抗議声明

本日午後、衆議院本会議は、不当にも組織的犯罪対策三法案を野党三党などの抗議にもかかわらず、可決した。衆議院では、法務委員会段階から、まったく実質的な審議を行わず、立法府としての実質的な機能も果たさず、憲法違反の法律を通過させた責任はきわめて重大である。

私たちは、改めて、下記のように、本法案が明らかに違憲であり、また、重大な人権侵害であることを表明し、衆議院の採決に抗議するとともに、参議院ではぜひとも廃案とするよう重ねて強く要求するものである。

1 違法、不当な立法過程

憲法違反の立法をおこなう権限は国会にはない。この点を、衆議院は一切審議せずに強引に通過させた点を私たちはなによりも厳しく抗議したい。

 しかも、今回の衆議院の審議はまったく異常な状態であり、立法過程としては、とうていみとめることはできない。

 4月28日の法務委員会において、突如として提出された動議によって、以後の参考人質疑の日程等が議長一任とされた。この動議の採決は、速記録がとれない混乱のなかで、一切の討議なしで抜打ち的に採決された不当なものである。

その後の、委員会審議は、参考人質疑が一回おこなわれたのみで、実質審議はなされず、修正案にいたっては、野党側委員や私たち有権者に知らされることなく、自民、自由、公明が、野党を排除した密室の中で協議して提案し、採決しており、委員会審議を経ているとはいえない。

2 盗聴法は廃案しかありえない。

衆議院で通過した法案は、氏名不詳での令状発付、立会人の無権利状態、別件盗聴、将来の「犯罪」の盗聴などをみとめている。これらによって、捜査機関は、犯罪捜査を名目に、広範な監視のための盗聴が可能となり、警察は確実に市民生活を監視する組織に大きく変質する。

たとえば、電話回線が特定されていても、氏名不祥で令状が発付されれば、公衆電話、店舗、会社などの不特定多数が使用する通信回線の盗聴が可能であり、インターネットのコンピュータの通信回線の電話番号の場合には、その不特定性はさらにいっそうはなはだしく、無関係な通信の監視が大幅に行われることになる。これは、明らかに、憲法が保障している通信の秘密を大規模に侵害するものである。

これは、本法案の問題のごく一例にすぎない。本法案はこのほかにも数多くの違法、不当な内容を含むが、こうした諸問題については、衆議院では一切論議されず、自民、自由、公明のいわゆる連立政権論議などの党利党略のための取引材料として利用され、人権、プライバシーへの配慮などいっさいなされていない。

私たちは、衆議院が立法府として最低限の責任もはたさずに、違憲の法律を強硬に可決したことに対し、断固として抗議するものである。

1999年6月1日
盗聴法成立阻止ネットワーカー連絡会
ネットワーク反監視プロジェクト
priv-ec@jca.apc.org