改正は、すべての国民に十けたの番号をつけて、住民基本台帳の全国的なネットワークシステムをつくろうというものであります。  四月十三日にようやく衆議院で審議を開始されてから二カ月にわたる質疑を通じて、改正案は国の国民監視システムに道を開くものではないかといった疑問や数々の課題が明らかにされてきたところであり、議論の経過とともに、行政事務の簡素化、効率化だけでは片づけられない深刻な問題が浮き彫りにされているのであります。  特に、プライバシー保護の問題は、本法案の重大な懸念材料となっております。今国会には、本法案のほかにも、捜査機関による通信傍受を合法化する通信傍受法案、いわゆる盗聴法案やコンピューターへの不正アクセスを禁止する法案など次々に提起されていますが、いずれもプライバシー保護が確保されるかどうかが法案の成否に大きくかかわっているのであります。  折しも、京都の宇治市では、全市民分に相当する二十一万件以上の住民基本台帳のデータがインターネット上で売買の対象とされる事件が発生いたしました。こうした事件が起きる背景には、個人情報の取り扱いを規制する制度の不備があると言えます。そのことは、現行の住民基本台帳法を見ても明らかであります。すなわち、現行法の第三条には、「何人も、」「知り得た事項を使用するに当たつて、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない。」と規定されているにすぎず、そこには何らの実効性もなく、無防備なシステムと言わざるを得ません。  今まさに、人間の尊厳と基本的人権、プライバシーにかかわる重大な問題である国民の個人情報の取り扱いについて、政府、行政の基本的な姿勢自体が問われているのであります。今こそ、個人情報に係る権利保護の仕組みをどうつくるかという根本的な課題の解決を急がなければなりません。私は、民間部門を含めた包括的で厳格な個人情報保護法の制定こそ住民基本台帳ネットワーク導入の不可欠の前提条件であると思います。  そこで、総理にお伺いをいたします。  総理を本部長とする高度情報通信社会推進本部は、本年四月十六日、アクションプランを決定し、その中に、個人情報保護のあり方を検討する部会をこの夏をめどに設置するとしています。また、総理は、六月十日の衆議院地方行政委員会に出席し、自民、自由、公明三党の修正案に関連して、民間を対象にした個人情報保護法の法整備を含むシステムを速やかに整えることが住民基本台帳ネットワーク実施の前提であること、住民基本台帳法の個人情報保護措置を講じるためさらなる法改正を行うことなどと答弁をしております。これは、我が党の同僚議員が指摘してきましたように、本法案が不備であることを総理みずから認めたものではないでしょうか。速やかにとはいつのことか、個人情報保護法の理念や骨格をどう考えているのか、総理の考えをここで明確に表明していただきたいと思うのであります。  また、野田自治大臣は、個人情報保護法の制定について関係各省庁に働きかけをし、きちんとした対応ができるように努力する旨述べていますが、その決意と今後の手順をお聞かせいただきたいと思うのであります。  加えて、宇治のデータ流出事件の概要や政府としての対処についても総理及び自治大臣の答弁を求めます。  続いて、高度情報化に対応した利用分野の限定と個人情報保護に係る厳格な規制等を中心に、本法案に即して何点か質問をいたします。  まず、本人確認情報の安全確保と利用分野の限定についてであります。  今回の改正で全国的なネットワークシステムが新たに構成されるわけですが、本人確認情報の安全確保のために法制的、技術的な措置がとられることになってはいるものの、ハッカーなどの不法行為や端末の多数設置に伴う取り扱いの不備など、さまざまな潜在的な危険性が既に指摘されておるところであります。  これらに対して、政府は、専用回線の利用、通信データの暗号化、パスワード等による認証チェック等の安全確保措置を講じているとは言いますが、それらが本当に有効に機能するかどうか疑わしいのであります。また、利用分野について、法案では本人確認情報の提供を受ける国の行政機関と事務を十六省庁九十二事務に限定していますが、これまでの審議においても明らかなように、将来、利用範囲を拡大しようという政府の意図も見え隠れして、この法案に対する不信を招いているところであります。  こうした観点から、自治大臣にお尋ねをいたします。  第一に、第三十条の七では、都道府県知事に対し国の機関等への本人確認情報の提供を定めていますが、これらの事務の選定に当たっての基準は何かという点であります。住民の居住関係の確認を要する事務の中でも、いかなる事務が利用事務としての適性を持つのか、また、いかなる事務が適さないと考えられるのか、選定の経過とあわせ具体的な基準を明らかにしていただきたいと思います。  第二に、第三十条の八では、条例の定めによる都道府県の他の執行機関への本人確認情報の提供を定めていますが、警察の捜査活動等への提供は、単に条例に定めるというだけでは国民の理解が得られるものではありません。これでは事実上、利用分野の限定がないのも同然であります。プライバシー保護は基本的人権にかかわることであり、地方が決めることと地方分権を口実にすることは許されません。これら権力的行政事務への本人確認情報の提供は制限すべきと考えますが、大臣の見解を求めます。  次に、個人情報保護に係る規制について伺います。  この課題が住民基本台帳ネットワークについての市民の理解と合意を得る上で中核的な事柄であることは言をまちません。言うまでもなく、プライバシー権とは、自己に関する情報をコントロールする権利としての側面が近年重要になってきており、本法案に即して言えば、自分の個人情報がどこに、どのように利用されているのかを知ることが前提になければなりません。  第一に、第三十条の三十七は、知事または指定情報処理機関に対して自己情報の開示請求権を定めていますが、氏名、住所、性別、生年月日の四情報等の正誤ばかりでなく、いかなる事務と機関への提供がなされたかというアクセス記録などすべてを開示対象とすべきと考えます。