5.11組織反対対策法に関する院内集会へのメッセージ

 日弁連では、盗聴法を含む組織的犯罪対策3法案につきましては、
法制審議会における原案の審議段階からその問題点を指摘し、昨年
3月、法律案が国会に提案されるにあわせて、会長をはじめとする
全理事者が委員となる対策本部を設置して、反対運動を展開してま
いりました。
 法律案の審議は、昨年の第142回国会における衆議院法務委員
会における質疑において、人権上多くの問題点が指摘され、また、
この間、法律案に対する懸念や反対の声は、私たち日弁連にとどま
らず、学者有志、日本ペンクラブや多くの市民団体から表明されて
きました。
 去る4月28日には、衆議院法務委員会において第1回目の参考
人質疑が行われ、法律案の実質審議が再開され、さらに第2回目の
参考人質疑について、与野党で日程をめぐる攻防が行われていると
聞き及んでおりますが、先般の新聞報道によりますと、自民党及び
自由党と公明党との間で、法律案に若干の修正を加えることで成立
に向けての合意がなされたと報じられました。
 しかし、法務委員会における審査は、まだ1回目の参考人質疑が
行われただけで、それも、あくまでも法律案のアウトラインの問題
点だけに限られ、法律案の内容である個別具体的な条文規定につい
ては、まったく議論がされていません。
 日弁連は一昨年5月の総会決議、昨年2月に発表しました意見書
では原案での立法に反対するだけでなく、多岐にわたる問題点を指
摘しました。今回提案されている法案は、いまだ行われていない犯
罪行為に対して通信傍受という新たな強制捜査を導入し、構成要件
が曖昧なまま組織的犯罪の重罰化と広範囲な犯罪類型にマネー・ロ
ンダリング処罰をもうけるなど、刑事司法制度の根幹にかかわる大
改変をもたらすものであり、慎重な上にも慎重な審議が尽くされな
ければならないものです。
 5月8日及び9日の新聞報道によれば、政府及び自民党は公明党
との協議で修正案を確定させ、5月中旬にも委員会採決を強行しよ
うとしているとされています。伝えられる修正案は、盗聴の対象犯
罪を薬物犯罪、銃器犯罪などに限定するとされていますが、そもそ
もの提案趣旨である組織的犯罪だけに限定されていないばかりか、
まだ発生していない将来犯罪や令状に記載されていない別件事件の
傍受も認めたままです。犯罪と関係する会話かどうかを識別する該
当性判断の傍受についても、最小化の手続が示されておらず、犯罪
とは何の関係もない多くの通信が聴かれることは避けることができ
ません。また、組織的犯罪の重罰化やマネー・ローンダリングにつ
いては何らの議論もされていない状況です。
 日弁連としては、国民の人権侵害の危険に直結するこの法律案に
ついて、国民の代表者である国会が具体的内容に関して十分な議論
を尽くしていくよう、強く求めていきたいと思います。

                                        1999年5月11日
   日本弁護士連合会
  「通信傍受法・組織犯罪対策法」に関する拡大理事会内対策本部
   事務局長 楠田堯爾