第145回国会 法務委員会 第15号 1999年06月08日       (1999年08月17日 08:00 登録) 平成十一年六月八日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月二十八日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     有馬 朗人君  六月二日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     岡崎トミ子君  六月三日     辞任         補欠選任      岡崎トミ子君     千葉 景子君  六月七日     辞任         補欠選任      岡野  裕君     世耕 弘成君      吉川 芳男君     仲道 俊哉君  六月八日     辞任         補欠選任      藁科 滿治君     小川 敏夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 藁科 滿治君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁長官官房        長        野田  健君        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省矯正局長  坂井 一郎君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        公安調査庁長官  木藤 繁夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   金築 誠志君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  千葉 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (薬物、銃器、集団密航等に関する暴力団犯罪  の動向に関する件)  (人権擁護行政の推進に関する件)  (オウム真理教の現状に関する件)  (競売物件の情報提供に関する件)  (法務省による報道機関に対する要請に関する  件)  (警察署の公金支出の適正に関する件)  (過激派の動向に関する件)  (暴力団と金融機関との関係に関する件)     ───────────── <0001>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る五月二十八日、阿南一成君が委員を辞任され、その補欠として有馬朗人君が選任されました。  また、昨七日、岡野裕君及び吉川芳男君が委員を辞任され、その補欠として世耕弘成君及び仲道俊哉君が選任されました。     ───────────── <0002>=委員長(荒木清寛君)= 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0003>=服部三男雄君= 自民党の服部でございます。  今国会においていわゆる組織三法が一番大きい問題になるわけであります。その組織三法の対象犯罪というのはいわゆる組織犯罪、暴力団等の対策ということになるわけでございます。  私もしばらく法務・検察に奉職いたしましたが、ここ十年ぐらいからどうも暴力団の犯罪動向、体質というものが変わってきたんではないか。特に、ジャーナリズム、企業幹部等に対するテロ行為が見られるようになってきた。これはかつてないことであります。  それから、暴力団の数がふえてきた、集約化されてきた。しかも、その数が、世界的に見ても、一つの国の中で日本の暴力団が圧倒的に数が多い。世界の暴力団犯罪というと、よくアメリカのコーザ・ノストラ、いわゆるシチリア系のマフィアの話がよく出るのでありますが、数において日本の暴力団と比較にならない。向こうの方が、マフィアの方が少ない、日本の方がはるかに多いというようなこと。  それから、バブル崩壊後の不良債権問題と暴力団の関係というのが非常にゆゆしき事態を招きかねない。  いろんな過去にないここ十年来の暴力団の顕著な傾向というのが見られるように思います。それについて法務当局はどのように考えているのか、松尾刑事局長に問います。 <0004>=政府委員(松尾邦弘君)= 最近の犯罪情勢ということでお答えいたしますが、戦後五十年たったわけでございますが、当初の二十五年は犯罪の発生件数等、起伏、変動がございました。ただ、最近の二十五年間をとってみますと、いわゆる刑法犯の認知件数ではほぼ一貫して増加傾向を示しております。日本は、世界に冠たる治安のいい国だということが常々言われているわけでございますが、刑法犯の認知件数ということで見ますと、一貫した増加傾向ということで必ずしも予断を許さない、全般的にはそういうことも言えるわけでございます。  先生お尋ねの、特に暴力団等による薬物あるいは銃器等の不正取引の問題でございますが、この罪種につきましては、結論としては引き続き非常に深刻な状況にあるということが言えるわけでございます。  このほかに、暴力団の犯罪ということで、いわゆる縄張りを維持するためのさまざまな違法行為、それから蛇頭等の外国人の犯罪組織による集団密航事犯、そのほかにも、こうした暴力団組織そのものではございませんが、いわゆるオウム真理教事件のような大規模な組織的形態による凶悪事犯、それから会社等の法人組織を利用した詐欺商法等の大型経済事犯、豊田商事事犯あるいはオレンジ共済等で御記憶に新しいところだろうと思います。こうした組織的な犯罪が少なからず発生しているという状況でございます。  こうした犯罪状況でございますが、言うまでもなく、我が国の平穏な市民生活を脅かすと同時に、健全な社会あるいは経済の維持発展に悪影響を及ぼす状況がございまして、予断を許さないところでございます。  今申し上げたいろいろな犯罪の中でも、特に薬物事犯でございますが、最近でも報道されましたが、本年は一月から五カ月の間で既に覚せい剤の押収件数あるいは押収量が、押収量で言いますと一トン、千キログラムに近づいています。このままの勢いでということを仮定しますと、昨年の二倍、三倍の押収量に上るのではないかと危惧されるところでございます。  それから、覚せい剤の使用がどの範囲までいっているかということでございますが、暴力団の周辺の者にとどまらず、一般の市民、さらには中高校生等の未成年者等にも急速に拡大しているところでございます。その背後には、暴力団を含む内外の組織、あるいは密輸や供給に暴力団が深くかかわっていると考えられているところでございます。  また、銃器に関する犯罪でございますが、つい先週も連続十数件の発砲事件があり、大々的に報じられたところでございます。暴力団による対立抗争事件あるいは企業幹部を対象としたテロ行為、金融機関等に対する現金強奪事件などがかなり頻繁に発生しておりまして、その際には一般市民が巻き添えとなり、あるいはねらわれるといった悲惨な事件がしばしば発生しており、その背後には、やはり暴力団等による組織的なけん銃の密輸、その供給が行われているものと考えられるところでございます。  したがいまして、このような組織的な犯罪を的確に検挙しまして、これについて真に責任を負う者に対して厳正な科刑を実現することは、現下の諸情勢にかんがみますと極めて重要な課題であると考えている次第でございます。 <0005>=服部三男雄君= 警察の方に尋ねますが、先ほど私がちょっと触れましたけれども、日本の暴力団員の数というのは非常に多い。世界的に見ても、コーザ・ノストラ、マフィアの十倍ぐらいの数がいるんじゃないか。その暴力団構成員数のここ十数年の増減とか、警察庁の方で把握している内容について説明を願います。 <0006>=政府委員(林則清君)= 平成十年末現在で我々が把握しております暴力団構成員数は約四万三千五百人、それから準構成員というものの数が約三万七千八百人で、合計八万一千三百人という状況でございます。  暴力団の人数は、暴力団対策法施行前の平成三年末を見ますと約九万一千人、内訳で言いますと、構成員が六万三千八百人、準構成員が約二万七千二百人という状況でありましたが、その後平成七年末までに約七万九千三百人にまで減少をいたしました。しかし、問題は、それ以降、ここ数年はやや微増傾向に転じておるというのが現状でございます。 <0007>=服部三男雄君= 今の林局長の説明でちょっと尋ねますが、今度ロンダリングの法案を出すわけですが、そのときにいわゆる企業舎弟といって上納金を普通の企業関係者が暴力団員に出している例がよくあるんです、こっちはロンダリングで縛っていくわけですけれども。今、局長の説明した準構成員のところにはいわゆる企業舎弟というものは入っているのか入っていないのか、どちらですか。 <0008>=政府委員(林則清君)= 一言で言いますと、我々が把握して、暴力団と非常に密接な関連があるということが認定できるものは準構成員ということでカウントしております。  今、先生が例に挙げられたものも、企業舎弟と言われたりフロントと言われたり、いろんな形のものがありますが、おおむね大体企業舎弟と言われる程度に関係を持っておればまず準構成員として把握してよかろう、かように思います。 <0009>=服部三男雄君= 今の説明ですと、暴力団対策法施行後やや二万人ぐらい減員になったのが、またその効果が薄れてきて漸増状況に変わっている、こういうことですな。 <0010>=政府委員(林則清君)= 今、先生御指摘の点もありますが、法の効果といいますか、やや中には偽装破門的な形で、組織に属していない形をとった方が活動がしやすい、一般社会の中へ潜り込みやすいという形で組織員として減って、むしろ組織から出たという形になっておる者も結構おるというのが現状であります。 <0011>=服部三男雄君= それらの暴力団関係者による犯罪の動向、特に覚せい剤事犯等、賭博、恐喝というように、暴力団員による特有の犯罪動向がありますね。それらの占める割合等について説明を求めたいと思います。 <0012>=政府委員(林則清君)= 暴力団犯罪の動向いかんということでございますけれども、平成十年中の暴力団構成員及び準構成員のいわゆる検挙自体は三万二千九百八十五人検挙しておりますけれども、その内訳を見ますと、やはり今御指摘のように、覚せい剤取締法違反、これが七千百九十三人、それから恐喝が三千四十四人、賭博が一千八百八十一人と、やはり資金源に絡む、金に絡む、そういうものが多くなっております。  さらにつけ加えますと、全体の検挙人員に対する暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の割合を見ますと、全犯罪の中で、脅迫というのが五六%、恐喝は三一%、それから証人威迫が七二%を占めるということで、やはり暴力団特有の傾向を示しておるというのが現状でございます。 <0013>=服部三男雄君= ここ一週間ぐらいで暴力団員によるけん銃発砲事件が特に都心部で見られるようになりましたが、これはもう一般市民にとっては迷惑きわまりない、非常にその地域を恐怖に陥れる事犯だと思います。これがまた暴力団に対するゆえなき一般市民の畏怖につながる、それが暴力団の威勢を示すもとになるわけでありますが、こういったことに対する、まず事案の概要と、それに対して警察は今どういう手を打とうとしているのか、説明願いたいと思います。 <0014>=政府委員(林則清君)= お尋ねの件につきましては、六月二日から四日にかけまして、山口組と国粋会の対立抗争が発生いたしまして、関東六都県におきまして合計十五件の銃器発砲事件が発生しております。  警察庁におきましては、六月三日に関係都道府県に対しまして捜査の徹底と続発防止のための警戒強化等を指示しまして、同日、警視庁が東京都内において、国粋会傘下組織の事務所に向けてけん銃を発射した山口組傘下組織組員一名を現行犯逮捕しております。また、六月四日、警視庁、神奈川県警察及び埼玉県警察が両団体関係事務所五カ所に対して暴力団対策法に基づく事務所使用制限の仮命令を発出しているところでございます。 <0015>=服部三男雄君= 一生懸命警察なりにやろうとしていることはよくわかりますが、白昼堂々とピストルを撃ち込んでいるわけでありますから、警察の機動力をもってすぐに検挙をしてもらわなきゃ困るわけですね。ところが、なかなか実際この種事犯で、ある程度時間がたって何らかの端緒から犯人の検挙に結びついている、成功している例は多く見られますが、もっと早くならないのか、市民の不安を一掃するためにもすぐ検挙できないのか、どういうところに隘路があるのか、その点について説明願いたいと思います。 <0016>=政府委員(林則清君)= もう御案内のとおりでありますけれども、一般に暴力団というのは、こういった犯罪を行うに当たりましては、事前に下見、それから実行行為をやる者、それから見張り、事後の証拠隠滅、それから逃走幇助、こういったものを組織的に任務分担いたしまして、行動に当たっては携帯電話等で連絡をとりながら極めて機動的に敢行するということが多いというのが実情でございまして、これが被疑者の早期検挙の大きな障害になっておるのが現状であります。  また、実行犯の一部を検挙できましても、暴力団特有の内部の強固な組織的統制等によりまして、幹部の関与状況について供述を得るというのは大変困難でございまして、その刑事責任の追及というのも容易でないというのが実情でございます。  しかし、御指摘のように、警察におきましては、発生事件の検挙と実際それをやらせておる幹部の刑事責任追及に全力を挙げておるところでありまして、ただいまお尋ねのあった一連の銃器発砲事件につきましても、たった一件ではございますが、事前に張りついておった警察官が現行犯逮捕を一人しておりますし、また関係都道府県警察におきましては、関係箇所三十カ所を捜索してこの事件に関する捜査を進めようということで鋭意やっておるところでございます。 <0017>=服部三男雄君= けん銃発砲事件はもちろんそうですが、やっぱり暴力団を一番恐れている、恐れられるというのは、平然と人を殺すという殺人事件を、しかもその犯行の態様は残虐というのか、目を覆うようなことを平気でやるというところにあるわけであります。  近時のそういう暴力団員による殺人事件の発生状況について説明願いたいと思います。 <0018>=政府委員(林則清君)= 暴力団による殺人につきましては、平成八年には二百十人、平成九年には二百六十五人、それから平成十年には二百五十七人をそれぞれ殺人で検挙しております。  その内容を見ますと、今御指摘がありましたように、例えば平成十年十一月に、山口組傘下組織の構成員らが知人と飲食中に口論となって、集団で暴行した上拉致をし、油圧ショベルで掘った穴の中へ突き落として生き埋めにしたというような事件であります。そういった凶悪な手口のものでありますとか、あるいは平成九年八月には、中野会傘下組織構成員十数名が共謀しまして、白昼神戸市内のホテルにおいて山口組の若頭を射殺した、このときは巻き添えで一般市民の方も亡くなっておられる。そういうような組織的に行われるものが多数見られるというのが現状でございます。 <0019>=服部三男雄君= 暴力団の相互の対立抗争で暴力団員が暴力団員に殺される。これは、そういう組織に自分で望んで入った人間たちの間のことでありますから私たち一般市民は余り関係ないなと言いたくなるんですが、実際は、けん銃を白昼堂々と、しかも人が集う場所でねらい撃ちして撃ち合うものですから、一般市民が巻き添えにされるという例が特に近時見られるようになったわけであります。  それらの一般市民が巻き添えで被害を負った事件というのはここしばらくの間どんなものがあるのか、説明願いたいと思います。 <0020>=政府委員(林則清君)= 暴力団による殺人といいますか一連の行為において一般の市民が被害を受けた、いわゆる巻き添えに遭ったという例といたしましては、ただいまもちょっと申し上げました、平成九年八月に中野会傘下組織構成員らが神戸市内のホテルで山口組の若頭を射殺した、たまたま居合わせたお医者様が巻き添えになり射殺されたという事件を初めといたしまして、例えば、平成二年六月には、山口組と、波谷組という組がありますが、これとの対立抗争が大阪を中心に起こったわけでありますが、このとき波谷組の暴力団員が居住しておったという場所、そこからはもうそれが転居して一般の市民の方が入っておられたんですが、そこで波谷組の暴力団員と間違われて射殺されたというような事件。  それから、これも平成二年の十一月でありますが、沖縄旭琉会の暴力団員が暴力団同士の対立抗争中、三代目旭琉会傘下組織の事務所において格子の取りつけ作業をしておったアルバイト中の定時制高校生を三代目旭琉会の暴力団員と間違えて射殺したというような事件等がございます。 <0021>=服部三男雄君= こういうふうに暴力団の巻き添え等が出てくる、あるいは白昼堂々と人の集う場所でやる。今までの暴力団同士の抗争とはちょっと態様が変わってきているということ、それから先ほど刑事局長から説明のありました正常な企業幹部に対するテロ、ジャーナリズムに対するテロ等が見られるようになってきて、暴力団の悪質性というのは余計にひどくなってきていると言わざるを得ないわけであります。それに対して警察、法務・検察も一生懸命やっているだろうと思いますが、それなりの成果を上げているようですが、一般市民の目から見ますと、市民の感覚から見れば、直観的なものでありますけれども、もっと上の幹部が捕まっていいんじゃないか、実行犯の下っ端ばかりじゃないのかと。  それが裁判所の判決で、判決に堂々と中心的役割とは言えないというようなことを裁判官が書くものですから、意外と刑が有期でとまっている例が散見される。暴力団が人を殺すんだからこんなのは当然死刑になって当たり前だというのが一般市民の感覚なんですが、必ずしもそういうところに量刑の上からも結びついていないということで、これはどうも警察の力だけでは十分な真相解明がなされていないのではないかという声もあるということは、法務並びに警察も、あなたたち幹部の耳にも達していると思うわけです。それについてどのように思いますか。 <0022>=政府委員(松尾邦弘君)= 事件を処理する検察の立場から申し上げますと、まさに先生御指摘のような状況が残念ながらうかがわれるところでございます。  暴力団犯罪の特質は、先ほど警察庁の林局長の方から具体的に御答弁されたところでございますが、端的に言いますと、非常に組織的であり、かつ非常に綿密に計画される、非常に密行性も高い、つまり組織犯罪のいわば典型ということでございますが、そうした特質がございます。  したがいまして、確かに事件によりましては、例えば暴力団が敢行した殺人事件ということでけん銃が使われ、例えばある企業幹部が射殺されるとなりますと、けん銃を持って私がやりましたと出てくるケースが時にはあるわけでございます。いわゆる鉄砲玉、こう言うわけですが、実質的にはこの暴力団組織の中で犯行後どう対処するかというところまで十分に計画があるわけでございまして、その後には鉄砲玉を出す。それ以上は解明させないといいますか、捜査官側からいくと解明できないというのもまた一つの現状でございます。  捜査当局は、関係証拠の押収あるいは関係者の取り調べ、鋭意捜査を尽くすわけでございますが、犯行に関与した者の割り出し、あるいは首謀者等を含めた役割分担、こうしたものの解明が必ずしも十分にできていないケースも多いわけでございます。したがいまして、一番末端あるいは下部の実行部隊を検挙しましても、組織的な背景とか、あるいは首謀者に関する供述が得られないケースもまた多々ございます。そんなこともありまして、結局は首謀者を含めて犯行に関与した者を特定して真相を解明するに足る証拠を得ることができない場合もあるのが実情でございます。 <0023>=服部三男雄君= 今の松尾刑事局長の答弁に関連して、私の体験も含めて質問したいんです。  いわゆる鉄砲玉になる者はやっぱり懲役十年以上を覚悟して来るわけです。その間、暴力団の組の方でその家族に対する手当てをしてやらないと、要するに経済的支援をしてやらないと、鉄砲玉になる者は不安で懲役十年も覚悟して来るわけがない。一つの家族を十年間も面倒を見るというのはかなりの金を要するわけです。こういったことはやっぱり暴力団の資金そのものが豊かであることを前提としていないとできないわけであります。  ところが、今の法制でいきますと、いわゆる没収追徴の関係が犯行と直接関連するということが立証できて、しかも物そのものに限定されていく、殺人とか特別なものになりますと別ですが、贈収賄とか別ですけれども、そういういろんな法制上の問題もあるんじゃないか。暴力団の豊かな資金、もっと端的に言いますと、大きな組織暴力団、全国に三つか四つありますが、その本部に刑務所に行く連中を最後まで面倒を見るための対策本部まであるということも考えますと、どうも資金源追及からいかないと本当の首謀者の特定まで行かないんじゃないか、こんな気がいたしますが、いかがですか。 <0024>=政府委員(松尾邦弘君)= まさに御指摘のとおりだと思います。  財政的にどういうふうに暴力団を締め上げていくのか、あるいは組織犯罪をなした主体を締め上げていくのかというのが非常に大事な点でございますが、切り口を、例えば脱税でできないかとか、捜査当局あるいは国税を含めた調査をしている担当の部局は、そういった観点から今までさまざまな工夫をしてきたのもまた一方であるわけでございます。  先生御指摘のように、あるいは没収追徴にいたしましても、例外は若干ありますが、現にそこにある物、あるいは第三者に属していれば没収の対象から外れてしまう。そういった法制度から来る限界というものが多々ございまして、財政的に締め上げているという望ましい状況からは現状はほど遠い状況にございます。  マスコミ報道あるいは実際の事件等で、例えば暴力団の組員に射殺された家族が組長を相手取って損害賠償請求を起こす、これは大変勇気のある行動でございます。これは現に勝訴したケースが出始めているところでございます。我々はこういった報道を見るにつけ、捜査当局といたしまして、こういったことを刑事法の分野でカバーできない、それがこういう民事の損害賠償といったいわば家族からいいますと窮余の策に出ざるを得ないというような現状があることについて、一方でそうした勇気を称賛すると同時に、捜査当局としてなお一層その点についても暴力団の資金源を徹底的に洗い、財政的に追い込んでいくということの不十分さというものを痛感している次第でございます。 <0025>=服部三男雄君= 暴力団関係についてもっといろんな個々の具体的な事件を取り上げて、現在の刑事法制、捜査手段の限界、それからあるべき捜査方法、手段等についてきめの細かい議論もしたいわけでありますが、それは組織三法の審議のときにまた譲るといたしまして、とにもかくにも日本のそういう法制並びに捜査のトップにおられるのは法務大臣でありますから、法務大臣に現下の暴力団対立抗争や殺人事件が絶えない現状に対して力強い所感を問いたいと思います。 <0026>=国務大臣(陣内孝雄君)= すべて、今委員の御指摘のとおりだと私も思っております。  暴力団の山口組の最高幹部射殺事件などでは一般市民を巻き添えにして、そのとうとい命を奪うような痛ましい事件がありましたし、また、企業幹部を対象としたテロ行為あるいは金融機関等に対する現金強奪事件など、暴力団関係者により一般市民がねらわれるという凶悪な事件もしばしば発生しております。また、暴力団同士の対立抗争に伴う銃器の発砲事件も多発し、その都度一般市民に不安と脅威を与えておるのでございます。しかも、これらの背後には、暴力団による銃器の組織的、継続的な供給が行われているものと考えられますし、極めて深刻な事態であると憂慮をいたしております。  暴力団の不正な権益の獲得、維持を目的とした種々の犯罪が絶えないことも考え合わせますと、暴力団関係者による種々の犯罪は我が国における組織的な犯罪の典型ともいうべきもので、平穏な市民生活を脅かすとともに、健全な社会経済の維持発展に悪い影響を及ぼしていると考えられます。このような犯罪に対しましては、断固とした決意で厳正に対処していかなければならないと考えております。 <0027>=服部三男雄君= 今の法務大臣の決意を多としまして、今後も法務並びに警察に頑張ってもらいたい。私たち法務委員会のメンバーも、そのための周辺環境整備、特に法整備について真剣に取り組まなきゃいかぬと思っております。  特に、私が冒頭にも申しましたが、企業幹部、特に金融機関、具体的に挙げますと住友銀行の名古屋支店長、それから阪和銀行等々五年ぐらい前にありました。これがバブル崩壊後の金融機関が早期に不良債権を処理をしなきゃいかぬものをストップさせる、スローダウンさせる。それが日本の経済に大変な悪影響を及ぼしているということはもう多くの国民が認めるところであります。  先ほど来、林局長も松尾局長も、一般市民や巻き添えにされた人が暴力団組長に対して民事訴訟を起こしていることについて、自分たちの手かせ足かせに切歯扼腕するとともに、何とかせにゃいかぬという気持ち、焦慮の気持ちがあると、非常に心情を吐露されたいい話だったのですが、少なくとも法務省といたしましては、そういう暴力団が、単なる暴力団抗争でなくて、一般市民を巻き添えにするばかりか不良債権処理に絡んで金融機関をねらい撃ちしてくる、さらにはジャーナリズム、朝日新聞事件はまだ解決してないわけでありますが、これは暴力団がやったかどうかまだはっきりしませんけれども、こういう新たな犯罪動向が起きたときには、今回組織三法を出されたわけでありますが、もっと早くこういった行動を起こすべきではないかな、こういう感を拭い切れないわけであります。  法務省は昔から手がたくて、まじめな役所には違いないのですが、何しろ私がおったところですから、まじめな役所で結構なんですが、もうちょっと犯罪動向との絡みで、政治家はもちろん一般国民にそういう必要性を訴え、あるいは法制改正に向けてダイナミックに動く必要があるのではないかな、こんなことを考えているんですが、大臣でも松尾局長でも結構ですが、その点について所感をいただきたいと思います。 <0028>=政府委員(松尾邦弘君)= 大変厳しい御指摘でございますが、私どもとしては十分謙虚に受けとめたいと思っております。  先生御指摘のように、金融機関に対する事件としましても、先ほどお触れになった阪和銀行副頭取の射殺事件、平成五年でございます。それから平成六年には住友銀行名古屋支店長の射殺事件等がございます。こうした企業幹部に対する殺人事件というものは大変甚大な心理的影響を企業幹部あるいは企業そのものに与える犯罪でございます。  一昨年、平成九年には一連の証券会社の総会屋絡みの事件等がございましたが、この総会屋絡みの事件の背景にはやはり組織がございます。その際に、私も一部の企業幹部の方からいろいろ聞きましたが、例えば企業幹部に対する脅迫事件あるいは企業幹部の家族に対する脅迫事件、例えばあなたのお孫さんはどこどこの幼稚園に行っておりますねと名指しで、また幼稚園の名前も正確に示された上で、お大事にというようなことを電話で一言言われる。このことの重みというものを直接聞きまして、つくづくと暴力団犯罪の持っている影響力あるいはその与える威嚇力というものに対して、非常に切に感じた次第でございます。  この背景には、今申し上げたような例えば住友銀行の名古屋支店長の射殺事件、現実にそういうものが起こる。しかも、これが徹底的に解明されたかという社会の見方からしますと、捜査当局は頑張って徹底的な捜査をやるわけでございますが、必ずしも社会の評価は、そうした犯罪を敢行した組織の中枢には迫っていないんじゃないかと。つまり、十分に検挙できないというような批判もあるわけでございます。  そうしたことに対して、捜査当局としては、与えられたいろんな制約の中で最大限努力したということを言いたいわけでございますが、なおあえて言わせていただけるのであれば、もう少し武器をいただけないかというのが正直な気持ちでございます。  その中には、先ほど申し上げた財政的に締め上げていくような武器も含めまして、あるいは捜査の中枢に迫るための何らかの武器をいただきたい。人権その他いろんな制約を配慮しながらも、ぎりぎりのところでなおそうした希望を持っているのもまた現実でございます。 <0029>=服部三男雄君= 先ほど私が申しました金融機関に対するテロ、今局長が御説明のとおり大変インパクトが強かった。金融機関が、いわゆる不良債権絡みで暴力団関係者による土地の仮登記とかああいったことに対して全く足がとまってしまった。恐らくその影響力は、識者によって金額は違いますが、数兆円の不良債権処理のおくれにつながっているんじゃないかと言われておるわけです。  それに対しまして私ども国会は、これはいかぬということで、焦眉の急ということで住管機構をつくって、中坊さんを社長にして、そしていろんな金融機関なり暴力団に対する調査権限というものを法制上整備して動かしました。一兆円ぐらいの金額ですけれども、住管機構の方で処理できてきた。その間の二度にわたる報告を聞きますと、大した暴力団の抵抗はないというわけであります。  ということで、確かに殺人等を情け容赦なく行う暴力団ですから一般市民にとっては恐怖の的でありますが、法制さえ備えれば、暴力団というのはある程度は鎮圧できるものだというのを、民事絡みの暴力団事件ということで住管機構はある程度の成功を見せたといういい例があるわけであります。  その観点から見ますと、今度の組織三法の出し方は、法務当局はやや遅い、住管機構の成功例を見れば、直ちに腰を上げてやるべきじゃなかったか。刑事司法ですから、過去の例その他を考えますと、思いついてすぐ一年でばたばたとつくるというのはなかなか難しい面があることはよくわかります、立法技術上の問題がありますからわかりますが、その点も含めて、ちょっと法務並びに警察の社会の動向に対するアンテナの感覚の鈍さというものを感じざるを得ないわけでありまして、今後そういうことも考えてもっとビビッドに、鋭角的に法務行政、警察行政をやっていただきたいなと心からお願いしたいと思います。  続きまして、薬物関係について質問したいと思います。  