盗聴法・組織犯罪対策法案の衆議院通過に対する抗議声明

日本民主法律家協会総会


     盗聴法・組織犯罪対策法案の衆議院通過に対する抗議声明

一 去る六月一日の衆議院本会議において盗聴法・組織犯罪対策関連三法案が自民、
 自由、公明の三党の多数により可決された。論戦の舞台は、今参議院に移っている。

二 この法案は、「試し聞き」の名の下に無制限に警察の電話盗聴・通信傍受を認め
 ているうえ、傍受した通信中に被疑事実が含まれない限りは当事者に通知されない。
 国民は盗聴された事実自体を知らされることのないまま、警察が無制限に盗聴を拡
 大できる仕組みになっている。
  また、インターネットや電子メールによる通信の「盗聴」が、看過し得ない問題
 として社会的な関心を集めつつある。蓄積された電子データの「盗聴」は、犯罪に
 無関係な広範な市民のプライバシーを徹底的に暴くことになるだろう。
  こうした盗聴法案が通信の秘密を侵害して市民社会の基盤となるコミュニケーシ
 ョンの自由を破壊するとともに、令状主義に反して無差別かつ秘密の捜査を大幅に
 認め、警察による監視国家への道を開くことを危惧せざるを得ない。
  さらに、組織犯罪の重罰化やマネーロンダリング規制の強化は立法根拠があいま
 いなうえ市民団体や労働組合の活動を不当に制限するおそれがあり、証人保護規定
 の新設は弁護人の反対尋問権の侵害につながりかねない。

三 こうした盗聴法・組織犯罪対策法案に対する批判が広がる中で、衆議院段階では
 盗聴の対象となる犯罪の限定や通信傍受の際の立会人常置などの「修正」がなされ
 たが、いわゆる予備的盗聴、事前盗聴、別件盗聴が認められる以上犯罪に無関係の
 通信会話の盗聴を防止することはできないし、また、立会人も通信傍受を見守るだ
 けでこれをチェックし切断する権限がない以上盗聴の乱用に対する歯止めには全く
 ならない。
  なお、この間、特定の宗教団体信者がマンションに無断で入りビラを配布したと
 して建造物侵入容疑で逮捕され教団の印刷工場等が家宅捜索され、起訴にまで至っ
 ていることが報道されている。組織犯罪対策の名の下に、捜査権限を無原則に拡大
 することの危険は指摘するまでもなく、捜査機関への厳重な注意が必要である。

四 盗聴法・組織対策法案の衆議院可決に対し、法律家諸団体、超党派の多数の国会
 議員、マスコミ、市民団体等からも危惧の声が広がっている。六月二四日には、超
 党派の大集会も空前の規模で世論の動向を示した。
  日本民主法律家協会は昨年三月の法案の国会提出以後、本法案が憲法の定める通
 信の秘密を侵害し、かつ令状主義に反することなどを繰り返し指摘して廃案を求め
 てきた。三党の多数横暴による衆議院可決強行にあらためて厳しく抗議するととも
 に、参議院での慎重審議・廃案を強く求め、広範な市民と行動をともにすることを
 宣言する。

        一九九九年六月二六日

                        日本民主法律家協会総会

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