盗聴法ニュース 第6号

1999年5月31日
発行責任者
衆議院法務委員会委員 枝野幸男 保坂展人
参議院法務委員会委員 中村敦夫 福島瑞穂

衆議院の法務委員会は無法委員会
杉浦正健法務委員長解任を求める

  1. 理事会で審議日程について合意がないのに審議が強行された。
  2. 国民の権利に係わる重大法案であるのに公聴会も開かれていない。
  3. 委員一人あたり4時間の質疑時間を確保するという与野党合意を一方的に破棄したうえで、質疑終局を予告した上で審議を強行した。

衆議院法務委員会で明らかになった盗聴法案の欠陥

  1. 公明党は将来犯罪を犯すおそれがある時に盗聴できるという事前盗聴の規定を一旦は検討するとしながら、自自公3党案では結局原案のまま事前盗聴を認めた。この規定はまだ発生していない犯罪の強制捜査を認めるもので、刑事捜査概念に根本的転換をもたらすものだ。
  2. 立会人が常時立ち会うといわれているが、被疑事実は知らされず会話内容を聞くこともできないし、関係のない通話を切断する権限もない。
  3. 傍受された対象者に通知するとされているが、通知されるのは刑事事件用記録に掲載されたものだけ。傍受の原記録が裁判官に保管されていても、そのほとんどの無関係通話の当事者には何の通知もなく、不服申し立ても不可能。
  4. 傍受の原記録中の無関係通話は削除抹消するとされているが、削除・抹消を担保する手段はない。また、無関係通話の内容をメモしたり、これを他の事件の捜査の端緒とすることは禁止されているが、この違反に対しては何の罰則もない。
  5. ファックスや電子メールについては無関係な通信を除外する手段がなく、結局すべて傍受して、すべて記録して内容を検討することとなる。

残された未解明の問題点

  1. 緒方盗聴事件に関する警察の責任をいまだに警察トップは否定している。警察組織に対する信頼が根本的に欠如している状態で盗聴制度を導入することへの疑問が日増しに高まっている。
  2. 警察組織による組織的で大規模な違法盗聴が行なわれていたことを推測させる、警察に盗聴器を納入していたという丸竹洋三氏の証言や警察の仕掛けた盗聴器を発見したとされる盗聴防止コンサルタントの方など証言を聞くための参考人招致が実現していない。
  3. 国民各層から強く要求されている公聴会の開催が実現していない。
  4. 5月30日朝日新聞で明らかにされたNTT外で、たとえば警察署内部での盗聴が可能とされる技術の詳細を調査し、このような技術を用いた盗聴において誰が立会人となるのか、違法盗聴に対する歯止めが可能かなどを徹底的に明らかにする必要がある。
  5. 通信傍受法案以外の組織犯罪の重罰化やマネーロンダリング、証人保護規定などの問題点はほとんど解明されていない。とりわけ、なぜ、このような広範な重罰化や、広範な犯罪についてマネーロンダリングの規制がいま、必要なのか全く明らかにされていない。
  6. 金融機関に「疑わしい取引の届け出義務」を課すことや完全に合法的な営業活動を「不法収益による経営支配の罪」等の名目で取り締まること、有罪判決以前に企業の経済活動を停止させることのできる没収保全手続きなどを新設することなどが不況の日本経済に及ぼすであろう重大な影響が全く解明されていない。また、金融機関の届け出義務の基準も全く明らかになっていない。
  7. 犯罪収益収受の罪が弁護士報酬に適用された場合に、私選刑事弁護を受ける権利に及ぼす重大な影響が解明されていない。マネーロンダリング規制で導入される犯罪収益収受罪は弁護士報酬にも適用されると法務省は公言している。被告人や家族から弁護士費用を得て行なう私選弁護は、この法案の成立によって犯罪収益収受の罪による逮捕を覚悟しなければ不可能となる。このような事態がアメリカでも現実に発生している。被疑者国選弁護制度すらない日本でこのような制度を導入することは刑事弁護の否定である。