いわゆる覚せい剤事犯が五十年の間に、今第三次乱用期と言われておりますが、昭和二十四、五年ごろのヒロポン時代、高度成長期の昭和四十年代後半から五十年代前半、そしていよいよ平成に入ってきたわけでありますけれども、明らかに覚せい剤事犯の態様が変わってきたということは犯罪動向を分析すれば言えると思います。第一次、第二次と違って第三次というのはどのように変わってきたのかということについて、法務当局から説明をもらいたいと思います。 <0030>=政府委員(松尾邦弘君)= 最近の覚せい剤事犯等を中心とした薬物事犯の動向を見ますと、第一点は、検挙人員で見ましても非常に高水準で推移しているということでございます。具体的には、毎年二万人を超える者が薬物事犯で被疑者として受理されているということが第一点でございます。  それから第二点目でございますが、覚せい剤の押収量に顕著な特徴がございます。ことしは、四カ月間で既に過去最高でありました平成八年の年間の押収量を上回っております。先ほども申し上げましたが、五月末現在の暫定値でございますが、押収量は九百五十二キログラム、約一トンでございます。  さらに、覚せい剤の使用でございますが、先ほども触れましたが、青少年、若年化傾向というのが最近の大きな特徴でございます。中学生の検挙例もふえてきております。高校生の検挙例はかなりの率で急増しているということでございます。  それから、次の特徴としましては、非常に犯行が巧妙化、手段が巧妙化しているということで、その中には来日外国人犯罪組織等を巻き込みました組織化あるいは巧妙化、隠密化というものが一段と深まっているということがうかがえるわけでございます。こうしたことが先ほど申し上げたような大量の押収量につながっていくと見受けられるところでございます。  今申し上げましたように、薬物事犯の現況というのは極めて憂慮すべき状況が続いているという認識でございます。 <0031>=服部三男雄君= 日本の覚せい剤事犯の特徴は、一〇〇%輸入ということだと思うんです。私の個人的経験なんですが、国内犯、日本で密造した事例を検挙したのは恐らく私だけじゃないかと思うんです。昭和五十二年だったと思うんですが、浦和で五キロほど製造した事犯を検挙した例があるんですけれども、恐らくそれだけだと思うんです。あと日本でその例は聞いたことがありませんから、全部密輸入だと思うんです。  この密輸入の一回当たりの量が、これも私の経験では、私が密輸入事犯で検挙したのは最高三キロというのがあったんです、横浜まで押収に行ったんですが。今は百キロオーダーは超えて五百キロまで、ドラム缶一本という例が何か出てきたと聞いております。こうなると、大規模組織でないとちょっとできない。個人の運び屋でも何とか持ち込める限度が大体二キロ、三キロだと思うんですが、ドラム缶となりますと、これは船、それを運ぶ、あるいは監視するとなると数十人の組織、団体でやらないと実行不可能な量になってきていると思うんです。  こういうことを考えると、日本の国内の暴力団と海外とがどうも提携しているんじゃないかと思わざるを得ないわけでありますが、警察庁の方、生活安全局長でもいいし刑事局長でもいいですが、それらの動向についてどのように今検討しているんですか。 <0032>=政府委員(小林奉文君)= 委員御指摘のように、最近、大量の密輸入事件が続いております。この事件につきましては、委員御指摘のように、国内の犯罪組織と諸外国の犯罪組織が結託してと申しますか、連携してそれぞれの犯行を行い、それぞれの組織の資金源を得るようにしている、こういうふうに認識しております。  そういった観点で、私どもといたしましては、そういった事件については捜査力を集中して徹底した取り締まりをすべきではないか、こういうふうに考えている次第でございます。 <0033>=服部三男雄君= 恐らく、組織暴力団員の、しかもそのための特別チームを組まないとできない事犯になってきたんだろうと思うんです。そういう意味で、やっぱり覚せい剤と暴力団というのは密接不可分なものだ。  警察に尋ねますが、覚せい剤事犯の検挙人員の推移と同時に、その中に占める暴力団員の割合というのはどういうふうにここ数年でなっているのか、説明を願いたいと思います。 <0034>=政府委員(小林奉文君)= 覚せい剤の検挙人員、検挙件数についてでございますが、平成元年以降はそれぞれ件数で二万件、人員で一万五千人前後で推移しておりましたが、平成七年以降増加傾向にあるということでございます。  平成七年が二万三千三百八十二件、一万七千百一人でございます。このうち、暴力団が占める割合は、検挙数で四三・七%、人員で四三・一%でございます。こういった状況がずっと続いておりまして、昨年、平成十年が二万二千四百九十三件、一万六千八百八十八人の検挙人員でございます。このうち、件数で四二・五%、人員で四二・七%が暴力団関係者の占める割合でございます。  このように、ここのところずっと約四割が暴力団関係者で占められている状況にあろうかと思います。暴力団が覚せい剤事犯に深く関与していることがうかがわれる状況に現在あるということでございます。 <0035>=服部三男雄君= 覚せい剤事犯は、法律用語で言いますと、特に密売になりますと買う方がいれば売る方がいるわけですから、対向犯というんですか、必要的共犯になるわけですね。当然、検挙する場合ですから、売る方も買う方も検挙するわけですから、今の局長の説明で暴力団員の占める割合が検挙人員数等で四割を超える、四三、四%だということになると、売る方は大半が暴力団員だ、こういう結論になるんでしょうか。 <0036>=政府委員(小林奉文君)= ほぼそのとおりだと考えて間違いないと思います。 <0037>=服部三男雄君= さて、先ほどの松尾局長の説明によると、ことしになって既に去年の四割以上、押収量が激増しているということでございます。覚せい剤等の薬物押収量の推移について説明願いたいと思います。 <0038>=政府委員(小林奉文君)= 最近の覚せい剤の押収量についてでございますが、具体的な数字を申し上げさせていただきたいと思います。平成六年に三百十一・三キログラム、平成七年に八十五・一キログラム、平成八年に六百五十・八キログラム、平成九年に百七十一・九キログラムとなっております。  昨年からことしにかけましては、国際的な薬物犯罪組織が関与した覚せい剤の大量密輸入事件の摘発が相次いでいる状況にございます。  昨年、平成十年は約五百四十九キログラムでございます。ことしに入ってからは、五月末までの暫定値で約九百五十二キログラムとなっております。五カ月間で過去の年間最多押収量を記録した平成八年を大幅に上回っている状況にございます。一トンに迫るような異例の大量押収状況になっているということでございます。 <0039>=服部三男雄君= 今、自民党内で危機管理チームというのがあって、私もその常任のメンバーなんです。これは法務委員会のテーマと違いますが、いわゆる北韓の不審船の問題で、日本の主権をどういうふうに守るかという議論の中で、海上保安庁並びに警察が第一線だという現行体制は変わらないだろうと。その場合の対処の仕方は警職法でやるというわけですね。あるいは漁業法違反とか、要するに国内法規対処の制度になっているわけです。  そこで、私が考えたのは、日本の警察というのは人口移動に応じて警察官を配置するようなシステムをつくってあって、おおよそ人のいない臨海部にたくさんの警察官を配置するような制度になっていないわけです。ところが、覚せい剤がこういうふうに半年で一トンクラスになってくると、海から来ることは間違いないわけです、密輸入だから。そうすると、警察の配置状況も考えなきゃいかぬのじゃないか。海から入ってくるものを都心部で待ったって、これは網にかからない。波打ち際作戦のことを考えると、ちょっと警察官の配置も考えなきゃいかぬ。生活安全局長、どう思いますか。 <0040>=政府委員(小林奉文君)= 外国からの覚せい剤の密輸入事件ということに限定させていただくならば、こういった事件を摘発するためには、私どもといたしましては、国際的な犯罪組織の動向とか、いろんなことを外国の捜査機関と連携して捜査しながらその動向を見ていかなければ検挙できないんじゃないかなと思っております。そういった観点から、私どもとしては、外国の捜査機関、国内では税関、海上保安庁と連携してこういった事件に対応してまいりたいと考えております。  ただ、警察官の定員が少ないということは事実でございますので、願わくばそういった面での配慮は必要かなという感じで個人的に申し上げさせていただきたい、このように思う次第でございます。 <0041>=服部三男雄君= 密輸入となると相手の国があるわけですが、どういったところが今までの検挙事例で出ておりますか。 <0042>=政府委員(小林奉文君)= 委員御指摘のように、覚せい剤を初めとします薬物はほとんどが外国で密造されておるわけでございます。そういった密造された薬物が国際的な薬物犯罪組織や日本の暴力団によって密輸入されるわけでございますが、まず、覚せい剤につきましては現段階におきましては中国等、それから大麻は台湾、フィリピン等、コカインはコロンビア等、こういった各国から密輸入されている状況にあるというふうに理解しております。 <0043>=服部三男雄君= 密輸入ですから、隠匿、仮装しなきゃ密輸にならぬわけですが、どういう方法が顕著な事例として挙げられておりますか。 <0044>=政府委員(小林奉文君)= 覚せい剤等の薬物の密輸入の方法でございますが、一つの例を申し上げますと、正規のルートで輸入した貨物の中に薬物を巧妙に隠匿して密輸入するというケースがございます。例えば、最近の事例で申しますと、大理石の柱の中に隠匿している、あるいは大型消火器の内部に隠匿する、ロール状の布生地の心棒の内部に隠匿している、こういったケースがございます。  また、最近大量に密輸入のケースが摘発されているわけでございますが、その一つの典型的なケースといたしまして、洋上で漁船等を利用しまして薬物の受け渡しを行い、それを地方の漁港に陸揚げする、こういった方法がとられているということが一つの大きな特徴として挙げられるんじゃないかと考えております。 <0045>=服部三男雄君= 今の後半の説明の、船を使って大量の何百キロオーダーのものを出すと。そうすると、一人ではなかなか運べない。しかも、船の受け渡しが要る。さらに、日本のどこかに上陸するときに近くに警察がいないかとか、海上に警備艇が回っていないかとか、臨機応変に対応をとらざるを得ない。今、説明があった大理石の中に隠すとか消火器の中に隠すというのは、これは個人である程度対処できます、税関を通ってくるわけですから。そうでない場合は、十人、二十人の者がチームを組んでやらざるを得ない。警察のパトカーの動きも見なければいかぬ。となると、当然だれか指揮官がいて中継ぎがいて、相互の指揮をする、携帯電話等を使って、電子機器を使ってやるというような大がかりな組織犯的対応をとらざるを得ないだろうと思うんです。  そういったことに対して、警察としてはどのように対処できるのか。あるいは、現行ではなかなか難しいからこういう方法があればいいのではないかというようなことがないでしょうか。 <0046>=政府委員(小林奉文君)= 委員御指摘のように、例えば洋上で取引する際にいろいろな手法を用いるわけでございます。最近はGPS、こういった装置で瀬取り場所を決める…… <0047>=服部三男雄君= 何だ、GPSって。わからない。日本語で言え、日本語で。 <0048>=政府委員(小林奉文君)= GPSと申しますのは、人工衛星を利用した電波航法システムでございます。三カ所の人工衛星から発する電波でもって位置を測定する最近の方法でございます。 <0049>=服部三男雄君= カーナビみたいなやつか。 <0050>=政府委員(小林奉文君)= そうです。そういったことにつきましても、例えば瀬取りができるということになっていて今度は船を使うということになる。その船につきましては漁船を使うのが一番いいだろう、漁船をその手段に使うために購入する、そういったことでもって資金も必要であり、また相当準備が必要であるということ。それから、どのような港に入ったらば警察からの、あるいは税関、海上保安庁からの監視の目を逃れるかとかいろんなことを考えているということで、大変工夫しているわけでございます。  私どもとして現在申し上げられるのは、現在の法律の範囲内におきまして、できる限りの方法を用いてやりたいということです。ただ、具体的にどのような方法をとるかということについては捜査の具体的な方法でございますので、説明については差し控えるのが一番相当ではないかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。 <0051>=服部三男雄君= 今言いましたように、密輸入を波打ち際作戦で防波する、これは一つの方法ですね。と同時に、暴力団というのは営利を求めているわけでありますから、買う人の場面、末端のところで遮断する、買い手がなくなれば彼らはそんなことやりませんから。そして三つ目は、暴力団の組織の中の中心部に、頂上作戦で覚せい剤を追っていく、この三つの方法が考えられるわけです。  末端の売買の点ですが、昔は密売人がいていかがわしい場所をうろうろしている人と連絡をとり合うという、今から見れば極めて牧歌的なというか、簡単な手口でやっておったんですが、今はもう非常に巧妙になっているということでございます。  生活安全局長から具体的に、警察になかなか捕まらない巧妙な手口というのを一例を説明してもらいたいと思います。 <0052>=政府委員(小林奉文君)= 具体的な手口ということでございますが、抽象的に答えさせていただきたいと思います。 <0053>=服部三男雄君= 具体的事例があるだろう、具体的事例が。 <0054>=政府委員(小林奉文君)= ほとんどの密売事件等につきましては、それぞれどのような場所でどのように密売人を探し出して客が買うかということ、それから密売人は…… <0055>=服部三男雄君= じゃ、質問を変えます。  私がある捜査資料から見た例なんですけれども、新宿にあった例です。検証事例に使った例もそうですが、密売の申し込みの専用受付電話で別の携帯電話で申し込みがあった人に対して何々喫茶店の入り口の下のところに一万円置いてくださいという指示をする。別の人がそれを監視していて、別の電話で密売人のところへ今一万円置かれましたと。確認したら、申し込み人に対してまた別の携帯電話でかけ直して、今度はその三軒隣のどこそこの喫茶店のテーブル何番の下に覚せい剤〇・五グラム、〇・五グラムか〇・〇五か忘れました、置いてありますからとってくださいというふうに、携帯電話を使って場所を何カ所も動かす。そうしますと、具体的例になりますと、例えばそれを警察が把握して尾行しておって喫茶店のテーブル三番で現行犯で捕まえても、いや、たまたま拾いましたという弁解を防圧できないわけです。  こういうふうにして、携帯電話を使って非常に巧妙に、しかも対面的な面を割らないように全部遮断していくという巧妙な方法がとられているというふうに聞いておりますが、こういう事例は今どのくらいふえておりますか。 <0056>=政府委員(小林奉文君)= ただいま御指摘の手口というものは私どもとしても承知しておりまして、例えば携帯電話、転送電話、ポケットベル等を連絡手段として利用して、御指摘のような非対面で密売するというケースがございます。こういったケースがほとんどのケースだというふうに私ども理解しております。 <0057>=服部三男雄君= 警察官僚独特の言葉で、非対面と君は今言いましたね。わかりますか、一般市民が非対面という言葉を聞いて。ちゃんと普通の言葉で説明してもらいたいものです。 <0058>=政府委員(小林奉文君)= 密売をします場合に、密売人がだれであるかということを客に知られないためにその顔あるいは動静をその人の前にあらわさない、こういうことが犯行を隠すための手段でございます。言うなれば、被疑者がだれであるかということをわからないようにするという方法を非対面と申し上げさせていただきました。 <0059>=服部三男雄君= 次に、覚せい剤事犯がこれだけふえているのですから、量刑の面で、今からもう五十年近くなるわけですが、ヒロポン全盛期に量刑が非常に強くなった。裁判所、法務当局の熱心な努力で裁判所が量刑を非常に厳しくしたことで、わずか五年ぐらいでほぼヒロポンを撲滅することができた。ところが、昭和五十年以降累々と押収量もふえ検挙人員もふえているのが二十年続いている。にもかかわらず、現在の量刑がどうなのか、量刑による防圧が効果があるのかどうか、それについて法務当局に問います。 <0060>=政府委員(松尾邦弘君)= 具体的な数字で申し上げますと、平成九年における覚せい剤事件の科刑状況でございますが、有罪判決を受けた者は一万四千六百三十三人でございますが、懲役三年以上の刑の言い渡しを受けた者は全体の五・七%でございます。懲役一年以上三年未満の刑を受けた者は九三・七%、懲役一年未満は〇・六%でございます。  これを約十年前の平成元年と比べてみますと、懲役三年以上が平成元年では三・九%でございましたので、先ほどの五・七%は、それよりも少し量刑は重くなっているということは一応言えるかと思います。全般的にはわずかでございますが量刑は重くなっている。  しかし、別の見方をしますと、例えば五年を超える懲役刑の言い渡しを受けた者、これはその量刑からいいまして、罪種としましては営利目的による覚せい剤の譲渡あるいは所持、輸入等の事犯ということになろうかと思います。つまり、末端の使用者や売人クラスでなくてもう一段二段上の被告人ということになりますが、つまり五年以上の懲役を受けた者ですが、その割合は平成元年では〇・三五%、平成九年では〇・四三%でございます。  こうした量刑からも十分推測できることでございますが、覚せい剤事犯の首謀者あるいは中枢に位置する者は当然その懲役五年以上ということになるわけでございますが、この量刑にもあらわれているように件数的にもほとんど伸びていないし量刑的にもやはり十分なものになっていないという現状でございます。 <0061>=服部三男雄君= 今の量刑の点からも言えることでありますが、やっぱり捜査当局によるこの種事犯の頂上作戦が必ずしもうまくいっているとは思えない。しかし、やらにゃいかぬことであります。  いわゆる突き上げ捜査を行う上で、現下の法制あるいは警察の過去の例から見てどこにその難点があるのかということについて法務当局に説明を願いたいと思います。 <0062>=政府委員(松尾邦弘君)= この原因でございますが、今までの御質問と私なり警察当局からの答弁の中にいろいろな形で触れられていることでございますが、まず第一は、覚せい剤の密輸あるいは密売事犯というものが暴力団等ある意味では非常に強固な組織によって非常に計画的に敢行されているということにあります。このような犯罪は、とにかく検挙を免れるために、例えば末端の使用者に対する密売については、先ほど警察の方からも非常にかたい言葉で申し上げましたが、非対面方式ということでございます。つまり買う者と売る者とが顔を合わせないということです、具体的には。そのために、電話を中心とした器材を非常に巧妙に利用するということでございます。密行的かつ巧妙に行われるということでございまして、犯行自体が捜査当局によりまして全貌を把握し早期に解決するという点で非常に困難な要素を含んでいるということでございます。  それからもう一つは、犯行後におきましても暴力団組織を中心に罪証隠滅工作あるいは犯人隠避工作が行われることが少なくない。容易に捜査の端緒をつかむことが困難だということも一つの理由になります。  また、さらにつけ加えますならば、最近では末端の売人に外国人が登場してくるケースがございます。これはもう調べ自体が非常に困難をきわめると同時に、外国人は日本の密売組織の実情についてなかなか知識が十分でないものですから、仮にそれを捕まえていろいろ調べましても、そこから突き上げるということはさらに困難をきわめるということでございます。  今申し上げたような諸事情から、末端の売人ぐらいまでにとどまりまして組織の中枢に捜査の手が及ぶのが難しいという一つの罪種ということでございます。 <0063>=服部三男雄君= 突き上げ捜査の困難な原因はよくわかりました。それに対して現在のとれる方法、どこに限界があるのか、こういう手段を捜査当局に与えていただければできるというような点について考えがあれば説明願いたいと思います。 <0064>=政府委員(松尾邦弘君)= 日本の捜査の一つの特徴は、被疑者を取り調べる、それによりまして自白を得る、それで関連の証拠を固めて犯罪を解明するというのが一つの典型的な捜査手法でございます。ただ、自白を得るということが、暴力団組織とこの種薬物、けん銃事犯が中心でございますが、大変難しいことになります。これまで捜査当局は一生懸命やってきまして、それなりに自白を得、解決した事例も多々あるわけでございますが、最近の諸事情からいいますと、ますますそれは困難になってきている実情にございます。  こうしたことと、先ほどから申し上げている覚せい剤事犯、けん銃事犯等を中心とした組織犯罪が非常に計画的あるいは強固な組織に支えられており、犯行後の証拠隠滅工作も徹底して行われるというような諸事情に照らしますと、もう少し腰を据えた捜査といいますか、あるいは新しい手法による捜査というものをもはや導入せざるを得ないというのが現状だろうと思います。  その捜査手法、世界各国でいろんな方法がとられております。その中の一つに電話傍受ということがあるわけでございますが、今回の法案の一つにこの電話傍受を法制面で整備するという法案がございます。我々捜査当局といたしましては、ぜひこういった捜査手法も導入していただきたいという切実な願いがございます。 <0065>=服部三男雄君= では、薬物事犯についての最後の総括ということで、法務大臣に現状と捜査に関しての所見を問いたいと思います。 <0066>=国務大臣(陣内孝雄君)= 最近の薬物事犯の現状につきましてはこれまで御説明申し上げたとおりでございますが、特に我が国で最も多く乱用されている覚せい剤事犯について、近年、検挙人員あるいは検挙件数がともに増加している上、押収量も史上最高を記録するということでございます。また、中学、高校生を初めとする若者にもこの覚せい剤使用が広がっていることなど、覚せい剤の乱用のすそ野が広がっている状況にあり、深刻な情勢になっておるというふうに認識しているところでございます。  このような情勢を改善していくためには、何よりも薬物の供給源となっている密輸入及び密売を組織的に敢行する薬物犯罪組織の実態を解明して、その首謀者を割り出し、適切な科刑を実現することなどが不可欠であると考えられます。  しかしながら、このような犯罪は検挙を免れるために犯行自体が密行的に行われることはもとより、犯行後におきましても証拠隠滅工作や犯人隠避工作等が行われることも少なくない上、犯行に関与した者のうちの一部の者、特に末端の犯行関与者が検挙されましても、首謀者等の他の共犯者の氏名やその関与の状況などについての供述を得ることは容易ではないということから、その真相を解明することは困難な状況にあるわけでございます。  このような犯罪の全容を解明し犯行に真に責任を有する者を検挙するためには、新たな捜査手法として犯罪捜査のための通信傍受の制度を導入する必要があり、これなくしては十分な薬物犯罪対策を行うことはできないものと考えております。 <0067>=服部三男雄君= 時間が限られておりますから、次に銃器関連犯罪について尋ねたいと思います。  これもかなり日本に銃器がふえておる、非常に危険な兆候になっております。巷間、ある学者に言わせるとピストルは二十万丁も日本にあるんじゃないかと言われている。こういう憂うべき状況について、現下の銃器犯罪の検挙状況について警察の方に説明を求めます。 <0068>=政府委員(小林奉文君)= 平成十年中の銃器使用犯罪についてでございますが、認知件数は三百三十九件であります。このうち殺人は五十三件、強盗は百十七件、こういうふうな発生状況になっております。  そういった発生に対しましての検挙件数でございますが、百二十五件検挙しております。殺人は四十四件、強盗は三十一件などとなっておる、こういう状況でございます。 <0069>=服部三男雄君= またこれも警察官僚らしいあれで、認知件数、検挙件数と言われても一般市民はわからない。もう一度説明し直しなさい。 <0070>=政府委員(小林奉文君)= 認知件数と申しますのは、事件発生で警察に届け出のあった件数、こういうことでございます。それから検挙件数は、その事件の被疑者等を逮捕してその事件を解決した、こういうことでございます。 <0071>=服部三男雄君= 今の銃器使用犯罪で検挙された事件のうち暴力団関係者の占める割合について説明を求めます。 <0072>=政府委員(小林奉文君)= 先ほどの平成十年中の銃器使用犯罪の検挙は百二十五件でありますということで御報告させていただきましたが、このうち暴力団関係者が被疑者となったものは八十三件、約六六%となっております。  また、過去五年間を通算してみますと、銃器使用犯罪の検挙は六百七十五件であり、このうち四百七十一件、約七〇%が暴力団関係者によって敢行されているという状況にございます。 <0073>=服部三男雄君= 銃器というのはピストルのことをいうわけですが、それを使うというと人を殺すか人をおどして強盗するかということになるわけであります。殺しも問題ですが、強盗事件もかなり殺傷事件に結びつきがちですから危険な犯罪なんですが、その発生状況について説明を求めます。 <0074>=政府委員(小林奉文君)= 銃器を使用しました強盗事件の発生についてでございますが、平成十年中は百十七件発生しておりまして、このうち現に銃器発砲を行った強盗は十一件であります。そのうち死傷者が出ました件数は五件となっております。 <0075>=服部三男雄君= 暴力団とけん銃というのは密接不可分だというふうに言えるわけでありますが、近時の傾向としてどうもそうでない、暴力団以外の人も比較的安く、トカレフなんか十万円ぐらいで買えるというんです。ということで、ちょっとそういう変な傾向も出ているんじゃないかなという危惧あるいは心配する状況も見られますが、その点について説明を求めます。 <0076>=政府委員(小林奉文君)= 平成十年を例にとって御説明させていただきたいと思いますが、平成十年中のけん銃の押収丁数は千百四丁でございます。このうち暴力団からの押収は五百七十六丁で全体の約五二%、暴力団以外からの押収は五百二十八丁で全体の約四八%となっております。  こういった形で暴力団の周辺あるいはそういった者に対してけん銃が蔓延しているという状況がこの中からもうかがえる、このように思っておる次第でございます。 <0077>=服部三男雄君= それだけ多数の銃が日本国内に滞留し出すと、昔は暴力団というのは自分の家とか布団の下に隠したとかいうのがあるんですが、暴力団抗争がこれだけふえますと、しかも暴力団事務所は常にガサを食らうという危険性があるものですから、組自体の非常時に備えた大量のけん銃なんかを組の事務所に置けなくなるということで何か向こうなりに工夫しているんじゃないかなと思うんですが、その点について説明を求めます。 <0078>=政府委員(小林奉文君)= 委員御指摘のとおりでございまして、けん銃の押収丁数を見ておりますと、平成七年の千八百八十丁をピークに減少しておるわけでございます。特にその中でも暴力団からのけん銃の押収が減少している状況にございます。  その理由といたしましては、近年の銃刀法改正による銃器事犯の重罰化、警察の取り締まり強化などによりまして暴力団側が警戒を強め、銃器の隠匿方法を巧妙化していることなどが挙げられようかと思います。例えば、最近のケースでも見られるわけでございますが、空き家、倉庫等の人の居住していない場所を武器庫として使用したり、あるいは小口に分けて保管する、しかも暴力団と表面的には関係ないような場所、関係ないような人のところに預ける、こういったケースが多くなってきている、こういう状況にございます。 <0079>=服部三男雄君= そうしますと、今の答弁によりますと、暴力団からの押収が全体の五十何%といっていて、やや一般市民の方に拡散傾向がなきにしもあらずですが、それは暴力団の隠匿方法が巧妙化していることによる分を差し引かなきゃいかぬ、こういうふうに考えていいわけですか。 <0080>=政府委員(小林奉文君)= 全体的にはそういうふうに評価しなければならない面もあろうかと思います。 <0081>=服部三男雄君= マニアとか趣味の人が日本でけん銃をつくろうと思えばつくれぬこともないでしょうけれども、これだけ巷間伝えられる暴力団関係者が二十万丁も持つとなりますと、当然密輸入ということになるわけですが、どのような種類のものがどこから持ち込まれているのか、それについての分析を説明してもらいたいと思います。 <0082>=政府委員(小林奉文君)= 委員御指摘のとおり、国内で押収される真正けん銃のほとんどは外国で製造され、暴力団等の犯罪組織によって海外から密輸入されたものでございます。  平成十年中に押収された真正けん銃を製造国別に見てみますと、アメリカ製が二百七十丁と最も多く、次いで中国製が百丁、フィリピン製が七十五丁の順となっております。  この真正けん銃がどんな種類であるかということを見てみますと、最も多い銃種はトカレフ型けん銃でございます。平成四年以降連続して最も多い押収の銃種となっております。  また、過去五年間に密輸入で検挙押収したけん銃についてその仕出し国を見てみますと、タイ、フィリピン、米国の三カ国が上位を占めております。このほか近年は、南アフリカ、ロシア、中国等からの密輸入も見られるところでございます。世界じゅうのさまざまな国からけん銃が密輸入されている状況にある、このように見ておるところでございます。 <0083>=服部三男雄君= 先ほどの覚せい剤事犯と同じ問題点に触れるわけでありますが、銃器はある意味では覚せい剤よりも押収しやすい、大柄のものですから。