すなわち、公的機関への本人確認情報の提供が行われた場合、国民にとっていつ、どこで、どのような目的で情報提供されたのか、その実態をどのようにして把握することができるのか、また、使用済みの本人確認情報の消去はどのように行われるのかが明らかでなければなりません。これらについて自治大臣の見解を伺います。  第二に、住民票コードについてであります。  これまでの議論の中で既に、住民票コードは将来の行政データベースのマスターキーの役割を担うものになりはしないかとの危惧が指摘されているところであります。第三十条の四十三では、住民票コードを含むデータベースの構成を禁止していますが、全面禁止ではなく、他に提供することを目的にデータベースを作成する等、業として行うことを禁じているだけであり、民間業者が自分のところで利用するためであれば違反行為にならないのであります。一たん作成されたデータベースがひとり歩きする危険性を考えれば、いかなる状況でも本人の知らないところで住民票コードを含む個人情報のデータベースがつくられることを認めるべきではないと思いますが、いかがでしょうか。  最後に、違反行為に対する処罰について伺います。  第三十条の四十三は違反行為に対する知事の勧告権を定めていますが、違反行為を繰り返すおそれのある場合に勧告をし、その勧告に従わないときに処罰されるという規定になっております。したがって、違法にデータベースをつくってもすぐに処罰されるわけではなく、つくった者勝ちとなってしまっては、情報の保護措置としては不十分と言わざるを得ません。違反すれば、中止勧告、勧告遵守命令の手続を経ることなく、データベースの構成のみで罰則を科することができるようにすべきであると考えますが、いかがでしょうか。これらの点について、大臣の答弁を求めます。  本法案は、既存のどの法律と比べても個人情報の保護措置が厳格化されているというのが政府のこれまでの説明でありますが、それでも、以上述べたように、国民の不信と不安が払拭される内容となってはおりません。総理もまた衆議院で答弁されたように、さらなる法改正に言及しているのは先ほど述べたとおりであります。  高度情報化社会のもとで、国民のプライバシーを守るために、民間も含めた包括的個人情報保護法の制定が先決であり、その制定を待って改めて本法案を出し直すべきであることを強調し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0005>=国務大臣(小渕恵三君)= 輿石東議員にお答え申し上げます。  改正法案の個人情報保護措置についてまずお尋ねがございました。  このシステムでは、制度面、システム面、運用面のいずれの面におきましても厳重に個人情報保護措置を講じることといたしておりますが、なお、プライバシーの保護に対する漠然とした不安、懸念が残っている等の指摘もあったことから、民間部門をも対象にした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識を示したものでございます。  個人情報の保護に関する法整備を含むシステムを整える時期及びその理念等についてのお尋ねでありましたが、急激にネットワーク化が進む我が国の経済社会の現状にかんがみまして、個人情報の適切な保護を早急に図ることは極めて重要であります。政府といたしましては、かかる認識に基づき、民間部門をも対象にした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを整えるため、早急に総合的な検討を進めてまいる所存でございます。  宇治市におけるデータ流出事件についてお話がありました。住民基本台帳そのものではなく、台帳掲載データをもとに作成した乳幼児健診用のデータが外部委託業者の従業員によって持ち出されたものと承知をいたしております。  政府といたしましては、地方公共団体に対して、改めて制度面、技術面、運用面にわたり個人情報の保護に万全の措置が講じられるよう指導したところであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0006>=国務大臣(野田毅君)= 個人情報保護法の制定についてのお尋ねであります。  民間部門を含めた個人情報保護に関する法整備は各省庁にまたがる課題でもありまして、政府としても早急に検討の場を設け、当該法整備を含めたシステムを速やかに整えるため総合的な検討を進めていくこととしているところでもございます。自治省としても、こうした検討が速やかに進むよう積極的に対応してまいりたいと考えております。  宇治市におけるデータ流出事件についてのお尋ねですが、住民基本台帳そのものではなく、台帳掲載データをもとに作成した乳幼児健診用のデータが外部委託業者の従業員によって持ち出され、名簿業者によって販売されていたものと承知しております。  従前より、地方公共団体に対して個人情報保護対策を徹底するよう要請してきておりますが、改めて制度面、技術面、運用面にわたり問題がないか検討し、個人情報の保護に万全の措置を講じるよう指導したところであります。  次に、改正法案の別表に掲げる本人確認情報の利用事務についてのお尋ねでございます。  この法案を作成するに当たり、各制度を所管する関係省庁と十分に調整を図った上で別表を作成したわけでございます。そこでは、継続的に行われるような給付行政または資格付与にかかわる分野で、国民に関係の深い行政事務等を掲げることとしたものであります。  それから、都道府県条例に基づく本人確認情報の利用を権力行政等に拡大する際の制限についてのお尋ねがありました。  改正案では、各都道府県は、住民基本台帳法の趣旨を適切に踏まえた上、住民の代表で構成される都道府県議会において条例が定められた場合に限り、条例で定める事務の処理のため、本人確認情報を利用、提供できることとしているところであります。  次に、本人確認情報の提供実態の把握や使用済み情報の消去についてのお尋ねであります。  法令に基づく国の機関等への本人確認情報の提供の状況については、報告書が作成され、これが公表されることとなっております。  