子どもたちに関する事件【事例】



注 :
学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
900326 教師のワイセツ行為・殺人 2002.1.6. 2002.1.13 2002.1.25 2002.2.25 2004.4.18 2005.6.  2018.3.14.更新
1990/3/26 広島県豊田郡安浦町安登の町立安登小学校の担任教師・K(39)が、教え子の川畑宏美さん(小6・12)にわいせつ行為を繰り返し、発覚後、宏美さんを連れ出して絞殺。
経 緯 1987/4/ 宏美さんが4年生時から、Kが担任。
教室内の自分の業務用机の近くにいつも宏美さんの机を置かせ、席替えのときも変えずにいた。


1989/ 事件の半年前から、Kは宏美さんにわいせつ行為を繰り返していた。

1990/3/ 小学校の音楽室のテープレコーダーに入っていたテープを児童数人がたまたま聞いたところ、宏美さんらしき女児へのわいせつ行為の様子が録音されていた。
ふだんからK教師が特定の児童を「えこひいき」すると反感を持っていた児童の一人が、教師を困らせてやろうと、テープ4本を複製。

テープに気づいた保護者らが校長に相談。
その後、校長は4本を処分し、残る1本を県教委に提出。警察が証拠品として押収。


地元のテレビ局に中年男性の声で、「町立安登小学校の男性教諭が教え子にいたずらをし、児童の間で噂になっている」という内容の告発電話が入る。

3/23
 テレビ局は小学校を取材したが教諭を断定できず、広島県教育委員会に告発を持ち込んだ。
教育委員会はKを割り出す。


1990/3/23 卒業式の夜、校長と教育長がKから事実を確認。Kにてんまつ書の提出と自宅待機を命じる。

3/26 Kは「学校のことで用がある」と言って宏美さんを自宅から連れ出し、車内で絞殺。妻に電話をかけて犯行を告白。
Kは殺人罪で逮捕される。
周囲の対応ほか 1989/夏頃から、Kが何度もワイセツ行為を繰り返しているという噂が児童や一部の保護者の間に広がり、「ひとりで先生について行ってはだめ。後ろに来たら逃げるように」と子どもに注意をする親までいた。

保護者の間では、Kについてかなり以前から、「えこひいきする」「特定の女の子をかわいがっている」「体罰や暴力をふるう」などのうわさがあった。
被害者 宏美さんは、顔立ちがよく、スポーツもでき、成績はトップクラスで、学級代表を務めていた。

卒業文集には、「苦手科目が好きになったのも、担任のK先生が好きだったからだと思いました」と書かれていた。
加害者 Kは、小学校4年生から6年生までの3年間、宏美さんの担任をした。
うわさになったわいせつ行為
は、Kが宏美さんの頬にキスをしたり、胸を触ったりしたというもの。また、ブルマーの下に手を入れたりもしていた。

日ごろから生徒に体罰をしていた。


Kは、「いたずらがばれ、自分の一生が台無しになると思った。宏美ちゃんの将来にも傷がついたと思い、宏美ちゃんを殺して、自分も死のうと考えた」と供述。


事件後、宏美さんの両親に対して3000万円の損害賠償を支払う。
加害者の処分
(刑事)
1991/4/10 広島地裁で、殺人罪で懲役13年の実刑判決(求刑15年)。
殺意を認定。被告弁護士の心身耗弱状態の主張を退ける。
判決では「生命の尊さを教えるべき教師が、児童の信頼を裏切りいたずらを繰り返した行為は絶対許されない」とした。学校の責任などには言及せず。
学校の対応 校長は3/23に、事件を知った後も、宏美さんの両親には事実を何も知らせていなかった。(後に、連絡がつかなかったと釈明)
校長と教育長だけが動き、他の教師たちも、わいせつ事件のことは一切、知らされていなかった。
他の教師らが知ったのは、
宏美さん殺害事件後だった。

