第145回国会 本会議 第27号 1999年06月09日       (1999年06月11日 15:00 登録) 平成十一年六月九日(水曜日)    午後零時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第二十七号   平成十一年六月九日    正午開議  第一 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品   位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の   締結について承認を求めるの件(衆議院送付   )  第二 所得に対する租税に関する二重課税の回   避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国   との間の条約の締結について承認を求めるの   件(衆議院送付)  第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規   制に関する法律の一部を改正する法律案(内   閣提出、衆議院送付)  第四 地方公務員法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第五 都市基盤整備公団法案(内閣提出、衆議   院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等   に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受   に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正   する法律案(趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・───── <0001>=議長(斎藤十朗君)= これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 <0002>=議長(斎藤十朗君)= 御異議ないと認めます。陣内法務大臣。    〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕 <0003>=国務大臣(陣内孝雄君)= 組織的な犯罪に対処するための法整備に関する三法案について、一括してその趣旨を御説明いたします。  近年、暴力団等による組織的な犯罪が少なからず発生しており、我が国の平穏な市民生活を脅かすとともに、健全な社会経済の維持発展に悪影響を及ぼす状況にあります。  一方、このような組織的な犯罪の問題については、国際的にも協調した対応が強く求められ、主要国においては法制度の整備が進んでおります。  そこで、この三法案は、このような状況を踏まえ、これらの犯罪に適切に対処するため、必要な法整備を図ろうとするものであります。  まず、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案の要点を申し上げます。  第一は、組織的な殺人、詐欺等の処罰を強化するものであります。  第二は、一定の犯罪行為により得られた犯罪収益等を隠匿等するいわゆるマネーロンダリング行為を処罰するほか、金融機関等に対し、疑わしい取引についての届け出を義務づける等するものであります。  次に、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案の要点を申し上げます。  これは、犯罪捜査のために強制処分として行う電気通信の傍受に関し、その要件、手続、その他必要な事項を定めるものであります。  まず、通信傍受の要件等について、対象とする犯罪を一定の重大な犯罪に限定し、他の方法によっては真相の解明が著しく困難な場合に限るなど、厳格な要件、慎重な令状請求及び発付の手続等を定めることとしております。  また、傍受の実施の適正の確保及び関係者の権利保護を図るため、令状の提示、立会人の立ち会い、傍受をした通信の記録の取り扱い、通信の当事者に対する通知、不服申し立て等に関する規定を設けることとしております。  さらに、通信の秘密の尊重等について規定することとしております。  次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案の要点を申し上げます。  第一は、電気通信の傍受を行う強制の処分ができる旨の根拠規定を同法に設けるものであります。  第二は、証人またはその親族に対して脅迫、威迫等が行われることが刑事手続の円滑、適正な実施を妨げる一因となっていることから、これらの行為が行われるおそれがある場合に、証人等の住居等が特定される事項についての尋問を制限することができること等の措置を定めるものであります。  以上が、これらの法律案の趣旨であります。  政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第ですが、衆議院におきまして、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案について、犯罪収益が生じる前提となる犯罪に児童買春周旋の罪等を加えること等を内容とする修正が行われております。  また、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案について、通信傍受の対象犯罪を薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航に関する罪及び組織的な殺人の罪に限定すること、傍受の実施に当たり第三者の常時立ち会いを必要とすること、他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受に関し、その要件を限定するとともに、この傍受に対する裁判官の事後的な審査の手続を設けること等を内容とする修正が行われております。(拍手)     ───────────── <0004>=議長(斎藤十朗君)= ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小川敏夫君。    〔小川敏夫君登壇、拍手〕 <0005>=小川敏夫君= 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま提案のありました法案について質問いたします。  通信傍受法案についてでありますが、憲法第二十一条で保障された通信の秘密と公共の福祉による制限との兼ね合いで、犯罪捜査の必要性という公共性をもって通信の秘密に関する基本的人権を制約できるのか、そしてそれが可能であるとするなら、その範囲をどこまでと考えるのかという基本的な問題があります。この基本的問題について、総理大臣の見解をお尋ねします。  次に、法の運用に当たって、捜査機関が政治的目的による情報収集を行うなど、法の目的とは異なる意図で通信傍受を行うこと、あるいは法が定めた通信傍受の手続要件を潜脱して違法もしくは乱用に及ぶ通信傍受を行うことなどの危険性を回避する方策が十分に講じられているのかという問題があります。捜査機関やこれを指揮する立場にある政治権力によって、違法もしくは乱用に及ぶ通信傍受が行われ、憲法が保障する通信の秘密に関する基本的人権が侵害されることは絶対にあってはならないからであります。  本法案が昨年三月に国会に提出された際、当時の橋本総理大臣は記者団の質問に答え、こういう法律で一番怖いのは本来の目的以外のところで法律がひとり歩きして乱用されることだと述べ、乱用の防止が必要であることを強調しました。小渕総理はこの乱用防止の必要性についてどの程度の重要性を持って認識しているのか、この点をお示しいただきたい。  そして、乱用の防止のためには、捜査官がその意図を持って試みても乱用ができない程度の厳格な乱用防止策が制度として保障されることが必要であると思いますが、小渕総理もそのようにお考えでしょうか、お答えください。  本法案には、捜査官の乱用に及ぶ通信傍受を十分には防止できないという欠陥があります。  まず初めに、裁判官の令状によるものとする事前チェックが必ずしも機能しないことについて述べます。  十三年前に発生した神奈川県警警察官による日本共産党幹部宅の盗聴事件は、そもそもが法の手続によらない違法な盗聴事件でありますから、法の手続を定める本法案の乱用防止とは別の議論でありますが、この違法盗聴事件は、権力というものが法を犯してまで盗聴を行い情報収集に努めるものであるという実態を如実に示すものであります。このような権力の本質を見るならば、捜査機関やこれを指揮する政治権力が本法を不正に利用し、あるいは乱用して通信傍受を行うことが現実のおそれとして考えられます。そのために乱用を防止するための制度的保障を講じることが絶対に必要なのであります。  実際に、平成六年、福岡県警南署警察官が白紙調書を用いて虚偽の供述調書を作成し、これを証拠資料として裁判官から捜索令状の発付を受けて違法捜索を行った。平成七年、岡山県警水島署警部補が白紙調書を用いて虚偽の供述調書を作成し、これを証拠資料として裁判官から捜索令状の発付を受けて違法捜索を行った。平成七年、群馬県警前橋署警部補ら警察官三名が拳銃押収を捏造した。平成七年、愛媛県警警部ら警察官三名が短銃押収を捏造した。平成九年、警視庁城東署警察官三名がみずからが所持する覚せい剤を無関係の人の車内に置き、これを発見したとして無関係の人を違法に逮捕し、覚せい剤を押収した。