また、本人確認情報の提供を受けた国の機関等は、これらの情報の安全確保措置を講ずる義務を負っておりまして、不要となった情報は適切に消去されるものと考えております。  次に、住民票コードを含む個人情報のデータベースの構成についてのお尋ねであります。  今回の改正案においては、民間での住民票コードの利用を規制する観点から、住民票コードの告知を要求することを禁止するとともに、特に大量の情報収集につながりやすい契約時の住民票コードの告知要求や、住民票コードの記録されたデータベースを構成することを罰則をも含めて厳正に禁止しているところであります。  次に、データベースの構成に係る罰則についてのお尋ねでありますが、今回の改正案においては、禁止行為を具体的に限定した上で、罰則で担保された保護措置を規定しているところであり、違反事実が発覚した際には、行政として強制力を持って具体的な対応をすることが可能となるものでありまして、規制の実効性は十分にあるものと認識しております。(拍手)     ───────────── <0007>=議長(斎藤十朗君)= 魚住裕一郎君。    〔魚住裕一郎君登壇、拍手〕 <0008>=魚住裕一郎君= 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対し、小渕総理並びに関係大臣に質問いたします。  本法律案のキーワードは番号であります。  現在の行政分野において種々の場面で番号が使われております。社会保険庁の基礎年金番号、運転免許証の番号、パスポートの番号などであります。しかし、これらの番号はある特定の目的のために使用されている限定的な番号であります。もしも、各省庁の保有する個人情報を同じ番号システムを使って管理すれば、ある人物につき、官庁やデータの内容が変わっても、その番号からデータの共用が可能となる。行政機関が収集、利用している個人情報は、犯罪情報、税務情報、医療情報、教育情報、年金・福祉情報、家族情報など多種多様であり、これらの個人情報を結合する、いわゆるデータマッチングを可能ならしめる、インフラとして機能するのがこの住民基本台帳コードなのであります。本人も忘れている小学校時代の成績や病歴までボタン一つで把握され得る状態ができるのであります。  このように、国民のあらゆる個人情報をすべて掌握する、個人を全人格的に管理する、すなわち個人の尊厳、プライバシーを侵害しかねない国民総背番号制への突破口となり得るのであります。日本国政府として、このようないわゆる国民総背番号制度は将来ともに考えないと断言し得るか否か、総理の御所見をお伺いいたします。  また、現代の日常生活において、電子技術を応用してコンビニや銀行の防犯カメラ、走行中の自動車の登録番号や運転者を識別できるシステム、公道上を通行する人の顔をも映し出せる防犯カメラ、あるいは部屋の出入りを管理するシステム、電車の自動改札カードの汎用化など、人間の行動を一面監視できるシステムが着々と構築されつつあります。総背番号制と相まって、監視国家へ移行するのではないかと懸念されております。総理はこのような懸念をどう認識されておられるのか、お伺いいたします。  私ども公明党は、どこまでも人権を守るとの立場、そして民間における個人情報の集積をも検討の上、民間部門も含めた包括的な個人情報保護の法制度がない限り本改正案は是認できないとして、衆議院において自由民主党、自由党と熱心に協議し、一部修正を得ることができました。私どもはこの修正を高く評価するものであります。  そこで、自治大臣にお伺いをいたします。  「所要の措置」とは何を意味しているのか、その御認識を御答弁いただきたい。  そして、総理、恐らく「所要の措置」は自治省所管だけでできるものではありません。政府一体となって取り組んでいく必要があろうかと思います。この問題につき今後どのように取り組まれていかれるのか、御認識、御決意をいま一度お伺いいたします。  次に、衆議院地方行政委員会において、総理は、「住民基本台帳ネットワークのシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提である」と述べておられますが、前提であるべき法整備が間に合わない場合はどう対処されるお考えか、総理にお伺いいたします。  以下、本改正案自体につき若干質問いたします。  まず第一に、住民基本台帳の制度趣旨を逸脱するのではないかという点であります。  すなわち、市町村において住民の居住関係を公証し、住民に関する記録を正確かつ統一的に行うことがその趣旨であります。住民の居住地域を越えた全国単位で本人確認を行うこと、また、他の行政機関等へ本人確認情報を提供することは全く予定していない。地方分権の時代にあって、制度趣旨を大きく変えるか、あるいは逆行するものと考えますが、自治大臣の御所見をお伺いいたします。  第二に、住民基本台帳をネットワーク化する必要性についてお伺いいたします。  説明では、ネットワーク化することによる住民の利便性について、住民票の写しの広域交付、転出転入手続の簡素化としております。しかし、コンピューターによるネットワーク化は、コンピューターへのハッカーの不法侵入、データの改ざん、破壊等の行為によって個人情報の安全性が著しく害されます。政府自体、いわゆる不正アクセス禁止法案を出さざるを得ないゆえんであります。しょせん、コンピューターの世界で破れないセキュリティーはありません。  一方、兵庫県のNTT社員による情報の漏えい事件、京都府宇治市の二十二万人にも及ぶ住民基本台帳のデータ流出事件など、人的セキュリティーの観点からも大いに問題があるところであります。このような危険を冒してまでネットワーク化するメリットは何か、保護策とあわせて自治大臣に御教示願いたい。  第三点目は、改正案におけるデータマッチングの問題であります。  本人確認情報の提供を受けた者に対して、目的外利用をしてはならないと規定するだけで、データの結合に関して規制をしておりません。つまり、省庁の中で、この情報をもとにデータを結合することについては可能であります。そして使用済みの本人確認情報の消去、提供目的違反に対する刑罰、国民の側からの中止請求権も定めておりません。