そういう意味で、覚せい剤はその場で水にぽっと流してしまえばおしまいですけれども、銃というのは隠しようがないですから、所持事犯を検挙するのはそんなに問題はないだろうと思うんですが、大量の銃器を押収した場合に、そこから一挙に突き上げ捜査をやらなきゃいかぬわけですが、その点についても同じような困難な問題があるのじゃないかと思います。  その点についても、同じような説明になるだろうと思いますが、原因と、それに対する対策として何が必要なのかということを説明してもらいたいと思います。 <0084>=政府委員(松尾邦弘君)= 私自身が関与したけん銃の隠匿事件というのがございまして、真正けん銃三丁の隠匿事案でございます。その被告人の供述によりますと、もう十年、二十年と自分が持っていたものである、自分の家の納屋に隠していたんだという主張でございまして、そのとおりの内容で起訴いたしました。ところが、公判が進行するに従いまして、暴力団そのものの内部に抗争が生じました。その結果、内部が分裂いたしまして、彼の地位そのものが非常に微妙な状況になってまいりました。そんなときに求刑が行われて、懲役六年を求刑いたしましたら、その途端に被告人がちょっと待ってくださいということで、いや実はこれは検挙される三日前に暴力団の幹部から預かったんですということを初めて自白したケースがございます。その自白を今度は端緒にしまして警察が鋭意捜査をして、その組長と顧問と称する者を検挙したという事例がございました。  つまり、けん銃の所持そのものを検挙しても、いわば殺人の場合に鉄砲玉があるのと同じように、このようにけん銃の所持もしょって出る者がいるわけです。これは断固自分でしょって出るということでございますから、絶対に関与した幹部の名前は言わない、幾ら自白を慫慂しても頑張り通すというケースが基本的にはほとんどということでございまして、先ほどの薬物事犯と同じように、これを突き上げて行うというのはその向こうに大きな壁がある、つまり組織の壁があるということでございます。  こういった事例は、腰を据えたより深い徹底した捜査をやって一挙に検挙するという以外に組織の中枢に迫るということはなかなか難しい実情にあることをぜひ御理解いただきたいと思います。そのためにはいろいろな捜査手法が必要でございまして、今お願いしております通信傍受もその一つということで、ぜひ御理解いただきたいと思っておる次第でございます。 <0085>=服部三男雄君= 先ほども暴力団の動向のところで、住友銀行名古屋支店長射殺事件の説明を求めました。非常に企業に対して重大なインパクトを与えて、企業活動に対する影響を考えますと、本当に悪質きわまりない犯行であったわけでありますが、このような企業テロ、これは住友銀行事件だけじゃなくてほかにもありました。富士フィルム専務の事件もありました。  というようなことを考えると、今度衆議院を通過したロンダリングのところに株及び債権による企業の不当支配という項目もあるわけでありますが、これなんか不当支配どころじゃなくて命をねらっておるわけですから、こういう事犯に対して法務当局として、どのような影響があり、それに対してどのように今後対処していくべきか、考え方があれば聞きたいと思います。 <0086>=政府委員(松尾邦弘君)= この数年で起こりました企業の幹部に対するそういう凶悪事件ということで、今改めて振り返ってみますと、先ほど申し上げましたが、阪和銀行副頭取射殺事件あるいは名古屋鉄道社長宅に対するけん銃発砲事件、さらに、時系列で言っていますが、住友銀行名古屋支店長射殺事件、あるいは同じ年の同じ月でございますが毎日新聞東京本社に対するけん銃発砲事件、それから平成七年九月にはカシオ専務宅に対するけん銃発砲事件等、ざっと振り返ってみただけでも相当多数のこういう企業幹部に対するテロ事件というものがございます。  いまだに犯人の検挙に至らない事件もこの中にはかなり含まれているわけでございまして、こうした事件は、確かに背景は一様ではないと考えられますが、暴力によってこうした企業活動に不当な圧力を加える勢力の存在がこういったことからも十分にうかがえるところでございます。  このように今、正当な経済活動を行う企業幹部の命が脅かされるということは、我が国の健全な社会経済の維持発展につきましてまことに重大な脅威であります。これに対しては厳正に対処すべきものだというふうに我々は考えておる次第でございます。 <0087>=服部三男雄君= これも私の個人的な経験なんですが、私は二十年前にパリの大審裁判所へ研究員で行ったときに、アンブロシアーノ銀行頭取暗殺事件というのがあって、フランスのやや左翼がかった暴力団組織による犯行だったんです。そのころ、フランスの予審判事たちと協議したときに、将来これが政治家に向かう危険性があるんだ、イタリアが現にそれをやられている、フランスも非常にそれを憂慮しているという話がありました。事実、その後、イタリアで政治家がマフィアに暗殺される、あるいは癒着していた政治家がマフィアの情報提供によって逆に政治的生命を絶たれていくという例が散見されました。  日本も、今までの暴力団がやらなかった企業幹部の正当活動に対するこういうテロ、それからジャーナリズムに対するテロはここ十年間で歴然と出てきた。万が一にも政治にまで、かつてのシチリアのマフィアがやったように、日本の政治家に対してこういうテロ活動をやるようになってくると日本の民主主義の危機でありますということを私なんかは二十年前の経験からも憂えているわけでありますが、そのためにも法務当局及び警察は全力を挙げてやってもらいたい、このように思います。  そういうことで、再度、法務大臣にこの種事案に対するトップとしての決意をお聞きしたいと思います。 <0088>=国務大臣(陣内孝雄君)= 暴力団によるけん銃等による大変ゆゆしい被害というものが日本の国民生活の安全あるいは経済社会の健全な維持、発展を阻害している、ひいてはこれが民主主義の破壊につながるんじゃないかという御懸念は、私も同じような気持ちを持つ一人でございます。  私たちにとって一番大事な民主主義、これをやっぱり最後まできちっと守っていくためにも、今懸念されているようなこと一つ一つをしっかりと防いでいくような努力をしていかなきゃならぬと思いますが、そのためのいろいろな必要な手段、方法、これについてもひとつ用意をさせていただきたい、このように願っておるところでございます。 <0089>=服部三男雄君= もっと触れたいわけでありますけれども、時間の制約がありますので。  今は非常に世界は国際化の時代でございます。二十世紀はいわゆる資本主義と共産主義の対立の時代であった、それがベルリンの壁が壊れて十年、資本主義が世界に蔓延していく、いわゆる自由民主主義の時代が来ているわけであります。そうなりますと、資本主義はグローバリズムをとりますから国境の壁がない、人はジャンボジェット機で六百人がぽんと簡単に行ける。ましてやお金は自由にボーダーレスの時代になってくる。そうなりますと、日本のような豊かな国にどうしてもたくさんの外国人が入りたがるのはもう世界の流れの必然でございます。  一方では、アメリカのハーバード大学の先生だったと思います、名前はちょっとど忘れしましたが、アングラ犯罪組織集団と正規の自由民主主義体制との闘争が二十一世紀に大きく問題になってくるだろうということを説明した学者もおります。その一番典型例が日本で見られる蛇頭だと私は分析できると思います。この最近の蛇頭を中心とする集団密航事件、これは法務省の入管行政の根幹にもかかわる問題でありますから、重要な問題でありまして、しかもそれに暴力団でもくっつきますと、これは大変なことになりかねないという危惧される事件でございますので、その検挙状況についてまず説明してもらいたいと思います。 <0090>=政府委員(金重凱之君)= 最近の集団密航事件の検挙状況ということでございますが、平成十年中に検挙いたしました集団密航事件は六十四件の千二十三人でございます。その前年、平成九年に七十三件、千三百六十人と急増した年がございましたが、これと比較しますと、件数で約一二%、人員で約二五%減少しております。しかしながら、平成八年に二十九件、六百七十九人ということでございましたので、これと比べますと、平成十年は倍を超える件数になっておる、それから人員も前年に引き続き千人を超えておる、こういう状況になっておるわけでございます。  それから、本年、平成十一年でございますけれども、六月六日現在における検挙件数、人員でございますが、既に三十三件、六百七十六人ということになっておりまして、昨年の同期に比べますと三件、百八十一人増加しておるという状況でございます。依然として多発傾向が続いておるということでございます。  そして、この集団密航者全検挙人員の中で、中国人が平成十年中は八割、それから平成十一年のただいま申し上げました六月六日現在までの数字では九割を中国人が占めておる、こういう現状でございます。 <0091>=服部三男雄君= その集団密航事件についても、これはやっぱり組織的な団体が関与しなければできないと思う、千人、二千人の人間を運ぶというわけですから。しかも密航させるとなると、正規の港に上がらないわけですから、そういう特質を考えますと暴力団が関与していると思われるわけですが、その内容と実態について説明を求めます。 <0092>=政府委員(金重凱之君)= 確かに先生おっしゃられるように、この集団密航事件につきましては犯罪組織が関与しておるということがございます。蛇頭、そして暴力団が関与しておるという部分があるわけでございます。  今申し上げました、例えば平成十年でございますが、中国人による集団密航というのは全検挙人員の中の八割を超えておる、こういうことで申し上げましたし、ことしはもう九割を超えておる、こういう状況なんですが、その背景には蛇頭と呼ばれております密航請負組織の介在が見られるわけでございます。それから、中国から日本等へ密航するという者を請け負う蛇頭の活動が行われる過程で、一部我が国の暴力団との連携というのも見られるわけでございます。 <0093>=服部三男雄君= その集団密航の態様について説明が足りません。 <0094>=政府委員(金重凱之君)= それでは具体的に。  集団密航が行われることの背後には、相当の請負料を取るということを目的にしまして、送り出し国での密航者を勧誘するという役割を持つ者がございます。それから送り出し国から引率するという役割、それから搬送する船舶や偽造旅券等を調達する、それから行き先国での密航者の隠匿をする、隠すということでございますが、それから不法就労のあっせんを行うというようなこと等を行う組織、これが密航請負組織ということで、私どもその組織の総称を蛇頭というふうに呼んでおるわけです。そういったものがあるということでございます。  それから、暴力団がそこに絡んでくるという部分について申し上げますと、これまでの事案の中では、この密航者の受け入れのための船の手配をしたり、あるいは陸地でのレンタカーの借り上げ等の輸送車両の手配をする、あるいはこの密航者の隠匿、隠す場所の手配をする、あるいは密航者が逃げないようにということでの監視をする、こういうようなことで暴力団関係者が関与しておるという実態が見られております。 <0095>=服部三男雄君= 先ほどちょっと説明しましたように、集団密航ということで正規の港に入ってこないわけですから、日本は御案内のとおり海浜ラインが非常に長いわけですね、海辺が。海上保安庁も一生懸命やっているし、警察もやるでしょうけれども、もともとそんなに多数の人間を配置しているわけじゃない、手薄なわけだ。ということで、集団密航は検挙されている、千三百人ということでありますけれども、暗数があるんじゃないか。要するに、わからない、警察がまだ把握し切れていない部分もあるんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけであります。  警察用語で言うと、認知されていない事件ということになるわけでありますが、そういうことを考えますと、どういうふうにすればそれを解決できるのか。そのために一番いいのは、もうだれでも、子供でもわかるわけですが、蛇頭の首謀者のところをごぼっと全部やってしまえばそういうことが防げるわけでありますが、その点について法務当局の方に尋ねましょうか。法務当局は入管行政も絡むから、法務当局の方へ回答を求めます。 <0096>=政府委員(松尾邦弘君)= 御指摘のとおり、集団密航事件のある事犯というのは、その性質上、いわゆる暗数、検挙に至らない件数が相当あるのではないかと考えられております。これは単に推測ではございませんで、不法残留者を一斉検挙いたしますと、この中には正規の旅券を持って入ってきておりましたが滞在期間を超えて残留するという者ももちろんいるわけでございますが、そのほかに、こういう密航事犯により入ってきた外国人というものが検挙されるケースが相当ございます。そういったことから推測しますと、こういう密航事犯は相当な暗数があるということ、あるいはそういうふうに見ざるを得ないということでございます。  この種事犯でございますが、今委員御指摘のように、一番の検挙の要諦は、不法に上陸する者を上陸する時点で一斉に検挙するということができればこれが一番いいということになるわけでございます。そのためには、外国と我が国で密航事案を計画してそれを具体的な行動に移す段階から的確にその行動をつかまえて、首謀者、実行者あるいは末端を手伝っている者まで含めて全容を解明して、日本に上陸し密入国した者たちが拡散しない前にそれを検挙するということがこういう事案を防圧する最大の捜査体制ということになるわけでございます。この種事案も性質上非常に組織的、非常に緻密に計画され、また非常に高度の通信機器等を利用しております。そういうことで、なかなか捜査がその中枢に迫れないというのが実情でございます。  先ほど警察の方からも瀬取り船ということがございましたが、密航船そのものが港に隠密裏に入港して上陸するというケースよりも、むしろ最近では沖合でそういう外国人の受け渡しをするというケースも非常にふえてきております。そうした際にはもちろん通信機器が多用されるわけでございます。また、国内の搬送手段の準備等についても携帯電話、固定電話等を含めまして通信機器が多用されているということでございます。  捜査当局としましては、こうした密航計画の全容を把握するための捜査を進めることができるようにすることが肝心であるということでございます。また、そのための捜査手法も、ぜひ通信傍受を含めて導入したい、あるいは活用して、さらにこうした事案の検挙に努めたいと考えているところでございます。 <0097>=服部三男雄君= 入管行政を考えますと、日本のような豊かな国、日本へ来ると一働きできるという、外国の貧しい人たちから見れば来たがる気持ちはよくわかるわけです。別に来たがることをそんなに防ぐ必要もないと私は個人的には考えますが、ただ、異文化に接するということと、日本における外国人に対する理解もまだ余り進んでいない。貧しい生活をする、中には不心得なやつもたくさん入ってくるということで、それが日本の治安に悪影響を及ぼすことが怖いわけであります。外国人が日本に来ることを拒むのではなくて、日本で治安が悪化すること、これはもう世界の例を見ましたらわかるとおりでありまして、ドイツにおけるトルコの問題とか、フランスにおけるアルジェリアの問題とか、世界のどこを見ましても低開発国からたくさんの人間が来たときには治安が悪化するのはもうこれは避けられない事実でございます。  そういう意味で、外国人犯罪の動向、特にそれが凶悪化の傾向が認められるのかどうか、その点について警察から実情を説明願います。 <0098>=政府委員(林則清君)= お尋ねの来日外国人による犯罪でございますが、平成十年中の来日外国人による刑法犯、特別法犯を含めました検挙の状況が、検挙件数三万一千七百七十九件、それから検挙人員の方が一万三千四百十八人ということでございまして、平成元年の五千七百六十五件、四千六百十八人というものと比較をいたしますと、件数で五・五倍、人員で二・九倍というふうに数字の上ではなっております。  それで、来日外国人の犯罪の傾向といたしましては、まず犯罪が組織化しているということが挙げられまして、平成十年には、刑法犯で見ますと共犯事件というのが九千三百四十九件と全体の四三%を占めております。平成元年の共犯事件が二百八十八件で約八%でありましたものと比較しまして非常に増加しておるということでございます。  このような来日外国人犯罪が組織化しておるということの原因といいますか、これは国内における不法滞在者を中心としてグループ化するという面と、国際犯罪組織の活動が背景にあるというふうに考えておりまして、具体的には、近年では例えば香港三合会、トライアドによる貴金属店対象の強盗事件でありますとか、あるいは中国人グループによる組織的連続窃盗事件、それから中国人らによる中国人女性身の代金目的誘拐事件など、こういった事件が組織的に行われるところが見られるところであります。  つけ加えますと、これらの犯罪の中には、我が国の暴力団が関与をしておるという事件も認められるところであります。  そしてまた、お尋ねの凶悪化という点につきましても、平成十年中の来日外国人による殺人、強盗等の凶悪犯の検挙状況は、検挙件数が二百二十八件で検挙人員二百五十一人というふうに、平成元年の九十八件、九十四人に比較して大幅に増加しており、数字の上でも凶悪化が進んでいることが明らかなわけであります。  これら凶悪犯の検挙人員の約五五%が不法滞在者でございまして、これらの不法滞在者が組織的に凶悪事件を敢行しておるという事件も見られるところであります。凶悪犯の中には、先ほど来問題になっておりますけん銃を使用する者も見られ、さらには警察官に対してもけん銃を発砲してくるという事件も発生しておるところでございます。  このように、来日外国人による犯罪は、量、質ともに悪化しておる、我が国の治安に対する重大な脅威となっておるものと認識しております。 <0099>=服部三男雄君= そういうことで、集団密航事犯というのは我が国社会の治安に非常に悪影響を及ぼしていると言わざるを得ないわけでありまして、入管行政をも所管される法務大臣に、この点について決意を述べていただきたいと思います。 <0100>=国務大臣(陣内孝雄君)= 集団密航者の増加は我が国の社会に対する重大な脅威となっております。集団密航者の大半は、上陸後、全国各地に分散して不法就労活動に従事しており、我が国の出入国管理制度の根幹を揺るがしかねない事態が生じております。  また、多数の集団密航者が不法就労活動に従事することによりまして、国内労働者の労働条件の向上を阻害し、低賃金労働市場を固定化して労働市場の階層化をつくり出すという弊害も生じかねません。さらには、国内の雇用機会が不足している高年齢者等の雇用への圧迫等ももたらしかねない事態を生じていると認識しております。  治安の面においても、集団密航者を含む不法滞在者による犯罪が多発している上、その内容も悪質化の傾向があり、凶器を使用した殺傷事件や身の代金目的略取事件など凶悪犯罪や薬物密売事犯を犯す者も少なくなく、犯罪の多様化、広域化が認められ、さらに同じ外国人同士が相互に結合したり、蛇頭など海外の犯罪組織や日本国内の暴力団等と連携するなどして犯罪組織化する傾向が見られるわけでございまして、このことが国民生活の安全と平穏を脅かす事態を生じかねない、このように認識しておるところでございます。 <0101>=服部三男雄君= 法務委員会に常に出席しております法務省の但木官房長宅にボーガンの矢が撃ち込まれるという衝撃的な事件が起こりました。  数年前に警察庁長官狙撃事件がありました。昭和二十年代にそういう役所あるいは政官に対する事件があったようでありますが、その後ずっと日本は極めてそういう事件がない世界一平和ないい国であったんですが、ここ数年、政官の官の方ですけれども、ねらう事件がある。私も新聞を読んだときに本当に戦慄する思いをしました。  ただ、ボーガンの矢と言われてもぴんとこなかった。その翌日に埼玉県警か川越署の発表で、優に殺傷能力のあるものだという実例を挙げて写真で説明されていて、しかもそれが四本も五本も撃ち込まれているという事件であるというふうに聞いて、この事件の重大さというものを、しかも組織三法案が審議されている最中だということを考えると非常にこの問題について重大な関心を持たざるを得ないと思います。  まず、その事件の概要を警察に説明を求めます。 <0102>=政府委員(林則清君)= お尋ねの事件は、平成十一年五月三十日未明に埼玉県川越市所在の法務省官房長の自宅にボーガンの矢が撃ち込まれ、さらに車庫内の自家用車のタイヤに千枚通しが突き刺されるなどしておった事件であります。  埼玉県警におきましては、法務省の現職の幹部宅に対し、今お話がありましたように大変殺傷力のあるものが撃ち込まれたという事件でありますことから、自宅の警戒を行いますとともに、専従の捜査班を設置しまして犯行の背景をも含めて鋭意捜査を推進しておるところでございます。 <0103>=服部三男雄君= 予定の時間がまだあるので、その点について詳しく聞きますが、まず、ボーガンの矢と言われてもよくわからない。もうちょっとそれを説明していただきたい。それが何本撃ち込まれたのか。その犯行の手口、被害者もそこにおりますけれども、手口をもうちょっと詳細に説明してくれないか。 <0104>=政府委員(林則清君)= 記憶力が悪いのと、手元に資料を持っていないので、私ども確実に把握しておるところから言いますと、本数は、まず台所の方へ撃ち込まれたもの、それから庭で発見されたもの二本、ですから少なくとも三本以上は撃ち込まれておると記憶しております。  それから、ボーガンというものの矢をどういうふうに示していいのか、失礼しました、発見されたボーガンの矢は四本でございました。おわびします。  それで、これは長さがこれくらいの、うまく説明できませんけれども、威力もそのまま直接人に当たれば完全に殺傷力がある。たまたま台所の方へ撃ち込まれておりますが、奥様が台所においでにならなかったということで大事に至らなかったわけであります。もしおられれば大変なことになっておる可能性があった、そういうようなものでございます。 <0105>=服部三男雄君= 法務省の官房長ということになりますと、その直属の上司は法務大臣でございます。法務大臣としましては、特に組織三法案を審議中の時期に国会対策の中心である官房長宅に対する事件ということになりますと、その背景、動機について官房長の職務に絡むと言わざるを得ないというふうにお思いだろうと思います。それだけに、法務行政の長であられる法務大臣としましては非常に憂慮されていることと思いますが、この件についての所感、決意を伺って質問を終わりたいと思います。 <0106>=国務大臣(陣内孝雄君)= お尋ねの事件につきましては、ただいま警察庁から御報告がございましたように、現在捜査当局において捜査中であり、その背景、動機等は不明であるというふうに承知しております。  しかしながら、最近の当省をめぐる諸情勢にかんがみますと、本件の背景、動機については当省官房長としての職務に絡む事柄もその可能性としては否定できないのではないか、このようにも思えるわけでございます。もし職務に絡む事柄が背景、動機になって本件のような個人の居宅に対する極めて危険な犯行が敢行されたものであるとすれば、卑劣きわまりないものであるとともに、法秩序に対する挑戦とも言えるわけでございまして、大変悪質な犯行であると考えるところでございます。  いずれにしましても、本件につきましては、早期に犯人が検挙されて、厳正に処罰されることを期待しております。 <0107>=服部三男雄君= 質問を終わります。 <0108>=委員長(荒木清寛君)= 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時開会 <0109>=委員長(荒木清寛君)= ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、藁科滿治君が委員を辞任され、その補欠として小川敏夫君が選任されました。     ───────────── <0110>=委員長(荒木清寛君)= 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 <0111>=千葉景子君= 私は、きょうの質疑につきまして、人権問題を中心にして何点かお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  ことしはどういう年かということを改めて考えてみたいというふうに思うんですけれども、実は昨年は世界人権宣言五十周年という大変記念すべき年でございました。国連を初め世界各国で世界人権宣言の持つ意義を再確認し、そして来るべき二十一世紀を人権の世紀とするために、各国政府としても人権の保護と、そしてその伸長に向けたたゆまぬ努力を推進していこう、それぞれそういう表明などもあったところでございます。我が国でも、国会でこれに基づいた決議などもされましたし、法務省を中心として人権宣言五十周年を記念するさまざまな行事も施行されたということも承知をさせていただいております。そういう年が明けまして、いよいよ次の五十年、新しい時代に向けて、こういう時期にことしは差しかかっているのだろうというふうに思っております。  それから、実は国連人権教育の十年、人権教育のための国連十年、これが一九九九年、本年がちょうど中間年ということになるわけでもございます。そういう意味では、この前半の五年間、これを十分に検証しながら、そして人権教育を今後さらに深めていくという意味で後半どのように取り組んでいくか、こういうまた節目にも差しかかっているところであろうというふうに思います。  また、この委員会でもさまざまこれまで取り上げさせていただいておりますけれども、いわば人権擁護行政、あるいはそれぞれの各国の人権状況につきまして国連の人権機関などもさまざまな取り組みをしております。そして、昨年も、規約人権委員会などで日本の人権状況などにさまざまなコメントあるいは勧告、意見なども表明されました。この内容、大変盛りだくさんでございますけれども、関連する問題につきましては、この委員会でもしばしば取り上げられているところでもございます。  こういういろいろな節目あるいは国際社会の動き、こういう中で、いわば我が国もこれからもう間もなくやってこようという二十一世紀に向けて真の意味で人権の保障される、いわば世界でもリーダー国としてこれから進んでいく、こういうことが求められようかと思います。改めて法務大臣に、人権問題を管轄する責任者として、このような節目に立ち至り、そして国際的なさまざまな動向なども踏まえてどのような認識をお持ちでおられるのか。そして、その上に立ってこれからの人権擁護行政、こういうことについてどのような心構え、あるいは方向性を持って取り組まれていこうとされるのか。この際、改めてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。 <0112>=国務大臣(陣内孝雄君)= 人権の尊重が日本国憲法の柱であり、民主政治の基本であるということは十分承知しております。  ただいま委員が世界人権宣言五十周年、五十周年を迎えた我が国の去年またことしの意義についてお話がございましたけれども、世界人権宣言や国際人権規約等によっても人権の尊重が強くうたわれているということも承知いたしております。  法務省といたしましては、日本国憲法や世界人権宣言の精神にのっとりましてこれまで人権擁護行政の推進に努めてまいりましたが、今後ともすべての人々の人権が尊重される平和で豊かな社会の実現を目指し、人権擁護行政の推進により一層努めてまいりたい、このように考えております。 <0113>=千葉景子君= ぜひ基本的な姿勢を鮮明にしていただきまして具体的なさまざまな取り組みをしていただきたいというふうに思いますが、そういう意味で、何点か人権にかかわる問題についてこれからお尋ねをしたいというふうに思います。  まず、ちょうどこういう状況の中ですが、実は人権擁護推進法に基づきまして人権擁護推進審議会が今議論を進めておられるというふうに聞いておりますが、つい先般、五月二十五日でしょうか、この夏にも答申が出されるやに聞いておりますが、そのたたき台ともなる素案をまとめられたというふうに聞いております。報道などがされているところでございますが、まずその素案、たたき台というんでしょうか、この内容、それから今後このたたき台、素案に基づいてどのような段取りがとられるのか、それについてちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。 <0114>=政府委員(横山匡輝君)= 御指摘の答申素案は、本年五月二十五日に開催されました人権擁護推進審議会に提出され、現在これに基づきその内容について検討中であると承知しております。  この五月二十五日の審議会におきまして、この答申素案は非公開という扱いにする旨決定されておりますので、その内容については答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  それから、今後の予定につきましては、答申案が取りまとめられました段階で国民の方々にこれを公表し、国民の方々からの意見を聞いた上で答申を確定し、本年七月末ころを目途に公表する予定であると承知しております。 <0115>=千葉景子君= 確かに非公開ということのようでございますけれども、七月末ころにまとめられるという状況だとすれば、それまでそんなに時間はないわけですね。やはり今後の我が国の人権のあり方あるいはその教育、啓発、こういうものの進め方、こういうものについてどうしていくかという問題でもございますので、非公開で、そして時間もそう長いことないところでまとめられるというのは、私は大変疑問に思うんです。できればきちっとした問題点を示していただいて、今のお話ですとこれから広く意見も求めるということではございますけれども、せっかくこういう法務委員会などもあり、そういう場でも意見を反映できるような姿勢というものをぜひ持っていただきたい。これは審議会の方の問題であろうかというふうに思いますけれども、審議会のできる限りの公開というのは今要請をされていることでもございます。  