平成九年、警視庁蔵前署警部ら警察官二名がみずから拳銃を埋蔵した上で虚偽内容の供述調書を作成し、これを使用して差し押さえ令状の発付を受けて拳銃の押収を偽装したといった事件が続発しており、警察に対する国民の信頼が大きく損なわれているのが実態であります。  発覚した事件では、警察官が上司や裁判官を欺いて令状の発付を受けているのですから、本法案が単に令状の請求権者を警視以上の上級捜査官に限定し、請求先を地方裁判所とするだけでは解消できない問題であります。共産党の幹部盗聴事件では、警察が組織ぐるみで行ったと裁判で認定されています。このような観点から、捜査機関が不正に令状を取得することを防止する手だてを、単なる綱紀粛正のかけ声だけではなく、具体的な手続や制度として導入することが絶対に必要であります。この点について、国家公安委員長から具体的に答弁をしていただきたい。  その具体的方策の一つとして、令状請求のために裁判所に提出された捜査記録の写しを裁判所に一定期間保管し、令状請求の当否及びその審査に供された証拠資料の適正さを後に検証できる制度を導入するなどの令状不正取得を防止する制度的保障策を講じる必要があると思われますが、こうした制度の導入について、法務大臣のお考えをお聞かせください。  ちなみに、平成十年度には十八万七百四十二件の差し押さえ、捜索、検証令状の請求がなされ、そのうち却下されたのは九十三件にしかすぎません。その割合は〇・〇五%強であります。  次に、本法案では通信傍受自体のチェックも全く不十分であることについて述べます。  法案においては、傍受令状に記載された傍受すべき通信に該当するか否かを判断するために、傍受すべき通信ではない通信を傍受することが認められています。これによって、その判断をするためにということで令状に記載のない通信の傍受がなされます。そのこと自体が問題ですが、さらには、これにかこつけて捜査官がすべての通信を不正に傍受したとしても、これを防止する制度がとられていないのです。  法案では立会人の立ち会いが定められていますが、これを具体的に検討すると、乱用が防止できる措置であるとは到底考えられません。立会人が捜査官の乱用を防止する目的で立ち会おうとするなら、捜査官とともに傍受しなければならず、これに加えて、傍受の目的、すなわち、被疑事実やこれに関連する人物等をあらかじめ知っていなければ、傍受が正当であるか乱用に及んでいるかを判断することができません。本法案では、立会人は傍受をしないのですから、傍受の内容を知ることができませんし、多少の状況をうかがい知れたとしても、刑事訴訟法等の刑事手続に関する知識を持たない者である回線の管理者に被疑事実を知らせずに立ち会わせることによって乱用を防止できるとは到底考えられません。そして立会人には、傍受を中止させる権限も与えられていないばかりか、傍受の内容について質問することさえ規定されていません。  このように立会人を置くことが乱用の防止の決め手にはならないのですが、法務大臣はこの点をどう考えているのでしょうか。私の指摘した立会人に関する法案部分の説明が正しいか否かについてお答えの上で、考えを聞かせてください。  そして、立会人の制度を実効あるものとするためには、弁護士あるいは裁判所書記官等の刑事手続に関する知識を持った者に被疑事実等を知らせた上で立ち会いをさせ、捜査官とともに通信を傍受させることが必要であります。このような制度的保障を採用することについてもあわせてお答えください。  次に、本法案においては、傍受を終了した後の措置についても、傍受の乱用を防止する有効な手だてが講じられていないことについて述べます。  法案は、傍受した通信を録音等した記録について、刑事手続において使用するために当該部分を記録した傍受記録とそのほかの部分の傍受部分とで取り扱いを分け、傍受記録の部分についてのみ当事者への通知、当事者による記録の確認、当事者の不服申し立て権などの手続を定めています。  一方、傍受記録以外の傍受部分については、こうした措置がとられていません。唯一、裁判所に対し記録の確認を求めることができるとする規定がありますが、傍受されたことを知らされない人はその記録の存在自体を知らないのですから、確認を求めることは考えられず、およそ実効性が認められない規定です。法務大臣は、この規定がどのような場合を想定しているのか、具体例を挙げて説明してください。  結局のところ、試し聞きとして聞かれた通信については、当事者は何も知らされないままに終わります。また、傍受した通信を録音等した記録は封印されて裁判所に一定期間保管されます。この措置は、単に裁判所を倉庫がわりに使うだけで、裁判官がその記録を検証し傍受が正当であったかを判断するためではありません。このように傍受された当事者にも、裁判官にも、乱用を発見し得る機会が与えられておらず、捜査官による乱用を防止する手だてが全く講じられていないのです。  このように傍受記録以外の通信傍受に対する事後点検制度が採用されていないことについて、法務大臣としては何らかの措置を講ずる考えがないか、お聞かせいただきたい。  裁判所に保管する原記録について、裁判官が傍受の適正さを確認するため、検証する制度を導入することはどうでしょうか。その点の考えもお聞かせください。  乱用に及ぶ通信傍受によって入手した情報を端緒とする証拠の排除原則を導入することも乱用の防止に有効な措置と思いますが、この点については法務大臣はどうお考えでしょうか。  そして、重要なことは、乱用を点検する制度もないことが乱用を誘発することになるのです。言い方をかえるなら、傍受記録にすることを考えないのなら、捜査官は幾らでも乱用に及ぶ通信傍受を行うことができるのです。捜査官が悪意を持ったときには令状をとりさえすれば幾らでも違法な盗聴ができる構造になっているのが本法案であります。捜査官による令状の不正取得の例は、前述のとおり繰り返されており、発覚したものは氷山の一角にすぎないでしょう。  総理大臣は、捜査官による不正あるいは乱用に及ぶ通信の傍受を防止することも事後点検することもできない構造になっている本法案について、これを改める考えはないか、お聞かせください。  また、本法案は衆議院において提出された原案を一部修正したものでありますが、この修正によってもこの本質に変わりがないことを申し添えます。  次に、弁護人の秘密交通権及び報道の自由に関する取材源の秘密に対する侵害が予想されることについて述べます。  本法案では、犯罪後の被疑者の電話等及び被疑者が使用すると思われる電話等の通信傍受が認められています。一方、被疑者らは弁護人と連絡をとる可能性があります。これについて、弁護人が当該受任事件の業務として行う通信は傍受の対象から除外されておりますが、この除外事由の該当性を判断するために傍受が行われることになります。そして、弁護人と被疑者との会話を裁判上の証拠として使用することはできませんから、これが傍受記録とされることはないでしょう。そして前述のように、傍受記録を作成しない傍受については、傍受時も傍受後も何ら有効な点検制度はないのです。すなわち、捜査官がその会話を聞きたいだけ聞いて、後は素知らぬ態度をとっても、これを発見し対処する手だてがないのです。  このように、弁護人の秘密交通権が侵害される可能性が大きいのですが、これを防止する制度的保障の導入について法務大臣はどう考えているか、お答えください。  あるいは、ファクシミリ送信文書や電子メールのように試し聞きのないまま通信文が全部入手される場合はどう処理するのでしょうか。この点についてもお答えください。  そして、報道者による取材等は、法案において通信傍受の除外の対象とすらされていません。民主主義の基本理念の一角をなす報道の自由を支える取材源の秘密が守れない事態を招きます。この点についても法務大臣のお考えをお示しいただきたい。  この点に関し、本法案において、通信傍受に係る原記録を裁判所に保管し、傍受記録を除くすべての捜査官手持ちの記録を消去することになっているから通信の秘密は守られるという意見があります。しかし、そうでしょうか。  まず第一に、本法案上記録の消去を確認するための制度が採用されていません。ですから、消去が完全に行われるのかという疑問を払拭できません。消去を確認する手続を設ける必要がありますが、法務大臣はどうお考えでしょうか。  そして、そもそもの本質論として、秘密の保持というものは、記録の消去という問題ではなく秘密が聞かれてしまうか否かという問題なのであります。  通信が他人に聞かれてしまうことによって通信の秘密は侵害されており、それが録音されるか否かは重要ではありません。秘密が聞かれてしまった後、録音が消去されたとしても、聞かれてしまった秘密は傍受した捜査官の記憶に残り、あるいはメモされて残ります。聞かれてしまった秘密は聞かれていない状態に戻すことができないのです。この点についてもお答えください。  権力が違法、不当に収集した人の秘密にかかわる情報を利用して、権力を維持増大させる危険性があります。アメリカのFBI元長官のフーバーは、収集した個人情報を握って四十年余もその地位に君臨し、大統領よりも強い権力を握っていたとも言われています。このように個人情報を収集した権力者がその情報を武器として批判を封じ込めることは、民主主義に明らかに反します。  このことは、本法案に賛成する与党の皆様にとっても懸念されることではないでしょうか。与党内の権力争いに個人情報が使われることも考えなければなりませんし、成立した法律はずっと続きますが、与党の立場はすぐに変わるかもしれないのです。  