中央省庁再編で巨大官庁が誕生しようとする中で、省庁内のデータマッチングには注意を払う必要があります。  また、民間利用の禁止についても、契約の取引条件として聞くこととデータベースの作成に対し、知事による中止の勧告、命令、そして命令違反には罰則を設けているが、実効性を期待できない範囲であり、一度構築したデータベースについて削除もしくは押収という規定もない。これでプライバシーを守り切れるでしょうか、自治大臣にお伺いいたします。  最後に、住民基本台帳カードについてお尋ねいたします。  住民基本台帳カードには、住民票コードと四情報がICによって記憶され、残余の記憶領域には、各市町村が条例の定めるところによって自由に使えることになっております。現在、その記憶容量は八千字と言われておりますが、導入時期を考慮すれば、さらに巨大な容量となることも考えられます。記憶容量が大きくなればなるほど、自治体の活用範囲も広がる。印鑑登録、血液型、健康診断の記録、年金・介護サービスの受給関係、図書館の貸出記録あるいは本籍など、条例で定めさえすれば記録可能となります。新たな差別も招来しかねない上に、記録される情報について本人が確認することができない。自己に関する情報をコントロールする権利がプライバシーであり、電子技術の発達によるプライバシーの侵害と言わざるを得ません。韓国が本年三月に電子住民カード事業を中止したのは、この危惧からであります。  また、住民基本台帳カードは本人申請によるといえども、その利便性を考えれば、事実上強制となり得ます。身分証明書としての活用も可能であり、いわゆる国内パスポートそのものが結果として強制される。住民基本台帳カードのこれらの問題点について、自治大臣の御見解をお伺いいたします。  以上、包括的な個人情報保護に関する措置が前提であるとしても、個人のプライバシーに密接にかかわる問題であるがゆえに、国民の皆様の理解を得て、疑念、不安を取り除くことが必要であります。良識の府、参議院として賢明な審議が行われることを強く期待し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0009>=国務大臣(小渕恵三君)= 魚住裕一郎議員にお答え申し上げます。  まず、国民総背番号制度についてお尋ねがありました。  この改正法案は、国がさまざまな個人情報を一元的に収集、管理することを認めない仕組みとなっており、また、近年のコンピューター等の技術の飛躍的発展に呼応しての住民サービスの向上と、特に地方公共団体の省力化、事務能力や効率化等に資するものでありまして、いささかも国民のプライバシーを侵害するものでないことを確信いたしております。  監視国家に対する懸念についてお尋ねがありました。  このシステムは地方公共団体共同のシステムでありまして、保有情報は、本人確認のための氏名、住所、性別、生年月日、住民票コード及び付随情報に限られ、さらに、住民票コードをもとにさまざまな個人情報を一元的に収集、管理することを法律上認めない仕組みとなっていることから、監視国家へ移行するのではないかとの御懸念には当たらないものと考えております。  個人情報保護に関する政府の取り組みについてお尋ねがありました。  附則第一条第二項は、衆議院における御審議を踏まえて修正されたものであります。私は、情報通信の問題につきましては、もとより個人情報保護の問題も含めてかねてより強い関心を有しており、現在、私自身、政府の高度情報通信社会推進本部長の立場にあります。政府といたしましては、早急に検討の場を設け、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えるため、議員御指摘のとおり、本問題は政府一体となって取り組むべき重要な問題であるとの認識のもとに総合的に検討を進めてまいる所存であります。  個人情報保護と住民基本台帳ネットワークシステムとの関係についてお尋ねがありました。  本法案におきましてはプライバシー保護に格段の配慮を行っておるところでありますが、これまでの国会審議を踏まえ、特に住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であるとの認識であります。  政府といたしましては、早急に検討の場を設け、当該システムを速やかに整えていくことによりまして、住民基本台帳ネットワークシステムを着実に進めていくことができるものと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0010>=国務大臣(野田毅君)= まず、修正案附則第一条第二項の「所要の措置」についての御質問でございます。  これは、第一に、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、第二に、第一のシステムの整備状況を踏まえ、住民基本台帳法におけるさらなる個人情報保護措置を講ずるため、所要の法改正等を図ること、第三に、地方公共団体が適切に住民基本台帳ネットワークシステムを運用することができるよう、自治省として個人情報保護に係る指導を十分に行うことなどを示すものと認識しております。  次に、住民基本台帳制度の趣旨と住民基本台帳ネットワークシステムとの関係についてのお尋ねでございます。  このシステムは、市町村が住民基本台帳制度を運営するという制度の基本的枠組みを維持しつつ、住民の利便の増進や国及び地方公共団体の行政の合理化のために、全国的な本人確認のための仕組みを付加するものでありまして、住民基本台帳制度の趣旨に沿ったものであると考えております。  次に、このシステムを導入するメリット等についてのお尋ねでございます。  このシステムを導入することにより、まず国、地方を通じた行政改革、そして住民の負担軽減、サービス向上などを一層推進することが可能となると考えております。また、システムの導入に当たっては、制度面、システム面、運用面、そのいずれの面におきましても厳重に本人確認情報等を保護することとしております。  次に、データマッチング等についてのお尋ねであります。  