そういう意味では、非公開ということですから、お答えできないというのはそのとおりの答えかもしれませんけれども、私はその点については大変疑問に思います。  七月末ころということですけれども、それまでに例えばいわゆるパブリックコメントといいましょうか、さまざまな意見を聴取するということになろうかというふうに思うんですけれども、それは具体的にはどんな形で、そしてまたどういう分野といいますか、幅広くどういう形で意見を求められるということになるのでしょうか。 <0116>=政府委員(横山匡輝君)= この答申素案というのは答申案を作成する上での全くたたき台でございまして、今これを審議会でいろいろと審議をして、いろいろ必要があれば修正すると思うんですね。今その作業をしている、審議をしている最中でございます。この答申素案につきましては、今のところ、六月十八日に答申案を公表する、そういう予定で今審議が進められているところでございます。  それで、この公表の方法でございますが、一つは、直接法務省に来ていただいた方に手渡すという方法はありますけれども、それ以外にファクスあるいは電話等の申し込みによって郵送するという扱い、それからまたホームページを開きましてインターネットでアクセスすることもできる、そういうことも考えております。それからまた、国会議員の方々、関係する議員の方々等に対しましてはお届けさせていただくということを考えております。さらにまた、この審議におきまして、いろいろな人権課題に関しましての各種人権団体、人権に関する運動をしています団体等からヒアリングをしております。そういう団体に対しては直接この答申案をお送りする。多様な方法で国民の方々から意見を聞くという方法を考えておるところでございます。 <0117>=千葉景子君= これはファクス、電話で申し込みを受ける、あるいは法務省へ来てもらったらということでもあるし、ホームページということもありますけれども、逆に言えば、こういうものは例えばきちっと報道機関に乗せて、そしてだれもがすぐにわかるようにするというようなことも当然考えてしかるべきだというふうに思います。  というのは、今回、そのたたき台ということについて非公開という話ではございますけれども、報道はされているんですね、各新聞などに。これは正式な報道でないんだと言われるのかもしれませんけれども、非公開にしてもそういうものがまとまったということになれば、やっぱり多くの皆さんが関心を持ち、それから報道機関などもそれについてできるだけ早く知らせたいということもあるでしょう。こういう新聞等にやっぱり出てきます。  逆に言えば、そこに正確な中身が報道されませんと、むしろ誤解を招いたりすることにもなりかねない。そういう意味では、ぜひ内容あるいは審議の状況などをむしろ法務省の側から積極的に伝えていくということが必要ではないかというふうに思います。  それで、先ほど非公開なのでというお話でしたけれども、新聞報道等で素案の内容が報道されています、正しいのか正しくないのかはあれですけれども。この報道等をかいま見ますと、幾つかやっぱり問題点というものが出てくるような気がいたします。  この審議会の設置につきましては、法案審議の際に附帯決議などが付されております。これも十分に御存じのところであろうというふうに思うんです。  その素案の中身から考えますと、どうも幾つか私が指摘させていただくような点で不十分さあるいは問題点を残しているように思うんです。  例えば、この推進法の審議の際の衆参の附帯決議、これによりますと、参議院の法務委員会での附帯決議ですけれども、「人権尊重の理念に関する教育及び啓発の基本的事項については二年を目途に、人権侵害の場合の被害の救済施策については五年を目途になされる人権擁護推進審議会の答申等については、最大限に尊重し、答申等を踏まえ、法的措置を含め必要な措置を講ずること。」、こういう附帯決議になってございます。  この答申の内容でもどういう法的措置をきちっととるべきかということなどがどうもいま一つはっきりしていないのではないか、こういう報道等の指摘もございます。五年後ということになりますと、五年後には今度は救済策に伴ってさまざまな法的な措置ということも検討していくことになろうかというふうに思うので、やはり今回の答申の内容、そしてそれを踏まえての法的なきちっとした措置、法律の策定を含めて、こういうことが求められるのではないかと思いますが、どうもその点がいま一つはっきりしていないとの報道がございます。  それから、人権についての教育や啓蒙ということになりますと、やっぱり各省庁の連携、そして国と自治体との連携、あるいは行政機関と民間の連携、ボランティア、NGO含めて、こういうトータルな協力体制が必要であろうというふうに思います。そうなりますと、それをコーディネートしたりいろいろ連携を図っていくための機関とか設備とか、それに伴うスタッフとか、そういうことが必要になってくる。  とりわけ、地方自治体などでこういう取り組みをするとなると財政的な問題も出てこようかというふうに思うんですけれども、こういう点について十分な答申案になっているのかどうか、その辺にも多少疑問が残るように指摘をされております。あるいは、都道府県などを単位にした地域の組織づくり、体制づくり、やはり全体で取り組んでいくという意味ではそういうことも必要であろう。こういう問題がどうなっているのか。  先ほども指摘をいたしましたけれども、国際的な人権諸条約とか、あるいはそれに基づいて人権機関がさまざま表明をする意見、あるいは日本に対するさまざまな問題指摘、こういうところが十分に考慮されて、あるいは認識をされた上で今回の答申案、そのたたき台というものにつながっているのかどうか。このあたりも、多少どうも、私もつぶさに内容がわかりませんけれども、報道等からうかがい知るところによると問題点があるのではないかというふうに思われます。  このあたりについては、今たたき台は非公開ということで具体的にお答えできないのかとは思いますが、もう近いうちに答申案がまとめられて公表される。それに基づいて法務省としてもさまざまな施策やあるいは取り組みを進めていくことになるわけですから、こういう問題点はどういうふうに扱われているのでしょうか。それで、法務省としてはどう考えておられるのか。いや、こういう問題点はもう審議会で言われなくても当然法務省は考えておることなんだから気にするなということなのか、あるいは審議会でももう少しそれらの点について十分に議論してもらいたいというふうに考えているのか。ちょっとその辺についての御説明をいただきたいと思います。 <0118>=政府委員(横山匡輝君)= 最初に、先ほどの答申案の公表の点で、先ほど委員から御指摘されましたマスコミを通じての公表というのを私の方でちょっと落としておりまして、どうも失礼いたしました。マスコミによる公表ということも当然考えておるところでございます。  それで、今委員からいろいろお話がございましたが、最初に出ました法的措置の点と、そのほかいろいろ出ておりますけれども、全体としましては、先ほど来御説明しておりますように、人権教育、啓発の基本的なあり方についての答申の方向性については、現在取りまとめの作業中であるので答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。  法的措置の点でございますが、確かに人権擁護施策推進法成立の際の衆議院及び参議院の法務委員会で先ほど委員御指摘のような附帯決議がなされ、「人権擁護推進審議会の答申等については、最大限に尊重し、答申等にのっとり、」、またはこれを踏まえて、「法的措置を含め必要な措置を講ずること。」とされております。附帯決議の内容からも明らかだと思いますけれども、これは政府に対するものでございまして、審議会との関係では、答申に盛り込むべき内容について述べているものではないというふうな理解をしておるところでございます。  また、こういう法的措置の問題、それから国と地方自治体との人権教育、啓発を進めるに当たっての連携の問題、あるいは行政側と民間団体との連携の問題等々、これらは審議会の審議の中ではいろいろと議論が出てきているところでございます。したがいまして、今答申案の作成過程でございますが、こういう答申案を作成する過程の中でもこういう議論が出ているということを踏まえて審議会の認識、考え方というのが示されることになるのではないか、このように考えておるところでございます。 <0119>=千葉景子君= 御説明の趣旨はよくわかりますが、答申案が出ましてから、むしろ法務省として、それを受ける方がやはりきちっとした法的措置を講ずるなり、それから例えば各省庁の連携や自治体との連携を含めて十分な財政措置、こういうものも必要になってくるだろう。当然のことながら、これはむしろ国に対する決議ということになりますので、この答申案が出ましたときにはぜひその附帯決議の趣旨というものを踏まえて対応していただきたいものだというふうに思いますが、その点について法務省としての御決意のほどというのはいかがでしょうか。 <0120>=政府委員(横山匡輝君)= 審議会の答申が出されました際には、私どもこの附帯決議の趣旨を体しましてこの答申を最大限に尊重し、答申等にのっとりまして、あるいは踏まえまして必要な措置を講じてまいる、このように考えております。 <0121>=千葉景子君= さて、人権問題については、冒頭申し上げましたように、世界人権宣言あるいは人権教育の十年とかそして国際的な日本に対する指摘、こういうことを踏まえていく必要があろうと思います。昨年、国連の規約人権委員会からさまざまな勧告、指摘がされております。先般来、この委員会で外国人に関する問題についてもたび重ねて規約人権委員会の勧告の内容が引用されたところでもございます。  その中で、きょうは一つ指摘をさせていただきたいんですけれども、いわゆる刑事関係につきまして証拠の開示というものが十分でないということが規約人権委員会の中でも指摘をされたところでございます。これは今回が初めてではございませんで、たび重ねて指摘をされているところでもございます。規約人権委員会では、刑事法によると検察には証拠を開示する義務が存在していない、こういうことに懸念が示されておりまして、弁護側あるいは被告人側がその証拠を十分に検討した上で防御権を行使することができるように、そういうことが求められているところでもございます。  この問題については、背景として、もう御存じのとおり、再審に係る証拠の開示、狭山事件などを中心にして問題がずっと指摘をされてきたこと、これは法務省の方でも十分御存じのところであろうというふうに思っているところです。証拠の開示がなかなかされないということについては、この間何回か私もお尋ねをして、おおよそ理由としては、プライバシーにかかわるという問題点が一つ、それから将来に対して捜査上支障が出る可能性があるというようなことが挙げられているように思いますけれども、これだけ規約人権委員会などでも指摘をされ、そして事実の解明や被告の防御権などということを考えましても、この証拠の開示という問題について積極的に前向きな姿勢をとられるべきではないかというふうに思いますが、どうでしょうか。考え方はこの間全く変わっておられないのでしょうか、ちょっとお聞きをいたします。 <0122>=政府委員(松尾邦弘君)= 今お尋ねの点につきましては、これまでも法務当局からお答えをしてきたところでございまして、基本的にはその立場は、お答えの内容そのものはなかなか変わり得ない状況でございます。  委員御指摘のように、証拠の開示につきまして刑事訴訟法の規定がございますが、検察官個々に、事案ごとに被告人の防御上合理的に必要と認められる証拠を適切に開示するということが規定されておりまして、法務当局としましては、弁護人等には公判準備に必要な証拠の開示を受ける機会が十分に保障されているものという考えで従来から来ておるところでございます。  また、再審請求事件におきましても、再審請求者に対する公判に提出していない記録の開示につきましては、事件の争点との関連性、あるいは今先生御指摘のとおり、関係者のプライバシー等の保護、あるいは将来の捜査における協力の確保等の観点から、その検察官において個々の事案ごとに個別に判断して適切に対処しているものと考えておるところでございます。  先生の今御指摘のあります狭山事件につきましても、現在、事件を担当する検察官と弁護人との間で個別にまだ協議が断続的ではございますが続いている状況というふうに理解をしているところでございます。 <0123>=千葉景子君= 考えるに、一般的な問題としてプライバシーにかかわる、それから将来の捜査に影響があるということは全く私も否定するものではございません。  ただ、狭山事件なりの再審問題を考えますと、捜査から経過をする年月を考えると、プライバシーと申しましても、例えば関係者はもうかなり御高齢になり、あるいはお亡くなりになったりしているケースもございます。それからさまざまな報道あるいはこれまでの事実の解明などによってプライバシーという問題もかなり緩和されているのではないか。  それから、将来にわたる捜査に対する影響というのは、これはもう捜査というのは終了し、そして再審の段階でいわば本当に最終段階ということを考えれば、将来の捜査への支障ということはまず余り理由にはならないのではないかというふうに思います。  こういう非常に長きにわたるこれまでの経過を考えたときには、やはりこの際きちっと必要なる証拠を開示して、そして事実の解明というものに検察としてもやっぱり協力をしていく必要があるのではないか、こういう気持ちがしているところです。  それでもいろいろ問題があるということであれば、例えば一般に公表しなくても、裁判所で裁判官が証拠を見て、これはプライバシーやあるいは捜査に支障がない、何らかのそういう判断を第三者的に加えることもできるだろう。インカメラ方式のような形で第三者としての裁判所がそういう判断をする、こういう手続も工夫をすればできないことではない。  こういうことなどを考えますと、この間の長きにわたる多くの皆さんの努力、こういうものに報いていく、あるいはきちっと対処していくという意味で、やはり大臣としても一つの決断を。これは検察ということになりますので直接口を出しにくいということもあるかとも思います。それは私も十分承知の上ではございますけれども、やはり大臣としても、こういう問題について一つの大きな解決の糸口あるいはそういう環境づくり、こういうものに決断をいただく時期ではなかろうかというふうに思いますが、いかがですか。 <0124>=国務大臣(陣内孝雄君)= 狭山事件につきましては、現在東京高等裁判所で再審請求が係属中でございます。公判に提出していない記録の開示につきましては、事件を担当する検察官と弁護人側との間で個別に協議をしている、このように承知いたしておりますので、法務大臣の立場としてはお答えする立場じゃないんじゃないか、このように考えます。 <0125>=千葉景子君= 大臣のお立場、検察に対する大臣という意味ではお答えしにくいということはわかりますが、きょう私も何点か指摘をさせていただきました。刑事局長も大臣もその思うところは十分に御理解をいただけたのではないかなという気もいたします。そういう意味では、ぜひ検察側と弁護団なりとの協議の場でよりよき方向性が出ますように、指示をしろとはなかなか言いにくいですけれども、そういうものを十分に側面からサポートいただくようなお心で対応していただきたいものだというふうに思っております。  私の時間が多少過ぎておりますけれども、もう一点だけお尋ねをしておきたいというふうに思います。  それは、やはりこの規約人権委員会で指摘をされているところでございますし、それからこのところの省庁再編の問題、そういう中で法務省の人権擁護局の存置などもいろいろ議論をされてまいりました。存続の方向にはなっておるようでございますけれども、この人権擁護にかかわる管轄場所ですね。法務省で本当に努力をいただくということは私も当然のことであろうというふうに思っております。全国に人権擁護委員の皆さんがいろいろな形で取り組みをされておられるということも十分承知をしているところでもございまして、むしろより一層人権擁護について、先ほど大臣の最初の御発言もございましたけれども、積極的に取り組んでいただくということは前提の上でもございます。  ただ、それにしても、やはり日本の場合に、人権擁護についてあるいはその救済などについてこれまた審議会がさらに検討をする問題ではあろうかというふうに思いますけれども、いわゆる政府あるいは各機関から独立をするような形で第三者的に救済を図るというような機関が存在をしないということについて、国際機関からもやはり懸念や指摘がされているところでございます。  確かに法務省が人権擁護の機関であり、そして、法務省がそれについてちっともやってない、だめだから法務省から独立せいと言うつもりは決してないんですけれども、やはりそれぞれの行政機関というものの指揮命令あるいはその管轄というものを受けず、行政機関にもきちっとした目を凝らし、そしてさまざまな国内の人権擁護、救済を図っていく機関の必要性というものがあるのではないか。この国際的な指摘というのも私はうなずける部分ではなかろうかというふうに思っております。  人権擁護機関の体制、現状を私も調べさせていただいているところでございますが、これはこれとして、こういう独立した機関というものを検討していく、これは審議会なりで御議論いただくということと同時並行でやっていかぬということは別にないわけでして、こういう問題について法務省としてはどのように考えておられるのでしょうか。 <0126>=政府委員(横山匡輝君)= 人権救済制度のあり方につきましては、今の委員のお話の中にも出ておりましたけれども、人権擁護推進審議会におきまして、法務大臣からの諮問に基づき本年九月以降本格的に調査審議がされる予定であると承知しております。  委員御指摘のとおり、昨年、規約人権委員会からは人権侵害の申し立てに対する調査のための独立した機関を設置すべきとの指摘を受けておりまして、人権救済を行う機関につきましては一定の独立性が必要との考え方もあるところであります。  法務省としましては、審議会での調査審議の結果も踏まえて慎重に検討してまいりたい、このように考えているところでございます。 <0127>=千葉景子君= こういう問題は、もちろん審議会にもいろいろな知恵を働かせていただく。しかし、それを待つまでもなく法務省の方も積極的に議論をして、むしろ早過ぎて悪いということは全然ないわけです。  今、いろいろな分野で独立した救済機関のような議論はされているというふうに思います。例えば、つい先般成立いたしました男女共同参画社会基本法、こういう中で男女共同参画に対するさまざまな救済についても、いわばオンブズパーソンなり独立した救済機関、審議機関のようなものが必要なのではないかという議論もされ、あるいは子供の問題でも独立して子供の人権などをきちっと救済できるような機関の設置が必要ではないか、こういう問題などもあり、あるいはいわば雇用の場では同じように独立した審議機関という一定のそういう方向があるわけです。そういう意味では、さまざまな場で人権というものを考えたときには、それを救済し、そして本当に公平公正な立場で独立した判断ができる、こういうものが、これは今始まったことではなくて既にずっと求められてきているわけです。  そういう意味では、審議会がことしの答申を出したら今度は次のに取りかかって、そこで答申がされるのでそれを待ちながらということではなくて、審議会にもいい意見を出していただく。でも、それに先立って議論を始めて、そして審議会の議論ともあわせて、できるだけこういうものにスピーディーに対応していくということが必要ではないかというふうに思います。  どうでしょう、大臣。こういう問題について待ちの姿勢ではなくて、決して審議会をおろそかにしようという意味ではありませんけれども、法務省としてもこういう議論を積極的に展開して、審議会と本当に協力しながらいい結論を出していく、こういう姿勢をお持ちいただいたらよろしいのではないかというふうに思いますが、大臣、その辺について御意見を伺わせていただきます。 <0128>=国務大臣(陣内孝雄君)= 人権擁護施策の重要性につきましては、るる委員御指摘のとおりでございます。  ただいま審議をいただいております中央省庁等の改革の中でも、人権啓発につきましては法務省が所掌するということで進めることになっております。  問題は、人権擁護施策となりますと、おっしゃるようにいろんな行政分野にまたがるわけでございますが、まず啓発という分野を私どもは担当しながら、今各省庁でしっかりとそれぞれの施策が円滑に連携をとりながら進んでいくような、そういう中心にならなければならないということは常に審議会の結論を待つまでもなく考え、取り組んでいく必要があると思います。  私どもは、人権擁護に関しましては、組織的にも、またこれまでの経験的にもしっかりとしたものを持っておりますので、そういうもので人権擁護施策全般が推進できるような立場を築いていきたい、このように考えております。 <0129>=千葉景子君= 終わります。 <0130>=委員長(荒木清寛君)= 速記をとめてください。    〔速記中止〕 <0131>=委員長(荒木清寛君)= 速記を起こしてください。 <0132>=小川敏夫君= 民主党・新緑風会の小川でございます。  最初に、警察庁それから公安調査庁にお尋ねします。  最近のオウム真理教が、凶悪事件を起こした際、重立った人間が検挙されて宗教法人も破産になったということで一時影を潜めていたのでございますが、最近になってまた顕著に活動するようになって、各地で大変大きな社会問題を起こしているというような状況になっております。  まず、オウム真理教の現状についてお尋ねしたいんですが、これは警察庁、公安調査庁の両方じゃなくてどちらか一方で結構でございますが、まず信者数に関して、事件を起こした当時の信者の数、それから最近の数、それが増加をたどっているのかというそこら辺について説明していただきますようにお願いします。 <0133>=政府委員(金重凱之君)= オウム真理教の現状についてのお尋ねでございます。  現在、オウム真理教は宗教法人格を失いまして任意の団体ということで、六人の正悟師と呼ばれる幹部と、それから麻原彰晃こと松本智津夫の子供、これらによる集団指導体制をとっておりまして、各般の分野で活動を活発化させておるということでございます。  お尋ねの現在の信者数は、最盛時は約一万人おりました。現在は約二千百名というふうに見られております。ただ、脱会信者に対して執拗な復帰工作を行っておりますし、それから新規信者の獲得に向けましてもさまざまなサークル活動等への参加呼びかけ等を行っております。したがいまして、こういう活動によりまして、信者数はわずかずつではありますが増加の傾向にあるものというふうに見られております。 <0134>=小川敏夫君= 現状でオウム真理教の信者勧誘活動というのは非常に活発に行われているのでしょうか。 <0135>=政府委員(金重凱之君)= 新規信者の獲得ということにつきましては、例えば冊子、リーフレット、これはオウムということを隠したような形でそういうリーフレット、冊子みたいなものを活用してサークル会員を募集するというようなことで一般人を対象にして呼びかけをしたり、あるいは大学生を対象にしまして学校の中で、やはりこれも偽装のサークルでありますけれども、そういったものへの参加呼びかけ等、活発に行っておるというふうに思っております。 <0136>=小川敏夫君= 私が思うところは、オウム真理教が各地でいろんなトラブルを起こすということも問題ですが、主として若者が将来ある身でありながらこういう宗教団体に入っていくということも、またこれも一つの被害ではないかと思うんです。そうした真理教の信者獲得方法というものを具体的に公にするなりして、事情のよくわからない者が間違って入信することがないような啓蒙活動といいますか、そういったような観点からの活動の考え方はございますでしょうか。 <0137>=政府委員(木藤繁夫君)= オウム真理教の活動が信徒獲得のためにいろいろな手段を使っておるところでございまして、ただいま警察の方から話もありましたように、当初はオウム真理教というような名前を隠しまして、ヨガの団体であるとかあるいはほかのことを研究するような団体であるとかというようなことで勧誘しておりますし、またインターネットなども使って国内あるいは海外に向けての布教宣伝活動をやろうとして、現にやっておるわけでございます。  こういう活動実態ということにつきましては、私どももそれなりに把握しているわけでございますけれども、関連するお尋ねが特にございますればもちろんそういうことについてお答えしておりますし、またオウム真理教の活動実態についての広報ということでマスコミの方にもまとめた形でお知らせしておる、こういうことでございます。 <0138>=小川敏夫君= 今現在、オウム真理教は三年少し前のような凶悪な犯罪事件そのものは起こしていないように思うんですが、実際の現状のオウム真理教の主たる活動はどういう内容に及んでいるか、わかる範囲で説明していただきたいんです。 <0139>=政府委員(木藤繁夫君)= まず、中央組織を集中化いたしまして、その組織、機構を整備しておるわけでございます。それと同時に、地方組織につきましても充実強化を図っておりまして、いろいろな活動拠点あるいは修行の施設などそういった施設を設けようとしているわけでございます。現在、合計三十八カ所の拠点施設を保有しておりまして、そのうち半数近くでトラブルが発生しているという現状でございます。  また、そういった拠点の獲得と同時に、全国各地で宣伝ビラを大量に配布したり、ただいま申しましたように若年層を対象として信徒獲得活動を展開しておるわけでございます。  また、パソコン販売事業などを基軸としまして豊かな財政基盤を維持して、資金獲得活動も熱心に行っておるわけであります。  そういったことで、信徒数も徐々にふえてきており、資金的にも豊かになってきておる、こういった状況にあるように考えております。 <0140>=小川敏夫君= 今の答弁の中に少しありましたが、オウム真理教の資金源はどういったところにあるか説明していただきますようお願いします。 <0141>=政府委員(木藤繁夫君)= 資金源の中心はパソコンの販売事業ではなかろうかと考えておるわけでございまして、パソコンの販売、三社四店舗による売り上げが平成十年、一年間で七十億円を超える。その約一割が収益といたしましても、推計で七億ないし十億という収益があるのではなかろうかと思われるわけでございます。  そのほかにいろいろなセミナーを実施いたしまして、その際のいわゆるお布施の形での収入があるわけでございます。平成十年中には、ゴールデンウイーク期間中の丹沢セミナーとか年末年始セミナー、こういったセミナーを開催いたしまして、合わせて約一億円のお布施の収入があると考えております。 <0142>=小川敏夫君= パソコン関連の事業を行っているということですが、その事業の根拠地あるいは営業主体の数あるいは地域的なものについて概略説明をお願いいたします。 <0143>=政府委員(木藤繁夫君)= パソコンの組み立てとかそういうふうな製造関係の根拠地は主として川口市にあると考えております。  一方、その販売の場所につきましては、東京が五店舗、名古屋が一店舗、大阪が一店舗でございます。部品等の仕入れ、組み立て、商品の流通管理等の各部門に約二百名の信徒を配置して仕入れから販売まで事業を行っておる、このように考えております。 <0144>=小川敏夫君= 事業関係なんですが、一つは、オウム真理教はあれだけの被害者を多数出す凶行を行いながら被害者に対する補償等を行っていないという問題がございます。これは宗教法人が破産になったという破産法上の問題がありますが、例えばこの事業を行う開業資金、こういったものの資金源に宗教法人が破産する以前の資金が流用されていないか、こういった点からの見方ではどうでしょうか。 <0145>=政府委員(木藤繁夫君)= 開業の資金がどのように手当てされたのかというような詳細につきましては、十分に把握できていないというところでございます。 <0146>=小川敏夫君= 事業主体は法人が多いというふうに聞いておりますが、例えば法人の設立時期、それから出資金等はいかがでしょうか。 <0147>=政府委員(金重凱之君)= 設立時期、パソコンショップの開業の時期でございますけれども、早いものですと平成八年の春ごろでございます。それから、最近では本年の二月ごろから営業を始めた店もあります。  それから、出資金といいますか開業資金はどのぐらいであったかということでありますけれども、店によりまして違いがあるわけでございますけれども、おおむね三百万ないし一千万円でありますので、資本金がその程度でございますから開業資金はそれ以上あったのではないかというふうに見ております。 <0148>=小川敏夫君= 仮にオウム真理教のそうしたグループが破産財産を隠匿しておればこれは破産法違反になるわけですが、そういった観点から調査するということはいかがでしょうか。 <0149>=政府委員(金重凱之君)= 先ほど公安調査庁の方でもお答えがあったかと思いますが、私どもの方もこの破産以前の隠し金みたいなものについての情報を現在のところ持ち合わせておらないところであります。  しかしながら、幅広く今後ともこのオウム真理教の財政実態の解明に努めてまいりたいというふうに考えております。 <0150>=小川敏夫君= 仮に破産財産を隠匿したものが発見できれば、破産財団に回復できれば、それが被害者の救済に回るという可能性があるので、ぜひそこら辺も鋭意調査、捜査していただきたいという希望を述べておきます。  続いて、そのパソコンショップ等の問題ですが、営業主体の役員あるいは個人営業の場合にはその営業主、これはオウム真理教の構成員なんでしょうか。 <0151>=政府委員(金重凱之君)= このコンピューター関連会社につきましては、ほとんどすべてが信者でございます。 <0152>=小川敏夫君= 従業員も同様ですか。 <0153>=政府委員(金重凱之君)= そのとおりでございます。 <0154>=小川敏夫君= そのパソコンショップ等で例えばアルバイト募集というような名をかりた形で一般の人たちを取り込むような行動はなされていないでしょうか。 <0155>=政府委員(金重凱之君)= 先ほど申し上げましたようないろんなサークルを通じての新規会員の獲得みたいなものにつきましては私ども把握しておるんですが、今委員御質問のような形態での信者獲得については承知いたしておりません。 <0156>=小川敏夫君= それから、従業員がほとんど信者だということですが、労働条件とか給料の支払い等の問題について、例えば労働基準法上の問題とかそういったことが明らかになるような例はございませんでしょうか。 <0157>=政府委員(金重凱之君)= 具体的なところでそうしたものについて、例えば今委員の御質問にありました労働条件云々とかというようなことについて、私どもまだ具体的なものについて把握しておるところではございません。  ただ、このコンピューター関連企業等で働く信者でありますけれども、通常月々八千円の業財というふうに呼ばれておるところのいわゆる小遣い、これをもらっておるわけでありまして、そしてその収入のすべてはお布施というようなことで教団に寄附している場合が多いというように見ておるところでございます。ですから、こうしたものも、こういうオウムの関連企業による収益が現在の教団の活動の財政的な支えになっておるのではないかというふうにも見られるわけであります。 <0158>=小川敏夫君= それでは、観点を変えてオウムのことを聞きますが、オウム真理教がまた再び同じような凶行を繰り返さないかということが最大の関心事だと思うんですが、オウム真理教がかつてのような非合法活動を行うようなそういった兆しというものは今つかんでおるのでしょうか、どうでしょうか。 <0159>=政府委員(金重凱之君)= 具体的な非合法活動云々ということは別といたしまして、一般的にオウム真理教は依然として従前からの反社会的な教義を堅持しておるというふうに私ども見ておるわけでありまして、現在も教団内のほとんどの信者が松本智津夫に対する絶対的帰依を表明しておるというようなことがございます。  それから、先ほど来話の出ておりますセミナーとかあるいは説法会とかというものもございますけれども、そうした際に松本の教えを繰り返し学習しておるというようなこともございます。それから、教団の支部だとかあるいは道場の祭壇、そういったところには崇拝の対象として松本の写真が掲げられておるというようなことがございます。  そして、この松本智津夫の確立した教義でございますけれども、この教義を根幹に据えてオウム真理教があるわけでございまして、説法の中にも教団の利益に合致するならば殺人さえも教団の救済活動として許される場合もあるというような極めて反社会的なものもあるということでございまして、そうした中で過去にも一連の凶悪な犯罪を敢行してきておるというようなことであろうというふうに私ども思っております。  そしてまた、オウム真理教の特別手配被疑者等四名が依然として逃走中であるというようなことでもございますので、私どもそうした者に対して全力を挙げて所要の措置をとってまいりたいというふうに思っておるところであります。 <0160>=小川敏夫君= 現在服役しておる信者あるいは元幹部がおるんですが、これが近々出所する予定と。それから、仮に幹部が出所した場合にオウムに復帰するのかどうか。そして、それが復帰した場合に今後のオウム真理教の活動に与える影響などについて説明していただきますようお願いします。 <0161>=政府委員(木藤繁夫君)= 教団の中で高い位である正大師という位にある上祐という幹部が現在広島刑務所で服役中なのでございますが、それが本年末に出所予定でございます。  その後、この幹部がどのような役割を果たしていくかということにつきまして、私ども関心を持っておるところでございます。しかし、その後の上祐の活動がどうであるかという予測は今直ちには難しいわけでございますけれども、ただ、勾留中書簡等を通じ教団運営方針などを指示しておるということもあるようでございますので、出所した後は、位が高いということもありまして、かなり教団運営における実質的な決定権を決めていく幹部として動いていくのではなかろうか、こう思っておるところでございます。 <0162>=小川敏夫君= 警察庁にお尋ねしますが、ごく最近にオウム真理教関係者を住居侵入ということで検挙している、逮捕している例があるようですが、この住居侵入の態様、特に建物の管理状況とかそういった点、概略御説明していただきますようお願いいたします。 <0163>=政府委員(金重凱之君)= 最近、警視庁管内でございますけれども、五月二十七日と六月六日のこの二件でございます。オウム真理教のビラ配布目的でマンション等に侵入した信者を現行犯逮捕しておるわけでございます。  それで、最初の五月の方の事件でございますが、これは十二階建てのマンションに深夜教団のビラ配布目的で侵入して、最上階から一戸一戸の入り口ドアにビラを投函しておったというところを九階におられる居住者が発見して一一〇番通報して、そして駆けつけた警察官が住居侵入で現行犯逮捕したというものでございます。  それから二つ目の、六月の方の事件でございますけれども、これも深夜でございますけれども、逮捕場所付近一帯のアパート等にオウムのビラを投げ込んでおる者を発見した通行人が近くの交番に通報いたしまして、それで駆けつけた警察官が、これは二階建てのアパートでございますけれども、この二階の通路で不審者を発見して住居侵入で現行犯逮捕したというものでございます。 <0164>=小川敏夫君= やはり警察庁の方にお尋ねしますが、今各地でオウムが拠点を構えようとしたところで住民とのトラブルが起きておりますが、一つ心配なのは、住民とオウム関係者とのトラブルで何らかの事件がまた新たに発生したりしないかということが一つ心配でございますが、そうした住民とオウム関係者との直接の対立、トラブルが起きないような防止策等についてどのように配慮しているか、お聞かせください。 <0165>=政府委員(金重凱之君)= 昨年からオウム真理教関係者が全国各地でオウム真理教の拠点となり得る施設を確保してきておりまして、そのために地元住民の方々によるところのオウム反対の住民運動が起きておるという状況、委員御承知のとおりでございます。  そうした中で、対策協議会みたいなものも次々と結成されたりということもあったわけでございますけれども、各地によって状況はもちろん変わっておるわけでございますけれども、施設周辺の地域住民の方々の不安というのは、やはり過去の事件等のことを考えますと、その不安ははかり知れないものであろうというふうに私ども考えておる次第でございまして、そうした不安を除去するということが一つございます。  それからもう一つは、今お話がありましたように、そういった教団の拠点になるような施設に入り込んでくるオウム信者と地元住民の方々との間での不測の事態というようなことがあってもいけないということがございますので、管轄警察署によるところの警戒警備、あるいは本部の機動隊を動員しての警戒警備等、情勢に応じて所要の措置を継続してきておるというような状況にございます。  そういう地域住民の方々あるいは関係自治体の当局との緊密な連携みたいなものも継続しつつ、オウムの教団信者の違法行為というのがございましたならば、これは厳正に対処してまいりたいというふうに思っておるところでございます。 <0166>=小川敏夫君= 次に法務大臣にお尋ねしますが、前回も法務大臣にこの場でお尋ねしまして、オウムの問題については破防法の改正の考えはないというふうにお答えいただいたんですが、その後、政府・与党内では改正という声もまた上がるようなところもあります。  現時点で破防法の改正についての法務大臣のお考えをもう一度お聞かせください。 <0167>=国務大臣(陣内孝雄君)= ただいまオウム真理教をめぐる問題についてるるお話がございました。周辺住民とのトラブルを発生させるなど、住民の不安や危惧の念が依然として払拭されない状況にあるということでございますので、同教団への対策としては、現行法令を最大限に活用することを初めとして幅広い対応が必要である、このように考えております。  政府においても各省の対策のための連絡会を設置していただいておるところでございますが、私どもといたしましても、こういうオウム対策の一環としまして、現行破壊活動防止法上の問題についても、オウム教団のような団体に対して有効かつ適切な規制が図れるよう、公安調査庁にこの法律の改正をも視野に入れた種々の検討を鋭意進めさせているところでございます。 <0168>=小川敏夫君= それで、破防法の改正についてはいかがでございましょうか。 <0169>=国務大臣(陣内孝雄君)= ただいま触れたように、破防法の改正も含めて、あるいはまた新しい法律も必要じゃないかという声もございます。そういうものをいろいろ検討しながら、オウムの現状、あるいはこれからの問題をよく見据えて、どういう対応、法的整備が必要か、真剣に鋭意検討しておるという状況でございます。 <0170>=小川敏夫君= では、少し観点が違う問題ですが、警察庁にお尋ねします。  松本サリン事件において、河野さんの問題ですが、結論的に言えば河野さんは全く犯人ではない、被害者であったわけですが、事件直後、河野さん宅に捜索令状が執行されております。どうも真犯人でないし、当時の状況からして河野さんが真犯人だというようなどの程度の客観的な証拠があったのか、どの程度の根拠で令状が請求されたのかについて説明をお願いいたします。 <0171>=政府委員(林則清君)= お尋ねの事件は極めて特異かつ凶悪な事件でありまして、警察におきましては、発生直後からあらゆる点を視野に入れて、総力を挙げて捜査を推進しておりましたところ、事件現場の近辺に所在する第一通報者の方、端的に言えば河野さんの敷地内とその周辺において飼い犬とかザリガニとか小鳥の死骸等が多数発見されたという点、それと現場一帯の実況見分の過程で、この第一通報者の河野さんの居宅に割合特異と見られる薬品様のものが相当数存在したというようなことから、これらの場所が被害の発生場所でもあり、犯行に密接に関係のある場所であるということを判断いたしまして、被疑者不詳のままこの地点についての差し押さえ、捜索令状等の発付を得て検証と捜索を実施した、捜索、差し押さえを実施したという経緯でございます。 <0172>=小川敏夫君= どうも私は、今お伺いした範囲では、河野さんを直接の被疑者だと結びつけるには若干根拠が弱いような印象も受けるんですが、その点はいかがでしょうか。 <0173>=政府委員(林則清君)= ただいまの説明が足りなかったかもしれませんが、河野さんを被疑者として請求したものでは全然ございません。非常に犯行に関連がある場所であるということで、被疑者不詳ということで請求をしておるわけでございます。 <0174>=小川敏夫君= それでは、また別の問題をお尋ねします。  法務省の方についてですが、今回のこの法律で、私ども民主党は、公明党さん、社民党さん、参議院の会と一緒になりまして国会議員の地位利用収賄罪というものを提案しておるわけでございます、まだ審議に入っておりませんが。  そこで、それに関連してお尋ねするんですが、刑法であっせん収賄罪という規定がございます。まず、これについて、実際にこのあっせん収賄罪が適用され、起訴されるに至った件数はどのくらいあるのか教えていただきますようお願いします。 <0175>=政府委員(松尾邦弘君)= あっせん収賄罪につきましては、昭和三十八年から平成九年までの間におきまして八十七名を公判請求しております。昭和六十三年から平成九年までということで十年間ということでいいますと、公判請求人員は二十二名でございます。 <0176>=小川敏夫君= 一般に刑法のあっせん収賄罪は、請託を受けて収賄を行った点、請託が犯罪の構成要件の一つでございますが、この請託の有無が立証上困難である、困難というかやや難しいという議論がありますが、こういった観点の見方はいかがでございましょうか。 <0177>=政府委員(松尾邦弘君)= 刑法の百九十七条の四はあっせん収賄罪の規定でございますが、「公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、」云々がありまして「五年以下の懲役」、こうなっておるわけでございますが、通常の単純収賄罪に比べますと、請託というのと、それからもう一つは職務上不正な行為をさせるようにというのが入ってございます。いわば二重の構成要件がありますので、通常の単純な贈収賄罪に比べますと、公判請求上ではやはりそれなりの証拠を集めなきゃいけませんので、捜査の困難性等からいいますと、比較の問題でございますが、なかなか難しい犯罪であることは間違いございません。  ただ、先ほども申し上げましたように、昭和三十八年から平成九年末まででとりますと八十七人を公判請求しておりますので、それなりの機能は果たしておるものというふうに考えております。 <0178>=小川敏夫君= では次に、また質問を変えまして、裁判所の方にお尋ねいたします。  最近、判事補が、いわゆる盗聴法に関しますことで分限の戒告を受けたということがございました。まず、これを踏まえて、裁判官の政治活動の制限について最高裁としてはどのような対処をしているか、一般的にお答えいただきますようお願いいたします。 <0179>=最高裁判所長官代理者(金築誠志君)= 裁判官の政治的自由という問題につきましては、御指摘の寺西判事補の事件に関しまして昨年の十二月一日に最高裁判所の大法廷の決定がございました。  裁判官の政治的自由の範囲という問題を法的な問題としてとらえますと、裁判所法五十二条一号に積極的に政治運動をすることが禁止されているわけでございまして、今申しました事件もこの解釈、適用をめぐる問題だったわけでございます。  この決定の中でどういう行為が積極的な政治運動に当たるのかということで一般的な議論もしておりますが、決定によりますと、積極的に政治運動をすることというのは組織的、計画的、または継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立公正を害するおそれがあるものがこれに該当する。そういう該当性を判断するに当たっては客観的な事情、主観的な事情を総合的に考慮して決めなければいけない。あるいは、裁判官が一国民として法律の制定に反対の意見を持って、その意見を裁判官の独立及び中立公正を疑わしめない場において表明することまでは禁止されるものではないとした上で、その裁判官が職名を明らかにして論文、講義等において特定の立法の動きに反対である旨を述べることも、その発表の場所、方法等に照らして、それが特定の政治運動を支援するものではなく、一人の法律実務家ないしは学識経験者として個人的意見の表明にすぎないと認められる限りにおいてはこの条文により禁止されるものではないというふうなことも述べているわけでございます。  結局、その裁判官の政治的自由について法的に考える場合には、今申しました最高裁の判示するところが基準になると申しますか、判例ということになるわけでございますが、具体的な特定の行為がこれに当たるかどうかというふうなことは、これは今後の案件で分限裁判所等がその手続において判断されるということで、個々具体的な判断は私の方では述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。 <0180>=小川敏夫君= この寺西判事補の分限裁判の事実となった集会への出席でございますが、どうも事実関係を見てみますと、本当は集会で発言する予定だったんだけれども、その直前に所長からアドバイスを受けてそれはよくないということで、集会に出て発言できなくなったということを発言したというように理解しております。  ここで、所長が寺西判事補にアドバイスをしたというのは、これは所長としての司法行政上の立場として、そういう政治的な発言をしてはいけないということで言ったのか、あるいは同じ裁判官同士の個人的なアドバイスとして、そういう司法行政上の注意ではない個人的なアドバイスとして言ったのか、もし今わかればで結構でございますが、教えていただければと思います。 <0181>=最高裁判所長官代理者(金築誠志君)= ちょっと申しわけございませんが、今その点について明確にお答えする用意はできておりません。 <0182>=小川敏夫君= では、また別の問題についてお尋ねします。  いわゆる行政を争う行政事件ですとか、それから国を相手にする民事事件、こういったものを含めて東京地裁等では行政部というものを設けて、集中的に特定の行政部という部署で審理しておるようですが、この行政部を設けておる理由について説明していただきますようお願いいたします。 <0183>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 東京地裁では行政事件の件数が非常に多うございます。それから、行政事件の審理におきましては、専門的、技術的な法律判断が必要になるという点で、通常の民事事件とは異なった面があるということがございます。  そういうことで、行政事件を専門的に扱います専門部、これを二カ部設置いたしまして、効率的な事件処理を図ってきているところでございます。 <0184>=小川敏夫君= まず、その扱う事件の中で、ただ単に当事者が国だというだけで、本来法律問題としては一般民事に属する部分もあるかと思います。それからもう一つ、行政事件が専門的だとはいっても、裁判官は法律家ですから特別行政事件の裁判ができないということもない、すべての裁判官ができることだと思います。  ですから、そうした事情を考えますと、あえて特定の行政部を設けて事件を集中させるよりも、やはりバランスよくすべての裁判官に公平に配てんした方が裁判の公平性というのは保たれるのではないかという意見もあるんですが、その点はいかがでしょうか。 <0185>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 今御指摘の点でございますが、確かに行政事件は簡単なものももちろんあるかと思いますけれども、事件の類型として考えますと、いろいろと訴訟要件といいますか、難しい問題がございます。  御案内のとおり、原告適格の問題、訴えの利益の問題、それから行政処分の処分性の問題、さらに出訴期間等々、行政事件訴訟法で規定がいろいろ書いてございますけれども、訴訟法上の解釈問題がございます。  それから、行政法規、公法の法規というのは非常に参考文献も少ないというのと、また行政公法上の特有の法理論などもある、そういう問題が事件の類型として比較的多く含まれている、そういう事件でございまして、やはりこういう事件というのは一つの部に集めて審理をするというのがいいのではないかというふうに思っております。  これら、東京地裁専門部は二カ部ございますけれども、個々の事件、これは内容、事案、それぞれ異なりますけれども、この事案に応じて適正、妥当な判断をするよう心がけているというふうに認識しております。事件を集中的に扱うということから、通常部に配てんするよりは画一的な処理がされるということはないというふうに認識しております。個々の事案ごとにやはり適正な判断をされているというふうに認識しております。 <0186>=小川敏夫君= 東京地裁の裁判官ですとやはりきちんとした能力のある方ですから、どこの裁判部に行っても行政事件を取り扱えるとは思うんです。  一つの角度を変えた見方としまして、行政事件を特定の部に集中させますと、その部に行政側に非常に理解のある裁判官を配置することによって、行政側に有利な判断が得られるという構造ができ上がってしまうのではないかという見方もあります。特に今回、この国会で情報開示に関する法律ができましたが、ここでも管轄が東京高裁を含めた高裁所在地というふうに限定されております。  私どもとしまして、やはり裁判官がすべて、どの裁判官に当たるかということも含めて、公平にというのが願いでございますが、特定の部に行政事件が行くという扱いになりますと、どうも管理されやすいというような危惧を持つのでございます。そこら辺のところをもう一度、くどいようですが、お考えをお聞かせいただければと思います。 <0187>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 行政部の裁判官もそれ以外の裁判官もすべて裁判官は、いかなる事件についても裁判官の良心に従って公平中立な立場から憲法と法律に従って独立してその職権を行使しているということでございます。  今、行政側に理解のある裁判官というお話がございましたが、行政部の裁判官がそうだということではございませんで、行政事件のそういう技術的、専門的なものについて、やはり集中して事件処理をするということの方が適正、迅速な処理にプラスになるということで専門部制を設けているということを御理解いただきたいと思います。 <0188>=小川敏夫君= 終わります。 <0189>=大森礼子君= 公明党の大森礼子です。  きょうは、まず最高裁の方にいわゆる競売手続についてお尋ねいたします。それから、後で法務省の方に、特に矯正局の方にキャピックのことについてお尋ねしたいと思います。  それでは、まず最初に最高裁の方にお尋ねするんですが、いわゆる土地建物の競売物件の落札状況というんでしょうか、これが近時好転してきたというふうに言われております。十年、十五年、一昔前ですと、何か競売物件といいますとトラブった物件ということでこれを敬遠するような傾向があったようにも記憶しているのですけれども、競売物件の落札状況が好転しているというのは事実なのかどうか、その実態についてまず説明していただきたいと思います。 <0190>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 競売物件の売却率でございますが、バブル経済崩壊後の平成三年以降、著しく下落いたしました。その後低迷をしておったわけでございますけれども、近年は裁判所によっては改善の兆しが見られております。例えば東京地裁では、平成三年には三〇%台に売却率が下落いたしましたけれども、近年は五〇%から六〇%前後になっている、そういう状況でございます。 <0191>=大森礼子君= 買えるかどうかということは、それだけお金に余裕があるかどうかということにも関係がありまして、不況になると買いにくいということも言えるのかもしれません。  ただ一方で、先ほど触れましたけれども、昔は競売物件といいますと、意外と日本人というのは縁起を担ぐところもあるのでしょうが、トラブった物件はと敬遠されましたけれども、だんだんそういうタブー視されていたものが取り除かれてきたのかな、そういう入札しようという側の意識も違ってきたのかなという気もしているのですが、その点はいかがでしょうか。 <0192>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 委員が御指摘の分析が当たっているような気もいたしますけれども、我々が認識しておりますのは、まず競売物件の評価が近年非常に適正になされてきておるということが一つ挙げられるかと思います。  それからもう一つは、非常に広い範囲で買い受け希望者を募り、競売物件の売却向上率を図るために、情報の媒体それから提供する情報の内容、こういうものを拡大しております。いわゆる充実した競売物件情報の提供に努めている。そういう情報があるために一般の人も安心して買えるようになった、そういう意味では委員御指摘のとおりかと思っております。 <0193>=大森礼子君= 一般の人も安心して買えるようになったということは、これは非常に望ましいことであるわけです。  裁判をしまして勝訴いたしましても、債権者、訴えた原告側がそれで満足がいくかというとそうじゃありませんで、やはり競売手続という強制執行ですか、それに至って回収できて初めてそこでその事件が決着するんだろうというふうに思っております。そういった意味で、買い受け希望者がふえて、そして落札がスムーズにいくということは、裁判システムの上からも望ましいことだろうと思います。  先ほど、情報が非常に提供されるようになって一般の方も安心して買えるようになったとおっしゃいましたけれども、競売物件の情報公開ですが、どのように実施されているか、格別な工夫というものが近時なされているかについて、簡単に教えていただきたいと思います。 <0194>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 競売物件情報の提供につきましては、各裁判所の実情に応じてでございますけれども、日刊新聞紙それから不動産情報誌などを活用してきました。  近時は、情報提供の一層の充実を図るためにファクシミリによる二十四時間サービス、いつでも競売物件の情報をファクスで取り出せる、競売物件情報システムと申しておりますが、これを設置しております。さらに、インターネットのホームページを利用するという裁判所も増加してきております。 <0195>=大森礼子君= 今、インターネットのホームページを使用する裁判所もふえてきているとお答えになりましたが、その点についてきょうは質問させていただこうと思うんです。  それから、競売物件については公告等なされます。日刊新聞とかで確かに出ますけれども、非常に一般の人は見づらいといいますか、必要最小限の情報は提供されているのでしょうけれども、それを見て、じゃ、ちょっとこれは入札してみようかとか、動機になりにくい部分もあると思います。  先ほどお答えになりましたのは、インターネットによる競売物件の情報提供というものは非常に有効な手段だと考えているわけですね。最高裁の方では、このインターネットによる競売物件の情報提供について特別な取り組みをしておられるのかどうか、裁判所で採用しているところがあるとして、その実施状況というのはどのようになっているかということについてお尋ねいたします。 <0196>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= インターネットのホームページを利用して競売物件情報の提供を行っている裁判所でございますが、東京地裁、横浜地裁、浦和地裁、福岡地裁、札幌地裁、仙台地裁など、数で言いますと現在二十四庁を数えております。これらの裁判所で取り扱う不動産執行事件は全国の事件の三〇%を超えているという状況でございます。さらに、大阪地裁、名古屋地裁などの裁判所でもインターネットのホームページの利用を検討しているというふうに聞いております。  これらの裁判所ではいずれも業者などのホームページを利用しているということでございまして、裁判所がみずからホームページを開設しているわけではないということでございます。 <0197>=大森礼子君= 実は、これは河北新報のホームページになるのでしょうか、河北新報ニュースということで、これは五月二十二日付のニュースであります。「ファクスで競売情報 秋田地裁が提供システム導入」、「自宅に居ながらにして気軽に競売物件の情報を手にしてもらおうと、秋田地裁は二十一日、「競売物件等情報提供システム」を導入した。ファクスを利用して物件情報を知ってもらうシステムで、秋田地裁は「大いに利用を」と呼び掛けている。」、こういうものがございます。これはファクスでということなんですけれども。  このページの下に「最高裁によると、全国の地裁と支部二百五十三庁のうち、これまで九十六庁で同様のサービスを行っている。」とあるのですが、この九十六庁というのは、これは先ほどおっしゃったファクスによる情報提供ということでしょうか。これは通告していませんでしたけれども、わかればで結構です。 <0198>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= おっしゃるとおり、ファクスによる情報サービスでございます。 <0199>=大森礼子君= 先ほどインターネットについて御説明いただきました、まず二十四庁、大阪、名古屋は検討しているということで。業者のホームページに情報を提供しているというのは、非常にわかりにくいのですが、要するに裁判所の方が自分のホームページを持っているという形ではないということでしょうか。 <0200>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= そのとおりでございます。 <0201>=大森礼子君= 裁判所独自でやっているところはございませんでしたか。 <0202>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 裁判所がホームページを開設して、そこに競売物件情報を載せて提供しているという例はございません。 <0203>=大森礼子君= ちょっと私、インターネットのことはよくわからないもので。そうなりますと後の質問が続きにくいのですが、実は手元に宮崎地方裁判所、それから岡山地方裁判所津山支部の不動産競売情報というのがありましてプリントアウトしたんですけれども、業者によってでも裁判所のでもいいのですが、要するに一般の国民の側がそういう情報をひとしく受けられる体制ということは必要ではないかと思うんです。  それについて、最高裁は、業者を通じてでも裁判所独自のホームページでも最高裁のホームページでも構わないのですが、インターネットによる情報提供について何か具体的なプランとかこれからのあり方とか、こういうお考え、ビジョンのようなものはございますでしょうか。 <0204>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= インターネット利用の情報提供でございますが、先ほど各庁の実情に応じてということを申し上げました。これは、競売物件の所在地が例えばリゾート地域で、リゾートマンションが競売物件であるというような例を考えてみますと、買い受け希望者は都市部に居住しているということで非常に範囲が広うございます。こういう物件につきましては、インターネットのホームページを利用するというのが非常に効果的であろうかと思われます。  