1991/4/ 校長は依願退職。


県や町は事件後、学校カルテ制度をつくるなどの改善策に取り組んだ。
別の事件 1989/5/ 同校では、別の教師が女子児童を連れ回して体に触れ、けがをさせる事件が起きていた。
この時には、職員会議でその後の対応が随時報告された。
教師は、「病気による行為」として処分を受けなかった。その後、病気理由で休職中。
裁 判 1991/6/17 両親が、広島県と安浦町を相手に、「校長と教育長は、教諭の行動に細心の注意を払い、児童の安全を確保する義務があったのに怠り、適切な処置を取らなかった」として、宏美さんの逸失利益や両親の慰謝料など総額5000万円の損害賠償を求めて提訴。
被告側の主張 答弁書の陳述で、被告の県は「宏美さんを殺害したKの行為は職務行為とはいえない」とし、町も「当時の校長、教育長が殺害行為を予見することは全く不可能で、自宅待機など命じた措置は適切で過失責任はない」と主張。
裁判での証拠 原告側は証拠として、Kからわいせつ行為をされていた他の女子児童の供述調書を提出。

1992/7/17 口頭弁論で、証拠として提出されている、事件発覚の契機となったKが宏美さんにわいせつ行為をしていた様子を録音したテープを非公開で再生。
原告側証人として出廷した保護者は、「K先生の声や、くせのある鼻をすする音、チャイムの音などが入っておらず、私の聞いたテープではないように思う」などと証言。

1992/9/4 この日、結審の予定だったが、中村行雄裁判長は、「録音された3分21秒の途中、2回テープの切れる音が入っている。また、同じ内容が3回繰り返し録音されており、編集された跡がある」と、改ざんの疑いを指摘。

原告側は、わいせつ行為の事実を隠すため、「Kや宏美さんとわかる部分を消し、支障のない部分を繰り返してつなげて録音、元のテープと同じ録音時間にしたのでは」と指摘。弁論を再開して調べ直すことになった。

しかし、当時の校長や同町教育長ら3人は、「テープの修正はしていない」と証言。
裁判の争点 主な争点は、
1.学校外での教師の活動が職務行為にあたるか
2.学校側に殺害予見の可能性があったか
判 決 1993/3/19
広島地裁呉支部で、中村行雄裁判長は県、町の責任を認め、請求を全額認めたうえ、元教諭が損害賠償金として両親に支払済の3000万円を差し引いた計2304万円の支払いを広島県と安浦町に命じた。
原告勝訴。
判決要旨 わいせつ行為について、「担任教諭の地位を利用してわいせつ行為に及んだものであり、それが授業時間に接着した時間に教室内で敢行されたものであることをも総合すると、当該教諭の右不法行為は、公立学校の教育活動という公権力の行使にあたる同人の職務行為の外形の中にあったというべきである」として、県、町の責任を認めた。
自宅から連れ出した行為は職務との関連性があったと認定。宏美さん殺害についても、「担任教諭の立場を利用して連れ出したことと密接な関係がある」として県の責任を認める
また、元校長らがわいせつ行為発覚のきっかけになった録音テープ5本を回収しながら、1本を残して処分したことを指摘。「自己保身の観点のみから、わいせつ事件の収集を急いだことが、元教諭への不十分な対応につながった」と批判。
参考資料 1990/3/30朝日新聞(月刊「子ども論」1990年5月号/クレヨンハウス)、1991/6/15中国新聞・1991/7/20中国新聞(月刊「子ども論」1991年9月号/クレヨンハウス)、1991/9/21中国新聞(月刊「子ども論」1991年11月号/クレヨンハウス)、1993/3/19東京夕刊、『先生! 涙ありますか 全国の中・高生のキミへ』/はやし たけし/1996.11駒草出版、「先生のしわざ〜おかしな教師たちのお話〜」/ショートカッツ編/1998.11.11日近代映画社「スクール・セクハラ防止マニュアル」/田中早苗著/2001.4.30明石書店「学校事件−そのアカウンタビリティ」/下村哲夫/2001.5.10ぎょうせい
注: 元々の表記の多くは「いたずら」となっていましたが、個人の言葉や既成の文章の引用で使用している以外は、できるだけ「わいせつ行為」という言葉に改めました。(2002.2.25)



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