改正案におきましては、第一に、本人確認情報を取り扱う権限を有する者について、法定された目的外のデータマッチングを禁止しておること、第二に、本人確認情報等に係る安全確保措置義務を課していること、第三に、罰則によりデータベースの作成等の住民票コードの民間利用を禁止していることなどの措置を講じておりまして、プライバシーの保護は十分に図られておるものと考えております。  最後に、住民基本台帳カードについてのお尋ねがございました。  このカードは、各市町村において議会の議決を経た条例に基づき、高度な住民サービスを提供するために利用することが可能とされております。また、このカードは、あくまでも住民の任意の請求に基づき発行されるものでありまして、カードの所持、携帯は制度上も事実上も義務づけられることはないものと考えております。  以上であります。(拍手)     ───────────── <0011>=議長(斎藤十朗君)= 八田ひろ子君。    〔八田ひろ子君登壇、拍手〕 <0012>=八田ひろ子君= 私は、日本共産党を代表して、住民基本台帳法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。  この改正案によって、お年寄りから赤ちゃんまですべての国民は、十けたの個人番号がつけられることになります。そしてこのシステムは、住民票コードが個人を認識するための共通番号になることによって、将来的には国民のあらゆる個人情報を掌握できるシステムにもなり得るものであります。  ですからこそ国民は、本人の意思とは関係なく番号をつけられることによって、一人一人の生活、プライバシーが行政の管理のもとに置かれるのではないかとの抵抗や不安を感じているのです。生まれたときからすべての国民が一方的に番号をつけられるというこのシステムは、日本の歴史上初めて創設される制度であります。その導入に当たっては国民的合意が必要不可欠です。ところが、この国民的な合意はまだ得られていないのではありませんか。総理の御見解を伺います。  本改正案に盛られた住所、氏名、生年月日、性別はプライバシーの重要な構成要素をなす項目であります。これから二十一世紀を迎え、ますます情報化社会が進む中で、個人のプライバシー保護という問題は一層慎重でなければならないと考えますが、総理の見解をお聞かせください。  現状では、入学児童を持つ家庭に学用品のダイレクトメールが送りつけられる。あるいは成人式が近づけば着物のダイレクトメール。一体だれがどこから情報を手に入れているのか、プライバシーが侵害されているのではないかと感じる人がふえています。また、実際に個人情報が漏れて銀行口座から預金が引き出されていた被害や、二十一万七千人もの住民基本台帳リストがひそかに売りに出されていた事例などが相次いで起こっています。その背景には、市町村の窓口での住民票の大量閲覧や、営利目的のために個人情報のデータベース化などがあります。今日のこのようなプライバシーの被害が広がっている事態は極めて憂慮すべき状況にあります。  そこで、総理にお尋ねします。  こうした状況をどのように認識し、今後具体的な対策をどのようにされるのか。住民票の大量閲覧についての新たな規制や、個人情報をデータベース化する業界あるいはそれを利用している業界に対する指導などは考えておられるのか。答弁を求めます。  政府は、このシステムは地方公共団体が主体の分散分権的なシステムであるとしています。しかし、個々人の住民票コードと氏名、住所、性別、生年月日の四情報は、都道府県センターを介して全国にたった一カ所設けられる指定情報センターに集められ、その情報が国の行政機関に送信されることになります。これでは分権型どころか、個人情報の一元的集権化そのものであります。  現在、住民基本台帳電算システムの外部接続を全面的に禁止する条例を持つ自治体は五百六十五自治体に上っています。このような外部接続を禁止する条例を持った自治体の意見は聞かれたのでしょうか。この住民基本台帳ネットワークシステムの導入によって、一律に条例の無効が迫られるわけですが、これでは地方分権の流れに逆行することになるのではないでしょうか。総理の見解をお聞きします。  この間の審議の中で、今回の改正案は入り口であって、住民票コードをマスターキーにして利用範囲を拡大していく意図が明らかになりました。また、経団連が公表している長期ビジョン「魅力ある日本の創造」というものの中には行政の情報通信ネットワーク化の推進を強く要求しているように、これが民間利用をも視野に入れたシステムではないのかとの懸念も払拭されてはいません。政府は、法案提出に当たり、こうした財界の要望を受けとめて法案化したのではありませんか。自治大臣に答弁を求めます。  また、将来、納税者番号制度もつくられるのではないかとの懸念もありますが、大蔵大臣、その考えはないと言えますか。さらに、納税者番号制度をつくるために住民票コード番号制度を利用することはないと断言することができますか。お答えください。  憲法第十三条は、すべて国民は個人として尊重されることをうたっています。この精神に基づく国民のプライバシー権について、政府は、個人の秘密の情報が公開されないこと、誤った情報などによって自己に関し誤った判断がされないこと、個人の情報はその人本人が管理する権利であることとし、この法案の個人情報保護については技術上、法制上万全と繰り返し答弁が行われてきました。しかし、不正に情報が使われたときの国民からの中止請求権はありません。使用済み情報の消去規定もないし、情報を受けた行政機関が目的外使用した場合の罰則規定もないなど、万全どころか重大な欠陥があります。  総理は、衆議院の審議の中で、民間部門も含めた個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを整えることが前提と表明されてきました。これは、いわゆる包括的個人情報保護法を制定することを指すのでしょうか。その法律ができないうちは改正住民基本台帳法の施行はしないと断言できますか。  総理の見解をお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0013>=国務大臣(小渕恵三君)= 八田ひろ子議員にお答え申し上げます。  