この法律は、与野党を問わず、そして国会議員にとどまらず、宗教団体、労働組合、業界団体等の諸団体、そしてすべての国民にとって現実の不安として重くのしかかるものであることを強く訴え、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0006>=国務大臣(小渕恵三君)= 小川敏夫議員にお答え申し上げます。  通信の秘密を制約できる範囲に関してお尋ねがありました。  憲法第二十一条第二項に定める通信の秘密の保障も、絶対無制限ではなく、公共の福祉の制限のもとに立つものであり、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づき必要最小限の範囲でこれを制約することは許されるものと考えております。  通信傍受の乱用防止の必要性についてお尋ねがありました。  通信傍受は、犯罪捜査という公共の福祉のため、憲法が保障する通信の秘密をやむなく制約する処分でありますから、その乱用を防止することは極めて重要であると認識をいたしております。  本法案の通信傍受は、具体的な犯罪がある場合にその捜査として行うものでありまして、厳格な要件のもと、裁判所の令状に基づき厳正な手続に従って実施されることとされており、犯罪捜査以外の目的で乱用されることはあり得ないものと考えております。  捜査官による不正、乱用の防止、事後点検についてお尋ねがありました。  本法案による通信傍受は、厳格な要件のもとに、裁判官の発する令状に基づいて行われ、立会人が常時立ち会いし、傍受した通信はすべて記録され、封印の上、裁判官が保管することとされ、関係者からの不服申し立ての制度も整備しているほか、公務員による通信の秘密を侵す行為の重罰化を図るなど、所要の手当てを尽くしておると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕 <0007>=国務大臣(陣内孝雄君)= 小川議員にお答え申し上げます。  令状請求記録の写しを裁判所に保管させる制度についてのお尋ねがございました。  現在の令状請求においても、その疎明資料については、捜査機関に返却され、裁判所が写しを保管する取り扱いにはなっていないと承知いたしておりますが、裁判所が事後的にその内容等を確認する必要がある場合には、捜査機関に対し、その提出を求めることが可能であり、これによって捜査機関の不正や乱用の防止を図ることができます。この点は傍受令状の場合も同じであり、御指摘のような制度を新たに設ける必要はないと考えております。  次に、立会人による傍受の乱用防止の効果についてお尋ねでございますが、立会人は、傍受令状に記載されたとおりに傍受のための機器が正しく接続されているか、傍受の時間や方法が遵守されているか、傍受した通信がすべて記録されているかといった事柄についてチェックするなどの役割を担っており、傍受した通信はすべて記録され、立会人が封印した上で、裁判官が保管し、その内容を事後的にチェックできる仕組みを設けていることなどと相まって、乱用の防止を期することができると考えております。  次に、弁護士等を立会人として、ともに傍受を行う制度にしてはどうかとのお尋ねがございました。  弁護士等の常時立ち会いを確保することの困難性に加え、捜査に責任を負わない者に捜査内容の詳細を知らせたり通信の内容を聞かせることは、関係者のプライバシーの保護等の観点からも問題があり、お尋ねのような制度は適当でないと考えております。  次に、傍受の原記録の聴取等についてお尋ねがありました。  本法律案は、通信の当事者が傍受の原記録の聴取等を請求できることとしておりますが、これは傍受記録に記録された通信について通知を受けた通信当事者が、その傍受の実施の期間内に行った他の通信に関し原記録の聴取等を求める場合や、通知を受けなかった通信当事者が、通知を受けた通信当事者から傍受の事実を知らされ、原記録の聴取等を求める場合等を想定しております。  さらに、通信傍受の通知に関してお尋ねがありました。  傍受すべき通信の該当性判断のための傍受は、通信の一部を断片的に傍受するにとどまり、それのみの通話の記録は消去して捜査機関の手元には残さない上、通知のためにだけ犯罪と関係のない通信の当事者を特定するための捜査を行うことは不適当であり、また、これらの者に広く通知をすることはかえって、被疑者の不利益になり、適当でないと考えております。  また、裁判官が傍受の原記録を検証する制度の導入をしてはどうかとのお尋ねがありました。  通信傍受の実施の適正の確保につきましては、本法律案において十分に配慮しており、それ以上に犯罪と関係がない通信の当事者のプライバシーである通信の内容のすべてに触れるような検証制度を導入することは適当でないと考えております。  さらに、違法な通信傍受によって得られた証拠の排除についてお尋ねですが、証拠収集の手続において令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に、その証拠能力を否定する違法収集証拠の排除原則は、通信傍受によって得られた証拠に関しても当然に適用されるものであります。  被疑者と弁護士との通信の傍受についてお尋ねがありました。  本法律案では、弁護士との間の通信がその業務に関するものと認められるときは、その傍受が禁止され、捜査官が故意に傍受を継続しようとする場合には通信の秘密を侵す罪が成立し、  また、その監督者を含めて懲戒処分の対象となります。また、傍受した通信はすべて記録され、立会人が封印した上で裁判官が保管し、その内容を事後的にチェックできる仕組みを設けていることから、捜査官が違法に被疑者と弁護人との間の通信を傍受することはないと考えております。  弁護人との間のファクシミリや電子メールによる通信についてお尋ねがありました。  ファクシミリによる通信や電子メールであっても、あらかじめ弁護人との間の通信であることが判明しているものについては傍受はできません。その他のものについては、当該通信に係る信号全体を一たん傍受した上で、これを紙に印字するなり画面表示するなどすることによりまして、その段階で弁護人との間の通信であることが判明すれば直ちに印字等を中止するなどの措置をとることとなっております。  報道関係者の通信の傍受についてもお尋ねがありました。  報道関係者については、刑事訴訟法においても押収、証言の拒絶は認められていないところであり、本法律案はこれに倣ったものでありますが、本法律案による通信傍受の厳格な要件、手続のもとにおいては、報道機関が使用する通信手段について傍受が行われることは想定しがたく、報道の自由が制限されることはないと考えております。  傍受記録に残された部分以外の通信の記録の消去の確認についてお尋ねがありました。  本法律案において、傍受記録を作成した場合には、傍受の原記録を除き、傍受記録に残された記録以外はすべて消去しなければならないとしているところであり、これを怠った場合には監督者を含めて懲戒処分の対象となるものであることから、その確実な履行が期待でき、さらにこれを確認する手続を設けるまでの必要はないと考えております。  メモ等の禁止についてお尋ねがありました。  本法律案は、刑事手続において使用するために傍受記録に残される通信以外の通信の記録については、これが捜査機関の手元に残り利用されることがないよう、それがメモであってもすべて消去しなければならないものとするとともに、捜査官がその内容を使用することなども禁じております。捜査官がこれらの規定に違反した場合には、その監督者を含めて懲戒処分の対象となるものであり、さらに通信の内容を漏えいするなどした場合には、通信の秘密を侵す罪が成立することになります。したがって、メモ等自体を禁止する規定を置くまでの必要はないと考えております。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0008>=国務大臣(野田毅君)= 傍受令状の請求の具体的な手続等についてのお尋ねがございました。  通信傍受制度については、基本的人権に深くかかわるものであることを十分認識いたしておりまして、その適正な運用を徹底していくことが極めて重要と考えております。  このため、この法案が成立した場合には、法に定められた厳格な要件と手続について都道府県警察に周知徹底を図っていくほか、国家公安委員会規則によりまして、傍受令状の請求に当たり警察本部長の決裁を要する旨など、慎重な運用のための規定を整備してまいりたいと考えております。(拍手)     ───────────── <0009>=議長(斎藤十朗君)= 緒方靖夫君。    〔緒方靖夫君登壇、拍手〕 <0010>=緒方靖夫君= 私は、日本共産党を代表して、組織的犯罪処罰等三法案、特にいわゆる盗聴法案について質問いたします。  最初に、私は、衆議院における自民、自由、公明三党による強行採決の暴挙に対し、強い抗議を表明するものであります。新聞各紙にも、盗聴に対する国民の不安を除くのは国会の大切な使命である、衆議院での審議ではそれが果たされたとは到底思えないなど、拙速ぶりを批判しているのは当然であります。このような審議不十分のままの強行採決を総理は是認されるのかどうか、見解を問うものであります。  結社の自由、言論の自由を保障する我が国の憲法第二十一条は、その第二項で「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と明記しております。