ただ、そうではなくて、例えばでございますが、山間部の農村で過疎化が進んでいるようなところに競売物件があるということになりますと、インターネットのホームページで流しても、恐らくこの物件を買い受ける買い受け希望者というのは地域住民に限られていると思われますので、そうなりますと、むしろ地元の情報誌、地元の地方紙などの方がいいかというふうに考えております。  そういう実情に応じて、インターネットのサービスを続けるかどうかということは各庁の判断で行っているという状況でございます。 <0205>=大森礼子君= 各裁判所の判断で行っているという言い方はよろしいのですが、最高裁がそういう認識でよろしいのかなという気がするんです。この前に、司法制度改革審議会設置法というのを審議いたしまして、要するに裁判所も国民のニーズにこたえなきゃいけない、これが二十一世紀の大きな課題だという議論をしてきたわけなんです。それで、各裁判所にゆだねる、じゃ自由にやっていいですよ、どんどん進めなさいよとか、こういう指示はしておりますか。 <0206>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 最高裁につきましては、インターネットのホームページの利用につきましては一つの有効な競売物件情報の提供のあり方であるという認識をしております。したがいまして、各裁判所に紹介しておりまして、各裁判所の実情に応じて採用を検討していただきたいということは伝えてございます。 <0207>=大森礼子君= そうした場合に、各裁判所でする場合もお金がどのくらいかかるのか、提供する情報量にもよるんでしょうけれども。もし裁判所が望めばそういう予算措置というのはきちっと最高裁の方で手当てしますよと、こういう裏づけがあった上で各裁判所とか支部に検討してもらっているんでしょうか。 <0208>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 少し基本的な構造を御説明させていただきたいと思いますが、競売物件情報の提供というのは、民事執行規則四条三項の規定によります公示として、申し立て債権者が裁判所に予納した費用を用いて行うというものでございます。  インターネットのホームページの利用という最新の公示方法ということになりますが、それは先ほど申し上げました各裁判所の実情が異なりますので、全国画一的に利用するということは現段階では困難でございますけれども、その実情に応じて公示法を選択していると、むしろ利用できるものであれば十分利用していただきたいというふうに裁判所は各庁にお願いをしております。我々といたしましても、このホームページの利用の有効性は十分認識しておりますので、各裁判所に対する紹介に努めていきたいというふうに考えております。  ここで今私が申し上げました民事執行規則四条三項の規定による公示という制度とは無関係に、最高裁が予算をとって競売物件情報の提供についてみずからインターネットの最高裁のホームページを利用して推進するということにつきましては、現在のところは、先ほど申し上げましたとおり民間の業者などが存在をして既に多くの裁判所がこれを利用しておりますので、さらにこの利用を検討している裁判所もあるという状況でございますので、むしろこちらを伸ばしていくというふうにしたいと考えております。  ちなみに、もともと不動産執行事件といいますものが債権者の私的な利益を実現するための手続であるということを考えますと、裁判所みずからが国の費用でこれを行うということはやはりちょっと検討しなければならない問題ではないかというふうに考えております。 <0209>=大森礼子君= 債権者の私的な利益のためとおっしゃいますけれども、そういう考え方ではおかしいと思うんです。現に、不良債権処理問題をどうするかとか、破産がいっぱいあったときどうするかという、その債権をきちっと回収できる最終の落としどころなわけですよね。ちゃんと競売で、それは全額回収できるかどうかわかりませんけれども。これがうまく回転するということは、単に債権者の私的な利益を満たすというのみならず、社会システムが落ちつくという意味で貢献していると思うんです。  それから、これを買い受けようかという人も、情報提供をきちっとしてもらえば、一々見にくい、見にくいというのはアグリーという意味じゃなくて、なかなか中身がわかりにくい、新聞による公告を見まして、それで一般の方が裁判所まで行って物件ファイルを見る、なかなかしがたいことであります。また、一般の方も適当な競売物件があって手に入るということは非常にうれしいことでありまして、そういう観点からもう少し視野を広く持って考えていただきたいと思うんです。  一つ例として挙げますと、例えばこれは岡山地方裁判所の津山支部の不動産物件情報です。実はこのインターネットの問題については、岡山の方からやはり情報提供が必要ではないかということで御要望いただいたわけです。それで、調べてみましたら、実は津山支部ではやっておったんです。倉敷支部と岡山地裁本庁はやっていないということなのでしょうけれども。これは岡山地方裁判所津山支部執行官室というのが出しておりまして、毎月一回更新することになっております。  ここで、すごくこのページはいいなと思ったのは、不動産の競売とはこれこれです、売却方法はこれこれです、競売に参加するにはこれこれですと説明がございます。その説明の中に下線が引いてありまして、例えば「期間入札」の下に線が引いてあるわけです。あるいは「最高価買受申出人」、ちょっと専門的な用語には下線が入っておりまして、そこをクリックするとちゃんと説明が出るというふうになっております。こういうシステムというのは、一般国民の方に法律の知識というのをわかりやすく吸収していただくという点で非常にいいアイデアだなというふうに私は思います。  ただ、買い受けしようかなという人に対する情報提供ですと、まだこれだけでは一つの動機づけにならないのであろう。我々が不動産か何か、私は不動産を買ったことはありませんけれども、例えば賃借りするような場合でも情報を見ますが、まず建物の写真とか部屋の間取りとか、こういう情報が非常に大きな動機づけの理由になるわけです。  これは宮崎地方裁判所民事部執行競売係のホームページになるんでしょうか、業者なのかどうかちょっとよくわかりませんけれども、宮崎地裁のホームページだと思うんです。ここの中には、不動産物件について、物件の種類とかいろんなものが書いてあるわけですが、詳細情報としまして、各物件のところをまたクリックしますと詳細情報が出てくるわけです。普通の不動産情報誌と同じように外観の写真が出ていまして、それからその次にちゃんと建物の見取り図が出ておりまして、地図も出ておる、こういう情報になっております。不動産情報誌と同じような形です。  ここまでしていただくと、これから例えば若いカップルなんかでもホームページを見ながらこれにするあれにするなんて二人で競売物件を探すという、こんな場面も実現するのかなと思います。要は、こういうサービスといいますか、これをこれから裁判所の方も考えていっていただきたいというふうに思うわけです。  それから、公告。それは、公告で要求されている法定の事項を公告すればそれで済むわけですけれども、それは買い受けようかな、入札してみようかなという人にとっては非常に不十分であると思います。やっぱり現実に裁判所まで行って見てみないとどんなものかわからないという、これでは非常に不便だろうと思います。インターネットが発達するというのも、要するにみずからの体を動かさないで、そういうことに時間を使わないで自分の手元で情報を得るということに利点があるわけですから、裁判所が発する情報についてもそういう国民に対するサービスという点で検討していただきたいというふうに思います。  それで、先ほどの御答弁ですと、実情に応じて各裁判所でやったらいいみたいなことなんですけれども、それがお答えでしたらこれ以上聞いても仕方ないわけですけれども、最高裁ももう少し思考を柔軟にして、いかにしたら国民にとって親しみやすい裁判所になるかとか、いかにしたら国民のニーズにこたえられるか、これもニーズだと思うんです、情報が欲しいというのは。これをちょっとまじめに真剣に考えていただきたいと思います。何か最高裁の方でお答えがあればお伺いいたします。 <0210>=最高裁判所長官代理者(千葉勝美君)= 委員の御指摘、もっともかと思います。現在、最高裁が把握しておりますインターネットによる情報提供につきましては、インターネット業者名では五つの業者が開設をしておりまして、広く情報提供をしております。委員が御指摘いただきました岡山地裁津山支部、それから宮崎地裁もそれぞれ晴れの国ネット、メディア・エムという業者名でホームページを開設している。これは裁判所ではございませんけれども、裁判所の執行官などがかなり個人的に努力をしてつくったものというふうに考えております。  それから、ホームページの中身でございますが、今委員が御指摘のように、写真を添えたりいろいろな工夫がございます。一番情報提供庁の多いアットホームという業者がございますけれども、これも御指摘のように写真を入れたり、非常にわかりやすい工夫をしております。まさにインターネットのいい点を十分生かしたホームページ、情報提供の方法になっておると思いますので、こういうものを見ながら利用拡大の方向で努力していきたいと思っております。 <0211>=大森礼子君= 裁判所みずからがホームページを開こうが業者と提携しようがそれは構わないので、その情報が正しければ見る側は同じですので、ですから今言ったような業者、要するにプロバイダーと提携するという趣旨なのでしょうか、そういう形でも結構ですので、こういうインターネットによる情報提供をどんどん進めていっていただきたいと思います。  最高裁への質問はこれで終わりです。  それでは次に、法務省の方にお尋ねいたします。  まず、六月四日と五日の二日間、千代田区の北の丸公園の科学技術館で、全国矯正展、これは全国刑務所作業製品展示即売会と呼ばれておりますが、これが開催されました。これはいわゆるキャピックと呼んでいるんですけれども、私はキャピック製品というのは非常に好きであります。  そこでは、要するに刑務所の作業の中でつくられた木工品とかたんすなんかも非常にいいものがありまして、荒木委員長も机を買ったそうでございますが、金属製品、バーベキューセット、それから縫製品もございますが、工芸品、革製品、特に革靴とかこれも人気が高いようであります。  キャピックといいますと品質が非常によいということと非常に丁寧につくられているという、これが一つの売りかなと。それを基準にしますと市販のものよりも割安ということで非常にファンが多いというふうに聞いておりますし、私も毎年行かせていただいております。何となく暗いイメージの法務省の中にあっても、唯一の明るい行事かなというふうに私自身思っているところもございます。  それで、私はこの作業品というものを通しまして、ふだん刑務所の中といいますか、これは我々思いをはせる機会はなかなかないわけですけれども、こういう矯正展、それからそういう作業品を手にとることによりまして、刑務所の中でこういうふうに作業しておられる方もいるのだなということで、ちょっと表現がうまくないかもしれませんが、非常に親しみを感じるというと変ですけれども、そういう気持ちになります。そのことからまた刑務所の中で生活しておられる方に対する理解、こういうものも広がるのかなというふうな気がしているわけです。  そんなことから、このキャピックについて少しでも多くの国民の方に知っていただきたいし、一人でも多くの国会議員の方にこの全国矯正展には行っていただきたいなというふうに思っております。何か私は法務省の代理でしゃべっているようなところがありますけれども。  そこでお尋ねするのですが、この刑務所作業品、こうして売り上げがございますね。これはどのように会計処理されるのか。法務省の方に入って国庫に入るのか、それともつくったところの刑務所に還元されるのか。つまり、どこに帰属するのかということ。それから、その使い道、どういう形で使われているのか。これは別に不正を追及しようとかそういう趣旨ではございませんで、ちょっとそこら辺を教えていただきたいと思います。 <0212>=政府委員(坂井一郎君)= 荒木委員長初め法務委員の方々には、多数キャピック展においでいただきましてありがとうございました。また、今伺いますとお買い上げもいただいたということでございまして、厚くお礼を申し上げます。  それで、この売り上げの関係でございますが、これはちょっと複雑なところがございまして、刑務作業には御承知のとおり生産作業、職業訓練、自営作業という三つございまして、その生産作業の中にいわゆる事業部作業というものとそれから提供作業というものがございます。そのほかに一部製作作業というものがございますけれども、本日委員の方から御質問いただいた件について申し上げますと、これは全部ではございませんが、大部分はいわゆる事業部作業という範疇に属する刑務所の製品の販売ということでございます。  これはどういうことかと申し上げますと、財団法人矯正協会刑務作業協力事業部というのがございまして、刑務所側はここから原材料の提供を受けて、我々は要するに労務だけを提供して、できたものは刑務作業協力事業部の方にお渡しするわけでございまして、販売の主体も刑務作業協力事業部というのが法的な主体ということになります。  したがいまして、売り上げは原則的にはその刑務作業協力事業部の方に入ります。ただし、国の方は、物をつくるわけでございますので、当然その労務賃をいただきますということと、もう一つは、物をつくるための原材料はその刑務作業事業部の方から提供していただきます。したがいまして、単純に申しますと、売上代金の中から原材料費とそれから労務費を引いて、あと一般管理費に充てるための金がありますので、あとわずか残りますが、それは刑務作業事業部の方に残るということでございます。  そういうことでございますので、結局刑務作業事業部にあるファンドを回転させながらこういう製品をつくっているというのが大まかな仕組みでございます。 <0213>=大森礼子君= それでは、キャピック製品という言い方をさせていただくのですが、この販売が伸びるということは今の説明、仕組みからいいますと望ましいことなのかどうか。つまり、法務省としては販売促進して売り上げを増加させたいという考えがあるのかどうか。あるいは、この前の全国矯正展のように、社会を明るくする運動の一環としての行事でございますけれども、そういう行事を行うことによって広く刑務所とか刑務作業とか、あるいは少年院とかの展示もありますけれども、こういう分野について国民の理解を広める方が目的とお考えなのか。その点はいかがでしょうか。 <0214>=政府委員(坂井一郎君)= 両方ございます。刑務所製品、こんな立派なものが刑務所でできているんだということを皆さんに知っていただくというのももちろん大きい理由の一つでございます。  ただし、お考えいただきますとおわかりのとおり、売れませんと在庫がたまります。在庫がたまりますと資金を圧迫して次の原材料資金が回っていかないことになります。それと同時に、売れませんと在庫をためるか、もう一つは生産量を落とすという形にせざるを得ないわけです。生産量を落とすということは、受刑者に対して与える作業がなくなってくるということに相なるわけでして、そういうことからしますと、我々としては一生懸命売らないと、現状では収容者はふえてきております。  それと同時に一方で、解約・減産と申しまして、要するに一般の業者と契約をして、事業部作業とはまた別なんですけれども、労務を提供して物をつくったりあるいは部品をつくったりしているわけです。そういう業者が不況のために倒産その他の理由で仕事が減るないしは仕事がなくなるという状況がございまして、そういうもろもろの状況を考えますと、もちろん広報という意味もございますけれども、ある一定以上は販売しなければ刑務所の作業がなくなってきていろんなところに影響してくるということがございますので、我々としてもぜひとも売り上げは上げたい。  これは、売り上げを上げたいと申し上げるのは、念のため申し上げますけれども、何も利益を上げたいということじゃなくて作業量を確保いたしたいということでございまして、そういうことで御理解をいただきたいと思います。 <0215>=大森礼子君= 売り上げを上げたい、キャピック製品の販売を促進したいとなると、先ほど最高裁にもお尋ねしたんですが、インターネットなんかの活用ができるんじゃございませんかということですが、こういう情報提供とかはしておりませんか。おりませんね。 <0216>=政府委員(坂井一郎君)= そうではございませんで、法務省のホームページに刑務作業に関する項目を設けておりまして、本日お持ちしているこんな感じで一応出させていただいております。その中には製品の写真等も入れさせていただいておりまして、それと同時に、この刑務所製品をもしお求めいただくのであればこういうところに連絡をしていただきたいということで、常設展示場であるとか地方の事業部の住所地、電話番号等を載せております。  ただ、残念なことにインターネットで注文を受けるというのはやっておりません。それは、インターネットで注文を受けましても、刑務所でございますので、受けたから例えば人気商品があったからどんどんつくるというわけにもいきませんし、人をどんどん雇い入れてつくるというわけにもいきません。そういうことができない限界がございますものですから、その辺は事務所と御連絡をいただいて御注文いただくということになっておりまして、それはやっておりませんが、一応インターネットの上には載せてはおりますので御理解いただきたいと思います。 <0217>=大森礼子君= インターネットに対して、キャピックのカタログがございますね、その情報をそのまま載っけているということなんでしょう。局長不満そうなあれですけれども、結構です。  今の御説明ですと、例えばカタログもございまして、ただ商品は限定されております。それから、各ところへ連絡して、お買い求めの方法とかあるのですけれども、これもやっぱり消費者と言っていいのか、こちらで見ますと非常に使い勝手が悪いといいますか、しょせんやっぱりお役所仕事だなと思うんですね。これも一カ所に注文場所を設けまして、それから各刑務所へ伝えるとか、こういう工夫が要るのではないかという気がします。  それから通信販売の形で、物によっては急に売れたからといって大量生産できないかもしれませんが、例えばみそ、しょうゆとか評判のいいものがございますし、横浜刑務所、ハマローズという粉石けんですか、これも公害防止の粉石けんということで、府中刑務所のコッペパン、これは物すごく人気があるのですが、これはちょっと通信販売は無理とは思いますけれども、物によってはそういう形もできるのではないか。  確かに、利益を上げることだけが目的ではないでしょうが、そういうことによっていろんな、刑務所の中というのは何か隔絶された世界というものがありまして、その中にも受刑者という身分ではあるけれども、同じように人が住んでこういう作業をしているということがなかなか外に知られにくいと思うんですね。そういうことを理解してもらうためにも、また法務省の矯正の仕事、これを理解していただくためにも、このキャピックのあり方というもの、もっと有効な活用の仕方がないかということを考えていただきたい、こういう希望を持っております。  それから、時間の関係で簡単にお尋ねするんですが、今の仕組みですと、例えばある作業が自分のところへ還元されないのでしたら、作業する受刑者が余り一生懸命頑張ってやろうという気にはならない仕組みになっておりますね。いかがですか。 <0218>=政府委員(坂井一郎君)= 先ほど申し上げましたとおり、売り上げ等は全部国の歳入になりますものですから、個別の刑務所の収入にはならないということは先生御指摘のとおりでございます。  それで、御承知のとおり、作業賞与金というのを作業に従事する人には交付するということになっておりまして、この中で見習い工から一等工まで十段階に分けまして作業賞与金の額に差をつけております。それからまた、非常に熱心に作業した人には割り増しを出す、それから逆にまた、行状が悪いあるいは作業成績が悪い人については一定限度まで作業賞与金を減らすというようなことをやっておりまして、そういうことの動機づけをしながら受刑者の人たちに作業賞与金を支払っているというのが実態でございます。 <0219>=大森礼子君= やっぱり一生懸命作業すればそれだけ作業賞与金がふえるとか、あるいはその刑務所の中で一生懸命つくれば売り上げの中から幾らか刑務所全体に還元されて新しい施設ができたとか、何かこういう目標がないとなかなか作業自体も苦しいものかなと、刑罰だと言えば仕方ないわけですけれども、そんな気がいたします。  それから、この作業賞与金なんですけれども、きょうちょっと時間がなくなりましたので簡単にお尋ねするんですが、刑務所作業賞与金の額が非常に少ないので、身寄りがない方の場合、刑務所を出るとまず一杯飲みたいなと思うとそこで使っちゃって、すぐまた無銭飲食で入ってくる、この悪循環を繰り返している場合があります。これは端的にお尋ねしたいんですが、例えばこのキャピックの仕組みがよくいきまして、ちゃんと収益が上がるようになって作業賞与金が多少上がって、例えば出所のときには、入っている年数にもよるでしょうけれども、当座一カ月ぐらい生活できるお金が持てるようなことにはならないのでしょうか、非常に抽象的な質問で申しわけないのですが。 <0220>=政府委員(坂井一郎君)= その点は我々も苦慮しているところでございますけれども、現在の状況からしますと、一年間服役した場合で大体三万五百円ぐらい、三年で十六万八千円、五年で三十八万一千円というぐらいのところでございまして、一年だったら三万幾らですから、それこそ一杯の飲み方によればなくなってしまうという懸念もございます。  ただ、これは非常に難しい問題がございまして、売り上げあるいは刑務所の成績ということによってその作業賞与金を変えるといたしますと、刑務所というのは地域の経済によって非常に影響を受けます。だから、非常に売り上げの上がるような地域、例えば名古屋であるとか豊田を控えているような地域のところは売り上げが上がりますけれども、余り申し上げていいのかどうか、東北の方に行くとなかなかそうもいかないところもございます。  それからもう一つは、体の弱い人もいます。それからお年寄りもいます。その人たちは作業成績が上がりません。その人たちはそれじゃ出るとき少なくていいのかというふうなことをいろいろ考えますと、なかなか売り上げ等を施設に還元してその中から分けるということもいろいろ難点があると我々は思っておりまして、そういうことを考えながら、さはさりながら少しでも多いのがいいことは間違いございませんので、ほかの一般社会の例えば生活保護だとかあるいは最低賃金等をしんしゃくしながら、この作業賞与金の増額を査定当局等にお願いしているというのが実情でございます。 <0221>=大森礼子君= 時間が来ましたので、大臣の御答弁いただくあれがなくなりました。キャピックブランドにつきましては、これは広く知られるように大臣ぜひお力を入れていただきたい。  それから、今作業賞与金を言いましたのは、やっぱり出てきてなかなかその出所者の更生が非常に難しい形になっております。日の当たらないところですが、やっぱり更生保護という点について法務省も真剣に取り組んでいただきたい、こう希望を申し述べて質問を終わります。 <0222>=橋本敦君= 法務省刑事局は、六月一日に報道関係機関各位に対して「「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」の呼称等について」ということで、この文書を念達されたと思うんです。私は、この問題は報道の自由、国民の知る権利にかかわって、行政庁としてこういった抑制的あるいは介入的な行為を行ってよいのかという、憲法にかかわる重大な問題が含まれていると思うんです。私は、この問題はそういう重大な問題として、これがはっきり決着しなければ法案の審議にも入れない、それぐらいの重大な前提的な根本問題だというように認識しております。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕  そこで、この問題について伺ってまいりたいと思うのですが、まず第一に、法務省のこの刑事局見解というのはだれが責任をお持ちになる見解ですか。 <0223>=政府委員(松尾邦弘君)= この申し入れ自体は、法務省刑事局長の私の名前で申し入れております。したがって、私ということになろうかと思います。 <0224>=橋本敦君= この要請は六月一日付になっておりますが、どのような方法でどのような範囲の報道機関に出されたものですか。 <0225>=政府委員(但木敬一君)= 法務省の記者クラブであります法曹記者クラブに加盟する報道機関約十六社に対して配付しております。 <0226>=橋本敦君= その十六社というのは新聞、テレビを含んでのことですね。 <0227>=政府委員(但木敬一君)= そのとおりでございます。 <0228>=橋本敦君= この要請をするについて、法務大臣は了承されておられますか。 <0229>=国務大臣(陣内孝雄君)= 事前の相談はございませんでしたけれども、私もこの措置が適切である、このように考えております。 <0230>=橋本敦君= 事前の相談はなかったけれども、法務大臣としてもこれについては責任は負うということをおっしゃるわけですね。どうですか、今の発言の趣旨は。 <0231>=国務大臣(陣内孝雄君)= そのとおりです。 <0232>=橋本敦君= したがって、法務大臣を含めてこの問題は重大な問題だと私は思うのです。  こういうような要請を出す契機になった問題でありますが、新聞報道によりますと、関係者によると、法務省のこの文書も自民党の強い要請で出されたという報道があります。自民党筋からの要請があったことは事実ではありませんか。 <0233>=政府委員(但木敬一君)= この申し入れにつきましては、刑事局の方がみずから検討してこのような申し入れをするという決断をしたものでありまして、自民党の要請によって出したという性質のものではないと考えております。 <0234>=橋本敦君= 何らかの要請、あるいはそれに近いような話は一切なかったと否定されるんですか。新聞報道は誤りだ、こうおっしゃるわけですか。 <0235>=政府委員(但木敬一君)= もちろん、自民党の中でどういう論議がなされているかにつきましては、私ども詳細に存じ上げないわけです。議員の中には、もちろん何党という話ではなくて、この法案について非常に関心の高い方々がたくさんおられまして、その人たちの個人的な意見を承ることはございますが、法務省に対して自民党が要請をするとか、そういうようなこととしてなされたものは私は承知しておりませんし、そのような経緯ではないというふうに考えております。 <0236>=橋本敦君= いろいろな議員の意見を聞くこともあるとあなたがおっしゃったその議員というのは、主に自民党の議員でしょう。 <0237>=政府委員(但木敬一君)= 必ずしもそうではありません。この法案についての呼称問題というのを議員の中でおっしゃる方がおられましたけれども、もちろん自民党の議員の方もおられましたが、必ずしも自民党の議員だけではございません。 <0238>=橋本敦君= いわゆる盗聴法案という呼び方をしてくれるなと言ったのは、自民党以外ではどの党の議員ですか。 <0239>=政府委員(但木敬一君)= 自民党自体も盗聴法案と呼ばれないようにしろという要請を法務省にしてきたわけでもありませんし…… <0240>=橋本敦君= 議員の話です。 <0241>=政府委員(但木敬一君)= 議員の話ですか。盗聴法案という呼称自体は好ましくない、それは国民に誤解を与えかねない呼称なので、それについては報道機関がきちっと通信傍受法案なりあるいは正式呼称で報道してもらいたい、こういう御意見を持つ議員の方は、必ずしも自民党議員だけではありません。 <0242>=橋本敦君= だから、自民党議員以外にどの党の議員からあったのかと聞いているんです。共産党が言うわけないんだから。 <0243>=政府委員(但木敬一君)= どこの議員かというお尋ねでございますけれども、もちろんこの法案につきましていろいろな立場の政党がございますから、そのいろいろな立場の政党のお考えに基づいて言われているわけでありまして、特にこれについては修正案も三党の合意でできたわけでございますので、そのような過程から、自民党以外の政党につきましても、もちろん国民に正確な理解をしてもらいたいというふうに考えた政党はあったと思っております。 <0244>=橋本敦君= 大体見当はつきましたよ、はっきりおっしゃらないけれども。  この要請で、盗聴というのは通信の秘密を違法に侵害する犯罪行為であると。ところが、違法に侵害しない、ひそかに聞く通信の傍受というのは別なんだということを言っていますね。盗聴というのが違法に通信の秘密を侵害する犯罪行為だということは、これはどこで一体決まっているのか。これは法務省の解釈にしかすぎませんよ。  例えば、広辞苑を見てみましょうか。広辞苑で盗聴というのはどう書いているかというと、違法、合法を問わず、そんなことは書いてない。「ぬすみ聴きすること。」、電話を盗聴するというような当事者に知られないままに聞くという、「ぬすみ聴きすること。」、こう書いてある。そのとおりでしょう。  そして、同じ広辞苑で、傍受というのは「無線通信で、直接の相手でないものが、その通信を偶然または故意に受信すること。」、つまり、傍受というのは無線通信に関してひそかにそれを聞く行為であるというように広辞苑でははっきり書いているんですね。  そして、それだけじゃありません。いろいろ調べてみますと、例えば一番新しい一九八七年に発行された軍事用語辞典というのを私は調べたんですが、その軍事用語辞典でインターセプションというところがありまして、これは、一、傍受(無線の場合)、二、盗聴(有線の場合)、こう書いてある。つまり、この辞典から見られるところによりますと、電話等有線をひそかに聞くというのは盗聴である、無線等をひそかに聞き取るというのが傍受である、こういうふうになっているんですよ。  