まず、住民票コードの付番についてのお尋ねであります。  住民票コードは、氏名、住所等による本人確認に比べて、一、コードによる照合は明確であること、二、迅速な検索が可能であること、三、重複しないコードにより確実に本人確認ができることなどから、このシステムにおいて全国共通の本人確認を行うに当たって必要不可欠なものと考え、今回、改正法案に明確に規定し、国会における御審議をお願いいたしているところであります。  法改正に当たりまして、プライバシー保護の重要性についてお尋ねがありました。  住民基本台帳ネットワークシステムにおいて、制度面、システム面、運用面のいずれの面におきましても厳重に本人確認情報等を保護することといたしており、システムの導入に当たってはプライバシー保護を最重要課題といたしておるところであります。  個人情報の流出事件に対する認識についてお尋ねがありましたが、最近、一部の地方公共団体におきまして個人情報の不適切な管理が問題になる事例が生じたことは遺憾なことであります。従前より地方公共団体に対して個人情報保護対策を徹底するよう要請してきたところでありますが、改めて制度面、技術面、運用面にわたり個人情報の保護に万全の措置が講じられるよう指導いたしたところであります。  個人情報保護条例についてお尋ねがありました。  条例でオンライン接続を例外なく禁止している場合には、住民基本台帳法に基づく情報の送受信については、十分な個人情報保護措置を講じた上で、法律の規定を置くことにより条例の禁止規定が解除されるものと考えております。また、その他の情報の送信につきましては、当該条例の禁止規定は従来どおり効力を有するものであります。  最後に、包括的個人情報保護法の制定と住民基本台帳法改正案の施行との関係についてお尋ねがありました。  政府といたしましては、個人情報保護のあり方につきまして総合的に検討いたしました結果、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えていくことによりまして、住民基本台帳ネットワークシステムを着実に進めていくことができるものと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0014>=国務大臣(野田毅君)= 住民基本台帳ネットワークシステムの民間利用等についてのお尋ねでございます。  今回の改正案におきましては、本人確認情報の利用を公的部門に限るとともに、住民票コードの民間利用を禁止しているところであります。また、このシステムは住民サービスの向上、国、地方を通じた行政改革を目的としているものであります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕 <0015>=国務大臣(宮澤喜一君)= 納税者番号制度についてのお尋ねでございましたが、この問題につきましては、御承知と存じますが、政府税制調査会におきまして大分以前から検討を続けておられます。しかし、今日に至りましても議論は集約されておりません。  平成十一年度の政府税制調査会のこの問題につきましての答申では、経済取引への影響、民間及び行政のコストと効果の分析、あるいはプライバシー保護等への課題を含め、より掘り下げて具体的な検討を進めていくことが必要だと、こう述べられております。したがいまして、ただいまのお尋ねにつきましては、政府といたしまして具体的な実施方法などをお答え申し上げる段階に全く至っておりませんことを申し上げます。(拍手)     ───────────── <0016>=議長(斎藤十朗君)= 照屋寛徳君。    〔照屋寛徳君登壇、拍手〕 <0017>=照屋寛徳君= 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま趣旨説明のありました住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  具体的な質問の前に、沖縄サミットと基地問題に絡むクリントン米大統領の驚くべき発言について総理に尋ねます。  クリントン大統領は、去る二十五日の記者会見で、基地問題が未解決な状態で沖縄には行きたくないとの発言をしたと報じられております。このクリントン発言は、沖縄サミットまでに普天間飛行場の移転問題を解決せよと日本政府に圧力をかけたものであります。サミットを機に沖縄から世界に平和を発信したいと願っていた多くの県民の間で、不安、動揺、困惑、怒りが渦巻いております。クリントン発言についての総理の御所見をお聞かせください。  さて、本改正法案の是非を論ずる上で最も大事な視点は、国民のプライバシーの権利と国家による個人情報の管理のあり方であります。  私は、プライバシーの権利を憲法第十三条の幸福追求権に基づく自己情報のコントロールの権利であると理解いたします。従来、プライバシーの権利は、私生活をみだりに公開されないという不法行為上の損害賠償請求権として理解されておりました。だが、今日では、憲法上の幸福追求権という視点から、みずからに関する情報の取得、収集、保有、利用、伝播といったさまざまな段階において、自分に関する情報を、だれに、どこまで、知らせるのか、教えないのかを自分で判断し決定する権利として理解すべきであると考えます。  そこで、総理のプライバシーの権利についての御認識を伺います。  あわせて、自己情報コントロール権と個人情報の国家管理のあり方についての総理並びに自治大臣の御所見をお聞かせください。  住民基本台帳は、住民の居住関係を公証する基本的情報記録であります。ここで言う住民は、社会的存在として自立した人格を持つ人間像が想定されております。ところが、改正法案では住民票コードが創設され、既に生存する者もこれから生まれてくる者もすべて番号がつけられます。つまり、改正法が成立すると、国民の一生にわたるさまざまな行政手続がこの住民票コードで処理され、また個人確認情報がこの番号により収集、管理、利用されることになるのです。しかも、この番号は原則として生涯変わりません。