これは、電話などによる通信が、国家権力はもちろん、何人によっても侵されてはならないことを、民主社会における市民的、政治的自由を保障し、健全な人間関係を守る不可侵の原則として特に明らかにしたものであります。  すなわち、社会が自由で民主的であるためには、人と人との自由なコミュニケーションが不可欠であります。こうして憲法第二十一条をかたく守り尊重することの意義は、今日、近代民主社会においてますます重要になっていると考えますが、総理の認識を伺うものであります。  次に、盗聴できる対象を麻薬、銃器など四種の犯罪に絞ること等の修正案も、政府原案の憲法違反の本質を変えるものではありません。もともと原案は、予備的盗聴、事前盗聴、別件盗聴を認めており、事実上無限定な通信が対象となる基本的性格は変わらないものであります。これが実施されれば、犯罪と無関係な市民の会話、通信が大量に盗聴捜査の中に含まれる危険は極めて大きく、人権侵害と警察による監視社会への道を開くおそれがあると言わなければなりません。  だからこそ、警察による私の自宅への電話盗聴事件に対する東京高裁判決は、「憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を初め、プライバシーの権利、政治的活動の自由等が、警察官による電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大である」と断罪したのであります。国民の基本的権利を侵害するこのような捜査権力による盗聴という行為を、事もあろうに法律で合法化するなどということは、まさに権力犯罪の自由化に道を開くものであり、第二十一条を初め刑事手続における人権保障を定めた憲法の諸条項に違反することは明白ではありませんか。総理の見解を伺いたいのであります。  政府は、G8の中で盗聴法がないのは日本だけと言っておりますが、日本のように電話などの通信の秘密を明白に不可侵の権利と宣言している憲法を持っている国は日本以外にありますか。総理、はっきり答えてください。  また、盗聴を実行する部隊である警察の体質も厳しく問われなければなりません。  十三年前、警察が不当にも私の自宅の電話盗聴を行っている事実が発覚いたしました。この事件は、神奈川県警の五名の警察官が近くのアジトに私の家の電話線を切断して引き込み、当時、日本共産党の国際部長であった私の職務上の電話を盗み聞きするために仕掛けたもので、東京高裁判決は、アジトに残されたカセットケースの日付から、少なくとも九カ月間は盗聴したと認定しております。この電話盗聴によって、党と私の政治活動の自由が侵害されただけではなく、私の家族と私の人権のみならず、電話で話をした相手の方々のプライバシーも深く傷つけられました。  総理、こうした憲法違反の電話盗聴が公権力により実行されたことの重大性をどのように認識されているのか、しかとお答えいただきたい。  東京地裁の判決は、少なくとも警察庁の警備局長、公安一課長ないし神奈川県警の本部長、警備部長において具体的内容を知り得る立場にあったとして、警察の組織的、計画的な行為であることをはっきりと認めております。  さらに、下稲葉法務大臣は、昨年三月十一日、衆議院法務委員会でこの事件の認識を問われ、「神奈川県警の警備部の警察官による共産党の方に対する盗聴事件」と答弁しております。陣内法務大臣はどのような認識か、お尋ねいたします。  ところが、事件発覚当時の山田長官から現在の関口長官まで歴代の警察庁長官は、私の質問にも同僚議員の質問にも、警察は過去も現在も電話盗聴をしていないと全面否定の答弁を繰り返しております。それでいながら、警察の組織的、計画的な行為を認定した東京高裁の判決に対しては、上告する理由がないと受け入れました。このようにみずから上告を断念しながら、確定判決に従わず、なおも警察庁長官が盗聴事件への警察官の関与を否定し続けるという道理に反することを国家公安委員長は是とされるのですか。明確な答弁を求めるものです。  総理、警察庁長官がとっているこの対応は、みずからの誤りを絶対に認めず、国会でも法廷でも平然と虚偽を述べ、憲法違反の重大犯罪にも全くの無反省という警察の体質を如実に示すものと言うほかありません。このような警察の体質は、大きな社会的不信感をつくり出し、このような警察が通信傍受を実行したら歯どめがかからなくなるのではないかという不安が表明されているのは当然ではありませんか。  警察が、これほど明白な組織的盗聴の事実を、そしてその責任をいまだ認めようとしない態度をとり続けていることは、本法案審議の根本的前提すら欠いていると言わざるを得ないではありませんか。  しかも、この事件について、日本政府への国際的な批判も高まりました。私は、数度にわたり国連人権委員会のジュネーブ会議で発言し、警察、日本政府の対応を報告してまいりました。その際、各国人権委員の方々から、市民が盗聴すれば罰せられる、警察官が盗聴しても罰せられない、それでも日本は法治国家なのかという厳しい批判が行われました。総理、国連の場で出されているこうした批判にどうこたえられるのか、この際、日本政府の姿勢を明確にしていただきたい。  次に、裁判官による令状が人権侵害をチェックできるかという問題であります。  修正案では、令状請求者を指定された検事と警視以上の警察官に限定しましたが、人権侵害を引き起こす危険な本質は何ら変わりありません。また、令状発行者を地裁の裁判官としても、捜索・押収令状の地裁における現在の却下率が〇・一一%であり、また、盗聴先進国と言われるアメリカでも、そのうち八三%が犯罪と無関係であったという状況のもとで、人権侵害をチェックできるはずはないではありませんか。総理の答弁を求めます。  さらに、立会人には、令状が示されるだけで、被疑事実も、何のための盗聴かも知らされないし、盗聴内容を聴取することもできません。捜査と無関係な通信傍受の切断権もないのであります。このような状態では、立会人に意見を述べる機会を与えても、それは全く役に立たず、人権侵害を防止できないことは明白ではありませんか。総理の答弁を求めます。  最後に、盗聴の事後通知が犯罪関係者だけに行われ、それ以外の関係者の人権侵害救済の道がない問題であります。  法案では、盗聴終了後三十日以内に当事者に書面で通知することになっていますが、それは傍受した通信の中に被疑事実が含まれ、刑事手続として傍受記録が作成される場合に限定されており、犯罪と関係ないにもかかわらず盗聴された国民には事後通知がされないことになっております。これでは、国民は公権力により人権侵害のされっ放しになるではありませんか。なぜ通知しないのですか。このような重大な国民の人権侵害を引き起こすおそれを総理は容認されるのですか。総理に明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0011>=国務大臣(小渕恵三君)= 緒方靖夫議員にお答え申し上げます。  衆議院における組織的犯罪対策三法案の審議についてであります。  国会での御審議について意見を申し述べることは差し控えますが、これらの三法案は、組織的な犯罪をめぐる国内外の情勢にかんがみ、この種の犯罪に適切に対処するために必要不可欠な法整備として重要かつ緊急の課題でありますので、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたいと考えております。  憲法第二十一条の意義についてお尋ねがありましたが、同条第二項の保障する通信の秘密は、個人の私生活上の自由やプライバシーの保護の一環としての意義を有するものであり、十分に尊重されなければならないものであります。しかし、通信の秘密の保障も絶対的なものではなく、犯罪捜査のために必要やむを得ない限度において、しかも厳格な手続の定めのもとで制約を受けることは憲法の認めているところであると考えます。  通信傍受法案の合憲性についてお尋ねがありましたが、同法案においては、傍受の要件を厳格に定めるなどすることにより、憲法の保障する通信の秘密や国民の私生活上の自由の制約を、必要やむを得ない範囲に限定している上、憲法が定める適正手続の要請や令状主義の趣旨をも満たしており、憲法に反するものではないと考えております。  諸外国の憲法についてのお尋ねがありました。  例えば、主要国首脳会議に参加する国のうち、ドイツ、イタリア、ロシア、カナダにおいて、我が国と同様、憲法上、通信の秘密が保障されております。  なお、こうした国においても、憲法の保障する通信の秘密は、絶対無制限のものではなく、必要最小限の範囲でその制約が許されているものと承知をいたしております。  いわゆる日本共産党幹部宅盗聴事件についてのお尋ねでありますが、警察におきまして、この事件についての民事訴訟の結果等を厳粛に受けとめ、適正な職務執行に努めているところであると承知をいたしております。  本法案審議の前提についてお尋ねでありましたが、警察におきまして、いわゆる日本共産党幹部宅盗聴事件についての民事訴訟の結果等を厳粛に受けとめ、適正な職務執行に努めているところであると承知をいたしており、警察が行う通信傍受に歯どめがかからなくなるということはないと確信をいたしております。  国連の場で出されている批判にどうこたえるのかとお尋ねでありますが、規約人権委員会等におきまして、政府としては必要な説明を行っておると承知をいたしております。  令状請求権者の限定についてのお尋ねがありました。  通信傍受という捜査手段を用いることについての判断には特に慎重を期すべきであるとの観点から、傍受令状の請求権者をより高い立場からの判断ができる地位にある者に限定したものであり、検察、警察は、それぞれ慎重かつ適正な判断のもとに法律の要件、手続に従って通信傍受による捜査を行うものと考えております。  