だから、まさに言葉の使い方としていえば、違法かどうかという判断で区別するというのは法務省の一方的考え方であって、社会通念やあるいは多くの辞典を調べても、盗聴というのは電話をひそかに聞き取ることであり、傍受というのは無線をひそかに聞き取ることであるという区分けがなされている。こういう区分けがなされていることを官房長、知っていましたか。 <0245>=政府委員(松尾邦弘君)= 文書を発出いたしましたのは私でございますので、私の方からお答えしたいと思います。  確かに、先生御指摘のように、いろいろな用語辞典等での扱い方はあろうかと思うんですが、この文書の意図するところは、やはり盗聴といいますと、国民の理解としては、ここに書いてありますような、通信の秘密を違法に侵害する犯罪行為であるというような理解で、それはこの法律の予定しております電話傍受について誤解を与える、こういう理解でございますので、確かに広辞苑その他、あるいは違った表記はあるかと思いますが、そうしたこととは別に、国民に、我々が想定している、あるいは我々がこんなふうに理解されると困るなというようなことをおもんぱかりましてお願いをしたということでございます。 <0246>=橋本敦君= わかりました。  だから、正確に社会的な言葉、用語の通用あるいは慣例に従ったものじゃなくて、法務省の見解なんですよ。だから、法務省が言っているのは、通信の秘密を違法に侵害する犯罪行為である、それが盗聴なんで、それと一緒にされたら困る、こう言っているわけでしょう。  確かに、盗聴というのは、これは表現の自由、国民の信書の秘密、通信の秘密を侵す憲法上も違法な行為であることは間違いないですよ。しかし問題は、法務省がこの法案について、そういう呼び方についてこれに盗聴という言葉を当てはめるのは法案についての著しい誤解と偏見を与えるものだ、こう言っているわけですが、著しい誤解と偏見と法務省が言うのは、傍受というのは正当ないわゆる盗聴なんだ、いわゆる盗聴法と世間で言われているのは違法な犯罪行為の盗聴だから一緒にしてくれるな、こういうことでしょう、考え方として言えば。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕  しかし、盗聴というそのことの本質、つまりひそかに当事者に知られないで通信を聞き取るというその行為自体は、概念は変わらないわけじゃありませんか。だから、そういう意味で、マスコミあたりが通信傍受法案、いわゆる盗聴法案という呼び方できたことは、物事の実態を表現する方法として、表現の自由にかかわる問題として当たり前のことじゃありませんか。どう考えますか。どこが悪いんですか。 <0247>=政府委員(松尾邦弘君)= お言葉を返すようでありますが、もちろん法務省の周辺の者あるいは一般の人の理解としてこういうふうに解釈するのではないかなと私どもが思うところは、盗聴といいますと、例えば電信柱の上で夜間ひそかに電話をクリップか何かで接続して聞いている行為のようなイメージを国民は持つのではないのかなと。つまり、盗聴というと、イコールそういうストレートに違法以外に考えられない要するに電話をひそかに聞く行為、これをイメージするおそれが非常に強いと我々は考えたのでございます。  したがいまして、盗聴という言葉が多用されますと、この法律が予定しております電話傍受の正確な姿、あるいは法律が予定している電話傍受の手続あるいはいろいろな公正さ、適正さを担保するための処置がございますが、そういったことをすっ飛ばしてしまって、電話の上のひそかに聞く行為というイメージが定着しちゃうおそれがある。これは、ひいてはやはり国会の論議にも影響しかねませんし、法案の内容に著しい誤解を与えるだろうということが真意でございまして、それ以上の、圧力をかけようだとか、そんなことまで考えたわけではございません。報道機関にそういう誤解を与えるおそれがあるのでぜひ御配慮をいただきたいとお願いしたのがこの文書でございます。 <0248>=橋本敦君= 刑事局長、電信柱の上に上って線をつけてそれでタッピングするという、そんな原始的なことはいつまでも国民は考えていませんよ。それはあなたの方の一方的な考えだ。  そこで、もっと大事なことは、傍受といい盗聴といっても、要するに当事者の知らない間にひそかに通信が聞き取られる、これが実態です。それを法案として手続的にやろうとなさっておるわけですが、実態はまさにマスコミなどが通信傍受法案、いわゆる盗聴法案と書いても、その実態から大きくかけ離れて著しい誤解を与えるという、そんな問題じゃなくて、それは報道機関の報道の自由、表現の自由、国民の表現の自由にかかわるし、手続的に法で定められようが定められまいが、いわゆる盗み聞きをするというその実態に合わせた言葉としていわゆる盗聴法案だと国民が言っても、何もそれを禁止したり抑制したりあるいはやめろということを言う筋合いのものじゃない。国民の自由な判断で言っていいことじゃありませんか。行政庁がそこまで介入する必要がどこにありますか。どうですか。 <0249>=政府委員(松尾邦弘君)= 今、橋本委員がおっしゃるような考え方ということで、国民の間でそれがそのとおり受け取られるというふうに我々が理解するのであれば、あるいはこういうような申し入れをしたこと自体については差し出がましいことであったかなというふうになるかもしれませんが、少なくとも盗聴という言葉が現にいろいろなマスメディアで使われているその響き、あるいはそれを聞く国民の感覚というものは、残念ながら私は必ずしも橋本委員のおっしゃるような理解とはかけ離れているのではないのかな、こういう心配をするものでございますから、やはり正確な理解をお願いするという必要性からあえてこのような文書を出させていただいたということでございまして、報道の自由そのものに介入しようとかいうことは考えておるわけではございません。あくまで報道機関の御判断ということでございます。 <0250>=橋本敦君= なぜ法務省がそこまで固執されるかといえば、いわゆる盗聴法案という言葉を使って国民の間でそのことが語られることは、逆に法務省からいえばこれはやっぱり国民の批判を大きく呼び起こしていく、国民批判の高まりになる、そのことが法案をあくまで通したいという法務省から見たら問題だということで、私は国民の批判を抑圧するということさえ含んでいる姿勢だと言わざるを得ないと思うんですよ。  そこで私は聞きますけれども、行政庁が特定の法案審議に関連をして、その法案の通過、成立がスムーズにいくようにというねらいから、誤解を招いてはならぬというようなことも理由につけながら、特定の法案の呼び方についてマスコミに一定の事前的な抑制あるいは方向づけをお願いという形にしろやったようなことは政府としてあるでしょうか。法務省、ありますか。 <0251>=政府委員(但木敬一君)= 確かに法案の名前で非常に問題になったというようなことは、法務省としてはこれが初めてだろうと思います。  ただ、これまでも報道機関の方々の御理解を得るために努力をしてきたということはいろんな面でございまして、これもその一つのあり方として存在したというふうに思っております。 <0252>=橋本敦君= 極めて軽く考えられているところは、私は憲法感覚として問題だと思いますよ。  御存じと思いますけれども、一九七一年のことですが、ニューヨーク・タイムズ事件というのがございました。これはベトナム戦争に関するアメリカの国防総省の秘密文書をニューヨーク・タイムズが入手してこれを連載したわけです。それは重大な国家利益に反するということで、米政府は裁判所に記事の差しとめの要求をするという事件が起こります。  それに対してアメリカの連邦最高裁判所は、修正憲法第一条の精神を踏まえて、結局行政庁の差しとめを認めず、そういった問題については、およそ表現を事前に抑制する制度なるものは憲法上の有効性が否定されるものとの強い推定が与えられる、こういって言論抑制というのを厳しく批判をしている。そして、この判決の意義というものは、学者は言っていますが、表現の自由の保障から導かれる事前抑制禁止の原則が報道の自由との関係で厳格に維持されるものであることを示した、そういう意味で立派な判決だということを学界は評価しておるわけです。国家の機密がたまたま入手した報道機関によって報道される、それを政府が抑制するということさえだめだよと最高裁はきっぱりした判断を下している。  こんな、秘密でも何でもないですよ。この法案に関する考え方を通信傍受法案、いわゆる盗聴法案という呼び方でマスコミが呼ぶのは私は正当であると思うし、当然だと思う。我々がそう呼んで何の差し支えもない。それをお願いという形にしろ政府がそういうことを報道機関に今回改めて文書でこういうお願いをしたということは、私は言論、表現の自由に対する重大な問題だということを法務省はしっかり考えてほしいと思います。  日弁連は「人権と報道に関する宣言」というのを六十二年に出していますが、その中で、「民主主義社会において、国民は、主権者としての権利を自主的に行使するために、公的情報に積極的にアクセスする権利とともに、正確で必要十分な情報の提供を受ける権利を有している。報道の自由は、このような受け手としての「知る権利」に奉仕するものであり、最大限保障されなければならない。」、こう言っています。  私たちがこの盗聴法案反対という立場で運動するのは、それぞれ政党の自由、議員の自由でしょう。通信傍受法案、いわゆる盗聴法案に反対しましょう、こういうことを私たちはやりますよ。そういう私たちの行動に対しても刑事局としては極めて不愉快にお思いになって、議員もできるだけそういう言葉は使ってほしくないなと考えておられますか。 <0253>=政府委員(松尾邦弘君)= 毛頭そういうことは考えておりません。  先生が今引用された中にもありましたとおり、あくまで我々としては心底から国民に正確な情報といいますか、あるいは正確な理解をしていただくということのために必要な行為をするということでございまして、正確なという意味は、繰り返しませんが、盗聴の持つ意味、あるいはそれが国民の間で理解されるであろう姿、こういうことを考えますと、かえって国民に誤解を与えかねないということを危惧いたしましたので、お願いとして文書を出したということでございます。  先ほどのアメリカの例を私も承知しておりますが、その内容、あるいは停止を申し立てるというような強い形での政府からの働きかけという、二重の意味において今回の場合とは全く異なる事例であるというふうに私は考えております。 <0254>=橋本敦君= 私も同じ事例だとは言っていませんよ。国家機密に関する報道に対してさえ事前抑制はだめ、こういう判決が出ているんじゃないですかと、こういうことを言っているわけですからね。  それで、今局長がおっしゃいましたけれども、私は、法務省として謙抑的にもっとこの問題について、単なるお願いだからいいということで済まされない問題と考えてほしいんです。  法務省はまさに法の番人たるところです。人権擁護、国民の自由を守るところです。しかも、憲法を擁護する義務を皆さん負っているわけです。そういった点から考えて、たとえお願いという言葉であるにせよ、通信傍受法案、いわゆる盗聴法案ということで報道機関が報道することについてやめてくれということを、お願いという形であるにせよ、そういうことを法務省として公の役所の権威にかけておっしゃっている、その事実はまさに憲法上の言論、表現の自由に対する事前抑制、あるいは介入に当たるというこの問題の重要性をもっと考えてしかるべきだ、私はこう言っているんです。  そういう点で、こういったお願いという名の報道機関に対するこのような言論、表現の自由に対する介入に当たる問題、そしてまた言論の自由の抑制にかかわるこういった問題について、私は政府としてやるべきでないと思います。謙抑性の行政庁の任務からいっても憲法擁護の責任からいっても、いやしくも公権力、捜査権限を持っている法務省としてやるべきことではない。そういった謙抑的な姿勢を法務省としては示すべきである。  大臣、私はこのようなお願いはこの際撤回してもらいたい。私たちは盗聴法案反対ということを言っていますけれども、私たちはその言い方を変えませんよ。そのことは誤解じゃなくて、かえって国民に法案の問題点を明らかに示すという意味で大事なことだと思っています。だから、マスコミが通信傍受法案、いわゆる盗聴法案という用語を使用しても、それは当たり前のことだと思います。  こういった問題については、憲法を正しく守るという立場からこのようなお願いは撤回するということを私は強く要求しますが、大臣、いかがですか。 <0255>=国務大臣(陣内孝雄君)= ただいま刑事局長が御説明申し上げましたように、私ども、これから重要なこの通信傍受、こういう略称を持った法案でございますけれども、こういう法案の審議をお願いする段階を迎えるわけでございます。そういう際に、やはりこの中身について十分に国民の皆様方にも知っていただきたいという気持ちで、これは報道機関の報道の自由を何ら制限するようなつもりではなくて、国民に対するお願いをしようというような気持ちで用い出したことでございますので、今後とも私どもとしての気持ちを国民の皆さんに逆によく知っていただきたい、こういうふうに考えるところでございます。 <0256>=橋本敦君= 大臣、それは問題の重要性を十分認識されておらないし、行政庁としてなすべき一線を越えてはならぬという、そこのところを踏み越えている問題ですよ。  六月六日の朝日新聞の投書に、国民から、こうあります。盗聴とは電話を盗み聞きすることと辞典にもある。通信傍受だろうが盗聴だろうが、日本語として本質は同じであることに変わりはないではないか。政府が傍受と言っても、される側からすればまさに盗聴なのだ。政府はこれをごまかしてはならぬ。国民もごまかされてはならない。こういった投書が出ておりますが、私はまさにそのとおりだと思う。国民から見れば、いわゆる盗聴法案なんですよ。  私は、法務省のそういう改められない姿勢に厳しく抗議をして、質問を終わります。 <0257>=委員長(荒木清寛君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0258>=委員長(荒木清寛君)= 速記を起こして。 <0259>=福島瑞穂君= 社民党の福島瑞穂です。  警察の裏金問題についてまずお聞きをいたします。  赤坂警察署が架空参考人に日当を支払ったとして日当を支払い、それにより裏金をつくったとして公金返還訴訟が起きました。東京都民が一九九三年当時の署長ら幹部七人を相手に、一九九六年七月二十四日、計四十二万七千円を返還するよう求めた裁判です。  この裁判の過程で警察は、被告七人は四十二万七千円を寄附し、その後一九九七年十月八日、裁判の途中で被告全員が、東京地裁の席上、返還義務があることを認め、認諾という形で裁判が終わっております。  このケースについてまずお聞きをいたします。  これは、架空参考人に日当を支払っていたということを認められるわけでしょうか。 <0260>=政府委員(野田健君)= 警視庁赤坂警察署の本件でありますけれども、この訴訟においては、参考人に対する支出行為について不正がなかったことを立証するためには参考人のプライバシーを明らかにしなければならなくなる、ひいては今後の捜査協力が得られなくなるおそれがあるということで、訴訟を継続することはできないと判断して認諾をしたというものでございます。 <0261>=福島瑞穂君= 寄附という形で東京都に支払い、裁判の途中で認諾という形で二重に支払ったのはなぜですか。 <0262>=政府委員(野田健君)= それぞれ手続が異なりますのでそのようなことをしたというように聞いておりますけれども、前に納めた返還金というのは、申し出があれば返還するということになると思います。 <0263>=福島瑞穂君= 寄附をして、その後また裁判の途中で二重に支払うというのは非常に変だと思います。これは、警察官七人が自分のお金で払ったのですか、警察が支払ったのですか。お金の出どころを教えてください。 <0264>=政府委員(野田健君)= 訴訟はそれぞれ個人に対して起こされたものでありまして、それぞれ個人が支払ったものであります。 <0265>=福島瑞穂君= この赤坂警察署の裏金問題に関してどのような調査をされたのでしょうか。何人がどれぐらいの期間どのような調査をされたか、教えてください。 <0266>=政府委員(野田健君)= 赤坂警察署の不正経理問題が掲載されたということを受けまして、警視庁では、同警察署に対する関係書類の精査等必要と認められる調査を行った。その結果、会計経理は適正に行われていたという結論を得、その旨警察庁に報告がなされたところでございます。 <0267>=福島瑞穂君= 質問に答えてください。何人がどれぐらいの期間やったのか、お答えください。 <0268>=政府委員(野田健君)= 具体的に何日間調査したかということについては、突然のお尋ねでありますので、手元に資料がございません。 <0269>=福島瑞穂君= どれぐらいの期間ですか。 <0270>=政府委員(野田健君)= 調査の期間につきましても、同じように突然のお尋ねでありまして、手元に資料がございません。 <0271>=福島瑞穂君= 裁判の途中で認める、認諾という形で終わっているにもかかわらず、適正であったということをここで証言されることに非常に驚きます。  参考人呼び出し簿、延べ五十四人が参考人として出頭、延べ四十四人に少なくとも四十三万円の旅費、日当を支給したように記載されていました。しかし、この四十四人のうち住民票などで所在を確認できた人は七人しかおりません。七人のうち五人は支給されていない。架空人名簿を調べたところ、例えば渋谷区何たら五丁目とあるけれども、五丁目はない。あるいは住所が公立図書館になっているなど、名義が架空人であるということが調査の結果わかっているわけですが、どうしてこれが適正だという報告になっているのでしょうか。 <0272>=政府委員(野田健君)= 当時、警視庁におきまして帳簿あるいは関係人の調べをして、その結果適正に支出されていたというふうに聞いております。 <0273>=福島瑞穂君= 架空名義なわけですから、どう調査をされたのでしょうか。 <0274>=政府委員(野田健君)= それぞれその当時の捜査員等にしてみれば、だれということは具体的にわかっているわけでありまして、それぞれ調査した結果適切に行われていた、こういうことでございます。 <0275>=福島瑞穂君= 偽名の領収書のチェックはどうやってできるんですか。 <0276>=政府委員(野田健君)= それぞれの支出がされているということが確認できているということでございます。 <0277>=福島瑞穂君= 非常に不思議でして、つまり参考人呼び出し簿、会計検査院に出したのとは全く別のものがある、そういうことですか。 <0278>=政府委員(野田健君)= この書類は会計検査院に提出するという性質のものではございません。 <0279>=福島瑞穂君= では、質問を戻します。  なぜ虚偽の架空人名簿の呼び出し簿になっているんですか。 <0280>=政府委員(野田健君)= 参考人の氏名でありましても、それぞれ捜査の過程において実名でありますと実害が及ぶというような危険もございますので、それぞれ捜査の必要上そのようになっておったというふうに聞いております。 <0281>=福島瑞穂君= 私は不思議です。どういうお金が出し入れされたかは正確である必要があるのに、なぜ全然違う人の名前、架空人になるのでしょうか。  また、その名前で所在を確認できた人間は七人しかいなかったけれども、その七人のうち五名は支給されていなかった。そうしますと、名前を使われた人間、例えば福島瑞穂はお金を支払われたことになっているけれども、私はお金をもらっていない、そういうことになるわけです。こちらの方がよっぽどひどいと思いますけれども、いかがですか。 <0282>=政府委員(野田健君)= 今御指摘のように、それぞれ個別に、それではだれに支出したのかということになりますと、その参考人のプライバシーを明らかにしなきゃいけないということが生じますので、そうならないように手を打っていたというようでございます。 <0283>=福島瑞穂君= プライバシーとおっしゃいますけれども、では、全くの架空人名簿の参考人呼び出し簿というのは一体どういう意味があるんですか。 <0284>=政府委員(野田健君)= それぞれ捜査の過程で必要な呼び出しをするわけでありますけれども、そのことと実際に支出するという行為は密接に関係しているわけでありますが、一方でそれぞれの参考人の氏名というものも秘匿しておかないと実害が生じるという危険がないわけではありませんので、捜査上そのようないろいろな手だてを講じているということでございます。 <0285>=福島瑞穂君= 実害ということが全くわからないんです。つまり、架空の人にお金を支払った、しかも別のケースでは既に死んだ人にお金が支払われている、あるいは他人の名前を勝手に使う。ある人物が本人は全く知らないのに支払われたというふうになっている、そういうものがあります。  では、一九九九年、ことし五月二十日、勝手に名前を使われた、自分はもらっていないとして、原告二人が損害賠償請求というものを東京地裁に提訴しております。この人たちは自分たちの名前が不当に使われた。つまり、警視庁生活安全部銃器対策課銃器情報担当課長代理名義の捜査費証拠書類なる帳簿があるけれども、この帳簿には捜査費の支出に関する証拠書類がつづられ、銃器情報提供者に対する謝礼の支払い記録になっている。しかし、この裁判を提起した原告二人は一切謝礼も受け取っていない、自分たちの氏名権が侵害されたとして裁判を起こしています。  こういうことについてはどう思われますか。あるいはこの裁判をどういうふうに理解していらっしゃるのでしょうか。 <0286>=政府委員(野田健君)= 警視庁から報告を受けておりますけれども、民事訴訟は領収書に名義を使用されたとする者が氏名権を侵害されたとして提訴したものということでございます。  訴訟に係る事柄でありますので、答弁を差し控えたいと存じます。 <0287>=福島瑞穂君= 全くひどい話だと思うんです。つまり、今行政は情報公開が進んでおりますけれども、全く架空人名しかも本人が知らない状態で領収書なりこういうものが出されているということ自身驚くべきことで、警察は情報公開が最もおくれている役所の一つではないかと思いますが、いかがですか。 <0288>=政府委員(野田健君)= 警察のいろいろな関係については、国民の理解を得るべく広報に努めているところでありますが、一方で警察はいろいろな協力者といいますか、捜査上の必要な協力をしてもらう場合がありますけれども、そういった人たちが今度は例えば暴力団の事件の目撃者であるとかあるいは参考人という場合に、その名前が外に出るということによってその人たちが危害を加えられるということになっては決していいことではありませんので、警察としては参考人であるとか被害者とか、そういった氏名が不用意に外に出ることのないように常に注意をしなきゃならないというように考えております。 <0289>=福島瑞穂君= 全く変な話で、例えば裁判を提訴した二人は、自分のあずかり知らないところで名前を使われていると。本人に迷惑がかかってはいけないので、了解をとって、このケースだけは特に架空人名義のものをつくったというわけでは全くないわけです。  では、次にお聞きします。  「フライデー」、一九九九年四月二十三日、一九九九年四月三十日、両方ですが、警視庁銃器対策課現金出納簿、裏金をつくっていたということがニュースとして出ております。さっきの裁判とも関係がありますが、これは調査をされたのでしょうか。どんな調査をされたのでしょうか。結果はどうなったのでしょうか。 <0290>=政府委員(野田健君)= 御指摘のように週刊誌で報道されております。そこに書いてあるような写真で見ますと領収書様のものがありますけれども、そのようなものは扱っていないということのようでありますし、また現金出納簿とされるものが写真に写っておりますけれども、警視庁が保管しております真正な書類と類似はしておりますが、あくまでも写真の映像で真正な書類の映像であるかどうかは確認できない。また、現金出納簿とされる写真の映像には真正な書類と内容が一致しない部分があるということでございます。  警視庁においてそれぞれ保管している現金出納簿上の書類の精査あるいは捜査員等からの事情聴取を行った結果、適正に会計処理が行われているというように報告を受けております。 <0291>=福島瑞穂君= 赤坂警察署に話をちょっと戻します。  先ほど、これは架空人の名義であったと、本人、警察官、それぞれに確認して、本人の名前などを出してもらったというふうにお答えになられましたけれども、そうしますと、呼び出し簿というものは架空であって、それぞれの警察官が自分が呼び出した人の名前や住所、領収書を控えているんですか。あるいはもし真実に払った場合の領収書というのは一体どうなっていたのでしょうか。 <0292>=政府委員(野田健君)= 呼び出して参考人調書等をつくりますので、その結果できている氏名等からその当時真正に呼び出した者については特定ができるということでございます。 <0293>=福島瑞穂君= では、その参考人の呼び出し簿を調査した結果、どうなったんですか。 <0294>=政府委員(野田健君)= 調査した結果、支出すべき者に対して支出しているということでございます。 <0295>=福島瑞穂君= 裁判で請求されたのは四十二万七千円ですが、これとぴったり合う形で全然別の人たちに出していたんですか。確認します。真実にちゃんと払ったんですね、参考人に。まずそれをお答えください。 <0296>=政府委員(野田健君)= 支払うべき者に対して支払っていたということでございます。 <0297>=福島瑞穂君= その人たちからは領収書をもらっていますか。 <0298>=政府委員(野田健君)= 領収書を受け取っているものもあれば、受け取っていないものもあるというように聞いております。 <0299>=福島瑞穂君= 公金支出をしてなぜ領収書をもらわないんですか。 <0300>=政府委員(野田健君)= 協力した方の中には自分の名前が一切書類に残りたくないという方もありますので、そういう場合に名前を具体的に書けないという場合があります。したがって、領収書を出さないということであれば、領収書をとれなかったということで処理せざるを得ないということで考えております。 <0301>=福島瑞穂君= とすると、領収書をもらうのともらわないのがあって、警察の中の領収書の取り扱いは、架空人名義で出された領収書と、真実に書いた領収書と、本人が出さない領収書といろいろあることになりますけれども、それは会計上混乱は生じないんですか、あるいは問題ではないですか。 <0302>=政府委員(野田健君)= それぞれ捜査の現場で、必要な範囲で必要な手だてを講じているというふうに考えております。 <0303>=福島瑞穂君= では、例えば領収書をもらう場合ともらわない場合と仮にあるとします。上司はどうやってそれをチェックするんですか。 <0304>=政府委員(野田健君)= 多くの場合、捜査というのは二人で一人の参考人等に対峙いたしますので、そういう意味でその支払い等について証明が行われるというふうに考えております。 <0305>=福島瑞穂君= その二人がぐるだったら、上司はどうやってチェックするんですか。だれがどうやってチェックするんですか。チェックできないじゃないですか。 <0306>=政府委員(野田健君)= 警察の中にもいろんな人間がおりまして、中には不正をするという者が全然いないというわけではありませんけれども、原則的にそのような者はいないというふうに考えております。 <0307>=福島瑞穂君= 公務員の大多数は私はまじめだと思います。しかし、だからこそチェック機能をちゃんとやって不正にお金が使われないということですが、今のお答えはびっくりします。不正をする人間がいないということであれば日本に警察は要らないというふうに思いますが、どうですか。 <0308>=政府委員(野田健君)= 昔、浜の真砂と何とやらというお話があったと思いますけれども、人間のやることですから中には誤りをする者もいるかもしれませんけれども、そういったことのないようにきちんと管理していくべきものと考えております。 <0309>=福島瑞穂君= 警察の特にお金に対する情報公開度が極めて低いということが明らかになったと思いますが、またお聞きします。  例えば大阪府のケースや、それから過去においてさまざまな書物、さまざまな証言、これは例えばやはり同じフライデーの一九九九年六月十一日ですが、大阪府警のもあります。あるいは、いろんな本もありますし、いろんな警察官の方からお話を聞くこともあります。警察は、この裏金問題ということが大きく指摘された中で、今までに調査をされたことはありますか。 <0310>=政府委員(野田健君)= 警察におきましては自前で監査の体制もとっておりますし、都道府県警察におけるものについては監査委員会の監査を受ける、また国の経理に関するものについては会計検査院の検査を受けるということで、そういう意味でしょっちゅう検査しているという状況にございます。 <0311>=福島瑞穂君= 監査というのはよくわからないんですが、先ほどのように領収書が出ない場合と、例えば何十何人全く架空人名義で出されている、死んだ人もいる、住所は全くみんなでたらめ、どこか公立図書館なんかに住所がなっている。実在の住所がないなんというのがある場合に、これは監査を通ってきたんでしょう、赤坂警察署も。これはどうなんですか。 <0312>=政府委員(野田健君)= それぞれの内容につきまして監査を行っておりますけれども、それぞれ支出すべき者に支出してあるということが事実としてあれば、それでいいわけでございます。 <0313>=福島瑞穂君= 領収書が出ない場合の監査というのはどうしているんですか。 <0314>=政府委員(野田健君)= 領収書が入手できなかった事情、状況を書面で報告するという形で会計的には処理されることになっております。 <0315>=福島瑞穂君= 警察のお金はすごく複雑だと思うんです。つまり、呼び出し簿というのがあって、こういう人を参考人として呼び出した、こういうふうにお金を払ったとあるが、それは非常にでたらめであった。