本改正法案が国民総背番号制と呼ばれるゆえんであります。  私は、本改正法案に対し多くの国民が個人の非人格化を感じ、人間が番号によって管理されることへの抵抗感や不安感、嫌悪感を有しており、そのことを軽視すべきでないと考えますが、総理並びに自治大臣の所見を伺います。  本改正法案は、全国的な住民基本台帳ネットワークシステムを構築することにより、高度情報化社会に対応して、国、地方を通じた行政改革、住民の負担軽減、サービス向上を図ることを目的としております。しかしながら、法改正によって住民の負担が軽減され、利便性が向上することはほとんどなく、恩恵は行政サイドのみが受けるものとしか思えません。  住民基本台帳システムの構築に要する初期投資額、年間経費額を根拠を示して明らかにしてください。加えて、法改正後、手数料について現行以上の増額負担はないと約束できますか、自治大臣、お答えください。  関連して、指定情報処理機関に支払う手数料の見積額についても明らかにしてください。  本改正法案は、住民基本台帳法の目的を逸脱し、地方分権にも反します。現在、多くの地方自治体が個人情報保護条例を制定し、かなりの自治体で個人情報の安易なオンライン接続を禁止し、プライバシーを保護しております。本改正法案による住民基本台帳のネットワーク化は、上位法の改正によって自治体の個人情報保護の努力を台なしにするものであると考えますが、自治大臣の所見を伺います。  本法律案は、衆議院で修正が加えられました。だが、修正によっても本改正法案の正当性は認められません。さまざまな個人情報が不法に流出し、漏せつされ、流通するような社会状況にあって、包括的個人情報保護法の早期制定こそが求められているのです。  最後に、修正された附則第一条二項の「所要の措置」の具体的な内容と、総理が考えておられる個人情報保護法の理念、内容をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0018>=国務大臣(小渕恵三君)= 照屋寛徳議員にお答え申し上げます。  まず、二十五日の記者会見におけるクリントン大統領の発言についてお尋ねがございました。  この発言は、普天間飛行場の移設・返還問題解決のための期限を付したものとは考えておりませず、本問題の早期進展への期待を表明したものと考えております。  普天間飛行場の移設・返還問題につきましては、同飛行場が市街地にあり、一日も早く周辺住民の方々の不安を解消したいとの観点から、政府としては、九州・沖縄サミットの開催を決定する以前から全力で取り組んできたものであります。そのような意味で、本問題は、来年の九州・沖縄サミットの開催と直接関連するものではございません。  政府といたしましては、今後とも、本問題の早期解決に向けて最大限努力していく考えであり、そのために、当然のことながら、稲嶺知事を初め沖縄県や地元の御理解と御協力を得つつ取り組んでいく考えであります。  次に、プライバシーの権利等についてお尋ねがありました。  プライバシーの権利は確立された考え方があるとは言いがたいものでありますが、一般的に、一、個人の秘密が公開されないこと、二、自己の情報を知り、コントロールし得ること等の概念が含まれているものと認識いたしており、改正法案におきましても、これらの権利の考え方も踏まえた個人情報保護措置を講じているものと認識いたしております。  国民感情への配慮についてお尋ねがありますが、住民基本台帳ネットワークシステムは、住民のサービス向上、国、地方を通じた行政改革のために導入されるものであり、番号、すなわち住民票コードにより国民を管理するためのものではありません。今後とも、国民感情にも十分配慮し、このシステムの円滑な導入を目指していきたいと考えております。  修正案附則第一条第二項の「所要の措置」の具体的内容についてお尋ねがありますが、この「所要の措置」とは、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることなどを示すものと認識いたしております。  個人情報保護法の理念、内容についてでありますが、急速に進む社会のネットワーク化の中で、個人情報の適切な保護を図ることは極めて重要なことと考えております。政府としては、個人情報保護のあり方について総合的に検討した上で、法整備を含めたシステムを速やかに整えていきたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0019>=国務大臣(野田毅君)= まず、自己情報コントロール権と個人情報保護のあり方についてのお尋ねでございます。  改正法案におきましては、本人確認情報の範囲、この情報を利用できる分野及び開示請求権を法律に規定するなど、自己情報コントロール権の考え方も踏まえた個人情報保護措置を講じているものと認識いたしております。  次に、国民感情への配慮についてのお尋ねです。  このシステムにつきましては、平成六年から十年まで四年間かけて各方面に対しても十分に考え方を示し、幅広く検討を行ってきたところであります。特に住民票コード、つまり番号によって国民を管理するためのいわゆる国民総背番号制とは発想においても仕組みにおいても全く異なっているものであるということについても説明を重ねてきたところであります。  次に、住民基本台帳ネットワークシステムの所要経費についてのお尋ねであります。  システム開発費、コンピューターの設置工事費等の基本的な導入経費として約四百億円、コンピューター維持費、電気通信回線使用料等の年間経費として約二百億円を見込んでおります。  それから、手数料についてのお尋ねであります。  住所地での住民票の写し等の交付に係る手数料については、各市町村の条例で適切に定められるべきものであります。また、指定情報処理機関に支払う手数料については、本人確認情報の利用事務の詳細や利用件数等を踏まえた上で、事務を委任した都道府県の条例をもとに決定されるものと認識いたしております。  個人情報保護条例についてのお尋ねであります。  条例でオンライン接続を例外なく禁止している場合には、住民基本台帳法に基づく情報の送受信については、十分な個人情報保護措置を講じた上で、法律の規定を置くことにより条例の禁止規定が解除されるものと考えております。  