裁判官の令状審査についてのお尋ねがありましたが、令状の却下率が低いのは、捜査機関内部におきましても令状請求に当たりまして慎重な検討を行っていること等によるものであり、裁判官は、関係資料を精査し、法律に定める要件について慎重かつ厳正な令状審査を行っているものと認識をいたしており、御指摘のようなことはないと考えております。  立会人の役割についてのお尋ねがありました。  立会人は、通信傍受の実施状況を確認し、記録の封印を行い、傍受の実施に関し意見を述べるなどの役割を担うものであり、傍受した通信はすべて記録され、封印の上、裁判官が保管するなどの手続と相まって、通信の傍受が適正に実施されることを担保することができるものであります。  通知の対象となる通信当事者の範囲についてのお尋ねがありました。  該当性判断のため必要最小限度の傍受を行ったにすぎない場合には、傍受記録からその通話の記録は消去して捜査機関の手元に残さないことといたしており、このような犯罪に関係のない通信の当事者にまで通知をすることはむしろ弊害が大きいことなどから、通知を行わないことといたしております。  以上、お答え申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕 <0012>=国務大臣(陣内孝雄君)= 緒方議員にお答えを申し上げます。  昭和六十一年当時、日本共産党国際部長であった緒方議員宅の電話盗聴に係る事件に関する、昨年三月十一日の衆議院法務委員会における当時の下稲葉法務大臣の答弁についてのお尋ねでございますが、この事件については、東京地方検察庁において、神奈川県警察に所属する警察官二名が緒方議員宅の電話の通信内容を盗聴しようとしたとの電気通信事業法違反の事実を認定した上で、諸般の事情を考慮した上、起訴猶予処分としたものと承知しており、当時の下稲葉法務大臣においてもその旨の認識を示したものと考えております。  なお、当時の下稲葉法務大臣は、同じ答弁の中で、お尋ねの事件で行われた行為と現在国会に御審議をお願いしている通信の傍受とは全く別個の次元の話である旨を述べておりますが、この点につきましては私も同様の認識でございます。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0013>=国務大臣(野田毅君)= いわゆる日本共産党幹部宅事件についてのお尋ねでありますが、この事件については、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において警察官による盗聴行為があったと認められたこと、また、その後の民事訴訟においても同様の行為があったことが推認されたことは、警察としても厳粛に受けとめておりまして、まことに残念なことであったと考えております。  警察としては、本件の反省を踏まえ、国民の信頼を裏切ることのないよう、厳しく戒めているものと承知をいたしておりまして、今後とも違法な盗聴などという行為を行うことはあり得ないと確信をいたしております。(拍手)     ───────────── <0014>=議長(斎藤十朗君)= 福島瑞穂君。    〔福島瑞穂君登壇、拍手〕 <0015>=福島瑞穂君= 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、盗聴法、組織的犯罪対策法案について、以下のとおり質問いたします。  緒方盗聴事件は、裁判所によって警察の組織的関与が認定されました。しかし、たび重なる国会質問の中で、警察の責任を警察は否定しています。このような警察の反省のない態度こそが、盗聴制度導入に対する国民の懸念の根源なのです。  総理、緒方盗聴事件は警察の行為であったと認めますか。  参議院での法案審議に入る前提は、警察による過去の違法盗聴に関する謝罪と責任者の処分、違法盗聴の全貌の解明が約束されることです。市民のプライバシーを左右する重大な権限を捜査機関に与えるのですから、このような市民の要求は当然のものです。このような前提が満たされない限り、法案の審議開始を認めることはできません。  総理、警察による過去の違法盗聴に関する謝罪と責任者の処分、違法盗聴の全貌の解明を約束してください。  裏金づくり、接待汚職など、数々の不祥事を起こしていると言われている警察は、何よりも国民の信頼を得るための努力こそ必要なのではないでしょうか。総理の見解を伺います。  憲法二十一条は、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と、何の留保もなく高らかにうたっています。盗聴捜査がこの日本で治安維持のために本当に必要とされるものなのでしょうか。  松本サリン事件で、不幸なことに、警察は事件の被害者である男性を容疑者として扱いました。盗聴捜査が導入されていれば、この男性の電話が二十四時間聞かれていたでしょう。仮にそれができていたとしても、何らサリンに関する証拠は盗聴できず、やがて地下鉄サリン事件が発生したはずです。松本サリンがオウムの犯行ではないかと突きとめられたのは、結局、地道に目撃者を探し出し、聞き込みを重ねた捜査の王道があったからで、決して盗聴があったからではありません。  私が非常に重要だと思うのは、法案が犯罪を犯すおそれがあるという理由で盗聴できるという事前盗聴の規定を認めていることです。  刑事法では、ある人がそれを行ったかどうかの立証が問題となります。人は、どんなにけしからぬことを考えていても、ふらちなことを考えていても、それだけでは決して逮捕されてはいけないのです。しかし、この法案は、犯罪を行うおそれがあるときに盗聴できるという予防捜索を認めています。証拠物の捜索・押収は事件が発生した後にしか認められていないのに、新たに導入される盗聴捜査でまだ発生もしていない犯罪のための強制捜査を認めるのは行き過ぎではないでしょうか。刑事法を百八十度変えてしまうものです。  さらに、法案は、予備盗聴、別件盗聴も認めています。盗聴がされたことが通知がなされるのは、傍受記録から犯罪と無関係な通話を削除して作成する刑事事件用記録の当事者だけです。つまり、捜査や公判廷で証拠とされるもの以外の通話、通信については、令状を発付された当の本人にも、その本人と通話した犯罪と無関係の人々にも通知が行きません。プライバシーが明確に侵されても、盗聴されたという事実すら一生わからないのです。ほとんどの人は全く知らされないまま合法的に進んでいきます。ですから、犯罪と無関係な通話の当事者には通知はなされず、不服申し立てをすることも不可能です。  総理、強制処分を受けても本人には一生わからないということを憲法・刑事訴訟法上認めることはできないのではないですか。  ところで、先日、あるテレビ番組の中である自民党の国会議員さんが、盗聴捜査を受けた人全員に通知が行くということを主張されました。総理、これはこれまでの政府答弁とは異なるものです。責任がある立場にいる方の発言ですから、当事者全員に通知が行くと修正されるおつもりですか。  また、法案では、犯罪と無関係な通話は消去することとされています。しかし、消去したかどうかを担保する制度はないではないのですか。  立会人が常時立ち会うと言いますが、立会人は事件の内容も知らされませんし、通信の内容を聞くことも認められません。つまり、犯罪と無関係な通信を盗聴対象から除外する切断権は認められていません。したがって、この立会人制度は人権侵害に対する歯どめにはならないのではないでしょうか。どうやってチェックできるのですか。  現在においても検証令状をとれば盗聴はできます。なぜ検証令状ではだめなのですか。  しかも、下級審判例で認められた範囲、立会人の切断権、時間は二日間程度などを大きく逸脱する立法になっています。判例が有効のための要件としたことをなぜ今回の立法は全く満たしていないのですか。  オーストリアとドイツの盗聴捜査ではジャーナリストは盗聴法の適用除外となっていますが、今回の立法では日本はそうなっていません。なぜですか。  ファクス、メールも盗聴法の対象です。警察は、プロバイダーのところに行ってパスワードをよこすよう要求することになってしまいます。インターネットへの熱は一気に冷めてしまうのではないでしょうか。  技術の進歩により、警察のパソコンから、つまりNTTの外部からNTT内部に設置されたコンピューターにNTTに要求して得たパスワードでアクセスすれば、NTTのすべての電話システムの盗聴が可能となることがわかりました。捜査に当たる警察官が移動しながら盗聴することも可能です。  これまでの法案審議では、このような方式で盗聴が可能であるという前提では法案審議は行われてきませんでした。改めて法案の該当条項を見ますと、こうした新しい方法での盗聴も否定されてはおりません。  また、立会人については、法案十二条で「通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者又はこれに代わるべき者」が立ち会うとされており、この表現から、立会人はその警察の建物を管理する警察の総務課員でもよいという解釈が成り立ちます。こういった新しい通信方式による盗聴を法案が否定しているとは法文上からも読み取れませんし、こうした通信方法を前提とした法案審議は一切なされていません。  このような新たな通信傍受の方法が明らかになった以上、参議院の審議では、まず技術の詳細をNTTに明らかにさせるところから徹底的な審議を尽くす必要があります。  盗聴の被害を受けるのに与党も野党もありません。