架空人の名前であり、そういう人はいなかったという人がほとんどであった。お金を払ったというふうになっているけれども、七人のうち五人は実はもらっていなかった。この会計監査はどうやるんですか。 <0316>=政府委員(野田健君)= 監査委員会の監査というのは私がやるわけではなくて受ける方でございますので、具体的にどうやるかということについては、それぞれ説明をするという立場で説明しているわけでございます。 <0317>=福島瑞穂君= だから、でたらめだと思うんです。この人に払いましたというのを出して、向こう側は一々この人は生きているかどうかということまで探しませんから、一応形式的に領収書とその金額が合っていれば素通りしてしまいますね。それで監査に出しているわけでしょう。 <0318>=政府委員(野田健君)= 監査というのは、例えば参考人旅費であれば参考人に旅費として支給されているという事実が確認できればいいということでございます。 <0319>=福島瑞穂君= 監査請求で出している資料は、例えば赤坂警察署の場合は、この参考人呼び出し簿に従った領収書を出しているわけでしょう。それをお答えください。 <0320>=政府委員(野田健君)= 監査の場合には、そういうことになっていると思います。 <0321>=福島瑞穂君= とすると、監査で出した書類は、架空人名簿でうそっぱちであったということになりますけれども、それでいいんですか。 <0322>=政府委員(野田健君)= 従来、支出すべきものを支出したということで監査を受けまして、それが特別の指摘を受けたということはございません。 <0323>=福島瑞穂君= 指摘を受けなかったのは、相手がとんまだったというかよく見抜けなかったというだけの話であって、形式的に出して、それは全く架空人名義でありかつ現実には支払われていなかった、それを平気で出してきたということではないですか。 <0324>=政府委員(野田健君)= 現実的に支払いをしたということでございます。 <0325>=福島瑞穂君= 例えば赤坂警察署の場合に出した監査は、本当に真実のものを監査請求として出しているのか、それとも裁判所などで一般的に公にされていたこの四十四人に四十三万円支払ったという方を監査請求として出していたのか、どちらですか。 <0326>=政府委員(野田健君)= 監査書類として出すべきものを出したということでございます。 <0327>=福島瑞穂君= どっちですか。 <0328>=政府委員(野田健君)= それぞれ監査のために徴している書類でございます。 <0329>=福島瑞穂君= いや、答えになっていないですよ。どっちですか。裁判所で出したものですか、それとも本当にこの人に出したかどうかというのを一々全部チェックし直して出したんですか。 <0330>=政府委員(野田健君)= 具体的にこの人に出したということを証明するためにはその人に裁判所に来ていただかなきゃいかぬ、こういうことになりますので、そういう名前について裁判所に出したということはございません。 <0331>=福島瑞穂君= 結局、監査請求には架空人の全くでたらめのものを出して、それが幸か不幸か全部通っていたということではないんですか。  全国的にいろんなところで内部からの告発がたくさんあります。こういう裏金をやっているというのは恥ずべきことだというふうに思います。もしこれが普通の役所であれば、自治体だったら知事の首が飛ぶとか、それぐらいの本当に問題だと思います。情報公開度が極めて低いというところを何とかしていただきたいと思います。  今後、この点について大規模な調査をされる予定はありますか。 <0332>=政府委員(野田健君)= いろいろな内部告発と称するような文書が出たりもいたしますので、我々としては、機会を見て厳しい監査を引き続きやっていきたいと思っております。 <0333>=福島瑞穂君= 不正をする人はいませんというような答弁ではなく、やってほしいと思います。  ちょっと振り出しに戻って済みませんが、赤坂警察署の件に関して裁判所で認諾という形で終わっております。にもかかわらず、きょう、全く違法ではなかったというふうに証言されていることに大変ショックを受けるんですけれども、繰り返して言いますが、裁判所で認諾という形でお金を払っていながら違法は一切なかったということですか。再度確認します。 <0334>=政府委員(野田健君)= 認諾という手続は、その要求の内容、事実をすべて認めるという意味ではなくて、支払うべきだとされている金額、それについて支払うという意味での認諾という手続であります。  警視庁では、関係書類の精査等、必要と認められる調査を行った結果、会計経理は適正に行われていたという結論を得ているということでございます。 <0335>=福島瑞穂君= 架空の人はいなかったということですか。 <0336>=政府委員(野田健君)= 参考人旅費を支出すべき相手に支出していたということでございます。 <0337>=福島瑞穂君= しかし、虚偽の書類をつくっていたということは残るわけですよね。 <0338>=政府委員(野田健君)= それは真実の氏名ではないという意味ではそうかもしれませんが、参考人旅費を支出すべき件数であるとか距離であるとか、そういったものについてはそれなりの合理的な数字であるというふうに考えております。 <0339>=福島瑞穂君= しかし、参考人となりかつ名前を使われ、参考人としてお金を払ったと言われながらもらっていなかった人は、どうなるんですか。 <0340>=政府委員(野田健君)= 警察のそういった捜査に絡みます書類というのは第三者に見せることを当然考えていないわけでありまして、そういう意味で、このように何かのかげんでおかしな書類が出るということになりますけれども、本来はあり得ない事態というように考えております。 <0341>=福島瑞穂君= 他の警察署の調査をぜひしていただきたい。架空人名義のものがあるかどうか、全国の他の警察署において、架空人名義で参考人としてお金を支払っているケースがあるかどうか、まず抜本的、組織的に調査をしていただきたいと思いますが、お約束していただけますか。 <0342>=政府委員(野田健君)= 会計経理につきましては、税金でできている予算でありますので、効率よく、また適正に支出するように平素から指導しておる、そしてそのために必要な監査もしておるという状況にございます。 <0343>=福島瑞穂君= 適切に指導している結果がこれだから、大変危惧を感ずるわけです。抜本的、組織的に、警察において架空の人に対して支払ったことがあるかどうか、警察は調査はできるわけですから、架空人名義に対してやっているかどうかという調査をしていただきたいんですが、お約束してください。 <0344>=政府委員(野田健君)= 毎年のように全国的に監査対象にいたし監査しているという状況にございます。 <0345>=福島瑞穂君= 監査をしているとおっしゃっているんですが、むしろ警察の裏金づくりは構造的かつ伝統的、長期なものであるという指摘も大変あります。こういう体質を変えるしか方法はないと思います。  本年度の警察所管の捜査費予算額は八十四億三千十六万六千円です。これが適正に使われているかどうかについて、今後も私どもは関心を持ち、お聞きをしたいと思います。  時間が来ましたので、あとの質問についてはまた別の機会にさせてください。 <0346>=平野貞夫君= 組織的犯罪三法が参議院に送付されましてちょうど一週間たちますが、委員会の審議は始まっておりません。そこで、きょうはその問題などを取り上げてみたいと思います。  まず、この法律の立案立法過程の中で、多少私どもも当時野党ではありましたがかかわったものですので、ちょっと思い出しながら、法務大臣に当時の法務省の考え方みたいなものをまず聞いてみたいと思います。  平成八年に住専問題というのが大変大きい問題になりまして、当時私たちは新進党でございましたが、住専問題等、金融不安あるいは不良債権の回収とかそういう問題によって当時約四十兆円ぐらいの金が裏社会に流れる、こういうかなり専門家の見通しがありました。実は、新進党の国会議員衆参合わせて八十名でRICO法研究会というのをつくりまして、御承知のようにアメリカでマフィアを退治した、そのかわりロバート・ケネディー司法長官が暗殺されたという歴史的な事件があったのですが、こういう体制をやはり日本でもつくるべきだということで、会長に藤井裕久さん、それから事務局長に現在民主党衆議院議員の古賀一成さん、それから現在の公明党からは平田先生とか太田先生、私も参議院から参加しまして勉強会をやりました。  住専国会の途中で当法務委員会で私も質問をいたしましたが、早く法務省としても決断してその立法を図るべきだと。結構そのころやっぱり慎重でございました、答弁は。なぜ慎重だろう、こう思っていたわけですが、その後平成八年の秋口ごろから法務省も大分腰を上げて、そして九年、十年と非常に積極的になって、十年の三月にこの三法案が提出されたわけでございます。なぜ法務省が積極的になったのかということが私非常に気になっておりまして、この法案が衆議院で審議あるいは参議院に送付されたのを機会によく調べてみますと、この八年の後半から九年、十年にかけて大変日本の犯罪が凶悪化し、非常に大きな変化が起こっておる。  そこで、これは私の一つの推測でございますが、例えば覚せい剤の押収量がもう巨大にふえていること、それから銃器による強盗事件の発生がこれも本当に倍あるいは三倍になっておること、それから集団密航、これがまことにふえた、年によっては、あるいは月によっては減るときもありますが、状況としては八年、九年、十年にかけて急増しているという変化、こういうことに法務省はやっぱり何か対応をしなきゃいかぬなというふうに思ったんじゃないかと私は推測していますが、その辺大臣はどのような御所見でしょうか。 <0347>=国務大臣(陣内孝雄君)= 今、委員御指摘のとおりでございまして、国内的に見た場合には、暴力団等による薬物や銃器等の不正取引が深刻な状況になってきております。また、暴力団等の組織の不正な権益の獲得、維持を目的とした各種の犯罪のほか、いわゆるオウム真理教事件のような大規模な組織的形態による凶悪事犯、会社等の法人組織を利用した詐欺商法等の大型経済事犯など、組織的な犯罪が少なからず発生しておるわけでございます。こうした犯罪情勢は、我が国の平穏な市民生活やあるいは健全な社会経済の維持発展のために大変悪影響を及ぼしておるというふうに懸念されているところでございます。  もう一つ、委員も御指摘だとは思いますが、組織的犯罪対策については最近における先進国首脳会議等の国際会議においても重要な課題の一つとなっておりまして、これが継続的に取り上げられてきているところでございます。国際的に協調した対応が必要だということで、このための法整備の必要性にも迫られてきたところでございます。 <0348>=平野貞夫君= わかりました。  いろいろマスコミ、テレビの論調がございますが、歯どめだとかあるいは人権に気をつけろということは当然のことでございます。先ほども話題になっていましたが、一時はかなり盗聴法、盗聴という言葉が非常に心理的に影響を与えまして、これはもうとんでもない法律ではないかというイメージが国民の方に大分出ていましたが、ここのところやはり基本的には必要だと。例えば先週の日曜日のテレビ朝日の「サンデープロジェクト」なんかでも、司会者の田原さんは冬柴公明党幹事長との討議の中で、これは必要ですという言葉をたしかおっしゃっていたと思います。  そういう意味で、歯どめの問題とか基本的人権との兼ね合いというのはやっぱり相当慎重に我々も考えるべきだと思っていますが、どうにか少し様子が変わってきたというふうに私は感じております。最近特に、新ガイドライン関係法案なんかの審議もございまして、過激派の動きがガイドライン問題なんかと絡んでこの組対法三法の阻止運動というのがかなり目立つんです。  そこで、公安調査庁長官にお尋ねしますが、たしか組織的犯罪対策法に反対する共同行動という組織があると聞いております。この組織はどういう組織で何をねらいとして、中心的といいますかあるいは主導している団体はどういう人たちなのか、お答えいただきたいと思います。 <0349>=政府委員(木藤繁夫君)= 御指摘の組対法反対共同行動という運動組織は、組織的犯罪対策法に反対する共同行動、こういう名称でございますが、それは平成八年一月に結成されました破防法に反対する二・二三集会実行委員会、この略称が破防法反対実行委員会、こう申しておるわけでありますが、そういった破防法に反対する団体を前身としておりまして、破防法団体適用請求が棄却された後の平成九年三月末ころに現在の名称に変更された、こういった組織でございます。  そして、その結成には中核派が関与したものと考えておりますが、組対法反対共同行動として掲げている目的は組対法の成立阻止ということでございまして、現在、多くの団体の参加のもとに集会、デモや署名活動などを実施しておるところでございます。 <0350>=平野貞夫君= その中核派というグループでございますが、私、専門的に知識がないものですから、どんな団体で、これは破防法の調査対象になっているかどうか。そして、最近どんな事件を起こしたのか。たしか私の記憶だと、オウムに破防法を適用すべしという議論を我々したときに組織的な反対運動をやっていたというふうに記憶しておりますが、オウムとの連携というか関係は中核派はあるのかないのか。ここら辺をお答えいただきたいと思います。 <0351>=政府委員(木藤繁夫君)= 御指摘の中核派は革共同中核派といっておるわけでございますが、日本の国家体制を暴力革命によって打倒して共産主義社会の実現を目指している、いわゆるトロツキスト団体であるわけであります。構成員は約三千二百名を有しておりまして、各種政治闘争を展開する中で、約二百人の非公然軍事部隊が多数のテロ、ゲリラ事件を敢行しておりまして、当庁といたしましては調査対象団体の一つに指定しているところでございます。  最近、同派が犯行を自認したいわゆるゲリラ事件といたしましては、平成十年九月十一日の運輸省航空局幹部宅爆発物事件、それから同年十月二十八日の千葉県議会議員事務所など放火事件、それから本年、平成十一年一月二十五日の京成電鉄株式会社鉄道本部長宅車両放火事件などがあるわけでございます。  この中核派とオウム真理教との関係でございますが、中核派など過激派諸団体は、オウム真理教に対しまして破防法適用が取りざたされた当時は、これに反対いたしまして集会、デモに取り組んだり、また、中核派でございませんが、解放派という過激派グループによるゲリラ事件も発生しているわけであります。しかし、現時点におきましては、中核派がオウム真理教の活動を支援しているという動きについては承知しておりません。 <0352>=平野貞夫君= いずれにしても、我が国の危機管理、治安にとっては大変危険な団体というふうに思います。  一部の報道によりますと、中核派は新ガイドライン反対ということで百万人の署名運動を行った、そしてそのガイドライン法が成立後もやっぱりガイドライン体制阻止という運動を繰り広げているというふうに報道されております。  先般、来年七月に沖縄サミットが行われるということが決定されたんですが、中核派はこの沖縄サミットに対してどんな反応を示しているか、何か情報があればお答えいただきたいと思います。 <0353>=政府委員(木藤繁夫君)= 中核派は、沖縄サミットにつきまして沖縄米軍基地の再編強化につながるものととらえて反発しておりまして、現在機関紙や集会等におきまして沖縄サミット阻止という主張を展開し、世論づくりに努めておるところでございます。そして、そのためにテロ、ゲリラ戦によるサミット実力阻止というものを機関紙の上で示唆しておるところでございます。 <0354>=平野貞夫君= 沖縄でサミットが行われるということは、日本人にとりましては非常に歴史的に大切なことで、日本人である限りこのサミットを成功させるということが政治家だけじゃなくて日本人全体の責任だと私は思っております。沖縄サミット阻止という形で過激派がいろいろな活動をしていくことについては私は大変残念なことだと思っております。  そこで、話を戻しますが、五月の二十二日に組織的犯罪対策立法に反対する全国ネットワークという組織の主催で、組対法三法を廃案に五・二二全国集会という会合が星陵会館で開かれておりますが、公安調査庁としてどんなメンバーがどのくらいこの集会に出席したか、どう把握されていますか。 <0355>=政府委員(木藤繁夫君)= 五月二十二日に都内で開かれました組対法三法を廃案に五・二二全国集会、この参加者でございますが、全体で約三百二十人と把握しておりまして、うち過激派の活動家は約百二十人であったと把握しておるところでございます。 <0356>=平野貞夫君= この中で中核派はどのくらいだと推測していますか。 <0357>=政府委員(木藤繁夫君)= 中核派はそのうち約七十人であると考えております。 <0358>=平野貞夫君= そうしますと、この集会は、全員じゃないでしょうけれども、組織的犯罪対策立法阻止と沖縄サミット阻止というのが連動している人も中にはいるわけですわな。少なくとも約七十人という人は連動していると見ていいと思いますが、ここに国会議員はどのくらい出席していたでしょうか。おわかりになりましたら言っていただきたいんです。 <0359>=政府委員(木藤繁夫君)= この集会の参加者につきましては公安調査庁としても関心を有しているところでありますが、御質問の点につきましてはこの場で答弁することを差し控えさせていただきたいと思います。 <0360>=平野貞夫君= 出席していたかもわからない、出席していないかもわからぬが、公安調査庁としては言えないということでございますね。 <0361>=政府委員(木藤繁夫君)= 出席していたか否かをも含めまして答弁を差し控えさせていただきたいと思います。 <0362>=平野貞夫君= 私の手元に当日配布されたビラのコピーがございます。これは本物じゃございません。コピーでございます。このコピーによりますと、二人の国会議員が出席されているようでございます。この会合の性格も後で聞きますが、非常に大事なことですから申し上げますが、「講演」として、この委員会に出席されております福島瑞穂先生、弁護士・参議院議員という形で出席されております。それから、「国会報告」という形で保坂展人先生、衆議院議員、この二人が出席されております。これはビラのコピーですから私が確認したわけじゃございません。  これは中核派の機関紙だと思いますが、「前進」という機関紙の六月七日付第千九百十一号にはこのような記事がございます。「福島瑞穂参議院議員が「瑞穂の国会めった斬り」と題して講演し、「犯罪の概念をまったく変え、すべての人を犯罪者予備軍と見なす」と組対法三法案の予防弾圧的性格を鋭く暴露し、令状主義の解体を弾劾した。公明党の修正案はまったく歯止めにならないと全面的に批判した。」。そして別のところに、「保坂展人衆議院議員が国会情勢を報告し、「公明党を揺さぶり、反撃しよう」」と、こういう記事が書かれておりますから、これは出席されていたと見ていいと思います。  さて……(「ちょっと待ってください、何が問題なんですか。」と呼ぶ者あり)悪いとかいいとか言っていませんよ。(発言する者多し)  公安調査庁、五月二十二日のこの集会の性格をどう理解されていますか。 <0363>=政府委員(木藤繁夫君)= この五月二十二日の集会は、五月二十二日の全国集会実行委員会というものを主催団体として開催されまして、この法案に反対するいろいろな方、一般市民とか各種団体が参加された集会であると考えております。 <0364>=平野貞夫君= この集会に参加していた人たち全部がそういうわけじゃないと思いますが、善良な市民の方もいると思います。  それから、この集会に出席することをいいとか悪いとかということを私は言っているわけじゃございません。事実関係を言っているだけです。  ただ、この集会の中には組対法三法案を廃案にして新ガイドライン体制を崩壊させて沖縄サミットを阻止しようというねらいを持っている人もいるということもこれ事実です。例えば、中核派の機関紙によりますと、こういうことを書いているんですよ。沖縄の米軍基地に対し、たとえ一つでもゲリラがあるならば、それだけでサミットの威信は傷つけられる、こういうことを機関紙に書いてあるのです。これは、テロ、ゲリラ戦による実力闘争を示唆しているとしか思えないんですよ。  したがって、私は非常にこういった一連の流れを注目しております。きょうは一般質疑でございますから率直に法務大臣の意見を聞きたいと思いますが、こういったものを阻止していくには、私は組対法……(「委員長、済みません。」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し) <0365>=委員長(荒木清寛君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0366>=委員長(荒木清寛君)= 速記を起こして。 <0367>=平野貞夫君= るる申し上げたんですが、我が国はこういった過激派の動きでも相当状況は変わって危険な状態になっていると思います。  そこで、もちろん組対法が成立すればそれなりの効果はあると思いますが、それだけではやっぱり対応できない。やはり破防法の改正、オウムのこともございますが、オウムだけじゃないと思います。そういう意味で、大臣の破防法の改正に対する御所見をお伺いしたいんです。 <0368>=国務大臣(陣内孝雄君)= およそ自己の主義主張を貫徹するために暴力的手段に訴えるいわゆる過激派の活動というものは、これは国民の平穏な生活を侵害し、また法秩序の維持に重大な脅威を与えるものでありますので、到底容認できるものではございません。過激派によるこの種の不法事犯に対しましては、警察などの関係機関との連携を深め、あらゆる法令を適用して事案の真相の解明と適正な刑罰権の実現のために全力を挙げておるところでございます。今後も同様に、この種の不法事犯の防止と治安の維持に努める所存でございます。  今お尋ねの破壊活動防止法の点でございますけれども、今申し上げましたようなことにかんがみまして、団体規制の請求も念頭に置きながら、今後とも鋭意調査に努めなければならないと思いますし、またオウムについては今のままでいいのかどうか、さらにその適切な法的整備が必要であるかもしれませんので、その点についても鋭意今検討を進めておるというところでございます。 <0369>=平野貞夫君= 組対法にしろあるいは破防法を改正するにせよ、やはり善良な一般国民の人権というものは当然最大に守らなければなりません。それは政治の責任でもあります。同時に、凶悪な犯罪を起こすあるいは起こす可能性の強い人たちの人権、もちろん人権がないとは言いませんが、やはり国家として一般の善良な国民の人権、僕はこれを社会共同体を構成する集団基本権だと見ていますが、こういったものの擁護は十分された上で、やはり国家の危機管理、そういったものには政府だけじゃなくて国会もきっちりとした態度を示すべきだと思います。  質問を終わるに当たりまして、私は、自分の感想を申し上げておきますが、今の日本の状況を、海には不審船と集団密航あり、町にはやくざと覚せい剤あふれ、村はオウムにおののき、過激派の勢いは強まる、日本はどうなるのかということを申し上げて、質問を終わります。 <0370>=中村敦夫君= きょうは、暴力団の問題がとりわけ大きな存在として取り上げられているようです。暴力団は大変悪い存在ですから、彼らの犯罪を取り締まるということは当たり前のことでございます。ただ、扱われ方の中にもう一面見逃してはならない部分というものがございます。  これまでの質疑の中でも明らかなように、暴力団の金融機関へのテロというものがありましたが、それが不良債権の処理をおくらせていることが明らかになったわけでございます。しかしそれと同時に、不良債権というものそのものが実は暴力団へほとんど消えていったんだというのは事実で、だからこそなかなか明らかにしにくかったという面があるわけです。  なぜかと言えば、特にこのバブル期においては金融機関が暴力団と協力関係にあったこと、これが原因であるということです。典型的な例としては、住友銀行そしてイトマン、暴力団というこの癒着の構造、これは小説になったぐらい有名な話ですが、金融機関は多かれ少なかれこういう構図の中にあったわけです。  こうした関係が現実に進行しているときに、当局はこういう問題に関してどのぐらい調査しあるいは捜査していたのかということについてお尋ねしたいんですが、法務大臣が詳しくないのであればどなたでもお答えいただきたいんです。 <0371>=政府委員(松尾邦弘君)= きょういただきました御質問ですので、十分な準備が必ずしもできておりません。  まず一般論から申し上げますと、検察当局は、警察等の関係機関と連携をしながら、金融機関の役職員等による背任事件あるいは債権の回収に係る競売等妨害の事犯につきまして、暴力団関係者を含め、いろいろな規則を適用して摘発を行ってきたところであります。その証拠収集の過程におきまして、事案の真相を解明しまたは情状を明らかにする見地から暴力団関係者の関与の有無についても必要な捜査を遂げてきたものと承知しております。  これは一般論でございますが、具体的に見ていきますと、例えば暴力団の関与する不正融資事件等が先生の御指摘のころにもかなり多発していたということは間違いございません。  一つ例をとりますと、平成三年三月二十日ごろからのことでございますが、合計二十億円の定期預金を、暴力団幹部で信用組合非常勤理事である者らが共謀の上、担保を徴することなく合計十六億五千万円を融資することを約して預金に関して不当な契約をしたという信用組合岐阜商銀の事件、これは導入預金の事件ということになっていますが、こんな問題もございます。  それから最近では、吹上農協金融課長による暴力団組長らへの違法貸付背任事件というのがございます。これも担保を徴することなく農協の金融課長が暴力団に約一億円を貸し付けたというような事案とか、このように幾つか暴力団が直接的に表面に出て金融の貸し付けあるいはその回収等にかかわったという事件がございます。  そのほかに破綻金融機関に関する刑事責任追及ということで見ますと、平成三年から現在までの間に、例えば東洋信金の詐欺事件、あるいは今申し上げた信用組合岐阜商銀、あるいは安全信組、コスモ信用組合の事件とか、合計で十二件、四十一名が検挙されまして、このうち経営者は二十五名でございますが、四十一名の中には融資先ということで暴力団関係者等も含まれているということもございます。  そのほか、これはさらに件数が多くなりますが、整理回収銀行の告発事件がバブル崩壊後、現在までに多数ございます。これは罪名で言いますと競売等妨害罪でございます。これは債権の担保にとっております土地建物の競売等を行おうとすると暴力団が占拠しているという事案でございます。そのほか公正証書原本不実記載罪等、さまざまな罪名でございますが、いずれにしても、大なり小なりそうした組織暴力が関与した事案が告発を受けまして捜査中と。  あるいは別の観点から見ますと、住宅金融債権管理機構、これは中坊さんの会社でございますが、ここからの…… <0372>=中村敦夫君= 後のことはいいです。バブルの進行当時。 <0373>=政府委員(松尾邦弘君)= 進行当時で見ますと、先ほど申し上げたような岐阜商銀の事件等が典型のケースかと思います。 <0374>=中村敦夫君= バブルが崩壊して金融機関がつぶれていく、その中では金融機関からも逮捕者が出ていく、そういうことは多いわけです。ところが、バブルが進行しているときにもう明らかに圧倒的な量で、あのバブルがマフィア経済と呼ばれたぐらい暴力団の進出が激しかった。そういう時点で当局は、例えば金融機関あるいはそれに絡むゼネコンとかそういうところに警告を発したということはあったんでしょうか。 <0375>=政府委員(松尾邦弘君)= 個々具体的なケースの中で、例えば捜査の過程で当該の金融機関にそのかかわりについてただす、あるいは警告することがあったかどうかというのは、個々具体的なケースの記録は今ありませんのでわかりませんが、あのころも地上げ屋というような言葉が大変流行しました。また、バブルの崩壊後には地下げ屋と。  いずれにしても、組織暴力が大なり小なり関与するということがばっこしたということもマスコミ等で報道されたことがございまして、そうしたケースにつきましては捜査機関としては重大な関心を持っておりましたし、刑事事件ということで告訴、告発がありましたら適切に捜査処理をしてきたと思われますし、また部分的には独自捜査、あるいは独自の端緒で処理したケースもあるかと思いますが、個々具体的な事件についての資料が手元にございませんので、これ以上申し上げるのはなかなか困難でございます。 <0376>=中村敦夫君= バブル期には金融機関、ゼネコンなどが暴力団と協力関係にあったというのは周知の事実であります。そして、その幾例かの場合には政治家がかなり深く関与しているという疑惑、これも随分報道が出てまいりました。  政治家の関与、つまり暴力団との癒着について当局がどの程度の調査をしてきたのか、あるいはしているのかということはどうでしょうか。 <0377>=政府委員(松尾邦弘君)= これもなかなかお答えが難しいお尋ねだと思いますが、報道についてはさまざまな報道がございまして、その信憑性もさまざまだろうと思います。  法務・検察当局としましては、それぞれの報道の真偽を解明する立場にございません。まずこのことを申し上げておかなければなりませんが、検察当局は、犯罪の嫌疑が認められる場合には、その被疑者が政治家であるか否かにかかわらず、やはり厳正公平、不偏不党の立場からその真相の解明に努めて証拠収集をし、これまでも適切に捜査処理してきたというふうに申し上げておきたいと思います。 <0378>=中村敦夫君= この件については大きな問題ですので、きょうはここで打ち切っておきたいと思います。  質問を終わります。 <0379>=委員長(荒木清寛君)= 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会