(割印)    (割印)

              覚    書
                          法務省刑制第11号
                          郵電利第13号
                          平成10年3月12日

                     法務省刑事局長
                          原田 明夫(印)

                     郵政省電気通信局長
                          谷  公士(印)

 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(以下「法案」という。)の閣議決
定に当たり、法務省と郵政省は下記のとおり確認する。

                 記

1 次の各項の語句は、当該各記載の意義を有するものである。
 (1) 法案第2条第1項の「伝送路」とは、送信の場所から受信の場所までの間
  の通信が伝達される経路をいう。
 (2) 法案第2条第1項の「有線」とは、通信の伝送に利用される線条その他の
  導体をいう。
 (3) 法案第2条第1項の「有線以外の方式で電波その他の電磁波を送り、又は
  受けるための電気的設備に附属する有線」とは、社会通念上、専ら、有線以
  外の方式で電波その他の電磁波を送り、又は受けるための電気的設備の一部
  として設けられているものと観念される有線をいう。
 (4) 法案第2条第1項の「交換設備」とは、発信元の端末からの接続要求に応
  じて発信元の端末までの接続・経路設定(使用周波数の設定を含む。)を行
  う機能(以下「交換機能」という。)を有する設備をいう。

2 検察官又は司法警察員が、次に揚げる部分に係る無線通信を傍受するには傍
 受令状を要する。
 (1) 法案第2条第1項の「電話その他の電気通信であって、その伝送路の全部
  又は一部が有線(有線以外の方式で電波その他の電磁波を送り、又は受ける
  ための電気的設備に附属する有線を除く。)であるもの」の無線部分
 (2) 法案第2条第1項の「電話その他の電気通信であって、その伝送路に交換
  設備があるもの」の無線部分

3 次に揚げる無線通信は、法案第2条第1項の「通信」に該当する。
 (1) 交換機能を有する人工衛星局を介して行われる、端末相互間の無線通信
 (2) 一般加入回線に接続した無線局を介して行われる、他の無線局と一般加入
  回線端末との間の無線通信
 (3) MCA方式による交換機能を有する無線局を介して行われる、端末相互間
  の無線通信

4 検察官又は司法警察員は、次に掲げる無線通信であって、法案第2条第1項
 にいう「通信」に該当しないものについては、本法案による処分としても、任
 意処分としても、これを傍受することはできない。
 (1) 電気通信事業者が提供する無線の専用回線サービスの無線通信
 (2) 船舶間又は船舶と海岸局間で行われる公衆無線電報の送受信のための無線
  通信

5 法案第10条の「必要な処分」として行う機器の接続等は、電気通信事業者
 の法令上の義務の履行を不当に害しないようにするなど、相当な方法で行うべ
 きものである。

6 法案第11条について
 (1) 法案第11条の趣旨は、通信の傍受の場合、他の強制処分と異なり、傍受
  を実施する者があらゆる面で自力執行することは困難な場合が多く、また、
  他の通信の秘密の保護の面からも適当でないと考えられること、通信事業者
  等は、通信の当事者との関係では、通信の秘密を守る義務があることから、
  捜査機関が通信事業者等に協力を求めることができ、通信事業者等がその求
  めに応じて協力しなければならないことを法的に明確にしたものであるが、
  この協力義務の存在をもって通信事業者等に過度の負担を課する趣旨ではな
  い。
 (2) 傍受をするかしないかの判断を委ねる形で通信事業者等に機器の操作を行
  わせること、利用者側でかけた暗号の解読、通信事業者が暗号化をサービス
  として提供している場合であっても、その解読が事業者が有する技術により
  可能な範囲を超えているときの暗号の解読、新たな投資やシステムの開発が
  必要となる形での暗号の解読、及び個別の令状による傍受の実施への協力を
  超えて、傍受を可能とするネットワークを構築したりソフトの開発をしたり
  することは、法案第11条による通信事業者等の協力義務には含まれない。
 (3) 法案第11条の「正当な理由」に関し、通信事業者等において、他の利用
  者に対する役務の提供に少なからぬ支障を生じる場合、通信事業者等が有す
  る設備・技術により可能な範囲を超えた協力を求められた場合に該当すると
  判断した場合は、傍受の実施に関する協力を拒み得る。

7 法案第12条の規定により立会人となった者が立会人として行う行為につい
 ては、法令による正当行為に該当する。

8 法案第16条の「正当な理由」に関して、通信事業者等において、告知され
 ただけでは傍受令状発布の事実など同条第1項の規定による探知であることに
 ついて確信が持てないと合理的に判断した場合は、相手方の電話番号等の探知
 に関する協力を拒み得る。

9 令状による通信の傍受の具体的な実施方法、通信事業者等の協力義務の内容
 等については、法律の施行前に、捜査機関及び通信事業者等との間で、標準的
 な実施手順を定めることを含めた協議がなされることが望ましいことから、法
 務省及び郵政省は、こうした協議が開催されるよう努める。

10 法務省は、郵政省が無線通信の秘密の保護に関する電波法の規定の見直し
 その他所要の措置を講ずる場合には、当該無線通信に対する刑事上の適切な保
 護の整備について協力する。

11 本法の制定により、法務省と郵政省との間の従来からの権限及び所掌事務
 は、何ら変更されるものでない。

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