盗聴捜査の経過でたまたま知り得た政界、財界の中枢に関するスキャンダルや情報が意図的に悪用されることは絶対にあってはなりません。民主主義が崩壊してしまいます。そのための手だてをどう考えるのですか。  マネーロンダリングについてですが、金融機関は疑わしき取引については金融監督庁に届け出ることになっております。アメリカでは、ことし、財界が自由な経済取引を害するとして反対し、こうした立法は成立しませんでした。日本においても弊害が出るのではないでしょうか。  また、麻薬についてのマネーロンダリング規制については、既に麻薬特例法がありますが、この法律で十分ではないのですか。  犯罪収益収受罪ですが、政治家が献金をもらって、その中に犯罪で得た金員が仮にまざっていますと、犯罪収益収受罪が成立する可能性があります。  総理、市民のプライバシーを著しく侵害するこのような法案をなぜ今、国会で成立させようとするのでしょうか。多くの市民の不安と懸念の声にこたえて、これらの法案の今国会成立を断念するおつもりはないのでしょうか。  以上で質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0016>=国務大臣(小渕恵三君)= 福島瑞穂議員にお答え申し上げます。  いわゆる共産党幹部宅電話盗聴事件についてのお尋ねでありました。  警察におきましては、過去の判例において警察官による盗聴行為があったと推認されたことなど、厳粛に受けとめているところであると承知をいたしております。また、警察におきまして既に関係者の処分等必要な措置が講ぜられており、その後二度とこのような事態が生じないよう適正な職務執行に努めているところであり、今後とも国民の信頼を裏切ることのないものと確信をいたしております。  警察官の不祥事について御指摘がありましたが、厳正な規律は警察の生命であると認識いたしております。いやしくも国民から誤解を招くことのないよう警察庁及び都道府県警察において必要な指導をしていると承知をいたしております。  通信傍受制度の必要性についてのお尋ねがありましたが、近年、我が国では、薬物・銃器関連犯罪、組織的な殺人、集団密航事件が少なからず発生し、憂慮すべき状況にあります。これら犯罪は、その実行が密行的に行われ、証拠隠滅工作等が行われることが少なくなく、これら犯罪の事案の真相を解明して首謀者等を検挙し、国民の平穏な生活を確保し、法秩序を維持するためには、従来の捜査手法に加えて通信の傍受という新たな捜査手段がぜひとも必要であると考えております。  傍受令状により傍受ができる通信の範囲についてお尋ねがありました。  本法案による通信の傍受は、既に犯罪が行われていることについて十分な嫌疑があることを前提として、厳格な要件のもと裁判官の発する令状に基づき必要最小限の範囲において適正かつ厳格な手続に従って行うものであり、その範囲が広過ぎるという問題はないと考えております。  通信当事者に対する通知についてお尋ねがありました。  傍受すべき通信に該当するか否かを判断するために必要最小限度で傍受を行ったにすぎず、傍受記録の作成にも至らなかった通信の当事者に通知を行わないのは、その記録が消去されるなど、通信の秘密を制約する程度が極めて小さく、また通知を行うことの弊害が大きいこと等によるものであり、これが憲法等に抵触することはなく、また適当なものと考えます。  記録の消去について、お尋ねがありました。  本法案において傍受記録を作成した場合には、傍受の原記録を除き、傍受記録に残された記録以外はすべて消去しなければならないといたしておるところであり、これを怠った場合には監督者も含めて懲戒処分の対象となるものであることから、その確実な履行が期待できるものと考えております。  立会人の制度についてお尋ねがありました。  立会人は傍受令状に記載されている事項が遵守されているか等をチェックする役割を担っており、通信傍受の適正は十分に確保できるものと考えております。  弁護士等の立ち会いについては、常時立ち会いを確保することの困難性に加え、捜査内容の詳細を知らせたり、通信の内容を聞かせること自体、関係者のプライバシーの観点等からも問題があると考えられます。  通信傍受制度の必要性についてお尋ねがありました。  検証許可状による傍受は、主として覚せい剤の密売用の電話について傍受が許されるもので、首謀者の特定や大規模な密輸等の犯罪の捜査については効果を上げることが困難であり、また立ち会い、記録の作成、保管等、関係者の権利保護等に関する規定がなく、これらの規定の整備を図るため本制度を設ける必要があるものと考えられます。  報道関係者の通信の傍受等についてお尋ねがありましたが、報道関係者につきましては、刑事訴訟法上、押収、証言の拒絶が認められていないことに倣ったものであり、電子メール等の傍受につきましても電話と同様に厳格な要件、手続に従って行われるものであり、御懸念は当たらないと考えます。  次に、通信傍受の実施場所、方法及び立会人についてお尋ねがありました。  通信傍受の場所、方法は令状の記載事項であり、裁判官が適当と認めて令状に記載した場所において通信手段の傍受を実施する部分を管理する者等の立ち会いのもとに行われることとされており、傍受自体を警察施設内において行い、また警察官が立会人となることは想定されておりません。  警察が通信傍受により得た情報を恣意的に使用するのではないかとのお尋ねでありますが、本法案による通信傍受は、具体的な犯罪がある場合に、厳格な要件、手続のもとで裁判官の発する令状に基づきその犯罪を捜査するために実施するものであり、いわゆる情報収集の手段としてこれを行うことはあり得ず、御懸念は当たらないと考えます。  次に、犯罪収益規制に関する法整備についてお尋ねがありました。  これは、犯罪収益等の保持、運用が合法的な経済活動に重大な悪影響を与えること等にかんがみこれを規制するものであり、その前提犯罪の範囲を薬物犯罪以外の重大犯罪に拡大することなどが国際的な要請にこたえるものであります。  犯罪収益等収受罪の成否に関してお尋ねがありましたが、この罪が成立するためには、収受した財産が客観的に犯罪収益等に当たるだけではなくて、それが犯罪収益等であることの情を知っていることが必要であり、単に犯罪収益等であるかもしれないという一般的、抽象的な危惧、懸念を抱いているだけでは足りません。この罪の成立範囲が不当に広がることにはならないものと考えております。  最後に、組織的犯罪対策三法案の必要性に関してお尋ねがありました。  この三法案は、組織的な犯罪に適切に対処することにより、国民の平穏かつ安全な生活を確保し、法秩序を維持するために必要不可欠な法整備を図るものであり、人権を不当に侵害することのないよう十分な配慮をしておりますので、この点を御理解いただき、できる限り早期に実現をさせていただきたいと考えております。  以上、御答弁申し上げます。(拍手)     ───────────── <0017>=議長(斎藤十朗君)= 水野誠一君。    〔水野誠一君登壇、拍手〕 <0018>=水野誠一君= 私は、参議院の会の代表として、ただいま議題となっております組織的犯罪対策関連三法案に関して、小渕総理並びに関係大臣に質問をいたします。  これまでも重ねて指摘のあるとおり、この三法案の中でも最も世間の関心を集めているのがいわゆる通信傍受法案であります。この法案の本質は憲法が保障する通信の秘密と公共の福祉や安全とのバランスをいかに適正に図るかという極めて重大な点にあり、こうした重要法案が衆議院では十分に論議されないまま可決され、参議院に送付されるに至ったことを大変遺憾に思います。  法務省によると、我が国における組織的犯罪は増加の一途をたどっており、これ以上一刻も放置することはできない、また、我が国の法制度に大きな欠陥があることを国際的に指摘されていることなどが今回の法改正の理由だと説明しています。  しかし、この通信傍受法案に関しては、国民の基本的人権にかかわる極めてデリケートな問題を多くの点で含んでいるものと考えます。にもかかわらず、衆議院法務委員会においては、大半の委員が欠席する中で沈黙のまま何時間もの質疑時間が経過し、そのまま採決に及ぶという、まさに異常事態とも言える光景を国民に見せつけることになりました。こうした秩序を欠いた法案審議のあり方が、立法府の歴史においてあしき先例となるばかりか、国民生活の将来に重大な禍根を残す結果を招きかねないということを強く懸念しています。  さらに、この法案の審議に当たり、万が一にも良識の府である参議院においても同様のことが起これば、これはまさに立法府の機能不全をみずから露呈するものであり、真摯な議論を望む国民からの信頼を政治が取り戻すことがますます難しくなるであろうことを肝に銘じるべきだと思います。  そのためにも、拙速に結論を急がず、十分な審議を尽くすべきだと思いますが、まず小渕総理に、衆議院審議の経緯についての所見と、参議院で審議に入るに当たっての新たな覚悟と姿勢を伺いたいと思います。  次に、近年の国内犯罪においては、その凶悪化、巧妙化といった著しい質の変化が進行しており、国民生活の安全を確保する観点から、捜査機関にも時代に対応した能力の向上が求められていることは確かだと言えましょう。  しかし、捜査手法としての通信傍受はまさに一種の劇薬であることも事実であります。その効果のみを期待して安易に導入を図るのは危険な発想であり、また、通信傍受が必須であると言わなければならないほど現在の我が国の捜査機関の能力が他国に比して劣っているとも思えません。  