また、その他の情報の送信については、当該条例の禁止規定は従来どおり効力を有するものであります。  以上であります。(拍手)     ───────────── <0020>=議長(斎藤十朗君)= 奥村展三君。    〔奥村展三君登壇、拍手〕 <0021>=奥村展三君= 参議院の会を代表いたしまして質問させていただきたいと思います。  高度情報化の進展と時代の要請を勘案いたしますと、二十一世紀の行政情報化の基盤とも言えるこのシステムを早期に導入していくことも理解はするわけでありますが、特にプライバシー保護について厳しい規制をかけていかなければならないと思います。国民の皆さんのあらゆる不安をぬぐい去るため、十分な審議を行うことが重要であるということを冒頭に申し添えておきたいと思います。  今回の法改正の趣旨についてでありますが、本改正案では、都道府県及び指定情報処理機関が保有するのは、氏名、住所、性別、生年月日の四情報と住民票コード等の本人確認情報のみであり、また、この情報を法令上明確に指定された場合においては国の機関等に提供することとなっております。ただし、このシステムは、本人確認情報を国の機関等に提供するのみであり、国の機関等からその保有情報の提供を受けてあらゆる個人情報を一元的に収集、管理していくものではないものと認識しておりますが、総理の見解をお伺いいたしたいと思います。  次に、大事なプライバシー保護についてでありますが、私は、今回のこの改正案の審議が今日までも問題になっております民間部門をも含んだ個人情報保護のあり方について議論を深めるよい契機になったと思っております。  そこで、本改正案は、衆議院において一部修正され、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」旨の規定が新たに加えられたところであります。  民間部門の保有する個人情報に関しては表現の自由及び営業の自由等との関係もあって難しい面もあると考えられますが、政府全体として早急に検討を進めていくべき重要な課題であると認識しております。今後、政府として民間も含めた個人情報保護対策にどのように取り組んでいかれるのか、総理の見解をお伺いしたいと思います。  次は、住民基本台帳ネットワークシステム導入における効果とコストについてであります。  今、答弁もございましたが、初期投資に四百億円、年間二百億円のコストがかかると試算されております。その一方で、住民の負担軽減として二百七十億円、国、地方を通じた行政改革効果として二百四十億円くらいの効果があると仄聞いたしておりますが、このシステムを導入するに当たって、試算にあらわれないような効果及びシステムの将来の活用方法についても明確にしていくべきであります。この点について自治大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。  最後に、住民基本台帳カードについてであります。  今回の改正案では、本人確認を行うため、本人の申請によって市町村が住民基本台帳カードを交付することになっております。また、それぞれの市町村の条例によりさまざまな機能を追加することができるとされております。そこで記憶容量が大きいICカードを採用されるわけであります。  この特性を真に生かすためには市町村の独自性が大切であります。既に幾つかの市町村におきましては、御案内のとおり地域カードとして福祉カード、施設利用カードなどさまざまな機能を追加しているところもあります。しかしながら、このカードの追加機能の選択についてはあくまでも住民の判断にゆだねなければならないものであると思います。どの機能を選択するかは住民の判断によって進められるべきだと思いますが、自治大臣の見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0022>=国務大臣(小渕恵三君)= 奥村展三議員にお答え申し上げます。  まず、個人情報の取り扱いについてのお尋ねがありましたが、このシステムは、保有情報は氏名、住所、性別、生年月日、住民票コード及び付随情報のみであり、これらの本人確認情報を法律に定められた国の機関等に提供するためのシステムであることから、今御指摘のとおり、あらゆる個人情報を一元的に収集、管理していくものではないとの認識をいたしております。  民間も含めた個人情報保護に関する今後の取り組みについてお尋ねでありました。  附則第一条第二項は、衆議院における御審議を踏まえて修正されたものであります。政府といたしましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えるため、御指摘のとおり政府全体として早急に検討を進めていくべき重要な課題であるとの認識のもと、総合的に検討を進めてまいる所存であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0023>=国務大臣(野田毅君)= お答え申し上げます。  二点ございました。  まず、システムの試算にあらわれない効果等についてのお尋ねであります。  これは、第一に共済年金等の過払いの防止、第二に住民基本台帳カードの身分証明書としての活用、第三に同カードの福祉等の各種行政サービスへの活用などに加えて、将来的には、災害時のデータのバックアップに活用ができる、電子申請、ワンストップサービスなどにおける本人確認への活用などが可能となるものと考えております。  それから、住民基本台帳カードの追加機能の選択についてのお尋ねでありますが、住民基本台帳カードは住民の任意の請求に基づいて発行されるものであります。この趣旨を踏まえ、御指摘のとおり、追加機能の選択について住民自身が任意に判断できることが適切であると認識しております。  以上であります。(拍手) <0024>=議長(斎藤十朗君)= これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十分散会      ─────・─────