子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
S730726 2004.4.18 
1976/7/26 福岡県立修猷館高校の清家一雄くん(高2)が、ラグビー部で社会人の九州電力チームと練習試合をした際、スクラムセンター(フッカー)として出場。スクラムを組んだ際、首の骨を折り、手足が不自由になった。
経 緯 夏休み、ラグビー部は学内にある合宿施設で恒例の1週間に及ぶ合宿を実施。
社会人の九州電力チームと練習試合をした。
一雄くんは、負傷した正選手の代わりに3年生の部員らから推薦されて、スクラムセンター(フッカー)として出場。
スクラムを組んだ際、首の骨を折り、
肩から下が麻痺状態になるという重篤な後遺障害が残った。
裁 判 1983/7 清家さんは、「合宿中で体力が消耗しているのに、指導教師が、体力差の大きい社会人と試合をさせた」「顧問教師は経験が浅いにもかかわらず急遽一雄くんをフッカーとして試合に起用したのは部員の生命・身体に対する安全配慮義務の違反がある」として、福岡県に約1億5600万円の損害賠償を求めて提訴。
被告の言い分 顧問教師は、「事故は全く予想できない突発的なものであって、安全配慮義務違反はない」と反論。
判 決 1 1987/10/23 福岡地方裁判所 原告勝訴
原告の主張をほぼ全面的に認め、県に約1億3000万円の支払い命令。

「ラグビー競技は格闘技、競争技、球技を総合した激烈なスポーツであり、過去わが国において競技中に多数の死亡事故が発生しており、特に死亡例の半数は高校生で、ポジションからいえば最も技術を要するフロントローに経験の浅い者が起用された際のスクラム事故が多数を占めていることが認められる。
それゆえに、高校生のラグビー部部活の指導に当たる者としては、生徒の技術の向上にのみ意を用いることなく、事故防止の対策として高校生チームを成年男子チームと対戦させることはできるだけ慎み、対戦させるに当たっても相手チームの技能、体力を考慮するとともに、高校生の技能、体力、体調等にも注意し、両チームの技能、体力等に格段の差があるときは対戦をとりやめるか、少なくとも経験と技術が特に必要で危険なフロントローに経験の浅い者を起用しないようにして、両チームの技能、体力等の差に起因する不慮の事故が起こることがないように注意すべき責務を負うものといわなければならない」として、
県に安全配慮義務違反による債務不履行責任を認める。
(判例時報1267号)
判 決 2 1989/2/27 福岡高等裁判所 一部認容
指導教師の責任を認め、県に約7900万円の支払い命令。双方控訴。

1.県立高等学校生徒のクラブ活動につき、県が生徒に対して負う安全配慮義務の履行補助者には、教諭も含まれる。
2.県立高等学校生徒のクラブ活動におけるラグビー部夏季合宿中の練習の一環として、同部顧問教諭の指導監督のもとに行われた、高校生チームと、技能・体力等に格段の差のある強力な社会人チームとの試合同様の練習において、右教諭は、経験と技術が特に必要で危険なフッカーに、未熟で経験の浅い生徒を急きょ起用しないよう配慮すべき義務を負う。
とした。

一方、指導教師の責任を認めながらも、「スクラムでの基本動作を怠った清家さんにも過失があった」として過失相殺。大幅に減額。
(判例時報1320号)
判 決 3 1992/5/25 最高裁で一部認容

約7900万円の支払い命じた2審を指示。双方の上告を棄却。
小野幹雄裁判官は、「指導教師に安全配慮義務が
あった」として、学校の責任を認めた。
参考資料 92/5/20朝日新聞・夕(月刊「子ども論」1992年7月号)、「やさしく引ける判例総覧 学校教育」/1993.11.20日本アソシエーツ株式会社、「教育判例ガイド」/船木正文/2001.6.20有斐閣



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