まず、本法案においては、捜査官は令状記載容疑と無関係な会話を聞くことは原則できないとされ、傍受の中断を義務づけるとされています。一方で、傍受すべき通信に当たるかどうかを判断するための傍受、いわゆる該当性判断のための傍受や、傍受実施中に令状記載容疑以外の犯罪で本法案に定める対象犯罪の実行を内容とする通信が行われたとき、いわゆる別件傍受は、これは許されるとしています。  しかし、会話というものの性質上、現場における実際の判断は極めて困難ではないかと予想されます。この点について政府からは、当該事件の担当捜査官が傍受するので内容はすぐに識別できる、内容によって中断・再開を繰り返すことになるので、不当にプライバシーを侵すことはないなどの説明がなされています。  しかし、この説明が十分な説得力を持つものとは言いがたく、また、情報収集のための通信傍受に本法案が拡大運用されるのではないかという懸念も、結局はこの捜査官の裁量部分に関する不信感に起因するものであると考えます。  重ねて申し上げますが、通信傍受はまさに劇薬であります。これを扱う捜査機関に対し、国民からこれほどまでに不信の声が上がっている今日の現状はまさに憂慮すべき事態であり、国民生活の安全確保という重責が十分に果たされ得ると実感するには、この不信感が大きな障害になっていることも事実であります。  警察による違法傍受だと既に司法の判断が出ている過去の事件を考えるにつけても、今日の捜査機関に対する不信感の高まりについて、またその信頼回復のためには、行政の長として責任ある対応をすべきだと思いますが、総理並びに国家公安委員長の御所見を伺いたいと思います。  次に、電子メールなどのコンピューター通信について伺います。  電子メールなどの通信形態は、電話やファクシミリとは多くの点で異なる性質を持つものであります。複数の当事者による通信内容が同時・非同時に混在すること、数秒のうちに送受信される情報量の多さ、あるいは発信元の隠ぺいや匿名でのやりとりなどの特性にかんがみると、本法案において電話と全く同様に傍受対象とされることにいささか違和感を覚えます。  電子メールなどの通信においては、多くの場合、ホストコンピューターなどに一時的に情報を蓄積する技術が用いられています。これを傍受する際、傍受すべき通信とすべきでない通信を適切に判断し、傍受すべきでない通信について排除することが果たして可能なのだろうか、あるいは重要な論点となっている傍受の最小化のための措置が適切に図られるのだろうかなどの疑問が当然生じますが、これは電話の傍受における場合以上に困難であることが懸念されます。  さらに、手続が適正であるか否かを外形的な面につき監視するとされている立会人の知見の問題や、通信事業者の規模や設備も電話に比べてまだ未成熟であることから一般利用者に対するサービスに支障を生ずる可能性など、議論を尽くすべき問題は依然多く残されています。  法制審議会においてコンピューター通信を対象から外す提案があったにもかかわらず、これが本法案に盛り込まれている理由としては、既に広く普及した情報手段であること、犯罪組織が既にこれを用いている現状などが示されております。  しかし、そうであれば、なお実際の傍受の機会は少なくないものと予想され、現実的かつ慎重な審議を尽くすべきものと考えますが、法務大臣の御所見を伺いたいと思います。  最後に、現在、我が国においては、電気通信事業法、有線電気通信法に規定する以外に通信の秘密を侵す行為一般を処罰する法律が存在していないということを指摘したいと思います。  法制審議会の議論においても、委員からこれを整備する必要性についての指摘があったところ、なぜか、現行の電気通信事業法、有線電気通信法に厳密な規定をした上で通信の秘密の侵害罪を規定しているが、一般的な処罰規定を設けるとなると、それらの枠組みを一たん崩さねばならず、それによって通信の秘密の範囲が不明確になりかねないなどとして、これを今後の課題として先送りした経緯があります。  また、いわゆる盗聴器という商品が安価に大量に市販されていることが悪質な犯罪行為である盗聴を助長している事実も見逃してはならないと考えます。  スポットモニタリング、いわゆる傍受の最小化はアメリカの通信傍受の手法を参考にしたものであるなどの指摘が繰り返しなされておりますが、もしアメリカを参考にするというのであれば、むしろ、まず一般的に通信傍受を禁止し、傍受機器の製造や利用を禁止し、違反行為を厳しい処罰の対象とし、その上で、一定の要件を満たした場合に裁判官の許可を得て犯罪捜査のための通信傍受を認めた体系であるというアメリカの通信傍受に関する概念こそを参考にすべきだと考えます。  そこで、盗聴器の製造、販売の禁止、また通信傍受の一般的禁止、厳しい処罰規定のための具体的な法整備を進めることが急務であると考えますが、この点について法務大臣の御所見を伺います。  最後に、マネーロンダリング、証人保護に関する他の二案件についても、この通信傍受法案の影にかすむことなくしっかりとした審議がされることを切に希望して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕 <0019>=国務大臣(小渕恵三君)= 水野誠一議員にお答え申し上げます。  衆議院における組織的犯罪対策三法案の審議についてお尋ねがございました。  国会での御審議につきまして意見を申し述べることを差し控えさせていただきたいと思います。  これらの三法案は、組織的な犯罪をめぐる国内外の情勢にかんがみ、この種の犯罪に適切に対処するために必要不可欠な法整備として重要かつ緊急の課題でありますので、改めてできる限り早期にこの法整備を実現させていただきたいと考えております。  国民の信頼にこたえるための措置についてのお尋ねがございました。  警察におきまして、過去の判決において警察官による盗聴行為があったことが推認されたこと等を厳粛に受けとめていると承知をいたしており、警察におきまして、国民の信頼にこたえるべく、通信傍受法案の厳格な要件と手続を厳守した適正な運用がなされることが国民の信頼にこたえるゆえんだと考えております。  以上、お答え申し上げ、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕 <0020>=国務大臣(陣内孝雄君)= 水野議員にお答え申し上げます。  電子メールの傍受の問題点についてお尋ねがございました。  電子メールの傍受は、受信者のID番号を特定し、通信事業者であるプロバイダーが提供する受信者のメールサーバーにアクセスして、傍受すべき通信が行われるか否かを継続的に見張り、メール等が受信された場合、これを開いて傍受する方法を想定しておりますが、その運用に当たっては、必要最小限の傍受を厳格に行うとともに、通信事業者の業務への影響等にも配慮して実施すべきものと考えております。  また、通信の秘密を侵す行為一般の処罰規定等に関してお尋ねがございました。  現在、既に電気通信事業法等において通信の秘密の侵害に関する罰則規定が設けられている上、衆議院において修正された本法律案により、これらの法定刑を引き上げるとともに、捜査または調査の権限を有する公務員がその職務に関し電気通信事業法等に定める通信の秘密を侵す罪を犯した場合の加重処罰規定を設けることとされております。  いわゆる盗聴器の規制につきましては、衆議院法務委員会における附帯決議においても指摘されているところであり、今後とも関係当局と協議しつつ検討してまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕 <0021>=国務大臣(野田毅君)= 警察に対する国民の信頼にこたえるための行政の長としての対応についてのお尋ねがありました。  過去の判決におきまして、警察官による盗聴行為があったことが推認されたことなどは、警察としても厳粛に受けとめており、まことに残念なことであったと考えております。警察としては、本件の反省を踏まえ、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めているものと承知をいたしております。  通信傍受法案につきましては、基本的人権に深くかかわるものであるだけに、誤りのない運用を行い、国民の信頼にこたえていくことが警察に課せられた使命であると認識をいたしております。  したがいまして、その運用の基準や留意事項を国家公安委員会規則等で定めるとともに、法の厳格な運用と手続について、都道府県警察に対する指導教養を徹底してまいりたいと考えております。(拍手) <0022>=議長(斎藤十朗君)= これにて質疑は終了いたしました。      ─────・───── <0023>=議長(斎藤十朗君)= 日程第一 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の締結について承認を求めるの件  日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件   (いずれも衆議院送付)  以上両件を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外交・防衛委員長河本英典君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔河本英典君登壇、拍手〕 <0024>=河本英典君= ただいま議題となりました条約二件につきまして、外交・防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  まず、拷問等禁止条約は、公務員等による拷問を防止するため、各締約国がこれを刑法上の犯罪とし、裁判権を設定すること等について定めるものであります。  次に、韓国との租税条約は、現行条約にかわるものでありまして、一定の投資所得に対する源泉地国の限度税率の引き下げなど、最近の租税条約の改善された規定を取り入れるものであります。  委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終え、討論に入りましたところ、日本共産党の小泉理事より韓国との租税条約に反対する旨の意見が述べられました。  次いで、採決の結果、拷問等禁止条約は全会一致をもって、韓国との租税条約は多数をもって、それぞれ承認すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ───────────── <0025>=議長(斎藤十朗君)= これより採決をいたします。  まず、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。  本件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕 <0026>=議長(斎藤十朗君)= 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕 <0027>=議長(斎藤十朗君)= 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十八     賛成           二百三十八     反対               〇    よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕     ───────────── <0028>=議長(斎藤十朗君)= 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。  本件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕 <0029>=議長(斎藤十朗君)= 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕 <0030>=議長(斎藤十朗君)= 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十八     賛成            二百十五     反対             二十三    よって、本件は承認することに決しました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕      ─────・───── <0031>=議長(斎藤十朗君)= 日程第三 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。経済・産業委員長須藤良太郎君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔須藤良太郎君登壇、拍手〕 <0032>=須藤良太郎君= ただいま議題となりました法律案の委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、国際原子力機関による保障措置の強化等のための規定の整備、使用済み燃料を発電所外において貯蔵する中間貯蔵施設に関する規定の新設等を内容とするものであります。  委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、使用済み燃料の処理と中間貯蔵との関係、原子力利用における安全性、風力等新エネルギーの利用の推進等について熱心な質疑が行われましたほか、現地視察を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党の西山委員より反対の意見が述べられました。  次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ───────────── <0033>=議長(斎藤十朗君)= これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕 <0034>=議長(斎藤十朗君)= 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕 <0035>=議長(斎藤十朗君)= 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十八     賛成             二百二     反対             三十六    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕      ─────・───── <0036>=議長(斎藤十朗君)= 日程第四 地方公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政・警察委員長小山峰男君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔小山峰男君登壇、拍手〕 <0037>=小山峰男君= ただいま議題となりました法律案につきまして、地方行政・警察委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、高齢社会に対応するため、一般職の職員の定年退職者等について、条例で定める年齢までの在職を可能とする制度、及び短時間勤務制度を内容とする再任用制度を設けるとともに、懲戒制度の一層の適正化を図るため、退職した職員が再び職員として採用された場合において当該退職及び採用が一定の要件に該当するものであるときは、退職前の在職期間中の懲戒事由に対して処分を行うことができることとする等の改正を行おうとするものであります。  委員会におきましては、再任用制度が新規採用に与える影響、再任用の選考基準のあり方、懲戒制度の改正の効果等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。  質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ───────────── <0038>=議長(斎藤十朗君)= これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕 <0039>=議長(斎藤十朗君)= 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕 <0040>=議長(斎藤十朗君)= 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十八     賛成           二百三十八     反対               〇    よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕      ─────・───── <0041>=議長(斎藤十朗君)= 日程第五 都市基盤整備公団法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。国土・環境委員長松谷蒼一郎君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔松谷蒼一郎君登壇、拍手〕 <0042>=松谷蒼一郎君= ただいま議題となりました法律案につきまして、国土・環境委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、住宅・都市整備公団を解散して都市基盤整備公団を設立し、大都市地域等における都市基盤としての市街地の整備改善、賃貸住宅の供給管理等の業務を行わせようとするものであります。  委員会においては、参考人からの意見聴取を行うとともに、新公団の目的、賃貸住宅の家賃等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して緒方理事より反対の意見が述べられ、次いで採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ───────────── <0043>=議長(斎藤十朗君)= これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕 <0044>=議長(斎藤十朗君)= 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕 <0045>=議長(斎藤十朗君)= 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十六     賛成            百五十七     反対             七十九    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕     ───────────── <0046>=議長(斎藤十朗君)= 本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会      ─────・─────